以下、本発明のガスセンサについて詳細に説明する。
本発明のガスセンサは、先端部が閉じた有底筒状をなし、少なくとも先端側外表面に電極が形成され、かつ該電極よりも後方側に外周に向かって突出する鍔部を有するセンサ素子と、このセンサ素子を挿通保持し、金属パッキンを介して鍔部と当接する段部を有する絶縁碍子と、この絶縁碍子を内部に保持するハウジングとを有し、金属パッキンと当接する鍔部の受け面上の少なくとも一部には、電極と電気的に接続されるリード部が形成されるものである。
また、本発明の他のガスセンサは、先端部が閉じた有底筒状をなし、少なくとも先端側外表面に電極が形成され、かつ該電極よりも後方側に外周に向かって突出する鍔部を有するセンサ素子と、このセンサ素子を挿通保持し、金属パッキンを介して鍔部と当接する段部を有するハウジングとを有し、金属パッキンと当接する鍔部の受け面上の少なくとも一部には、電極と電気的に接続されるリード部が形成されるものである。
そして、本発明のガスセンサでは、このような金属パッキンとして、センサ素子の鍔部における受け面と当接する当接面に30nm以上の厚みの酸化膜を有すると共に、この酸化膜の最表面から厚み方向に30nmまでの範囲におけるCrの含有率が10atm%以上となっているものを用いることを特徴としている。
ここで、酸化膜の最表面から厚み方向に30nmまでの範囲におけるCrの含有率が10atm%以上とは、最表面から厚み方向にかけて30nmの部分まで分析を行った場合に、Crの含有率が厚み方向の各部において10atm%以上となっていること、すなわち10atm%未満となる部分がないことを意味する。なお、最表面部分、具体的には最表面から厚さ方向の5nmまでの部分については、C(炭素)析出が非常に多くなることがあり、相対的にCrの含有率が減少し、検出精度が良好でないことがあるため、このような部分についてはCrの含有率が10atm%以上となっていなくてもよい。また、Crの含有率は、10atm%以上であれば必ずしも厚み方向にかけて一定である必要はなく、増減する部分があってもよい。
本発明のガスセンサでは、金属パッキンとして、所定の厚さの酸化膜を有すると共に、この酸化膜の所定の厚さ部分におけるCrの含有率が10atm%以上であるものを用いることで、燃焼火炎中のような過度の高温雰囲気に晒された際、センサ素子における鍔部に形成されているリード部の付着、転写を抑制することができる。このため、センサ素子の先端側外表面に形成されている検知電極から出力信号を安定して取り出すことができ、特定ガス成分の濃度を長期にわたって正確に測定することができる。
このような酸化膜の形成によりリード部の付着、転写が抑制される原理については必ずしも明らかではないが、一定量以上のCr酸化物が含有されていることで、リード部の付着、転写が抑制されるものと考えられる。そして、本発明では、金属パッキンに予めこのような酸化膜を形成しておくことで、排気管に装着して燃焼火炎中のような過度の高温雰囲気に晒された場合であっても、当初から安定してリード部の付着、転写を抑制することができる。すなわち、酸化膜が全く形成されていない場合、あるいは形成されていても、Crの含有率が10atm%に達しない場合、排気管に装着して燃焼火炎中のような過度の高温雰囲気に晒された際、容易にリード部が付着、転写してしまう。
このような金属パッキンは、例えばFeを主成分とすると共に、Crを11.5質量%以上18.0質量%以下含有する合金から構成された未焼成の金属パッキンを焼成することにより得ることができる。このような合金としては、例えばSUS430等のステンレス鋼が代表的なものとして挙げられるが、必ずしもこのようなものに限られるものではない。
また、焼成は、所定の厚さの酸化膜を形成し得ると共に、その所定の厚さ部分におけるCrの含有率が10atm%となるものであれば必ずしも限定されるものではないが、例えば大気雰囲気下、温度を600℃以上700℃以下として行うことが好ましい。また、焼成時間は、焼成温度によって異なるものの、例えば5時間以上15時間程度とすることが好ましい。
熱処理温度が600℃未満あるいは熱処理時間が5時間未満の場合、酸化膜の厚さが不十分となり、あるいはCrの含有率が10atm%に達しないおそれがある。また、熱処理温度が700℃を超える場合あるいは熱処理時間が15時間を超える場合、結晶粒が粗大化し、脆くなる等の特性低下が生じるおそれがある。
金属パッキンにおける酸化膜の厚さ、Crの含有率は、Arイオンスパッタと組み合わせたオージェ電子分光分析(AES)による深さ方向分析を行うことにより測定することができる。なお、酸化膜の厚さは、深さ方向に分析を行ったときに、酸素の含有率が最大値と一定値(深さ方向に分析を行っていった際に、酸素の含有率がほぼ一定となるときの値)との中間値に減少したときの表面からの深さと仮定し、スパッタ時間とスパッタ速度(SiO2換算)とから算出することができる。
次に、本発明のガスセンサについて、図面を参照して具体的に説明する。以下、まずハウジングの内部に絶縁碍子を介してセンサ素子が保持される第1の形態のガスセンサについて説明する。
図1は、第1の形態のガスセンサ1の一例を示す断面図であり、図2は、その組み付け構造の一部を示す分解斜視図である。また、図3は、金属パッキン42が配置される部分を拡大して示す拡大断面図である。なお、以下では被測定ガスに晒される側(図中、下側)を先端側とし、その反対側(図中、上側)を後端側として説明する。
図1に示すように、ガスセンサ1は、有底円筒状のセンサ素子11と、このセンサ素子11を挿通保持する絶縁性セラミックからなる絶縁碍子21と、これらセンサ素子11と絶縁碍子21とを保持する筒状のハウジング31とを有している。
ハウジング31は、外周部に排気管等の取付部に取り付けるためのねじ部32や六角部33が形成され、ねじ部32の先端側に形成されたプロテクタ接続部34に2重のプロテクタ41がレーザ溶接によって接続されている。このプロテクタ41は、排気ガスを透過させるための複数のガス透過口が形成されており、ハウジング31の先端側から突出するセンサ素子11の先端部を覆うように取り付けられている。このガスセンサ1は、ねじ部32より先端側が排気管等の内部に位置し、それよりも後端側が外部の大気中に位置して使用される。
絶縁碍子21は、略筒状とされており、後端側の内径に対して先端側の内径が相対的に小径とされており、それらの略中間部に後端側から先端側に向かって徐々に縮径する段部21aが設けられている。
一方、センサ素子11は、その軸線方向の略中間部に径方向外側に突出するようにして鍔部12が形成されており、この鍔部12の先端側が徐々に先端側に向かって縮径する縮径部12aとされている。
図4は、センサ素子11の外観を示す平面図であり、図5はその先端部を拡大して示す断面図である。図4、5に示すように、センサ素子11は、有底筒状の固体電解質体13を主体とし、例えばその外面における先端部から鍔部12の縮径部12aまでの範囲に検知電極14が形成されている。なお、検知電極14は縮径部12aの先端側まで、すなわち縮径部12aに形成されていなくても構わない。
検知電極14の縮径部12aよりも先端側の全面には、この検知電極14を保護するための電極保護層15が形成されている。さらに、電極保護層15の軸線方向の略中間部よりも先端側の全面には、リン、ケイ素等の被毒物質による経時的な劣化を抑制するための被毒防止層16が形成されている。
また、固体電解質体13の表面には、検知電極14と電気的に接続され、出力信号を外部に取り出すためのリード部17が形成されている。リード部17は、例えば縮径部12aから後端側に向かって軸線方向に線状に延びる主部17aと、この主部17aの後端部において周方向に線状に形成され、端子金具62が電気的に接続される端子接続部17bとを有している。一方、固体電解質体13の内側表面には略全面に基準電極18が形成されている。
固体電解質体13は、例えばイットリア(Y2O3)ないしカルシア(CaO)を固溶させたジルコニア(ZrO2)が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類金属の酸化物とジルコニアとの固溶体であってもよく、さらにはベースとなるジルコニアにハフニア(HfO2)が含有されたものであってもよい。この固体電解質体13は、例えばイットリア(Y2O3)粉末等を含むジルコニア粉末を所定の形状に加圧成形した後、所定の温度で焼成してなるものである。
検知電極14、基準電極18は、例えば白金(Pt)やその合金等の貴金属からなるものであり、無電解メッキ法等のメッキ法によって形成されるものである。また、リード部17は、例えば固体電解質体13の製造時に、その成形体の表面にジルコニアと共に白金、パラジウム等を含む貴金属ペーストを所定のパターンに印刷し、該成形体の焼成と同時に形成されるものである。
このようなセンサ素子11は、例えば図3に拡大して示すように、絶縁碍子21の段部21aと鍔部12の縮径部12aとの間に略環状の金属パッキン42を介して係止されている。この際、鍔部12の縮径部12aにはリード部17が形成されているため、このリード部17が金属パッキン42と接触することとなる。
本形態では、このような部分に配置される金属パッキン42として、上記した少なくとも縮径部12aと当接する当接面に30nm以上の厚みの酸化膜が形成されると共に、この酸化膜の最表面から厚み方向に30nmまでの範囲におけるCrの含有率が10atm%以上とされたものを用いることを特徴としている。
このような金属パッキン42を用いることで、上記したように鍔部12の縮径部12aに形成されているリード部17が金属パッキン42に付着、転写することが抑制され、リード部17の断線が抑制される。これにより、検知電極14からの出力信号を安定して取り出すことができ、特定ガス成分の濃度を長期にわたって正確に測定することができるようになっている。
図1に戻り、センサ素子11の鍔部12および絶縁碍子21の後端側には、先端側から順にタルクを主体とするセラミック粉末43およびスリーブ44が配置されている。また、スリーブ44の後端側にはリングパッキン45が配置され、このリングパッキン45を介してハウジング31の後端部が加締められることで、ハウジング31とセンサ素子11との間が気密に保持されている。また、センサ素子11の内部には、このセンサ素子11を加熱するためのヒータ46が後端側から挿入されている。
一方、ハウジング31の後端部には、筒状の金属製の外筒51が外側からレーザ溶接されることにより固定されている。外筒51は、図6に示すように略円筒形状をなし、ハウジング31と接合される第1外筒部51aと、この後端側に位置し第1外筒部51aよりも小径の第2外筒部51bとを有している。この第2外筒部51bの軸線方向の略中間部分には、周方向に均等に4箇所、径方向内側に四角形状となって突出し、後述するセパレータ54に当接する内側当接部51cが形成されている。
この外筒51の後端側開口部にはゴム等で構成されたグロメット52が嵌入されて加締められることにより封止されている。グロメット52の中心部には、大気を外筒51内に導入する一方、水分の進入を防ぐフィルタ部材53が配置されている。
このグロメット52の先端側には、絶縁性のアルミナセラミックからなるセパレータ54が設けられている。そして、グロメット52およびセパレータ54を貫通してセンサ出力リード線55、56およびヒータリード線57、58が配置されている。
セパレータ54は、図2に示すように先端側筒部54s、後端側筒部54e、およびこれらの間に位置し、これらよりも大径とされた鍔部54gとを有する。鍔部54gの後端側は、後端側に向かって徐々に縮径されており、その表面が外筒51の内面に当接する外筒当接面54hとなっている。一方、鍔部54gの先端側は、付勢金具59が当接する軸線方向に直行する平面状の金具当接面54rとされている。
このセパレータ54には、リード線55〜58を挿通するための軸線方向に貫通するリード線挿通孔54a、54bが形成されている。また、セパレータ54の先端側には、これらのリード線55〜58を把持する第1、第2センサ端子金具61、62あるいはヒータ端子部材63、64が挿入、保持される保持孔54dが形成されている。
第1センサ端子金具61は、一体に成形されたコネクタ部61a、セパレータ当接部61b、挿入部61cを有する。このうち、コネクタ部61aは、センサ出力リード線55の芯線を把持して、第1センサ端子金具61とセンサ出力リード線55とを電気的に接続する。また、セパレータ当接部61bは、セパレータ54の保持孔54dに弾性的に当接して、第1センサ端子金具61をセパレータ54内に保持する。
さらに、挿入部61cは、センサ素子11の筒部内に挿入されて、基準電極18と導通する。この挿入部61cは、下方押圧部61dおよび上方押圧部61eを含み、センサ素子11の筒部に挿入された際に自身が包囲するヒータ46が軸線に対して偏心し、発熱部46aが基準電極18に接触するように姿勢を調整する。また、挿入部61cの後端側には、センサ素子11の内部への没入を抑制するための鍔部61gが設けられている。
一方、第2センサ端子金具62は、一体に形成されたコネクタ部62a、セパレータ当接部62b、把持部62cを有する。このうち、コネクタ部62aは、センサ出力リード線56の芯線を把持して、第2センサ端子金具62とセンサ出力リード線56を電気的に接続する。また、セパレータ当接部62bは、セパレータ54の保持孔54dに弾性的に当接して、第2センサ端子金具62をセパレータ54内に保持する。
さらに、把持部62cは、センサ素子11の後端付近の外周を把持する。ここで、把持部62cは、センサ素子11の後端側外面に形成されている端子接続部17bと導通することにより、結果として検知電極14と導通する。また、把持部62cの先端側には、センサ素子11の後端部を挿入しやすくするための鍔部62fが設けられている。
ヒータ46は棒状のセラミックヒータであり、アルミナを主とする芯材に抵抗発熱体(図示せず)を有する発熱部46aが形成されている。電極パッド46c、46eにろう付け接続されたヒータ端子金具63、64およびヒータリード線57、58を通じて通電することで、センサ素子11の先端部が加熱される。ヒータ端子金具64は、ヒータリード線57の芯線を把持して電気的に接続するコネクタ部64aを有している。なお、図示しないが、ヒータ端子金具63も、同様にコネクタ部によりヒータリード線58の芯線を把持するコネクタ部を有している。
さらに、セパレータ54の先端側筒部54sの周囲には、図1に示すように、付勢金具59が装着されている。この付勢金具59は、図7に示すように、円筒状の金属筒部59aを主体とし、その後端部にJ型弾性保持部59bおよび筒部延在部59cが一体に形成されている。
このJ型弾性保持部59bは、周方向に等間隔に4箇所点在しており、径方向内側に延びると共に徐々に方向転換して先端側に延びて略J字状に湾曲してなる。このJ型弾性保持部59bは、付勢金具59をセパレータ54の先端側筒部54sに装着すると、弾性変形して付勢金具59を先端側筒部54sに保持する。また、筒部延在部59cは、J型弾性保持部59b同士の間に形成され、J型弾性保持部59bと同様に内側にJ字状に湾曲する。
次に、ハウジングの内部に絶縁碍子を介さずにセンサ素子が保持され、このセンサ素子の鍔部からハウジングを介して出力を取り出すボディアース構造を有する第2の形態のガスセンサについて説明する。
図8は、第2の形態のガスセンサ101とこれに装着されるセンサキャップ200とからなるガスセンサユニット300の一例を示す断面図であり、図9、10は、それぞれガスセンサ101、センサキャップ200を単独で示す断面図であり、また図11は、センサキャップ200のキャップ端子210を単独で示す側面図および下面図である。
図8から理解できるように、本形態のガスセンサ1は後端部にセンサキャップ200が装着され、ガスセンサユニット300として使用される。このガスセンサユニット300は、排気管400の内部にガスセンサ101の先端部が突出するようにして締結されて使用される。
図9に示すように、ガスセンサ101は、有底円筒状のセンサ素子111と、これを保持する筒状のハウジング131と、このハウジング131の後端側に固定される外筒151と、この外筒151によって周囲を取り囲まれ、センサ素子111の後端側に挿入されるセンサ端子161とを備える。
ハウジング131は、SUS430からなる略円筒状のものであり、先端部にプロテクタ141が装着されている。このハウジング131の内側部分には、先端側に向かって徐々に縮径する段部131aが形成されている。
また、このハウジング131の外側には、ガスセンサ101を排気管400(図8参照)に取付けるためのネジ部133が形成されており、このネジ部133の後端側には、ネジ部133を排気管400に螺挿するための取付工具を係合させる六角部132が周設されている。プロテクタ141は、金属製、略円筒状の有底筒体で、排気管400内の排気をガスセンサ101の内部に導入するための複数の通気孔を有している。
センサ素子111は、その軸線方向の略中間部に径方向外側に突出するようにして鍔部112が形成されており、この鍔部112の先端側が徐々に先端側に向かって縮径する縮径部112aとされている。
このセンサ素子111は、図示しないが、第1の形態のガスセンサ1に用いられるセンサ素子11と同様、有底筒状の固体電解質体を主体とし、その外側表面に検知電極、電極保護層、被毒防止層が順に積層されるように形成され、また内側表面の略全面に基準電極が形成されている。なお、このセンサ素子111についても検知電極と電気的に接続されるようにリード部が形成されているが、第1の形態のセンサ素子11におけるリード部17と異なり、鍔部112の縮径部112aのみに形成されており、鍔部112の頂面やそれよりも後端側の表面には形成されていない。
このセンサ素子111は、鍔部112の縮径部112aとハウジング131の段部131aとの間に金属パッキン142を介して係止されている。この際、鍔部112の縮径部112aには図示しない検知電極やリード部が形成されているため、これら検知電極やリード部が金属パッキン142によってハウジング131(段部131a)に電気的に接続される。
本形態では、このような部分に配置される金属パッキン142として、上記した少なくとも縮径部112aと当接する当接面に30nm以上の厚みの酸化膜が形成されると共に、この酸化膜の最表面から厚み方向に30nmまでの範囲におけるCrの含有率が10atm%以上とされたものを用いることを特徴としている。
このような金属パッキン142を用いることで、上記したように鍔部112の縮径部112aに形成されているリード部が金属パッキン142に付着、転写することが抑制される。これにより、検知電極からの出力信号を安定して取り出すことができ、特定ガス成分の濃度を長期にわたって正確に測定することができるようになっている。
このようなセンサ素子111の鍔部112の後端側には、リングパッキン147を介してタルクから形成されるセラミック粉末143が配置されており、後端側から外筒151の先端部によって押圧されている。外筒151は、例えば絶縁性セラミック(具体的には、アルミナ)からなる略円筒形状のものであり、先端側がセンサ素子111の周囲を取り囲むように配置され、その後端側において加締めリング145を介してハウジング131の後端部が加締められることにより固定されている。
センサ端子161は、例えばインコネル718(英インコネル社、商標名)からなり、略筒形状で、出力側端子部162、素子側端子部164、および両者を連結する連結部163を有している。
出力側端子部162は、断面が略C字形状の筒状とされており、図8に示すようにキャップ端子210のセンサ接続部211(挿入部216)を挿入したときに、弾性的に拡径するように構成されている。さらに、この出力側端子部162のうち後端側の周方向3カ所には、径方向内側に突出する凸状部162bが形成されている。
さらに、出力側端子部162のうち、凸状部162bより先端側の対応する周方向3カ所には、この出力側端子部162の一部を打ち抜いて径方向内側に折り曲げた内側屈曲部162cと、径方向外側に折り曲げられた外側屈曲部162dとが形成されている。
このうち、内側屈曲部162cは、図10に示されるキャップ端子210の挿入部216を出力側端子部162の内側に挿入して接続するときに、弾性的に径方向外側に屈曲し、挿入部216が所定位置まで挿入されたときに、屈曲が戻ってクリック感を生じさせるように形成されている。
また、外側屈曲部162dは、ガスセンサ101にセンサ端子161が組み付けられた時点で、外筒151の段差部151bの先端面(段差面)に当接して、出力側端子部162(センサ端子161)の抜け防止の役割を果たしている。素子側端子部164も、断面が略C字形状の筒形状とされており、センサ素子111内に弾性的に縮径しつつ挿入されて内側電極と電気的に接続している。
一方、図10に示すように、センサキャップ200は、キャップ端子210、このキャップ端子210を被覆し保持する被覆部材220、リード線250、およびフィルタ部材240を備えている。
被覆部材220は、絶縁性のフッ素系ゴムを用いて中空状に成形してなるものである。この被覆部材220は、キャップ端子210の後端側に位置する端子後端部221、キャップ端子210の径方向周囲を包囲し、後述するようにガスセンサ101の外筒151の外周面を包囲するための外周被覆部222、およびリード線250あるいはフィルタ部材240の周囲を包囲するリード包囲部223を備える。リード線250は、リード挿通孔223bを通じて、被覆部材220の内部に引き込まれている。
外周被覆部222のうち、後端側の把持部周囲部222bは、比較的径大とされ、キャップ端子210の外周面把持部215の周囲に位置している。この把持部周囲部222bに隣接する先端側には、この把持部周囲部222bに比して内径が小さくなっており、ガスセンサ101の外筒151の外周面に密着する寸法とされた密着部222cが設けられている。さらに、この密着部222cの先端側には、この密着部222cに比して内径が大きくされており、ガスセンサ101の外筒151の外周面を、これから離間しつつ包囲する延在包囲部222dが設けられている。
キャップ端子210は、例えばSUS310Sからなり、板材を絞り加工等によって成形してなるものである。このキャップ端子210は、二重略円筒形状のセンサ接続部211と、このセンサ接続部211に一体に形成され、リード線250の芯線251を加締めて電気的に接続する芯線加締部212とを有している。さらに、リード線250を挿通したフィルタ部材240を加締めて、リード線250とフィルタ部材240とを把持、固定するフィルタ加締部213を有している。
このうち、センサ接続部211は、板状の環状部214と、この環状部214の外周縁から先端側に向かって延設される外周面把持部215と、この環状部214の内周縁から先端側に向かって延設され、ガスセンサ101の後端部に挿入される略円筒状の挿入部216とを有する。これら環状部214、外周面把持部215、および挿入部216は、互いに一体に成型されている。
図11に示すように、外周面把持部215は、環状部214の外周縁に連なってC字状に突出する基端部215aと、この基端部215aからスリットSL1,SL2によって3つに分割されて延びる分割把持部215b(215ba,215bb,215bc)とを有する。この分割把持部215b(215ba,215bb,215bc)には、それぞれ、内側に向けて突出する突起部215c(215ca,215cb,215cc)が形成されている。また、基端部215aの周方向両端の間には、第3スリットSL3が存在する。
このようなキャップ端子210は、図8に示されるようにガスセンサ101の外筒151の外周面に3つの突起部215cを当接させつつ、センサ接続部211の外周面把持部215が外筒151の後端部を包囲するように嵌め込まれる。この際、スリットSL1,SL2,SL3の存在により、3つの分割把持部215bがそれぞれ径方向外側に弾性的に屈曲し、この反力によって外筒151にキャップ端子210が弾性的に保持される。
また、挿入部216は、略円筒状で、縮径、拡径等の変形が生じがたい剛性を有する。従って、ガスセンサ101の出力側端子部162内に挿入したときに、自身は変形することなく、出力側端子部162を拡径させることができる。この挿入部216は、後端側から順に、比較的径大の導通部216a、この導通部216aよりも径小の径小部216b、この径小部216bよりも径大の挿入先端部216cを備える。
そして、このような挿入部216は、ガスセンサ101の出力側端子部162に挿入された際、導通部216aが出力側端子部162の凸状部162bに当接し、出力側端子部162と電気的に導通する。また、径小部216bには、出力側端子部162の内側屈曲部162cが位置し、センサ端子161からキャップ端子210が容易に抜けないようにしている。
図10に戻り、リード線250は、芯線251のほか、第1被覆材252,第2被覆材253の2重の被覆を有している。このリード線250は、前述したように、芯線の先端がキャップ端子210の芯線カシメ部212で加締められてセンサ接続部211と電気的に接続している。このため、このリード線250を通じて、ガスセンサ101のセンサ素子111の内側電極からの出力信号を取り出すことが可能となる。
フィルタ部材240は、ポーラステフロン(登録商標)からなり、中央にリード挿通孔241が穿孔された比較的径小の径小部242と、この径小部242よりも径大の径大部243とを段状に連結した形状を有する。リード挿通孔241には、リード線250のうち芯線251および第1被覆材252が挿通されている。そして前述したように、キャップ端子210のフィルタ加締部213でフィルタ部材240の径小部242を加締めることで、フィルタ部材240とリード線250の第1被覆材252が、キャップ端子210と一体化している。またこのように、フィルタ部材240の径小部242をフィルタ加締部213で加締めることにより、リード挿通孔241を通じた水滴の浸入が防止される。
また、このフィルタ部材240は、径大部243が被覆部材220のリード包囲部223に挟持されることにより、所定位置に保持されている。上述したように、このフィルタ部材240は、ポーラステフロン(登録商標)からなるため、径大部243において、水滴は通さないが、空気は通すことができる。従って、このフィルタ部材240の径大部を通じて、被覆部材220内、およびセンサ端子161内を経由して、ガスセンサ101のセンサ素子111の内側に外気(基準ガス)を供給することができる。
1…ガスセンサ、11…センサ素子、12…鍔部、12a…縮径部、14…検知電極、17…リード部、18…基準電極、21…絶縁碍子、21a…段部、31…ハウジング、42…金属パッキン、101…ガスセンサ、111…センサ素子、112…鍔部、112a…縮径部、131…ハウジング、131a…段部、142…金属パッキン