JP4956869B2 - 印刷インキ用バインダーおよび当該印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキ、コーティング剤ならびに塗料用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエチレン(以下PEと略す)フィルム、ポリプロピレン(以下PPと略す)フィルム、ポリエステル(以下PETと略す)フィルム、ナイロン(以下NYと略す)フィルムのいずれに対しても良好な接着性を示す印刷インキ用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、包装材料としてのプラスチックフィルムは包装内容物の複雑化、包装技術の高度化に伴い各種のものが開発されており、その結果、内容物に適合しうるフィルムが適宜使用されている。
【0003】
従来より、かかるプラスチックフィルムの印刷インキ用バインダーとしては、ロジン変性マレイン酸樹脂、硝化綿、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂などが使用されているが、被印刷物としてのPP、PET及びNYのいずれのフィルムに対しても優れた接着性を示すものはない。そのため、使用されるフィルムの特性に合致する印刷インキ用バインダーを個々に設計せねばならないため、その種類は多岐にわたっている。
【0004】
たとえば、ポリウレタン樹脂をバインダーとする印刷インキはPETフィルムやNYフィルムに対して単独で優れた接着力を有するが、汎用フィルムであるPEフィルムやPPフィルム等のポリオレフィンフィルムに対しては充分な接着力がない。一方、塩素化ポリオレフィンをバインダーとする印刷インキはポリオレフィンフィルムに対して良好な接着力を示すが、PETフィルムやNYフィルムに対しては接着力が十分ではない。
【0005】
そこで、印刷インキ用バインダーとしてポリウレタン樹脂と塩素化ポリオレフィンを混合または反応させることで、各種被印刷物に対するインキの接着性の向上が試みられている。しかし、塩素化ポリオレフィンは塩素を含有していることから、脱塩化水素反応による経時安定性の問題や、発生する塩化水素による充填容器の腐食、また樹脂の着色等の問題がある。さらに、塩素化ポリオレフィンはリサイクル過程や焼却時に塩素ガスを発生し、ダイオキシン生成の原因になり得る。このような状況の下、塩素を含有せず、環境負荷の小さい印刷インキ用バインダーが切望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、PET、NY、PE、PPなどの各種プラスチックフィルムに対して優れた接着性を有し、しかも非塩素系樹脂からなる印刷インキ用バインダー、塗料用組成物、コーティング剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、変性炭化水素樹脂を水素化して得られる変性炭化水素樹脂水素化物とポリウレタン樹脂の混合物からなる印刷インキ用バインダーが前記従来技術の課題をことごとく解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、アルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂および/またはフェノール変性C9系石油樹脂(A)を圧力が3〜25MPa、反応温度が100〜320℃であり、かつ水素化触媒として珪藻土に担持したニッケルを使用する条件で水素化して得られる水素化物(B)、ならびに高分子ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および必要に応じて鎖長停止剤を反応させてなるポリウレタン樹脂(C)を主成分として含有してなる混合物を用いた、印刷インキ用バインダー;当該印刷インキ用バインダーを用いた印刷インキに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に用いられる水素化物(B)(以下、(B)成分という)の原料となる変性炭化水素樹脂アルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂および/またはフェノール変性C9系石油樹脂(A)(以下、(A)成分という)について説明する。
【0010】
(A)成分は、石油中に含まれるイソプレン、ノルマルペンテン等のC5留分、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン類等のC9留分、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等のシクロペンタジエン系留分、およびこれらの混合物やこれらの精製物(以下、「重合性モノマー」という)、ならびに別途合成した当該重合性モノマーと、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基といった活性水素を含有する官能基(以下、「活性水素基」という)を分子内に有する化合物(以下、「活性水素含有化合物」という)から構成される重合物である。
【0011】
前記重合性モノマーとしては、後述するポリウレタン樹脂(C)(以下、(C)成分という)との相溶性に優れ、ポリオレフィンフィルムに対して良好な接着性を示し、かつ水素化が容易であることから、C5留分としてシクロペンタジエン、C9留分として芳香族炭化水素、およびこれら化合物に対応する別途合成した重合性モノマーを好適に使用できる。
【0012】
また、前記活性水素含有化合物としては、フェノール系化合物、アリルアルコール等の重合性不飽和結合を有するアルコール化合物があげられる。これらのうち、フェノール系化合物は(A)成分であるフェノール変性C9系石油樹脂中のフェノール性水酸基の量(水酸基価)がある程度制限される傾向があること、マレイン酸またはその無水物により活性水素基を付与した変性物では、これを水素化した場合、得られる変性炭化水素樹脂水素化物(B)が着色しやすい傾向にあることから、アリルアルコール等の重合性不飽和結合を有するアルコール化合物が好ましい。アルコール変性物の場合、付与できる水酸基の量を制御しやすく、また、(A)成分であるアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂を水素化した場合に着色しにくいという利点がある。しかも、当該(A)成分の変性に用いるアルコール性水酸基の量を広範囲に設定できるので、本発明の印刷インキ用バインダーをイソシアネート化合物と共に2液硬化物として使用した場合、反応の制御が容易であり、この印刷インキ用バインダーを含有してなる印刷インキ塗膜は溶剤に対して再溶解性が優れるという利点がある。
【0013】
前記(A)成分は、前記重合性モノマーを重合させる際に、当該反応系内に前記活性水素含有化合物を存在させ、カチオン重合法または熱重合法等の各種公知の重合方法により製造することができる。こうすることで、(A)成分中に活性水素基が導入される。
【0014】
(A)成分を製造する際、使用する重合性モノマーが芳香族系炭化水素である場合、これと反応させる活性水素含有化合物としてはフェノール系化合物が好ましい。また、重合性モノマーがジシクロペンタジエン系炭化水素である場合は、これと反応させる活性水素含有化合物としては重合性不飽和結合を有するアルコール化合物、特にアリルアルコールが好ましい。
【0016】
以上述べた活性水素基の導入方法の中では、その簡便性の点で、前記した重合性モノマーを重合させる際に活性水素含有化合物を反応させる方法が好ましい。
【0017】
次に、上記方法で得られた(A)成分)を溶融、または溶剤に溶解した状態で、各種公知の水素化触媒の下水素化反応を行い、(B)成分を製造する。
【0018】
(B)成分を製造する際の水素化条件は、水素化圧力が1〜30MPa程度、好ましくは3〜25MPaであり、反応温度が50〜350℃程度、好ましくは100〜320℃である。水素化圧力が1MPaに満たない場合や反応温度が50℃に満たない場合には、水素化反応が進行し難い。また、水素化圧力が30MPaを超える場合には、特殊な設備が必要となり、また反応温度が350℃を超える場合には、樹脂の分解反応が著しくなるという不利益が生ずる。また、水素化の反応時間は、通常、10分〜10時間程度、好ましくは20分〜7時間程度である。反応時間が10分に満たない場合には、水素化反応が十分に進行せず、一方反応時間が10時間を超える場合には生産性が悪くなり、いずれの場合も不利益を生ずる。なお、上記記載の各条件の範囲は、範囲外での水素化条件を排除する意ではない。たとえば水素化圧力1MPa未満であっても、かかる水素化圧力で反応を起こしうる触媒を用いれば水素化は可能である。
【0019】
水素化触媒としては、珪藻土(シリカアルミナ)に担持したニッケルを使用する。なお、パラジウム、白金、コバルト、ロジウム、ルテニウム、レニウム等の金属またはこれらの酸化物、硫化物等の金属化合物等、各種のものを併用できる。これら任意の水素化触媒は多孔質で表面積の大きなアルミナ、シリカ、シリカアルミナ(珪藻土)、カーボン、チタニア等の担体に担持して使用してもよい。触媒の使用量は、原料樹脂である(A)成分に対して、通常0.01〜10重量%程度である。
【0020】
水素化反応時に使用する溶剤としては、当該水素化反応に際して不活性であって、(A)成分や(B)成分を良好に溶解できる溶剤である限り特には制限されない。具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサン、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、シクロヘキサノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキシルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノンアロマティクス系炭化水素溶剤(例えばシェルゾールD−40 シェルジャパン株式会社)、イソパラフィン系炭化水素溶剤(例えばシェルゾールD−70 シェルジャパン株式会社)、その他各種公知のミネラルスピリット類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用できる。溶剤の使用量は特に限定されないが、(A)成分に対して通常5重量%以上、好ましくは10〜70重量%の範囲で用いればよい。
【0021】
なお、触媒の使用量および反応時間については、反応形式として回分式を採用した場合を説明したが、その他の反応形式である流通式(固定床式、流動床式等)を採用することも可能である。
【0022】
(B)成分中の活性水素基の含有量は特に制限されないが、活性水素基がアルコール性水酸基の場合には水酸基価が、通常は5〜400mgKOH/g程度、好ましくは20〜300mgKOH/gとする。水酸基価が5mgKOH/gより小さいと、後述する(C)成分との相溶性が低下し、塗膜の各種プラスチックフィルムに対する十分な接着性が得られ難くなる傾向にある。一方、水酸基価が500mgKOH/gより大きいと、塗膜の耐水性が悪化する傾向にある。
【0023】
(B)成分は水素化率が5〜100%であって、臭気が少なく、色調の優れた樹脂である。通常、色調はガードナー色数(JIS K5400)が1以下である。このため得られる本発明の印刷インキ用バインダーの臭気も少なく、色調もすぐれたものとなる。したがって、当該印刷インキ用バインダーを用いてなる印刷インキは外観が損なわれることがなく(特に白顔料を用いた場合)、食品包装用フィルム等の臭気が問題とされる分野において好適に使用することができる。
【0024】
(B)成分の数平均分子量は、通常200〜3,000程度である。数平均分子量を200以上とすることにより乾燥性や耐ブロッキング性を向上させることができ、また3,000以下とすることにより相溶性を向上させることができる。
【0025】
本発明の印刷インキ用バインダーを構成する(C)成分としては、各種公知のポリウレタン樹脂を特に制限無く使用することができ、市販のものを用いることもできるが、本発明においては高分子ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および必要に応じて鎖長停止剤を反応させたものを使用する。
【0026】
前記高分子ポリオールとしては各種公知のものが使用できる。たとえば、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体または共重合体等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール等の飽和もしくは不飽和の各種公知の低分子グリコール類またはn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸などとを脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られたグリコール類等の一般にポリウレタンの製造に用いられる各種公知の高分子ポリオールがあげられる。
【0027】
なお、前記高分子ポリオールがグリコール類と二塩基酸とから得られるものである場合には、当該グリコール類の5モル%までを、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の各種公知のポリオールで置換することができる。
【0028】
前記高分子ポリオールの数平均分子量は、得られる印刷インキ用バインダーの溶解性、乾燥性、耐ブロッキング性等を考慮して適宜決定されるが、通常は700〜10,000程度、好ましくは1,000〜6,000とするのがよい。数平均分子量が700未満になると溶解性の低下に伴い印刷適性が低下する傾向があり、また10,000を越えると乾燥性及び耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0029】
前記ジイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。たとえば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等がその代表例としてあげられる。
【0030】
前記鎖伸長剤としては各種公知のものを使用することができる。たとえば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミンなどがあげられる。その他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類および前記したポリエステルジオールの項で説明した低分子グリコールやダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等も例示できる。
【0031】
前記鎖長停止剤としては各種公知のものを使用することができる。たとえば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が例示できる。
【0032】
前記(C)成分を製造する方法としては、高分子ポリオールとジイソシアネート化合物をイソシアネート基が過剰となる条件で反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを調製し、次いでこれを適当な溶媒中で鎖伸長剤および必要に応じて重合停止剤と反応させる二段法や、高分子ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および必要に応じて鎖長停止剤を適当な溶媒中で一度に反応させる一段法のいずれの方法をも採用しうるが、均一なポリマー溶液が得られるという点において前者方法が好ましい。
【0033】
前記二段法を採用する場合、プレポリマーと鎖伸長剤および必要に応じて鎖長停止剤とを反応させる際の条件は特に限定されないが、プレポリマーの末端に有する遊離のイソシアネート基を1当量とした時、イソシアネート基と反応しうる前記鎖伸長剤および鎖長停止剤に含有される活性水素の合計当量を0.5〜2当量程度とするのがよい。特に活性水素含有基がアミノ基の場合にはその当量を0.5〜1.3当量とするのがよい。前記活性水素の当量が0.5未満の場合は、本発明の印刷インキ用バインダーを用いたインキ塗膜の乾燥性、耐ブロッキング性、強度が低下する傾向にある。また、前記活性水素の当量が2より大きい場合は未反応の鎖伸長剤が残存する可能性があり好ましくない。
【0034】
上記した製造法において使用される溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤を例示でき、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
上記方法で得られる(C)成分の数平均分子量は、得られる印刷インキの乾燥性、耐ブロッキング性、皮膜強度、耐油性、粘度等を考慮して適宜決定されるが、通常5,000〜10,0000の範囲とするのがよい。
【0036】
本発明の印刷インキ用バインダーは、前記(B)成分と(C)成分を主成分としてなる混合物である。当該(B)と(C)との使用割合は、オレフィン、PET、NYなどに対する接着性を考慮して決定され、通常、重量比で、(B)/(C)が1/99〜70/30程度、さらには5/95〜50/50の範囲内とするのが好ましい。変性炭化水素樹脂水素化物(B)の割合が1未満であるとオレフィンへの接着性が十分でなく、また70を超えるとPET、NYなどに対する接着性が十分でなくなる。
【0037】
また、本発明の印刷インキ用バインダーは、通常、樹脂溶液として用いられる。樹脂固形分濃度や樹脂溶液の粘度は特に制限されず、印刷時の作業性等を考慮して適宜決定すればよい。通常は樹脂固形分濃度を15〜60重量%程度、樹脂溶液粘度を50〜100,000cP/25℃程度の範囲に調整するのが実用上好適である。
【0038】
また、本発明の印刷インキ用バインダーの性能を逸脱しない限り、硝化綿、エチレン/酢酸ビニル共重合体等の、通常印刷インキ用バインダーに使用される樹脂を併用することもできる。
【0039】
このようにして得られた本発明の印刷インキ用バインダーは、着色剤、溶剤、さらに必要に応じてインキ流動性およびインキ表面皮膜を改良するための界面活性剤、ワックス、その他添加剤を適宜配合し、ボールミル、アトライター、サンドミル等の通常のインキ製造装置を用いて混練することで印刷インキ組成物として使用することができる。また、本発明の印刷インキ用バインダーの主成分である、(A)成分を水素化して得られる(B)成分および(C)成分からなる混合物は、塗料用組成物として使用したり、そのままプラスチックフィルム等の各種基材へのコーティング剤として使用することもできる。なお、塗料組成物、印刷インキに使用する場合は、これらの樹脂固形分が3〜20重量%程度になるように使用するのが好ましい。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば被印刷物としてのPET、NY、PE、PPなどの各種プラスチックフィルムのいずれのプラスチック基材対しても優れた接着性を有する印刷インキ用バインダーを提供することができる。また、本発明の印刷インキ用バインダーはそのまま各種基材に対するコーティング剤として使用できる。また、本発明の印刷インキ用バインダーは優れた接着性を有することから印刷適性、ラミネート加工適性に優れており、PPダイレクト・ラミネート加工、ボイル加工、レトルト加工、ドライラミネート加工、エクストルージョンラミネート加工などへ適用できる。特に、本発明の印刷インキ用バインダーに、アルコール性水酸基で修飾した変性炭化水素樹脂水素化物(B)を使用した場合には、かかる印刷インキ用バインダーをイソシアネート化合物と共に2液硬化物として使用した際の反応性のコントロールが容易であったり、溶剤に対するインキ塗膜の最溶解性が優れたりするという効果がある。さらに、本発明の印刷インキ用バインダーは、塩素系樹脂を使用していないので、経時安定性に優れており、石油缶などの容器を腐食する問題もない。
【0041】
【実施例】
以下に製造例、実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、部および%は重量基準である
【0042】
製造例1
1リットル容オートクレーブにアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂(商品名「クイントン1700」、日本ゼオン(株)製、軟化点102.0℃、数平均分子量360)500部、ニッケル/珪藻土触媒(ニッケル担持量50重量%)7部を仕込み、260℃に保温し、水素圧力20MPaで5時間、水素化を行なった。次いで、得られたアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物を取出し、トルエン500部に溶解し、ろ過により触媒を除去した後、200℃、2.7kPaで30分間減圧脱溶剤して、軟化点100℃のアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物450部を得た。得られたアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物(以下、「樹脂1」で示す。)の軟化点、色調、水酸基価、不飽和結合の水素化率、数平均分子量を表1に示す。
【0043】
なお、軟化点は環球法(JIS K2207)による測定値である。色調は、ハーゼンスタンダードカラー(H)(ASTM D1209)による。水酸基価は電位差滴定法による(JIS K0070)。不飽和結合の水素化率は、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定することにより算出した。すなわち、原料樹脂および得られた水素化物の同濃度の重水素置換クロロホルム(CDCl3)溶液を作製して、1H−NMRを測定し、5〜6ppm付近に現れる不飽和二重結合のH−スペクトルおよび7ppm付近に現れる芳香環の共役二重結合に由来するH−スペクトル面積より、以下の式に基づき算出した。水素化率={1−(得られた水素化物のスペクトル面積/原料樹脂のスペクトル面積)}×100(%)。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、HLC8120、使用カラム:TSKgel SuperHM−L×3、展開溶剤:テトラヒドロフラン)で測定したものである。
【0044】
製造例2
1リットル容オートクレーブに、フェノール変性C9系石油樹脂(「ネオポリマーE−100」、軟化点90.0℃、数平均分子量540、日本石油化学(株)製)500部、ニッケル/珪藻土触媒(ニッケル担持量50重量%)2.5部を仕込み、280℃に保温し、水素圧力20MPaで5時間、水素化を行なった。次いで、得られたフェノール変性C9系石油樹脂の水素化物を取出し、トルエン500部に溶解し、ろ過により触媒を除去した後、200℃、2.7kPaで30分間減圧脱溶剤して、軟化点92℃のフェノール変性C9系石油樹脂の水素化物450部を得た。得られたフェノール変性C9系石油樹脂の水素化物(以下、「樹脂2」で示す。)の色調、水酸基価、不飽和結合の水素化率、数平均分子量を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
製造例3
攪拌機、温度計及び窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、分子量2,000のポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)グリコール((株)クラレ製、商品名「クラポールP2010」)1,000部とイソホロンジイソシアネート222部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させ遊離イソシアネート価3.36%のプレポリマーとなし、これにメチルエチルケトン815部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン88.7部、メチルエチルケトン1,224部及びイソプロピルアルコール1,019部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液2,037部を添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度が30%、粘度が630cP/25℃であった。
【0047】
実施例1
チタン白(ルチル型)30部、トルエン10部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール10部、製造例3で得られたポリウレタン樹脂溶液を32部、および製造例1で得られた樹脂1を8部配合し、それぞれペイントシェイカーで練肉して白色印刷インキを調製した。
【0048】
実施例2〜4
実施例1において、製造例3で得られたポリウレタン樹脂溶液の使用量、または変性炭化水素樹脂の種類もしくは使用量を表2に示すように代えた他は実施例1と同様にして白色印刷インキを調製した。
【0049】
比較例1
実施例1において、樹脂1を使用しなかった他は実施例1と同様にして白色印刷インキを調製した。
【0050】
比較例2
実施例1において、樹脂1に代えて、塩素化ポリプロピレン(商品名「スーパークロン813A」,日本製紙(株)製,30%トルエン溶液)を使用した他は実施例1と同様にして白色印刷インキを調製した。
【0051】
比較例3
実施例1において、樹脂1に代えて、樹脂1の原料であるアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂(商品名「クイントン1700」、日本ゼオン(株)製、軟化点102.0℃、数平均分子量360)を使用した他は実施例1と同様にして白色印刷インキを調製した。
【0052】
【表2】
【0053】
上記実施例および比較例で得られた白色印刷インキを、版深30μmのグラビア版を備えた簡易グラビア印刷機により厚さ15μmのコロナ放電処理OPPの放電処理面、厚さ11μmのPETの片面、および厚さ15μmのコロナ放電処理NYの放電処理面に印刷して、40〜50℃で乾燥し、印刷フィルムを得た。
【0054】
接着性:上記印刷フィルムを大気中で1日放置した後、印刷面に粘着テ−プを貼り付け、これを急速に剥したときの印刷塗膜の残存具合を以下の基準で目視評価した。評価結果を表3に示す。
◎:全く剥れなかった。
〇:印刷皮膜の80%以上がフィルムに残った。
△:印刷皮膜の50〜80%以上がフィルムに残った。
×:印刷皮膜の50%以下がフィルムに残った。
【0055】
再溶解性:上記白色印刷インキを、バ−コ−タ−No.4を用いてガラス板上に展色した後に乾燥させ、次いでトルエン/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコ−ル=1/1/1(重量比)からなる混合溶剤に浸漬し、インキ塗膜の溶解具合を以下の基準にて目視評価した。評価結果を表3に示す。
○:インキ塗膜がすぐに溶解を始めた。
△:インキ塗膜が徐々に溶解した。
×:インキがほとんど溶解しなかった。
【0056】
保存容器の腐食:上記白色印刷インキを石油缶にいれ、室温にて3ヶ月間保存した後、容器内部の腐食状態の有無を目視評価した。結果を表3に示す。
【0057】
インキ塗膜の臭気:上記白色印刷インキを、バ−コ−タ−No.4を用いてガラス板上に展色した後に乾燥させ、塗膜の臭気を官能評価した。評価結果を表3に示す。
【表3】
Claims (3)
- アルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂および/またはフェノール変性C9系石油樹脂(A)を圧力が3〜25MPa、反応温度が100〜320℃であり、かつ水素化触媒として珪藻土に担持したニッケルを使用する条件で水素化して得られる水素化物(B)、ならびに高分子ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および必要に応じて鎖長停止剤を反応させてなるポリウレタン樹脂(C)を主成分として含有してなる混合物を用いた、印刷インキ用バインダー。
- (B)と(C)の重量比(B)/(C)が1/99〜70/30である請求項1に記載の印刷インキ用バインダー。
- 請求項1または2に記載の印刷インキ用バインダーを用いた印刷インキ。
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