JP4734686B2 - ポリウレタン系接着剤用粘着付与剤、ポリウレタン系接着剤用バインダー、およびポリウレタン系接着剤組成物 - Google Patents

ポリウレタン系接着剤用粘着付与剤、ポリウレタン系接着剤用バインダー、およびポリウレタン系接着剤組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリウレタン系接着剤組成物に関する。本発明のポリウレタン接着剤組成物は、ポリエチレン(以下PEと略す)、ポリプロピレン(以下PPと略す)、ポリエステル(以下PETと略す)、ナイロン(以下NYと略す)等の各種プラスチックに対して良好な接着性を示し、かつ色調に優れる。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品等の包装材として、PE、PP、NY、PET、塩化ビニル、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のプラスチックフィルムとアルミ箔などの金属箔とを数層にラミネートした多層複合フィルムが開発され広く使用されている。これら多層複合フィルムの製造に関しては、ポリウレタン系接着剤がよく使用されているが、必ずしも接着強度、特に初期接着性などの点で十分でないことが指摘されている。
【0003】
また、一般にポリウレタンはPEフィルムやPPフィルムなどの汎用フィルムに対する接着力が不十分なため、上記ポリウレタン系接着剤には、接着力を向上させるためにロジンエステル樹脂、ケトン樹脂、スチレンオリゴマー等の粘着付与樹脂を配合することが知られている。しかしながら、ロジンエステル樹脂やケトン樹脂、石油樹脂等の粘着付与樹脂は色調が悪いため、包装材用途等の色調を重要視する分野では使用しがたい。また、スチレンオリゴマー、水素化石油樹脂等の淡色な粘着付与樹脂では、色調は問題ないが、当該接着剤における他の構成成分であるイソシアネート化合物、ポリオール等との相溶性が悪いために十分な接着性が得られなかった。そのため、イソシアネート化合物、ポリオール等との相溶性が優れ、かつ色調が良好である粘着付与樹脂が求められていた。また、従来の接着剤用ポリウレタン樹脂中の構成成分であるポリオールや鎖伸長剤として機能する、新たな化合物の出現が要望されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記課題を解決すること、即ち接着剤として使用したときにPE、PP、NY、PETなどの各種プラスチック成形品に対して優れた初期接着性を有し、かつ色調に優れたポリウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。また当該ポリウレタン系接着剤組成物を提供するための構成成分である粘着付与剤およびポリウレタン系バインダーを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記のようなポリウレタン系接着剤用粘着付与剤、ポリウレタン系接着剤用バインダー、およびポリウレタン系接着剤組成物を用いることにより前記従来技術の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、変性炭化水素樹脂(A)を水素化して得られる変性炭化水素樹脂水素化物(B)からなるポリウレタン系接着剤用粘着付与剤に関する。また本発明は、変性炭化水素樹脂(A)を水素化して得られる変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオールおよびジイソシアネート化合物からなる反応生成物からなるポリウレタン系接着剤用バインダーに関する。さらに本発明は、当該ポリウレタン系接着剤用粘着付与剤またはポリウレタン系接着剤用バインダーを含有するポリウレタン系接着剤組成物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる変性炭化水素樹脂水素化物(B)とは、石油留分に含まれる重合性モノマーと後述する活性水素含有化合物との反応生成物である変性炭化水素樹脂(A)を、水素化することによって得られるものをいう。
【0008】
前記の変性炭化水素樹脂(A)は、石油留分に含まれる重合性モノマーから構成される重合物である。当該重合性モノマーとしては、イソプレン、ノルマルペンテン、シクロペンタジエン等のC5留分、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン類等のC9留分や、これらの混合物またはこれらの精製物や、別途合成した前記重合性モノマーを使用できる。これらモノマーのなかでも、得られるポリウレタン樹脂との相溶性に優れ、ポリオレフィンに対して良好な接着性を示し、かつ水素化が容易であることを考慮すれば、C5留分のうちのシクロペンタジエン、C9留分のうちの芳香族炭化水素、これらに対応する別途合成した重合性モノマー(いわゆるピュアモノマー)が好ましく使用できる。
【0009】
前記の変性炭化水素樹脂水素化物(A)とは、前記重合性モノマーと活性水素含有化合物とからなる反応生成物をいう。変性炭化水素樹脂(A)を製造するには、前記重合性モノマーを重合させる際に当該反応系内に活性水素含有化合物を存在させ、通常のカチオン重合法または熱重合法等を採用すればよい。これにより、変性炭化水素樹脂(A)中に活性水素含有化合物に由来する活性水素基が導入される。
【0010】
変性炭化水素樹脂(A)の構成成分である前記の活性水素含有化合物としては、ポリウレタン接着剤組成物の構成成分の一つであるポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と反応しうる水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の活性水素基を有する化合物が使用できる。
【0011】
当該活性水素含有化合物としては、たとえば、フェノール系化合物、アリルアルコール、マレイン酸またはその無水物等があげられる。
【0012】
前記の活性水素基導入方法以外の方法としては、前記重合性モノマーとエステル等の官能基を有する化合物とからなる反応生成物を、加水分解する方法もあげられる。具体的には、酢酸ビニル等のモノマーを用いてエステル基を導入した炭化水素樹脂をケン化することにより水酸基に変換する方法等があげられる。
【0013】
これら活性水素基導入方法の中では、その簡便性の点で、前記の重合性モノマーと、前記の水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の活性水素基を有する化合物とを反応させる方法が好ましい。重合性モノマーが芳香族系炭化水素である場合は、これと反応させる活性水素含有化合物としてフェノール等が好ましい。また、重合性モノマーがジシクロペンタジエン系炭化水素である場合は、これと反応させる活性水素含有化合物としてアリルアルコール等が好ましい。
【0014】
また、変性炭化水素樹脂(A)としては、前記のようにして当該樹脂中に導入された活性水素基を、より反応性の高い活性水素基に変更させるために、さらに変性して使用することもできる。たとえば、当該樹脂中に導入した活性水素基が水酸基やフェノール性水酸基である場合には、これら官能基にアルキレンオキサイドやエポキシ化合物を付加してなる付加物を使用することができ、また活性水素基がカルボキシル基の場合には、ヒドロキシアミン化合物とのアミド化物を使用することもできる。
【0015】
このようにして得られた変性炭化水素樹脂(A)には、少なくとも1つの活性水素基が含有されているため、イソシアネート基との反応が可能となる。活性水素基としてはアミノ基、カルボキシル基等がイソシアネートに対する反応性の点で好ましいが、臭気や着色がなく、しかも製造が容易である点で水酸基が特に好ましい。
【0016】
本発明に用いられる変性炭化水素樹脂水素化物(B)は、前記の変性炭化水素樹脂(A)を水素化して得られるものである。変性炭化水素樹脂水素化物(B)における活性水素基の含有量は、活性水素基が水酸基の場合には水酸基価を5〜500とすることが好ましく、20〜400がさらに好ましい。水酸基価を5以上とすることにより、接着剤組成物中のその他の配合成分であるイソシアネート化合物やポリオール化合物との相溶性が向上し、十分な接着性が得られる。また、水酸基価が500以下にすることにより、作業性が向上するとともに、得られるポリウレタン樹脂バインダーや接着剤組成物の色調を良好にすることができる。
【0017】
変性炭化水素樹脂水素化物(B)は、水素化率が5〜100%であって色調の優れた樹脂であり、通常、色調はガードナー色数(JIS K5400)が1以下である。
【0018】
変性炭化水素樹脂水素化物(B)を製造するための水素化条件としては、水素化圧力は1〜30MPa程度(下限としては3MPa、上限としては25MPaが好ましい。)であり、反応温度は50〜400℃程度(下限としては100℃、上限としては350℃が好ましい。)である。水素化圧力が1MPaに満たない場合または反応温度が50℃に満たない場合には、水素化反応が進行し難い。水素化圧力が30MPaを超える場合には、特殊な設備が必要となり、また反応温度が400℃を超える場合には、樹脂の分解反応が著しくなり、いずれの場合も好ましくない。また、水素化の反応時間は、通常、10分〜10時間程度、好ましくは20分〜7時間程度である。反応時間が10分に満たない場合には、水素化反応が進行し難く、また、反応時間が10時間を超える場合には生産性が悪くなるため、いずれの場合も好ましくない。なお、上記記載は前記範囲外での水素化条件を排除する意ではなく、たとえば水素化圧力1MPa未満であってもかかる水素化圧力で反応を起こしうる触媒を用いれば水素化は可能である。
【0019】
水素化触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ロジウム、ルテニウム、レニウム等の金属またはこれらの酸化物、硫化物等の金属化合物等、各種のものを使用できる。かかる水素化触媒は多孔質で表面積の大きなアルミナ、シリカ、シリカアルミナ(珪藻土)、カーボン、チタニア等の担体に担持して使用してもよい。触媒の使用量は、原料樹脂である変性炭化水素樹脂(A)に対して、通常0.01〜10重量%程度である。
【0020】
前記水素化反応は、変性炭化水素樹脂(A)を溶融して、または溶剤に溶解した状態で行なう。溶剤としては、当該反応に際して不活性であって、原料樹脂である変性炭化水素樹脂(A)や生成物である変性炭化水素樹脂水素化物(B)が溶解しやすい溶剤である限り特には制限されない。たとえば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、シクロヘキサノール、n−ヘキサノール等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用できる。溶剤の使用量は特に限定されないが、変性炭化水素樹脂(A)に対して、通常、5重量%以上であり、好ましくは10〜70重量%の範囲である。
【0021】
なお、触媒の使用量および反応時間については、反応形式として回分式を採用した場合を説明したが、その他の反応形式である流通式(固定床式、流動床式等)を採用することも可能である。
【0022】
かかる変性炭化水素樹脂水素化物(B)の数平均分子量は、通常200〜3000程度であるのが好ましい。数平均分子量が200以上とすることにより耐熱性、作業性を向上させることができ、また3000以下とすることにより相溶性、接着性を向上させることができる。
【0023】
変性炭化水素樹脂水素化物(B)は、ポリウレタン系接着剤組成物における粘着付与剤として単独で使用でき、また本発明の目的を逸脱しない程度で公知の粘着付与剤と併用することもできる。
【0024】
ついで、変性炭化水素樹脂水素化物(B)を構成成分とするポリウレタン系接着剤用バインダーにつき説明する。本発明のポリウレタン系接着剤用バインダーは、変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオールおよびジイソシアネート化合物を反応させて得られる生成物からなる。
【0025】
本発明のポリウレタン系接着剤用バインダーの構成成分である高分子ポリオールとしては、各種公知のものを使用できる。例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体または共重合体等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール等の飽和もしくは不飽和の各種公知の低分子グリコール類またはn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸などとを脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られたグリコール類等の一般にポリウレタン樹脂の製造に用いられる各種公知の高分子ポリオールがあげられる。
【0026】
なお、前記高分子ポリオールのうちグリコール類と二塩基酸とから得られる高分子ポリエステルポリオールの場合には、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールを使用することもできる。ただし、多価アルコールを大量に使用するとゲル化が生じるため、多価アルコールの使用量は該グリコール類の5モル%までとするのが好ましい。
【0027】
本発明のポリウレタン系接着剤用バインダーの構成成分であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族または脂環族等の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。具体的には1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等がその代表例としてあげられる。
【0028】
本発明のポリウレタン系接着剤用バインダーは、前記のように、変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオールおよびジイソシアネート化合物からなる。変性炭化水素樹脂水素化物(B)/高分子ポリオール(重量比)は、オレフィン、PET、NYなどに対する接着性を考慮して決定され、通常、1/99〜70/30程度とするのが好ましく、5/95〜50/50の範囲内とするのがより好ましい。変性炭化水素樹脂水素化物(B)の使用割合が1未満であるとオレフィンへの接着性が十分でなく、また70を超えるとPET、NYなどに対する接着性が十分でなくなる。また、ジイソシアネート化合物の使用量は、変性炭化水素樹脂水素化物(B)および高分子ポリオールの活性水素基量を考慮して決定される。通常、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基/〔変性炭化水素樹脂(B)の活性水素基と高分子ポリオールの活性水素基との合計〕(当量比)が0.8/1〜2.0/1の範囲とするのが好ましい。
【0029】
また本発明のポリウレタン系接着剤用バインダーには、前記の構成成分である変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオールおよびジイソシアネート化合物の他に、追加の構成成分として鎖伸長剤および/または鎖長停止剤を用いてもよい。鎖伸長剤を添加することにより、ポリウレタン樹脂を高分子量化することができるため、耐熱性が向上する。鎖伸長剤としては各種公知のものが使用できる。具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミンなどがあげられる。その他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類および前記したポリエステルジオールの項で説明した低分子グリコールやダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等もその代表例としてあげられる。
【0030】
前記の鎖長停止剤としては、各種公知のものが使用できる。具体的には、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。
【0031】
なお、鎖伸長剤および/または鎖長停止剤を使用する場合にも、イソシアネート基/活性水素基量〔変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオール、鎖伸長剤および/または鎖長停止剤における活性水素基の合計量〕(当量比)が0.8/1〜2.0/1の範囲とするのが好ましい。
【0032】
本発明のポリウレタン系接着剤組成物は、前記のように、変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオールならびにジイソシアネート化合物、必要に応じて鎖伸長剤および/または鎖長停止剤を反応させることにより得られるポリウレタン接着剤用バインダーを含有するものである。また、本発明のポリウレタン系接着剤組成物は、前記のように、高分子ポリオールならびに(3)ジイソシアネート化合物、必要に応じて鎖伸長剤および/または鎖長停止剤を反応させて得られる公知のポリウレタン樹脂に対して、変性炭化水素樹脂水素化物(B)を粘着付与剤として添加することにより得られるものである。なお、前記の変性炭化水素樹脂水素化物(B)は、公知のポリウレタン系接着剤用バインダーを製造する際の鎖伸長剤として使用することもできる。
【0033】
前記のポリウレタン系接着剤用バインダーの製造方法としては、反応の方法により一段法および二段法等があげられる。一段法とは、変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオールならびにジイソシアネート化合物、必要に応じて鎖伸長剤および/または鎖長停止剤を、一度に反応させる方法である。二段法とは、変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオールおよびジイソシアネート化合物を、イソシアネート基過剰の条件で反応させ、変性炭化水素樹脂水素化物(B)および高分子ポリオールの末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを調製し、次いで該プレポリマーと必要に応じて鎖伸長剤および/または鎖長停止剤とを反応させる方法である。これらの反応は種々の溶媒の存在下または不存在下に行うことができる。溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤等を単独または混合して使用できる。
【0034】
本発明のポリウレタン系接着剤組成物は、変性炭化水素樹脂水素化物(B)からなる粘着付与剤、または変性炭化水素樹脂水素化物(B)を構成成分としてなる前記ポリウレタン系接着剤用バインダーを必須構成成分とするものである。
【0035】
前記のように変性炭化水素樹脂水素化物(B)を粘着付与剤として使用するには、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンに変性炭化水素樹脂水素化物(B)を添加すればよい。かかる方法で得られるポリウレタン樹脂接着剤組成物においては、活性水素を含有する変性炭化水素樹脂水素化物(B)とイソシアネート基を有するポリウレタンとが経時的に反応して高分子量化する。
【0036】
変性炭化水素樹脂水素化物(B)を必須構成成分とするポリウレタン系接着剤用バインダーの数平均分子量は、通常1000〜100000程度とするのが好ましい。数平均分子量が1000より小さくなる場合には耐熱性が悪くなるため、また、100000より大きくなる場合には作業性が悪くなるために好ましくない。
【0037】
本発明のポリウレタン系接着剤組成物は、変性炭化水素樹脂水素化物(B)からなる粘着付与剤、または変性炭化水素樹脂水素化物(B)を構成成分としてなる前記ポリウレタン系接着剤用バインダーを必須構成成分とするものであるが、これらの他に硬化剤を配合することができる。たとえば、ポリウレタンの末端が水酸基の場合には、トリイソシアネート(トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートの1:3付加物)等の硬化剤を添加して硬化させるのが好ましい。一方、ポリウレタンの末端がイソシアネート基の場合には、硬化剤は特に必要とされないが、ポリアミン類、ポリオール等を添加して硬化させることもできる。なお、変性炭化水素樹脂水素化物(B)をポリウレタン製造用のポリオールまたは鎖伸長剤として使用することもできる。
【0038】
前記の変性炭化水素樹脂水素化物(B)を粘着付与剤として配合する場合には、生成ポリウレタン固形分中に2〜60重量%の範囲となるように使用するのが好ましい。ポリウレタン中の変性炭化水素樹脂水素化物(B)の含有量が少なくなると、プラスチック成形品に対する密着性や顔料分散性が不十分となるため、ポリウレタン中の変性炭化水素樹脂(B)の含有量は10重量%以上がより好ましい。また、ポリウレタン中の変性炭化水素樹脂水素化物(B)の含有量が多くなると、接着剤が脆くなり強固な接着強度が得られにくくなるため、ポリウレタン中の変性炭化水素樹脂水素化物(B)の含有量は40重量%以下がより好ましい。
【0039】
上記のようにして得られる本発明のポリウレタン系接着剤組成物を使用するにあたり、該組成物が固形物である場合には、熱溶融、溶剤希釈等の塗布方法を採用することができる。また必要に応じ、溶剤を配合して接着剤組成物とすることもできる。
【0040】
【発明の効果】
本発明のポリウレタン系接着剤組成物は、変性炭化水素樹脂水素化物(B)を粘着付与剤として含有することにより、または変性炭化水素樹脂水素化物(B)を構成成分とする前記ポリウレタン系接着剤用バインダーとして含有することにより、PE、PP、NY、PETなどの各種プラスチック成形品に対し優れた初期接着性と良好な色調を示す。また、本発明のポリウレタン系接着剤組成物は耐候(光)性も良好である。
【0041】
【実施例】
以下に製造例、実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、部および%は重量基準である。
【0042】
製造例1
1リットル容オートクレーブにアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂(商品名「クイントン1700」、日本ゼオン(株)製、軟化点102.0℃、数平均分子量360)500部、ニッケル/珪藻土触媒(ニッケル担持量50重量%)7部を仕込み、260℃に保温し、水素圧力20MPaで5時間、水素化を行なった。次いで、得られたアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物を取出し、トルエン500部に溶解し、ろ過により触媒を除去した後、200℃、2.7kPaで30分間減圧脱溶剤して、軟化点100℃のアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物450部を得た。得られたアルコール変性ジシクロペンタジエン系石油樹脂の水素化物(以下、「樹脂A」で示す。)の色調、水酸基価、不飽和結合の水素化率、数平均分子量を表1に示す。
【0043】
なお、軟化点は環球法(JIS K2207)による測定値である。色調は、ハーゼンスタンダードカラー(H)(ASTM D1209)による。水酸基価は電位差滴定法による(JIS K0070)。不飽和結合の水素化率は、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定することにより算出した。すなわち、原料樹脂および得られた水素化物の同濃度の重水素置換クロロホルム(CDCl)溶液を作製して、H−NMRを測定し、5〜6ppm付近に現れる不飽和二重結合のH−スペクトルおよび7ppm付近に現れる芳香環の共役二重結合のH−スペクトル面積より以下の式に基づき算出した。水素化率={1−(得られた水素化物のスペクトル面積/原料樹脂のスペクトル面積)}×100(%)。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、HLC8120、使用カラム:TSKgel SuperHM−L×3、展開溶剤:テトラヒドロフラン)で測定したものである。
【0044】
製造例2
1リットル容オートクレーブに、フェノール変性C9系石油樹脂(「ネオポリマーE−100」、軟化点90.0℃、数平均分子量540、日本石油化学(株)製)500部、ニッケル/珪藻土触媒(ニッケル担持量50重量%)2.5部を仕込み、280℃に保温し、水素圧力20MPaで5時間、水素化を行なった。次いで、得られたフェノール変性C9系石油樹脂の水素化物を取出し、トルエン500部に溶解し、ろ過により触媒を除去した後、200℃、2.7kPaで30分間減圧脱溶剤して、軟化点92℃のフェノール変性C9系石油樹脂の水素化物450部を得た。得られたフェノール変性C9系石油樹脂の水素化物(以下、「樹脂B」で示す。)の色調、水酸基価、不飽和結合の水素化率、数平均分子量を表1に示す。
【0045】
【表1】
Figure 0004734686
【0046】
実施例1
撹拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、「樹脂A」300部、分子量2000のポリブチレンアジペートジオール700部、イソホロンジイソシアネート200部を仕込み、窒素気流下に140℃で6時間反応させることにより、無色のポリウレタン系接着剤組成物を得た。
【0047】
実施例2
実施例1において、水酸基を含有する石油樹脂の種類を表1に示した「樹脂B」に変更した以外は、実施例1と同様にして、無色のポリウレタン系接着剤組成物を得た。
【0048】
実施例3
攪拌機、温度計及び窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、「樹脂A」200部、分子量2000のポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)グリコール800部とイソホロンジイソシアネート205部を仕込み、窒素気流下に140℃で6時間反応させプレポリマーとなし、これにメチルエチルケトン517部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン75.9部、ジ−n−ブチルアミン4.0部、メチルエチルケトン1483部及びイソプロピルアルコール1000部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液1761部を添加し、50℃で3時間反応させ、無色のポリウレタン系接着剤組成物を得た。
【0049】
実施例4
撹拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、分子量2000のポリブチレンアジペートジオール62.5部、イソホロンジイソシアネート12.5部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させた後、「樹脂A」25部と充分混合して、無色のポリウレタン系接着剤組成物を得た。
【0050】
比較例1
実施例1において分子量2000のポリブチレンアジペートジオール1000部、イソホロンジイソシアネート200部を用いた以外は、実施例1と同様にして、無色のポリウレタン系組成物を得た。
【0051】
比較例2
実施例1において「樹脂A」の代わりに、ロジンエステル(商品名:スーパーエステルS−115、不均化ロジンのペンタエリスリトールエステル、荒川化学工業(株)製)300部使用した他は、製造例1と同様にして、茶褐色のポリウレタン系接着剤組成物を得た。
【0052】
比較例3
実施例1において「樹脂A」の代わりに、C9系石油樹脂水素化物(商品名:アルコンP−100、荒川化学工業(株)製)300部使用した他は、製造例1と同様にして、無色のポリウレタン系接着剤組成物を得た。
【0053】
<ポリウレタン系接着剤組成物の接着性評価方法>
得られたウレタン系接着剤組成物を塗布量が20g/mとなるようにコロナ放電処理ポリプロピレン(厚さ0.3mm、幅25mm)同士を貼り合わせて、評価フィルムを調製した。評価フィルムを以下の試験に供した。評価結果を表1に示す。
【0054】
(接着性の評価)
評価フィルムを調製してから、室温で30分間放置後の剥離強度と室温で10日放置後(相対湿度60%)の剥離強度及び耐熱クリープを以下の条件で評価した。
剥離強度:引張り速度100mm/分によるT型剥離強度を測定した。
耐熱クリープ:環境温度70℃、1kg荷重の条件で、1mm剥れるまでの日数を測定した。
【0055】
(接着剤組成物着色性)
得られたポリウレタン系接着剤の色調を目視にて確認した。
【0056】
【表2】
Figure 0004734686

Claims (4)

  1. アルコール変性ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂(A)を完全水素化して得られる変性炭化水素樹脂水素化物(B)、高分子ポリオールおよびジイソシアネート化合物から得られる反応生成物からなる接着剤用バインダーを含有するポリウレタン系接着剤組成物。
  2. 鎖伸長剤および/または重合停止剤を追加の構成成分としてなる反応生成物を接着剤用バインダーを含有する請求項1に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
  3. 反応生成物における変性炭化水素樹脂水素化物(B)と高分子ポリオールとの使用重量比〔(B)/高分子ポリオール〕が、1/99〜70/30である接着剤用バインダーを含有する請求項1または2に記載のポリウレタン系接着剤組成物。
  4. 反応生成物におけるジイソシアネート化合物のイソシアネート基と、変性炭化水素樹脂(B)の活性水素基と高分子ポリオールの活性水素基との合計量の当量比(NCOの当量/活性水素基の合計当量)が0.8/1〜2.0/1の範囲である接着剤用バインダーを含有する請求項1〜のいずれかに記載のポリウレタン系接着剤用組成物。
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