JP4961316B2 - 電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真方式による画像形成に用いられる、ジアミン化合物を含有する電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。
電子写真技術を用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置(以下「電子写真装置」ともいう)は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などに多用されている。
電子写真装置では、以下のような電子写真プロセスを経て画像が形成される。まず、装置に備わる電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)の感光層を帯電させた後、露光して静電潜像を形成する。形成された静電潜像を現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を記録紙などの転写材上に転写して定着させて、転写材に所望の画像を形成する。
近年、電子写真技術は、複写機の分野に限らず、従来では銀塩写真技術が使われていた印刷版材、スライドフィルム、マイクロフィルムなどの分野においても利用されている。例えば、レーザ、発光ダイオード(Light Emitting Diode;略称LED)、陰極線管(Cathode Ray Tube;略称CRT)などを光源とする高速プリンタにも応用されている。このような電子写真技術の応用範囲の拡大に伴い、感光体に対する要求は、高度で幅広いものになりつつある。
感光体としては、従来から、セレン、酸化亜鉛または硫化カドミウムなどの無機光導電性材料を主成分とする感光層を備える無機感光体が広く用いられている。
無機感光体は、感光体としての基礎特性をある程度は備えているが、感光層の成膜が困難で、可塑性が悪く、製造原価が高いなどの欠点を有する。その上、無機光導電性材料は一般に毒性が強く、製造上および取扱い上、大きな制約がある。
このように無機光導電性材料およびそれを用いた無機感光体には多くの欠点があることから、有機光導電性材料の研究開発が進んでいる。
有機光導電性材料は、近年、幅広く研究開発され、感光体などの静電記録素子に利用されるだけでなく、センサ素子、有機エレクトロルミネセント(Electro Luminescent;略称EL)素子などに応用され始めている。
有機光導電性材料を用いた有機感光体は、感光層の成膜性がよく、可撓性も優れている上に、軽量で、透明性もよく、適当な増感方法によって広範囲の波長域に対して良好な感度を示す感光体を容易に設計できるなどの利点を有しているので、次第に感光体の主力として開発されてきている。
有機感光体は、初期には感度および耐久性に欠点を有していたが、これらの欠点は、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の物質にそれぞれ分担させた機能分離型感光体の開発によって著しく改善されている。さらに、この機能分離型感光体は、有機感光体の有する前記の利点に加え、感光層を構成する材料の選択範囲が広く、任意の特性を有する感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。
このような有機系感光体の構成としては、支持体上に電荷発生物質および電荷輸送物質(「電荷移動物質」ともいう)の双方をバインダ樹脂に分散させた単層構造、支持体上に電荷発生物質をバインダ樹脂に分散させた電荷発生層と電荷輸送物質をバインダ樹脂に分散させた電荷輸送層とをこの順でまたは逆順で形成した積層構造または逆二層型積層構造などの様々な構成が提案されている。これらの中でも感光層として電荷発生層上に電荷輸送層を積層した機能分離型の感光体は、電子写真特性および耐久性に優れ、材料選択の自由度の高さから感光体特性を様々に設計できることから広く実用化されている。また、単層構造の感光体は、感光層が単一層からなり、積層型に比べて、生産性が高く、低い製造原価で製造できるという利点を有し、実用化され始めている。
このように提案または検討されている構成を有する感光体においては、高速化や耐久性と感度安定性などのさまざまな性能が求められている。特に、最近のデジタル複写機およびレーザプリンタなどの反転現像方式の電子写真装置に対応して、感光体特性として高速化に対応する高感度化と、耐摩耗性および感度安定性の向上による耐久化=長寿命化との両立が要求されている。加えて、レーザプリンタなどに用いる感光体には、より高い画像信頼性や繰返し安定性が要求されている。
しかしながら、これらの感光体は無機感光体に比べて一般的に耐久性が低いことが1つの大きな欠点であるとされてきた。耐久性は、感度、残留電位、帯電能、画像ボケなどの電子写真物性面の耐久性と、摺擦による感光体表面の摩耗や傷などの機械的耐久性に大別される。電子写真物性面の耐久性における低下の主原因は、コロナ放電により発生するオゾン、NOX(窒素酸化物)などや光照射により感光体表面層に含有される電荷輸送物質の劣化であることが知られている。数多く提案されている様々な骨格からなる多くの電荷輸送物質も、耐久性の面ではかなり改善されつつあるが、いまだ十分とは言えないのが現状である。
また、感光体はシステムの中で繰返し使用され、その中にあって常に一定の安定した電子写真特性を要求される。このような安定性、耐久性については、いずれの構成においても、いまだ十分なものが得られていないのが現状である。
すなわち、繰返し使用にしたがって電位の低下、残留電位の上昇、感度の変化などが生じ、コピー品質の低下が起こり使用に耐えなくなる。これらの劣化原因の全ては解明されていないが、いくつかの要因が考えられる。
感光体の疲労劣化は、電子写真装置の帯電方式によっても異なる。すなわち、コロナ放電式帯電器などの非接触帯電方式は、ローラ対電器などの接触帯電方式に比べて、オゾンの発生が多く、酸化性ガスによる感光体の疲労劣化が著しいという欠点を有している。一方、非接触帯電方式は感光体に接触しないことから摺擦による感光体表面の摩耗や傷などがつきにくく、機械的耐久性に優れているので、非接触帯電方式を用いた画像形成プロセスを導入すると感光体の長寿命化が期待できる。
コロナ放電帯電器より放出されるオゾン、窒素酸化物などの酸化性のガスは感光層中の材料を化学変化させて種々の特性変化をもたらす。例えば、帯電電位の低下、残留電位の上昇、表面抵抗の低下による解像力の低下などをもたらし、その結果出力画像上に白抜けおよび黒帯などの画像ボケが発生して著しく画質を低下させ、感光体の寿命を短くしている。このような現象に対して、コロナ放電帯電器の周りのガスを効率よく排気、置換し、感光体への直接的なガスの影響を避ける対策を盛り込む提案や、感光層に酸化防止剤、安定剤を添加し劣化を防ぐ提案もされている。
例えば、特開昭62−105151号公報(特許文献1)には、分子内にトリアジン環およびヒンダードフェノール骨格を有する酸化防止剤を感光層に添加すること、特開昭63−18355号公報(特許文献2)には、特定のヒンダードアミンを感光層に添加することが開示されている。また、特開昭63−4238号公報(特許文献3)、特開昭63−216055号公報(特許文献4)および特開平3−172852号公報(特許文献5)には、トリアルキルアミン、芳香族アミンを感光層に添加すること、さらに特開平5−158258号公報(特許文献6)には、アミンダイマーを感光層に添加することが開示されているが、これらは未だ十分とは言えない。
特開昭62−105151号公報 特開昭63−18355号公報 特開昭63−4238号公報 特開昭63−216055号公報 特開平3−172852号公報 特開平5−158258号公報
すなわち、このような従来の技術によっては未だに十分な耐オゾン性の効果が達成されてはおらず、また、このような酸化防止剤などの添加によって感度や残留電位などの電子写真特性を悪化させるといった、実用上不十分な弊害も依然と残っているのが現状である。よって、耐オゾン性を向上させ、かつ電子写真特性面における弊害のない新規な材料提案が待たれている。
したがって、本発明は、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れると共に、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性に優れ、繰り返し使用しても前記の良好な電気特性が低下しない電気的耐久性に優れた電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意努力研究を重ねた結果、意外にも特定のジアミン化合物が、耐オゾン性に優れ、しかも電子写真特性面への弊害がないことを見出し、さらに感光体とそれを備えた画像形成装置に極めて有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、導電性材料からなる導電性支持体上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層が形成されてなる感光体であって、
前記電荷輸送層が、耐酸化性ガス性添加剤を含有し、かつ
前記電荷発生層が、一般式(1):
Figure 0004961316
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいヘテロ原子含有シクロアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;Y1、Y2、Y3およびY4は、同一または異なって、置換基を有してもよい鎖状のアルキレン基である)
で示されるジアミン化合物を含有することを特徴とする感光体が提供される。
なお、本明細書に記載の化学式における置換基の付番には、英字の左上、右上および右下があるが、これらは同一のものとする。例えば「1Ar」および「Ar1」は同じ置換基を示す。
また、本発明によれば、上記の感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体に対して露光を施す露光手段と、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
本発明のジアミン化合物は、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスを補足し、酸化性ガスの電荷発生物質への吸着を効果的に抑制することができるので、本発明のジアミン化合物を電荷発生層に含有させることによって、感光体の耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を向上させることができる。
また、本発明の感光体では、繰り返し使用されても、帯電電位の低下、残留電位の上昇、感度の低下、表面抵抗の低下による解像力の低下などが生じることなく、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性に優れ、疲労劣化が抑制された感光体を実現できる。
画像形成装置の電子写真感光体には、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れると共に、耐酸化性ガス性に優れ、繰り返し使用されても、前述の良好な電気特性が低下しない電気的耐久性に優れる本発明の電子写真感光体が用いられる。このことによって、安定した高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い画像形成装置が実現できる。
したがって、本発明によれば、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れると共に、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性に優れ、繰り返し使用しても前記の良好な電気特性が低下しない電気的耐久性に優れた電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
本発明の感光体は、導電性材料からなる導電性支持体上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層が形成されてなる感光体であって、前記電荷輸送層が、耐酸化性ガス性添加剤を含有し、かつ前記電荷発生層が、一般式(1)で示されるジアミン化合物を含有することを特徴とする。
このような一般式(1)のジアミン化合物の中でも、化学物質としての分解または変質などに対する化学的安定性、原料入手の容易性、製造の容易性および収率の高さならびに製造コストなどの点で、一般式(1)のY1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6が鎖状のメチレン基であるジアミン化合物、すなわち副式(2):
Figure 0004961316
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6は、一般式(1)と同義である)で示されるジアミン化合物が好ましく、副式(2)のAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6がフェニル基であるジアミン化合物、すなわち構造式(3):
Figure 0004961316
で示されるジアミン化合物が特に好ましい。
一般式(I)および副式(II)における置換基について説明する。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6の置換基を有してもよいアリール基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜6のジアルキルアミノ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ、イソブトキシ基などが挙げられる。
炭素数2〜6のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
具体的には、フェニル基、o−トリル基、2,4−キシリル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、o−トリル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が特に好ましい。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6の置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプタン基などが挙げられる。
炭素数1〜4のアルキル基としては、上記のアルキル基が挙げられる。
具体的には、シクロへキシル基、シクロペンチル基、4、4−ジメチルシクロへキシル基などが挙げられ、これらの中でも、シクロへキシル基が特に好ましい。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6の置換基を有してもよいヘテロ原子含有シクロアルキル基としては、例えばテトラヒドロフリル基、テトラメチルテトラヒドロフリル基などが挙げられる。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6の置換基を有してもよい1価の複素環残基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい1価の複素環残基が挙げられる。
具体的には、フリル基、4−メチルフリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、フリル基、ベンゾフリル基が特に好ましい。
1、Y2、Y3およびY4の置換基を有してもよい鎖状のアルキレン基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアルキレン基が挙げられる。
具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基などが挙げられ、これらの中でも、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
本発明のジアミン化合物の具体例を表1に示す。
なお、表1−1〜1−6において置換基を次のような略号で示す。
−Me−:メチレン基
−Et−:エチレン基
−Tr−:トリメチレン基
−Dm−:2,2−ジメチルトリメチレン基
Figure 0004961316
Figure 0004961316
Figure 0004961316
Figure 0004961316
Figure 0004961316
Figure 0004961316
表1−1〜1−6に示される本発明のジアミン化合物の中でも、例示化合物No.1、2、3、4、15、20、28、48、51および59が好ましく、例示化合物No.1が特に好ましい。
本発明のジアミン化合物は、次の反応スキームに示す方法により製造することができる。すなわち、一般式(4)および一般式(5)で示されるアミン化合物と、一般式(6)で示されるジハロゲン化合物とを、有機アミン塩基の存在下に加熱することによって、簡便に収率よく高純度で目的物を製造することができる。
[反応式]
Figure 0004961316
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Y1、Y2、Y3およびY4は、一般式(1)と同義であり;X1およびX2はハロゲン原子を示す)
反応式におけるX1およびX2のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中でも、塩素原子、臭素原子が特に好ましい。
上記の反応式の反応は、例えば、次のようにして実施できる。
二級アミン化合物(4)および(5)とジハロゲン化合物(6)とを溶剤に溶解または分散させ、これに有機アミン塩基を加え、加熱攪拌する。反応終了後、析出物を濾別し、エタノール、メタノール、酢酸エチルなどの単独あるいは混合溶剤系において再結晶を行うことにより、簡便に収率よく高純度で目的物を得ることができる。
溶剤は、上記の反応に不活性でかつ反応基質および有機アミン塩基を溶解または分散できるものであれば特に限定されない。具体的には、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。
なお、溶剤の使用量は特に制限されず、反応基質の使用量、反応温度、反応時間などの反応条件に応じて、反応が円滑に進行する量を適宜設定すればよい。
有機アミン塩基としては、例えばN,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン、1,4−ジアザビシクロウンデセンなどが挙げられる。
二級アミン化合物(4)および(5)とジハロゲン化合物(6)との使用割合は特に限定されるものではない。
例えば、対称性の化合物を得る場合(二級アミン化合物(4)あるいは(5)の何れは一方のみ使用する場合)には、反応の効率性などを考慮して、ジハロゲン化合物(6)1当量に対して二級アミン化合物を2.0〜2.3当量程度用いるのが好ましい。
また、非対称性の化合物を得る場合(二級アミン化合物(4)および(5)を共に使用する場合)には、反応の効率性などを考慮して、ジハロゲン化合物(6)1当量に対して各二級アミン化合物を1.0〜1.2当量程度(二級アミン化合物(4)および(5)の合計では2.0〜2.4当量程度)用いるのが好ましい。
ジハロゲン化合物(6)と有機アミン塩基との使用割合は特に限定されるものではないが、反応の効率性などを考慮して、ジハロゲン化合物(6)1当量に対して、有機アミン塩基を2.05〜5.0当量程度用いるのが好ましい。
また、加熱温度および反応時間は特に限定されるものではないが、反応の効率性などを考慮して、使用する溶剤にもよるが、60〜120℃で2〜8時間反応させるのが好ましい。
本発明のジアミン化合物は、耐オゾン性に優れている。したがって、本発明のジアミン化合物を電荷発生層に含有する感光体は優れた電子写真特性を有し、システムから発生するオゾン、窒素酸化物の影響を受けにくく、繰返し使用しても安定した特性および画質を有し、極めて高い耐久性を達成することができる。
次に、本発明の感光体の構成について具体的に説明する。
図1〜図4は、本発明の感光体における要部の構成を示す模式断面図である。
すなわち、図1〜4は、感光層が電荷発生層と電荷輸送層とからなる積層型感光層(以下「機能分離型感光層」ともいう)である積層型感光体(以下「機能分離型感光体」ともいう)の要部の構成を示す模式断面図である。本発明の感光体は、電荷発生層と電荷輸送層とを逆順で形成した逆二層型積層構造であってもよいが、前記積層型が好ましい。
図1の感光体1は、導電性支持体11の表面に、電荷発生層12と電荷輸送層13とがこの順で積層された積層型光導電層14(感光層10)が形成されている。
図2の感光体2は、導電性支持体11の表面に、中間層15と、電荷発生層12と電荷輸送層13とがこの順で積層された積層型光導電層14とがこの順で積層された感光層16が形成されている。
図3の感光体3は、導電性支持体11の表面に、電荷発生層12と電荷輸送層13とがこの順で積層された積層型光導電層14と、表面保護層21とがこの順で積層された感光層18が形成されている。
図4の感光体4は、導電性支持体11の表面に、中間層15と、電荷発生層12と電荷輸送層13とがこの順で積層された積層型光導電層14と、表面保護層21とがこの順で積層された感光層19が形成されている。
[導電性支持体11(感光体用素管)]
導電性支持体は、感光体の電極としての役割を果たすとともに、他の各層の支持部材としても機能する。
導電性支持体の構成材料は、当該分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる基体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。
導電性支持体の形状は、図1〜4に示すようなシート状に限定されず、円筒状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
導電性支持体1の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理を施されていてもよい。
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性支持体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
[積層型光導電層(積層型感光層)14]
積層型感光層14は、電荷発生層12と電荷輸送層13とからなる。このように電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることにより、各層を構成する最適な材料を独立して選択することができる。これにより、帯電性、感度および光応答性などの電気特性ならびに繰返し使用時の電気特性の安定性すなわち電気的耐久性に特に優れた感光体を得ることができる。
[電荷発生層12]
電荷発生層12は、電荷発生物質と本発明のジアミン化合物、任意にバインダ樹脂とを含有する。
ジアミン化合物を電荷発生層に含有させることにより、感光体に耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を付与することができる。すなわち、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れると共に、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性に優れ、繰り返し使用されても良好な電気特性が低下しない電気的耐久性に優れた感光体を提供することができる。
これは、本発明のジアミン化合物が長時間のオゾン暴露によって電荷発生層まで浸透したオゾン、窒素酸化物、塩素酸化物、硫黄酸化物などの酸化性ガスを補足し、電荷発生層に含有される電荷発生物質への酸化性ガスの吸着を効果的に抑制することができるためであると推察される。これにより、感光体では、疲労劣化が抑制され、繰り返し使用されても帯電電位の低下、残留電位の上昇、感度の低下、表面電位の低下による解像力の低下が生じないと考えられる。
電荷発生物質は、光を吸収することにより電荷を発生する能力を有する。
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、アゾ系顔料(モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料など)、インジゴ系顔料(インジゴ、チオインジゴなど)、ペリレン系顔料(ペリレンイミド、ペリレン酸無水物など)、多環キノン系顔料(アントラキノン、ピレンキノンなど)、フタロシアニン系顔料(金属フタロシアニン、X型無金属フタロシアニンなど)、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機顔料または染料、さらにセレン、非晶質シリコンなどの無機材料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
これらの電荷発生物質の中でも、金属フタロシアニン、X型無金属フタロシアニンのようなフタロシアニン系顔料が好ましく、オキソチタニウムフタロシアニンが特に好ましい。
フタロシアニン系顔料は、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有するので、光を吸収することによって多量の電荷を発生するとともに、発生した電荷を分子内に蓄積することなく、電荷輸送層13の電荷輸送物質に電荷を効率よく注入されて円滑に輸送されるので、高感度かつ高解像度の感光体を得ることができる。
オキソチタニウムフタロシアニンは、フタロシアニン基に含まれるベンゼン環の水素原子が塩素原子もしくはフッ素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはスルホン酸基などの置換基で置換されたものであってもよく、また中心金属に配位子が配位したものであってもよい。
電荷発生層は、本発明の好ましい特性を損なわない範囲内で、化学増感剤および光学増感剤の1種または2種以上を適量含んでもよい。これらの増感剤は、感光体の感度を向上させ、繰返し使用による残留電位の上昇および疲労などを抑え、電気的耐久性を向上させる。これらの増感剤は、後述する電荷輸送層に含有されてもよく、電荷発生層および電荷輸送層の両方に含有されてもよい。
化学増感剤としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物;ジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料およびこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどが挙げられる。
光学増感剤としては、例えばキサンテン系色素、キノリン系顔料、銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料;エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料;メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料;カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料;シアニン染料;スチリル染料;ピリリウム塩染料およびチオピリリウム塩染料などが挙げられる。
バインダ樹脂としては、例えば、電荷発生層12の機械的強度、耐久性などを向上させる目的で使用され、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、本発明のジアミン化合物との相溶性に優れるものが好ましい。
具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂;フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどの熱硬化性樹脂、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂)などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
これらの樹脂の中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、本発明のジアミン化合物との相溶性に特に優れ、さらに体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートは特に好適に使用できる。
電荷発生層における電荷発生物質と本発明のジアミン化合物との使用割合は特に限定されないが、ジアミン化合物の含有量が、電荷発生物質100重量部に対して0.1〜20.0重量部であるのが好ましく、0.1〜10.0重量部であるのが特に好ましい。
電荷発生物質100重量部に対する本発明のジアミン化合物の含有量が0.01重量部未満であると、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに対する耐性が充分得られず、繰り返し使用時に画質の低下、帯電電位の低下などが起きるおそれがある。
一方、電荷発生物質100重量部に対する本発明のジアミン化合物の含有量が20.0重量部を超えると、感度および応答性が低下し、繰り返し使用時に残留電位の上昇などが生じるおそれがある。
電荷発生物質とバインダ樹脂との使用割合は特に限定されないが、電荷発生物質の重量W1とバインダ樹脂の重量W2としたときに、その比率W1/W2は、10/100以上99/100以下であるのが好ましい。
比率G/Bが10/100未満であると、感光体の感度が低下することがある。
一方、比率G/Bが99/100を超えると、電荷発生層の膜強度が低下する可能性があり、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、消去されるべき部分以外の表面電荷が露光によって減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなるおそれがある。
電荷発生層12は、公知の乾式法および湿式法により形成することができる。
乾式法としては、例えば、電荷発生物質および本発明のジアミン化合物を導電性支持体11上に真空蒸着する方法が挙げられる。
湿式法としては、例えば、電荷発生物質および本発明のジアミン化合物、ならびに必要に応じてバインダ樹脂を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の表面に、または導電性支持体11上に形成された中間層15の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去する方法が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤;ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。また、このような溶剤に、アルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンを加えた混合溶剤を使用することもできる。
構成物質を樹脂溶液に溶解または分散させるに先立ち、電荷発生物質を予備粉砕してもよい。
予備粉砕は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機などの一般的な粉砕機を用いて行うことができる。
構成物質の樹脂溶液への溶解または分散は、例えば、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミルなどの一般的な分散機を用いて行うことができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗布液中に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法としては、ロール塗布、スプレー塗布、ブレード塗布、リング塗布、浸漬塗布などが挙げられる。
浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に導電性支持体11を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって導電性支持体11上に層を形成する方法である。この方法は比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、電子写真感光体を製造する場合に多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。
電荷発生層12は、必要に応じて、ホール輸送物質、電子輸送物質、酸化防止剤、分散安定剤、増感剤、レベリング剤、可塑剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などから選ばれる1種または2種以上を適量含んでもよい。
可塑剤またはレベリング剤は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させることができる。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
無機化合物または有機化合物の微粒子は、機械的強度を増強し、電気特性を向上させることができる。
電荷発生層12の膜厚は特に限定されないが、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。これは、電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感度が低下するおそれがあり、逆に電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷輸送が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下するおそれがある。
[電荷輸送層13]
電荷輸送層13は、電荷輸送物質とバインダ樹脂と耐酸化性ガス性添加物とを含有する。
電荷輸送層に含まれる耐酸化性ガス性添加物は、本発明によるジアミン化合物(1)や、それ以外の酸化防止剤等を用いることができる。
耐酸化性ガス性添加剤は、ヒンダードフェノール誘導体またはヒンダードアミン誘導体であるのが好ましい。(削除)
電荷輸送物質は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有し、ホール輸送物質および電子輸送物質を包含する。
ホール輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ−9−ビニルアントラセンなど)、ポリシランなどが挙げられる。これらのホール輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
また、電子輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フルオレノン誘導体、キサントン誘導体、フェナントラキノン誘導体、無水フタール酸誘導体、ジフェノキノン誘導体などの有機化合物、アモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの無機材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
バインダ樹脂は、電荷発生層12に含まれるものと同様のバインダ樹脂の1種または2種以上を使用できる。特に、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートまたはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので好適に用いられる。
電荷輸送層における前記耐酸化性ガス性添加剤の含有量が、前記電荷輸送物質100重量部に対して0.1〜10.0重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのが特に好ましい。
電荷輸送物質100重量部に対する耐酸化性ガス性添加剤の含有量が0.1重量部未満であると、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに対する耐性が充分得られないおそれがある。
一方、電荷輸送物質100重量部に対する耐酸化性ガス性添加剤の含有量が10.0重量部を超えると、感度および応答性が低下し、繰り返し使用時に残留電位の上昇などが生じるおそれがある。
電荷輸送物質とバインダ樹脂との使用割合は特に限定されないが、電荷輸送物質の重量W3とバインダ樹脂の重量W4としたときに、その比率W3/W4は、10/30以上10/12以下であるのが好ましい。
比率W3/W4が10/30未満であると、感光体の感度が低下するおそれがある。また、電荷輸送層を浸漬塗布法によって形成する場合に比率W3/W4が10/30未満であると、塗布液の粘度が増大して塗布速度が低下し、生産性が著しく悪くなるおそれがある。そこで塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層に白濁が発生するおそれがある。
一方、比率W3/W4が10/12を超えると、感光層の耐刷性が低下して繰返し使用による膜減り量が増加し、感光体の帯電性が低下するおそれがある。
電荷輸送層は、前記2種の必須成分のほかに、必要に応じて、電荷発生層12に含まれるものと同様の添加剤を含んでもよい。
電荷輸送層13は、電荷輸送物質、バインダ樹脂および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷輸送層形成用塗布液を調製し、この塗布液を電荷発生層12の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。より具体的には、例えば、バインダ樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液に電荷輸送物質、および必要に応じて他の添加剤を溶解または分散させることにより、電荷輸送層形成用塗布液を調製する。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層12の形成に準ずる。
電荷輸送層13の膜厚は特に限定されないが、5〜50μmが好ましく、10〜40μmが特に好ましい。電荷輸送層の膜厚が5μm未満では、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがあり、逆に電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下するおそれがある。
[中間層15]
本発明の感光体は、導電性支持体11と積層型感光層との間に中間層15を有するのが好ましい。
中間層15は、導電性支持体から積層型感光層への電荷の注入を防止する機能を有する。すなわち、積層型感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
また、中間層15で導電性支持体11の表面を被覆する中間層15は、導電性支持体11の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、積層型感光層の成膜性を高め、導電性支持体11と積層型感光層との密着性を向上させることができる。すなわち、導電性支持体からの積層型感光層の剥離を抑えることができる。
中間層15は、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解させて中間層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
樹脂材料としては、電荷発生層に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、アルコール可溶性ナイロン樹脂が特に好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンなどを共重合させた共重合ナイロン;N−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層12の形成に準ずる。
また、中間層形成用塗布液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、中間層の体積抵抗値を容易に調節でき、積層型感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
中間層形成用塗布液における樹脂材料と金属酸化物粒子との合計含有量をC、溶剤の含有量をDとするとき、両者の重量比率(C/D)は、1/99〜40/60が好ましく、2/98〜30/70が特に好ましい。
また、樹脂材料の含有量(E)と金属酸化物粒子の含有量(F)との重量比率(E/F)は、1/99〜90/10が好ましく、5/95〜70/30が特に好ましい。
中間層15の膜厚は特に限定されないが、0.01〜20μmが好ましくは、0.05〜10μmが特に好ましい。中間層の膜厚が0.01μm未満では、中間層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体11の欠陥を被覆して均一な表面が得られないおそれがあり、中間層の膜厚が20μmを超えると、均一な中間層を形成し難く、また感光体の感度も低下するおそれがある。
なお、導電性支持体11の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、中間層とすることができる。
[表面保護層21]
表面保護層21は、感光体の耐久性を向上させる機能を有し、樹脂などで構成され、感光体の応答性を向上させるために、電荷輸送物質を含んでもよい。
樹脂は、電荷発生層12に含まれるものと同様のバインダ樹脂の1種または2種以上を使用できる。
電荷輸送物質は、電荷輸送層13に含まれるものと同様の電荷輸送物質の1種または2種以上を使用できる。
表面保護層21は、例えば、適当な有機溶剤に電荷輸送物質およびバインダ樹脂などを溶解または分散させて表面保護層形成用塗布液を調製し、この表面保護層形成用塗布液を積層型光導電層14の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。ここで用いられる有機溶剤としては、感光層の形成に用いられる有機溶剤と同様のものを使用できる。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層12の形成に準ずる。
有機溶剤は、電荷発生層12の形成用塗布液の調製に用いられるものと同様の溶剤の1種または2種以上を使用できる。
表面保護層には、耐摩耗性を向上する目的でフィラーを添加するのが好ましい。
フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、アモルファスカーボン粉末など有機性フィラー;銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウムなどの金属酸化物、チタン酸カリウムなどのチタン酸のアルカリ金属塩などの無機性フィラーが挙げられる。これらの中でも、耐摩耗性の観点から無機性フィラーが好ましい。無機性フィラーは好適な硬さを有するので、表面保護層に無機性フィラーを添加することによって、特に優れた耐摩耗性を付与することができる。無機性フィラーの中でも、金属酸化物が好ましく、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンが特に好ましい。
表面保護層に添加されるフィラーは、分散性の向上、表面性改質などを目的として、無機物および/または有機物で表面処理されていてもよい。有機物で表面処理されたフィラーとしては、撥水性処理として、シランカップリング剤で処理されたもの、フッ素系シランカップリング剤で処理されたもの、高級脂肪酸で処理されたものなどが挙げられる。無機物で表面処理されたフィラーとしては、アルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカなどで表面処理されたものなどが挙げられる。
表面保護層に添加されるフィラーの平均一次粒径は、表面保護層の光透過性および耐摩耗性の観点から、0.01〜0.5μmであるのが好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満では、表面保護層の耐摩耗性が充分に得られず、感光体の寿命が短くなるおそれがある。フィラーの平均一次粒径が0.5μmを超えると、露光時に照射される光が表面保護層で散乱されやすくなり、解像度が低下するおそれがある。
表面保護層中のフィラーの含有量は、表面保護層を構成する全固形分の5〜50重量%であるのが好ましく、10〜30重量であるのが特に好ましい。
表面保護層中のフィラーの含有量が5重量%未満では、表面保護層の耐摩耗性が不足し、感光体の寿命が短くなるおそれがある。一方、表面保護層中のフィラーの含有量が50重量%を超えると、耐摩耗性は良好になるが、残留電位が上昇するおそれがある。また、表面保護層の光透過性が低下し、露光時に照射される光が電荷発生層に充分に到達できず、感度が低下するおそれもある。
表面保護層には、応答性を向上させるために、電荷輸送層に用いられる前述の電荷輸送物質を添加してもよい。
表面保護層21の膜厚は特に制限されないが、0.1〜10μmが好ましく、1〜8μmが特に好ましい。
感光体が画像形成装置に搭載されて使用される際には、コロナ放電器などから発生するオゾンおよび窒素酸化物などが感光体表面に付着し、被転写材の画像形成面方向に画像が流れる、いわゆる画像流れが発生するおそれがある。この画像流れを防止するために、感光層は、ある一定速度以上の速度で摩耗されるように構成される。このため、長期的な繰返し使用を考慮した場合には、表面保護層21の膜厚は、0.1μm以上であることが好ましい。表面保護層の膜厚が0.1μm未満では、表面保護層が短期間に消失し、感光体の寿命が短くなるおそれがある。また表面保護層の膜厚が10μmを超えると、繰返し使用による残留電位の上昇および微細ドット再現性の低下などの解像度の低下などが生じるおそれがある。
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体に対して露光を施す露光手段と、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする。
図面を用いて本発明の画像形成装置について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図5は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
図5に示す画像形成装置100は、感光体として、例えば図1に示す感光体1と同様の層構成を有する円筒状の感光体7を搭載する。
画像形成装置100は、図示しない装置本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば、動力源としてモータを備え、モータからの動力を図示しない歯車を介して感光体7の芯体を構成する支持体に伝えることによって、感光体7を所定の周速度で回転駆動させる。
感光体7の周囲には、帯電器32と、露光手段30と、現像器33と、転写器34と、クリーナ36とが、矢符41で示される感光体7の回転方向の上流側から下流側に向かってこの順序で設けられる。クリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
帯電器32は、感光体7の表面43を所定の電位に帯電させる帯電手段であり、例えばコロナ放電帯電器などの非接触の帯電方式である。帯電手段の例として、非接触帯電方式以外にも、例えば帯電ローラなど接触帯電方式も存在するが、接触帯電方式では、非接触帯電方式と比較して放出する酸化性ガスが少ないものの、感光体と直接接触することから、摺擦による感光体表面の摩耗や傷などがつき易く、機械的耐久性に劣っている。一般式(1)で示されるジアミン化合物を電荷発生層12に添加した本発明の感光体は、耐酸化性ガス性が非常に優れていることから、画像形成装置内の感光体を帯電させる帯電手段として、接触帯電方式と比較して酸化性ガスをより多く放出する非接触帯電方式と組み合せて用いることができる。
非接触帯電方式は、感光体と直接接触しないことから摺擦による感光体表面の摩耗や傷などがつきにくく、機械的耐久性に優れており、感光体の長寿命化が可能である。
露光手段30は、例えば半導体レーザなどを光源として備え、光源から画像情報に応じて出力されるレーザビームなどの光31で、帯電された感光体7の表面43を露光し、これによって感光体7の表面43に静電潜像を形成させる。
現像器33は、感光体7の表面43に形成された静電潜像を現像剤によって現像し、可視像であるトナー画像を形成する現像手段であり、感光体7に対向して設けられ感光体7の表面43にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体7の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持するとともにその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
転写器34は、感光体7の表面43に形成されたトナー画像を、感光体7の表面43から転写材である記録紙51上に転写させる転写手段である。転写器34は、例えば、コロナ放電帯電器などの帯電手段を備え、記録紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー画像を記録紙51上に転写させる非接触式の転写手段である。
クリーナ36は、トナー画像が転写された後の感光体7の表面を清掃する清掃手段であり、感光体表面43に押圧され、転写器34による転写動作後に感光体7の表面43に残留するトナーを前記表面43から剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。
また、感光体7と転写器34との間を通過した後に記録紙51が搬送される方向には、転写されたトナー画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
画像形成装置100による画像形成動作について説明する。
まず、図示しない制御部からの指示に応じて、感光体7が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動され、露光手段30からの光31の結像点よりも感光体7の回転方向の上流側に設けられる帯電器32によって、その表面43が正または負の所定電位に均一に帯電される。
次いで、制御部からの指示に応じて、露光手段30から、帯電された感光体7の表面43に対して光31が照射される。光源からの光31は、画像情報に基づいて、主走査方向である感光体7の長手方向に繰返し走査される。感光体7を回転駆動させ、光源からの光31を画像情報に基づいて繰返し走査することによって、感光体7の表面43に対して画像情報に対応する露光を施すことができる。この露光によって、光31が照射された部分の表面電荷が減少し、光31が照射された部分の表面電位と光31が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、感光体7の表面43に静電潜像が形成される。また、感光体7への露光と同期して、記録紙51が、図示しない搬送手段によって矢符42方向から転写器34と感光体7との間の転写位置に供給される。
次いで、光源からの光31の結像点よりも感光体7の回転方向の下流側に設けられる現像器33の現像ローラ33aから、静電潜像の形成された感光体7の表面43にトナーが供給される。これによって、静電潜像が現像され、感光体7の表面43に可視像であるトナー画像が形成される。感光体7と転写器34との間に記録紙51が供給されると、転写器34によってトナーと逆極性の電荷が記録紙51に与えられ、これによって感光体7の表面43に形成されたトナー画像が記録紙51上に転写される。
トナー画像の転写された記録紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧される。これによって、記録紙51上のトナー画像が記録紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された記録紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、トナー画像が記録紙51に転写された後に、さらに矢符41方向に回転する感光体7は、その表面43がクリーナ36に備わるクリーニングブレード36aによって擦過され、清掃される。このようにしてトナーが除去された感光体7の表面43は、除電ランプからの光によって電荷が除去される。これによって感光体7の表面43の静電潜像が消失する。その後、感光体7はさらに回転駆動され、再度感光体7の帯電から始まる一連の動作が繰返される。以上のようにして、連続的に画像が形成される。
画像形成装置100に備わる感光体7は、前述のように、一般式(1)で示されるジアミン化合物を電荷発生層12に含有するものであり、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れるとともに、耐酸化性ガス性に優れ、繰返し使用されても前述の良好な電気特性が低下せず、優れた電気的耐久性を有する。したがって、長期間にわたって安定して高品質の画像を形成することのできる信頼性の高い画像形成装置100が実現される。
本発明の画像形成装置は、以上に述べた図5に示す画像形成装置100の構成に限定されるものではなく、本発明に係る感光体を使用することができるものであれば、他の異なる構成であってもよい。
本実施形態の画像形成装置100では、転写器34は、押圧力を用いずに転写を行う非接触式の転写手段であるけれども、これに限定されることなく、押圧力を利用して転写を行う接触式の転写手段であってもよい。接触式の転写手段としては、例えば、転写ローラを備え、記録紙51の感光体7の表面43との当接面の反対側の表面から転写ローラを感光体7に対して押圧し、感光体7と記録紙51とを圧接させた状態で、転写ローラに電圧を印加することによって、トナー画像を記録紙51上に転写させるものなどを用いることができる。
本発明による画像形成装置100は、本発明のジアミン化合物が均一に分散された電荷発生層12を有する感光体7を備えるので、黒点などの画像欠陥のない高品質の画像を形成することができる。
以下に合成例、作製例、比較作製例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの合成例、作製例および実施例により本発明が限定されるものではない。
なお、合成例で得られた化合物の化学構造、分子量および元素分析は、以下の装置および条件により測定した。
(化学構造)
核磁気共鳴装置:NMR(ブルカーバイオスピン社製、型式:DPX−200)
サンプル調整 約4mg試料/0.4m(CDCl3)
測定モード 1H(通常)、13C(通常、DPET−135)
(分子量)
分子量測定装置:LC−MS(サーモクエスト社製、
フィネガン LCQ Deca マススペクトロメーターシステム)
LCカラム GL-Sciences Inertsil ODS-3 2.1×100mm
カラム温度 40℃
溶離液 メタノール:水=90:10
サンプル注入量 5μl
検出器 UV254nmおよびMS ESI
(元素分析)
元素分析装置:パーキン エールマー社製、Elemental Analysis 2400
サンプル量: 約2mgを精秤
ガス流量(ml/分):He=1.5、O2=1.1、N2=4.3
燃焼管温度設定:925℃
還元管温度設定:640℃
なお、元素分析は、差動熱伝導度法による炭素(C)、水素(H)および窒素(N)同時定量法に分析した。
(合成例1)
前述の反応式において、一般式(4)および一般式(5)で示される二級アミン化合物としてジベンジルアミン、一般式(6)で示されるジハロゲン化合物として1,2−ジブロモー1,2−ジフェニルエタンを用いた次の反応式にしたがって、例示化合物No.1(構造式(3))を合成した。
Figure 0004961316
無水1,4−ジオキサン150ml中に1,2−ジブロモー1,2−ジフェニルエタン4.23g(1.0当量)とジベンジルアミン10.0g(2.1当量)を加え、アイスバスにて氷冷下に冷却した。この溶液中に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン6.86g(2.2当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を100〜110℃まで上げ、100〜110℃を保つように加熱しながら4時撹拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、生じた沈殿を濾取し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤(エタノール:酢酸エチル=8:2〜7:3)で再結晶を行うことによって、白色粉末状化合物11.5gを得た。
得られた白色粉末状化合物を化学分析した結果、
核磁気共鳴装置:NMR
1H−NMRスペクトル(通常)は、δ(ppm)=3.8(S.8H)、6.4(S.2H)、7.0〜7.8(m.30H)を示した。
また、13C−NMRスペクトル(通常、DPET−135)は、δ=57.5(CH2、シグナル強度4)、77.2(CH、シグナル強度2)、126.4(CH、シグナル強度4)、127.6(CH、シグナル強度4)、128.3(CH、シグナル強度4)、128.8(CH、シグナル強度8)、128.9(CH、シグナル強度8)、129.2(CH、シグナル強度4)、139.9(C、シグナル強度4)、141.0(C、シグナル強度2)を示した。
さらに、分子量測定装置:LC−MSは例示化合物No.1(分子量の計算値:572.32)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが573.6に観測された。
また、白色粉末状化合物の元素分析値は以下のとおりであった。
<例示化合物No.1の元素分析値>
理論値 C:88.07%、H:7.04%、N:4.89%
実測値 C:87.74%、H:6.75%、N:4.39%
以上、NMR、LC−MSおよび元素分析などの分析結果から、得られた白色粉末状化合物が、例示化合物No.1のジアミン化合物であることがわかった(収率:83.3%)。また、LC−MS測定時のHPLCの分析結果から、得られた例示化合物No.1の純度は99.0%であった。
(合成例2〜10)
合成例1において、一般式(4)および(5)で示される二級アミン化合物、一般式(6)で示されるジハロゲン化合物として表2に示す各原料化合物を用いて全く同様の操作を行ない、例示化合物No.2、3、4、15、20、28、48、51および59をそれぞれ製造した。なお、表2には、例示化合物No.1の原料化合物も併せて示す。
Figure 0004961316
また、上記の合成例1〜10で得られた各例示化合物の元素分析値と分子量の計算値およびLC−MSによる実測値[M+H]を表3に示す。
Figure 0004961316
Figure 0004961316
(作製例1)
以下のようにして、合成例1で製造した本発明によるジアミン化合物である例示化合物No.1を電荷発生層に含有させた感光体を作製した。感光体は、後述する評価装置による評価に供する感光体(評価装置用感光体)および実機による評価に供する感光体(実機用感光体と称する)の2種類とした。
導電性支持体には、外径30mm、長手方向の長さ357mmのアルミニウム製円筒状導電性支持体を用いた。
酸化チタン(商品名:タイベークTTO55A、石原産業株式会社製)7重量部および共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ株式会社製)13重量部を、メタノール159重量部と1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカにて分散処理して中間層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体を前記塗布槽に浸漬した後引き上げ、自然乾燥して膜厚0.9μmの中間層を形成した。
次いで、電荷発生物質として、下記構造式(7)で示されるチタニルフタロシアニン(例えば、特許第3569422号公報に記載の方法により作製)2重量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:S−LEC BM−2、積水化学工業株式会社製)1重量部および合成例1で合成した例示化合物No.1のジアミン化合物0.06重量部を、メチルエチルケトン97重量部に混合し、ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層形成用塗布液を調製した。この電荷発生層形成用塗布液を、前記の中間層と同様の方法で、先に設けた中間層表面に塗布し、自然乾燥して膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
Figure 0004961316
次いで、電荷輸送物質として下記構造式(8)で示されるブタジエン系化合物(商品名:T-405、高砂香料株式会社製)110重量部、耐酸化性ガス性添加剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:スミライザーBHT、住友化学工業株式会社製)3.3重量部およびバインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学株式会社製)160重量部を混合し、テトラヒドロフラン980重量部に溶解させて電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この電荷輸送層形成用塗布液を、前記の中間層と同様の方法で、先に設けた電荷発生層表面に塗布し、130℃で1時間乾燥させて、それぞれ膜厚が15μmと26μmになるように2種類の異なる膜厚の電荷輸送層を形成した。このようにして、図2に示される導電性支持体に中間層、電荷発生層および電荷輸送層が順次積層された積層構造を有する本発明による積層型感光体を作製した。
Figure 0004961316
(作製例2および3)
電荷発生層の形成に際し、本発明によるジアミン化合物である例示化合物No.1の配合量0.06重量部を0.002重量部および0.2重量部にしたこと以外は作製例1と同様にして本発明による積層型感光体を作製した。
(作製例4〜6)
電荷発生層の形成に際し、本発明によるジアミン化合物である例示化合物No.1に代えて例示化合物No.2、28および51を用いたこと以外は作製例1と同様にして本発明による積層型感光体を作製した。
(作製例7〜10)
電荷発生層の形成に際し、本発明によるジアミン化合物である例示化合物No.1の配合量0.06重量部を0.0002重量部、0.4重量部、0.00016重量部および0.44重量部にしたこと以外は作製例1と同様にして本発明による積層型感光体を作製した。
(作製例11)
中間層を形成しないこと以外は作製例1と同様にして、図1に示される導電性支持体に電荷発生層および電荷輸送層が順次積層された積層構造を有する本発明による積層型感光体を作製した。
(作製例12)
電荷輸送層の形成に際し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤に代えて、本発明によるジアミン化合物である例示化合物No.1を用いたこと以外は作製例1と同様にして本発明による積層型感光体を作製した。
(比較作製例1)
電荷発生層の形成に際し、本発明によるジアミン化合物である例示化合物No.1を用いないこと以外は作製例1と同様にして積層型感光体を作製した。
(比較作製例2)
電荷発生層の形成に際し、本発明によるジアミン化合物である例示化合物No.1に代えて下記構造式(9)で示されるヒンダードアミン系酸化防止剤を用いたこと以外は作製例1と同様にして積層型感光体を作製した。
Figure 0004961316
(比較作製例3)
電荷発生層の形成に際し、本発明によるジアミン化合物である例示化合物No.1に代えてヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:スミライザーBHT、住友化学工業株式会社製)を用いたこと以外は作製例1と同様にして積層型感光体を作製した。
(実施例1〜11、13および比較例1〜3)
以上のようにして作製した作製例1〜12および比較作製例1〜3の各評価装置用感光体および実機用感光体について、以下のようにして(a)耐酸化性ガス性および(b)電気特性安定性(電気的耐久性)を評価し、さらに(c)感光体性能の総合判定を行なった。
(a)耐酸化性ガス性
[評価装置による評価]
作製例1〜12および比較作製例1〜3の各評価装置用感光体(電荷輸送層の膜厚:15μm)を評価装置(商品名:CYNTHIA 59、ジェンテック株式会社製)にそれぞれ搭載し、温度25℃、相対湿度50%の常温/常湿(N/N:Normal Temperature/Normal Humidity)環境下において、帯電直後の感光体の表面電位V1(V)および帯電から3秒間経過後の感光体の表面電位V2(V)を測定した。測定された帯電直後の表面電位V1(V)および帯電から3秒間経過後の表面電位V2(V)を下記式(I)に代入し、電荷保持率DD(%)を算出し、これを初期電荷保持率DD0とした。
Figure 0004961316
次いで、オゾン発生・制御装置(商品名:OES−10A、ダイレック株式会社製)を用い、各感光体をオゾン濃度が約8.0ppm(ダイレック株式会社製のオゾン濃度計MODEL1200(商品名)にて確認)に調整された密閉された容器中で24時間オゾンに曝露した。オゾンへの曝露後、各感光体を温度25℃、相対湿度50%の常温/常湿(N/N)環境下に2時間放置した後、オゾン曝露前と同様にして電荷保持率DD(%)を求め、これをオゾン曝露後の電荷保持率DD02とした。
オゾン曝露前の電荷保持率すなわち初期電荷保持率DD0からオゾン曝露後の電荷保持率DD02を差引いた値を、電荷保持率変化量ΔDD(=DD0−DD02)として求め、耐オゾンガス性の評価指標とした。
[実機による評価]
作製例1〜12および比較作製例1〜3の各実機用感光体(電荷輸送層の層厚:26μm)を試験用複写機(型式:MX−2300、シャープ株式会社製)にそれぞれ搭載し、温度25℃、相対湿度50%の常温/常湿(N/N)環境下において、所定のパターンのテスト画像を記録用紙4万枚に実写させた。4万枚の実写が終了した時点から1時間複写機の動作を停止させた後、記録用紙にハーフトーン画像を複写させ、これを第1評価用画像とした。次いで、再び温度25℃、相対湿度50%のN/N環境下において所定のパターンのテスト画像を記録用紙4万枚に実写させ、4万枚の実写が終了した時点から1時間複写機の動作を停止させた後、記録用紙にハーフトーン画像を複写させ、これを第2評価用画像とした。さらに、再び温度25℃、相対湿度50%のN/N環境下において所定のパターンのテスト画像を記録用紙4万枚に実写させ、4万枚の実写が終了した時点から1時間複写機の動作を停止させた後、記録用紙にハーフトーン画像を複写させ、これを第3評価用画像とした。
形成された第1評価用画像、第2評価用画像および第3評価用画像をそれぞれ目視によって観察し、複写機の動作停止時に帯電器に近接して配置されていた感光体の部位からトナー像が転写された部分に相当する記録用紙の部位の画質を、白抜けおよび黒帯などの画像欠陥の発生度合によって判定し、耐酸化性ガス性の評価指標とした。画質の判定基準は以下のようである。
判定
◎:画像欠陥が全く発生していない
○:若干の画像欠陥が発生しているけれども、無視できる程度である
△:若干の画像欠陥が発生しているけれども、実使用上問題がない程度である
×:多数の画像欠陥が発生し、実使用不可
第1〜3評価用画像の総合判定
◎:第1評価用画像および第2評価用画像が判定◎であり、かつ第3評価用画像が判定○以上である
○:第1評価用画像、第2評価用画像および第3評価用画像のいずれも判定○以上である
△:第1評価用画像、第2評価用画像および第3評価用画像の少なくとも1つに判定△があり、かつ判定×がない
×:第1評価用画像、第2評価用画像および第3評価用画像の少なくとも1つに判定×がある
以上の電荷保持率変化量ΔDDの値と第1〜3評価用画像の総合判定とを合わせて、感光体の耐酸化性ガス性を評価した。耐酸化性ガス性の評価基準は以下のようである。
◎:優良(ΔDDが3.0%未満かつ画質が優(◎))
○:良好(ΔDDが3.0%以上10.0%未満かつ画質が優(◎)、またはΔDDが10.0%未満かつ画質が良(○))
△:実使用上問題なし(ΔDDが10.0%未満かつ画質が可(△))
×:不良(ΔDDが10.0%以上、または画質が不可(×))
(b)電気特性とその安定性(電気的耐久性)
作製例1〜12および比較作製例1〜3の各実機用感光体(電荷輸送層の層厚:26μm)を試験用複写機(型式:MX−2300、シャープ株式会社製)にそれぞれ搭載し、温度5℃、相対湿度20%の低温/低湿(L/L:Low Temperature/Low Humidity)環境下および温度35℃、相対湿度85%の高温/高湿(H/H:High Temperature/High Humidity)環境下のそれぞれの環境下において、以下のようにして電気特性安定性(電気的耐久性)を評価した。試験用複写機は、感光体表面を負に帯電して電子写真プロセスを行う負帯電型の画像形成装置であり、その内部には画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(商品名:model 344、トレック社製)を設けた。
帯電器による帯電動作直後の感光体の表面電位を帯電電位V0(V)として測定し、これを初期の帯電電位V01とした。またレーザ光によって露光を施した直後の感光体の表面電位を露光電位VL(V)として測定し、これを初期の露光電位VL1とした。
次いで、所定のパターンのテスト画像を記録用紙10万枚に連続して複写させた後、初期と同様にして帯電電位V0および露光電位VLを測定し、これらを繰返し使用後の帯電電位V02および繰返し使用後の露光電位VL2とした。初期の帯電電位V01と繰返し使用後の帯電電位V02との差の絶対値を、帯電電位変化量ΔV0(=|V01−V02|)として求めた。また初期の露光電位VL1と繰返し使用後の露光電位VL2との差の絶対値を、露光電位変化量ΔVL(=|VL1−VL2|)として求めた。帯電電位変化量ΔV0および露光電位変化量ΔVLを評価指標として、電気特性安定性(電気的耐久性)を評価した。
L/L環境下における電気特性安定性(電気的耐久性)の評価基準は以下のようである)
◎:優良(ΔV0が25V以下かつΔVLが30V以下)
○:良好(ΔV0が25V以下かつΔVLが30Vを超え60V以下、またはΔV0が25Vを超え40V以下かつΔVLが30V以下)
△:実使用上問題なし(ΔV0が25Vを超え40V以下かつΔVLが30Vを超え60V以下)
×:不良(ΔV0が40Vを超える、またはΔVLが60Vを超える)
H/H環境下における電気特性安定性(電気的耐久性)の評価基準は以下のようである。
◎:優良(ΔV0が20V以下かつΔVLが45V以下)
○:良好(ΔV0が20V以下かつΔVLが45Vを超え75V以下、またはΔV0が20Vを超え35V以下かつΔVLが45V以下)
△:実使用上問題なし(ΔV0が20Vを超え35V以下かつΔVLが45Vを超え75V以下)
×:不良(ΔV0が35Vを超える、またはΔVLが75Vを超える)
また、L/L環境下における評価結果とH/H環境下における評価結果とを合わせて、電気特性安定性(電気的耐久性)の総合評価を行なった。電気特性安定性(電気的耐久性)の総合評価の評価基準は以下のようである。
◎:優良(L/L環境下およびH/H環境下がいずれも優良(◎))
○:良好(L/L環境下およびH/H環境下のいずれかが良好(○)かつ他方が優良(◎)または良好(○))
△:実使用上問題なし(L/L環境下およびH/H環境下のいずれかが実使用上問題なし(△)かつ他方が不良(×)でない)
×:不良)L/L環境下およびH/H環境下のいずれか一方または両方が不良(×))
(c)感光体性能の総合判定
耐酸化性ガス性の評価結果と電気特性安定性(電気的耐久性)の総合評価結果とを合わせて、感光体性能の総合判定を行なった。総合判定の判定基準は以下のようである)
◎:優良(耐酸化性ガス性および電気特性安定性(電気的耐久性)がいずれも優良(◎))
○:良好(耐酸化性ガス性および電気特性安定性(電気的耐久性)のいずれかが良好(○)かつ他方が優良(◎)または良好(○))
△:実使用上問題なし(耐酸化性ガス性および電気特性安定性(電気的耐久性)のいずれかが実使用上問題なし(△)かつ他方が不良(×)でない)
×:不良(耐酸化性ガス性および電気特性安定性(電気的耐久性)のいずれか一方または両方が不良(×))
以上の評価結果を表4に示す。
Figure 0004961316
(実施例12)
作製例1の感光体を、試験用実機の感光体帯電手段であるコロナ放電帯電器に代えて、接触帯電方式の一つであるローラ帯電器を備え付けるように改造した複写機(型式:MX−2300、シャープ株式会社製)に搭載し、前述と同様に(a)耐酸化性ガス性および(b)電気特性安定性(電気的耐久性)、さらに(c)感光体性能の総合判定を行った。しかし、評価の際に行った実機による実写において、帯電器が感光体に直接接触することから、膜が著しく削れてしまい途中で実写を中断せざるを得なかった。このために評価を継続することができなかった。
電荷発生層に一般式(1)で示されるジアミン化合物を含有する実施例1〜8、13の感光体は、そのジアミン化合物を含有しない比較例1の感光体に比べて、耐酸化性ガス性および電気特性安定性(電気的耐久性)に優れ、繰返し使用されても良好な電気特性を示すことわかる。
このことから、一般式(1)で示されるジアミン化合物を電荷発生層に添加することによって、帯電器から放出されるオゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスから感光体が保護され、感光体の疲労劣化を抑制できることがわかる。また、そのジアミン化合物の添加が、帯電性、感度、応答性などの電気特性に悪影響を及ぼさないこともわかる。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BHT)を電荷輸送層にのみ含有する比較例1の感光体は、時間の経過に伴って耐酸化性ガス性、画質の評価が悪化していることがわかる。このことから、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BHT)を電荷輸送層にのみ添加した場合には、長時間の酸化性ガス暴露によって、酸化性ガスが、電荷輸送層を浸透し、電荷発生層に至り、電荷発生物質を失活させている可能性が示唆される。
電荷発生層に一般式(1)で示されるジアミン化合物を含有する実施例1〜8の感光体は、酸化防止剤としてヒンダードアミン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤(BHT)を電荷発生層に含有する比較例2および3の感光体に比べて、画質の評価が良好であることがわかる。
このことから、一般式(1)で示されるジアミン化合物が酸化性ガスによる感光体の疲労劣化に対する抑制効果に優れていることがわかる。
また、ヒンダードアミン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤(BHT)を電荷発生層に添加した比較例2、3の感光体は、一般式(1)で示されるジアミン化合物を電荷発生層に添加した実施例1〜8の感光体に比べ、初期の露光電位ΔVLおよび繰り返し使用による露光電位の変化量ΔVLが大きかった。このことから、ヒンダードアミン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤(BHT)の電荷発生層へ添加は、一般式(1)で示されるジアミン化合物に比べて、酸化性ガス暴露による感光体の疲労劣化に対する抑制効果が小さいこと、また、ヒンダードアミン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤(BHT)の電荷発生層への添加によって、添加化合物が電荷発生物質に悪影響を及ぼし、応答性、感度等の電気特性および、電気特性安定性(電気的耐久性)を悪化させていることがわかる。
実施例1の感光体と中間層をもたない実施例11の感光体とを比較すると、後者の感光体は、初期の帯電電位V01、画質の評価が低いことがわかる。このことから、後者の感光体では、導電性支持体から感光層に電荷が注入され、感光体の帯電性が低下していること、露光される部分以外の表面電荷が減少し、画像に欠陥が生じていることがわかる。
電荷発生層に一般式(1)で示されるジアミン化合物を電荷発生物質100重量部に対して0.01〜20重量部の割合で含有する実施例1〜3、7および8の感光体は、そのジアミン化合物を電荷発生物質100重量部に対して0.01重量部未満の割合で含有する実施例9の感光体と比較して、画質の評価が良好であることがわかる。
さらに、電荷発生層に一般式(1)で示されるジアミン化合物を電荷発生物質100重量部に対して0.1〜10重量部の割合で含有する実施例1〜3の感光体は、そのジアミン化合物を電荷発生物質100重量部に対して0.1重量部未満の割合で含有する実施例7の感光体と比較して、耐酸化ガス性に優れることが判る。
また、電荷発生層に一般式(1)で示されるジアミン化合物を電荷発生物質100重量部に対して0.01〜20重量部の割合で含有する実施例1〜3、7および8の感光体は、そのジアミン化合物を電荷発生物質100重量部に対して20重量部を超える割合で含有する実施例10の感光体と比較して、初期の露光電位VL1が小さく、また繰り返し使用による帯電電位の変化量ΔV0、露光電位変化量ΔVLも小さく、応答性、感度の電気特性およびその安定性(電気的耐久性)が良好に優れることがわかる。
さらに、電荷発生層に一般式(1)で示されるジアミン化合物を電荷発生物質100重量部に対して0.1〜10重量部の割合で含有する実施例1〜3の感光体は、そのジアミン化合物を電荷発生物質100重量部に対して10重量部を超える割合で含有する実施例8の感光体と比較して、応答性、感度の電気特性およびその安定性(電気的耐久性)に優れることがわかる。
以上のことから、電荷発生層における前記ジアミン化合物の含有量が、前記電荷発生物質100重量部に対して0.1〜20.0重量部であるが好ましく、0.1〜10.0以下さらに好ましいことがわかる。
実施例1と実施例12との比較から、電荷発生層に一般式(1)で示されるジアミン化合物を含有する感光体は、接触帯電方式(ローラ帯電器を備える画像形成装置)よりも酸化性ガス発生量が多い非接触帯電方式(コロナ放電帯電器を備える画像形成装置)の環境にあっても優れた耐酸化性ガス性を示すことがわかる。すなわち、本発明の感光体は、帯電手段として非接触帯電を備える画像形成装置と共に用いることができるため、帯電器が感光体と直接接触しないことから摺擦による感光体表面の摩耗や傷などがつきにくく、機械的耐久性に優れた長寿命の感光体であることがわかる。
以上のように、一般式(1)で表される本発明のジアミン化合物を電荷発生層に含有させることによって、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れるとともに、耐オゾンガス性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性、繰返し使用されても前述の良好な電気特性が低下しない電気的耐久性に優れた長寿命な電子写真感光体を得ることができた。
本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
符号の説明
1、2、3、4、7 感光体
10、16、18、19 感光層
11 導電性支持体
12 電荷発生層
13 電荷輸送層
14 積層型光導電層
15 中間層
21 表面保護層
100 画像形成装置
44 回転軸線
41、42 矢符
32 帯電手段(帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写器
36 クリーナ
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
30 露光手段
31 光
51 記録紙
35 定着器
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
43 電子写真感光体表面

Claims (7)

  1. 導電性材料からなる導電性支持体上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層が形成されてなる電子写真感光体であって、
    前記電荷輸送層が、耐酸化性ガス性添加剤を含有し、かつ
    前記電荷発生層が、一般式(1):
    Figure 0004961316
    (式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいヘテロ原子含有シクロアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;Y1、Y2、Y3およびY4は、同一または異なって、置換基を有してもよい鎖状のアルキレン基である)
    で示されるジアミン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記ジアミン化合物が、副式(2):
    Figure 0004961316
    (式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6は、一般式(1)と同義である)
    で示される請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記ジアミン化合物が、構造式(3):
    Figure 0004961316
    で示される請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記電荷発生層における前記ジアミン化合物の含有量が、前記電荷発生物質100重量部に対して0.1〜20.0重量部である請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  5. 前記導電性支持体と前記積層型感光層との間に中間層を有する請求項1〜4のいずれか1つ記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を施す露光手段と、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
  7. 前記帯電手段が、非接触帯電手段である請求項6に記載の画像形成装置。
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