JP2016128142A - 半透膜の阻止率向上方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、ナノろ過膜や逆浸透膜などの半透膜に対し、半透膜の阻止率を向上させることができる阻止率向上方法、ならびにこの阻止率向上方法によって処理された半透膜を用いる水処理方法を提供する。
【解決手段】
阻止率向上剤と半透膜を接触させる阻止率向上方法において、洗浄剤あるいは殺菌剤と阻止率向上剤を同時に接触させる、または、連続して接触させることを特徴とする半透膜の阻止率向上方法。
【選択図】 図3
本発明は、ナノろ過膜や逆浸透膜などの半透膜に対し、半透膜の阻止率を向上させることができる阻止率向上方法、ならびにこの阻止率向上方法によって処理された半透膜を用いる水処理方法を提供する。
【解決手段】
阻止率向上剤と半透膜を接触させる阻止率向上方法において、洗浄剤あるいは殺菌剤と阻止率向上剤を同時に接触させる、または、連続して接触させることを特徴とする半透膜の阻止率向上方法。
【選択図】 図3
Description
本発明は、海水や、塩分を含む河川水、地下水、湖水、廃水処理水などの原水を用いて、低濃度の透過水を得るために用いられる半透膜の性能向上に関するものであり、さらに詳しくは、半透膜の阻止率を向上させることができる阻止率向上方法に関する。
近年、水資源の枯渇が深刻になりつつあり、これまで利用されてこなかった水資源の活用が検討され、とくに、もっとも身近でそのままでは利用できなかった海水から飲料水を製造する技術、いわゆる“海水淡水化”、さらには、下廃水を浄化し、処理水を淡水化する再利用技術が注目されてきている。海水淡水化は、従来、水資源が極端に少なく、かつ、石油による熱資源が非常に豊富である中東地域で蒸発法を中心に実用化されてきているが、熱源が豊富でない中東以外の地域ではエネルギー効率の高い逆浸透法が採用され、最近では、逆浸透法の技術進歩による信頼性の向上やコストダウンが進み、中東を含む多くの地域において、逆浸透法海水淡水化プラントが建設され、世界的な展開を見せつつある。下廃水再利用は、内陸や海岸沿いの都市部や工業地域で、淡水言がないようなところや排水規制のために放流量が制約されているようなところに適用され始めている。とくに、水源が乏しい島国のシンガポールでは、国内で発生する下水を処理後、海に放流せずに貯留し、逆浸透膜で飲料できるレベルの水にまで再生し、水不足に対応している。
海水淡水化や下廃水再利用に適用される逆浸透法は、塩分などの溶質を含んだ水を浸透圧以上の圧力をもって半透膜を透過させることで、脱塩された水を製造するものでできる。この技術は例えば海水、かん水、有害物を含んだ水から飲料水を得ることも可能であるし、また、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などにも用いられてきた。
逆浸透膜による淡水化装置を安定運転させるためには、取水する原水水質に応じた前処理が必要である。前処理が不十分だと、逆浸透膜を劣化させたりファウリング(膜面汚れ)させ、安定運転が困難になりやすい。とくに、逆浸透膜を劣化させる化学物質が逆浸透膜に侵入した場合、洗浄によっても回復不能な致命的な状況に陥る可能性がある。すなわち、逆浸透膜の機能層(逆浸透機能を発現する部分)が分解し、水と溶質の分離性能、言い換えると、溶質の阻止性能が低下する。海水淡水化や下廃水再利用などの用途に逆浸透膜を用いる場合、このような逆浸透膜の機能層の分解を100%生じないようにすることは非常に難しく、とくに、逆浸透膜の主流であるポリアミドは、酸化劣化を生じやすい(非特許文献1)。また、ある程度の耐久性は有するものの強い酸やアルカリにさらされた場合も、機能層の分解が起こりやすい。このような分解が起こった場合、水処理用逆浸透膜として一般的なアニオン荷電を有する半透膜の場合、アニオン荷電による荷電排除効果によって阻止可能な無機電解質の分離除去よりも、中性分子の除去への悪影響が大きく、特に中性分子の阻止率が悪くなる。具体的には、中性領域で解離していないシリカやホウ素、糖類などの水質悪化が著しくなる。必要な阻止性能を失った逆浸透膜は、通常、新品と交換しなければならなくなるため、当然処理コストの増加につながる。
海水淡水化や下廃水再利用に適用される逆浸透法は、塩分などの溶質を含んだ水を浸透圧以上の圧力をもって半透膜を透過させることで、脱塩された水を製造するものでできる。この技術は例えば海水、かん水、有害物を含んだ水から飲料水を得ることも可能であるし、また、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などにも用いられてきた。
逆浸透膜による淡水化装置を安定運転させるためには、取水する原水水質に応じた前処理が必要である。前処理が不十分だと、逆浸透膜を劣化させたりファウリング(膜面汚れ)させ、安定運転が困難になりやすい。とくに、逆浸透膜を劣化させる化学物質が逆浸透膜に侵入した場合、洗浄によっても回復不能な致命的な状況に陥る可能性がある。すなわち、逆浸透膜の機能層(逆浸透機能を発現する部分)が分解し、水と溶質の分離性能、言い換えると、溶質の阻止性能が低下する。海水淡水化や下廃水再利用などの用途に逆浸透膜を用いる場合、このような逆浸透膜の機能層の分解を100%生じないようにすることは非常に難しく、とくに、逆浸透膜の主流であるポリアミドは、酸化劣化を生じやすい(非特許文献1)。また、ある程度の耐久性は有するものの強い酸やアルカリにさらされた場合も、機能層の分解が起こりやすい。このような分解が起こった場合、水処理用逆浸透膜として一般的なアニオン荷電を有する半透膜の場合、アニオン荷電による荷電排除効果によって阻止可能な無機電解質の分離除去よりも、中性分子の除去への悪影響が大きく、特に中性分子の阻止率が悪くなる。具体的には、中性領域で解離していないシリカやホウ素、糖類などの水質悪化が著しくなる。必要な阻止性能を失った逆浸透膜は、通常、新品と交換しなければならなくなるため、当然処理コストの増加につながる。
このため、長年にわたって、逆浸透膜の阻止性能を回復させる技術の開発が進められており、ビニル系ポリマを接触、反応させる方法(特許文献1、2)、ポリエチレングリコールを逆浸透膜に接触させて阻止率、特に非イオン性溶質に対する阻止率を向上させる方法(特許文献3、4)、透過流束が増加したアニオン荷電を有する逆浸透膜に対し、ノニオン系界面活性剤を膜面に接触させる方法(特許文献5)、酸化還元電位が300mV以上であるヨウ素及び/またはヨウ素化合物を接触させる方法(特許文献6)、燐酸、亜燐酸、硫酸等の強鉱酸水溶液と接触させて昇温した後、加水分解性タンニン酸などの阻止性能向上剤に接触させる方法(特許文献6)など、数々の逆浸透膜の阻止性能回復方法やそのための回復剤が提案されている。また、これらの阻止性能回復処理は、様々な技術課題を抱えている。
すなわち、逆浸透膜の種類や状態(汚れ、劣化)、水温などの処理環境、処理を実施するときの条件(処理液の温度、濃度、処理時間など)によって阻止性能向上処理効果が変わったり、阻止性能向上処理の副作用とも言える透水性能低下も変化する。また、阻止率向上後の長期性能持続効果などもまちまちであり、阻止性能向上処理後の造水運転において水質が不十分であったり、運転圧力が不足したり、困難を伴う場合が少なくない。
これは、2000年代になってから急速に建設され稼働開始している大型の海水淡水化や下水再利用プラントでは、逆浸透膜を多数使用していることや海水など自然環境中の原水を処理するため、たとえ前処理をしても、季節、潮の満ち引き、赤潮その他、天候や自然環境の影響を受けながら逆浸透膜の運転がなされる、逆浸透膜の状態も同じプラントの中でも様々である。また、阻止性能向上処理のためには、一旦通常の造水処理を停止した後、薬液洗浄ラインを通して、運転時の被処理原水に変えて阻止性能向上剤に置き換えるため、稼働率が低下する、手間が煩雑である、また、処理終了後に、再度、被処理原水を通水して通常運転条件で阻止性能や透水性能も測定しなければ最終的な効果が判らないなど、多くの問題を抱えている。これらの問題に対し、逆浸透膜の状態の違いによる処理効果への影響を解決するためには、例えば、特許文献8に例示されるように、逆浸透膜を薬液洗浄した後に阻止性能向上処理を施す技術が一般的に適用されている。また、特許文献9に示すように高温水で洗浄してから阻止性能向上剤に接触させるといった前処理も提案されている。また、阻止性能向上処理の効果を判断する方法としては、阻止性能向上剤に標識となる物質を添加し、透過水中の標識物質の濃度を検出することによって処理効果を確認する方法(特許文献10)が提案されている。
阻止率向上処理が飽和に達し、それ以上無駄な回復処理時間を要することがないように、阻止性能向上剤の供給濃度と排出濃度を監視して、処理の終了を判定する方法も提案されている(特許文献11)。
しかし、これらの方法では、阻止性能向上処理中での性能を知ることによる相対的な処理効果しか判らず、実際の運転環境での性能を把握することは困難であるし、そもそも、処理効率やその効果を制御することは困難であり、現場でのトライアンドエラーに頼っていることが多かった。
すなわち、逆浸透膜の種類や状態(汚れ、劣化)、水温などの処理環境、処理を実施するときの条件(処理液の温度、濃度、処理時間など)によって阻止性能向上処理効果が変わったり、阻止性能向上処理の副作用とも言える透水性能低下も変化する。また、阻止率向上後の長期性能持続効果などもまちまちであり、阻止性能向上処理後の造水運転において水質が不十分であったり、運転圧力が不足したり、困難を伴う場合が少なくない。
これは、2000年代になってから急速に建設され稼働開始している大型の海水淡水化や下水再利用プラントでは、逆浸透膜を多数使用していることや海水など自然環境中の原水を処理するため、たとえ前処理をしても、季節、潮の満ち引き、赤潮その他、天候や自然環境の影響を受けながら逆浸透膜の運転がなされる、逆浸透膜の状態も同じプラントの中でも様々である。また、阻止性能向上処理のためには、一旦通常の造水処理を停止した後、薬液洗浄ラインを通して、運転時の被処理原水に変えて阻止性能向上剤に置き換えるため、稼働率が低下する、手間が煩雑である、また、処理終了後に、再度、被処理原水を通水して通常運転条件で阻止性能や透水性能も測定しなければ最終的な効果が判らないなど、多くの問題を抱えている。これらの問題に対し、逆浸透膜の状態の違いによる処理効果への影響を解決するためには、例えば、特許文献8に例示されるように、逆浸透膜を薬液洗浄した後に阻止性能向上処理を施す技術が一般的に適用されている。また、特許文献9に示すように高温水で洗浄してから阻止性能向上剤に接触させるといった前処理も提案されている。また、阻止性能向上処理の効果を判断する方法としては、阻止性能向上剤に標識となる物質を添加し、透過水中の標識物質の濃度を検出することによって処理効果を確認する方法(特許文献10)が提案されている。
阻止率向上処理が飽和に達し、それ以上無駄な回復処理時間を要することがないように、阻止性能向上剤の供給濃度と排出濃度を監視して、処理の終了を判定する方法も提案されている(特許文献11)。
しかし、これらの方法では、阻止性能向上処理中での性能を知ることによる相対的な処理効果しか判らず、実際の運転環境での性能を把握することは困難であるし、そもそも、処理効率やその効果を制御することは困難であり、現場でのトライアンドエラーに頼っていることが多かった。
植村忠廣ら、複合逆浸透膜の退園組成と塩素劣化による膜構造、膜分離特性の変化、日本海水学会誌、第57巻、第3号(2003)
本発明は、ナノろ過膜や逆浸透膜などの半透膜に対し、半透膜の阻止性能、特に非イオン性物質の阻止性能を向上させることができる阻止性能向上方法、ならびにこの阻止率向上方法によって処理された半透膜、エレメント、さらに阻止性能向上させた半透膜を用いた水処理方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するための本発明は、以下の構成からなる。
(1)阻止率向上剤を含有する液体と半透膜を接触させる阻止率向上方法において、洗浄剤あるいは殺菌剤と阻止率向上剤を同時に接触させる、または、連続して接触させることを特徴とする半透膜の阻止率向上方法。
(2)洗浄剤がpH3以下および/またはpH11以上の水溶液である(1)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(3)洗浄剤がpH12以上のアルカリ水溶液である(1)または(2)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(4)殺菌剤がハロゲン含有化合物である(1)〜(3)に記載の半透膜の阻止率向上方法
(5)半透膜を洗浄剤あるいは殺菌剤と接触させた後に阻止率向上剤と接触させることを特徴とする(1)〜(4)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(6)阻止率向上剤を含有する液体を半透膜に接触させることにより半透膜の阻止性能を向上させる方法において、半透膜の初期の純水透過係数Aに対して、洗浄剤あるいは殺菌剤を接触させた後の純水透過係数A1との比A1/Aが0.8倍〜2.0倍の範囲内に有り、さらに、阻止率向上剤と接触させた後の純水透過係数A2と初期の純水透過係数Aとの比A2/Aが0.6倍〜1.9倍の範囲内であることを特徴とする(1)〜(5)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(7)A1/Aが1.0倍から1.8倍の範囲内に有り、A2/Aが0.8〜1.7倍の範囲内であることを特徴とする(1)〜(6)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(8)阻止率向上剤を含有する液体を半透膜の1次側および/または2次側から接触させることを特徴とする(1)〜(7)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(9)半透膜を有する半透膜ユニットが段階的に配置され、被処理液が各ユニットに直接供給できる構成において、特定のユニットにのみ阻止率向上剤を含有する液体を供給して阻止率を向上させる(1)〜(8)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(10)前記阻止率向上剤の重量平均分子量が、6,000以上100,000以下であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
(11)前記阻止率向上剤が、ポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤であることを特徴とする(1)〜(10)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(12)前記ポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤が、ポリエチレングリコールを主成分とする阻止率向上剤であることを特徴とする(1)〜(11)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(13)前記半透膜が、複合半透膜であることを特徴とする(1)〜(12)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(14)前記半透膜が、ポリアミドを主成分とする半透膜であることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
(15)(1)〜(14)のいずれかに記載の阻止率向上方法によって阻止率を向上させた複合半透膜を使用して水処理を行うことを特徴とする水処理方法。
(1)阻止率向上剤を含有する液体と半透膜を接触させる阻止率向上方法において、洗浄剤あるいは殺菌剤と阻止率向上剤を同時に接触させる、または、連続して接触させることを特徴とする半透膜の阻止率向上方法。
(2)洗浄剤がpH3以下および/またはpH11以上の水溶液である(1)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(3)洗浄剤がpH12以上のアルカリ水溶液である(1)または(2)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(4)殺菌剤がハロゲン含有化合物である(1)〜(3)に記載の半透膜の阻止率向上方法
(5)半透膜を洗浄剤あるいは殺菌剤と接触させた後に阻止率向上剤と接触させることを特徴とする(1)〜(4)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(6)阻止率向上剤を含有する液体を半透膜に接触させることにより半透膜の阻止性能を向上させる方法において、半透膜の初期の純水透過係数Aに対して、洗浄剤あるいは殺菌剤を接触させた後の純水透過係数A1との比A1/Aが0.8倍〜2.0倍の範囲内に有り、さらに、阻止率向上剤と接触させた後の純水透過係数A2と初期の純水透過係数Aとの比A2/Aが0.6倍〜1.9倍の範囲内であることを特徴とする(1)〜(5)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(7)A1/Aが1.0倍から1.8倍の範囲内に有り、A2/Aが0.8〜1.7倍の範囲内であることを特徴とする(1)〜(6)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(8)阻止率向上剤を含有する液体を半透膜の1次側および/または2次側から接触させることを特徴とする(1)〜(7)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(9)半透膜を有する半透膜ユニットが段階的に配置され、被処理液が各ユニットに直接供給できる構成において、特定のユニットにのみ阻止率向上剤を含有する液体を供給して阻止率を向上させる(1)〜(8)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(10)前記阻止率向上剤の重量平均分子量が、6,000以上100,000以下であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
(11)前記阻止率向上剤が、ポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤であることを特徴とする(1)〜(10)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(12)前記ポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤が、ポリエチレングリコールを主成分とする阻止率向上剤であることを特徴とする(1)〜(11)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(13)前記半透膜が、複合半透膜であることを特徴とする(1)〜(12)に記載の半透膜の阻止率向上方法。
(14)前記半透膜が、ポリアミドを主成分とする半透膜であることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
(15)(1)〜(14)のいずれかに記載の阻止率向上方法によって阻止率を向上させた複合半透膜を使用して水処理を行うことを特徴とする水処理方法。
本発明の阻止率向上方法によれば、海水淡水化や下水再利用のような造水装置において、ナノ濾過膜や逆浸透膜の阻止性能低下によって透過水水質が悪化した場合に半透膜の透水性能の低下を最小限に抑えながら阻止性能を改善させ、無機電解質や中性分子などの除去対象物質の水質を効率的に改善させることができる。
以下、本発明の望ましい実施の形態を、図面を用いて説明する。ただし、本発明の範囲がこれらに限られるものではない。
本発明の半透膜の阻止率向上方法は、半透膜を用いた半透膜分離装置に適用可能であり、その一例を図1に示す。図1に示す半透膜分離装置は、原水1が、原水槽2に一旦貯留された後、原水供給ポンプ3で前処理ユニット4に送液されて前処理されることで前処理水を得る。該前処理水は、中間水槽5、前処理水供給ポンプ6、保安フィルター7を経て、昇圧ポンプ8で昇圧された後、半透膜モジュールからなる半透膜ユニット9で処理することで、原水1より塩濃度が低い透過水10と塩濃度が高い濃縮水11とに分離される。透過水10は透過水貯留タンク12に貯留させ、濃縮水11は排出される。一般的には透過水を生産水として活用することが多いが、濃縮水を生産水として有価物回収などに用いても良い。
本発明を適用する原水、用途は、特に限定されるものではなく、河川水や地下水の除濁、脱塩、海水やかん水の淡水化、下水や排水の再利用など、様々な目的に適用可能である。
本発明の半透膜の阻止率向上方法は、半透膜を用いた半透膜分離装置に適用可能であり、その一例を図1に示す。図1に示す半透膜分離装置は、原水1が、原水槽2に一旦貯留された後、原水供給ポンプ3で前処理ユニット4に送液されて前処理されることで前処理水を得る。該前処理水は、中間水槽5、前処理水供給ポンプ6、保安フィルター7を経て、昇圧ポンプ8で昇圧された後、半透膜モジュールからなる半透膜ユニット9で処理することで、原水1より塩濃度が低い透過水10と塩濃度が高い濃縮水11とに分離される。透過水10は透過水貯留タンク12に貯留させ、濃縮水11は排出される。一般的には透過水を生産水として活用することが多いが、濃縮水を生産水として有価物回収などに用いても良い。
本発明を適用する原水、用途は、特に限定されるものではなく、河川水や地下水の除濁、脱塩、海水やかん水の淡水化、下水や排水の再利用など、様々な目的に適用可能である。
前処理ユニット4は、主に原水1に含まれる固形分を除去する目的で適用される。具体的には、cm〜mm単位のスクリーン、サブミリ〜マイクロメートルレベルの高精度の固液分離が可能な砂ろ過、繊維フィルター、不織布フィルター、砂ろ過、さらに精度が高い、精密ろ過膜、限外ろ過膜などを原水水質に応じて用いることができ、沈降分離、浮上分離など、種々の前処理プロセスを挙げることが出来る。またその適用に、凝集剤、吸着剤、殺菌剤、pH調整などの薬剤の併用も差し支えない。原水中に有機物が非常に多い場合は、生物処理やラグーンなどで有機物をあらかじめ分解しておくことも好ましい実施態様である。逆に、固形分や有機物濃度が非常に小さく清澄な原水の場合には、前処理ユニット4を省略することも可能である。
前処理ユニット4から得られる前処理水は、維持管理を容易にするために中間水槽5に一旦貯留することが好ましいが、敷地面積低減や原水供給ポンプ3圧力の有効活用などを目的として中間水槽5を省略することも可能である。
前処理ユニット4から得られる前処理水は、維持管理を容易にするために中間水槽5に一旦貯留することが好ましいが、敷地面積低減や原水供給ポンプ3圧力の有効活用などを目的として中間水槽5を省略することも可能である。
前処理供給ポンプ6は、所定量の前処理水を昇圧ポンプ8を介して半透膜ユニット9に供給できれば特に限定されず、市販のポンプを用いることができる。昇圧ポンプ8も同様に、半透膜ユニット9において、被処理水から処理水を分離することができるだけの圧力を付加できるものであれば特に限定されず、市販のポンプを用いることができる。これらのポンプとして、例えば、プランジャー式、渦巻き式、マグネット式など必要とする出力、特性に応じ適宜選択し、用いることができる。
半透膜ユニット9は、1以上の半透膜エレメントを収容した筒状圧力容器を備えており、供給された前処理水の一部が半透膜エレメントに備えられている半透膜を透過することによって、半透膜を透過した水である透過水10と透過しなかった水である濃縮水11とを得ることができる構造である。半透膜ユニット9は、1以上の該筒状圧力容器を備えており、複数の場合には、直列、並列に備えることができる。1以上の筒状圧力容器を並列に設置し、同一の供給水を半透膜処理するものを一つの半透膜ユニットとしたとき、該半透膜ユニットを多段に設置することも可能である。例えば、図1のように2段に半透膜ユニットを設置し、まず半透膜ユニット9aにて前処理水を処理して透過水10aと濃縮水11aとを得て、該濃縮水11aを次の半透膜ユニット9bにてさらに処理して透過水10bと濃縮水11bとを得る濃縮水2段法としてもよい。また、図3のように濃縮水11bをさらにもう一段の半透膜ユニットで処理する濃縮水3段法や、透過水10を供給水としてさらに別の半透膜ユニットで処理する透過水2段法を用いて良い。これらの構成は、原水水質、要求生産水質(透過水質)、水温などの環境条件、造水コストなどを鑑みて、適宜決定することができる。 阻止率向上処理を行う場合には、接触処理前や接触処理を行いながら半透膜表面の膜汚染物質を事前に取り除く事によってより持続性が高い回復効果を得ることができる。膜汚染物質を取り除く方法としては一般的にこれらの膜の洗浄薬品として用いられる薬品を洗浄剤として使用したり、微生物が膜面に付着するバイオファウリングでは殺菌剤の使用も効果的である。
膜表面の汚染物質を除去するための洗浄剤とは膜面に付着している物質を化学的に溶解、分解させる機能や物理的に剥がしやすくする機能を有するものが使用できるが、このとき、半透膜へ影響を与えない、あるいは最小限にする必要がある。
膜表面に付着した鉄やマンガンなどの金属類はクエン酸、シュウ酸、塩酸、硫酸等の酸性溶液を洗浄剤として使用すると洗浄効果があり、pHを3以下で使用することで洗浄効果を高めることができる。
また、有機物や微生物が膜表面に付着している場合には苛性ソーダやエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、リン酸系化合物などなどのアルカリ溶液を洗浄剤として使用することでに洗浄が効果的であり、pHを11以上で使用することで洗浄効果を高めることができる。さらに、付着物の剥離や加水分解等による除去効果を上げるためにpHを12以上で使用することで洗浄効果を高めることができる。
殺菌剤とは半透膜表面に付着した微生物による汚染物質の除去に効果があり、特に微生物の種類によっては粘性のある細胞外ポリマーの生成による水量低下を引き起こす場合があるので、微生物が半透膜表面に多く存在する場合には殺菌剤の使用が効果的である。
殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウム、二酸化塩素、クロラミン等の無機ハロゲン系酸化剤、過酸化水素、過マンガン酸カリウム等の酸素系酸化剤、DBNPA(2,2−ジブロモニトリロプロピオンアミド)、イソチアゾリン化合物等の有機化合物酸化剤等を使用することができる。なかでも、安全性や環境への影響等を考慮すると無機ハロゲン系酸化剤や有機化合物酸化剤を好適に使用することができる。
これらの洗浄剤あるいは殺菌剤は、それぞれの薬品を用いて単独に洗浄する方法でも、複数の薬品を交互に用いて洗浄する方法で用いてもよい。
半透膜ユニット9は、1以上の半透膜エレメントを収容した筒状圧力容器を備えており、供給された前処理水の一部が半透膜エレメントに備えられている半透膜を透過することによって、半透膜を透過した水である透過水10と透過しなかった水である濃縮水11とを得ることができる構造である。半透膜ユニット9は、1以上の該筒状圧力容器を備えており、複数の場合には、直列、並列に備えることができる。1以上の筒状圧力容器を並列に設置し、同一の供給水を半透膜処理するものを一つの半透膜ユニットとしたとき、該半透膜ユニットを多段に設置することも可能である。例えば、図1のように2段に半透膜ユニットを設置し、まず半透膜ユニット9aにて前処理水を処理して透過水10aと濃縮水11aとを得て、該濃縮水11aを次の半透膜ユニット9bにてさらに処理して透過水10bと濃縮水11bとを得る濃縮水2段法としてもよい。また、図3のように濃縮水11bをさらにもう一段の半透膜ユニットで処理する濃縮水3段法や、透過水10を供給水としてさらに別の半透膜ユニットで処理する透過水2段法を用いて良い。これらの構成は、原水水質、要求生産水質(透過水質)、水温などの環境条件、造水コストなどを鑑みて、適宜決定することができる。 阻止率向上処理を行う場合には、接触処理前や接触処理を行いながら半透膜表面の膜汚染物質を事前に取り除く事によってより持続性が高い回復効果を得ることができる。膜汚染物質を取り除く方法としては一般的にこれらの膜の洗浄薬品として用いられる薬品を洗浄剤として使用したり、微生物が膜面に付着するバイオファウリングでは殺菌剤の使用も効果的である。
膜表面の汚染物質を除去するための洗浄剤とは膜面に付着している物質を化学的に溶解、分解させる機能や物理的に剥がしやすくする機能を有するものが使用できるが、このとき、半透膜へ影響を与えない、あるいは最小限にする必要がある。
膜表面に付着した鉄やマンガンなどの金属類はクエン酸、シュウ酸、塩酸、硫酸等の酸性溶液を洗浄剤として使用すると洗浄効果があり、pHを3以下で使用することで洗浄効果を高めることができる。
また、有機物や微生物が膜表面に付着している場合には苛性ソーダやエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、リン酸系化合物などなどのアルカリ溶液を洗浄剤として使用することでに洗浄が効果的であり、pHを11以上で使用することで洗浄効果を高めることができる。さらに、付着物の剥離や加水分解等による除去効果を上げるためにpHを12以上で使用することで洗浄効果を高めることができる。
殺菌剤とは半透膜表面に付着した微生物による汚染物質の除去に効果があり、特に微生物の種類によっては粘性のある細胞外ポリマーの生成による水量低下を引き起こす場合があるので、微生物が半透膜表面に多く存在する場合には殺菌剤の使用が効果的である。
殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウム、二酸化塩素、クロラミン等の無機ハロゲン系酸化剤、過酸化水素、過マンガン酸カリウム等の酸素系酸化剤、DBNPA(2,2−ジブロモニトリロプロピオンアミド)、イソチアゾリン化合物等の有機化合物酸化剤等を使用することができる。なかでも、安全性や環境への影響等を考慮すると無機ハロゲン系酸化剤や有機化合物酸化剤を好適に使用することができる。
これらの洗浄剤あるいは殺菌剤は、それぞれの薬品を用いて単独に洗浄する方法でも、複数の薬品を交互に用いて洗浄する方法で用いてもよい。
本発明に用いる阻止率向上剤は、半透膜に付着して半透膜の阻止率を向上させる機能を有する成分であれば特に限定しないが、ビニル系ポリマやポリアルキレングリコール鎖を有する化合物類が代表的である。ビニル系ポリマとしては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−エチレン共重合体、ボリピエルアルコール、酢酸ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、Nビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体などを例示することができる。また、ポリアルキレングリコール鎖としては、例えば、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリトリメチレングリコール鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖などを挙げることができる。これらのグリコール鎖は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフランなどの開環重合により形成することができる。さらに、本発明に適用する阻止率向上剤は、他の溶質を含有することが求められるが、その成分として、半透膜の性能に影響を与える酸化剤や濁質、膜に吸着し、性能低下を生じさせるような界面活性剤などの化合物、有機溶剤や油分等の成分が含まれていないことに留意する必要があるが、とくに限定されるものではない。
本発明のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物として、ポリアルキレングリコール鎖にイオン性基が導入された化合物や非イオン性の官能基が導入された化合物を用いることができる。イオン性基として、例えばスルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、アミノ基、第4級アンモニウム基などを挙げることができる。これらのイオン性基を導入することにより、アニオン性やカチオン性の特性を有する水溶性の高分子化合物が得られる。
非イオン性の官能基としてアルキル基やフェニル基、エステル等が好ましく、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を使用することができる。
本発明におけるポリアルキレングリコール鎖としては、とくに、ポリエチレングリコール鎖であることが好ましい。ポリエチレングリコール鎖を有する化合物は、水溶性が大きいので阻止率向上剤として取り扱いやすく、複合膜表面に対する親和性が高いので、処理後の経時的な性能低下が少ない。
また、本発明に用いる阻止率向上剤は、重量平均分子量が6,000以上100,000以下であり、より好ましくは7,500 〜50,000 である。阻止率向上剤の重量平均分子量が6,000未満であると、半透膜の阻止率が十分に向上せず、処理後の定着性も低くなるおそれがある。重量平均分子量を100,000以内に抑えることで、極端な透過流束低下を抑制すると共に、水への良好な溶解性を維持し、簡便な取り扱いを行うことができる。この効果は、特に阻止率向上剤がポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤であるときに顕著である。なお、重量平均分子量は、阻止率向上剤を有する化合物の水溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析し、得られたクロマトグラムからポリエチレンオキシド標準品の分子量に換算することにより求めることができる。
非イオン性の官能基としてアルキル基やフェニル基、エステル等が好ましく、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を使用することができる。
本発明におけるポリアルキレングリコール鎖としては、とくに、ポリエチレングリコール鎖であることが好ましい。ポリエチレングリコール鎖を有する化合物は、水溶性が大きいので阻止率向上剤として取り扱いやすく、複合膜表面に対する親和性が高いので、処理後の経時的な性能低下が少ない。
また、本発明に用いる阻止率向上剤は、重量平均分子量が6,000以上100,000以下であり、より好ましくは7,500 〜50,000 である。阻止率向上剤の重量平均分子量が6,000未満であると、半透膜の阻止率が十分に向上せず、処理後の定着性も低くなるおそれがある。重量平均分子量を100,000以内に抑えることで、極端な透過流束低下を抑制すると共に、水への良好な溶解性を維持し、簡便な取り扱いを行うことができる。この効果は、特に阻止率向上剤がポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤であるときに顕著である。なお、重量平均分子量は、阻止率向上剤を有する化合物の水溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析し、得られたクロマトグラムからポリエチレンオキシド標準品の分子量に換算することにより求めることができる。
阻止率向上剤の濃度は、その組成や環境条件等から適宜定めれば良いが、10〜1000mg/Lであることが好ましく、10〜500mg/Lであることがより好ましい。阻止率向上剤の濃度が低過ぎる場合には、阻止率回復効果が低くなる恐れがあり、1000mg/Lを超えるほどに高過ぎる濃度では半透膜表面に付着されない状態で過剰に膜面に残り、必要以上の透過流束低下を引き起こす可能性がある。
阻止率向上剤と半透膜との接触方法は特に限定されないが、半透膜ユニットに阻止率向上剤を含有する液体を通水するとこで半透膜メント接触させる方法や、半透膜を阻止率向上剤をが乳する液体に浸漬させて接触させる方法等が挙げられる。
阻止率向上剤の接触方法の具体的な一例を図3を用いて説明する。
まず、各半透膜ユニット9からの透過水10を調整タンク13に貯める。洗浄剤あるいは殺菌剤と阻止率向上剤を同時に接触させる場合には、洗浄剤あるいは殺菌剤タンク14から洗浄剤や殺菌剤を、阻止率向上剤タンク15から阻止率向上剤を調整タンク13に送液し、所定の濃度やpHになるように撹拌して調整、作成する。ここで、透過水10の代わりに原水1や前処理ユニット4によって処理された中間水槽内の前処理水を利用しても良い。これにより、透過水を生産水として活用する場合には、透過水の消費が抑えられるため、回収率が向上することとなる。特に前処理水を利用する場合には、固形分除去された後であるため、半透膜エレメント内の流路閉塞懸念が少なく、好ましい。
前処理水供給ポンプ6および昇圧ポンプ8を停止して被処理水の供給を停止し、半透膜ユニットおよび配管内の原水(前処理水)、透過水および濃縮水を排水する。そして、調整された洗浄剤あるいは殺菌剤と阻止率向上剤の混合液を、調整液供給ポンプ16を用いて半透膜ユニット9への給水ラインを通して、半透膜ユニット9の一次側に供給し、膜透過させることで透過水と濃縮水を得る。透過水と濃縮水を調整タンク13に還流させることで調整液を循環しながら半透膜に接触させ、半透膜の阻止率を向上させる。
前処理水供給ポンプ6および昇圧ポンプ8を停止して被処理水の供給を停止し、半透膜ユニットおよび配管内の原水(前処理水)、透過水および濃縮水を排水する。そして、調整された洗浄剤あるいは殺菌剤と阻止率向上剤の混合液を、調整液供給ポンプ16を用いて半透膜ユニット9への給水ラインを通して、半透膜ユニット9の一次側に供給し、膜透過させることで透過水と濃縮水を得る。透過水と濃縮水を調整タンク13に還流させることで調整液を循環しながら半透膜に接触させ、半透膜の阻止率を向上させる。
阻止率向上剤を含んだ調整液を半透膜に接触処理するときの圧力は特に制限はなく、複合半透膜に被処理水を通水するときの圧力以下(10MPa以下)であることが好ましく、あるいは、薬品洗浄設備で運転される圧力以下(1MPa以下)であることがより好ましい。
調整液を半透膜に接触処理するときには、透過流束が0.01〜2m/日の範囲で行うと半透膜の内部にまで阻止率向上剤が接触できるため処理効果が高まり好ましい。透過流束が0.01m/日以下では処理効果が低く、2m/日以上では過剰な運転圧力により半透膜がダメージを受けてしまう可能性がある。
なお、透過流束とは単位時間および単位面積あたり半透膜を透過した水量のことであり、既知面積の半透膜を透過する水の量を電磁流量計やフロート式流量計などの流量計や、電子天秤などの重量測定器にて測定し、下記式により計算される。
調整液を半透膜に接触処理するときには、透過流束が0.01〜2m/日の範囲で行うと半透膜の内部にまで阻止率向上剤が接触できるため処理効果が高まり好ましい。透過流束が0.01m/日以下では処理効果が低く、2m/日以上では過剰な運転圧力により半透膜がダメージを受けてしまう可能性がある。
なお、透過流束とは単位時間および単位面積あたり半透膜を透過した水量のことであり、既知面積の半透膜を透過する水の量を電磁流量計やフロート式流量計などの流量計や、電子天秤などの重量測定器にて測定し、下記式により計算される。
透過流束 = 透過水量 / (膜面積 × 採取時間)
また、阻止率向上剤を含んだ調整液を通水する時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.25〜3時間であることがより好ましい。通水時間が短すぎると反応が不十分となる懸念があり、ある一定の時間通水すると反応がそれ以上進まなくなるので、長く通水するのも効率が悪くなる。
阻止率向上剤を含む調整液を通水する際に半透膜ユニットから透過される透過水の流量を測定することで、阻止率向上処理の経時変化を確認することができる。処理中の温度や圧力、濃度が一定であれば透過水量の変化で処理効果を判断する目安となるため、過剰な接触処理による透過水量の低下を防止する上で有効である。さらに、処理効果の確認には透過水量一定条件での処理では運転圧力の変化を確認しても良く、阻止率向上剤を含む調整駅内に指標物質を添加し、透過水中の指標物質の濃度変化を測定することで処理効果を判断することも可能である。
さらに、洗浄剤あるいは殺菌剤での処理を行ってから阻止率向上剤との処理を行うことで阻止率向上効果を高めることも可能である。この場合には、まず、各半透膜ユニット9からの透過水10を調整タンク13に貯める。その後、洗浄剤あるいは殺菌剤タンク14から洗浄剤や殺菌剤を調整タンク13に送液し、所定の濃度やpHになるように撹拌して調整、作成する。前処理水供給ポンプ6および昇圧ポンプ8を停止して被処理水の供給を停止し、半透膜ユニットおよび配管内の原水(前処理水)、透過水および濃縮水を排水する。そして、調整された洗浄剤あるいは殺菌剤を含んだ調整液を、調整液供給ポンプ16を用いて半透膜ユニット9への給水ラインを通して、半透膜ユニット9の一次側に供給し、膜透過させることで透過水と濃縮水を得る。
また、阻止率向上剤を含んだ調整液を通水する時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.25〜3時間であることがより好ましい。通水時間が短すぎると反応が不十分となる懸念があり、ある一定の時間通水すると反応がそれ以上進まなくなるので、長く通水するのも効率が悪くなる。
阻止率向上剤を含む調整液を通水する際に半透膜ユニットから透過される透過水の流量を測定することで、阻止率向上処理の経時変化を確認することができる。処理中の温度や圧力、濃度が一定であれば透過水量の変化で処理効果を判断する目安となるため、過剰な接触処理による透過水量の低下を防止する上で有効である。さらに、処理効果の確認には透過水量一定条件での処理では運転圧力の変化を確認しても良く、阻止率向上剤を含む調整駅内に指標物質を添加し、透過水中の指標物質の濃度変化を測定することで処理効果を判断することも可能である。
さらに、洗浄剤あるいは殺菌剤での処理を行ってから阻止率向上剤との処理を行うことで阻止率向上効果を高めることも可能である。この場合には、まず、各半透膜ユニット9からの透過水10を調整タンク13に貯める。その後、洗浄剤あるいは殺菌剤タンク14から洗浄剤や殺菌剤を調整タンク13に送液し、所定の濃度やpHになるように撹拌して調整、作成する。前処理水供給ポンプ6および昇圧ポンプ8を停止して被処理水の供給を停止し、半透膜ユニットおよび配管内の原水(前処理水)、透過水および濃縮水を排水する。そして、調整された洗浄剤あるいは殺菌剤を含んだ調整液を、調整液供給ポンプ16を用いて半透膜ユニット9への給水ラインを通して、半透膜ユニット9の一次側に供給し、膜透過させることで透過水と濃縮水を得る。
洗浄、殺菌処理時間は0.1〜24時間が好ましい。処理時間が短すぎると付着物の除去効果が低くなり、処理時間が長すぎると効率が悪くなると共に膜への影響が大きくなる。洗浄、殺菌する場合、調整液を常時循環で接触させても良く、循環と浸漬を繰り返すことも処理効果を高めることもできる。
洗浄、殺菌処理終了後、半透膜ユニット、調整タンクおよび配管内の液を排水し、その後、再度透過水10を調整タンク13に貯め、阻止率向上剤タンク15から阻止率向上剤を調整タンク13に送液し、所定の濃度になるように撹拌して調整、作成する。調整液供給ポンプ16を用いて半透膜ユニット9への給水ラインを通して、半透膜ユニット9の一次側に供給し、膜透過させることで透過水と濃縮水を得る。透過水と濃縮水を調整タンク13に還流させることで調整液を循環しながら半透膜に接触させ、半透膜の阻止率を向上させる。処理するときの圧力や透過流束、処理時間は洗浄剤あるいは殺菌剤との混合液を接触させるときと同様の条件で実施することができる。
本発明の阻止率向上方法では、半透膜の初期の純水透過係数Aに対して、洗浄剤あるいは殺菌剤を接触させた後の純水透過係数A1との比A1/Aが0.8倍〜2.0倍の範囲内に有り、さらに、阻止率向上剤と接触させた後の純水透過係数A2と初期の純水透過係数Aとの比A2/Aが0.6倍〜1.9倍の範囲内にすることが好ましい。さらに好ましくはA1/Aが1.0倍〜1.8倍の範囲内であり、A2/Aが0.8倍〜1.7倍の範囲内である。A1/Aが大きすぎると半透膜自体の性能低下が大きすぎるため、阻止率向上処理の効果が得られ難くなり、A1/Aが小さすぎると膜面付着物の影響によりこの場合も阻止率向上効果が小さくなってしまう。さらにA2/Aが大きすぎる場合にはプラント全体の水量が出すぎるため、運転圧力低下による透過水質悪化が大きく、A2/Aが小さすぎる場合には阻止率向上処理による水量低下が大きく、運転圧力増大による運転コストの増加につながってしまう。
ここで、純水透過係数は、下記の方法によって求めることができる。
ここで、純水透過係数は、下記の方法によって求めることができる。
Jv=A(ΔP−π(Cm)) ・・・(1)
Js=B(Cm−Cp) ・・・(2)
(Cm−Cp)/(Cf−Cp)=exp(Jv/k) ・・・(3)
Cp=Js/Jv ・・・(4)
A=α×A25×μ25/μ ・・・(5)
B=β×B25×μ25/μ×(273.15+T)/(298.15) ・・・(6)
Cf :供給水濃度 [mg/l]
Cm :膜面濃度 [mg/l]
Cp :透過水濃度 [mg/l]
Js :溶質透過流束 [kg/m2/s]
Jv :純水透過流束 [m3/m2/s]
k :物質移動係数 [m/s]
A :純水透過係数 [m3/m2/Pa/s]
A25 :25℃での純水透過係数 [m3/m2/Pa/s」
B :溶質透過係数 [m/s]
B25 :25℃での溶質透過係数 [m3/m2/Pa/s]
T :温度 [℃]
α :運転条件による変動係数 [−]
β :運転条件による変動係数 [−]
ΔP :運転圧力 [Pa]
μ :粘度 [Pa・s]
μ25 :25℃での粘度 [Pa・s]
π :浸透圧 [Pa]
すなわち、Jv、Cf、Cp、Tを実測し、k、その他の物性値を(1)〜(4)に代入することによって実測条件での純水透過係数Aと溶質透過係数Bを求めることができる。さらに、予め得られているα、βに基づけば、25℃における純水透過係数A25と溶質透過係数B25を、(5)〜(6)から求めることができ、さらには、(5)〜(6)を用いて任意の温度Tの純水透過係数と溶質透過係数も得ることができる。また、半透膜エレメントの性能を算出する場合は、半透膜エレメントの長さ方向に物質収支を計算しながら数値積分することによって求めることができる。この計算方法の詳細は、非特許文献(M.Taniguchiら、Behavior of a reverse osmosis plant adopting a brine conversion、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス、183、p249−257(2000))に示されている。
Js=B(Cm−Cp) ・・・(2)
(Cm−Cp)/(Cf−Cp)=exp(Jv/k) ・・・(3)
Cp=Js/Jv ・・・(4)
A=α×A25×μ25/μ ・・・(5)
B=β×B25×μ25/μ×(273.15+T)/(298.15) ・・・(6)
Cf :供給水濃度 [mg/l]
Cm :膜面濃度 [mg/l]
Cp :透過水濃度 [mg/l]
Js :溶質透過流束 [kg/m2/s]
Jv :純水透過流束 [m3/m2/s]
k :物質移動係数 [m/s]
A :純水透過係数 [m3/m2/Pa/s]
A25 :25℃での純水透過係数 [m3/m2/Pa/s」
B :溶質透過係数 [m/s]
B25 :25℃での溶質透過係数 [m3/m2/Pa/s]
T :温度 [℃]
α :運転条件による変動係数 [−]
β :運転条件による変動係数 [−]
ΔP :運転圧力 [Pa]
μ :粘度 [Pa・s]
μ25 :25℃での粘度 [Pa・s]
π :浸透圧 [Pa]
すなわち、Jv、Cf、Cp、Tを実測し、k、その他の物性値を(1)〜(4)に代入することによって実測条件での純水透過係数Aと溶質透過係数Bを求めることができる。さらに、予め得られているα、βに基づけば、25℃における純水透過係数A25と溶質透過係数B25を、(5)〜(6)から求めることができ、さらには、(5)〜(6)を用いて任意の温度Tの純水透過係数と溶質透過係数も得ることができる。また、半透膜エレメントの性能を算出する場合は、半透膜エレメントの長さ方向に物質収支を計算しながら数値積分することによって求めることができる。この計算方法の詳細は、非特許文献(M.Taniguchiら、Behavior of a reverse osmosis plant adopting a brine conversion、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス、183、p249−257(2000))に示されている。
阻止率向上剤による接触処理は半透膜の1次側および/または2次側から接触させることで効果を高めることができる。2次側から接触させる方法として図4を用いて説明する。半透膜ユニット9からの透過水ライン10を調整タンク13と接続する際に、調整タンク13下部にラインを接続して、透過水を貯める構成にする。このとき調整タンク13を半透膜ユニットの高さから2m以上5m以下の高さに設置することで、半透膜ユニット9内への調整タンク内の液の流入が可能となる。つまり、1次側からの阻止率向上剤の接触時には調整タンク内で作成した阻止率向上剤含有液が調整液供給ポンプ16による半透膜ユニット9に送液され、透過水と濃縮水が調整タンク13に戻ることで循環処理するが、このとき調整供給ポンプ16の運転を停止することで、調整タンク13内の液が2次側から半透膜ユニット9に流入し2次側からの阻止率向上処理が可能となる。
阻止率向上剤との接触処理中の調整液供給ポンプ16の停止は数回繰り返すことで阻止率向上効果を高めることができる。
また、図5のように、半透膜を有する半透膜ユニットが複数段並列に配置され、かつ、段階的に配置された構成の場合、格段の半透膜ユニットの透過水質を確認し、水質の悪い段の半透膜ユニットを選択的に阻止率向上処理することもできる。
例えば第1段の半透膜ユニット9a1〜9a3のみ阻止率向上処理をする場合、バルブV1、V3、V6、Va1〜Va4を開け、バルブV2、V4、V5、V7、Vb3、Vc2を閉めることで選択的な通水が可能となる。
さらに、第2段の半透膜ユニット9b1、9b2のみ阻止率向上処理をする場合、バルブV2、V3、V4、V5、V7、Vb1〜Vb3を開け、バルブV1、V6、V8、Va1〜Va4、Vc1、Vc2を閉めることで第2段のみへの選択的な通水が可能となる。
本発明の半透膜の素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができる。またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有する複合半透膜を用いることができる。
この中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れた性能を有する、ポリアミドを分離機能層とした複合逆浸透膜、あるいはナノ濾過膜が好ましい。特に、海水を原水とするような場合には、複合半透膜に浸透圧以上の圧力をかける必要があり、実質的には少なくとも5MPaの操作圧力が負荷されることが多い。この圧力に対して、高い透水性と阻止性能を維持するためにはポリアミドを分離機能層とし、それを微多孔性膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適している。また、ポリアミド半透膜としては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの分離機能層を有してなる複合半透膜が適している。
本発明では半透膜を実際に使用するために形態化した半透膜エレメントとして使用することができる。半透膜の膜形態が平膜の場合は、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで使用することができるが、スパイラル形状を用いる場合、供給水の流路材、透過水の流路材などの部材が当該モジュールに組み込まれており、特に、高濃度用、高圧用に設計された複合半透膜エレメントとして好ましく用いられる。
この中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れた性能を有する、ポリアミドを分離機能層とした複合逆浸透膜、あるいはナノ濾過膜が好ましい。特に、海水を原水とするような場合には、複合半透膜に浸透圧以上の圧力をかける必要があり、実質的には少なくとも5MPaの操作圧力が負荷されることが多い。この圧力に対して、高い透水性と阻止性能を維持するためにはポリアミドを分離機能層とし、それを微多孔性膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適している。また、ポリアミド半透膜としては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの分離機能層を有してなる複合半透膜が適している。
本発明では半透膜を実際に使用するために形態化した半透膜エレメントとして使用することができる。半透膜の膜形態が平膜の場合は、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで使用することができるが、スパイラル形状を用いる場合、供給水の流路材、透過水の流路材などの部材が当該モジュールに組み込まれており、特に、高濃度用、高圧用に設計された複合半透膜エレメントとして好ましく用いられる。
また、本発明の阻止率向上方法は、同じ水処理設備で同じ半透膜に対して、繰り返し効果のある阻止率の改善を実施できることから、定期的に本発明の処理方法を実施することで、長期間、一定の除去率を維持することができる。特に、膜の荷電による排除効果がある無機電解質よりも非荷電物質除去率の改善効果が大きい。非荷電物質としては、例えば非電解質有機物質や中性領域では乖離していない物質(例えばホウ素やシリカ)などが挙げられる。これらは、海水や地下水に多く含まれることから、これらの原水を処理する造水プラントに本発明の方法を適用することでより安定な運転を継続することが可能となる。
さらに、本発明の阻止率向上処理によって、半透膜からの溶媒と溶質の両方の透過を抑制することができるため、特に半透膜が劣化して透過流束が増加している場合には、阻止率の回復だけでなく、透過流束の低下により設計値通りの造水量を維持するための過度な運転圧力低下による透過水の水質悪化を防止することができる。
以上のような阻止性能向上方法によって処理した半透膜を使用した水処理方法は、透過水質の悪化を防止し、長期間良好な透過水質が得られ、ひいては、半透膜の寿命を延ばし、造水コスト低減に大きく貢献することができる。
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
製造された時の初期性能として32,000mg/L−NaCl、25℃、pH7の水溶液を5.5MPa、回収率15%で循環加圧運転したときのNaCl除去率が99.8%、造水量が30m3/日、ホウ素除去率が91%である芳香族逆浸透膜エレメントを準備した。このときの純水透過係数Aは3.6×10−9kg/m2/Pa/sであった。
この逆浸透膜エレメントを、実際のプラントで半年間運転させたところ、NaCl除去率が99.0%、造水量が28m3/日、ホウ素除去率が85%に低下した。このときの純水透過係数A’は3.3×10−9kg/m2/Pa/sであった。
この性能低下した逆浸透膜エレメントに対し、苛性ソーダでpH12に調整したアルカリ洗浄剤を3時間循環し洗浄処理を行った。この時の性能は初期性能測定時と同様の条件でNaCl除去率が98.6%、造水量が32m3/日、ホウ素除去率が84%であり、純水透過係数A1は3.8×10−9kg/m2/Pa/sであった。
製造された時の初期性能として32,000mg/L−NaCl、25℃、pH7の水溶液を5.5MPa、回収率15%で循環加圧運転したときのNaCl除去率が99.8%、造水量が30m3/日、ホウ素除去率が91%である芳香族逆浸透膜エレメントを準備した。このときの純水透過係数Aは3.6×10−9kg/m2/Pa/sであった。
この逆浸透膜エレメントを、実際のプラントで半年間運転させたところ、NaCl除去率が99.0%、造水量が28m3/日、ホウ素除去率が85%に低下した。このときの純水透過係数A’は3.3×10−9kg/m2/Pa/sであった。
この性能低下した逆浸透膜エレメントに対し、苛性ソーダでpH12に調整したアルカリ洗浄剤を3時間循環し洗浄処理を行った。この時の性能は初期性能測定時と同様の条件でNaCl除去率が98.6%、造水量が32m3/日、ホウ素除去率が84%であり、純水透過係数A1は3.8×10−9kg/m2/Pa/sであった。
この洗浄処理後の逆浸透膜エレメントを、重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールの15mg/L水溶液を使用して、1時間、0.45MPaでの加圧循環により阻止率向上処理を行った。このときの処理時の透過流束は0.3m/日であった。この阻止率向上処理させた後の逆浸透膜エレメントについて、同様の性能測定を行ったところ、NaCl除去率が99.3%、造水量が23m3/日、ホウ素除去率が91%となり、純水透過係数A2は2.7×10−9kg/m2/Pa/sであった。このとき、A1/Aは1.06であり、A2/Aは0.82であった。
[実施例2]
実施例1と同様に半年間運転したエレメントを使用して、苛性ソーダでpH10に調整したアルカリ洗浄剤を3時間循環し洗浄処理を行った。この時の性能はNaCl除去率が98.9%、造水量が29m3/日、ホウ素除去率が85%であり、純水透過係数A1は3.4×10−9kg/m2/Pa/sであった。
[実施例2]
実施例1と同様に半年間運転したエレメントを使用して、苛性ソーダでpH10に調整したアルカリ洗浄剤を3時間循環し洗浄処理を行った。この時の性能はNaCl除去率が98.9%、造水量が29m3/日、ホウ素除去率が85%であり、純水透過係数A1は3.4×10−9kg/m2/Pa/sであった。
この洗浄処理後の逆浸透膜エレメントを、実施例1と同様の条件で阻止率向上処理させたところ、NaCl除去率が99.4%、造水量が20m3/日、ホウ素除去率が91%となり、純水透過係数A2は2.4×10−9kg/m2/Pa/sであった。このとき、A1/Aは0.94であり、A2/Aは0.67であろ水量低下は大きいものの阻止率向上効果は十分認められた。
[比較例1]実施例1と同様に半年間運転したエレメントを使用して、洗浄処理および殺菌処理をせずに実施例1と同様の条件で阻止率向上処理を行った。このとき、NaCl除去率は99.2%、造水量が25m3/日、ホウ素除去率が87%であり十分な阻止率向上効果を発揮することはできなかった。
[実施例3]
実施例1と同様に半年間運転したエレメントを使用して、DBNPAを100mg/Lに調整した殺菌剤溶液を3時間循環し洗浄処理を行った。この時の性能はNaCl除去率が98.8%、造水量が30m3/日、ホウ素除去率が85%であり、純水透過係数A1は3.6×10−9kg/m2/Pa/sであった。
[比較例1]実施例1と同様に半年間運転したエレメントを使用して、洗浄処理および殺菌処理をせずに実施例1と同様の条件で阻止率向上処理を行った。このとき、NaCl除去率は99.2%、造水量が25m3/日、ホウ素除去率が87%であり十分な阻止率向上効果を発揮することはできなかった。
[実施例3]
実施例1と同様に半年間運転したエレメントを使用して、DBNPAを100mg/Lに調整した殺菌剤溶液を3時間循環し洗浄処理を行った。この時の性能はNaCl除去率が98.8%、造水量が30m3/日、ホウ素除去率が85%であり、純水透過係数A1は3.6×10−9kg/m2/Pa/sであった。
この洗浄処理後の逆浸透膜エレメントを、実施例1と同様の条件で阻止率向上処理させたところ、NaCl除去率が99.3%、造水量が22m3/日、ホウ素除去率が90%となり、純水透過係数A2は2.6×10−9kg/m2/Pa/sであった。このとき、A1/Aは1.00であり、A2/Aは0.79であった。
[実施例4]
実施例1と同様に半年間運転したエレメントを、重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールの15mg/L水溶液を苛性ソーダでpHを12に調整した水溶液を使用して、1時間、0.45MPaでの加圧循環により阻止率向上処理を行った。このときの処理時の透過流束は0.3m/日であった。この阻止率向上処理させた後の逆浸透膜エレメントについて、同様の性能測定を行ったところ、NaCl除去率が99.2%、造水量が22m3/日、ホウ素除去率が90%となった。
[実施例5]
実施例1と同様の条件で洗浄処理を行った逆浸透膜エレメントを、調整タンクを半透膜ユニットの高さから2mの高さに設置して、実施例1と同様の条件で阻止率向上処理させた。このとき、30分に1回循環を停止して、調整タンク内の水溶液が半透膜ユニットの2次側から流入するようにした。このときのNaCl除去率は99.4%、造水量が22m3/日、ホウ素除去率が91%となり、純水透過係数A2は2.6×10−9kg/m2/Pa/sであった。このとき、A1/Aは1.06であり、A2/Aは0.79であった。
[実施例5]
初期性能が実施例1と同じ逆浸透膜エレメントを図5に示す配置になるように設置し、1つの半透膜ユニットには1本の逆浸透膜エレメントを用いた。原水としてUF膜による前処理を施した海水を用い、温度25℃、供給流量200m3/日、トータル回収率30%の条件で半年間運転を行った。このときの装置全体のTDS除去率は99.3%、ホウ素除去率が89%であったのに対し、第1段からの透過水のTDS除去率は98.7%、ホウ素除去率は86%と除去性能が高いはずの第1段の除去率の悪化が大きくなっていた。このため、第1段のみ通水可能なラインに切り替え、実施例1と同じ条件で第1段の洗浄処理と阻止率向上処理を実施した。実施後の装置全体のTDS除去率は99.4%、ホウ素除去率が90%で、第1段からの透過水のTDS除去率は99.2%、ホウ素除去率は89%に向上していた。
[実施例4]
実施例1と同様に半年間運転したエレメントを、重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールの15mg/L水溶液を苛性ソーダでpHを12に調整した水溶液を使用して、1時間、0.45MPaでの加圧循環により阻止率向上処理を行った。このときの処理時の透過流束は0.3m/日であった。この阻止率向上処理させた後の逆浸透膜エレメントについて、同様の性能測定を行ったところ、NaCl除去率が99.2%、造水量が22m3/日、ホウ素除去率が90%となった。
[実施例5]
実施例1と同様の条件で洗浄処理を行った逆浸透膜エレメントを、調整タンクを半透膜ユニットの高さから2mの高さに設置して、実施例1と同様の条件で阻止率向上処理させた。このとき、30分に1回循環を停止して、調整タンク内の水溶液が半透膜ユニットの2次側から流入するようにした。このときのNaCl除去率は99.4%、造水量が22m3/日、ホウ素除去率が91%となり、純水透過係数A2は2.6×10−9kg/m2/Pa/sであった。このとき、A1/Aは1.06であり、A2/Aは0.79であった。
[実施例5]
初期性能が実施例1と同じ逆浸透膜エレメントを図5に示す配置になるように設置し、1つの半透膜ユニットには1本の逆浸透膜エレメントを用いた。原水としてUF膜による前処理を施した海水を用い、温度25℃、供給流量200m3/日、トータル回収率30%の条件で半年間運転を行った。このときの装置全体のTDS除去率は99.3%、ホウ素除去率が89%であったのに対し、第1段からの透過水のTDS除去率は98.7%、ホウ素除去率は86%と除去性能が高いはずの第1段の除去率の悪化が大きくなっていた。このため、第1段のみ通水可能なラインに切り替え、実施例1と同じ条件で第1段の洗浄処理と阻止率向上処理を実施した。実施後の装置全体のTDS除去率は99.4%、ホウ素除去率が90%で、第1段からの透過水のTDS除去率は99.2%、ホウ素除去率は89%に向上していた。
実施例、比較例の結果を表1、表2に示す。
本発明の阻止率向上方法は、使用により性能が低下した複合半透膜に対して、膜を使用している場所で簡便かつ安全にその性能を回復させることができる。そして、本発明では、非電解質有機物質やシリカやホウ素などの中性領域では乖離していない低分子量物質などの阻止率向上に特に効果があり、複合半透膜を長期にわたって繰り返し使用する場合に有用である。
1:原水
2:原水槽
3:原水供給ポンプ
4:前処理ユニット
5:中間水槽
6:前処理水供給ポンプ
7:保安フィルター
8:昇圧ポンプ
9:半透膜ユニット
10:透過水
11:濃縮水
12:透過水貯留タンク
13:調整タンク
14:洗浄剤または殺菌剤タンク
15:阻止率向上剤タンク
16:調整液供給ポンプ
V1、V2・・・、Va1、Vb1・・・:バルブ
2:原水槽
3:原水供給ポンプ
4:前処理ユニット
5:中間水槽
6:前処理水供給ポンプ
7:保安フィルター
8:昇圧ポンプ
9:半透膜ユニット
10:透過水
11:濃縮水
12:透過水貯留タンク
13:調整タンク
14:洗浄剤または殺菌剤タンク
15:阻止率向上剤タンク
16:調整液供給ポンプ
V1、V2・・・、Va1、Vb1・・・:バルブ
Claims (15)
- 阻止率向上剤を含有する液体と半透膜を接触させる阻止率向上方法において、洗浄剤あるいは殺菌剤と阻止率向上剤を同時に接触させる、または、連続して接触させることを特徴とする半透膜の阻止率向上方法。
- 洗浄剤がpH3以下またはpH11以上の水溶液である請求項1に記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 洗浄剤がpH12以上のアルカリ水溶液である請求項1または2に記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 殺菌剤がハロゲン含有化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 半透膜を洗浄剤あるいは殺菌剤と接触させた後に阻止率向上剤と接触させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 阻止率向上剤を含有する液体を半透膜に接触させることにより半透膜の阻止性能を向上させる方法において、半透膜の初期の純水透過係数Aに対して、洗浄剤あるいは殺菌剤を接触させた後の純水透過係数A1との比A1/Aが0.8倍〜2.0倍の範囲内に有り、さらに、阻止率向上剤と接触させた後の純水透過係数A2と初期の純水透過係数Aとの比A2/Aが0.6倍〜1.9倍の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- A1/Aが1.0倍から1.8倍の範囲内に有り、A2/Aが0.8〜1.7倍の範囲内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 阻止率向上剤を含有する液体を半透膜の1次側および/または2次側から接触させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 半透膜を有する半透膜ユニットが段階的に配置され、被処理液が各ユニットに直接供給できる構成において、特定のユニットにのみ阻止率向上剤を含有する液体を供給して阻止率を向上させる請求項1〜8のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 前記阻止率向上剤の重量平均分子量が、6,000以上100,000以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 前記阻止率向上剤が、ポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 前記ポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤が、ポリエチレングリコールを主成分とする阻止率向上剤であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 前記半透膜が、複合半透膜であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 前記半透膜が、ポリアミドを主成分とする半透膜であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の半透膜の阻止率向上方法。
- 請求項1〜14のいずれかに記載の阻止率向上方法によって阻止率を向上させた複合半透膜を使用して水処理を行うことを特徴とする水処理方法。
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CN114673136A (zh) * | 2022-03-31 | 2022-06-28 | 中国科学院西北生态环境资源研究院 | 渗透式吸水桩 |
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WO2023276781A1 (ja) * | 2021-06-30 | 2023-01-05 | 三菱重工業株式会社 | 逆浸透膜の脱塩性能回復方法及び逆浸透膜の脱塩性能回復装置 |
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2015
- 2015-01-09 JP JP2015002858A patent/JP2016128142A/ja active Pending
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