JP4942377B2 - 成形材料用熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いた成形材料並びに成形体 - Google Patents

成形材料用熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いた成形材料並びに成形体 Download PDF

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Description

本発明は、成形材料用熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いた成形材料並びに成形体に関するものである。
フェノール樹脂の硬化物は耐熱性等の物理的特性が優れているところから、従来より、各種製品、具体的には、機械構造部品、自動車用部品、電気機器部品、通信機器部品、日用品等に広く用いられている。このような製品は、一般に、フェノール樹脂に各種添加剤や充填材等を配合してなる成形材料を用いて、射出成形法等の公知の成形方法に従って、製造されている。
ここにおいて、かかる成形材料に用いられるフェノール樹脂としては、様々なものが開発され、使用されているが、旧来から広く用いられているフェノール樹脂としては、原料であるフェノール類とアルデヒド類とを、酸性触媒の存在下において反応せしめることにより得られるノボラック型フェノール樹脂(以下、ノボラックと略す場合もある)や、フェノール類等を塩基性触媒の存在下において反応せしめることにより得られるレゾール型フェノール樹脂(以下、レゾールと略す場合もある)が、挙げられる。
そのような旧来から用いられているフェノール樹脂のうち、ノボラック型フェノール樹脂にあっては、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類を硬化剤として用いるところから、その硬化の際に、アンモニアが発生する。従って、ノボラック型フェノール樹脂を含む成形材料を、金属部との組み合わせからなる一体成形品を製造する際に用いると、得られる成形品がアンモニア臭を発すると共に、その金属部が、アンモニアによって腐食されるおそれがあった。
このため、金属部との一体成形品等を製造するに際しては、従来より、レゾール型フェノール樹脂が用いられているが、かかるレゾール型フェノール樹脂を用いると、その硬化過程において生成する大量の縮合水や、樹脂中に含まれる未反応のアルデヒド類等によって、得られる成形体にガス欠陥が生じやすいという問題があった。また、成形体中に生じるガス欠陥(空隙)や、硬化後のレゾール型フェノール樹脂における架橋密度の低さ等に起因して、レゾール型フェノール樹脂を用いて得られる成形体は、ノボラック型フェノール樹脂を用いて得られるものと比較した場合、一般的に、機械的強度の点において劣るという問題もあった。更に、レゾール型フェノール樹脂が硬化する際には、樹脂中に含まれる、未反応のアルデヒド類等や触媒としてのアンモニア等の成分が揮発し、特有の臭気を発することが多く、成形材料用熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、良好な作業環境を確保すべく、換気装置の設置等が必要であった。
そこで、近年、そのような問題点を解決すべく、種々のフェノール樹脂成形材料が提案され、使用されているのであり、例えば、特許文献1(特開平7−309995号公報)においては、フェノール樹脂と充填材とを含有し、フェノール樹脂がレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とから構成されるフェノール樹脂成形材料が、提案されている。そこにおいては、提案の如きフェノール樹脂成形材料を用いると、臭気が少なく、且つ機械的強度に優れた成形品が得られるとされている。
しかしながら、かかる特許文献1にて提案されたフェノール樹脂成形材料にあっては、それより得られる成形体の機械的強度において、未だ十分なものではなく、また、依然として、成形体におけるガス欠陥の問題を内在するものであった。
ところで、近年、旧来にはない新規な構造を有するフェノール樹脂が種々開発され、使用されているが、そのような新規なフェノール樹脂の一つに、カネボウ株式会社によって開発されたベルパール(商品名)なるフェノール樹脂がある。かかるベルパール(商品名)は、重量平均分子量が5000以上の微粒子状フェノール樹脂であって、その分子内に、反応性を有するメチロール基を有するものであり、このベルパール(商品名)を、成形材料として用いると、ガス欠陥の少ない、機械的強度に優れた成形体が得られることが、知られている。
しかしながら、そのようなベルパール(商品名)を用いた成形材料にあっては、流動性が悪く、その成形性に問題を有するものであったため、成形材料の流動性を十分に確保しつつ、得られる成形体中におけるガス欠陥の発生を効果的に抑制し得るようなフェノール樹脂組成物の開発が、求められているのである。
特開平7−309995号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、成形材料の流動性を損なうことなく、その硬化時にガスの発生を低減せしめ、得られる成形体内部におけるガス欠陥の発生を効果的に抑制すると共に、かかる成形体が優れた機械的強度を発揮し得るフェノール樹脂からなる樹脂組成物、即ち、成形材料用熱硬化性樹脂組成物と、そのような成形材料用熱硬化性樹脂組成物を用いて得られる成形材料、並びに、かかる成形材料を硬化して得られる成形体を提供することにある。
そして、本発明者等が、成形材料に用いられるフェノール樹脂について鋭意検討を重ねた結果、成形材料用熱硬化性樹脂組成物として、異なる2種類のフェノール樹脂を併用することによって、上述の如き課題が悉く解決されることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、(A)重量平均分子量が4000以下のベンジリックエーテル型レゾールからなるフェノール樹脂と、(B)重量平均分子量が5000以上で、且つ煮沸メタノールへの溶解度が70重量%以上である熱硬化性のフェノール樹脂とを、必須の構成成分として含有することを特徴とする成形材料用熱硬化性樹脂組成物を、その要旨とするものである。
なお、そのような本発明に従う成形材料用熱硬化性樹脂組成物における好ましい態様の一つにおいては、前記フェノール樹脂(A)が、フェノール核結合官能基として、メチレン基、メチロール基及びジメチレンエーテル基を有し、且つ該メチロール基が10〜20モル%の割合において存在すると共に、前記ジメチレンエーテル基が40〜60モル%の割合において存在するものである。
また、本発明は、上述の如き成形材料用熱硬化性樹脂組成物と、補強繊維とを含有することを特徴とする成形材料、並びに、かかる成形材料を加熱硬化せしめてなる成形体をも、その要旨とするものである。
このように、本発明に従う成形材料用熱硬化性樹脂組成物にあっては、特性の異なる2種類のフェノール樹脂を必須の構成成分として含有するものであるところから、かかる樹脂組成物を用いて得られる成形材料は、成形に適した流動性が十分に確保され得るのである。
また、かかる成形材料を硬化して得られる成形体においては、ガス欠陥の発生が有利に抑制され得て、優れた機械的強度を発揮するものとなるのである。
ところで、本発明に従う成形材料用熱硬化性樹脂組成物を調製(製造)するに際しては、先ず、重量平均分子量が4000以下のベンジリックエーテル型レゾールからなるフェノール樹脂(フェノール樹脂(A))が、準備される。なお、フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算で算出することが出来る。
かかるフェノール樹脂(A)としては、その分子内にベンジリックエーテル結合を有する従来より公知のレゾール型フェノール樹脂の中から、その重量平均分子量が4000以下のものが適宜に選択されて、用いられることとなる。本発明においては、より有利には、フェノール核結合官能基として、メチレン基、メチロール基及びジメチレンエーテル基を有するベンジリックエーテル型レゾールであって、メチロール基が10〜20モル%の割合において存在すると共に、ジメチレンエーテル基が40〜60モル%の割合において存在するものが、用いられるのであり、そのようなベンジリックエーテル型レゾールとしては、例えば、旭有機材工業株式会社製のCP701KH(商品名)を挙げることが出来る。
なお、本発明において用いられるベンジリックエーテル型レゾールは、上述の如き重量平均分子量を有するものであれば、その製法を問わず、如何なるものであっても用いることが可能であるが、かかるベンジリックエーテル型レゾールを有利に製造し得る方法の一つとして、反応触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類とを、フェノール類の1モルに対して、アルデヒド類が、一般に、0.5〜3.0モルの割合となるようにして、付加・縮合反応せしめる方法を、例示することが出来る。
ここで、上記したフェノール類とアルデヒド類との付加・縮合反応の際に用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、従来からベンジリックエーテル型レゾールの製造に用いられている各種の触媒の中から、所望とするフェノール樹脂の平均分子量等に応じたものが、適宜に選択されて、用いられる。それら公知の触媒の中でも、例えば、スズ、鉛、亜鉛、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属元素を有する金属塩のうちの少なくとも1種が、反応触媒として好適に採用され得るのである。より具体的に、かかる金属塩としては、例えば、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、ホウ酸亜鉛、酸化鉛の他、このような金属塩を形成し得る酸と塩基の組合せ等が挙げられる。また、かかる金属塩を反応触媒として採用する場合に、その使用量としては、特に限定されるものではないものの、一般に、フェノール類の100質量部に対して、0.01〜5質量部となるような割合において、使用されることとなる。
そして、本発明に係る成形材料用熱硬化性樹脂組成物においては、上述したような、その重量平均分子量が所定以下のベンジリックエーテル型レゾールからなるフェノール樹脂(A)と、重量平均分子量が5000以上で、且つ煮沸メタノールへの溶解度が70重量%以上である熱硬化性のフェノール樹脂(フェノール樹脂(B))とが、必須の構成成分として配合せしめられるのである。このように、異なる2種類のフェノール樹脂を併用してなる本発明の成形材料用熱硬化性樹脂組成物にあっては、それを用いて成形材料を調製すると、得られた成形材料において十分な流動性が確保され得ることとなり、また、かかる成形材料の硬化時に樹脂組成物から発生するガス量も、極めて低量に抑えられることから、得られる成形体は、ガス欠陥の少ない、優れた機械的強度を発揮するものとなるのである。
なお、そのようなフェノール樹脂(B)としては、熱硬化性を有し、また、5000以上の重量平均分子量を有し、更に煮沸メタノールへの溶解度が70重量%以上のものであれば、その製法を問わず、如何なるものであっても使用することが可能であり、例えば、懸濁重合法によって製造された変性ノボラック型フェノール樹脂であって、その樹脂中に硬化剤が分散されてなるユニベックス(商品名、ユニチカ株式会社製)等を、挙げることが出来る。なお、本発明においては、煮沸メタノールへの溶解度を、50℃のテトラヒドロフランへの溶解度で代用することも可能である。
また、本発明においては、フェノール樹脂(B)として、機能性フェノール樹脂として広く知られているベルパール(商品名)を用いることも出来る。ここで、ベルパール(商品名)とは、鐘紡株式会社(現在はカネボウ株式会社)が開発した、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物からなる微粒子状のフェノール樹脂であって、1)GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が3000以上、また、特開平6−298888号公報に記載のH1 −NMRによる測定に基づく、2)フェノール核当量が110〜130、3)ベンゼン環1個当たりのメチレン結合の数が0.9〜1.2個、4)ベンゼン環1個当たりのヒドロキシメチル基の数が0.05〜0.20個のものである。このような構造的特徴を有するベルパール(商品名)は、特公昭62−30210号公報及び特公昭62−30211号公報にて開示されているように、反応系内の温度を所定温度以下に保った状態において、フェノール類を、塩酸と過剰のホルムアルデヒドとを含む塩酸−ホルムアルデヒド浴に接触させることにより、製造される。なお、かかるベルパール(商品名)に関する事業は、2005年3月1日付けにて、カネボウ株式会社からエア・ウォーター・ベルパール株式会社に事業譲渡されている。
そのようなベルパール(商品名)の中でも、本発明においては、重量平均分子量が5000以上で、且つ煮沸メタノールへの溶解度が70重量%以上のもの、具体的には、ベルパールS870、ベルパールS890、ベルパールS899(何れも商品名)が、有利に用いられる。
そして、上述の如きフェノール樹脂(A)と、フェノール樹脂(B)とを、従来の成形材料用熱硬化性樹脂組成物と同様に、所定の割合において配合し、均一となるように混合せしめることにより、本発明に従う成形材料用熱硬化性樹脂組成物が有利に得られるのである。
ここで、フェノール樹脂(A)とフェノール樹脂(B)との配合割合は、[フェノール樹脂(A)の質量]/[フェノール樹脂(B)の質量]が、5/95〜95/5の範囲内となるように、好ましくは25/75〜75/25の範囲内となるように、より好ましくは35/65〜60/40の範囲内となるように、設定される。本発明の樹脂組成物中のフェノール樹脂:100質量部におけるフェノール樹脂(A)の割合が5質量%未満、即ち、フェノール樹脂(B)の割合が95質量%を超えると、かかる樹脂組成物を用いて得られる成形材料の流動性が有利に確保されず、安定した機械的特性を発揮する成形体が得られないおそれがある一方、フェノール樹脂(A)の割合が95質量%を超える(フェノール樹脂(B)の割合が5質量%未満となる)と、そのような樹脂組成物よりなる成形材料を硬化せしめた場合、その硬化の際に発生するガス量が有利に低減されず、成形体内部において、微細なガス欠陥の発生を効果的に抑制することが困難となり、その結果、十分な機械的特性を発揮し得ない成形体が製造されるおそれがある。
そのような本発明に係る成形材料用熱硬化性樹脂組成物を用いて、成形材料を製造(調製)するに際しては、従来からの成形材料を製造する際と同様に、種々の目的の下、様々な添加剤が配合される。例えば、最終的に得られる成形体の加工性、機械的特性、耐衝撃性、耐久性等を更に向上せしめるためには、補強繊維を配合することが好ましい。
ここで、本発明において用いられる補強繊維としては、従来から成形材料に用いられているものであれば、特に限定されることなく、何れも用いることが可能である。具体的には、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、アラミド繊維(アラミドパルプを含む)、超高強力ポリエチレン繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、全芳香族ポリエステル繊維等を例示することが出来、中でも、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維やアラミド繊維(アラミドパルプを含む)が有利に用いられる。このような補強繊維は単独で用い得ることは勿論のこと、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。なお、このような補強繊維の配合量は、[補強繊維の質量]/[本発明に従う成形材料用熱硬化性樹脂組成物の質量]が、好ましくは80/20〜30/70となるような量的割合において、より好ましくは70/30〜40/60となるような量的割合において、配合されることとなる。
そして、本発明に従う成形材料用熱硬化性樹脂組成物を用いて、目的とする成形体を製造するに際しては、先ず、各種成形法に応じた成形材料が、従来の成形材料と同様の手法にて調製されることとなる。なお、成形材料を調製する前に、本発明に従う成形材料用熱硬化性樹脂組成物を予め混合し、調製しておく必要は必ずしもなく、上述したフェノール樹脂(A)及びフェノール樹脂(B)に、後述する各種添加剤等を配合することにより、樹脂組成物を調製することなく、直接的に成形材料を製造することも可能である。要するに、成形材料中のフェノール樹脂成分が、フェノール樹脂(A)及びフェノール樹脂(B)にて構成されていれば足りる趣旨である。
例えば、射出成形用成形材料の調製は、所定量のフェノール樹脂(A)及びフェノール樹脂(B)に、補強繊維や、必要に応じて、水酸化カルシウム等の硬化剤やステアリン酸カルシウム等の離型剤等を配合し、均一に混合した後、得られた混合物を、熱ロールにて加熱混練して、シート状とする。そして、かかるシート状とされた混練物を冷却せしめた後、パワーミル等で粉砕することにより、グラニュール状の成形材料が得られる。
また、湿式抄造法に用いられるシート状の成形材料は、先ず、離解叩解機(例えば、パルパー、リファイナー、ヘンシェルミキサー等)内に、所定量のフェノール樹脂(A)及びフェノール樹脂(B)、補強繊維、及び多量の水を投入し、高速攪拌混合することにより、混合物をスラリー化する。次いで、得られた混合物のスラリーを、攪拌翼付混合槽内に移し、粒子捕集剤を添加した後、低速攪拌混合して、フェノール樹脂濃度が0.01〜10%の抄造用スラリーとする。そして、この抄造用スラリーを原料として、例えば長網型や円筒型の連続式又はバッチ式抄造機により、所望寸法のシート状の湿潤成形材料を抄造した後、かかる湿潤成形材料に対して、濾過、減圧、圧搾等を施すことにより脱水し、脱水後の成形材料を乾燥装置(例えば、ドラム式乾燥機、誘電加熱乾燥機、遠赤外線乾燥機、熱風通気乾燥機等)にて乾燥することにより、シート状の成形材料が得られる。
そして、そのようにして得られた成形材料を用いて、各種成形法により、所望とする形状の成形体を製造すると、ガス欠陥の非常に少ない、優れた機械的強度を発揮する成形体が、得られるのである。
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。
なお、本実施例において、重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製ゲル濾過クロマトグラフSC−8020シリーズ・ビルドアップシステム(カラム:G2000HXL+G4000HXL、検出器:UV254nm、キャリヤ:テトラヒドロフラン1mL/分、カラム温度:38℃)を用いたGPC測定により、標準ポリスチレン換算の数値として求められたものである。
−実施例1−
ベンジリックエーテル型レゾール(BE型レゾール、旭有機材工業株式会社製、商品名:CP701KH、重量平均分子量:3100、平均粒径:20μm)、ベルパールS890(商品名、カネボウ株式会社製、重量平均分子量:10000、煮沸メタノールへの溶解度:95重量%、平均粒径:20μm)、ガラス繊維(日東紡績株式会社製)、硬化剤としての水酸化カルシウム、及び、離型剤としてのステアリン酸カルシウムを準備し、先ず、それらを、下記表1に掲げる配合割合にて配合し、各々を均一に混合した。次いで、得られた5種類の混合物を、それぞれ、熱ロールにて均一に加熱混練し、シート状の混合物を作製した。そして、かかるシート状の混合物を室温まで冷却した後、パワーミルにて粉砕することにより、5種類の成形材料(試料1〜試料5)を得た。このようにして得られた成形材料を用いて、以下の実験を行なった。
〔スパイラルフローの測定〕
得られた成形材料の流動性を評価すべく、以下の実験を行なった。即ち、得られた成形材料の50gを、スパイラル状の金型(金型温度:165℃)内に成形圧力:9.8MPaにて流し込み、かかる金型内に成形材料が流れ込んだ距離(mm)を5mm単位で測定した。この距離(mm)が長いほど、流動性が優れていることを示す。得られた結果を、下記表1に示す。
〔射出成形性の評価〕
得られた成形材料を、射出成形前のシリンダー温度:90℃、射出成形後のシリンダー温度:40℃、金型温度:175℃、硬化時間:60秒の条件にて射出成形することにより、JIS曲げ試験片(90mm×10mm×4mm)及びJISシャルピー衝撃試験片(90mm×15mm×15mm)を作製する際の射出成形性を、以下の評価基準に基づく官能試験で評価した。なお、下記表1中の○等の記号は、以下の基準を表わすものである。
[評価基準]
○:20shot以上、連続して成形可能であり、成形材料の充填性も良好。
△:成形は可能であるが、20shot以内で未充填が発生し、20shot以降で 成形不可。
×:成形不可。
〔射出成形時の臭気の評価〕
上記のようにしてJIS曲げ試験片及びJISシャルピー衝撃試験片を作製した際の臭気について、以下の評価方法及び評価基準に基づく官能試験で評価した。具体的には、各試験片を作製した際の臭気を、室温:20℃、相対湿度:60%の環境下において、15名の臭気パネラー(男性:10名、女性:5名)が、以下の基準に基づいて官能評価をし、得られた官能評価レベルの平均レベルによって評価した。なお、下記表1中の◎等の記号は、以下の基準を表わすものである。
[評価基準]
◎:臭気がほとんど感じられない。
○:臭気をやや感じるが、実用上支障はない。
△:やや強い臭気を感じる。
×:非常に強い臭気を感じる。
〔曲げ強さ及びシャルピー衝撃強度の測定〕
上記のようにして作製したJIS曲げ試験片及びJISシャルピー衝撃試験片を用いて、JIS−K−6911に準拠して、曲げ強さ(MPa)及びシャルピー衝撃強度(kJ/m2 )を測定した。なお、シャルピー衝撃強度の測定は、シャルピー衝撃試験機(東洋精機製作所製)を用いて行なった。得られた測定結果を、下記表1に示す。
〔アフターキュア(AC)後のガス欠陥の有無〕
JIS曲げ試験片及びJISシャルピー衝撃試験片を作製した際と同様の条件に従って、射出成形により作製された成形品(90mm×10mm×4mm)を、加熱器内に載置して、かかる加熱器内において、成形品を、1℃/分の昇温速度にて、成形品が180℃となるまで加熱し、180℃で4時間保持した後、加熱器内を徐冷して、成形品を取り出した。取り出した成形品の表面を目視して、以下の評価基準に基づいて、ガス欠陥の有無を確認した。その評価結果を、下記表1に示す。
[評価基準]
◎:ガス欠陥は認められない。
○:わずかなガス欠陥が認められる。
△:やや大きなガス欠陥が認められる。
×:非常に大きなガス欠陥が認められる。
Figure 0004942377
かかる表1の結果からも明らかなように、本発明に従う成形材料用熱硬化性樹脂組成物を用いた成形材料(試料1〜試料3)にあっては、流動性が良く、射出成形性に優れていると共に、それを用いて射出成形した際には、臭気がほとんど感じられず、更に、得られた成形体の機械的強度も優れていることが、認められた。一方、フェノール樹脂として、ベンジリックエーテル型レゾールのみを用いた成形材料(試料4)にあっては、射出成形の際にやや強い臭気が感じられ、一方、重量平均分子量が5000以上で、且つ煮沸メタノールへの溶解度が70重量%以上であるベルパールS890(商品名)のみを用いた成形材料(試料5)にあっては、射出成形性が劣っていることが、確認された。
−実施例2−
フェノール樹脂として、実施例1において用いたものに加えて、アンモニアレゾール(旭有機材工業株式会社製、重量平均分子量:3300、平均粒径:24μm)、及びベルパールS830、ベルパールS870、ベルパールS899、ベルパールR800(何れも商品名、カネボウ株式会社製)を準備し、その他の成分は、実施例1と同様のものを準備した。なお、各ベルパールの重量平均分子量及び煮沸メタノールへの溶解度(重量%)を、下記表2に示す。そして、実施例1と同様の手法に従って、6種類の成形材料(試料6〜試料11)を製造し、得られた成形材料を用いて、実施例1と同様の実験を行なった。その測定結果及び評価結果を、下記表2に示す。
Figure 0004942377
かかる表2の結果からも明らかなように、重量平均分子量が4000以下のベンジリックエーテル型レゾールと共に、重量平均分子量が5000以上で、且つ煮沸メタノールへの溶解度が70重量%以上のフェノール樹脂(ベルパールS870、ベルパールS890ベルパールS899)を用いてなる成形材料(試料6〜試料8)にあっては、その成形性及び射出成形性が優れていると共に、射出成形の際の臭気もほとんど認められず、更に、得られた成形体の機械的強度も優れていることが、認められた。これに対して、煮沸メタノールへの溶解度が70重量%未満のフェノール樹脂(ベルパールS830、ベルパールR800)を用いてなる成形材料(試料9及び試料10)においては、成形性及び射出成形性において問題があることが認められた。また、ベンジリックエーテル型レゾールに代えてアンモニアレゾールを用いた成形材料(試料11)にあっては、その成形時に非常に強い臭気が感じられた。
−実施例3−
実施例1及び実施例2で用いたベンジリックエーテル型レゾール、アンモニアレゾール、及びベルパールS890を、下記表3に掲げる配合割合にて配合し、サンプルミル(不二パウダル株式会社製)にて粉砕混合して、6種類のフェノール樹脂組成物(試料12〜試料17)を製造した。そして、得られた樹脂組成物の5gをアルミカップに取り、かかるアルミカップを180℃に熱せられた熱盤の上に載せ、アルミカップ中の樹脂組成物が硬化する際の臭気について、以下の評価方法及び評価基準に基づく官能試験で評価した。具体的には、室温:20℃、相対湿度:60%の環境下において、15名の臭気パネラー(男性:10名、女性:5名)が、以下の基準に基づいて官能評価をし、得られた官能評価レベルの平均レベルによって評価した。なお、下記表3中の◎等の記号は、以下の基準を表わすものである。
[評価基準]
◎:臭気がほとんど感じられない。
○:臭気をやや感じるが、実用上支障はない。
×:非常に強い臭気を感じる。
また、得られた6種類のフェノール樹脂組成物(試料12〜試料17)については、加熱時の質量減少率(%)を測定した。具体的には、秤量したPt容器内に、秤量したフェノール樹脂組成物を収容せしめ、TG−DTAを用いて、含酸素気流下で、かかるPt容器を、室温から100℃まで、30℃/minの昇温速度にて昇温し、100℃で10分間保持後、引き続き200℃まで30℃/minの昇温速度にて昇温し、200℃で10分間保持した時の、室温から100℃×10分間保持後までの重量減少率(%)と、100℃×10分保持後から200℃×10分保持後までの重量減少率(%)とを求め、下記数式1より、算出した。この数値が0に近いときは、硬化の際に発生するガス量が少ないことを意味する。
Figure 0004942377
Figure 0004942377
かかる表3の結果からも明らかなように、本発明の成形材料用熱硬化性樹脂組成物(試料13〜試料15)にあっては、その硬化の際に、それほど強い臭気は感じられず、発生するガス量もさほど多くないことが認められた。これに対して、ベンジリックエーテル型レゾールのみからなる樹脂組成物(試料12)は、硬化の際に発生するガス量が多く、強い臭気が感じられたのであり、また、アンモニアレゾールを用いた樹脂組成物(試料17)は、発生するガス量はさほど多くはないものの、強い臭気が感じられたのである。
−実施例4−
実施例1と同様のベンジリックエーテル型レゾール及びベルパールS890と、アラミド繊維(帝人株式会社製、パラアミド、繊維長:3mm)、並びに高分子凝集剤を準備した。それらを、各々、下記表4に掲げる量において用いることにより、5種類の抄造材料を作製した。
具体的には、先ず、ヘンシェルミキサー内に、アラミド繊維:50質量部、所定割合のベンジリックエーテル型レゾール及び/又はベルパールS890を仕込み、更に、適量の水を加えて高速攪拌混合することにより、アラミド樹脂とレゾール等との混合物の濃度が1質量%とされたスラリーを得た。次いで、得られたスラリーに高分子凝集剤を添加して、その全量を標準角型シートマシン(東洋精機製作所製)に投入し、濾過の後、圧搾脱水を行なうことにより、シート状の湿潤抄造材料を得た。そして、得られた湿潤抄造材料を、50℃の熱風循環乾燥機内で乾燥することにより、シート状の抄造材料を製造した。このようにして得られた抄造材料を用いて、以下の実験を行なった。
〔圧縮成形性の評価〕
得られた抄造材料を、180℃に加熱された金型内に充填し、圧縮成形機を用いて、成形圧力:200kgf/cm2 、成形時間:10分間の条件にて圧縮して、厚さが2mmの成形体を得る際の圧縮成形性を、以下の評価方法及び評価基準に基づく官能試験で評価した。具体的には、成形品のカスレ、ムラ、フクレの有無を目視にて確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
良好:外観上、特に問題は認められない。
ガス欠陥:外観にフクレが認められる。
充填性悪い:成形品表面に、カスレ、ムラが認められる。
〔圧縮成形時の臭気の評価〕
上記のようにして(圧縮)成形体を作製した際の臭気について、以下の評価方法及び評価基準に基づく官能試験で評価した。具体的には、成形体を作製した際の臭気を、室温:20℃、相対湿度:60%の環境下において、15名の臭気パネラー(男性:10名、女性:5名)が、以下の基準に基づいて官能評価し、得られた官能評価レベルの平均レベルによって評価した。なお、下記表4中の◎等の記号は、以下の基準を表わすものである。
[評価基準]
◎:臭気がほとんど感じられない。
○:臭気をやや感じるが、実用上支障はない。
△:やや強い臭気を感じる。
×:非常に強い臭気を感じる。
〔曲げ強さ、引張り強度及びシャルピー衝撃強度の測定〕
上記のようにして作製した成形体から、JIS曲げ試験片、JIS引張り試験片(70mm×10mm×3mm)、及びノッチの無いJISシャルピー衝撃試験片を切り出して、かかる試験片について、JIS−K−6911に準拠して、曲げ強さ(MPa)、引張り強度(MPa)、及びシャルピー衝撃強度(kJ/m2 )を測定した。その測定結果を、下記表4に示す。
Figure 0004942377
かかる表4の結果からも明らかなように、本発明の成形材料用熱硬化性樹脂組成物を用いた抄造材料(試料18〜試料20)にあっては、圧縮性が良く、また、圧縮成形時の臭気もほとんど感じられず、更に、得られた成形体の機械的強度も優れていることが、認められた。一方、フェノール樹脂として、ベンジリックエーテル型レゾールのみを用いた抄造材料(試料21)は、圧縮成形の際に強い臭気が感じられ、また、その成形性も悪く、一方、ベルパールS890(商品名)のみを用いた抄造材料(試料22)は、成形性の点において劣っていることが、確認されたのである。

Claims (4)

  1. (A)重量平均分子量が4000以下のベンジリックエーテル型レゾールからなるフェノール樹脂と、(B)重量平均分子量が5000以上で、且つ煮沸エタノールへの溶解度が70重量%以上である熱硬化性のフェノール樹脂とを、必須の構成成分として含有することを特徴とする成形材料用熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記フェノール樹脂(A)が、フェノール核結合官能基として、メチレン基、メチロール基及びジメチレンエーテル基を有し、且つ該メチロール基が10〜20モル%の割合において存在すると共に、前記ジメチレンエーテル基が40〜60モル%の割合において存在するものであることを特徴とする請求項1に記載の成形材料用熱硬化性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の成形材料用熱硬化性樹脂組成物と、補強繊維とを含有することを特徴とする成形材料。
  4. 請求項3に記載の成形材料を加熱硬化せしめてなる成形体。
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