JP4967202B2 - スパッタリング用ターゲット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリング法によりITO(錫をドープしたインジウム酸化物)膜やCr(クロム)膜等を成膜するために用いられるスパッタリング用ターゲットに係り、とりわけ、複数の分割部材の組み合わせにより全体として一つのターゲット本体を構成してなるスパッタリング用ターゲットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ITO膜等の成膜法として、ITO焼結体をターゲットとし、所定のスパッタリング条件の下で基板上にITOをスパッタリングすることにより、所望のITO膜を形成する方法が知られている(特開平6−24826号公報および特開平6−247765号公報参照)。
【0003】
図4は従来のスパッタリング用ターゲットを示す図である。図4に示すように、従来のスパッタリング用ターゲット20は、バッキングプレート21と、バッキングプレート21上にハンダ材層22を介して接合された焼結体23とを備えている。ここで、焼結体23は、スパッタリング用ターゲット20が大型化するのに伴って一体物として作製することが困難となっており、分割部材としての焼結体片24を複数組み合わせることにより作製されている(本発明を示す図2参照)。なお、焼結体23を構成する隣接した各焼結体片24は、熱膨張の影響を考慮して、互いに所定の隙間25をあけて配置されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のスパッタリング用ターゲット20では、焼結体23とバッキングプレート21との間に介在されたハンダ材層22が隙間25の箇所で外部に向けて露呈した状態になっているので、当該露呈した部分のハンダ材が隙間25から外部へ放出されやすい。ここで、外部へ放出されたハンダ材は、焼結体23の成分とともにスパッタリングされるので、スパッタリングにより形成される膜の特性に悪影響を与える。また、外部へ放出されたハンダ材は、焼結体23(焼結体片24)の表面に付着し、不純物であるノジュールを形成するので、焼結体23(焼結体片24)の表面のうちでスパッタリングに利用できる領域が狭くなり、焼結体23の利用効率が低下する。また、焼結体23の表面に形成されたノジュールが異常放電の原因となり、スパッタリングにより形成される膜にピンホール等が発生して膜の特性が低下する。
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、利用効率に優れ、スパッタリングにより形成される膜の特性を向上させることができるスパッタリング用ターゲットを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、バッキングプレートと、前記バッキングプレートの表面に形成された接合材層と、前記バッキングプレート上に前記接合材層を介して接合されたターゲット本体とを備え、前記ターゲット本体は、互いに所定の隙間をあけて隣接して配置された複数の分割部材からなり、前記各分割部材のうち前記隙間に臨む端面は、前記接合材層のうち前記隙間に向けて露呈した部分を覆うよう画成されていることを特徴とするスパッタリング用ターゲットを提供する。
【0007】
なお、本発明において、前記各分割部材のうち前記隙間に臨む端面は、前記バッキングプレートの表面に対して傾斜した傾斜面、または前記バッキングプレートの表面から階段状に延びる階段面として画成されていることが好ましい。また、前記ターゲット本体は焼結体からなることが好ましい。
【0008】
本発明によれば、ターゲット本体を構成する各分割部材のうち隙間に臨む端面が、接合材層のうち隙間に向けて露呈した部分を覆うよう画成されているので、接合材層のうち隙間に向けて露呈した部分が外部へ放出されることを防止することができ、このため、スパッタリングにより形成される膜の特性を向上させるとともに、ターゲット本体の利用効率を向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1(a)(b)および図2は本発明によるスパッタリング用ターゲットの一実施の形態を示す図である。なお、図1(a)(b)は本実施の形態に係るスパッタリング用ターゲットを示す断面図、図2はスパッタリング用ターゲットの全体構成を示す平面図である。
【0010】
まず、図2により、本実施の形態に係るスパッタリング用ターゲット10の全体構成について説明する。
【0011】
図2に示すように、スパッタリング用ターゲット10は、バッキングプレート11と、バッキングプレート11上にハンダ材層(接合材層)(図1(a)(b)の符号12参照)を介して接合された焼結体(ターゲット本体)13とを備えている。なお、バッキングプレート11は、銅等からなり、その内部には、焼結体13を冷却するための水冷機構(図示せず)が組み込まれている。また、ハンダ材層12はインジウム系合金等からなり、焼結体13はITO(錫をドープしたインジウム酸化物)からなっている。
【0012】
ここで、焼結体13は、分割部材としての焼結体片14,14′を組み合わせることにより作製されており、図2に示すスパッタリング用ターゲット10では、バッキングプレート11の中央部に比較的大型の焼結体片14が2枚配置され、バッキングプレート11の外側に比較的小型の焼結体片14′が2枚配置されている。また、焼結体13を構成する隣接した各焼結体片14,14′は、熱膨張の影響を考慮して、互いに所定の隙間15をあけて配置されている。なお、図2において、スパッタリング対象となる基板16は、焼結体片14,14′の配列方向に直交する方向に搬送される。
【0013】
図1(a)は図2に示すスパッタリング用ターゲット10のうちIA−IA線に沿った断面図、図1(b)は図2に示すスパッタリング用ターゲット10のうちIB−IB線に沿った断面図である。
【0014】
図1(a)(b)に示すように、スパッタリング用ターゲット10は、バッキングプレート11と、バッキングプレート11の表面に形成されたハンダ材層(接合材層)12と、バッキングプレート11上にハンダ材層12を介して接合された焼結体13とを備えている。ここで、焼結体13は、所定の隙間15をあけて隣接して配置された複数の焼結体片14,14′からなっており、各焼結体片14,14′のうち隙間15に臨む端面は、ハンダ材層12のうち隙間15に向けて露呈した部分を覆うよう、バッキングプレート11の表面に対して傾斜した傾斜面14a,14b,14c,14dとして画成されている。なお、バッキングプレート11の外側に配置された焼結体片14′は中央部に配置された焼結体片14よりもスパッタリング時の消費量が大きいので、焼結体片14′は、焼結体片14に比べて肉厚とされている(図1(b))。ただし、スパッタリング時の放電状態を安定化させるため、バッキングプレート11の外側部分が中央部部分に比べて掘り下げられ、焼結体片14,14′の表面の高さは一定に保たれている。
【0015】
次に、このような構成からなるスパッタリング用ターゲット10の製造方法について説明する。
【0016】
まず、焼結体13を構成する焼結体片14,14′を作製する。
【0017】
具体的には、まず、原料粉である酸化インジウム粉と酸化錫粉とを準備し、ボールミルで混合および粉砕する。
【0018】
次に、ボールミル中にイオン交換水および有機添加剤(分散剤)を添加して混合を行い、原料粉を分散させる。次いで、有機添加剤(バインダー)を添加して混合を行い、スラリーを得る。最後に、有機添加剤(消泡剤)を添加して減圧脱気する。
【0019】
そして、脱気したスラリーを成形型に注入し、成形型のフィルタを用いてスラリー中の水分を減圧排水することにより、焼結体片14,14′の外形を備えた成形体を成形する。これにより、図1(a)(b)および図2に示すような焼結体片14,14′の外形(略矩形状の平板体を成すとともに、傾斜した端面(傾斜面14a,14b,14c,14d)を有する外形)が一度に成形される。なお、成形型としては濾過式成形型を用いることができる(例えば特開平11−286002号公報参照)。
【0020】
その後、得られた成形体に対して自然乾燥および脱脂を行った後、成形体を焼成することにより焼結体片14,14′を得る。
【0021】
なお、このようにして作製された焼結体片14,14′は、ハンダ材層12が塗布されたバッキングプレート11上に貼り合わされ、冷却や矯正等の処理が行われることにより、最終的にスパッタリング用ターゲット10が製造される。
【0022】
このように本実施の形態によれば、焼結体13を構成する各焼結体片14,14′のうち隙間15に臨む端面が、ハンダ材層12のうち隙間15に向けて露呈した部分を覆うよう傾斜面14a,14b,14c,14dとして画成されているので、ハンダ材層12のうち隙間15に向けて露呈した部分が外部へ放出されることを防止することができ、このため、スパッタリングにより形成される膜の特性を向上させるとともに、焼結体13の利用効率を向上させることができる。
【0023】
なお、上述した実施の形態においては、各焼結体片14,14′のうち隙間15に臨む端面を、バッキングプレート11の表面に対して傾斜した傾斜面14a,14b,14c,14dとして画成しているが、これに限らず、図3(a)(b)(c)に示すように、バッキングプレート11の表面から階段状に延びる階段面14e,14f,14g,14hとして画成するようにしてもよい。
【0024】
また、上述した実施の形態においては、原料粉のスラリーを成形型により成形することにより、各焼結体片14,14′の外形を備えた成形体を一度に成形しているが、これに限らず、原料粉を圧力により成形して略矩形状の平板体の成形体を作製した上で、当該成形体の端面を切削して傾斜面や階段面を形成することにより、図1(a)(b)や図3(a)(b)(c)に示すような各焼結体片14,14′の外形を備えた成形体を成形するようにしてもよい(例えば特開平6−24826号公報参照)。
【0025】
また、上述した実施の形態においては、ターゲット本体13として焼結体を用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、鋳鋼品を用いるようにしてもよい。また、ターゲット本体13の材料としては、スパッタリングにより形成される膜の種類に応じてCr(クロム)等の種々の材料を用いることができる。
【0026】
【実施例】
次に、上述した実施の形態に係るスパッタリング用ターゲットの具体的実施例について述べる。
【0027】
銅からなるバッキングプレート(大きさ1580mm×300mm、厚さ50mm)上に、インジウムからなるハンダ材層(厚さ0.3mm)を形成し、このハンダ材層を介して、図2に示すような態様で、バッキングプレート上にITOからなる4枚の焼結体片を配置した。4枚の焼結体片のうち、中央部の2枚の焼結体片は、大きさ1250mm×230mm、厚さ6mmとし、外側の2枚の焼結体片は、大きさ130mm×230mm、厚さ9mmとした。なお、隣接した各焼結体片間の隙間は1mmとした。
【0028】
ここで、スパッタリング用ターゲットとして、各焼結体片の端面をバッキングプレートの表面に対して30°傾けた傾斜面としたもの(実施例)と、各焼結体片の端面がバッキングプレートの表面に対して垂直なもの(比較例)とを準備した。そして、このようなスパッタリング用ターゲットをスパッタリング装置(BPS社製「Aristoシリーズ・スパッタリング装置」)内に収容し、スパッタリング対象となるガラス基板を焼結体片の配列方向に直交する方向に搬送させ(図2参照)、下記のスパッタリング条件でスパッタリング試験成膜を行った。
【0029】
(スパッタリング条件)
投入電力 :1.8W/cm
圧力 :6mmTorr
酸素分圧 :1容量%
基板加熱温度:120℃
具体的には、上記のスパッタリング条件で、20時間連続でスパッタリングした後、ガラス基板を投入して、膜厚が1500オングストロームのITO膜を成膜した。また、同一のスパッタリング条件で、80時間連続でスパッタリングした後、ガラス基板を投入して、膜厚が1500オングストロームのITO膜を形成した。
【0030】
ここで、実施例および比較例のそれぞれのスパッタリング用ターゲットについて、スパッタリング中に発生した異常放電回数(回/(5min))、およびITO膜の比抵抗値(Ω・cm)を測定するとともに、ターゲットの表面状態を観察した。次表はその結果を示すものである。なお、異常放電回数の測定には、マイクロアークモニター(MAM Genesis)(ランドマークテクノロジー社製)を用い、アークのエネルギー値が20mJ以上のものを異常放電として測定した。
【0031】
【表1】
Figure 0004967202
上表から分かるように、実施例のスパッタリング用ターゲットでは、比較例のスパッタリング用ターゲットに比べて、スパッタリング時の異常放電の回数が少なく、低抵抗な比抵抗値(2.3×10−4 Ω・cm)を持ちピンホールの発生も少ない優れたITO膜を形成することができた。また、ターゲットの表面状態も、80時間連続運転した場合でも、比較例で20時間連続運転した場合と同程度の状態を保っており、長時間にわたって安定的に良質なITO膜を形成することが可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ターゲット本体を構成する各分割部材のうち隙間に臨む端面が、接合材層のうち隙間に向けて露呈した部分を覆うよう画成されているので、接合材層のうち隙間に向けて露呈した部分が外部へ放出されることを防止することができ、このため、スパッタリングにより形成される膜の特性を向上させるとともに、ターゲット本体の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスパッタリング用ターゲットの一実施の形態を示す断面図。
【図2】スパッタリング用ターゲットの全体構成を示す平面図。
【図3】本発明によるスパッタリング用ターゲットの他の実施の形態を示す断面図。
【図4】従来のスパッタリング用ターゲットを示す断面図。
【符号の説明】
10 スパッタリング用ターゲット
11 バッキングプレート
12 ハンダ材層(接合材層)
13 焼結体(ターゲット本体)
14,14′ 焼結体片(分割部材)
14a,14b,14c,14d 傾斜面(端面)
14e,14f,14g,14h 階段面(端面)
15 隙間
16 基板

Claims (4)

  1. バッキングプレートと、
    前記バッキングプレートの表面に形成された接合材層と、
    前記バッキングプレート上に前記接合材層を介して接合されたターゲット本体とを備え、
    前記ターゲット本体は、互いに所定の隙間をあけて隣接して配置された複数の分割部材からなり、前記各分割部材のうち前記隙間に臨む端面は、前記接合材層のうち前記隙間に向けて露呈した部分を覆うよう画成されており、
    外側に位置する分割部材の肉厚は、中央に位置する分割部材の肉厚よりも厚く、
    前記バッキングプレートの表面は、複数の分割部材の表面の高さが一定に保たれるように、外側部分において中央部分よりも掘り下げられていることを特徴とするスパッタリング用ターゲット。
  2. 前記各分割部材のうち前記隙間に臨む端面は、前記バッキングプレートの表面に対して傾斜した傾斜面として画成されていることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング用ターゲット。
  3. 前記各分割部材のうち前記隙間に臨む端面は、前記バッキングプレートの表面から階段状に延びる階段面として画成されていることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング用ターゲット。
  4. 前記ターゲット本体は焼結体からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のスパッタリング用ターゲット。
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