JP4953022B2 - 軸受用密封装置 - Google Patents

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この発明は軸受用密封装置に関する。
特開2003−194077号公報 特開2005−282669号公報
自動車は小型軽量化や、さらには居住空間拡大の要望により、エンジンルーム空間の減少を余儀なくされ、電装部品・エンジン補機の小型軽量化がより一層進められており、カーエアコン用電磁クラッチやコンプレッサー、アイドラプーリも例外ではない。しかし、小型化により出力の低下は避けられず、電磁クラッチでは高速化することにより出力の低下分を補っているので、それに伴ってアイドラプーリも高速化することになる。さらに、静粛性向上の要望によりエンジンルームの密閉化が進み、エンジンルーム内の高温化が促進されるため、これらの部品は高温に耐えることも必要となっている。加えて、これらの部品はエンジンルームの下部に取り付けられていることが多いため、走行中、雨水や泥水などがかかりやすく、これらの部品用の転がり軸受には高い密封性が要求される。
アイドラプーリ用の転がり軸受は内輪が非回転側となり、プーリが固定される外輪が回転側となる形で使用される。このような転がり軸受の密封装置は、そのラジアル方向外周縁部が外輪のアキシャル方向端部内周側に相対回転不能に嵌合するとともに、ラジアル方向内周縁側に形成されたゴム製の主シールリップが、内輪のアキシャル方向端部外周側に摺接する摺動シール部を有する。特許文献1では、このような摺動シール部のアキシャル方向外側に、非回転となる内輪に嵌合する内輪側スリンガ(ダストカバー)を対向配置し、軸受内部へのホコリ等の侵入抑制を図っている。
近年、自動車の使用条件はさらに厳しくなる傾向にあり、跳ね上げた泥水や洗車水等が強い圧力で噴射された場合など被水量のさらなる増加が想定されるケースや、RV車などで見られる冠水状態あるいは水没状態での使用を考慮し、軸受密封装置にはさらに高い防水性が求められるようになってきている。特許文献2では、摺動シール部のアキシャル方向外面に、内輪側スリンガに向けて突出し該スリンガの内面に摺接する副シールリップ(アキシャルリップ)を形成し、さらなる密封性の向上を図っている。
しかし、上記特許文献2の構成では、以下のような問題がある。
(1)主シールリップとは別に副シールリップが付加されることで、内外輪間の摩擦摺動部が増えるので、軸受トルクが増大し高速回転性能に支障をきたす懸念がある。特に、防水性向上のため副シールリップのアキシャル方向の締め代を増加させると、シールの摺動摩擦がさらに高くなり、トルク増大の問題が著しくなる。
(2)特許文献2において副シールリップは先端面が平坦に形成され、ラジアル方向外向きに傾斜した形で、該先端面で内輪側スリンガに摺接している。このような構造では、外輪回転に伴なう遠心力により副シールリップが弾性変形したとき先端面が内輪側スリンガから浮き上がりやすく、比較的低速回転の状態でもシール性が悪化しやすくなる。特に、河川中を水没しながら走行するような場合においては、走行速度が低くても副シールリップの密閉性が損なわれやすく、周囲に充満する水が軸受中に急速に浸透してしまう不具合につながりやすい。
本発明の課題は、回転速度に応じて軸受密閉性を適宜自己調整することができ、ひいては低速回転時における高密閉性と、高速回転時の低回転トルク化とを両立することができる軸受用密封装置を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明は、外輪回転で使用されるラジアル軸受に使用される軸受用密封装置であって、上記の課題を解決するために、
内外輪間に形成される転動体配置空間の環状の開口をアキシャル方向に遮る形で配置され、ラジアル方向内周縁部が内輪のアキシャル方向端部に相対回転不能に嵌合する内輪側スリンガと、
内輪側スリンガに対しアキシャル方向内側にアキシャルシール隙間を形成する形で対向配置され、ラジアル方向外周縁部が外輪のアキシャル方向端部に相対回転不能に嵌合するとともに、ラジアル方向内周縁側に内輪のアキシャル方向端部外側に摺接する弾性高分子材料からなる主シールリップが形成され、また、内輪側スリンガとの対向面をアキシャル基面として、該アキシャル基面から延出して先端部が内輪側スリンガのアキシャル方向内面に摺接する副シールリップが形成された摺動シール部とを備え、
副シールリップはリップ先端部に摺接エッジが形成され、内輪側スリンガを省略した仮想的な非変形状態において、摺接エッジが内輪側スリンガの内面位置よりもアキシャル方向において一定距離外側に位置するようになっており、内輪側スリンガの内面に対しリップ先端部が、摺接エッジを当接開始側とする形でラジアル方向内周面に円環帯状の摺接面を形成しつつ弾性屈曲変形する形で当接し、
外輪の回転に伴なう遠心力により副シールリップがアキシャル基面側に倒れる形で弾性変形するとともに、リップ先端部が内輪側スリンガとの間に形成する円環帯状の摺接面のラジアル方向幅を、遠心力が大きくなるほど摺接エッジに向けて縮小させるようにしたことを特徴とする。
上記の構成によると、内輪側スリンガに摺接する副シールリップは、リップ先端部に摺接エッジが形成される。この摺接エッジは、内輪側スリンガを省略して仮想的に非変形状態となしたとき、内輪側スリンガの内面位置よりもアキシャル方向において一定距離外側に位置するものとされる。該非変形状態で考えたとき、内輪側スリンガ内面からの摺接エッジのアキシャル方向延出量は、副シールリップのアキシャル方向締め代に相当する。このような締め代が形成されることで、副シールリップのリップ先端部は内輪側スリンガの内面に対し、(先端面ではなく)上記の摺接エッジを当接開始側とする形でラジアル方向内周面に円環帯状の摺接面を形成しつつ弾性屈曲変形する形で当接する。
この状態で、外輪回転に伴なう遠心力が作用すると、副シールリップはラジアル方向外向きに、つまり、アキシャル基面側に倒れるように弾性変形し、作用する遠心力が大きくなるほどその倒れ量が増す。前述の非変形状態で考えると、摺接エッジの内輪側スリンガ内面からのアキシャル方向延出量(締め代)は、作用する遠心力が大きくなるほど小さくなる。これに伴い、リップ先端部のラジアル方向内周面は、摺接エッジの当接位置をほぼ一定に維持しつつこれと反対側からラジアル方向にめくれ上り、内輪側スリンガに形成する円環帯状の摺接面は、遠心力が大きくなるほどラジアル方向幅が摺接エッジに向けて縮小することとなる。
その結果、回転速度に応じた軸受の密閉性及び回転トルクの自己調整機能を実現することができ、前述の課題を以下のようにことごとく解決することができる。
(1)副シールリップの摺接面が円環帯状に形成され、軸受の回転速度が増すほど、その遠心力により摺接面の幅が半径方向に縮小するので、摺動摩擦を効果的に軽減でき、高速回転時の軸受トルク増大を防止することができる。
(2)副シールリップは、遠心力がある程度大きくなっても、摺接面の幅が縮小するのみで摺接状態を維持でき、副シールリップが内輪側スリンガから浮き上がる不具合を生じにくい。また、スリンガ内面の法線方向に先端側から面当たりするのではなく、摺接エッジから線当たりする形で弾性屈曲変形しつつ円環帯状の摺接面を形成するので、遠心力により摺接面の幅が多少縮小しても密封性が損なわれにくい(また、遠心力により跳ね飛ばすことで、水等の浸入阻止効果が高められていることにも留意すべきである)。そして、河川中を水没しながら走行するような場合においては、遠心力の低下に伴い摺接面の幅が十分大きくなり副シールリップの密閉性を強化できるので、周囲に充満する水が軸受中に浸透する不具合を効果的に防止できる。
副シールリップは、ラジアル方向内周面の母線方向にてアキシャル基面からの立ち上がり起点位置から摺接エッジに至る寸法として規定したリップ長が、アキシャル基面との交差面のラジアル方向寸法として規定したリップ基端厚さよりも大きく調整されていることが望ましい。これにより、遠心力が作用したとき、副シールリップのアキシャル基面側への倒れこみ形態の弾性変形をスムーズに進行させることができ、軸受回転速度に応じた密閉性及び回転トルクの自己調整機能をより顕在化させることができる。
また、転動体配置空間が負圧となる状況が発生した場合、その吸込力に水滴等の軸受内への侵入は一層生じやすくなるが、本発明の構成を採用した場合、上記負圧吸込力により副シールリップはラジアル方向内向きに弾性変形する。その結果、リップ先端部が内輪側スリンガとの間に形成する円環帯状の摺接面のラジアル方向幅を負圧が大きくなるほど拡大させることができ、負圧発生時のシール性を大幅に高めることができる。
副シールリップの先端面は平坦面とすることができる。これにより、副シールリップは、ラジアル方向内周面と先端面との交差位置に形成される摺接エッジを、適度な剛性を保ちつつ尖鋭化でき、線当たりによるシール性向上効果を高めることができる。
副シールリップのリップ先端部は、軸受回転軸線を含む断面において鋭角状に先細りとなる形状とすることができる。リップ先端部をこのような先細り形態とすることで、副シールリップの先端のしなりが良好となり、内輪側スリンガとの密着性を高めることができる。
また、副シールリップの全体は、軸受回転軸線を含む断面において、アキシャル基面からの立ち上がり基端側から摺接側先端に向けてリップ厚さを連続的に縮小させるくさび形状とすることができる。これにより、副シールリップの基端部でのリップ厚さを一定以上に確保でき、組み付け時等において副シールリップがラジアル方向に反転してしまう不具合を防止でき、かつ、リップ先端側が先細りとなることによる上記の効果も同時に達成できる。この場合、副シールリップは、全体もしくはリップ先端部を、内輪側スリンガとの当接側であるラジアル方向内周面側に膨出する形で予め湾曲させた形状とすることも可能である。しかし、シール締め代を大きく確保する観点においては、軸受回転軸線を含む断面において、ラジアル方向内周面を示す外形線とアキシャル基面との鋭角側交差角度が、同じく外周面を示す外形線とアキシャル基面との鋭角側交差角度よりも小さくなるように、非変形状態における外形線の形状をいずれも直線状としておくことが望ましい。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の軸受用密封装置を適用した軸受の一実施形態を示す断面図である。軸受1は、自動車用のアイドラプーリを回転支持するためのものであり、内輪3が非回転、外輪4が回転となるように使用される複列の深溝玉軸受(ラジアル軸受)として構成されている。転動体をなす玉5,5は、各列にて保持器6,6により周方向配列間隔を規制されつつ、内輪3及び外輪4の間に形成される転動体配置空間15内に配置されている。また、外輪4の外周面にはプーリ20が同心的に嵌着されている。
軸受1には、転動体配置空間15のアキシャル方向両端にそれぞれ現れる環状の各開口15a,15aに軸受用密封装置7,7が設けられている。いずれの側の軸受用密封装置7,7も全く同一の構成であり、その要部は内輪側スリンガ10と摺動シール部8からなる。
図2は、その一方の軸受用密封装置7の詳細を拡大して示す断面図であり、内輪側スリンガ10は、内外輪3,4間に形成される転動体配置空間15の環状の開口15aをアキシャル方向に遮る形で配置され、ラジアル方向内周縁部が内輪3のアキシャル方向端部に相対回転不能に嵌合する。具体的には、内輪側スリンガ10は板厚方向がアキシャル方向と一致するよう内輪3と同心的に配置される環状の本体板10mと、該本体板10mの開口内周縁からアキシャル方向にて内向きに突出する形で一体形成される筒状部10fとを有する。本体板10mの半径方向における途中区間部分は、両端区間部分よりもアキシャル方向内向きに膨出するとともに、内面10aが平坦化された環状の補強膨出部10dとされている。また、内輪3のアキシャル方向端面の外周縁部には、環状の内輪側段差部42が形成されている。内輪側スリンガ10の筒状部10fは該内輪側段差部42の内周面42aに圧入嵌着されている。
次に、摺動シール部8は、内輪側スリンガ10に対しアキシャル方向内側にアキシャルシール隙間17を形成する形で対向配置されている。そのラジアル方向外周縁は外輪4のアキシャル方向端部に相対回転不能に嵌合するとともに、ラジアル方向内周縁側に内輪3のアキシャル方向端部外側に摺接する弾性高分子材料からなる主シールリップ9が形成されている。また、内輪側スリンガ10との対向面をアキシャル基面8bとして、該アキシャル基面8bからアキシャルシール隙間17を横断しつつラジアル方向外向きに斜めに立ち上がる形で弾性高分子材料からなる副シールリップ94が形成され、該副シールリップ94の先端部が内輪側スリンガ10のアキシャル方向内面10a(前述の補強膨出部10dの内面をなす)に摺接している。
摺動シール部8は、具体的には、板厚方向がアキシャル方向と一致するように配置されるシール芯金81と、該シール芯金81のアキシャル方向外側の板面を覆う弾性高分子材料からなるシール本体8Mとを有する。主シールリップ9はシール芯金81のラジアル方向内周縁よりも該ラジアル方向内向きに延出する形でシール本体8Mと一体形成されている。また、副シールリップ94は、シール本体8Mのアキシャル方向外側面をアキシャル基面8bとする形で該シール本体8Mと一体形成されている。
シール芯金81は、板厚方向がアキシャル方向と一致するように配置される環状の本体板81mと、該本体板81mの外周縁からアキシャル方向にて内向きに突出する形で一体形成される筒状壁部81aと、該筒状壁部81aのアキシャル方向端縁からラジアル方向外向きに延出するフランジ部81bとを有する。シール本体8Mの外周縁部は、該筒状壁部81aとフランジ部81bとをくるむ形で方形状断面を有する環状の嵌合リップ8eを形成している。他方、シール芯金81の内周縁側には、アキシャル方向内向きに斜めに曲げ返す形で補強曲げ返し部81cが形成されており、シール本体8Mは補強曲げ返し部81cをくるみつつ、ラジアル方向内向きに延出して主シールリップ9を形成している。
外輪4のアキシャル方向端面の内周縁部は周方向に段付形状に切り欠かれ、環状の外輪側切欠部41が形成されている。嵌合リップ8eは、該外輪側切欠部41の底面41a及び内周面41bにそれぞれ密着する形で圧入嵌着されている。なお、外輪側切欠部41の内周面41bの開放側におけるアキシャル方向端縁部には抜け止めリブ41rが周方向に突出形成され、嵌合リップ8eは、該抜け止めリブ41rを弾性的に乗り越えて外輪側切欠部41内に嵌着される。
主シールリップ9は、シール本体8Mからラジアル方向外側に延びる基部91と、基部91からアキシャル方向内側に延びる内側リップ92を有している。内側リップ92は、ラジアル方向内側の基部91から内輪側段差部42の底面42bに向かって延びて当該底面42bに摺接する内側摺接リップ92aと、内側摺接リップ92aのラジアル方向外側の基部91から内輪側段差部42の底面42bに向かって延びる内側補助リップ92bと、内側補助リップ92bのラジアル方向外側の基部91からアキシャル方向内側に延びるアキシャル方向リップ92cとを有している。外側リップ93は、基部91における内側摺接リップ92aのラジアル方向位置とほぼ同位置でアキシャル方向外側に延びる第一外側リップ93aと、基部91における内側補助リップ92bのラジアル方向位置とほぼ同位置でアキシャル方向外側に延びる第二外側リップ93bとを有している。
内側リップ92は、使用当初においては内側摺接リップ92aのみが内輪側段差部42の底面42bに摺接し、内側補助リップ92bは内輪側段差部42の底面42bに摺接していない構成となっている。該内側補助リップ92bは、軸受1の供用開始後、内側摺接リップ92aが一定量摩耗することで内輪側段差部42の底面42bと摺接状態になる。また、アキシャル方向リップ92cは、内輪3の外周面3aとの間でラビリンスシールを構成している。なお、各シールリップの摺動潤滑を行なうため、内輪側段差部42の底面42bと内輪側スリンガ10の内面10aとにグリースが付着されている。
次に、図3は、副シールリップ94を拡大して示す断面図であり、図6は、その摺接側先端部94tをさらに拡大して示す断面図である。副シールリップ94は、リップ先端部94tの先端面94cとラジアル方向内周面94aとの交差位置に摺接エッジ94eが形成されている。図3の上は、内輪側スリンガ10を省略した仮想的な非変形状態において副シールリップ94を示すものである。実際の組み立て状態の軸受では、内輪側スリンガ10により副シールリップ94は、軸受非回転状態では常に弾性変形した状態になっているが、この内輪側スリンガ10を取り外せば、副シールリップ94の非変形状態での形状を確認することができる。摺接エッジ94eは、該非変形状態(かつ、軸受非回転状態)にて、内輪側スリンガ10の内面10a位置よりもアキシャル方向において一定距離外側に位置している。該非変形状態で考えたときの、内輪側スリンガ10内面からの摺接エッジ94eのアキシャル方向延出量は、副シールリップ94のアキシャル方向締め代δを与えるものである。
図3の上に示すような非変形状態となることにより実際に内輪側スリンガ10を配置すれば、図3の下に示すように、副シールリップ94はその内面10aに対しリップ先端部94tは、摺接エッジ94eを当接開始側とする形でラジアル方向内周面94aに円環帯状の摺接面94a’を形成しつつ弾性屈曲変形する形で当接することとなる。なお、先端面94cは内輪側スリンガ10に当接していない。
この状態で、外輪4の回転に伴なう遠心力が作用すると、図4に示すように、副シールリップ94はラジアル方向外向きに、つまり、アキシャル基面8b側に倒れるように弾性変形し、作用する遠心力が大きくなるほどその倒れ量が増す。図3上に示す非変形状態で考えると、アキシャル方向締め代δはその倒れ量が増すほど小さくなる。すると、図4に破線で示すように、リップ先端部94tのラジアル方向内周面94aは、摺接エッジ94eの当接位置をほぼ一定に維持しつつこれと反対側からラジアル方向にめくれ上り、内輪側スリンガ10に形成する円環帯状の摺接面94a’は、遠心力が大きくなるほどラジアル方向幅Wが摺接エッジ94eに向けて縮小する。つまり、外輪4が非回転のときの摺接面94a’のラジアル方向幅をW0とし、同じく外輪4が回転して遠心力が作用したときのラジアル方向幅をW1としたとき、W1<W0となる。
これにより、副シールリップ94は、外輪4の回転速度に応じ、軸受の密閉性及び回転トルクを自己調整機能する機能を具現することとなる。すなわち、副シールリップ94の摺接面94a’が円環帯状に形成され、外輪4の回転速度が増すほど、その遠心力により摺接面94a’の幅が半径方向に縮小するので、摺動摩擦を効果的に軽減でき、高速回転時の軸受トルク増大が防止される。
副シールリップ94は、遠心力がある程度大きくなっても、摺接面94a’の幅が縮小するのみで摺接状態を維持でき、副シールリップ94が内輪側スリンガ10から浮き上がる不具合を生じにくい。そして、スリンガ内面の法線方向に先端側から面当たりするのではなく、図6に示すように、先端面94cとラジアル方向内周面94aとの境界にある摺接エッジ94eから線当たりする形で、図3下に示すごとく弾性屈曲変形しつつ円環帯状の摺接面94a’を形成するので、遠心力により摺接面94a’の幅が多少縮小しても密封性が損なわれにくい。例えば、河川中を水没しながら走行するような場合においては、遠心力の低下に伴い摺接面94a’の幅が十分大きくなり副シールリップ94の密閉性を強化できるので、周囲に充満する水が軸受中に浸透する不具合を効果的に防止できる。
一方、外輪4の回転速度が増すと、水滴等がふりかかっても外輪4の遠心力により水滴を跳ね飛ばす効果が生じ、摺接面94a’の幅が縮小していても、水等の浸入阻止効果は一定以上に確保される。そして、外輪4の遠心力による水滴等の跳ね返し効果が相当大きくなるような高速回転状態では、図5に示すように、リップ先端部94tが内輪側スリンガ10から浮き上がるような形態になってもよい。このとき、実使用時に想定される最大回転速度において、摺接エッジ94eと内輪側スリンガ10の内面10aとの間に形成される隙間幅εが、ラビリンスシールを形成できるように、前述の締め代δが調整されていることが望ましい。
他方、転動体配置空間15が負圧となる状況が発生した場合は、上記負圧吸込力により副シールリップ94はラジアル方向内向きに弾性変形する。その結果、リップ先端部94tが内輪側スリンガ10との間に形成する円環帯状の摺接面94a’のラジアル方向幅Wを負圧が大きくなるほど拡大させることができ、負圧発生時のシール性を大幅に高めることができる。つまり、負圧非作用時の摺接面94a’のラジアル方向幅をW’とし、同じ負圧作用時のラジアル方向幅をW”としたとき、W”>W’となる。
以下、副シールリップ94についてさらに詳細に説明する。図3の上に示すように、前述の非変形状態にて副シールリップ94は、遠心力が作用したとき、副シールリップ94のアキシャル基面8b側への倒れこみ形態の弾性変形をスムーズに進行させるため、ラジアル方向内周面94aの母線方向にてアキシャル基面8bからの立ち上がり起点位置から摺接エッジ94eに至る寸法として規定したリップ長Lが、アキシャル基面8bとの交差面のラジアル方向寸法として規定したリップ基端厚さθよりも大きく調整されている。
また、副シールリップ94の先端面94cは、図6左に示すように平坦面とされている。これにより、副シールリップ94は、ラジアル方向内周面94aと先端面94cとの交差位置に形成される摺接エッジ94eを、適度な剛性を保ちつつ尖鋭化でき、線当たりによるシール性向上効果を高めることができる。なお、図6右に示すように、副シールリップ94の先端面94cは段付形状とすることもできる。具体的には、先端面94cの摺接エッジ94eが形成されているのと反対側に突起部94fを形成することで、その段付形状化が図られている。また、図7に示すように、凸曲面形態の先端面94c’としたり、図8に示すように、凹曲面形態の先端面94c”とすることも可能である。副シールリップ94が軸受回転軸線に関する回転体形状となっており、かつ、図7に示す凸曲面形態の先端面94c’を有している場合は、摺接エッジ94eを次のように定義する。すなわち、図6に示すように、前記非変形状態での軸受回転軸線を含む断面で考えたとき、該先端面94cを含むリップ先端部94tの外形線に対し、内輪側スリンガ10の内面と平行に外接する接線10c’(空間的には円筒面となる)を描く。このときの、接線10c’と上記外形線との接点(空間的には円となる)が前述の摺接エッジ94eを形成していると考える。なお、図7の右に付加して表示するごとく、摺接エッジ位置に面取りが付与されている場合は、リップ先端部は当該面取り区間で一定幅を有する帯状面94jで摺接することになるが、この場合は、当該帯状面94jのラジアル方向内側に位置する縁を摺接エッジ94eとみなす。
図3に戻り、副シールリップ94のリップ先端部94tは、軸受回転軸線を含む断面において鋭角状に先細りとなる形状とされている。リップ先端部94tをこのような先細り形態とすることで、副シールリップ94の先端のしなりが良好となり、内輪側スリンガ10との密着性を高めることができる。図3の構成では、副シールリップ94の全体が、軸受回転軸線を含む断面において、アキシャル基面8bからの立ち上がり基端側から摺接側先端に向けてリップ厚さを連続的に縮小させるくさび形状とされている。副シールリップ94の基端部でのリップ厚さが大きくなるので、組み付け時等において副シールリップ94がラジアル方向に反転してしまう不具合を防止でき、かつ、リップ先端側が先細りとなることによる上記の効果も同時に達成できる。ただし、図11及び図12に示すように、副シールリップ94の少なくとも基端側において、リップ先端に向けた所定区間部分を、リップ厚さが一様となるように形成してもよい。図11はリップ先端部も含めてリップ厚さを一様とした例であり、図12は、リップ先端を先細り形状とした例である。
また、図3の上に示すように、副シールリップ94は、軸受回転軸線を含む断面において、ラジアル方向内周面94aを示す外形線とアキシャル基面8bとの鋭角側交差角度φ1が、同じく外周面を示す外形線とアキシャル基面8bとの鋭角側交差角度φ2よりも小さくなるように、非変形状態における外形線の形状がいずれも直線状とされている。ただし、リップ先端部の締め代調整のため、副シールリップ94の全体もしくはリップ先端部94tを、図9に示すように、内輪側スリンガ10との当接側であるラジアル方向内周面94a側に屈曲させた形状としたり、あるいは、図10に示すように、ラジアル方向内周面94a側に膨出する形で予め湾曲させた形状とすることも可能である。
本発明の軸受用密封装置を適用したアイドラプーリ用軸受の一例を示す断面図。 図1の軸受用密封装置部分を拡大して示す断面図。 図2の軸受用密封装置の副シールリップを、非変形状態と実装状態との双方にて拡大して示す断面図。 副シールリップの作用説明図。 遠心力がさらに増大したときの副シールリップの作用説明図。 副シールリップのリップ先端形状の第一例を示す拡大断面図。 同じく第二例を示す拡大断面図。 同じく第三例を示す拡大断面図。 副シールリップを予め屈曲形成する変形例を示す先端拡大断面図。 副シールリップを予め湾曲形成する変形例を示す先端拡大断面図。 副シールリップの別の変形例を示す断面図。 副シールリップのさらに別の変形例を示す断面図。
符号の説明
1 軸受
3 内輪
4 外輪
7 軸受用密封装置
8 摺動シール部
8b アキシャル基面
9 主シールリップ
94 副シールリップ
94a ラジアル方向内周面
94a’ 摺接面
94e 摺接エッジ
94t リップ先端部
10 内輪側スリンガ
15 転動体配置空間
15a 環状の開口
17 アキシャルシール隙間

Claims (4)

  1. 外輪回転で使用されるラジアル軸受の密封装置であって、
    前記内外輪間に形成される転動体配置空間の環状の開口をアキシャル方向に遮る形で配置され、ラジアル方向内周縁部が前記内輪のアキシャル方向端部に相対回転不能に嵌合する内輪側スリンガと、
    前記内輪側スリンガに対しアキシャル方向内側にアキシャルシール隙間を形成する形で対向配置され、ラジアル方向外周縁部が前記外輪のアキシャル方向端部に相対回転不能に嵌合するとともに、ラジアル方向内周縁側に前記内輪のアキシャル方向端部外側に摺接する弾性高分子材料からなる主シールリップが形成され、また、前記内輪側スリンガとの対向面をアキシャル基面として、該アキシャル基面から延出して先端部が前記内輪側スリンガのアキシャル方向内面に摺接する副シールリップが形成された摺動シール部とを備え、
    前記副シールリップはリップ先端部に摺接エッジが形成され、前記内輪側スリンガを省略した仮想的な非変形状態において、前記摺接エッジが前記内輪側スリンガの内面位置よりもアキシャル方向において一定距離外側に位置するようになっており、前記内輪側スリンガの内面に対し前記リップ先端部が、前記摺接エッジを当接開始側とする形で前記ラジアル方向内周面に円環帯状の摺接面を形成しつつ弾性屈曲変形する形で当接し、
    前記外輪の回転に伴なう遠心力により前記副シールリップが前記アキシャル基面側に倒れる形で弾性変形するとともに、前記リップ先端部が前記内輪側スリンガとの間に形成する前記円環帯状の摺接面のラジアル方向幅を、前記遠心力が大きくなるほど前記摺接エッジに向けて縮小させるようにしたことを特徴とする軸受用密封装置。
  2. 前記副シールリップは、ラジアル方向内周面の母線方向にて前記アキシャル基面からの立ち上がり起点位置から前記摺接エッジに至る寸法として規定したリップ長が、前記アキシャル基面との交差面のラジアル方向寸法として規定したリップ基端厚さよりも大きく調整されてなる請求項1記載の軸受用密封装置。
  3. 前記副シールリップの先端面が平坦面又は段付形状とされてなる請求項1又は請求項2に記載の軸受用密封装置。
  4. 前記副シールリップの前記リップ先端部は、軸受回転軸線を含む断面において鋭角状に先細りとなる形状とされてなる請求項1記載の軸受用密封装置。
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