JP3566857B2 - 電線被覆用樹脂組成物および絶縁電線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線を被覆するための樹脂組成物、並びにその組成物で被覆した絶縁電線に関するものであり、埋立、燃焼などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない電線被覆用樹脂組成物、およびそれで被覆した絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線の被覆材料には、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したエチレン系共重合体を主成分とする樹脂組成物を使用することがよく知られている。
しかし、これらを適切な処理をせずに廃棄した場合、被覆材料に配合されている可塑剤や重金属安定剤が溶出したり、またこれらを燃焼させると被覆材料に含まれるハロゲン化合物から腐食性ガスやダイオキシン類が発生することがあり、近年、この問題が議論されている。
このため、有害な重金属の溶出やハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン難燃材料で電線を被覆する技術が検討されはじめている。
ノンハロゲン難燃材料は、ハロゲンを含有しない難燃剤を樹脂に配合することで難燃性を発現させており、この難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水和物が、また、前記樹脂としては、ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体などが用いられている。
【0003】
一方、電子機器内に使用される電子ワイヤハーネスやその他の電気・電子機器用絶縁電線には、安全性の面から非常に厳しい難燃性規格、例えばUL1581(電線、ケーブルおよびフレキシブルコードのための関連規格(Reference Standard for Electrical Wires, Cableds, and Flexible Cords))などに規定されている垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)、VW−1規格に合格する難燃性が求められている。
さらにこのような絶縁電線には、ULや電気用品取締規格などから伸び100%、力学的強度10MPa以上という高い機械的特性が要求されている。
これまでノンハロゲン難燃材料にVW−1のような高度の難燃性を付与することが検討されてきたが、ポリエチレン樹脂などの樹脂の場合には金属水和物を高充填(例えば、樹脂100重量部に対して、金属水和物を200重量部以上配合)してもVW−1に適合しなかったり、またたとえ難燃性が達成されても難燃材料の機械特性が著しく低下するという問題があった。
この問題を解決するために、金属水和物の配合量を少量(例えば、樹脂100重量部に対して、金属水和物120重量部以下)にして、赤リンを配合する方法がとられており、高度の難燃性と機械特性を両立させたノンハロゲン難燃材料が検討されている。
【0004】
ところで、電気・電子機器に使用される絶縁電線の被覆材料には、絶縁電線の種類や接続部を区別するなどの目的で、絶縁電線の表面に印刷をおこなったものや、数種類の色(例えば、白、黒、鼠、茶、赤、橙、黄、緑、青など)に着色されたものが使用されている。印刷内容がわかりやすい白色や、区別しやすい任意の色に着色された絶縁電線は、目的の色に着色された樹脂組成物を導体上に押出被覆することで製造されている。
ところが、高度の難燃性と機械特性を両立させるために金属水和物と赤リンを配合したノンハロゲン難燃材料は、赤リンの発色のため、白色や任意の色に着色することができず、容易に種類や接続部を区別することができる絶縁電線ができないという問題が生じている。
さらにこの赤リンと金属水和物を併用したノンハロゲン難燃材料の場合、燃焼時に多量の煙を発生させるだけでなく、燃焼後の燃焼灰を埋め立てにより廃棄処理した場合、リン成分が流出して周辺の湖沼などで水質汚濁(プランクトンの大量発生)を生じる恐れがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決し、使用時においては、高度の難燃性と優れた機械特性を有しながら、任意の色に着色でき、埋立、燃焼などの廃棄時においては、重金属化合物やリン化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない電線被覆用樹脂組成物及び絶縁電線を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
我々は樹脂材料としてエチレン系共重合体と水酸化マグネシウムを用いて前記問題点を解決するために鋭意検討を行った結果、所定の酢酸ビニル成分含有量を有するエチレン酢酸ビニル共重合体を用いるとともに、樹脂成分全体としての酢酸ビニル成分含有量を所定の範囲に調整し、この特定の樹脂成分と所定量の水酸化マグネシウムを含んでなる樹脂組成物によれば、優れた機械的特性を有し、かつ高い難燃特性VW−1に適合する絶縁電線が得られることを見い出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体70〜99.5重量%と、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性した変性ポリオレフィン樹脂30〜0.5重量%とからなる樹脂成分100重量部に対して、水酸化マグネシウム180重量部〜250重量部を配合してなり、前記樹脂成分が、酢酸ビニル成分の割合が27〜43重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有し、さらに前記樹脂成分中の酢酸ビニル成分の含有量が31.5〜42重量%であることを特徴とする電線被覆用樹脂組成物、
(2)水酸化マグネシウムの少なくとも75重量部がシランカップリング剤により処理されたものであることを特徴とする(1)項記載の電線被覆用樹脂組成物、
(3)樹脂成分100重量部に対してスズ酸亜鉛0〜20重量部又はホウ酸亜鉛0〜20重量部を配合してなることを特徴とする(1)項記載の電線被覆用樹脂組成物、及び
(4)(1)、(2)または(3)項記載の樹脂組成物の架橋体で導体を被覆したことを特徴とする絶縁電線
を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の樹脂組成物について説明する。本発明の樹脂組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性した変性ポリオレフィン樹脂とを各々所定量で配合した樹脂成分を含んでなり、さらに所定量の水酸化マグネシウムを含んでなる。さらに本発明の樹脂組成物においては、所定の酢酸ビニル成分含有量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を樹脂成分の50重量%以上用いるとともに、樹脂成分全体の酢酸ビニル成分含有量が31.5〜41重量%という特定の範囲となるように樹脂の組成を規定したことを特徴とする。
【0009】
(A)エチレン−酢酸ビニル共重合体
本発明の樹脂組成物には、エチレン−酢酸ビニル共重合体を樹脂組成分中70〜99.5重量%となる量で、好ましくは80〜99重量%となる量で用いる。樹脂成分中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の量が70重量%より少ないと難燃性が低下する。
さらに、このエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、酢酸ビニル成分の割合(含有量)が27〜43重量%のものを樹脂成分の50重量%以上、好ましくは酢酸ビニル成分の割合が含有量32〜43重量%のものを50重量%以上、より好ましくは70重量%以上用いる。
酢酸ビニル成分の含有量27〜43重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体が樹脂成分中で50重量%より少ないと、力学的強度を達成することが出来なくなったり、また高度な難燃規格であるVW−1に適合不可能となる。たとえば酢酸ビニル成分の含有量が27重量%より低いエチレン−酢酸ビニル共重合体を樹脂組成分中50重量%より多く使用した場合には難燃性が低下し、このような場合に難燃性を満足させるためには前記共重合体に加えて酢酸ビニル成分含有量の高いエチレン−酢酸ビニル共重合体を大量に用いなければならないがそれによって樹脂の機械的強度が著しく低下する。一方、酢酸ビニル成分の含有量が43重量%より高いエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%より多量に使用した場合、力学的強度が著しく低下する。
エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、前記条件を満足するものを一種類用いてもよく、酢酸ビニル成分の含有量が異なる二種以上を併用してもよい。
また、本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体には、前記の条件を満足するものであればその他の物性、製法には特に制限はないが、メルトフローレート(MFR)が0.5〜25g/10分のものが好ましく、0.8〜5g/10分のものがさらに好ましい。また、二種以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体を混合して用いる場合には、MFRの近いもの同士を用いることが好ましい。
【0010】
(B)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリオレフィン樹脂
不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性した変性ポリオレフィン樹脂(以下、変性ポリオレフィン樹脂ともいう)には特に制限はないが、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその誘導体でポリエチレン樹脂(例えばLLDPEおよびVLDPEなどの低密度ポリエチレン)、エチレン系共重合体樹脂などのポリオレフィン樹脂を変性したものが挙げられる。この内、マレイン酸又は無水マレイン酸でLLDPE又はVLDPEを変性した変性ポリエチレン樹脂が特に好ましい。変性ポリオレフィン樹脂は、樹脂成分中、30〜0.5重量%の量で用いられ、好ましくは、マレイン酸の変性量にもよるが樹脂成分中、1〜25重量%の量で用いられる。
樹脂成分中に含まれる変性ポリオレフィン樹脂の含有率が30重量%を越えると、難燃性が著しく低下しさらに伸びが著しく低下する。一方、0.5重量%より少ないと伸びが著しく低下する。またこの変性ポリオレフィン樹脂を配合することにより、樹脂組成物の強度を向上する事ができる。さらにこの変性ポリオレフィン系樹脂は、金属水和物の添加による樹脂組成物の機械特性の低下を緩和する効果もある。
本発明の樹脂組成物においては、樹脂成分中の酢酸ビニル成分の含有量は31.5〜42重量%、好ましくは33〜41重量%、さらに好ましくは34〜40重量%である。樹脂成分全体としての酢酸ビニル成分含有量の調整は、例えば、酢酸ビニル成分含有量の高いエチレン−酢酸ビニル共重合体を多く添加することにより、樹脂成分中の酢酸ビニル成分の量を増加させ、逆に酢酸ビニル成分含有量の低いエチレン−酢酸ビニル共重合体や変性ポリオレフィン樹脂を多く用いて樹脂成分中の酢酸ビニル成分の含有量を低下させることにより行うことができる。
樹脂成分中の酢酸ビニル成分の含有量が31.5重量%より少ないと、高度な難燃性VW−1に適合しなくなる。また42重量%より多いと、所望の力学的強度を満足しなくなる。
【0011】
(C)水酸化マグネシウム
水酸化マグネシウムとしては、特に制限はないが、表面処理剤としてステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸により処理がなされたもの、リン酸エステル処理がなされたもの、シランカップリング剤処理がなされたものが好ましい。これらのものはすでに上市されており、キスマ5A、キスマ5B、キスマ5J、キスマ5Eやその他の商品名(協和化学(株))で市販されているものを用いることができる。
この水酸化マグネシウムの配合量は樹脂成分100重量部に対して、180〜250重量部であり、好ましくは200〜230重量部である。この配合量が180重量部より少ないと難燃性が著しく低下し、またこの配合量が250重量部を越えると力学的強度が著しく低下する。
また、用いる水酸化マグネシウムの内、樹脂成分100重量部に対して75重量部以上、より好ましくは100重量部以上の水酸化マグネシウムがシランカップリング剤表面処理がなされた水酸化マグネシウムであることが好ましい。このシランカップリング剤表面処理された水酸化マグネシウムを用いることにより、得られる電線被覆絶縁層の力学的強度が著しく向上する。特に、シランカップリング剤表面処理された水酸化マグネシウムを、用いる水酸化マグネシウムの全量とすると、機械的特性の向上の効果が極めて大きくなる。
【0012】
(D)スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛
本発明の樹脂組成物には、難燃効果をさらに高めるためにスズ酸亜鉛やホウ酸亜鉛を上記(A)、(B)、(C)を含んでなる系に併用するのが好ましい。
ホウ酸亜鉛としては、平均粒子径が5ミクロン以下、特に好ましくは3ミクロン程度のものが好ましい。ホウ酸亜鉛としては市販品を用いることができ、例えばアルカネックスFRC−500(2ZnO/3B2 O3 ・3.5H2 O)、FRC−600(商品名、販売元 水澤化学)などを挙げることができる。
またスズ酸亜鉛としては、スズ酸亜鉛(ZnSnO3 )、水和物を有するヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH)6 )が好ましく、商品名アルカネックスZS、アルカネックスZHS(販売元 水澤化学)などの市販品を用いることができる。
これらのスズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛の配合量は樹脂成分100重量部に対してそれぞれ20重量部以下であることが好ましい。20重量部を越えると、得られる電線絶縁層の力学的強度が低下するためである。さらに20重量部以下の範囲内においては力学的強度の低下がほとんどないことが確認された。
【0013】
本発明の電線被覆用難燃樹脂組成物には、電線・ケ−ブルにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
赤リンを配合せず、樹脂成分と金属水和物を含んでなる本発明の難燃樹脂組成物は、白色であることから、着色剤、ポリオレフィン系樹脂をベ−ス樹脂とするカラーバッチを配合することで、容易に任意の色に着色することができる。
酸化防止剤としては、4, 4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N, N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2, 2, 4−トリメチル−1, 2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1, 3, 5−トリメチル−2, 4, 6−トリス(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などがあげられる。
【0014】
金属不活性剤としては、N, N’−ビス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1, 2, 4−トリアゾール、2, 2’ −オキサミドビス−(エチル3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
さらに難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などがあげられ、なかでも、「ワックスE」、「ワックスOP」(商品名、Hoechst社製)などの内部滑性と外部滑性を同時に示すエステル系滑剤が好ましい。
【0015】
次に、本発明の絶縁電線について説明する。
本発明の絶縁電線は、前記本発明の樹脂組成物からなる被覆層を導体(例えば軟銅製などの単線または撚線導体)上に有してなり、この被覆層が樹脂組成物の架橋体で構成されたものである。
本発明の絶縁電線においては、樹脂組成物を架橋させて被覆層を形成することにより、耐熱性が向上するのみならず、難燃性をも向上させることができる。
架橋の方法としては、常法による電子線架橋法や化学架橋法が採用できる。
電子線架橋法の場合は、被覆層を構成する樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に電子線を照射することにより架橋をおこなう。
電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として配合してもよい。
化学架橋法の場合は、被覆層を構成する樹脂組成物に、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルぺルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物を架橋剤として配合し、押出成形して被覆層とした後に、常法により加熱処理により架橋をおこなう。
本発明の絶縁電線は、導体の周りに形成される絶縁被覆層の肉厚は特には限定しないが通常0.15mm〜1mm程度である。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、数字は特に記載がない場合、重量部を示す。
(実施例1〜13、比較例1〜11)
まず、表1〜3に示す各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、絶縁被覆層用樹脂組成物を用意した。
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径:0.95mmφ錫メッキ軟銅撚線 構成:21本/0. 18mmφ)上に、予め溶融混練した絶縁被覆用樹脂組成物を押し出し法により被覆して、各実施例、比較例に対応する絶縁電線を製造した。外径は2.64mmとした。被覆後8Mradで電子線照射を行うことにより架橋を行った。
得られた各絶縁電線について、引張特性、難燃性を評価し、その結果を表1〜3に併せて示した。試験方法、評価条件について以下に示す。
・引張特性(抗張力、確断時の伸び)
各絶縁電線の被覆層を管状片にし、その引張強度(抗張力)(MPa)と伸び(%)を、引張り試験機を用いて標線間25mm、引張速度500mm/min.の条件で測定した。引張強度および伸びの要求特性は、各々10MPa以上、100%以上である。
・難燃性
各絶縁電線について、UL1581の垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)を5サンプルについておこない、合格したものの比率で示した。
【0017】
なお、表1〜3に示す各成分は下記のものを使用した。
(01)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
酢酸ビニル(VA)成分含有量 33重量%
(02)エチレン−酢酸ビニル共重合体
VA成分含有量 41重量%
(03)エチレン−酢酸ビニル共重合体
VA成分含有量 46重量%
(04)エチレン−酢酸ビニル共重合体
VA成分含有量 28重量%
(05)エチレン−酢酸ビニル共重合体
VA成分含有量 25重量%
(06)エチレン−酢酸ビニル共重合体
VA成分含有量 17重量%
(07)無水マレイン酸変性LLDPE
日本ポリオレフィン(株)製、商品名:アドテック L6100M
(08)シランカップリング剤表面処理水酸化マグネシウム
協和化学(株)製
(10)オレイン酸表面処理水酸化マグネシウム
協和化学(株)製
(11)ステアリン酸カルシウム
(12)ヒンダートフェノール系老化防止剤
チバガイギ製、商品名:イルガノックス1010
(13)トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTM)
オグモントT−200(商品名、新中村化学製)
(14)ホウ酸亜鉛
アルカネックス500(商品名、水澤化学製)
(15)スズ酸亜鉛
アルカネックスZHS(商品名、水澤化学製)
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
表1〜3の結果から明らかな通り、本発明の樹脂組成物を用いた絶縁電線(実施例1〜13)は、伸びや抗張力という機械特性と難燃性の両方に優れるものであることがわかる。
特に、水酸化マグネシウムのうち少なくとも75重量部がシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムを使用した場合、機械的強度に優れる(実施例1〜13)。また、実施例1に対して実施例11、12で難燃性VW−1試験における最大燃焼時間が著しく短縮されたように、スズ酸亜鉛やホウ酸亜鉛を添加することにより、優れた力学的強度を維持したまま、難燃性をさらに向上させることができる。
一方、樹脂成分中の酢酸ビニル(VA)成分の含有量が31.5重量%未満では所望の難燃性が達成されず(比較例1、2)、またこれが42重量%を越えると力学的強度が著しく低下する(比較例10、11)。
また酢酸ビニル成分含有量が27〜43重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を樹脂成分中で50重量%未満とした場合、難燃性や力学的特性に問題があって実用できるものではなかった(比較例1、3、4、7)。
また水酸化マグネシウムが樹脂成分100重量に対して180重量部より少ないと難燃性に問題が生じ、一方、これが250重量部を越えると力学的特性に問題が生じた(比較例5、6)。
また無水マレイン酸変性LLDPEが樹脂成分中で0.5重量%より少ないと力学的特性に問題が生じ、30重量%より多いと難燃性、機械的強度に問題が生じた(比較例8、9)。
【0022】
【発明の効果】
ノンハロゲンでリン系化合物を含まない従来の難燃組成物では、水酸化マグネシウムなどの無機水和物を高充填することが必要であったが、高充填すると機械的強度の著しい低下が問題となっていた。これに対して本発明の樹脂組成物は、特定のベース樹脂を選択的に使用することにより、水酸化マグネシウムを高充填しても高度の難燃性と機械特性のバランスを取ることができ、絶縁電線の被覆層用組成物として好適なものである。
また、本発明の絶縁電線は、その被覆層がノンハロゲン難燃材料から構成されており、埋立、燃焼などの廃棄、処理時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない。
またハロゲン系化合物に加えてリン系化合物も用いていないため、埋立てにより廃棄しても湖沼など周辺環境を汚染することがないように配慮されている。
さらに自由に着色することが可能な電線である。
以上から、本発明の絶縁電線は、環境問題を考慮した電気・電子機器用配線材として、非常に有用なものである。
Claims (4)
- エチレン−酢酸ビニル共重合体70〜99.5重量%と不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性した変性ポリオレフィン樹脂30〜0.5重量%とからなる樹脂成分100重量部に対して、水酸化マグネシウム180重量部〜250重量部を配合してなり、前記樹脂成分が、酢酸ビニル成分の割合が27〜43重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上含有し、さらに前記樹脂成分中の酢酸ビニル成分の含有量が31.5〜42重量%であることを特徴とする電線被覆用樹脂組成物。
- 水酸化マグネシウムの少なくとも75重量部がシランカップリング剤により処理されたものであることを特徴とする請求項1記載の電線被覆用樹脂組成物。
- 樹脂成分100重量部に対してスズ酸亜鉛0〜20重量部又はホウ酸亜鉛0〜20重量部を配合してなることを特徴とする請求項1記載の電線被覆用樹脂組成物。
- 請求項1、2または3記載の樹脂組成物の架橋体で導体を被覆したことを特徴とする絶縁電線。
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