JP4955851B2 - 絶縁樹脂組成物および絶縁電線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、埋立、焼却などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない絶縁樹脂組成物、並びに電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線の被覆材料には、難燃性、引張特性、耐熱性など種々の特性が要求される。このため、これら絶縁電線の被覆材料として、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドやエチレン系共重合体を主成分とするベース樹脂に、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合した、樹脂組成物を使用することがよく知られている。
近年、このような被覆材料を用いた絶縁電線を適切な処理をせずに廃棄した場合の種々の問題が提起されている。例えば、埋立により廃棄した場合には、被覆材料に配合されている可塑剤や重金属安定剤の溶出、また焼却した場合には、多量の腐食性ガスの発生、ダイオキシンの発生などという問題が起こる。
このため、有害な重金属やハロゲン系ガスなどの発生がないノンハロゲン難燃材料で電線を被覆する技術の検討が盛んに行われている。
従来のノンハロゲン難燃材料は、ハロゲンを含有しない難燃剤を樹脂に配合することで難燃性を発現させたものであり、このような被覆材料の難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水和物がある。また、樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体などが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで電子機器内に使用される電子ワイヤハーネスには、安全性の面から高い難燃性が要求されており、非常に厳しい難燃性規格 UL1581(Reference Standard for Electrical Wires,Cables, and Flexible Cords)などに規定される垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)のVW−1規格や水平難燃規格、JIS C3005に規定される60度傾斜難燃特性をクリアするものでなければならない。さらに、難燃性以外の特性についても、ULや電気用品取締規格などで、破断伸び100%以上、破断抗張力10MPa以上という高い機械特性が要求されている。
【0004】
ノンハロゲン難燃材料を用いた絶縁電線においてこのような高度の難燃性と機械特性を実現するために、以下のような技術が検討されてきた。
まず、赤燐と水酸化マグネシウムを併用した絶縁組成物が検討されてきたが、赤燐の発色のために電線を白をはじめとする任意の色に着色できないことや、廃棄する際に赤燐が地中に流出し湖沼を富養化するおそれがあることなどの問題がある。
また、水酸化マグネシウムを多量に加えた絶縁組成物が検討されているが、絶縁層の肉厚によっては燃えてしまうことがあり、また、難燃性が不十分であったり、機械的強度が著しく低下したりするという問題がある。
特開平2−75642号公報には、ポリオレフィン又はエチレン系共重合体に対して無機難燃剤とメラミンシアヌレート化合物を併用した例が開示されている。しかしこの組成物を用いた絶縁電線では前記のVW−1規格に不適合であり、また通常用いられる高級脂肪酸で表面処理した水酸化マグネシウムを200質量部程度まで加えてゆくと機械的強度が著しく低下する。
【0005】
機器内用電線には細径電線や薄肉電線が多く使用されており、これらの電線を垂直難燃性に適合させるためには、絶縁体に非常に高い難燃性が必要とされる。さらに電線を保護するシート、チューブは薄肉で垂直難燃性やUL94のV−0に適合する必要がある。
しかしこれまでの方法ではこのような薄肉、細径電線の難燃性と力学的強度を両立することができなかった。
本発明は、これらの問題を解決し、家電用絶縁電線に要求される高度の難燃性と優れた機械特性を有し、任意の色に着色でき、電気特性を保持し、かつ、廃棄時の埋立による重金属化合物やリン化合物の溶出や、焼却による多量の煙、腐食性ガスの発生などの問題のない絶縁樹脂組成物及びこの組成物を被覆材とする絶縁電線を提供することを目的とする。
【0006】
上記課題は以下の発明により達成された。
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体90〜30質量%、エチレンとアクリル酸アルキルとカルボキシル基を側鎖に有する不飽和炭化水素との3元共重合体を含むアクリルゴム7〜30質量%、並びに、スチレン系エラストマー3〜45質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化アルミニウム150〜280質量部並びにメラミンシアヌレート化合物0〜70質量部を含有し、かつ、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化アルミニウムのうち50質量%以上がシランカップリング剤で表面処理されており、さらに下記式(I)で規定されるA(%)が33〜66%である(ただし、A(%)が33.4%と51.2%であることを除く)ことを特徴とする絶縁樹脂組成物。
【0007】
式(I)
【数2】
【0008】
(式中、nはエチレン−酢酸ビニル共重合体の種類数を表わし、Viは樹脂成分全体に対するi番目の種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量(質量%)、Riはi番目の種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体中の共重合成分の酢酸ビニル含有量(質量%)、Uは樹脂成分中のアクリルゴム含有量の総和(質量%)を表わす。)
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体のうち、酢酸ビニル共重合成分の含有量がエチレンに対し70質量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体が樹脂成分の20質量%以下であることを特徴とする(1)項に記載の絶縁樹脂組成物。
(3)(1)又は(2)項に記載の絶縁樹脂組成物の架橋体で導体を被覆したことを特徴とする絶縁電線。
【0009】
なお、上記(1)、(2)項の好ましい態様として、以下の(4)、(5)項があげられる。
(4)樹脂成分100質量部に対し、ジエステル(メタ)アクリレートを1〜16質量部含有していることを特徴とする(1)又は(2)項に記載の絶縁樹脂組成物。
(5)下記式(A)で表わされるジエステル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする(1)、(2)又は(4)項に記載の絶縁組成物。
【0010】
式(A)
【化1】
(式中、nは1〜14の整数を表わし、Rは水素原子又はメチル基を表わす。)
【0011】
本発明においては、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびアクリルゴムをベース樹脂とし、反応性シランカップリング剤で表面処理された金属水和物を使用することにより、機械特性、難燃性(垂直難燃性など)および皮むき性が優れた難燃性絶縁樹脂組成物が得られる。特にエチレン−酢酸ビニル共重合体とアクリルゴムの割合を特定の範囲に制御することにより、薄肉細径電線や薄肉チューブ等の垂直難燃性を保つことができる。本発明の絶縁樹脂組成物においては、アクリルゴムを配合することにより、皮むきの際にひげ状に被覆層を伸ばすことがなく皮むき性が良好になるとともに、さらに難燃性を向上させることが可能になる。さらにエチレン−酢酸ビニル共重合体とアクリルゴムを併用することにより、難燃性を保つだけでなく、絶縁特性と機械的強度を高いレベルに維持することができる。さらに必要に応じ、スチレン系エラストマー、側鎖にスチレン系のポリマーを有するポリオレフィンおよびエチレン−プロピレンゴムからなる群から選ばれた少なくとも1種を配合することにより、電線の皮むき性を低下させることなく絶縁抵抗を向上させることが可能になり、浸水させた場合や高温高湿下に保持した場合でも絶縁抵抗を大きく低下させることなく高いレベルに維持することが可能になる。スチレン系エラストマー、側鎖にスチレン系のポリマーを有するポリオレフィンおよびエチレン−プロピレンゴムから選ばれる成分が含まれる、含まれないにかかわらず、エチレン−酢酸ビニル共重合体とアクリルゴムの割合を下記式(I)で規定されるA(%)が33〜66%(ただし、A(%)が33.4%と51.2%であることを除く)となるようにすることにより、細径薄肉電線の難燃性を保つことができ、しかも低温性(低温でも良好に巻き付け等が行える特性)も確保することができる。
【0012】
式(I)
【数3】
【0013】
(式中、nはエチレン−酢酸ビニル共重合体の種類数を表わし、Viは樹脂成分全体に対するi番目の種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量(質量%)、Riはi番目の種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体中の共重合成分の酢酸ビニル含有量(質量%)、Uは樹脂成分中のアクリルゴム含有量の総和(質量%)を表わす。)
さらに酢酸ビニル共重合成分含有量が70質量%以上の酢酸ビニル共重合体を、樹脂成分の20質量%以下とすることにより、より優れた低温性を確保することが可能となる。
さらに架橋助剤としてジエステルアクリレート及び/又はジエステルメタクリレート(本発明においてはジエステル(メタ)アクリレートという)を使用して架橋させることにより、伸びを低下させず要求される絶縁電気特性を維持した絶縁組成物及び絶縁電線を得ることができる。
【0014】
アクリルゴムとして、特にエチレンとアクリル酸アルキルとカルボキシル基を側鎖に有する不飽和炭化水素との3元系共重合体アクリルゴムを使用することにより、燃焼時に表面に炭化層を形成し、難燃性がさらに高くなる。さらにエチレンとアクリル酸アルキルとの2元系アクリルゴムと併用することにより、燃焼時に内部に発泡層が生じ、表面に3元系アクリルゴムによると思われる炭化層が形成されるため、難燃性はさらに向上する。
さらにエチレンとアクリル酸アルキルとカルボキシル基を側鎖に有する不飽和炭化水素との3元系共重合体アクリルゴムを使用することにより強度が強固となり、機械的強度が向上するとともに、水に浸漬した際や高温多湿下に放置された際の絶縁抵抗の低下を抑えることが可能となる。
【0015】
また不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂は、スチレン系エラストマーや側鎖にスチレン系のポリマーを有するポリオレフィンと共に加えることにより、湿熱を加えたり、浸水させた後においてもさらに絶縁抵抗を高く保つことが可能となる。
さらに難燃性を向上させる手法として、メラミンシアヌレートを併用すればよい。これは燃焼したときに金属水和物が水を発生しつつ表面に殻を形成したうえで、メラミンシアヌレート化合物が内部からガスを発生することにより完全に消火できるため、非常に高い難燃性を有すると考えられる。
【0016】
また、この金属水和物が反応性シランカップリング剤で表面処理を行ったものであることにより、組成物を架橋したときにVW−1規格適合レベルの非常に高い難燃性を発現し、さらに、金属水和物の配合量を増やしても、要求される高い力学的強度を維持できる。またエチレン系共重合体やアクリルゴムは難燃性を補助する働きをしており、これらを所定の割合で用いることにより高い難燃性を維持することが可能となる。
【0017】
以下、本発明の絶縁樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体
本発明の絶縁樹脂組成物は、樹脂の1成分にエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。難燃性および機械特性向上の点からは、本発明で好ましいものはエチレン−酢酸ビニル共重合体である。また、難燃性を向上させるうえでエチレンに対し共重合させた共重合成分の含有量(例えばEVAでは酢酸ビニル(VA)含有量)が、23〜80質量%が好ましく、さらに好ましくは25〜80質量%である。なお、低温性向上の観点からは、共重合成分がエチレンに対し70質量%以上のエチレン系共重合体は、樹脂成分の20質量%以下とするのが好ましい。またエチレン系共重合体の中では材料の選択性、強度、伸びの面から、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFR(メルトフローレイト)は、強度の面、樹脂組成物の混練り加工性の面から0.2〜20、さらに好ましくは0.5〜10程度が好ましい。なお、本発明におけるMFRの値は、JIS
K7210に従い、一般に用いられている各材料に適した条件で行ったものである。本発明においてエチレン−酢酸ビニル共重合体はアクリルゴムと混合して用いることができるが、このときエチレン−酢酸ビニル共重合体の量は樹脂成分中90〜30質量%、好ましくは85〜35質量%、さらに好ましくは75〜40質量%で使用される。
【0018】
(B)アクリルゴム
本発明においては、樹脂成分100質量部中5〜60質量%の範囲内でアクリルゴムを使用することができる。
アクリルゴムは単量体成分としてはアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルと各種官能基を有する単量体を少量共重合させて得られるゴム弾性体であり、共重合させる単量体としては、2−クロルエチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、アクリル酸、アクリロニトリル、ブタジエン等を適宜使用することができる。具体的には、Nipol AR(商品名、日本ゼオン社製)、JSR AR(商品名、JSR社製)等を使用することができる。
特に単量体成分としてはアクリル酸メチルを使用するのが好ましく、その場合には、エチレンとの2元共重合体や、これにさらにカルボキシル基を側鎖に有する不飽和炭化水素をモノマーとして共重合させた3元共重合体を特に好適に使用することができる。具体的には例えば、2元共重合体の場合にはベイマックDやベイマックDLSを、3元共重合体の場合にはベイマックG、ベイマックHG、ベイマックLS、ベイマックGLS(いずれも商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)を使用することができる。
【0019】
これらのアクリルゴムを配合することにより、皮むきの際にひげ状に被覆材を伸ばすことなく皮むき性が良好になる。またアクリルゴムの配合により著しく難燃性が向上する。エチレン系共重合体にアクリルゴムを併用することにより、難燃性を保ちつつ、要求される絶縁特性を有するものとすることが可能になる。
本発明においてアクリルゴムは、樹脂成分中5〜60質量%の割合で使用することができ、好ましくは8〜40質量%である。アクリルゴムの量が5質量%より少ないと、難燃性、電線の皮むき性に問題が生じ、また60質量%を越えると電線の押し出し加工性が著しく低下するだけではなく、未架橋時の電線同士の粘着が著しく大きくなり生産性が大幅に低下するためである。
【0020】
またアクリルゴムとして、エチレンとアクリル酸アルキルとカルボキシル基を側鎖に有する不飽和炭化水素との3元系共重合体アクリルゴムを使用することは、難燃性がさらに向上するため好ましく、本発明において必須として使用する。配合量としては樹脂成分に対し3元系アクリルゴムを3質量%以上が好ましく、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。またこの3元系アクリルゴムは押し出し負荷を上げる傾向があり、樹脂成分に対し好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下に抑えた方がよい。ただし、本発明においては、この3元系共重合体を7〜30質量%使用する。
さらにエチレンとアクリル酸アルキルとの2元系アクリルゴムと併用することにより、燃焼時に内部に発泡層が生じ、表面に3元系アクリルゴムによると思われる炭化層が形成されるため、難燃性はさらに向上する。さらにエチレンとアクリル酸アルキルとカルボキシル基を側鎖に有する不飽和炭化水素との3元系共重合体アクリルゴムを使用することにより強度が高くなり、力学的強度が向上するとともに、さらに架橋構造が密になることから、水に浸漬した際や高温多湿下に放置された際の絶縁抵抗の低下を抑えることが可能となる。これらは、後述する(G)成分のジエステル(メタ)アクリレートを使用したときに、さらに架橋時の構造が密になり、絶縁電気特性を向上させると共に、水に浸漬した際や高温多湿下に放置された際の絶縁抵抗の低下を抑えることを可能とする。
【0021】
なお、(A)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体と(B)成分のアクリルゴムの量は、下記式(I)で規定されるA(%)が33〜66%となるようにしなければならない。A(%)が33%より小さいと難燃性が著しく低下し、細径薄肉電線の垂直難燃性や薄肉チューブの垂直難燃性が不適合となり、またA(%)が66%を越えると、絶縁電線やチューブの低温性が著しく低下するためである。
【0022】
式(I)
【数4】
【0023】
(式中、nはエチレン−酢酸ビニル共重合体の種類数を表わし、Viは樹脂成分全体に対するi番目の種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量(質量%)、Riはi番目の種類のエチレン−酢酸ビニル共重合体中の共重合成分の酢酸ビニル含有量(質量%)、Uは樹脂成分中のアクリルゴム含有量の総和(質量%)を表わす。)
【0024】
(C)スチレン系エラストマー
本発明においては、スチレン系エラストマーを使用することができる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレンの重合体ブロックSと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体又はこれを水素添加して得られるもの、あるいはこれらの混合物であり、例えば、S−B−S、B−S−B−S、S−B−S−B−Sなどの構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体あるいは、これらの水素添加されたもの等を挙げることができる。
これらの共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
上記(水添)ブロック共重合体の具体例としては、SBS(スチレン・ブタジエンブロックコポリマー)、SIS(スチレン・イソプレンブロックコポリマー)、SEBS(水素化SBS)、SEPS(水素化SIS)等を挙げることができる。
【0025】
(D)側鎖にスチレン系のポリマーを有するポリオレフィン
側鎖にスチレン系のポリマーを有するポリオレフィンは、ポリオレフィン樹脂やエチレン系共重合体、エチレン系共重合体と不飽和カルボン酸の共重合体に、ポリスチレン等のスチレン系ポリマーがグラフトされた樹脂である。ポリオレフィン樹脂としては直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレンやシングルサイト触媒を用いて合成されたポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、エチレン系共重合体としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
スチレン系ポリマーのグラフト量は5〜50質量%程度である。商品名としてはモディパーAシリーズ(日本油脂(株))等が挙げられる。
【0026】
(E)エチレン−プロピレンゴム
エチレン−プロピレンゴムとしては、エチレンとプロピレンだけからなるEPM(エチレン−プロピレン共重合ゴム)、さらに非共役ジエンを少量共重合させた3元系共重合体EPDM(エチレン−プロピレンターポリマー)が使用できる。EPDMに使用される非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン等を使用したものを使用することができる。
本発明において(C)スチレン系エラストマー、(D)側鎖にスチレン系のポリマーを有するポリオレフィンおよび(E)エチレン−プロピレンゴムからなる群から選ばれた少なくとも1成分は、樹脂成分中0〜45質量%の割合で使用することができる。
この成分を用いてより絶縁抵抗を向上させる為には、樹脂成分中少なくとも3質量%使用することが好ましく、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。
またこの量が45質量%を越えると難燃性が低下するだけでなく、被覆材の抗張力が低下する。
【0027】
以上(C)〜(E)のスチレン系エラストマー、スチレン系樹脂を側鎖に有するポリオレフィンおよびエチレン−プロピレンゴムから選ばれる成分は、絶縁抵抗を著しく向上させる働きがあり、電線の皮むき性を低下させることなく絶縁抵抗を向上させることが可能で、浸水させた場合や高温高湿下に保持した場合でも絶縁抵抗を大きく低下させることなく高いレベルに維持することが可能になる。これらの中でもスチレン系エラストマーは浸水、高温・高湿下における絶縁抵抗の保持の点や機械的強度の保持の面でより好ましい。
【0028】
(F)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン
不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンとは、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンやエチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート(EA)共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のエチレン系共重合体、不飽和カルボン酸やその誘導体で変性された樹脂のことであり、変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸などがある。ポリオレフィンの変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸等を有機パーオキサイドの存在下に溶融、混練することにより行うことができる。マレイン酸の変性量は通常0.5〜7質量%程度である。
不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンは樹脂とフィラーの接着、エチレン系共重合体とスチレン系エラストマー、スチレン系樹脂を側鎖に有するポリオレフィン、エチレンプロピレンゴムの相溶化剤としての効果があり、電気特性の向上や浸水させたときの絶縁抵抗の低下を抑える効果やコンパウンドの強度を高める効果がある。
【0029】
配合量はポリマー成分100質量%中のうち2〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%で使用することができる。この成分が2質量%より少ないと実質的に効果がなく、また20質量%を越えると端末加工性が低下する。
【0030】
(G)ジエステル(メタ)アクリレート
ジエステルアクリレート及び/又はジエステルメタクリレートを架橋助剤として使用することにより、特に大きく伸びを低下させずに架橋度を向上させることができる。これは緩やかに架橋反応を形成することが可能であるからである。
高い酸含有量を有するエチレン系共重合体やアクリルゴムをベース材料として使用すると、絶縁抵抗が低くなる。3元系のアクリルゴムの使用やスチレン系エラストマーの導入などで絶縁抵抗の改善や浸水後における絶縁抵抗の低下を抑えることは可能であるが、これらのポリマーを大量に導入すると押し出し負荷が著しく高くなったり、難燃性が低下したりする問題が生じる。これらの架橋助剤を導入することにより押し出し時の負荷を抑え、架橋を行うことにより難燃性を保持しつつ絶縁抵抗を向上させ、また浸水後の絶縁抵抗の低下を抑えることができる。
さらにこれらの架橋助剤を加えることにより、耐油特性を著しく向上させることができる。
また架橋助剤としてトリエステルメタクリレート、トリエステルメタクリレートを加えると、絶縁抵抗を改善することができる。しかしこれらの架橋助剤は架橋反応が急激に生ずるため伸びの低下が大きい。しかし非架橋時に伸びに余裕のある場合においては架橋構造が密になるこれらの架橋助剤の方が絶縁抵抗の改善が大きいため、これらを使用しても良い。
加えても大きな伸びを低下させず、しかも絶縁抵抗を改善できるジエステル(メタ)アクリレートとしては下記式(A)で表わされる化合物が好ましい。
【0031】
式(A)
【化2】
【0032】
(式中、nは1〜14の整数を表わし、Rは水素原子又はメチル基を表わす。)
式(A)におけるnが14より大きいと、架橋構造が弱くなり絶縁電気特性の向上にほとんど効果がなくなり、強度の向上においてもほとんど効果がなくなる。さらに好ましくはnは2〜10である。
ジエステル(メタ)アクリレートの使用量は、樹脂成分100質量部に対し1〜16質量部が好ましく、3〜12質量部がさらに好ましい。
【0033】
(H)金属水和物
本発明において用いることのできる金属水和物の種類は特に制限はないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、オルト珪酸アルミニウム、ハイドロタルサイドなどの水酸基あるいは結晶水を有する金属化合物があげられ、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。
上記金属水和物の表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、例えば、末端にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基を有するものが挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独でも2種以上併用してもよい。その中でも末端にアミノ基、ビニル基、エポキシ基等を有する反応性のシランカップリング剤を用いることが好ましく、さらにその中でもビニル基またはエポキシ基を有するものをその一成分として用いることが好ましく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの末端に反応性基を有するシランカップリング剤は1種単独でも、2種以上併用して使用してもよい。これらのシランカップリング剤は全シランカップリング剤中の少なくとも20質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0034】
本発明で用いることができるシランカップリング剤表面処理水酸化アルミニウムとしては、表面未処理の水酸化アルミニウム(ハイジライトH42M(商品名、昭和電工社製)など)を上記の末端に反応性基を有するシランカップリング剤により表面処理したものなどがあげられる。
また、本発明で用いることができるシランカップリング剤表面処理水酸化マグネシウムとしては、末端に反応性基を有するシランカップリング剤によりすでに表面処理された水酸化マグネシウムの市販品(キスマ5LH、キスマ5PH(いずれも商品名、協和化学社製)など)のほか、表面無処理のもの(市販品としては、キスマ5(商品名、協和化学社製)など)、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸で表面処理されたもの(キスマ5A(商品名、協和化学社製)など)、リン酸エステル処理されたものなどを上記の末端に反応性を有するシランカップリング剤により表面処理したものがある。
また、上記以外にも、予め脂肪酸やリン酸エステルなどで部分的に表面処理した水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムに追加的に末端に反応性の有するシランカップリング剤を用い表面処理を行った金属水和物なども用いることができる。
【0035】
金属水和物をシランカップリング剤で処理する場合には、未処理又は部分表面処理金属水和物に予め又は混練りの際シランカップリング剤をブレンドして行うことができる。このときのシランカップリング剤は、処理に十分な量が適宜加えられるが、具体的には金属水和物に対し0.1〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.15〜2.5質量%、さらに好ましくは0.2〜1.5質量%である。
本発明においては、ビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤で表面処理された金属水和物は、絶縁体としたときの高い力学的強度を維持するだけでなく、燃焼時に殻形成を促進する。この金属水和物とメラミンシアヌレート化合物を併用すると、難燃性が飛躍的に向上する。
本発明においてこの金属水和物の配合量は、エチレン系共重合体及びアクリルゴムの合計100質量部に対して、150質量部〜280質量部、好ましくは170〜260質量部である。この金属水和物の配合量が少なすぎると要求される難燃性が確保できず、また多すぎると力学的強度が著しく低下する。
【0036】
また金属水和物の50質量%以上をシランカップリング剤で表面処理された金属水和物とし、全金属水和物の好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上が末端に反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された金属水和物となるようにする。
本発明においては必要に応じ、上記の金属水和物の分散性を向上するため、亜鉛、マグネシウム、カルシウムから選ばれる少なくとも1種の脂肪酸金属塩を配合することができる。脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などがあり、ステアリン酸が好ましい。
【0037】
なお、本発明の絶縁樹脂組成物のベース樹脂は(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体および(B)アクリルゴムを必須成分とし、必要に応じて、(C)スチレン系エラストマーを含有するが、本発明の目的を損なわない範囲で他の樹脂成分を加えてもよい。
【0038】
本発明において難燃性をより向上させるため、メラミンシアヌレート化合物を添加しても良い。メラミンシアヌレート化合物は、粒径が細かい物が好ましい。本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物の平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。また、分散性の面から表面処理されたメラミンシアヌレート化合物が好ましく用いられる。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、例えばMCA−0、MCA−1(いずれも商品名、三菱化学社製)や、Chemie Linz Gmbhより上市されているものがある。また脂肪酸で表面処理したメラミンシアヌレート化合物、シラン表面処理したメラミンシアヌレート化合物としては、MC610、MC640(いずれも商品名、日産化学社製)などがある。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物として、例えば以下のような構造のメラミンシアヌレートがある。
【0039】
【化3】
【0040】
本発明においてメラミンシアヌレート化合物の配合量は、樹脂成分100質量部に対して0〜70質量部、好ましくは0〜60質量部である。メラミンシアヌレート化合物が多すぎると力学的強度、特に伸びが低下し、電線としたときの外観が著しく悪くなる。メラミンシアヌレート化合物はアクリルゴムとの相乗効果により難燃性を大幅に向上させる効果があるため、高難燃性が必要な場合には加えるのが望ましい。
本発明の絶縁樹脂組成物には、必要に応じスズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛及びホウ酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種を配合することができ、さらに難燃性を向上することができる。これらの化合物を用いることにより、燃焼時の殻形成の速度が増大し、殻形成がより強固になる。従って、燃焼時に内部よりガスを発生するメラミンシアヌレート化合物とともに、難燃性を飛躍的に向上させることができる。
本発明で用いるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛は平均粒子径が5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B2 O3 ・3.5H2 O)、FRC−600(いずれも商品名、水澤化学社製)などがある。またスズ酸亜鉛(ZnSnO3 )、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH)6 )として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学社製)などがある。
【0041】
本発明の絶縁樹脂組成物には、電線・ケ−ブルにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
酸化防止剤としては、4, 4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N, N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2, 2, 4−トリメチル−1, 2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1, 3, 5−トリメチル−2, 4, 6−トリス(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤、などがあげられる。
【0042】
金属不活性剤としては、N, N’−ビス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1, 2, 4−トリアゾール、2, 2' −オキサミドビス−(エチル3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
【0043】
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などがあげられ、なかでも、ワックスE、ワックスOP(いずれも商品名、Hoechst社製)などの内部滑性と外部滑性を同時に示すエステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。その中でもステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムは、絶縁抵抗の向上の効果があり、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウムは、目やにを防ぐ効果がある。さらに滑剤として脂肪酸アミドを併用することにより、簡単に導体との密着性を制御することが可能となる。
【0044】
本発明の絶縁樹脂組成物は、上記の各成分を、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど、通常用いられる混練装置で溶融混練して得ることができる。
【0045】
次に本発明の絶縁電線について説明する。
本発明の絶縁電線は、導体が、上記の本発明の絶縁樹脂組成物の架橋体により被覆されたものであり、本発明の絶縁樹脂組成物を通常の電線製造用押出成形機を用いて導体周囲に押出被覆し、その後、その被覆層を架橋することにより製造することができる。被覆層を架橋体とすることにより、耐熱性の向上のみならず、難燃性も向上する。
架橋の方法は特に制限はなく、電子線架橋法や化学架橋法で行うことができる。
電子線架橋法で行う場合、電子線の線量は1〜30Mradが適当である。
化学架橋法の場合は樹脂組成物に、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ケトンペルオキシエステル、ケトンペルオキシドなどの有機過酸化物を架橋剤として配合し、押出成形被覆後に加熱処理により架橋を行う。
本発明の絶縁電線の導体径や導体の材質などは特に制限はなく、用途に応じて適宜定められる。導体の周りに形成される絶縁樹脂組成物の被覆層の肉厚も特に制限はないが、0.15〜1mmが好ましい。また、絶縁層が多層構造であってもよく、本発明の絶縁樹脂組成物で形成した被覆層のほかに中間層などを有するものでもよい。
【0046】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
実施例1〜9及び比較例1〜5
まず、表に示す各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、各絶縁樹脂組成物を製造した。
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径0.48mmφの錫メッキ軟銅撚線 構成:7本/0. 16mmφ)上に、予め溶融混練した絶縁樹脂組成物を押し出し法により被覆して、各々絶縁電線を製造した。外径は1.32mm(被覆層の肉厚0.42mm)とし、被覆後、10Mradで電子線照射して架橋を行った。
また一部の組成については、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径0.48mmφの錫メッキ軟銅撚線 構成:7本/0. 16mmφ)上に、予め溶融混練した絶縁樹脂組成物を押し出し法により被覆して、各々絶縁電線を製造した。外径は0.98mm(被覆層の肉厚0.25mm)とし、被覆後、10Mradで電子線照射して架橋を行った。
また一部の組成についてはチューブ作成用押し出し装置を用いて、外径3.5mm、肉厚0.4mmのチューブを作成した。
なお、表に示す各成分は下記のものを使用した。
【0047】
(01)エチレン−酢酸ビニル共重合体
EV170(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
VA含有量 33質量%
(02)エチレン−酢酸ビニル共重合体
EV−40LX(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
VA含有量 28質量%
(03)エチレン−酢酸ビニル共重合体
レバプレン600HV(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
VA含有量 60質量%
(04)エチレン−酢酸ビニル共重合体
レバプレン700HV(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
VA含有量 70質量%
(05)エチレン−酢酸ビニル共重合体
レバプレン800HV(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
VA含有量 80質量%
【0048】
(06)三元共重合体アクリルゴム
ベイマックGLS(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
(07)二元共重合体アクリルゴム
ベイマックDLS(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
(08)スチレン系エラストマー
SEPS(水素化スチレン・ブタジエンブロックコポリマー)
セプトン2007(商品名、クラレ社製)
(09)エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム
EP57P(商品名、JSR社製)
(10)マレイン酸変性LLDPE
L−6100M(商品名、JPO社製)
(11)末端にビニル基を有するシランカップリング剤表面処理水酸化マグネシウム
キスマ5PH(商品名、協和化学社製)
(12)脂肪酸処理水酸化マグネシウム
キスマ5B(商品名、協和化学社製)
(13)ヒンダートフェノール系老化防止剤
イルガノックス1010(商品名、チバガイギー社製)
(14)TMPTM(トリメチロールプロパントリメタクリレート)
オグモントT−200(商品名、新中村化学社製)
(15)ジエステルメタクリレート
NKエステル 3G(商品名、新中村化学社製)
(16)ジエステルアクリレート
NKエステル APG−200(商品名、新中村化学社製)
(17)ステアリン酸亜鉛
粉末ステアリン酸亜鉛(日本油脂)
【0049】
得られた各絶縁電線について、以下の試験を行った。結果を表1〜3に示した。
1)伸び、抗張力
各絶縁電線の伸び(%)と被覆層の抗張力(MPa)を、標線間25mm、引張速度500mm/分の条件で測定した。伸びおよび抗張力の要求特性はそれぞれ、各々100%以上、10MPa以上である。
2)難燃性
各絶縁電線、チューブについて、UL1581の Vertical Flame Test を行い、合格数を示した(合格数/N数)。
3)絶縁抵抗
各絶縁電線について、JIS C 3005に規定される絶縁抵抗を測定した。50MΩ・km以上は合格である。
4)低温性
−10℃の恒温層に4時間放置した後に、恒温層内で自己径に巻き付けを行った。被覆部に全く割れがなかったものを合格とした。
5)端末加工性
平刃の端末加工機に電線をセットし、皮むきを行った後、被覆部の向け状態を確認した。
○:ひげがほとんど残っていない
△:ひげは残っているものの、圧着加工で問題にならないレベル
×:ひげが残っており、圧着端子加工で問題になるレベル
6)電線の量産性
電線の量産性を電線の押し出し可能線速、外観、線同士の粘着性で評価した。
○:押し出し速度100m/分以上で十分量産性が良く、しかも外観が良く、未架橋時に絶縁体同士がくっつかない。
△:押し出し速度100m/分以上で生産できるが、押し出し負荷が高かったり、線径の安定性が悪かったり、未架橋時に絶縁体同士がややくっつきやすい傾向がある。
×:押し出し速度、外観、未架橋時に絶縁体同士の粘着性のいずれかに問題あり。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
式(I)で求めたA(%)が小さすぎる比較例1は、電線、チューブとも難燃性が劣り、逆に大きすぎる比較例3では低温性の試験で不合格であった。アクリルゴム成分を使用していない比較例2では端末加工性が不良となり、難燃性、絶縁抵抗も低い。エチレン系共重合体成分の含有量が少なすぎる比較例4では、電線に押出し加工することができなかった。また、金属水和物のうちのシランカップリング剤で表面処理されたものの割合が低すぎる比較例5では、抗張力及び絶縁抵抗が低かった。
これに対し実施例1〜9の樹脂組成物を用いた薄肉、細径の電線、チューブはいずれもVW−1規格ですべて合格する難燃性を有し、伸び、抗張力等についても家電用絶縁電線等に要求される特性を満足し、かつ、低温での巻き付けも良好に行うことができ、端末加工性と電線の量産性にも優れている。
【0054】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、絶縁電線の被覆層や電線を保護するシート、チューブなどとして用いることができ、高度の難燃性と力学的強度を有する。また、本発明の樹脂組成物はノンハロゲン難燃材料であってかつリンを含まない材料で構成されており、難燃性等に優れるだけでなく、埋立や燃焼などの廃棄時において、有害な重金属化合物の溶出や、多量の煙、有害ガス(腐食性ガス)の発生がない。さらに本発明の樹脂組成物は低温での巻き付けでも作業性に優れ、特に、共重合成分の含有量が70質量%以上のエチレン系共重合体の量を所定の割合より低くすることにより、低温での作業性をより向上させた樹脂組成物とすることができる。
したがって上記樹脂組成物を被覆材とした本発明の絶縁電線は、家電用絶縁電線等に要求される高い難燃性を有し、薄肉、細径化しても電気特性を保持しつつ優れた機械特性を有する。また、低温の巻き付け作業環境でも効率よく製造することができ、電線を任意の色に着色することも可能である。
Claims (3)
- エチレン−酢酸ビニル共重合体90〜30質量%、エチレンとアクリル酸アルキルとカルボキシル基を側鎖に有する不飽和炭化水素との3元共重合体を含むアクリルゴム7〜30質量%、並びに、スチレン系エラストマー3〜45質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化アルミニウム150〜280質量部並びにメラミンシアヌレート化合物0〜70質量部を含有し、かつ、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化アルミニウムのうち50質量%以上がシランカップリング剤で表面処理されており、さらに下記式(I)で規定されるA(%)が33〜66%である(ただし、A(%)が33.4%と51.2%であることを除く)ことを特徴とする絶縁樹脂組成物。
式(I)
- エチレン−酢酸ビニル共重合体のうち、酢酸ビニル共重合成分の含有量がエチレンに対し70質量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体が樹脂成分の20質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の絶縁樹脂組成物の架橋体で導体を被覆したことを特徴とする絶縁電線。
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