自動分注装置においては、分注作業の高速化が望まれている。特に、ディスポーザブルチップを用いる場合には1回毎にチップを着脱するので、チップ取り外しのために費やされる時間の割合が大きい。従って、チップの取り外しに要する時間の短縮化が特に望まれている。
ノズルチップを取り外す方法については、いろいろな公知技術があるがいずれも問題がある。例えば、ノズルチップを取り外すためにノズルにモータを搭載する方法があるが、この方法ではノズル自身が重くなる。他の公知技術としては、前述したようにU字の切欠部を持つ板にノズルチップを引っ掛けて取り外す方法がある。この方法によると、ノズルチップを取り外すために、下降・水平・上昇という3方向への移動が不可欠である。つまり、ノズルの重量を増やすことなくノズルを高速に搬送することが可能であり、かつ、一方向への短い移動によってノズルチップを取り外せる装置は未だ実現されていない。
本発明の目的は、ノズルチップを取り外す新しい構成を適用したノズル装置を提供することにある。あるいは本発明の他の目的は、ノズルを取り外す位置へのノズルのアプローチ運動によってノズルチップを外すことのできるノズル装置を提供することにある。あるいは本発明の他の目的は、一方向への移動だけによってノズルチップを取り外すことが可能となり、ノズルチップ取り外しの時間を短縮することができるノズル装置を提供することにある。あるいは本発明の他の目的は、ノズルを搬送するための搬送力を用いてノズルチップを取り外すのに十分な力を発生することのできるノズル装置を提供することにある。
本発明は、ノズル基部とそれに装着されるノズルチップとからなるノズルを備えた可動部と、前記可動部を搬送する搬送機構と、リムーブセクションにおいて前記ノズル基部から前記ノズルチップを取り外すリムーブ手段と、を含み、前記リムーブ手段は、前記ノズルが前記リムーブセクションにおけるリムーブ位置へ下降運動する際に、前記リムーブセクションに設けられた構造体への当たりを利用して、前記ノズルの搬送に伴う運動力を前記ノズルチップを取り外すリムーブ力に転換する、ことを特徴とする。
上記構成によれば、搬送装置による可動部を搬送するための搬送力が、リムーブセクションにおけるリムーブ位置にアプローチする過程で、ノズルチップを取り外す力として用いられる。すなわち、アプローチ運動を行う際に、リムーブセクションに設けられた構造体に対しリムーブ手段の一部が当たることによって、リムーブ手段は、可動部を搬送する運動力をノズルチップを取り外すためのリムーブ力に転換する。つまり、ノズルチップを取り外すための特別な駆動源は必要とされない。
本発明に係るノズル装置は、ノズル基部とそれに装着されるノズルチップからなるノズルとを備えた可動部と、前記可動部を搬送する搬送機構と、リムーブセクションにおいて前記ノズル基部から前記ノズルチップを取り外すリムーブ手段と、を含み、前記リムーブ手段は、前記リムーブセクションに設けられた台座と、前記可動部に設けられた機構であって、前記ノズルが前記リムーブセクションにおけるリムーブ位置へ下降する際に、前記台座に当たって跳ね上げられる従動端部と前記従動端部の上昇運動により前記ノズルチップを取り外すための下降運動を行う駆動端部とを有しシーソー運動を行うシーソー部材を備えた転換機構と、を含み、前記シーソー部材は前記台座へ前記従動端部が当たっていない自然状態で重力により前記従動端部側が下がり且つ前記駆動端部側が上がった姿勢となる、ことを特徴とする。
上記構成によれば、搬送装置から可動部に与えられる搬送力は、転換機構に設けられた従動端部が台座に当たることにより、従動端部を跳ね上げる上昇運動としてリムーブ手段に伝達される。その上昇運動は、転換機構により、力の向きが変えられて駆動端部の下降運動に転換される。つまり、ノズルチップのリムーブ位置に向かうアプローチ運動としては下方への運動で足りる。
望ましくは、前記転換機構は、前記従動端部を一端とし前記駆動端部を他端とした部材であって回転軸を備えたシーソー部材を含むことを特徴とする。上記構成によれば、揺動運動を行うシーソー部材は回転軸を備え、更に回転軸を支点とした力の増幅率の転換作用を備える。よって、回転軸から従動端部までの距離あるいは中心軸から駆動端部までの距離に応じて、伝達される力の増倍率を変えられる。
望ましくは、前記転換機構は、前記ノズル基部に対して相対的に上下方向にスライド可能な押下部を含み、前記シーソー部材のシーソー運動が前記押下部のスライド運動に転換されることを特徴とする。上記構成によれば、シーソー部材の作用によって得られる回転運動を、ノズルチップを押し出すのに適した上下方向へのスライド運動に変換することができる。上下方向にスライドする押下部を利用することによって、ノズルチップをその中心軸に沿って真っ直ぐに押し出すことができる。
望ましくは、前記シーソー部材は、前記従動端部に備えられ前記台座の上面に当接する滑車を含むことを特徴とする。上記構成によれば、シーソー部材の従動端部は、滑車の作用によって摩擦力を軽減できる。
望ましくは、前記台座の上面に加えられる押圧力を検出する力センサと、前記力センサの検出信号と、前記搬送機構が搬送する可動部の位置情報とに基づいて、エラー処理を判定する制御部を含むことを特徴とする。上記構成によれば、台座を押圧する力を検出する力センサの検出信号と、搬送装置のもつノズルの位置情報とを照らし合わせることも可能となる。
後述する構成例においては、ノズル装置が、ノズル基部とそれに装着されるノズルチップからなるノズルとを備えた可動部と、前記可動部を搬送する搬送機構と、リムーブセクションにおいて前記ノズル基部から前記ノズルチップを取り外すリムーブ手段と、を含み、前記リムーブ手段は、前記可動部に設けられた当接部と、前記ノズルが下降運動又は水平運動する際に、前記当接部に当たって揺動運動する従動端部と前記従動端部の揺動運動が伝達されて下降運動を行う駆動端部とを有する転換機構と、を含む。
上記構成によれば、搬送装置から可動部に与えられる搬送力は、可動部に設けられた当接部を介して、転換機構の従動端部側に伝達される。従動端部側に伝達された搬送力は、転換機構の揺動運動によって、その力の向きが変えられて駆動端部に伝達される。駆動端部においては、揺動運動は、ノズルチップを取り外すのに適した力の方向である下降運動に転換される。つまり、本発明によれば、ノズルチップのリムーブ位置に対するアプローチ運動の方向が、ノズルチップをリムーブするための力の方向と異なる場合においても、揺動運動する転換機構によって、チップを取り外すのに適した下向きの押下力を得ることができる。
望ましくは、前記転換機構は、前記従動端部を一端とし前記駆動端部を他端とした部材であって回転軸を備えたスイング部材を含むことを特徴とする。上記構成によれば、揺動運動を行うスイング部材は回転軸を備える。回転軸を設定されたスイング部材は、回転軸を支点とした力の増幅率の転換作用と力の方向を変える作用とを備える。回転軸から従動端部までの距離、あるいは回転軸から駆動端部までの距離に応じて、伝達される力の増倍率を変えられる。
後述する構成例においては、ノズル装置が、ノズル基部とそれに装着されるノズルチップからなるノズルとを備えた可動部と、前記可動部を搬送する搬送機構と、リムーブセクションにおいて前記ノズル基部から前記ノズルチップを取り外すリムーブ手段と、を含み、前記リムーブ手段は、前記リムーブセクションに設けられた台座と、前記ノズル基部に連結して設けられた部材であって、前記ノズルが前記リムーブセクションにおけるリムーブ位置へ下降する際に前記台座に当たって下降運動が制限される突出部材と、前記下降運動が制限された突出部材及びノズル基部を残して相対的に下降を続け、前記可動部の搬送力を前記ノズルチップへの押圧力に転換する押下部と、を含む。
上記構成によれば、搬送装置からノズルに与えられる下方の搬送の力の向きを変えることなく、ノズルチップを下向きに押し出すことが可能となる。ノズルを搬送する力は、ノズルチップを押し出す力に変換されるので、搬送力から押圧力への転換の損失を少なくすることができる。
望ましくは、前記押下部に対して、前記ノズル基部を下方に付勢する弾性部材を含むことを特徴とする。上記構成によれば、ノズルチップが取り付けられたノズル基部は、弾性部材の作用によって常に下方に付勢されるので、ノズル基部と押下部との相対的な位置が定められる。よって、ノズル基部の下端位置にノズルチップを装着するための装着部分を確保することができる。
以上説明したように、本発明によれば、ノズルチップを取り外す新しい構成を適用できる。あるいは本発明によれば、ノズルを取り外す位置へのノズルのアプローチ運動によってノズルチップを外すことができる。あるいは本発明によれば、一方向への移動だけによってノズルチップを取り外すことが可能となり、ノズルチップ取り外しの時間を短縮することができる。あるいは本発明によれば、ノズルを搬送するための搬送力を用いてノズルチップを取り外すのに十分な力を発生することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るノズル装置としての分注装置の機能ブロック図である。図1には、分注作業を行うためのノズル22が示されている。ノズル22は、ノズルチップ18とノズル基部20とを有する。ノズル22はチューブ16によって分注ポンプ14と接続される。ノズル22は可動部12の一構成部品であり、可動部12は搬送部28に支持されている。よって、ノズル22は、搬送部28によってXYZ三次元空間内の所定の位置に搬送される。
可動部12は、検体の吸入と吐出を終えた後に、リムーブセクション46に搬送される。リムーブセクション46は、ノズルチップ18を取り外すために予め用意されている場所である。本実施形態においては、リムーブセクション46に、台座48、力センサ39および本体側リムーブ機構54を備える。本体側リムーブ機構54については後述する。
制御部26は、ノズル装置を統括的に制御する部分であり、図1に示す各ユニットと電気的に接続される。制御部26は、搬送部28からの位置情報を読み取って、可動部12の位置を把握する。その位置情報に基づいて、搬送部28に対しては、可動部12の移動命令を発生する。制御部26は、ポンプ駆動部24に対して、分注ポンプ14への動作指令を行う。分注ポンプ14は検体を吸引又は吐出する際に用いられる。力センサ39が出力する圧力信号は、増幅回路38によって増幅され、荷重判定部36によって、圧力値の大小の判断がなされる。その荷重判定部36の判定結果は、制御部26に伝送される。表示部30には、例えば、ノズルチップ18の装着異常を知らせるエラーメッセージが表示される。なお、制御部26には、入力部32、メモリ34が接続されている。
本実施形態においては、ノズル側リムーブ機構52は可動部12の一構成部品として備えられる。ノズル側リムーブ機構52は、ノズル側リムーブ機構52と共働する本体側リムーブ機構54と組み合わされて、リムーブ機構56を構成する。可動部12がノズルチップ18を取り外すためにリムーブセクション46に移動すると、以下のような動作が行われる。すなわち、ノズル22がリムーブ位置に向かうアプローチ運動を行うと、本体側リムーブ機構54とノズル側リムーブ機構52とが近接して、その間に力学的な相互作用が生じる。本体側リムーブ機構54からノズル側リムーブ機構52に対しては、搬送力に応じて与えられる力が伝達される。図1では、搬送力に応じて与えられる力を矢印62で表している。ノズル側リムーブ機構52は、搬送力に応じて与えられる力をノズルチップ18を取り外すリムーブ力に転換する。図1では、リムーブ力を矢印64で表している。本体側リムーブ機構54とノズル側リムーブ機構52との間で相互に力の転換作用が行われることにより、ノズルチップ18は、ノズル基部20から取り外されて、ボックス60に破棄される。
図2は、リムーブ機構を備えたノズルユニット100の外観図である。ノズルユニット100は、リムーブ機構とフィッティング101とフィッティングベース102等からなる。リムーブ機構は、スリーブ104とシーソー部118と台座66から構成される。ここで、スリーブ104とシーソー部118とは、図1に示したノズル側リムーブ機構52に含まれる。台座66は本体側リムーブ機構54に含まれる。
フィッティング101は、ノズルチップ18が装着される直径φ1の円筒形状の部品である。フィッティング101は、その円筒の中心軸上に、吸入又は吐出の際に使用される貫通孔が設けられている。フィッティングベース102は、例えば真鍮やステンレスなどの金属製で、直径φ1よりも大きな直径φ2の円筒部分を備え、フィッティング101と中心軸を同一にして固定されている。
スリーブ104は、例えば樹脂製であり、フィッティング101の直径φ1の円筒部分にスライド可能に装着され、その円筒部の外面円筒にはテーパが設けられている。スリーブ104は、その外面円筒部から上方に、互いに平行に突出した2つの突起部分105を有する。その2つの突起部分105には、水平方向に長軸を一致させた長穴106Aが、それぞれの突起部分に1つずつ設けられている。なお、スリーブ104の下端面104Aからフィッティング101の下端面までの距離をD1とすると、その距離D1は、図2に示す状態においてノズルチップ18を装着するのに十分長い距離に設定されている。
シーソー部118は、シーソー板108A、回転軸110、ガイド軸112、滑車114、2本の突起材116Aからなる(突起材は表側のみが図2に示されている)。シーソー板108Aは、回転軸110によってフィッティングベース102に対して回転可能に連結される。シーソー板108Aは、回転軸110を挟んで、その一端側にガイド軸112が連結され、他端側には2本の突起材116Aが設けられる。滑車114は、その中心に設けられた貫通孔をガイド軸112に通して連結される。2つの突起材116Aは、スリーブ104に設けられた2つの長穴106Aにそれぞれ掛止される。本実施形態においては、回転軸110からガイド軸112までの距離をL1とし、回転軸110から突起材116Aまでの距離をL2とした場合に、L2よりもL1の方が長く設定されている。なお、図2はノズルチップ18が装着されていない状態を示している。台座66に当接していない状態で滑車114側が図示のように重力で自然に下がるようなバランス関係を構成する方が好ましい。滑車114側を下げる方法としては、滑車114の重量を増やしてもよいし、距離L2が長くなるようにしてもよい。上記のようにスリーブ104を樹脂製とすればそれが軽量となるから、上記の重力による自然状態を構成し易い。
ちなみに、本実施形態においては、フィッティング101の直径φ1は約8mm、フィッティングベース102の直径φ2は約22mmであり、シーソー板においてL1とL2を加算した長さは20〜30mm程度である。
台座66は、リムーブセクションに設けられており、分注装置に固定されている。
図3は、ノズルユニット100の動作を示す図である。図3(a)においては、ノズルチップ18を取り外す途中の状態が示されている。図3(b)にはノズルチップ18が外れた状態が示されている。なお、図3(a)と図3(b)において、図2に示した構成と同様の構成には同一符号を付しその説明を省略する。
図3(a)に示すように、リムーブセクションまで搬送されたノズルユニット100は、所定の高さから速度を低速に切り替えて、Z軸に沿って下降する。ノズルチップ18を取り外すための下降のルートは、搬送装置側で予め定められている。ノズルユニット100が下降を続けると、フィッティングベース102の外周円筒よりも迫り出している滑車114が、金属製の平面板42に当接する。平面板42は実質的に移動しないので、ノズルユニット100を下降させると滑車114と一体構造のシーソー部118は、回転軸110を中心にして滑車114を跳ね上げる方向に回転する。シーソー部118の反対側に設けられた2本の突起材116Aは、テコの作用により、滑車114が跳ね上げられる方向とは反対方向にその高さを下げる。2本の突起材116Aの高さが下がるので、スリーブ104は、ノズルチップ18の上縁部18Aを押し下げる。なお、滑車114は平面板42の上を転がるので平面板42の面上には大きな摩擦力は働かない。2本の突起材116Aは回転軸110を中心とした円弧を描くのに対して、スリーブ104はフィッテイン
グ101に沿って直線移動するので、2本の突起材116Aはそれぞれに掛止される長穴106Aの内壁面を水平方向に摺動する。
シーソー板108Aに関して、回転軸110からガイド軸112までの距離L1の方が、回転軸110から突起材116Aまでの距離L2よりも長く設けられている。従って、テコの原理により、平面板42が滑車114を押し上げる反作用力よりも、スリーブ104がノズルチップ18の上縁部18Aを押し下げる力の方が大きくなる。もちろん、距離L1とL2の距離とその比率を変えることによってノズルチップを押し下げる力を大きくすることも、スリーブ104のZ軸方向へのストローク量を調整することも可能である。
図3(a)には、スリーブ104がノズルチップ18を押し下げている状態が示されており、かつ、滑車114が平面板42を押す力が最大に達する位置での状態が示されている。滑車114が平面板42を押圧する力は、金属製の台座50の上に設けられたロードセル40への荷重をモニターすることで検出できる。ロードセル40の圧力検出点は平面板42を挟んで滑車114のほぼ真下の位置に配置することが望ましい。ロードセル40の出力信号をモニターすることによって、ノズルチップ18が押し出される力の大きさを定性的に検出することができる。
図3(a)に示した状態より時間が経過した状態を図3(b)に示す。台座50、ロードセル40は固定されているので、ノズルユニット100の降下に伴って、シーソー部118は更に回転する。その結果、スリーブ104の下端面104Aからフィッティング101の下端面までの距離D1は、ノズルチップ18を差し込んで保持できないほどに短くなり、ノズルチップ18は落下する。図3(b)に示すようにノズルチップ18が外れた状態では、ロードセル40にかかる力は、図3(a)の状態と比べて遥かに小さくなる。
ちなみに、図3(b)に示した状態から、更にノズルユニット100を降下させると、図3(b)に示す距離D1が遂にはゼロになるところがある。距離D1がゼロになる位置はノズルチップ18を確実に取り外せる位置に相当するので、本実施形態においては、XYZ三次元座標上において、この位置におけるノズルユニット100の空間座標位置をリムーブ位置と呼ぶことにする。もちろん、距離D1がゼロでなくても確実にノズルチップを落とすことが可能であれば、その位置をリムーブ位置とみなすことができる。
図9においては、滑車が当接される台座に関して、図3に示した実施形態の変形例を示す。図9に示す台座においては蝶番43を使用している。蝶番43の一方は台座50に固着され、他方は固着されることなくロードセル40の上に自然に置かれている。蝶番43を用いることによってロードセル40の上を覆う蝶番の一方の板金は、支持棒45を中心に自由に回転できる。従って、滑車114が蝶番43を押圧する力は損失することなくスムーズにロードセル40に対して伝達される。図9のように蝶番43を用いると、支持棒45からロードセル40の押圧点までの距離L11と、支持棒45から滑車114の当接箇所までの距離L12の長さの比率を変えられる。テコの作用により、ロードセル40の配置場所を微調整することで、ロードセル40で検出される力の大きさを調整することが可能になる。
図3に戻って、本実施形態のノズルユニット100によれば、そのノズル全体を定められた位置、つまりリムーブ位置まで降下させるだけで、ノズルチップ18を確実に取り外すことができる。リムーブ位置に達したノズルユニットは、そのまま水平に移動させることができる。すなわち、再び上昇運動に転じる必要がないので、無駄な動きが少なくなる。また、平面板42の面積を大きくすることにより、ノズルチップを落下できる範囲を実質的に拡大することができる。
また、従来より用いられていたU字型の取り付け板にノズルチップを引っ掛ける方法においては、ノズルチップの移動方向(上昇方向)と、取り外されたノズルチップの落下方向が逆向きである。つまり、ノズルチップ内に残留している液がある場合には、移動に伴って残留液に働く慣性力が上向きであること及びノズルチップを取り外す時に衝撃が加わることとが相まって残留液が飛散する可能性があったが、本実施形態においては、ノズルの移動方向とノズルチップの落下方向が同方向であるので、液が飛散する可能性が低い。
図4は、ノズルユニット100の動作制御に関するフローチャートである。以下、フローチャートに沿って説明する。分注装置に対して運転開始指令がなされると、ノズルユニット100はノズルチップの装着セクションに移動し、新品のノズルチップ18を先端に装着する(S100)。その後、検査対象の検体が置かれている元検体ラックに移動し、1つの検体をノズルチップ18に吸引する(S102)。ノズルユニット100は、分注用に置かれている子検体ラックに移動し、そこで検体は分注される(S104)。ノズルユニット100は分注後にリムーブセクションまで水平に搬送される(S106)。滑車114が平面板42の鉛直上方(図3参照)に位置すると、ノズルユニット100は高速で下降運動を開始する(S108)。ノズルユニット100が所定の位置まで下がると下降速度は低速にかわり、更に下降を続ける(S110)。
滑車114が平面板42に当接され、図3(a)に示すように平面板42に荷重がかかる状態になった時、ロードセル40が荷重量を検出し、荷重量が適正範囲であるかどうかが荷重判定部36(図1参照)で判定される(S112)。荷重量が適正範囲内であればノズルユニット100はそのまま下降を続けるが、適正範囲でない場合にはその大小判定が行われる(S114)。荷重量が小さすぎる場合には、ノズルチップが装着されていないと判断してノズルユニット100の下降を停止しエラー処理を行う(S116)。荷重量が大きすぎる場合は、ノズルチップを取り外すことができない状態と判断してノズルユニット100の下降を停止しエラー処理を行う(S118)。ちなみに、適正な荷重範囲は例えば10〜30N程度である。
次に、荷重量が最大値に達してから、更にノズルが下降した状態において再び荷重量を判定する。ノズルユニット100がリムーブ位置に達した状態においては、荷重がほとんどかからない状態、つまり荷重量がほぼゼロの状態を正常と判断する(S120)。いくらかの荷重が残っている場合にはノズルチップが外れていないと判断して、ノズルユニット100の下降を停止しエラー処理を行う(S118)。
2度目の荷重判定により荷重量がほぼゼロで正常と判断された後は、ノズルユニット100は水平に移動される(S122)。次の検体の分注作業が残っていれば、新しいノズルチップ18を装着するステップに戻る(S124)。
図5は、リムーブ機構を備えたノズルユニット130の外観図である。ノズルユニット130は、リムーブ機構とフィッティング132等からなる。リムーブ機構は、フィッティングベース136とスリーブ134とスイングアーム140とから構成される。ここで、フィッティングベース136とスリーブ134は、図1に示したノズル側リムーブ機構52に含まれる。スイングアーム140は本体側リムーブ機構54に含まれる。
図5(a)にはノズルユニット130とスイングアーム140が示してある。図5(a)にはノズルチップ18を取り外す前の状態が示されている。図5(b)にはノズルチップ18が取り外された状態が示されている。
フィッティング132は、ノズルチップ18が装着される直径φ1の円筒形状の部品である。フィッティング132は、その円筒の中心軸上に貫通孔が設けられている。フィッティング132は、その上方において固定金具(図示せず)によってフィッティングベース136に固定されている。スリーブ134は、例えば樹脂製であり、フィッティング132の直径φ1の円筒部分が貫通する円筒の内壁面を備える。スリーブ134の外観は円筒形状である。
ノズルユニット130と共働するスイングアーム140は、リムーブセクションに設置される本体側リムーブ機構である。以下、図6を用いて、スイングアーム140の構成を示す。
スイングアーム140は、固定板142A,142B、クランク部材144、三角板148A,148Bなどを有する。本実施例のスイングアーム140においては、その構成部品は全て金属製である。スイングアーム140は、固定板142A,142Bによって、リムーブセクションに固定される。固定板142A,142Bは回転軸146によって連結され、その回転軸146は、クランク部材144を貫通している。クランク部材144は、互いに直行する3つの伸長方向をもつ部分を一体化した形状の部品である。クランク部材144は、クランク部材144に掛止された三角板148A,148Bは、クランク部材144を間に挟んで、互いに平行に保持される。これら2枚の三角板148A,148Bの距離L3は、フィッティング132の直径φ1よりも大きく、スリーブ134の円筒外径よりも小さく設定される。クランク部材144は、回転軸146が貫通しているので、クランク部材144の端部143が押圧され、あるいは上端面145を押圧されるとクランク部材144は回転軸146を中心として揺動運動する。
図5(a)に戻って、搬送装置に取り付けられたノズルユニット130が水平に移送されて、固定されたスイングアーム140に近づく場合の動作を示す。リムーブセクションまで搬送されたノズルユニット130は、速度を低速にしてX軸に平行に水平移動する。ノズルチップ18を取り外すための水平移動のルートは定められており、水平移動に伴って、フィッティングベース136はクランク部材144の端部143に衝突する。そうすると、クランク部材144は回転運動を開始するので、三角板148A,148BはX軸のマイナス方向にその三角板の頂点を移動させる。ここで、平行距離L3を保つ三角板148A,148Bは、フィッティング132の直径φ1の円筒部分を挟み込む。また、三角板148A,148Bの底辺149A,149Bは、スリーブ134の上端面に接触する。
図5(b)には、ノズルユニット130のX軸方向への水平移動が更に進んだ状態が示されている。図5(b)に示すように、フィッティングベース136が衝突することにより、クランク部材144の端部143を押圧する力が発生することが示されている。端部143を押圧する力は、クランク部材を回転される力に転換され、三角板148A,148Bが、スリーブ134に作用する力に変換される。
ここで、図5(b)においては、三角板の底辺149A,149Bが、X軸とほとんど平行に保たれてスリーブ134を押圧する様子が示してあるが、三角板148A,148Bをクランク部材144と固着することにより、三角板148A,148Bの頂点で、スリーブ134の上端面を押圧してもよい。三角板148A,148Bをクランク部材144と固着すると、スリーブ134を押圧する際のZ軸方向へのストロークを大きくすることができる。
スリーブ134が押し下げられると、ノズルチップ18の上縁部18Aに力が加えられ、ノズルチップ18が落下する。図5(b)には、ノズルチップ18が落下する状態が示されている。スイングアーム140の作用も一種のテコの作用であり、スリーブ134を押し下げる力とストロークの大きさは、支点である回転軸146からの力点までの距離と、回転軸146から作用点までの距離に応じて変化する。図5(a)及び図5(b)には、ノズルチップが取り外される力をモニターする圧力検出手段が示されていないが、クランク部材144の端部143にロードセルを取り付けることで押圧力をモニターすることは勿論可能である。
図7は、図6に示したスイングアーム140の変形例である。以下に、変形例のスイングアーム150の構成を示す。2枚の固定板182A,182Bには、それぞれに2つの小孔が設けてあり、その小孔を用いて、回転軸部196A,196Bが設けられる。回転軸部196Aは、角材184を支持し、回転軸部196Bは、クランク部材186を支持する。角材184とクランク部材186は、3枚の板(リンク板188、鋭角プレート190A、190B)によって連結される。リンク板188は、2本の係合ピン196C、196Dによって、それぞれ角材184とクランク部材186に係止される。鋭角プレート190Aについても、2本の係合ピン196E,196Fによって、角材184とクランク部材186に係止される。鋭角プレート190Bについても同様に、2本の係合ピン(図示せず)によって、角材184とクランク部材186に係止される。角材184の上端には切り欠き孔185が設けられ、固定板182Bにも切り欠き孔183が設けられる。この2つの切り欠き孔には、バネ198の両端が掛けられている。また、固定板182Aには、回転軸部196Aの近くで、角材184の裏の位置に、ストッパ152が固着されている。
以下に、スイングアーム150の作用を示す。図7に示すスイングアーム150は、図5に示したノズルユニット130と組み合わせて使用される。スイングアーム150は、2枚の固定板182A,182Bを用いてリムーブセクションに固定される。角材184とクランク部材186の垂直部分は、リンク板188と2枚の鋭角プレート190A、190Bによって連結されているので、互いに平行関係を保ちながら、それぞれの回転軸部196A、196Bを中心に回転できる。つまり、角材184とクランク部材186の垂直部分とが平行を保ち、リンク材188と鋭角プレート190Aとが平行を保つようになっており、平行リンクが形成されている。そのため、クランク部材186の端面192に押圧力がかけられると、2枚の鋭角プレート190A,190Bは、固定板182A,182Bと平行を保ったまま、その距離が縮まるようになっている。角材185はバネ198によって付勢されるが、ストッパ152によってその回転が制限され、無負荷の状態で角材184は起立状態を保つ。
このスイングアーム150をノズルユニット130に適用した場合には、ノズルの水平移動に伴って、クランク部材186は回転し、鋭角プレート190A,190Bの位置が下がる。鋭角プレート190A,190Bは、固定板182A,182Bと平行に移動するので、鋭角プレート190A,190Bの底辺部191A,191Bがスリーブ134の上端面をZ軸に沿って鉛直下方に押圧して、ノズルチップ18を取り外すことができる。
図8は、リムーブ機構を備えたノズルユニット160の外観図である。ノズルユニット160は、リムーブ機構とフィッティング164からなる。リムーブ機構は、フィッティングベース162とレバー166と台座170から構成される。ここで、フィッティングベース162とレバー166とは、図1に示したノズル側リムーブ機構52に含まれる。台座170は本体側リムーブ機構54に含まれる。
図8(a)にはノズルチップ18を取り外す前の状態が示されている。図8(b)にはノズルチップ18が取り外された状態が示されている。以下、図8(a)を用いて説明する。
フィッティング164は、大小2つの異なる直径をもつ円筒形状の部品であり、ノズルチップ18が装着される直径φ1の小円筒部分と、その直径φ1よりも小さな直径φ3の円筒部分を備え、その円筒の境目に肩部を備えた部品である。フィッティング164には、その円筒部と中心軸を合わせて、検体の吸入又は吐出の際に用いる貫通孔が設けられている。フィッティング164は、直径φ1の円筒面の一部において突出して設けられたレバー166を備え、フィッティング164とレバー166は一体に結合されている。フィッティングベース162は、フィッティング164が装着される円筒内壁を備える金属部品である。フィッティングベース162の側面には、上下方向に伸長した長穴の開口172が設けられており、その開口172からはレバー166がフィッティングベース162の外面円筒部分を超えて突出している。フィッティング164をフィッティングベース162との間には、その中心軸方向に沿って1つのバネ168が設けられる。バネ168は、フィッティング164とフィッティングベース162とを押し広げる作用を有する。このバネ168の作用によって、レバー166は、無負荷の自然な状態においてフィッティングベース162の開口172の一番低い位置に押し当てられる。レバー166の突出部に対しては、台座170が、下方への搬送の際に当接される位置に設けられる。搬送装置は、フィッティング164ではなくフィッティングベース162の方にその搬送力を伝達する。
図8(a)を用いて、搬送装置に取り付けられたノズルユニット160が下降し、固定された台座170に近づく場合の動作を示す。ノズルユニット160は、リムーブセクションにて定められたルートを降下するので、フィッティングベース162から迫り出したレバー166は、台座170に当接しその後も更に下降する。ノズルユニット160の搬送装置は、フィッティングベース162を保持して搬送力を伝えているので、レバー166が台座170に衝突しても、フィッティングベース162は一時的に下降を続けることができる。レバー166と一体になったノズル基部は、下降への移動が妨げられるが、フィッティングベース162が下降を続けるので、自ずとバネ168の全長は短くなる。ノズルユニット160が下降を続けると、フィッティングベース162の下端面163が、ノズルチップ18の上縁部18Aに力を与えノズルチップ18を押圧する。搬送装置がノズルユニット160を搬送する力は、バネ168を元に戻そうとする弾性力とノズルチップ18を取り外すための摩擦力を合わせた力よりも大きいので、ノズルチップ18は、フィッティングベース162の下端面で押し出される。
図8(b)には、ノズルチップ18が落下した状態が示されている。図8(b)に示すように、ノズルチップ18が落下に至る状態においては、レバー166が外環円筒の開口の下端から持ち上げられ、その結果、フィッティングベース162の下端面とフィッティング164の下端面の距離D3が短くなる。ノズルユニット160に対しても、ノズルユニット100に適用した平面板42とロードセル40をそのまま適用することができる。
18 ノズルチップ、20 ノズル基部、22 ノズル、24 ポンプ駆動部、26 制御部、28 搬送部、39 力センサ、40 ロードセル、42 平面板、46 リムーブセクション、48,50,66 台座、52 ノズル側リムーブ機構、54 本体側リムーブ機構、56 リムーブ機構、60 ボックス、100 ノズルユニット、101 フィッティング、102 フィッティングベース、104 スリーブ、106A 長穴、108A シーソー板、110 回転軸、112 ガイド軸、114 滑車、116A 突起材、118 シーソー部。