JP2009172531A - 透過膜の阻止率向上方法、阻止率向上透過膜、透過膜処理方法および装置 - Google Patents

透過膜の阻止率向上方法、阻止率向上透過膜、透過膜処理方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 透過膜の透過流束を高く維持した状態で、無機物および有機物、特に低分子量の有機物に対する阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができ、これにより有機物、特に低分子量の有機物の除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能な透過膜の阻止率向上方法、透過膜、透過膜処理方法および透過膜装置を得る。
【解決手段】 (a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物から選ばれる1種以上の溶質が溶解し、かつ浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液を透過膜の片側に接触させ、溶質としての水を透過膜の反対側に接触させ、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理することにより、あるいはさらに阻止率向上剤処理することにより、透過膜の透過流束を高く維持した状態で阻止率を向上させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、逆浸透膜、ナノ濾過膜等の透過膜の阻止率、特に有機物に対する阻止率を向上させる方法、これにより得られる阻止率を向上させた透過膜、およびこれを用いる透過膜処理方法、ならびにこれらに適した透過膜装置に関するものである。
水処理に用いられる透過膜、特にナノろ過膜、逆浸透膜(RO膜)などの選択性透過膜として、ポリアミド膜が用いられている。このような透過膜に用いられるポリアミド膜としては、芳香族核に少なくとも2個の第一級アミンを有する芳香族ポリアミンと、芳香族核に平均して2より多いアシルハライド基を有する芳香族多官能性アシルハライドとの、反応生成物である架橋芳香族ポリアミドが用いられている。特に選択性透過膜に用いられるポリアミド膜としては、多孔性支持膜の表面に、2つ以上の反応性アミノ基を有する化合物層を形成し、この層に多官能性酸ハロゲン化物の溶液を接触させて架橋反応生成物としてのポリアミド製薄膜を形成したポリアミド複合膜が用いられている。
このようなポリアミド膜からなる透過膜の無機電解質や水溶性有機物等の分離対象物に対する阻止率は、水中に存在する酸化性物質や還元性物質などの影響、その他の原因による素材高分子の劣化によって低下し、必要とされる処理水質が得られなくなる。この変化は、長期間使用しているうちに少しずつ起こることもあり、また事故によって突発的に起こることもある。このような阻止率が低下した透過膜の阻止率を、阻止率向上剤により向上させ、性能を回復する方法が提案されている。
一般に高純度の純水を製造するための超純水製造システムには、逆浸透膜処理装置と、この逆浸透膜処理装置の透過水を高度処理する電気再生式脱イオン装置または他のイオン交換装置とが組み込まれている。一方、近年の半導体回路形成技術の進歩により、線幅65nm以下の回路を作成することが可能となってきている。それに伴い超純水に対する要求水質も高まっており、後段処理の負荷を軽減し、より高いレベルでの純水製造を実現する純水製造装置および純水製造方法の開発が望まれている。有機物成分に対してはデバイスヘの影響が特に懸念されており、これを極力排除した水が要求されている。有機物成分としては、イソプロパノール(IPA)はもとより、メタノールやエタノール等のより低分子量の物質の高除去性をもつRO膜が求められている。さらに、RO膜は運転時圧力の低圧化が進んでおり、低圧、超低圧で高阻止率が得られるRO膜が求められている。また、海水淡水化に用いられるRO膜においては、高いホウ素除去性能を持つRO膜が求められている。
特許文献1(特開平10−165790号公報)には、多孔性支持膜の表面に、2つ以上の反応性アミノ基を有する化合物の溶液Aを塗工して層を形成し、この層に多官能性酸ハロゲン化物の溶液Bを接触させてポリアミド製薄膜を形成し、この薄膜を温度40℃〜100℃の水溶液に接触させる複合逆浸透膜の製造方法において、前記水溶液として、有機物および塩類の少なくとも一方の物質を含有する水溶液を使用することにより、水透過性能、有機物阻止性能および塩阻止性能に優れた複合逆浸透膜を製造する方法が提案されている。
この特許文献1の方法では、上記の複合逆浸透膜を有機物および塩類の少なくとも一方の物質を含有する水溶液に接触させる方法として、逆浸透膜を上記水溶液に浸漬させて処理を行っており、膜面の化学的処理により膜特性を向上させている。しかしこのような処理では、透過膜の透過流束低下を小さくする効果、ならびに有機物に対する阻止率の向上効果は十分とはいえず、長期にわたって膜特性を維持することは困難である。特許文献1では、上記水溶液を加圧供給して透過させる方法も示されているが、具体的な操作および効果は示されていない。
特許文献2(特公平7−114941号公報)には、微多孔性支持膜とこの支持膜を被覆する超薄膜からなるポリアミド複合逆浸透膜を、熱水処理することによって有機物除去率を向上させる方法が提案されている。しかしこの特許文献2の方法で処理を行った膜は、水透過性が著しく低下するという問題がある。
特許文献3(特許2762358号公報)には、水軟化用膜の製造法において、ポリアミド膜の阻止率を向上させるための阻止率向上剤として、加水分解性タンニン酸、スチレン/マレアミド酸コポリマー、C5乃至C7ヒドロキシアルキルメタクリレートポリマー、コポリマーまたはターポリマー、複数個のスルホニウムもしくは第四アンモニウム基を有する第1のポリマーと複数個のカルボキシレート基を有する第2のポリマーから製造したコアセルベート、任意の他の置換基をもつ枝分れしたポリアミドアミン類、酢酸ビニルコポリマー、ヒドロキシエチル・メタクリレートとメタクリル酸またはメタクリルアミド(任意に他の混和性モノマーを含む)とのコポリマー、スチレン/マレアミド酸コポリマーなどが示されている。
しかし特許文献3のような阻止率向上剤による透過膜の処理では、親水性の高分子からなる阻止率向上剤が透過膜の細孔に吸着されることにより、溶質の透過が阻害され、阻止率が向上するものと推測されるが、透過膜の阻止率向上効果は必ずしも十分ではなく、特に有機物に対する阻止率向上効果については、さらなる向上が求められている。また透過膜の阻止率向上処理を行うと、一般的には透過流束(フラックス)が低下するが、透過流束を低下させないで阻止率を向上させることが求められている。
特開平10−165790号公報 特公平7−114941号公報 特許2762358号公報
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、透過膜の透過流束を高く維持した状態で、無機物および有機物、特に低分子量の有機物に対する阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができ、これにより有機物、特に低分子量の有機物の除去効果が高く、長期間にわたって安定処理を可能にする透過膜の阻止率向上方法、阻止率を向上させた透過膜、およびその透過膜を用いる透過膜処理方法、ならびにこれらに適した透過膜装置を提供することである。
本発明は次の透過膜の阻止率向上方法、透過膜、透過膜処理方法および透過膜装置である。
(1) (a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物から選ばれる1種以上の溶質が溶解し、かつ浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液を透過膜の片側に接触させ、
溶媒としての水を透過膜の反対側に接触させ、
浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理することを特徴とする透過膜の阻止率向上方法。
(2) 運転圧力ΔPが、〔浸透圧Δπ−0.20MPa〕ないし〔浸透圧Δπ+0.20MPa〕である上記(1)記載の方法。
(3) 運転圧力ΔPが、浸透圧Δπないし〔浸透圧Δπ+0.20MPa〕である上記(1)記載の方法。
(4) 透過膜を30℃以上、40℃未満の加熱状態で加圧処理を行う上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 加圧処理を行った後に、水溶性の高分子からなる阻止率向上剤を透過膜に接触させる上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 阻止率向上剤が、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物である上記(5)記載の方法。
(7) 加圧処理を行った後に、炭素数8以上の疎水性基を有しない親水性の高分子からなる阻止率向上剤を透過膜に接触させ、その後炭素数8以上の疎水性基を有する水溶性の高分子からなる修飾剤を透過膜に接触させる上記(5)または(6)記載の方法。
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の方法により得られる透過膜。
(9) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の方法により得られる透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理方法。
(10) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の方法により得られる透過膜と、透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う手段を有する透過膜処理装置。
(11) 1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、
(a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物から選ばれる1種以上の溶質が溶解し、かつ浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液をモジュールの1次側に供給して透過膜の片側に接触させ、溶媒としての水をモジュールの2次側に供給して透過膜の反対側に接触させ、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理する加圧処理手段と、
モジュールの1次側に、有機物を主成分とする阻止率向上剤を通液して、阻止率向上処理を行う阻止率向上処理装置と
を含む透過膜装置。
本発明において阻止率向上処理の対象となる透過膜は、1次側に被処理液を通液して透過させ、2次側から透過液を取り出し膜分離を行う透過膜であるが、特に逆浸透膜、ナノ濾過膜等の無機電解質や水溶性有機物等を水から分離する選択性透過膜が対象として適している。逆浸透膜(RO膜)は膜を介する溶液間の浸透圧差以上の圧力を高濃度側にかけて、溶質を阻止し、溶媒を透過する液体分離膜である。
透過膜、特にRO膜の膜構造としては、複合膜、相分離膜などの高分子膜などを挙げることができる。本発明に適用される透過膜、特にRO膜の素材としては、例えば、芳香族系ポリアミド、脂肪族系ポリアミド、これらの複合材などのポリアミド系素材などを挙げることができる。これらの中で、芳香族系ポリアミド透過膜、特にRO膜として用いられるポリアミド複合膜に本発明に係る阻止率向上処理を好適に適用することができる。このような阻止率向上処理の対象となる透過膜は、未使用の透過膜でも、使用により性能が低下した透過膜でもよい。RO膜はJIS K3805(逆浸透膜エレメント及びモジュールの性能試験方法)において、超低圧(1MPa以下)、低圧(1〜2MPa)、中圧(2〜4.5MPa)、高圧(4.5MPa以上)と規定されているものの全てに適用できるが、本発明は中圧以下のRO膜が好適に適用される。
本発明における阻止率向上処理は、このような透過膜を、膜分離装置のモジュールに装備された状態で、またはモジュールに装備されない状態の透過膜に対して行われる。モジュールはRO膜等の透過膜を備えた透過膜エレメントをベッセルに装填して構成される。このモジュールの形式については特に制限はなく、例えば、管状膜モジュール、平一面膜モジュール、スパイラル膜モジュール、中空糸膜モジュールなどを適用することができる。モジュールは1段で阻止率向上処理を行ってもよく、また2段以上の多段に設けた状態で高温水処理および阻止率向上剤処理を行ってもよい。透過膜装置にモジュールを多段に設けた場合には、阻止率向上処理を全てのRO装置モジュールについて行ってもよいし、特定のモジュールについて行ってもよい。
阻止率向上処理は、未使用の透過膜の場合、あるいは使用により性能が低下した透過膜の場合とも、薬品洗浄を行った透過膜を阻止率向上処理の対象とすることができるが、特に使用により性能が低下した透過膜の場合は薬品洗浄を行ったものが好ましい。薬品洗浄の目的は膜表面の汚染物質を除去することにより、阻止率向上処理を行いやすくすることである。洗浄薬品としては酸(塩酸、硝酸、シュウ酸、クエン酸など)、アルカリ(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムなど)、還元剤などが用いられ、これら薬品の水溶液をモジュールに通液したり、透過膜を薬品に浸漬することにより洗浄を行う方法が一般的である。
本発明では、これらの薬品洗浄後、透過膜の阻止率向上処理を行うのが好ましい。本発明の阻止率向上処理は、基本的には透過膜を加圧処理することにより、透過膜の阻止率を向上させる方法であり、この加圧処理に加えてさらに阻止率向上剤による処理を行うことができる。透過膜の加圧処理は、従来の透過膜の加熱処理や、阻止率向上剤による処理とは異なり、透過膜の両側から加圧することによりスキン層を圧密化するもので、このために溶質水溶液の浸透圧Δπと、これに対向する運転圧力ΔPを透過膜の両側にかけて透過膜を加圧する。
すなわち本発明では、(a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物から選ばれる1種以上の溶質が溶解し、かつ浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液を透過膜の片側(1次側)に接触させ、溶媒としての水を透過膜の反対側(2次側)に接触させ、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを1次側の溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理する。ここで溶質水溶液を透過膜の片側(1次側)に接触させ、溶媒としての水を透過膜の反対側(2次側)に接触させると、浸透圧Δπが生じるが、これに対向する運転圧力ΔPを1次側の溶質水溶液に加えると、浸透圧Δπと運転圧力ΔPが均衡し、透過膜は両側から加圧される。
ここで浸透圧Δπは、次の〔1〕式(ファントホッフの式)から求められる溶質水溶液の浸透圧であり、溶質のモル濃度により決まる。
Δπ= MRT・・・〔1〕
〔1〕式において、Δπは浸透圧(Pa)、Mは溶質のモル濃度(mol/m)、Rは定数(Pa・m/K・mol)、Tは温度(K)を示す。
このような浸透圧Δπは、海水ハンドブック等の文献に記載の数値を用いることもでき、また溶質水溶液を通水したときの透過流束と純水透過流束の差から浸透圧を求めることもできる。
運転圧力ΔPは、透過膜に被処理液を加圧供給して透過させるときの被処理液にかける圧力で、次の〔2〕式で表されるが、阻止率向上処理における溶質水溶液にかける圧力にも、そのまま適用される。
ΔP=(1次側入口圧力+1次側出口圧力)/2−(2次側圧力)・・・〔2〕
〔2〕式において、(1次側入口圧力)は1次側に供給される被処理液または溶質水溶液の入口の圧力、(1次側出口圧力)は1次側から排出される濃縮液の出口の圧力、(2次側圧力)は2次側から排出される透過液の出口の圧力を示す。
本発明では、溶質水溶液を透過膜の片側(1次側)に接触させ、溶媒としての水を透過膜の反対側(2次側)に接触させ、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを1次側の溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理する。透過膜と電解質水溶液の接触方法は、透過膜の平膜セルもしくはエレメントをベッセルに装着したモジュールの1次側へ溶質水溶液を供給し、出口側から入口側へ循環して通液するか、あるいは出口側から排出して一過式に通液するのが好ましい。平膜等を処理する場合は透過液側に電解質水溶液が混入しないようにする必要がある。
加圧処理において、1次側の溶質水溶液に加える浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPは、溶媒が透過膜を実質的に透過しない圧力である。運転圧力ΔPがゼロの場合、浸透圧Δπに対応して溶媒が2次側から1次側に透過するが、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを1次側にかけることにより、溶媒が透過膜を実質的に透過しない状態で均衡し、透過膜は両側から加圧されて圧縮される。ここで溶媒が透過膜を実質的に透過しない圧力とは、透過膜の圧密化に影響しない程度の溶媒の透過量に制限する圧力である。
すなわち溶媒が透過膜を透過すると、透過膜の圧密化が阻害され、阻止率向上の目的を達成できないので、運転圧力ΔPを溶媒が透過膜を実質的に透過しない圧力に維持し、透過膜を両側から加圧して圧縮する状態を維持する。浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液において、溶質が透過膜を実質的に透過しない運転圧力ΔP(MPa)は、〔浸透圧Δπ−0.20MPa〕ないし〔浸透圧Δπ+0.20MPa〕の範囲とされる。しかし溶媒が2次側から1次側に透過すると、溶質の阻止に重要な1次側の圧密化が阻害され、阻止率向上効果を阻害し易いので、運転圧力ΔPを、浸透圧Δπないし〔浸透圧Δπ+0.20MPa〕の範囲に維持し、溶媒の2次側から1次側への透過を阻止するのが好ましい。
溶質水溶液を構成する溶質の(a)電解質としては、特に制限はないが、電解質がナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、重亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、水酸化物イオンのうち少なくとも一つからなる物質であることが好ましい。このような物質としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などが挙げられる。腐食性、スケール形成、膜への影響を考慮すると、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム等が特に好ましい。
溶質水溶液を構成する溶質の(b)分子量100〜500の有機物も制限はないが、グルコース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ガラクトース、スクロースなどの糖類、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、リジン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸、クエン酸、リンゴ酸、ロイシン酸、酒石酸、サリチル酸、没食子酸などのヒドロキシ酸、アスコルビン酸などのカルボン酸エステル、アジピン酸、グルタル酸、グルコン酸、グルクロン酸、エチレンジアミン四酢酸などのカルボン酸、などがあげられる。
溶質水溶液中の(a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物の濃度は、浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaとなる濃度である。浸透圧が小さい水溶液を用いた場合、加圧により溶媒が透過膜を透過するため、水が通り易い部分と通りにくい部分が形成され、得られる阻止率向上効果が小さくなり好ましくない。上記浸透圧Δπとなる濃度としては、一般的には0.1〜20重量%とすることができる。0.1重量%未満では浸透圧が低いために逆浸透膜にかけられる圧力が十分ではなく、十分な効果が得られない。また20重量%を超えると、浸透圧が高くなり、浸透圧に匹敵する圧力をかけるためには高出力のポンプを必要とする。透過膜の耐圧上限を超えて処理することは難しく、排液処理が問題になることもあり、実用的でない。
透過膜の反対側(2次側)に接触させる溶媒としての水は、透過膜を透過し、浸透圧Δπを生じさせるものであればよいが、純水、超純水に分類される程度の高純度水が好ましく、特に透過膜の阻止率向上処理を行う前に得られた透過水を用いるのが好ましい。モジュールに装着した透過膜もしくはエレメントを阻止率向上処理する場合は、2次側の透過水は入れ替えることなく、そのまま溶媒としての水として用いることができ、1次側の被処理水を溶質水溶液に入れ替えて加圧することにより、加圧処理を行うことができる。
加圧処理の際、透過膜の温度に制限はないが、20℃以上、40℃未満、特に30℃以上、40℃未満の加熱状態で加圧処理を行うのが好ましい。透過膜を上記の温度に維持するためには、透過膜に接触させる溶質水溶液を上記温度の加熱状態で接触させるのが好ましい。加熱温度が40℃以上であると透過膜の変形が大きくなり、性能が低下するおそれがある。
透過膜に溶質水溶液を接触させて加圧処理を行う時間は、透過膜の阻止率向上効果が得られる時間であり、10分〜24時間が好ましい。接触時間が短いと十分な阻止率向上効果が得られず、長すぎると透過膜が劣化し、性能が低下するおそれがある。加圧処理、あるいは加熱処理の回数は特に制限されないが、回数を繰り返すと膜が劣化しやすくなるため、加圧、あるいは加熱処理は5回以内とすることが好ましい。
本発明では、上記の加圧処理を行うことにより、透過膜は両側から加圧されて、スキン層が圧密化されるものと推測され、これにより透過膜のフラックスを高くした状態で無機物および有機物、特に低分子量の有機物に対する阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができる。この状態で阻止率向上効果が得られているため、阻止率向上処理を終了し、透過膜処理に移ることができるが、上記の加圧処理を行った後に、さらに水溶性の高分子からなる阻止率向上剤を透過膜に接触させる阻止率向上剤処理を行うと、阻止率向上効果がさらに増大するので好ましい。
阻止率向上剤処理において使用できる阻止率向上剤は、有機物を主成分とする親水性の高分子からなる阻止率向上剤であり、加圧処理を行った透過膜の水溶性有機物や無機電解質等の溶解性物質の阻止率が向上するものであれば特に制限なく使用可能である。このような阻止率向上剤としては、水溶性の高分子化合物であって、イオン性または非イオン性高分子があげられる。イオン性高分子の場合、カチオン性高分子、アニオン性高分子、両性高分子等をそれぞれ単独で使用できるが、カチオン性高分子とアニオン性高分子を段階的に、好ましくは交互に供給すると、阻止率向上効果が高まるので好ましい。これらの化合物を阻止率向上剤の主成分として用いることにより、RO膜の阻止率を向上し、電解質をはじめ、従来のRO膜では除去困難であった低分子量の非イオン性有機物や、ホウ素なども効果的に除去することができる。
前記使用可能な阻止率向上剤としては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、複数のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物、その他の公知のものが使用でき、前記特許文献3等に記載のもの、ならびに他の阻止率向上能を有するものなども使用できる。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物としては、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体をあげることができる。このほかポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミンなどの水溶性高分子やタンニン酸などのポリフェノール、ならびにイオン性高分子(ポリアミジン、ポリスチレンスルホン酸)なども使用可能である。
好ましい阻止率向上剤としては、ポリアルキレングルコール鎖を有する化合物をあげることができる。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜6,000、より好ましくは3,000〜5,000である。
本発明において重量平均分子量は、高分子やポリアルキレングリコール鎖を有する化合物などの化合物の水溶液をゲル浸透クロマトグラフィーにより分析し、得られたクロマトグラムからポリエチレンオキシド標準品の分子量に換算することにより求めることができる。ポリエチレンオキシド標準品が入手し得ない高分子量の領域においては、光散乱法、超遠心法などにより重量平均分子量を求めることができる。
ポリアルキレングリコール鎖は、アルキレンオキシドの開環重合により製造することができる。本発明に用いる化合物が有するポリアルキレングリコール鎖としては、例えばポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリトリメチレングリコール鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖などを挙げることができる。これらのグリコール鎖は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフランなどの炭素数2〜4のアルキレンオキシドの開環重合により形成することができる。ポリアルキレングリコール鎖はポリエチレングリコール鎖であることが好ましい。このポリエチレングリコール鎖を有する化合物は、水溶性が大きいので阻止率向上剤として取り扱いやすい。
本発明においては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物としては、末端が水酸基のポリアルキレングリコールのほか、ポリアルキレングリコール鎖にイオン性基が導入された化合物を用いるのが好ましい。イオン性基としては、例えばスルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)等のアニオン性基、またはアミノ基(−NH)、第四アンモニウム基(−N)等のカチオン性基などを挙げることができる。このうちスルホ基、カルボキシル基等のアニオン性基を導入することによりアニオン性の水溶性の高分子化合物が得られ、アミノ基、第四アンモニウム基等のカチオン性基を導入することによりカチオン性の水溶性の高分子化合物が得られる。
上記の阻止率向上剤は、処理対象となる透過膜の材質、形態等に応じて適したものが選ばれ、純水または被処理水等の溶媒に溶解して使用される。阻止率向上剤は上記の化合物、特にポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、その他の化合物から選ばれる1種類以上のものが用いられ、複数種類の阻止率向上剤を用いる場合は混合状態で、あるいは別々に透過膜と接触させて阻止率向上剤処理を行うことができる。
本発明で用いる阻止率向上剤を含む水溶液の前述の化合物の濃度は、0.01〜50mg/L程度であることが好ましい。阻止率向上剤を含む水溶液のより好ましい化合物濃度は、用いる化合物の種類によって異なり、例えば、前述の重量平均分子量1,000〜10,000のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の場合は0.01〜20mg/Lが好ましい。濃度がこれより低いと阻止率向上処理に長時間を要するおそれがある。濃度が50mg/Lを超えると、水溶液の粘度が高くなり、RO膜への通水抵抗が大きくなるおそれがある。また、濃度が50mg/Lを超えると、不必要に厚いコーティング層(吸着層)が形成されて、濃度分極により、かえって阻止率向上効果が弱くなるおそれがある。
阻止率向上剤による阻止率向上処理は、処理対象モジュールの透過膜に阻止率向上剤を供給して接触させ、透過膜の阻止率を向上させる。この場合、透過膜を取り付けたモジュールの1次側に阻止率向上剤を供給し、阻止率向上剤を透過膜に付着させ、透過膜の阻止率を向上させる。透過膜への吸着性の高い阻止率向上剤を用いる場合は、阻止率向上剤をモジュールに供給して透過膜と接触させた状態を保ち、あるいは低圧で流動させて吸着させることができるが、一般的には阻止率向上剤を高圧で供給して透過膜を透過させ、2次側から透過液を取り出すことにより、透過膜の内部まで阻止率向上剤を付着させるのが好ましい。
阻止率向上剤を含む水溶液を通水する1回当りの時間は、1〜24時間であることが好ましい。水溶液中の阻止率向上剤濃度を高くすると、通水時間を短縮することができるが、フラックスの低下が大きくなるおそれがある。この阻止率向上剤を含む水溶液の通水時は、モジュールの透通水排出弁を閉じておくことも可能であるが、透過水を取出しながら処理すると、装置を休止することなく効率的に処理することができるとともに、阻止率向上剤を効率よく、かつ均一に透過膜面に吸着させることができる。この場合、モジュールの一次側へ阻止率向上剤を含む水溶液を供給する際の操作圧力を0.3MPa以上とするとともに、透過水量/阻止率向上剤を含む水溶液の供給量の比が0.2以上とすることが好ましい。これにより効果的に阻止率向上剤が透過膜表面に接触するため、阻止率向上剤を効率よく、かつ均一に膜面に吸着させることができる。
本発明で用いる阻止率向上剤は、無機電解質又は水溶性有機化合物からなる阻止率確認トレーサーを含有させることができる。主成分とする化合物とともに、トレーサーを含有する水をナノろ過膜又は逆浸透膜に通水することにより、RO膜の阻止率を経時的に確認して、処理の継続又は停止を判断することができる。
トレーサーを含有する阻止率向上剤の通水処理時間は、通常は1〜50時間であることが好ましく、2〜24時間であることがより好ましいが、透過水のトレーサー濃度が所定の値に達したとき、RO膜の阻止率は所定の値になったと判断し、阻止率向上処理を終了することができる。この方法によれば、阻止率向上剤の水溶液とRO膜との接触時間を必要十分な最小限の長さに制御することができ、RO膜の通常運転を直ちに開始することができる。また、異なる阻止率向上剤を用いて複数回の阻止率向上処理を行う場合も、切り替えのタイミングを逸することなく、複数回の処理を効率的に行うことができる。
トレーサーとして用いる水溶性有機化合物としては、例えばイソプロピルアルコール、尿素などを挙げることができるが、取扱性の容易さからイソプロピルアルコールを好適に用いることができる。またトレーサーとして用いる無機電解質としては、例えば塩化ナトリウムや硝酸ナトリウム、そして弱電解質のホウ酸などを挙げることができる。トレーサーの濃度は、塩化ナトリウムなどの無機強電解質の場合は、1〜500mg/Lであることが好ましく、10〜100mg/Lであることがより好ましい。その他のホウ酸などの無機弱電解質や、イソプロピルアルコールなどの水溶性有機物の場合は、1〜5,000mg/Lであることが好ましく、5〜1,000mg/Lであることがより好ましい。
本発明では、加圧処理を行った後に、炭素数8以上の疎水性基を有しない親水性の高分子からなる阻止率向上剤を透過膜に接触させ、その後炭素数8以上の疎水性基を有する水溶性の高分子からなる修飾剤を透過膜に接触させて、阻止率向上処理を行うのが好ましい。ここで炭素数8以上の疎水性基を有しない親水性の高分子からなる阻止率向上剤は、前記のものが用いられ、前記と同様の処理を行うことができる。
修飾剤は炭素数8以上の疎水性基を有する水溶性の高分子からなるが、炭素数8以上のアルキル基またはアルキレン基からなる疎水性基を有する修飾剤、特に炭素数8〜20のアルキル基またはアルキレン基からなる疎水性基を有する修飾剤が好ましい。ここで炭素数8以上、特に炭素数8〜20のアルキル基またはアルキレン基からなる疎水性基は疎水性が高く、有機物の疎水基との親和性が大きいため、その修飾により、純水製造において排除が求められる低分子の水溶性有機物成分の透過を阻止するのに適しているものと推測される。炭素数が8未満であると阻止率向上効果と安定性が十分でなく、炭素数が20を超えると水に溶けにくくなり、また透過流束の低下が大きい傾向にある。
修飾剤としては、親水基と疎水性基を有する界面活性物質が好ましく、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)フエニルエーテル、アルキル(またはアルケニル)グルコシド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキル(またはアルケニル)トリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキル(またはアルケニル)ジメチルアンモニウムクロリド、アルキル(またはアルケニル)ピリジニウムクロリドなどが使用できる。
修飾剤の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量として500〜5,000が好ましい。重量平均分子量が小さすぎ、特に500未満であると、処理後の修飾剤の定着性が低くなり、透過膜の阻止率が十分に向上しない。重量平均分子量が大きすぎ、特に5,000を超えると、透過膜の透過流束が大きく低下するおそれがある。
これらの阻止率向上剤による処理と修飾剤による処理は、同時に行うか、阻止率向上剤で処理した後に修飾剤で処理することができる。同時に阻止率向上剤による処理と修飾剤による処理を行う場合は、阻止率向上剤と修飾剤とを含む混合処理剤を用いて混合剤処理を行い、別に処理を行う場合は、阻止率向上剤処理を行った後に修飾剤処理を行う。阻止率向上剤および修飾剤は、処理対象となる透過膜の材質、形態等に応じて適したものが選ばれ、純水または被処理水等の溶媒に溶解してそれぞれの処理剤または混合処理剤として使用される。混合剤処理を行う混合処理剤は、阻止率向上剤の濃度が修飾剤の濃度の2倍以上、好ましくは2〜100倍、さらに好ましくは2〜20倍とすることができる。
修飾処理剤または混合処理剤中の修飾剤の濃度は、0.01〜50mg/L、好ましくは0.01〜2mg/Lとするのが好ましい。修飾剤は阻止率向上剤よりも透過流束を低下させる効果が大きく、添加量を多くすると透過流束の低下が大きくなりやすいため、修飾剤の濃度は化合物の種類によって最適な濃度は異なるが、阻止率向上剤の濃度の1/2以下の濃度で用いることが好ましく、例えば阻止率向上剤の濃度が1mg/Lであれば、修飾剤の濃度は0.5mg/L以下が好ましい。濃度が0.01mg/Lよりも低いと阻止率向上効果が得られず、濃度が50mg/Lを超えると、水溶液の粘度が高くなり、透過膜の通水抵抗が大きくなるおそれがある。また濃度が50mg/Lを超えると、不必要に厚いコーティング層(吸着層)が形成されて、濃度分極により、かえって阻止率向上効果が弱くなるおそれがある。修飾剤を含む水溶液または混合処理剤を通水する1回当りの時間は、1〜24時間であることが好ましい。
また本発明における阻止率向上剤で処理したあと、さらに固定化処理剤により固定化処理を行ってもよい。固定化処理に用いる固定化処理剤としては、重量平均分子量が10万以上、特に30万以上、さらに100万以上の水溶性高分子であり、イオン性、非イオン性は問わないが、特にイオン性高分子であることが好ましい。イオン性高分子としては、カチオン性高分子とアニオン性高分子があげられる。阻止率向上剤として荷電性ポリアルキレングリコールを用いた場合、固定化剤としては逆の荷電を有するカチオン性高分子またはアニオン性高分子を選択することができる。固定化処理の方法は特に制限されないが、阻止率向上剤処理と同様に行うことができる。
上記の阻止率向上方法により得られる透過膜は、透過膜の透過流束を高く維持した状態で阻止率が向上しており、かつその高い状態を長く維持することができる。
本発明の透過膜は、上記の阻止率向上方法により得られる透過膜であり、透過膜の透過流束を高く維持した状態で阻止率が向上し、かつその高い状態が長く維持する。
本発明の透過膜処理方法は、上記の阻止率向上方法により得られる透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理方法であり、透過膜の透過流束を高く維持した状態で阻止率が向上し、かつその高い状態が長く維持することができ、これにより有機物除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。被処理液の供給、透過の操作は通常の透過膜処理と同様に行うことができるが、カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を含有する被処理液を処理する場合は、原水に分散剤、スケール防止剤、その他の薬剤を添加してもよい。
本発明の透過膜処理装置は、上記の阻止率向上方法により得られる透過膜を用い、透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理装置であり、透過膜の透過流束を高く維持した状態で阻止率が向上し、かつその高い状態が長く維持することができ、これにより有機物除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。
本発明の好ましい透過膜処理装置は、1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、(a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物から選ばれる1種以上の溶質が溶解し、かつ浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液をモジュールの1次側に供給して透過膜の片側に接触させ、溶媒としての水をモジュールの2次側に供給して透過膜の反対側に接触させ、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理する加圧処理手段と、モジュールの1次側に、有機物を主成分とする阻止率向上剤を通液して、阻止率向上処理を行う阻止率向上処理装置とを含む透過膜装置である。
上記の透過膜処理装置では、透過膜モジュールの1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出して透過膜処理を行い、加圧処理手段により溶質水溶液をモジュールの1次側に供給して透過膜の片側に接触させ、溶媒としての水をモジュールの2次側に供給して透過膜の反対側に接触させ、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを溶質水溶液に加えて、透過膜の加圧処理を行い、阻止率向上剤処理装置によりモジュールの1次側に有機物を主成分とする阻止率向上剤を通液して阻止率向上剤処理を行うことにより、透過膜の透過流束を高く維持した状態で透過膜の阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができる。
本発明の透過膜処理方法および装置は、電子デバイス製造分野、半導体製造分野、その他の各種産業分野で排出される高濃度ないし低濃度TOC含有排水の回収・再利用のための水処理、あるいは工業用水や市水からの超純水製造、海水淡水化、その他の分野の水処理に有効に適用される。処理対象とする被処理水は特に限定されるものではないが、有機物含有水に好適に用いることができ、例えばTOC=0.01〜100mg/L、好ましくは0.1〜10mg/L程度の有機物含有水の処理に好適に用いられる。このような有機物含有水としては電子デバイス製造工場排水、輸送機械製造工場排水、有機合成工場排水または印刷製版・塗装工場排水など、あるいはそれらの一次処理水など挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明の透過膜処理方法および装置では、透過膜、特にRO膜の目詰まりやファウリングを防止する目的で、前処理装置として活性炭塔、凝集沈殿装置、凝集加圧浮上装置、濾過装置あるいは脱炭酸装置を設けることが好ましい。濾過装置としては、砂濾過装置、限外濾過装置、精密濾過装置、小型濾過装置などを用いることができる。前処理装置としては更にプレフィルターを設けてもよい。また、RO膜は酸化劣化を受けやすいため、必要に応じて原水に含まれる酸化剤(酸化劣化誘発物質)を除去する装置を設けることが好ましい。このような酸化劣化誘発物質を除去する装置としては、活性炭塔や還元剤注入装置などを用いることができる。特に活性炭塔は有機物も除去することが可能であり、上述の通りファウリング防止手段として兼用することができる。原水のpHは特に制限されるものではないが、硬度成分を多く含む場合は、pH5〜7の酸性域に調整する、分散剤を使用するなどの処理が必要である。
本発明によれば、(a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物から選ばれる1種以上の溶質が溶解し、かつ浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液を透過膜の片側に接触させ、溶質としての水を透過膜の反対側に接触させ、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理することにより、透過膜の透過流束を高く維持した状態で無機物および有機物、特に低分子量の有機物に対する阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができ、これにより有機物、特に低分子量の有機物の除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。
また本発明によれば、上記の加圧処理を行った透過膜に、阻止率向上剤を接触させて透過膜の阻止率を向上させる阻止率向上剤処理を行うことにより、さらに透過膜の透過流束を高く維持した状態で無機物および有機物、特に低分子量の有機物に対する阻止率を向上させ、これらの向上効果を高い状態で維持することができ、これにより有機物、特に低分子量の有機物の除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。以下の実施例および比較例では、阻止率は以下式によって算出した。
阻止率(%)=〔1−(透過液の溶質濃度×2)/(供給液の溶質濃度+濃縮液の溶質濃度)〕×100
[実施例1]:
日東電工(株)製超低圧芳香族ポリアミド系RO膜「ES−20」の新品膜モジュールを評価装置にセットし、2次側に透過水を充填した状態で、1次側に3.5重量%硫酸ナトリウム水溶液を運転圧力ΔP=0.75MPaに加圧して供給し、水温25℃となるように温度調整しながら、20時間循環通液した。このときΔP−Δπ=0.03MPaであった。処理後は液を廃棄した後、室温まで冷却し、超純水を通水し、膜に残留した水溶液を除去した。その後、100mg/Lイソプロパノール(IPA)水溶液、100mg/Lエタノール水溶液をそれぞれ通水し、IPA、エタノールの除去性能を確認した。
[実施例2]:
実施例1の水溶液を5.0重量%クエン酸水溶液とした以外は実施例1と同様の処理を行った。このときΔP−Δπ=0.1MPaであった。その後、実施例1と同様に水溶液の除去、ならびにIPA、エタノールの除去性能の確認を行った。
[実施例3]:
実施例1の水溶液を9.8重量%グルコース水溶液にし、運転圧力を1.5MPaとした以外は実施例1と同様の処理を行った。このときΔP−Δπ=0.15MPaであった。その後、実施例1と同様に水溶液の除去、ならびにIPA、エタノールの除去性能の確認を行った。
[実施例4]:
実施例1の水溶液の水温を35℃にして処理を行った以外は実施例1と同様の処理を行った。その後、実施例1と同様に水溶液の除去、ならびにIPA、エタノールの除去性能の確認を行った。
[実施例5]:
実施例1と同様の処理を行った後、2mg/Lポリエチレングリコール水溶液を20時間循環通水した。処理後は液を廃棄し、超純水を通水して膜に残留した水溶液を除去した後、実施例1と同様にしてIPA、エタノールの除去性能を確認した。
[実施例6]:
実施例1と同様の処理を行った後、2mg/Lポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル水溶液を20時間循環通水した。処理後は液を廃棄し、超純水を通水して膜に残留した水溶液を除去した後、実施例1と同様にしてIPA、エタノールの除去性能を確認した。
[実施例7]:
実施例5と同様の処理を行った後、0.2mg/Lポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル水溶液を20時間循環通水した。処理後は液を廃棄し、超純水を通水して膜に残留した水溶液を除去した後、実施例1と同様にしてIPA、エタノールの除去性能を確認した。
[実施例8]:
実施例5と同様の処理を行った後、0.2mg/Lポリオキシエチレン(50)オレイルエーテル水溶液を20時間循環通水した。処理後は液を廃棄し、超純水を通水して膜に残留した水溶液を除去した後、実施例1と同様にしてIPA、エタノールの除去性能を確認した。
[比較例1]:
日東電工(株)製超低圧芳香族ポリアミド系RO膜「ES−20」の新品膜モジュールを評価装置にセットし、100mg/Lイソプロパノール(IPA)水溶液、100mg/Lエタノール水溶液をそれぞれ通水し、IPA、エタノールの除去性能を確認した。
[比較例2]:
実施例1の水溶液を1%硫酸ナトリウム水溶液、水温を35℃とした以外は実施例1と同様の処理を行った。このときΔP−Δπ=0.55MPaであった。その後、実施例1と同様に水溶液の除去、ならびにIPA、エタノールの除去性能の確認を行った。
実施例1〜8、比較例1〜2で確認した阻止性能を表1に示す。
Figure 2009172531
以上の実施例と比較例から明らかな通り、本発明における加圧処理を行ったRO膜、または加圧処理および阻止率向上剤処理を行ったRO膜を用いることにより、RO膜の透過流束を高く維持した状態で、中低分子有機物に対する阻止率が向上し、中低分子有機物を高度に除去したRO処理水が得られることがわかる。
本発明は、逆浸透膜、ナノ濾過膜等の透過膜の阻止率を向上させる方法、阻止率を向上させた透過膜、これを用いる透過膜処理方法、およびこれらに適した透過膜装置に利用可能である。

Claims (11)

  1. (a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物から選ばれる1種以上の溶質が溶解し、かつ浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液を透過膜の片側に接触させ、
    溶媒としての水を透過膜の反対側に接触させ、
    浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理することを特徴とする透過膜の阻止率向上方法。
  2. 運転圧力ΔPが、〔浸透圧Δπ−0.20MPa〕ないし〔浸透圧Δπ+0.20MPa〕である請求項1記載の方法。
  3. 運転圧力ΔPが、浸透圧Δπないし〔浸透圧Δπ+0.20MPa〕である請求項1記載の方法。
  4. 透過膜を30℃以上、40℃未満の加熱状態で加圧処理を行う請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. 加圧処理を行った後に、水溶性の高分子からなる阻止率向上剤を透過膜に接触させる請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  6. 阻止率向上剤が、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物である請求項5記載の方法。
  7. 加圧処理を行った後に、炭素数8以上の疎水性基を有しない親水性の高分子からなる阻止率向上剤を透過膜に接触させ、その後炭素数8以上の疎水性基を有する水溶性の高分子からなる修飾剤を透過膜に接触させる請求項5または6記載の方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により得られる透過膜。
  9. 請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により得られる透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う透過膜処理方法。
  10. 請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により得られる透過膜と、透過膜に被処理液を透過させて透過膜処理を行う手段を有する透過膜処理装置。
  11. 1次側に被処理液を通液し、2次側から透過液を取り出す透過膜モジュールと、
    (a)電解質および(b)分子量100〜500の有機物から選ばれる1種以上の溶質が溶解し、かつ浸透圧Δπが0.1〜4.0MPaである溶質水溶液をモジュールの1次側に供給して透過膜の片側に接触させ、溶媒としての水をモジュールの2次側に供給して透過膜の反対側に接触させ、浸透圧Δπに対向する運転圧力ΔPを溶質水溶液に加えて、透過膜を加圧処理する加圧処理手段と、
    モジュールの1次側に、有機物を主成分とする阻止率向上剤を通液して、阻止率向上処理を行う阻止率向上処理装置と
    を含む透過膜装置。
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