JP2015016448A - 複合半透膜の阻止率向上方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ナノろ過膜や逆浸透膜などの複合半透膜に対し、複合半透膜の阻止率、特に非イオン性物質の阻止率を向上させることができる阻止率向上方法、ならびにこの阻止率向上方法によって処理された複合半透膜を用いる水処理方法を提供する。【解決手段】重量平均分子量6,000以上100,000以下のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を複合半透膜の膜面に接触させる処理を行い、処理後の透過流束を5〜30%低下させることで複合半透膜の阻止率の向上を図る。【選択図】 なし
Description
本発明は、複合半透膜の阻止率向上方法に関する。さらに詳しくは、複合半透膜の阻止率、特に非イオン性物質の阻止率を向上させることができる阻止率向上方法、ならびにこの阻止率向上方法によって処理された複合半透膜を用いる水処理方法に関する。
ナノろ過膜や逆浸透膜などの複合半透膜は、無機電解質や中性分子を効率的に除去出来るため、海水およびかん水の脱塩、医療用・工業用の純水、超純水の製造、廃水処理、食品工業など幅広い分野に利用されている。しかし、近年、求められる要求水質が高くなってきていることから、複合半透膜の阻止率の向上が求められている。
しかし、これらの複合半透膜は、被処理水中に存在する物質による悪影響を受ける。例えば、酸化性物質による酸化劣化や強いアルカリ性液体によるアルカリ加水分解を受け、長期継続的に、もしくは突発的に膜劣化が引き起こされ、必要とされる処理水質が得られなくなる。膜の劣化原因が酸化劣化やアルカリ加水分解の場合には、アニオン荷電を有する複合半透膜においては、アニオン荷電による荷電排除効果により除去可能な無機電解質の除去よりも、中性分子の除去への悪影響が大きく、特に中性分子の除去率が悪くなり、例えば、中性領域で解離していないシリカやホウ素などの水質悪化が著しくなる。そのため、この様な膜劣化が起きた場合には膜を交換する必要がある。
このために、複合半透膜の阻止率向上方法の開発が進められており、例えば、重量平均分子量2,000〜6,000のポリエチレングリコールを逆浸透膜に接触させて阻止率、特に非イオン性溶質に対する阻止率を向上させることができる阻止率向上剤、および阻止率向上方法が提案されている。(特許文献1)
また、半透膜の塩排除率を向上させるための半透膜処理剤として、測鎖として、アセトキシ基および末端カルボキシル基を有する有機基を有するビニル系ポリマーを主要成分として含有する半透膜処理剤が提案されている。(特許文献2)
また、逆浸透膜のバイオファウリングを抑制するために、原水のpHを9.5以上とし、さらに、ポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤を添加することで高水質の処理水を得る水処理装置、および水処理方法が提案されている。(特許文献3)
また、透過流束が増加したアニオン荷電を有する逆浸透膜に対し、ノニオン系界面活性剤を膜面に接触させることにより、透過流束を使用開始時の+20%〜−20%の範囲に低下させる性能回復方法が提案されている。(特許文献4)
また、除去率が低下した逆浸透膜に対し、酸化還元電位が300mV以上であるヨウ素及び/またはヨウ素化合物を接触させる性能回復方法が提案されている。(特許文献5)
また、逆浸透膜の排除率を向上させる方法として、逆浸透膜を燐酸、亜燐酸、硫酸等の強鉱酸水溶液と接触させて昇温した後、加水分解性タンニン酸などの排除率向上剤に接触させる方法が提案されている。(特許文献6)
しかし、これらの処理方法や処理剤には向上可能な阻止率が小さい、透過流束の低下が著しい、阻止率向上状態の持続性は不十分であるなどの問題があった。
また、半透膜の塩排除率を向上させるための半透膜処理剤として、測鎖として、アセトキシ基および末端カルボキシル基を有する有機基を有するビニル系ポリマーを主要成分として含有する半透膜処理剤が提案されている。(特許文献2)
また、逆浸透膜のバイオファウリングを抑制するために、原水のpHを9.5以上とし、さらに、ポリアルキレングリコール鎖を有する阻止率向上剤を添加することで高水質の処理水を得る水処理装置、および水処理方法が提案されている。(特許文献3)
また、透過流束が増加したアニオン荷電を有する逆浸透膜に対し、ノニオン系界面活性剤を膜面に接触させることにより、透過流束を使用開始時の+20%〜−20%の範囲に低下させる性能回復方法が提案されている。(特許文献4)
また、除去率が低下した逆浸透膜に対し、酸化還元電位が300mV以上であるヨウ素及び/またはヨウ素化合物を接触させる性能回復方法が提案されている。(特許文献5)
また、逆浸透膜の排除率を向上させる方法として、逆浸透膜を燐酸、亜燐酸、硫酸等の強鉱酸水溶液と接触させて昇温した後、加水分解性タンニン酸などの排除率向上剤に接触させる方法が提案されている。(特許文献6)
しかし、これらの処理方法や処理剤には向上可能な阻止率が小さい、透過流束の低下が著しい、阻止率向上状態の持続性は不十分であるなどの問題があった。
本発明は、ナノろ過膜や逆浸透膜などの複合半透膜に対し、複合半透膜の阻止率、特に非イオン性物質の阻止率を向上させることができる阻止率向上方法、ならびにこの阻止率向上方法によって処理された複合半透膜を用いる水処理方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するための本発明は、以下の構成からなる。
(1)重量平均分子量6,000以上100,000以下のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を複合半透膜の膜面に接触させる処理を行い、処理後の透過流束が10〜30%低下することを特徴とする複合半透膜の阻止率向上方法。
(2)ポリアルキレングリコール鎖がポリエチレングリコール鎖である(1)に記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
(3)複合半透膜がナノ濾過膜、あるいは逆浸透膜であることを特徴とする(1)、(2)のいずれかに記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
(4)複合半透膜をスパイラル状に巻回されたエレメントに対し、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物との接触処理を行うことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
(5)複合半透膜にポリアルキレングリコール鎖を有する化合物で処理するときの透過流束が0.01〜2.0m/日の間にあることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
(6)複合半透膜にポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を処理する前に、pHが3以下および/または10以上の水溶液と接触させることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
(7)(1)〜(6)に記載の阻止率向上方法によって阻止率を向上させた複合半透膜を使用して水処理を行うことを特徴とする水処理方法。
本発明の阻止率向上方法によれば、水処理設備において運転開始後の複合半透膜が除去率の低下によって透過水水質が悪化した場合に複合半透膜の除去率を改善させ、無機電解質や中性分子などの除去対象物質の水質を改善させることができる。
本発明に用いる化合物が有するポリアルキレングリコール鎖としては、例えば、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリトリメチレングリコール鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖などを挙げることができる。これらのグリコール鎖は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフランなどの開環重合により形成することができる。
本発明のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物として、ポリアルキレングリコール鎖にイオン性基が導入された化合物を用いることができる。イオン性基として、例えばスルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、アミノ基、第4級アンモニウム基などを挙げることができる。これらのイオン性基を導入することにより、アニオン性やカチオン性の特性を有する水溶性の高分子化合物が得られる。
本発明に用いるポリアルキレングリコール鎖を有する化合物は、重量平均分子量が6,000以上100,000以下であり、より好ましくは7,500 〜 50,000 である。ポリアルキレングリコール鎖の重量平均分子量が6,000未満であると、複合半透膜の阻止率が十分に向上せず、処理後の定着性も低くなるおそれがある。重量平均分子量が100,000以内に抑えることで、極端な透過流束低下を抑制すると共に、水への良好な溶解性を維持し、簡便な取り扱いを行うことができる。重量平均分子量は、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の水溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析し、得られたクロマトグラムからポリエチレンオキシド標準品の分子量に換算することにより求めることができる。
ここでポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を溶解させる水溶液中には複合半透膜の性能に影響を与える酸化剤や濁質、カチオン系化合物、有機溶剤や油分等の成分が含まれていなければ問題無く、どのような水溶液も使用できる。
ここで、透過流束とは単位時間および単位面積あたり複合半透膜を透過した水量のことであり、既知面積の複合半透膜を透過する水の量を電磁流量計やフロート式流量計などの流量計や、電子天秤などの重量測定器にて測定し、下記式により計算される。
透過流束 = 透過水量 / (膜面積 × 採取時間)
本発明においては、ポリアルキレングリコール鎖がポリエチレングリコール鎖であることが好ましい。ポリエチレングリコール鎖を有する化合物は、水溶性が大きいので阻止率向上剤として取り扱いやすく、複合膜表面に対する親和性が高いので、処理後の経時的な性能低下が少ない。
本発明においては、ポリアルキレングリコール鎖がポリエチレングリコール鎖であることが好ましい。ポリエチレングリコール鎖を有する化合物は、水溶性が大きいので阻止率向上剤として取り扱いやすく、複合膜表面に対する親和性が高いので、処理後の経時的な性能低下が少ない。
本発明の複合半透膜の素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができる。またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有する複合半透膜を用いることができる。
この中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れた性能を有する、ポリアミドを分離機能層とした複合逆浸透膜、あるいはナノ濾過膜が好ましい。特に、海水を原水とするような場合には、複合半透膜に浸透圧以上の圧力をかける必要があり、実質的には少なくとも5MPaの操作圧力が負荷されることが多い。この圧力に対して、高い透水性と阻止性能を維持するためにはポリアミドを分離機能層とし、それを微多孔性膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適している。また、ポリアミド半透膜としては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの分離機能層を有してなる複合半透膜が適している。
本発明では複合半透膜を実際に使用するために形態化した複合半透膜エレメントとして使用することができる。複合半透膜の膜形態が平膜の場合は、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで使用することができるが、スパイラル形状を用いる場合、供給水の流路材、透過水の流路材などの部材が当該モジュールに組み込まれており、特に、高濃度用、高圧用に設計された複合半透膜エレメントとして好ましく用いられる。
本発明の阻止率向上方法は、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を複合半透膜に接触させることで阻止率を向上させるが、それに伴い透過流束が低下する。このため、阻止率の向上効果を十分に活かしつつ、透過流速低下による過剰な運転圧力増加を防止するために、処理後の透過流束の低下が10〜30%の範囲内にする。さらには、10〜25%の範囲内にすることがより好ましい。
本発明法において、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を複合半透膜に接触させる処理を行うには、例えば、複合半透膜を圧力容器に装填した状態でポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液を圧力容器に通水しナノろ過膜や逆浸透膜と接触させ処理することができる。複合半透膜を圧力容器に装填した状態で薬品洗浄を施す設備が有る場合には、その洗浄設備を使用してポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液を圧力容器に通水し複合半透膜に接触させ処理することができる。
ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液を複合半透膜に接触処理するときの圧力は特に制限はなく、複合半透膜に被処理水を通水するときの圧力以下(10MPa以下)であることが好ましく、あるいは、薬品洗浄設備で運転される圧力以下(1MPa以下)であることがより好ましい。
ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液を複合半透膜に接触処理するときには、透過流束が0.01〜2m/日の範囲で行うと複合半透膜の内部にまでポリアルキレングリコール鎖を有する化合物が接触できるため処理効果が高まり好ましい。透過流束が0.01m/日以下では処理効果が低く、2m/日以上では過剰な運転圧力により複合半透膜がダメージを受けてしまう。
ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液の濃度は、10〜1000mg/Lであることが好ましく、10〜500mg/Lであることがより好ましい。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の濃度が低過ぎる場合には、阻止率回復効果が低くなる恐れがあり、1000mg/Lを超えるほどに高過ぎる濃度では複合半透膜表面に吸着されない状態で過剰に付着したポリアルキレングリコール鎖を有する化合物が膜面に残り、必要以上の透過流束低下を引き起こす可能性がある。
さらに、処理の効果を高めるために、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物との処理において、処理中の透過流束をモニタリングしながら濃度を徐々に増加させていくことができる。処理中の透過流束を測定することで、濃度が低すぎて阻止率向上の効果が出なかった場合にもすぐに処理濃度を上げることが可能となり、特に水処理プラントなどの大きい規模で処理する場合には有効である。
ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液を通水する時間は、0.5〜24時間が好ましく、1〜12時間であることがより好ましい。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液の濃度を高くすることによって透過流束低下までに要する時間を短縮する事ができるが、必要以上の透過流束低下を引き起こす可能性がある。
ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物によって阻止率向上処理を行う場合には、接触処理前に複合半透膜表面の膜汚染物質を事前に取り除く事によってより持続性が高い回復効果を得ることができる。膜汚染物質を取り除く方法としては一般的にこれらの膜の洗浄薬品として用いられる薬品が使用できる。
膜表面に付着した鉄やマンガンなどの金属類はクエン酸、シュウ酸、塩酸、硫酸等の酸性溶液での洗浄が効果があり、pHを3以下で使用することで洗浄効果を高めることができる。また、有機物や微生物が膜表面に付着している場合には苛性ソーダやエチレンジアミン四酢酸四ナトリウムなどのアルカリ溶液による洗浄が効果があり、pHを10以上で使用することで洗浄効果を高めることができる。これらの洗浄薬品による洗浄は、それぞれの薬品を用いて単独に洗浄する方法でも、複数の薬品を交互に用いて洗浄する方法でもよい。
また、本発明の阻止率向上方法は、同じ水処理設備で同じ半透膜に対して、繰り返し効果のある阻止率の改善を実施できることから、定期的に本発明の処理方法を実施することで、長期間、一定の除去率を維持することができる。特に、膜の荷電による排除効果がある無機電解質よりも非荷電物質除去率の改善効果が大きい。非荷電物質としては、例えば非電解質有機物質や中性領域では乖離していない物質(例えばホウ素やシリカ)などが挙げられる。これらは、海水や地下水に多く含まれることから、これらの原水を処理する水処理プラントに本発明の方法を適用することでより安定な運転を継続することが可能となる。
さらに、本発明の阻止率向上処理によって、複合半透膜からの溶媒と溶質の両方の透過を抑制することができるため、特に複合半透膜が劣化して透過流束が増加している場合には、阻止率の回復だけでなく、透過流束の低下により設計値通りの透過流束を守るための過度な運転圧力低下による透過水の水質悪化を防止することができる。
以上のような阻止率向上方法によって処理した複合半透膜を使用した水処理方法は、透過水質の悪化を防止し、長期間良好な透過水質が得られ、かつ、新しい複合半透膜への交換率を低減させることができる。
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、除去率、透過率および透過流束は下記の方法により求めた。
(1) 除去率
被処理水中における塩化ナトリウムの濃度(Na0)、ホウ素の濃度(B0)を測定し、さらに、透過水中における塩化ナトリウムの濃度(Na1)、ホウ素の濃度(B1)を測定する。
(1) 除去率
被処理水中における塩化ナトリウムの濃度(Na0)、ホウ素の濃度(B0)を測定し、さらに、透過水中における塩化ナトリウムの濃度(Na1)、ホウ素の濃度(B1)を測定する。
NaCl除去率(%)=(1−Na1/Na0)X 100
ホウ素除去率(%)=(1−B1/B0)X 100
(2) 透過流束
透過流束(m3/(m2・d))= 透過水量 / (膜面積 X 採取時間(日))
[実施例1]
製造された時の初期性能が透過流束0.80(m3/(m2・d))、NaCl除去率99.8%、ホウ素除去率93.0%であった芳香族系ポリアミド逆浸透膜を、水処理する実プラント運転において半年間実際に逆浸透膜として使用した結果、酸化劣化によって透過流束が1.11(m3/(m2・d)、NaCl除去率99.5%、ホウ素除去率89.1%に変化した性能劣化逆浸透膜を準備した。
ホウ素除去率(%)=(1−B1/B0)X 100
(2) 透過流束
透過流束(m3/(m2・d))= 透過水量 / (膜面積 X 採取時間(日))
[実施例1]
製造された時の初期性能が透過流束0.80(m3/(m2・d))、NaCl除去率99.8%、ホウ素除去率93.0%であった芳香族系ポリアミド逆浸透膜を、水処理する実プラント運転において半年間実際に逆浸透膜として使用した結果、酸化劣化によって透過流束が1.11(m3/(m2・d)、NaCl除去率99.5%、ホウ素除去率89.1%に変化した性能劣化逆浸透膜を準備した。
この性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールの15mg/L水溶液を使用して、1時間、0.45MPaでの加圧循環により接触処理した。接触処理時の透過流束は0.3m/日であった。この接触処理させた後の逆浸透膜について、塩化ナトリウム32,000mg/Lとホウ素5mg/Lの混合水溶液を用いて5.5MPa、25℃、pH7で逆浸透膜特性を評価した。このときのホウ素除去率は92.3%であり、透過流束の低下は20%であった。その結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量50,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。それ以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は92.5%であり、透過流束の低下は22%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量50,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。それ以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は92.5%であり、透過流束の低下は22%であった。その結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量1,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。それ以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は89.5%であり、透過流束の低下は4%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量1,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。それ以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は89.5%であり、透過流束の低下は4%であった。その結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量500,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。それ以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は93.2%であり、透過流束の低下は45%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量500,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。それ以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は93.2%であり、透過流束の低下は45%であった。その結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量4,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。それ以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は90.2%であり、透過流束の低下は9%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量4,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。それ以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は90.2%であり、透過流束の低下は9%であった。その結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。処理時のポリエチレングリコールの濃度を1mg/Lにする以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は91.0%であり、透過流束の低下は9%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールを使って、接触処理を行った。処理時のポリエチレングリコールの濃度を1mg/Lにする以外は実施例1と全く同じ条件で処理し、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は91.0%であり、透過流束の低下は9%であった。その結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールの15mg/L水溶液に1時間浸漬させることで接触処理を行った。このときの圧力はかけず、透過側へ水が透過しないように処理を行った。その後、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は90.1%であり、透過流束の低下は9%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールの15mg/L水溶液に1時間浸漬させることで接触処理を行った。このときの圧力はかけず、透過側へ水が透過しないように処理を行った。その後、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は90.1%であり、透過流束の低下は9%であった。その結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、苛性ソーダ(pH10.5)の水溶液を使って、3時間循環洗浄を実施した。その後、さらに2%クエン酸水溶液(pH2)で3時間循環洗浄を実施した。この洗浄後の逆浸透膜について、塩化ナトリウム32,000mg/Lとホウ素5mg/Lの混合水溶液を用いて5.5MPa、25℃、pH7で逆浸透膜特性を評価したところ、透過流束が1.15(m3/(m2・d)、NaCl除去率99.4%、ホウ素除去率88.5%であった。この洗浄後の性能劣化膜に対し重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールを使って、実施例1と同じ条件で接触処理を行い、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は92.6%であり、透過流束の低下は9%であった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様の性能劣化逆浸透膜を、苛性ソーダ(pH10.5)の水溶液を使って、3時間循環洗浄を実施した。その後、さらに2%クエン酸水溶液(pH2)で3時間循環洗浄を実施した。この洗浄後の逆浸透膜について、塩化ナトリウム32,000mg/Lとホウ素5mg/Lの混合水溶液を用いて5.5MPa、25℃、pH7で逆浸透膜特性を評価したところ、透過流束が1.15(m3/(m2・d)、NaCl除去率99.4%、ホウ素除去率88.5%であった。この洗浄後の性能劣化膜に対し重量平均分子量8,000のポリエチレングリコールを使って、実施例1と同じ条件で接触処理を行い、実施例1と同一条件で性能評価を行った。このときのホウ素除去率は92.6%であり、透過流束の低下は9%であった。その結果を表1に示す。
本発明の阻止率向上方法は、使用により性能が低下した複合半透膜に対して、膜を使用している場所で簡便かつ安全にその性能を回復させることができる。そして、本発明では、非電解質有機物質やシリカやホウ素などの中性領域では乖離していない低分子量物質などの阻止率向上に特に効果があり、複合半透膜を長期にわたって繰り返し使用する場合に有用である。
Claims (7)
- 重量平均分子量6,000以上100,000以下のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を複合半透膜の膜面に接触させる処理を行い、処理後の透過流束を10〜30%低下させることを特徴とする複合半透膜の阻止率向上方法。
- ポリアルキレングリコール鎖がポリエチレングリコール鎖である請求項1に記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
- 複合半透膜がナノ濾過膜、あるいは逆浸透膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
- 複合半透膜をスパイラル状に巻回されたエレメントに対し、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物との接触処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
- 複合半透膜にポリアルキレングリコール鎖を有する化合物で処理するときの透過流束が0.01〜2.0m/日の間にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
- 複合半透膜にポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を処理する前に、pHが3以下および/または10以上の水溶液と接触させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合半透膜の阻止率向上方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の阻止率向上方法によって阻止率を向上させた複合半透膜を使用して水処理を行うことを特徴とする水処理方法。
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JP2013146191A Pending JP2015016448A (ja) | 2013-07-12 | 2013-07-12 | 複合半透膜の阻止率向上方法 |
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JP (1) | JP2015016448A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016175153A1 (ja) * | 2015-04-27 | 2016-11-03 | 東レ株式会社 | 半透膜分離装置の運転方法 |
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2013
- 2013-07-12 JP JP2013146191A patent/JP2015016448A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016175153A1 (ja) * | 2015-04-27 | 2016-11-03 | 東レ株式会社 | 半透膜分離装置の運転方法 |
JPWO2016175153A1 (ja) * | 2015-04-27 | 2018-02-22 | 東レ株式会社 | 半透膜分離装置の運転方法 |
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