JP4964449B2 - 電解コンデンサ - Google Patents

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Description

本発明は、陽極電極引出し手段が、封口体との接触部分の少なくとも一部にセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えたものである、電解コンデンサに関する。
電解コンデンサは、小型でありながら大きな静電容量を有する点に特徴があり、低周波のフィルターやバイパス用に多用されている。電解コンデンサは、一般的には図1及び2に示すような構造からなる。すなわち、帯状の高純度のアルミニウム箔に、化学的あるいは電気化学的にエッチング処理を施して、アルミニウム箔表面積を拡大させる(拡面処理)とともに、このアルミニウム箔をホウ酸アンモニウム水溶液等の化成液中にて化成処理して表面に酸化皮膜層を形成させた陽極電極箔2と、エッチング処理のみを施した高純度のアルミニウム箔からなる陰極電極箔3とを、マニラ紙等からなるセパレータ11を介して巻回してコンデンサ素子1を形成する。そして、このコンデンサ素子1に、電解コンデンサ駆動用の電解液を含浸した後、アルミニウム等からなる有底筒状の外装ケース10に収納する。外装ケース10の開口部には弾性ゴムからなる封口体9を装着し、絞り加工により外装ケース10を密封している。
陽極電極箔2、陰極電極箔3には、図2に示すように、それぞれ陽極・陰極の電極を外部に引き出すための電極引出し手段であるリード線4、5がステッチ、超音波溶接等の手段により接続されている。リード線4、5は、アルミニウムからなる丸棒部6と、丸棒部の先端に設けられた両極電極箔2、3に当接する接続部7からなり、さらに丸棒部6の他方の先端には、半田付け可能な金属からなる外部接続部8が溶接等の手段で固着されている。
電解コンデンサにおいて、陰極、陽極、電解液は、いずれもその特性に大きな影響を与える重要な構成物である。
このうち、陰極については、これまで液漏れの問題が指摘されてきた。すなわち、陰極電極引出し手段としてのリード線(陰極リード線)の自然浸漬電位の方が、陰極電極箔の自然浸漬電位よりも貴な電位を示すため、これに起因して、電流が負荷されている場合、無負荷の場合、双方において、陰極リード線にカソード電流が流れることになる。その結果、陰極リード線と電解液の界面部分で水酸化物イオンが生成する。電解質として第四級環状アミジニウム、溶媒としてγ−ブチロラクトンを含む従来の電解液の場合、水酸化物イオンは、第四級環状アミジニウムを開環させて強塩基である第二級アミンを発生させ、γ−ブチロラクトンと反応してγ−ヒドロキシ酪酸を生成してpHを低下させる。pHが低下すると、上記の第二級アミンが閉環して、揮発性が小さく、吸湿性の高い第四級環状アミジニウム塩を再生成する。これが陰極引出し手段の丸棒部と封口体の間に再生成することにより、吸湿して液漏れ状態を招くといった問題である。この問題を改善するために、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
これに対して、陽極については、陽極電極箔は、化成処理により不活性な酸化皮膜層で覆われているため、上記のような液漏れの問題は起こりえないと認識されていた。
一方、電解液については、インピーダンスの低下、良好な熱安定性、高い耐熱性を有する電解コンデンサを得るため、テトラフルオロアルミン酸イオンを含有する電解コンデンサ用電解液が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2004−165206号公報 特開2004−165207号公報 特開2003−142346号公報
本発明者らは、上記のテトラフルオロアルミン酸イオンを含有する電解液との組み合わせにおいて、電解コンデンサの研究を進める中で、従来、起こりえないと認識されていた陽極にも、厳密にいえば液漏れの問題が発生し、この問題を解決することが一層の電解コンデンサの特性向上に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、陽極電極引出し手段を備えた陽極電極箔と、陰極電極引出し手段を備えた陰極電極箔とを、セパレータを介して巻回し、かつ電解液を含浸させてなるコンデンサ素子;該コンデンサ素子を収納する外装ケース;及び該外装ケースの開口部を封口する封口体;を有する電解コンデンサであって、陽極電極引出し手段が、封口体との接触部分の少なくとも一部にセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えた電解コンデンサに関する。
本発明によれば、陽極からの液漏れが著しく制御された電解コンデンサが得られる。なお、本発明の電解コンデンサは、テトラフルオロアルミン酸イオンを含有する電解液との組み合わせにおいて特に効果的であるが、これに限定されない。
図1及び2に示すような電解コンデンサの構造を例にとって、各構成部分に沿って、本発明を以下説明する。図1及び2に示すような構造は、小型の電解コンデンサに汎用される。
本発明において、陽極電極箔2は、特に限定されず、例えば純度99.9%以上のアルミニウム箔を酸性溶液中で化学的又は電気化学的なエッチングにより拡面処理した後、電解質として、リン酸二水素アンモニウム又はリン酸水素二アンモニウム等を含むリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等を含むホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等を含むアジピン酸系の化成液等の中で化成処理を行い、その表面に酸化アルミニウム皮膜層を形成したものを用いることができる。
本発明において、陰極電極箔3は、特に限定されず、例えば陽極電極箔と同様に純度99.9%以上のアルミニウム箔をエッチングしたものを用いることができる。また、陰極電極箔の表面の一部又は全部に、金属窒化物又は金属の1種又は2種以上からなる皮膜を形成した陰極電極箔も用いることができる。このような陰極電極箔は、例えば特開2004−165203号公報に記載されている。具体的には、金属窒化物としては、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化ニオブ等が、金属としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ等が挙げられ、皮膜の厚みとしては、0.02〜0.1μmが挙げられる。さらに、銅、鉄、マンガン、スズ、チタンのうち1種又は2種以上を含む純度99.9%未満のアルミニウムからなる陰極電極箔も、純度99.9%以上のアルミニウム線材を用いる陰極電極引出し手段との組み合わせにおいて使用することができる。このような陰極電極箔は、例えば特開2004−165204号公報に記載されている。
本発明において、セパレータ11は、特に限定されず、例えばマニラ紙、クラフト紙等の紙を用いることができることができる。また、セパレータには、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等の不織布を用いることもできる。
本発明においては、電極引出し手段を作成するに際し、まず、断続的にプレス加工したアルミニウム線材を、所定の寸法に裁断して形成した丸棒部6及び接続部7からなるアルミニウム導体を作成し、その後に化成処理を行って、表面に陽極酸化皮膜を形成する。その後に、このアルミニウム導体の端面に、銅メッキ鉄鋼線(CP線)からなる外部接続部8を溶接して、リード線4、5を構成する。電極引出し手段には、純度99.9%以上のアルミニウムを使用することができ、液漏れ防止の観点からは、電極箔と純度が同等であるか、又はより高いことが好ましい。
本発明においては、陽極電極引出し手段は、コンデンサ素子が外装ケースに挿入・封口されたときに、封口体との接触部分の少なくとも一部、好ましくは全部にセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えるように加工されている。
セラミックコーティング層は、以下のようにして加工することができる。上記のように表面に陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム導体の丸棒部6に、金属アルコキシド系セラミックスからなるコーティング剤を吐出、コートし、その後熱処理し、次いで再度前記コーティング剤を吐出、コートした後、再び熱処理することにより、アルミニウム導体上にセラミックコーティング層を形成することができる。
金属アルコキシド系セラミックスに用いるセラミックスとしては、Al、SiO、ZrO、TiO、MgO、H BO、Cr、BaTiO、PbTiO、KTaO等が挙げられる。なお、ここで用いられるセラミックスとしては、コーティング特性を考慮すると、Al、SiO、ZrOの中から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましく、さらに、強度を考慮すると、Al、SiOからなる混合物を用いることが好ましい。
また、コーティング方法として、丸棒部6をコーティング剤に浸漬してコーティングする方法もある。すなわち、アルミニウム導体をコーティング剤に浸漬し、その後熱処理し、次いで再度前記コーティング剤に浸漬した後、再び熱処理することにより、アルミニウム導体上にセラミックコーティング層を形成する。その後に、接続部7をメタノール溶液中に浸漬し、超音波等によってセラミックコーティング層を除去し、丸棒部6にのみセラミックコーティング層を残存させる方法である。しかしながら、セラミックコーティング層を除去する際の調整の容易さの点から、また丸棒部に精度良くセラミックコーティング層を形成する点から、前述した吐出、コートによる方法の方が好ましい。
絶縁性合成樹脂層は、以下のようにして加工することができる。まず、絶縁性の合成樹脂材料としては、例えば、エポキシ、フェノール、フラン、メラミン、キシレン、グアナミン樹脂等の熱硬化性樹脂、フッ素、ブタジエン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルホルマール、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ケトン、クマロン、MBS樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。そしてこれらのものには、10重量%以下の割合で、例えばシラン系、チタネート系等のカップリング剤を配合して使用することもでき、例えばエポキシ樹脂とβ-(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤を含むコーティング剤を使用することができる。
上記のように表面に陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム導体の丸棒部6に、カップリング剤を塗布乾燥してカップリング剤層を形成せしめた後、あるいはカップリング剤を適用せず、加熱もしくは適当な溶剤によって調整された絶縁性合成樹脂の液状溶融物からなるコーティング剤を吐出、コートし、その後乾燥処理することにより、アルミニウム導体上に絶縁性合成樹脂層を形成することができる。
あるいは、熱溶融性の合成樹脂フィルムを成形したものを丸棒部6に被覆した後、加熱処理して形成してもよい。
また、コーティング方法として、丸棒部6を、絶縁性合成樹脂を含むコーティング剤に浸漬してコーティングする方法もある。すなわち、アルミニウム導体をコーティング剤に浸漬し、その後乾燥処理し、アルミニウム導体上に絶縁性合成樹脂層を形成する。その後に、接続部7をメタノール溶液中に浸漬し、超音波等によって絶縁性合成樹脂層を除去し、丸棒部6にのみ絶縁性合成樹脂層を残存させる方法である。しかしながら、絶縁性合成樹脂層を除去する際の調整の容易さの点から、また丸棒部に精度良く絶縁性合成樹脂層を形成する点から、前述した吐出、コートによる方法の方がのぞましい。
上記のようにセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えたリード線4の接続部7を、陽極電極箔2にステッチ法や超音波溶接等により機械的に接続する。なお、ここで、リード線4を陽極電極箔2に接続した後に、セラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層の加工を行う方法もあるが、コーティング精度を考慮すると、これらの層は、コンデンサ製造工程の前に予め形成することが好ましい。さらに、十分な液漏れ防止効果を得るためには、これらの層は、リード線4の少なくとも丸棒部6に形成されていることが好ましい。
また、リード線5の接続部7を、陰極電極箔3に同様にして接続する。陰極電極箔の陰極電極引出し手段も、陰極からの液漏れを防ぐため、上記と同様に、コンデンサ素子が外装ケースに挿入・封口されたときに、封口体との接触部分の少なくとも一部、好ましくは全部に、セラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えていることが好ましい。
セラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層の厚みは、液漏れ抑制効果と皮膜強度の点から、5〜30μmであることが好ましく、より好ましくは10〜20μmである。
上記のようにして得られるコンデンサ素子に電解液を含浸させ、外装ケースに挿入・封口することができる。ただし、本発明においては、陽極電極箔表面の酸化皮膜層の亀裂や損傷部分を修復する点から、電解液の含浸に先立ち、コンデンサ素子を化成液に浸漬し、修復化成を行うことが好ましい。
修復化成の化成液としては、特に限定されず、従来、陽極電極箔2の化成に用いられる化成液を用いることができる。具体的には、電解質として、リン酸二水素アンモニウム又はリン酸水素二アンモニウム等を含むリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等を含むホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等を含むアジピン酸系の化成液が挙げられる。なかでも、耐水性の点から、リン酸系化成液を用いることが好ましい。化成液の濃度もまた、従来、陽極電極箔の化成に用いられる化成液の濃度とすることができ、例えば、電解質を0.01〜1重量%含む水溶液とすることができる。なお、修復化成の化成液は、コンデンサ素子の陽極電解箔の化成に用いた化成液と同じであっても、異なっていてもよい。
修復化成は公知の手段により行うことができ、例えばコンデンサ素子に化成液を含浸させた後、陽極に電圧印加して行うことができる。電圧は、定格電圧以上、陽極電極箔化成電圧以下が好ましい。また、化成時間は、例えば5〜120分とすることができる。
修復化成したコンデンサ素子を、洗浄し、乾燥させてから、電解液を含浸させることが好ましい。
電解液は、特に限定されず、アルミニウム電解コンデンサに使用される電解液を用いることができる。とりわけ、本発明は、テトラフルオロアルミン酸イオンを含む電解液を使用する場合に効果的である。テトラフルオロアルミン酸イオンを含む電解液を使用した電解コンデンサにおける陽極からの液漏れは、フタル酸等の第四級アンモニウム塩等を含有する電解液を使用した従来のアルミニウム電解コンデンサよりも、陽極の自然電位が卑にシフトしていくといった傾向がみられ、このため、陽極引出し手段が陽極電極箔より貴になり、この部分で酸化還元反応が起こり水酸化物が生成するためと考えられ、これにより電解コンデンサの特性も変化しやすくなると考えられる。しかしながら、本発明においては、陽極電極引出し手段の封口体との接触部分の少なくとも一部にセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えているので、この部分での酸化還元反応が抑制され、液漏れが防止されると推定される。
テトラフルオロアルミン酸イオンを含む電解液は、例えば特開2003−142346号公報に記載のものを用いることができる。具体的には、電解液のアニオン成分の全部又はその一部にテトラフルオロアルミン酸イオン(AlF )を使用したものを用いることが好ましく、なかでもアニオン成分のうちテトラフルオロアルミン酸イオンが5〜100モル%である電解液が好ましく、より好ましくは30〜100モル%、特に好ましくは、50〜100モル%、最も好ましくは100モル%である電解液である。
上記電解液は、テトラフルオロアルミン酸イオンを、塩の形態で電解液中に含有することができ、テトラフルオロアルミン酸塩は、好適には第四級オニウム塩、アミン塩、アンモニウム塩及びアルカリ金属塩からなる群より選択される1種以上である。
第四級オニウム塩の好適な例としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級イミダゾリウム塩及び第四級アミジニウム塩が挙げられる。
第四級アンモニウム塩の第四級アンモニウムイオンの好適な例としては、以下が挙げられる。
(i)テトラアルキルアンモニウム
例えば、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチル−n−プロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、トリメチル−n−ブチルアンモニウム、トリメチルイソブチルアンモニウム、トリメチル−t−ブチルアンモニウム、トリメチル−n−ヘキシルアンモニウム、ジメチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジメチルジイソプロピルアンモニウム、ジメチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、メチルトリ−n−プロピルアンモニウム、メチルトリイソプロピルアンモニウム、メチルジ−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、メチル−n−プロピルジイソプロピルアンモニウム、トリエチル−n−プロピルアンモニウム、トリエチルイソプロピルアンモニウム、トリエチル−n−ブチルアンモニウム、トリエチルイソブチルアンモニウム、トリエチル−t−ブチルアンモニウム、ジメチルジ−n−ブチルアンモニウム、ジメチルジイソブチルアンモニウム、ジメチルジ−t−ブチルアンモニウム、ジメチル−n−ブチルエチルアンモニウム、ジメチルイソブチルエチルアンモニウム、ジメチル−t−ブチルエチルアンモニウム、ジメチル−n−ブチルイソブチルアンモニウム、ジメチル−n−ブチル−t−ブチルアンモニウム、ジメチルイソブチル−t−ブチルアンモニウム、ジエチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジエチルジイソプロピルアンモニウム、ジエチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、エチルトリ−n−プロピルアンモニウム、エチルトリイソプロピルアンモニウム、エチルジ−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、エチル−n−プロピルジイソプロピルアンモニウム、ジエチルメチル−n−プロピルアンモニウム、エチルジメチル−n−プロピルアンモニウム、エチルメチルジ−n−プロピルアンモニウム、ジエチルメチルイソプロピルアンモニウム、エチルジメチルイソプロピルアンモニウム、エチルメチルジイソプロピルアンモニウム、エチルメチル−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、n−プロピルトリイソプロピルアンモニウム、ジ−n−プロピルジイソプロピルアンモニウム、トリ−n−プロピルイソプロピルアンモニウム、、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリメチルヘプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルノニルアンモニウム等が挙げられる。これらはいずれも炭素数の和が4〜12であるが、電解液には、炭素数の和が13以上のものも使用することができ、例えばトリメチルデシルアンモニウム、トリメチルウンデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム等が挙げられる。
(ii)芳香族置換アンモニウム
例えば、トリメチルフェニルアンモニウム等の炭素数の和が4〜12のもの、及び、テトラフェニルアンモニウム等の炭素数の和が13以上のものが挙げられる。
(iii)脂肪族環状アンモニウム
例えば、N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N,N−ジエチルピロリジニウム、N,N−テトラメチレンピロリジニウム等のピロリジニウム;N,N−ジメチルピペリジニウム、N−エチル−N−メチルピペリジニウム、N,N−ジエチルピペリジニウム、N,N−テトラメチレンピペリジニウム、N,N−ペンタメチレンピペリジニウム等のピペリジニウム;N,N−ジメチルモルホリニウム、N−エチル−N−メチルモルホリニウム、N,N−ジエチルモルホリニウム等のモルホリニウムが挙げられる。これらはいずれも炭素数の和が4〜12であるが、電解液には、炭素数の和が13以上のものも使用することができる。
(iv)含窒素ヘテロ環芳香族化合物のイオン
例えば、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−n−プロピルピリジニウム、N−イソプロピルピリジニウム、N−n−ブチルピリジニウム等のピリジニウムを挙げることができる。これらはいずれも炭素数の和が4〜12であるが、電解液には、炭素数の和が13以上のものも使用することができる。
第四級ホスホニウム塩の第四級ホスホニウムイオンの好適な例としては、テトラメチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム等を挙げることができる。これらはいずれも炭素数の和が4〜12であるが、電解液には、炭素数の和が13以上のものも使用することができる。
第四級イミダゾリウム塩の第四級イミダゾリウムイオンの好適な例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,4−トリメチル−3−n−プロピルジメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルベンゾイミダゾリウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリウム等を挙げることができる。これらは、いずれも炭素数の和が4〜12の第四級イミダゾリウムである。
なお、電解液には、炭素数の和が13以上の第四級イミダゾリウムも使用することができ、好適な例としては、1,3−ジメチル−2−n−ウンデシルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプタデシルイミダゾリウム等を挙げることができる。また、電解液には、ヒドロキシル基、エーテル基を含有する第四級イミダゾリウムも使用することができ、好適な例としては、2−(2’−ヒドロキシ)エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(2’−ヒドロキシ)エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−エトキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エトキシメチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等を挙げることができる。
第四級アミジニウムの好適な例としては、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリニウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリニウム、1,2,4−トリメチル−3−n−プロピルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリニウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリニウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム;1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,3−ジエチルテトラヒドロピリミジニウム、1−エチル−3−メチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリエチルテトラヒドロピリミジニウム、1−エチル−2,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、2−エチル−1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2−ジエチル−3−メチルテトラヒドロピリミジニウム、1,3−ジエチル−2−メチルテトラヒドロピリミジニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネニウム−5、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセニウム−7等のテトラヒドロピリミジニウムを挙げることができる。これらは、いずれも炭素数の和が4〜12の第四級アミジニウムである。
なお、電解液には、炭素数の和が13以上の第四級アミジニウムも使用することができ、好適な例としては、1,3−ジメチル−2−n−ウンデシルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプタデシルイミダゾリニウム等を挙げることができる。また、電解液には、ヒドロキシル基、エーテル基を含有する第四級アミジニウムも使用することができ、好適な例としては、2−(2’−ヒドロキシ)エチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−(2’−ヒドロキシ)エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−エトキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−エトキシメチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム等を挙げることができる。
電解液は、第四級オニウム塩以外にもアミン塩、アンモニウム塩(NH4 +AlF4 -)、アルカリ金属塩としてテトラフルオロアルミン酸イオンを含有することができる。
アミン塩のアミンの好適な例としては、トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルイミダゾール、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデン−7等の第三級アミンが挙げられる。また、上記の第三級アミン以外にも、第一級アミン、第二級アミンを使用することができ、例えば、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、イソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン等を挙げることができる。アルカリ金属の好適な例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等を挙げることができる。
これらのカチオン成分の中でも、高い電気伝導率の電解液を得るという観点から、炭素数の和が4〜12である第四級オニウムが好ましく、なかでもテトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルベンゾイミダゾリウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−プロピルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ペンチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−n−ヘプチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリニウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリニウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム及び2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリニウムからなる群より選択される1種以上の化合物であることが好ましく、更に好ましくは、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムであることが好ましい。
なお、電解液は、テトラフルオロアルミン酸イオン以外のアニオン成分を含むことができ、これらの具体的な例としては、例えば含フッ素無機イオンテトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロニオブ酸イオン、ヘキサフルオロタンタル酸イオン等の含フッ素無機イオン;フタル酸イオン、マレイン酸イオン、サリチル酸イオン、安息香酸イオン、アジピン酸イオン等のカルボン酸イオン;ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、パーフルオロブタンスルホン酸等のスルホン酸イオン;ホウ酸イオン、リン酸イオン等の無機オキソ酸イオン;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、パーフルオロアルキルボレートイオン、パーフルオロアルキルホスフェートイオン等を挙げることができる。塩としては、フタル酸水素塩、マレイン酸水素塩等を併用することができる。例えば、テトラフルオロアルミン酸塩とフタル酸水素塩、マレイン酸水素塩等を併用する場合、テトラフルオロアルミン酸塩が主体となることが好ましく、塩の総重量に対して、テトラフルオロアルミン酸塩が50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上であり、比率は高い程、好ましい。
テトラフルオロアルミン酸塩を電解コンデンサに用いる場合には、高純度である必要があるため、塩は必要により再結晶や溶媒抽出等により所望の純度にまで精製して使用される。
電解液においてテトラフルオロアルミン酸塩の濃度は、好ましくは5〜40重量%であり、更に好ましくは10〜35重量%である。これは濃度が低すぎる場合に電気伝導率が低いこと、また濃度が高すぎる場合には電解液の粘性の増加、低温での塩が析出等が起こりやすくなる等の理由による。一般に、低濃度になるほど電解コンデンサ用電解液の耐電圧は増加する傾向にあるので、所望のコンデンサの定格電圧によって最適な濃度を決定することができる。ただし、電解液は、塩を50%以上含有する濃厚溶液であってもよく、常温溶融塩であってもよい。
電解液は、さらに優れた電気伝導率、熱安定性、耐電圧性を有する電解液を得る観点から、溶媒を50重量%以上含有することが好ましい。溶媒は、炭酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、ニトリル、アミド、スルホン、アルコール及び水からなる群より選択される1種以上が挙げられるが、電解液に使用した場合に、経時的に安定した特性を示す傾向がある、炭酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、ニトリル、アミド、スルホン及びアルコールから選択することが好ましい。溶媒として、水を用いる場合は、他の溶媒と組合せて、溶媒の一部として用いることが好ましい。
そのような溶媒の具体的な例としては、以下が挙げられる。鎖状炭酸エステル(例えば、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル)、環状炭酸エステル(例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2−ビニル炭酸エチレン等の環状炭酸エステル)等の炭酸エステル;脂肪族カルボン酸エステル(例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等)、芳香族カルボン酸エステル(例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル等)、ラクトン(例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等)等のカルボン酸エステル;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル等のニトリル;N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等のスルホン;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができる。
なお、導電性により優れる電解液を得る点からは、溶媒として25以上の比誘電率(ε、25℃)を有する非水系溶媒を好ましく用いることができ、また、安全性の観点から、溶媒として70℃以上の引火点を有する非水系溶媒を好ましく用いることもできる。
熱安定性により優れる電解液を得る点からは、沸点250℃以上、融点−60〜40℃、及び誘電率(ε、25℃)25以上である溶媒を、溶媒の総重量に対して、25重量%以上含むことが好ましく、より好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上含む。このような溶媒の例としては、スルホンを挙げることができ、特にスルホラン、3−メチルスルホランが好ましい。このような溶媒を電解液に組合せて用いることにより、環境温度110〜150℃での動作を1000時間以上保証する、低インピーダンスで高耐電圧な電解コンデンサが得られる。
また、より低インピーダンスの電解コンデンサを得る点からは、沸点190℃以上、250℃未満、融点−60〜40℃、及び誘電率(ε、25℃)25以上である溶媒を、溶媒の総重量に対して、25重量%以上含むことが好ましく、より好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上含む。このような溶媒の例としては、炭酸エステル、カルボン酸エステル、リン酸エステル、ニトリル、アミド及びアルコールを挙げることができ、特にγ−ブチロラクトン、エチレングリコールが好ましい。このような溶媒を電解液に組合せて用いることにより、極めて低インピーダンスで高電圧な電解コンデンサが得られる。
特に好ましい電解液として、熱安定性の点から、溶媒がスルホランであり、テトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム又はテトラフルオロアルミン酸1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムを、電解液の総重量に対して、5〜40重量%で添加した電解コンデンサ用電解液が挙げられ、低インピーダンスの電解コンデンサを得ることができる点から、溶媒がγ−ブチロラクトンであり、テトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム又はテトラフルオロアルミン酸1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムを、電解液の総重量に対して、5〜40重量%で添加した電解コンデンサ用電解液が挙げられる。ただし、スルホランとγ−ブチロラクトンを併用した溶媒も好ましい。
電解液には、塩及び溶媒の他にも種々の添加剤を用いてもよい。電解液に添加物を加える目的は多岐に渡り、電気伝導率の向上、熱安定性の向上、水和や溶解による電極劣化の抑制、ガス発生の抑制、耐電圧の向上、濡れ性の改善等を挙げることができる。添加物の含有量は特に限定されないが、0.1〜20重量%の範囲であることが好ましく、0.5〜10重量%の範囲であることがより好ましい。
なお、電解液には、陽極からの液漏れ防止を一層改善させるために、種々の添加剤を配合することが好ましい。
添加剤としては、フタルイミド類、キノリン類、ジオキシム類、ニトロフェノール類及びアミノ基含有芳香族カルボン酸類からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を用いることができる。また、アルミニウム錯体、ホウ酸エステル及びケイ酸エステルからなる群より選択される1種又は2種以上の化合物も用いることができる。さらには、単環キノン化合物及び二環キノン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上を用いることもできる。また、三環以上のキノン化合物の1種又は2種も用いることができる。これらは、電解液総重量中、0.1〜5重量%であることが好ましい。
次いで、図3に示すような電解コンデンサの構造を例にとって、以下説明する。このような構造は、大型の電解コンデンサに汎用される。
電解コンデンサの構造は、以下のようにして形成することができる。コンデンサ素子101は陽極電極箔102(図示せず)と陰極電極箔103(図示せず)とを、セパレータ111(図示せず)を介して巻回して形成する。陽極電極箔102、陰極電極箔103には、陽極引出し端子121、陰極引出し端子122がそれぞれ接続されている。コンデンサ素子101には、電解コンデンサの駆動用の電解液を含浸する。電解液の含浸前に、修復化成工程を設けることができる。同工程については、小型の電解コンデンサについて記載したものと同様である。
封口部材109は、フェノール樹脂積層板などの硬質絶縁板とゴム板などの弾性部材を張り合わせて形成する。封口部材109の中央部付近には、アルミニウムからなるリベット104、105を埋設することができるようにしておく。これらのリベット104、105は丸棒部106、頭部123からなり、頭部123には外部端子124を設け、加締めて固着してある。
上記のような電解液を含浸したコンデンサ素子101の陽極引出し端子121、陰極引出し端子122を、リベット104、105の下端部にそれぞれ接続し、コンデンサ素子101を有底筒状のアルミニウムよりなる外装ケース110に収納する。そして、外装ケース110の開口端部に、封口部材109を挿入し、さらに外装ケース110の端部を絞り加工及びカール加工することにより電解コンデンサの封口を行う。このように、陽極引出し端子とリベットが、陽極電極引出し手段に、陰極引出し端子とリベットが、陰極電極引出し手段を構成するといえる。以下に、各部分等についてより詳細に説明する。
本発明において、陽極電極箔102は、特に限定されず、例えば純度99%以上のアルミニウム箔を酸性溶液中で化学的あるいは電気化学的にエッチングして拡面処理した後、ホウ酸アンモニウムあるいはアジピン酸アンモニウム等の水溶液中で化成処理を行い、その表面に陽極酸化皮膜層を形成したものを用いることができる。
本発明において、陰極電極箔103は、特に限定されず、例えば陽極電極箔102と同様に純度99%以上のアルミニウム箔をエッチングしたものを用いることができる。ここで、陽極電極箔102と同様に、1〜2Vの化成処理を行ってもよい。
本発明において、陽極引出し端子121、陰極引出し端子122は、特に限定されず、それぞれ純度99%以上のアルミニウム箔を用いることができる。
本発明においては、陽極側のリベット104として、その少なくとも一部にセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えたものを用いる。例えば、リベット104の丸棒部106に、金属アルコキシド系セラミックスからなるコーティング剤及び/又は絶縁性合成樹脂からなるコーティング剤を吐出、コートし、その後乾燥処理することにより、セラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を形成する。ここで、液漏れ防止効果を考慮すると、リベット104の少なくとも丸棒部106に形成されることが好ましい。また、コーティングする前に、リベット104に化成処理を行って、表面に陽極酸化皮膜を形成すると、さらに好適である。
ここで用いるコーティング材料及びコーティング方法については、小型の電解コンデンサについて記載したものと同様である。
ここで陽極側のリベット104にコーティングする代わりに、陽極引出し端子121に、同様にコーティングを行ってもよい。
また、陰極側のリベット105又は陰極引出し端子122も、陰極からの液漏れを防ぐため、上記のセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えていることが好ましい。
電解液は、小型の電解コンデンサについて記載したものと同様のものを用いることができる。
以上、図1及び2に示すような電解コンデンサ、並びに図3に示すような電解コンデンサを例にとって本発明を説明してきたが、本発明はこれらに限定されず、説明中の材料、形状、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明の範囲は、これらの実施例により限定されるものではなく、実施例中の材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
〔実施例1〕
実施例の電解コンデンサは、以下のようにして製造した。
陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回して、定格電圧6.3V×100μF、素子形状がφ10×10Lのコンデンサ素子を形成した。
陽極電極箔は、純度99.9%のアルミニウム箔をエッチングして拡面処理した後、化成処理を行い、その表面に陽極酸化皮膜層を形成したものを用い、陰極電極箔は、純度99.9%のアルミニウム箔を、陽極電極箔と同様にエッチングしたものを用い、表面に窒化チタンからなる層を形成した。
陰極電極引出し手段及び陽極電極引出し手段として、電極箔に当接する接続部と、この接続部と一体に形成した丸棒部、及び丸棒部6の先端に固着した外部接続部からなる、リード線を準備した。リード線の接続部7及び丸棒部6は99.9%のアルミニウム、外部接続部8はCP線からなる。リード線の丸棒部6の表面には、リン酸アンモニウム水溶液による化成処理により酸化アルミニウムからなる陽極酸化皮膜を形成した。
さらに、陽極電極引出し手段及び陰極電極引出し手段であるリード線のいずれにも、セラミックコーティング層を形成した。このセラミックコーティング層は、リード線の丸棒部6にAlとSiOの金属アルコキシド系セラミックスからなるコーティング剤を吐出し、180℃で10秒間熱処理し、次いで再度このコーティング剤を吐出した後、再び180℃で10秒間熱処理し、さらに、180℃で20分間熱処理して形成した。層の厚みは15μmであった。
これらのリード線を、接続部7において両極電極箔に接続した。
コンデンサ素子に、電解液(γ−ブチロラクトンに、テトラフルオロアルミン酸1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムを溶解した、濃度25重量%の電解液)を含浸させ、有底筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開口部に過酸化物加硫ブチルゴムからなる封口体9を装着するとともに、外装ケースの端部に絞り加工を施して外装ケース10を密封し、再化成した後、実施例1の電解コンデンサを得た。
〔実施例2〕
陽極電極引出し手段及び陰極電極引出し手段であるリード線に、絶縁性合成樹脂層のコーティング層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電解コンデンサを得た。絶縁性合成樹脂層のコーティング層は、リード線の丸棒部6の表面に、エポキシ樹脂97重量部に、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン3重量部を混合したコーティング剤を、吐出法によって、コーティングした後、乾燥して形成した。層の厚みは15μmであった。
〔比較例1〕
陽極電極引出し手段及び陰極電極引出し手段であるリード線に、コーティング層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電解コンデンサを得た。
〔液漏れの測定〕
また、実施例1〜2及び比較例1の電解コンデンサについて、液漏れ状況を測定した。測定方法は、以下のとおりである。電解コンデンサを、85℃/85%RHで1500時間、2000時間放置した後に、EIAJ RC−2372 付属書2「判定基準」に基づき液漏れを判定した。液漏れは、同判定基準のC、Dの判定に対応する。
Figure 0004964449
これらの結果より、本発明の電解液によれば、電解コンデンサの陰極側及び陽極側のいずれにおいても、液漏れが抑制されていることがわかる。
電解コンデンサの構造を示す内部断面図である。 コンデンサ素子の構造を示す分解斜視図である。 大型の電解コンデンサの構造を示す内部断面図である。
符号の説明
1 コンデンサ素子
2 陽極電極箔
3 陰極電極箔
4 陽極引出し用のリード線
5 陰極引出し用のリード線
6 丸棒部
7 接続部
8 外部接続部
9 封口体
10 外装ケース
11 セパレータ
101 コンデンサ素子
104 陽極用のリベット
105 陰極用のリベット
106 丸棒部
109 封口部材
110 外装ケース
121 陽極引出し端子
122 陰極引出し端子
123 頭部
124 外部端子
125 挿通部

Claims (7)

  1. 陽極電極引出し手段を備えた陽極電極箔と、陰極電極引出し手段を備えた陰極電極箔とを、セパレータを介して巻回し、かつテトラフルオロアルミン酸の第四級アミジニウム塩を含有する電解液を含浸させてなるコンデンサ素子;
    コンデンサ素子を収納する外装ケース;及び
    外装ケースの開口部を封口する封口体;
    を有する電解コンデンサであって、
    陽極電極引出し手段が、封口体との接触部分の少なくとも一部にセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えたものであり、
    陰極電極引出し手段が、封口体との接触部分の少なくとも一部にセラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を備えたものであ
    陽極及び陰極からの液漏れが防止された、電解コンデンサ。
  2. セラミックコーティング層及び/又は絶縁性合成樹脂層を、陽極電極引出し手段の陽極電極箔への接続に先立ち形成してなる、請求項1記載の電解コンデンサ。
  3. セラミックコーティング層を、Al、SiO及びZrOからなる群より選択される1種以上を用いた金属アルコキシド系セラミックスからなるコーティング剤を用いて形成してなる、請求項1又は2記載の電解コンデンサ。
  4. 絶縁性合成樹脂層を、エポキシ樹脂及びシランカップリング剤を含むコーティング剤を用いて形成してなる、請求項1〜3のいずれか1項記載の電解コンデンサ。
  5. 陰極電極箔が、アルミニウム箔の表面に、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル及び窒化ニオブからなる群より選択される金属窒化物の1種以上、並びに/又はチタン、ジルコニウム、タンタル及びニッケルからなる群より選択される金属の1種以上を含む0.02〜0.1μmの層を設けてなる、請求項1〜4のいずれか1項記載の電解コンデンサ。
  6. 陰極電極箔が、銅、鉄、マンガン、スズ及びチタンからなる群より選択される1種以上を含む純度99.9%未満のアルミニウムであり、陰極電極引出し手段が純度99.9%以上のアルミニウムである、請求項1〜5のいずれか1項記載の電解コンデンサ。
  7. コンデンサ素子が、陽極電極引出し手段を備えた陽極電極箔と、陰極電極引出し手段を備えた陰極電極箔とを、セパレータを介して巻回した後、電解液の含浸前に、化成液に浸漬し、修復化成したコンデンサ素子である、請求項1〜のいずれか1項記載の電解コンデンサ。
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