JP4939726B2 - 高シス−1,4結合含有量を有するポリイソプレンを得る方法 - Google Patents
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Description
(発明の分野)
本発明は、イソプレンの濃縮された水蒸気分解C5ナフサ溜分から、高シス1,4−結合含有量を有するポリイソプレンを得る方法に関する。
(発明の背景)
水蒸気分解のC5ナフサ溜分は通常イソプレンを実質的に10%〜30%の質量分率で含む。更に、これらは、特に、次の化合物を含む:
−20%〜40%の質量分率のモノオレフィン(α−オレフィン及びβ−オレフィン)、
−20%〜30%のシクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン(又は、ピペリレンとも言う)及びその他のペンタジエン、
−アルカン類、
−リモネン(イソプレンの二量体)及び、少量の
−アセチレン及び芳香族化合物。
【0002】
その様な水蒸気分解C5ナフサ溜分から高活性でイソプレンの選択的重合を行う事ができる様にする為には、C5ナフサ溜分は、第一に、濃縮された溜分中のイソプレンの質量分率が100%に近い様にイソプレンが濃縮されなければならない。実際に、前述のその他の化合物はイソプレンの重合反応の場に悪影響を及ぼす。特に、この濃縮された溜分は、実質的に、触媒系にとって触媒毒であるシクロペンタジエンの無いものでなければならない。
従来の方法では、水蒸気分解のC5ナフサ溜分のイソプレンの濃縮は次の操作を実施する事によって達成される。
先ず初めに、分別又は抽出蒸留(極性溶媒を使用する)が行われ、次いで、無水マレイン酸での蒸留によって、初期溜分から実質的にシクロペンタジエンを除去する。その後、例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライド上で蒸留を行い、その溜分のアセチレン化合物の全てを実質的に除去する。最後に、残留極性不純物が、例えば、アルミナ上を通して除去される。
【0003】
公知の通り、高シス1,4−結合含有量を有するポリイソプレンは、四塩化チタンとアルキルアルミニウムを基本とした触媒系を使用して得られる。シェーンベルク、マーシュ、ウォルター及びサルマン等の論文(E. Schoenberg, H.A. Marsh, S.J. Walters, W.M. Salman, Rubber Chemistry Technology, 1979, vol. 52, pp. 564-565)は、この触媒系をイソプレンの重合に使用する場合、水蒸気分解のC5ナフサ溜分は、少なくとも97%のイソプレンの質量分率を含む様にする為に前以って濃縮して置かなければならない事を指摘している。
更に正確には、この論文は濃縮溜分中のモノオレフィンの質量分率は多くても3.8%(この内、α−オレフィンは多くて1%であり、β−オレフィンは多くて2.8%)でなければならない事を教示している。更に、シクロペンタジエンの質量分率は多くて1ppm(ppm;百万当たりの部)、ピペリレンの質量分率は多くて80ppm、そしてアセチレン化合物の質量分率は多くて50ppmでなければならない。
【0004】
又、公知の通り、高シス−1,4結合含有量を有するポリイソプレンは、
−炭化水素溶媒の溶液中の希土類金属塩、
−アルキルアルミニウムから成る、この塩のアルキル化剤、及び、
−ハロゲン化アルキルアルミニウム
を基本とした触媒系を使用して得られる。
例えば、「USSRの科学アカデミー報告」("Report of the Academy of Sciences of the USSR, volume 234, no. 5, 1977 (Y.B. Monakov, Y.R. Bieshev, A.A. Berg, S.R. Rafikov)")の文献から、
−希土類金属としてネオジミウム又はプラセオジムのビス(2−エチルヘキシル)燐酸塩のトルエン溶液、
−アルキル化剤としてトリイソブチルアルミニウム(アルキル化剤:希土類金属塩のモル比が20)、及び
−ハロゲン化アルキルアルミニウムとしてジエチルアルミニウムクロライド、を含む触媒系を使用することは公知である。
【0005】
チタンを基本とした触媒系の場合は、高活性でのイソプレンの選択的重合は、100%に近い質量分率でイソプレンを含む様に濃縮されたC5溜分からのみしか考えられない。
実質的に純粋なイソプレンのC5溜分からのこの抽出は、複雑な分離工程の実施を必要とする欠点を有し、従って、イソプレンの重合の為に比較的高い運転コストを含む欠点を有する。
(発明の開示)
本発明の目的は、この欠点を解消する事であり、この目的は、本発明者が、少なくとも、
−共役ジエンモノマー、
−一種以上の希土類金属(メンデレーエフの周期律表の57〜71の原子番号を持つ金属)の有機燐酸塩、
−式:AlR3又はHAlR2のアルキルアルミニウムから成るアルキル化剤、及び
−アルキルアルミニウムハライドから成るハロゲン供与体を基本とした触媒系であって、前記塩が、前記触媒系中に含まれる脂肪族または脂環式タイプの少なくとも一種の不活性飽和炭化水素溶媒に懸濁していて、アルキル化剤/希土類金属の有機燐酸塩のモル比が1〜5の範囲である触媒系が、30%と言う低いイソプレンの質量分率を含む、イソプレンを僅かに濃縮しただけの水蒸気分解のC5溜分から、高シス−1,4結合含有量を有するポリイソプレンを得る為に、高い触媒活性でイソプレンの選択的重合を可能とする事を予想外に発見した事によって達成される。
【0006】
イソプレンが僅かに濃縮されているに過ぎないこのC5溜分は、順番に、
−イソプレン以外のジエン、特にシクロペンタジエンの大部分を実質的に除去する為の単一又は抽出蒸留、
−残留シクロペンタジエンを実質的に除去する為の無水マレイン酸上での蒸留、
−ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DiBAH)での蒸留によるビニルアセチレン化合物(残留の「真」のアルキン類)の除去、及び
−残留極性不純物を除去する為にアルミナ又はモレキュラーシーブに通す事、から成る単純な濃縮工程を実施する事によって得ても良い。
【0007】
本発明の様々な実施態様によれば、イソプレンが僅かに濃縮されているに過ぎないこのC5溜分は、又、順番に、
−イソプレン以外のジエン、特にシクロペンタジエンの大部分を実質的に除去する為の前述の単一又は抽出蒸留、
−選択的触媒水素化反応によるビニルアセチレン化合物(残留の「真」のアルキン類)の除去、及び
−残留極性不純物を除去する為にアルミナ又はモレキュラーシーブに通す事、から成る単純な濃縮工程を実施する事によって得ても良い。
【0008】
高収率のこの選択的重合は、イソプレンが更に濃縮されているC5溜分、即ち、C5溜分中のイソプレンの質量分率が30%より多く、好ましくは30%〜70%の範囲内にあるC5溜分から生起する。勿論、イソプレンのこの質量分率は、例えば、95%に達する高い値を採用しても良い。
このC5溜分の精製操作を単純化することの実現性は、ポリイソプレンを得る為の全コストを実質的に低下させる可能性を生む事となる。
本発明のその他の有利な特徴によれば、この濃縮されたC5溜分は、脂肪族及び脂環式モノオレフィンを含み、脂肪族及び脂環式モノオレフィン:イソプレンの質量比が50%以下、例えば、4%〜50%、好ましくは20%〜50%である。
本発明のその他の有利な特徴によれば、この濃縮されたC5溜分は、モノオレフィンとしてα−オレフィンとβ−オレフィンを含み、α−オレフィン:イソプレンの質量比が30%以下、例えば、1%〜30%であり、β−オレフィン:イソプレンの質量比が20%以下、例えば、3%〜20%である。
【0009】
前記の濃縮されたC5溜分は、更に、
−1,3−ペンタジエンを、1,3−ペンタジエン:イソプレンの質量比が0.5%、例えば、0.01%〜0.5%で、
−二置換アルキン類を、二置換アルキン類:イソプレンの質量比が0.7%以下、例えば、0.01%〜0.7%で、
−ビニルアセチレン化合物(「真」のアルキン類とも言う)を、ビニルアセチレン:イソプレンの質量比が15ppm(百万当たりの部)、例えば、1ppm〜15ppmで、
−1,4−ペンタジエンを、1,4−ペンタジエン:イソプレンの質量比が0.2%以下、例えば、1ppm〜2000ppmで、
−シクロペンタジエンを、シクロペンタジエン:イソプレンの質量比が5ppm以下、例えば、1ppm〜5ppmで、そして
−リモネンを、リモネン:イソプレンの質量比が2%以下、例えば、0.1%〜2%で、含む。
【0010】
本発明の濃縮C5溜分中のイソプレン以外の成分は、この溜分中に、イソプレンの重合の為に公知の方法でイソプレンの濃縮されたC5溜分、例えば、シェーンベルク、マーシュ、ウォルター及びサルマン等の前述の論文(E. Schoenberg, H.A. Marsh, S.J. Walters, W.M. Salman, Rubber Chemistry Technology, 1979, vol. 52, p. 565)で特徴付けられる濃縮C5溜分の同じ成分の質量分率よりも非常に高い質量分率で存在しても、高触媒活性でイソプレンの選択的重合を可能とし、高シス−1,4結合含有量を有するポリイソプレンが得られる。
又、この様にして得られたポリイソプレンは高粘度を有する。
有利な事に、この触媒系及びイソプレンの濃縮されたC5溜分を用いて得られるポリイソプレンは、炭素−13核磁気共鳴及び中波赤外線分析によって測定して98.0%〜99.6%の範囲内にあるシス1,4結合含有量を有する。
【0011】
重合操作が25℃〜55℃の温度で行われる時は、本発明の触媒系を用いて得られるポリイソプレンは、これらの方法のいずれかの方法によって測定して、98.0%〜98.5%の範囲内にあるシス−1,4結合含有量を有する。
有利な事に、重合操作が5℃以下で行われる時は、前記触媒系を用いて得られるポリイソプレンは、炭素−13核磁気共鳴及び中波赤外線分析によって測定して99.0%〜99.6%の範囲内にあるシス1,4結合含有量を有する。
その様な低温重合操作は、不活性炭化水素溶媒中で又は溶媒無しで行う事ができる。
【0012】
更に正確には、この触媒系は、−55℃〜−20℃の重合温度において、前述の方法のいずれかの方法によって測定して、99.3%〜99.6%の範囲にあるシス1,4結合含有量を有するポリイソプレンを得る事を可能とする。
特に有利な事には、この触媒系は、−55℃〜−45℃の重合温度で、前述の方法のいずれかの方法で測定して99.6%に等しいシス−1,4結合含有量を有するポリイソプレンを得る事を可能とする。
天然ゴムを特徴付けている100%の値に近いシス−1,4結合含有量のこれらの値は、現在まで実際に達成されていなかった。
又、シス−1,4結合含有量の前述の値は、13C−NMR分析の範囲内で行われるポリイソプレンのサンプルの較正後の中波赤外線放射分析方法及び13C−NMR分析方法を用いて確立された測定を考慮に入れて、これらの方法の一つによって得られる測定は今一つの方法によって確認される(+/−0.1%の測定の不確実性は無視する。これはこれら二つの方法のそれぞれにおいて固有のものである)。従って、シス−1,4結合含有量のこれらの値の精度は、現在までの従来開示されている含有量の値の精度と比べて増加する。
【0013】
更に、本発明のポリイソプレンに対して得られる特に高いシス−1,4結合含有量は使用される触媒系の量には無関係である。
本発明の触媒系は、現在まで使用されていた20以上のモル比に比較して極端に低いアルキル化剤:希土類金属の有機燐酸塩のモル比によって特徴付けられ、これは、驚くべき事に、本発明のこれらの触媒系の活性を顕著に増加させる事を可能とする。
好ましくは、本発明の触媒系は、アルキル化剤:希土類金属の有機燐酸塩のモル比が1〜2の範囲の値を有するものである。
【0014】
本発明の触媒系を「予備成形」する為に使用できる好ましい共役ジエンモノマーとしては1,3−ブタジエンが挙げられる。
又、2−メチル−1,3−ブタジエン(又はイソプレン)、2,3−ジ(C1〜C5アルキル)−1,3−ブタジエン、例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、又は4〜8個の炭素原子を有するその他の共役ジエンが挙げられる。
モノマー:希土類金属の有機燐酸塩のモル比は25〜50の値を有しても良い。
【0015】
本発明のその他の特徴によれば、前記の希土類金属の有機燐酸塩は、周囲温度において僅かに凝集傾向を持つ非吸湿性粉末から成る。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記の希土類金属の有機燐酸塩が懸濁している不活性炭化水素溶媒は、低分子量の脂肪族又は脂環式溶媒、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン又はこれらの溶媒の混合物である。
本発明のその他の実施態様によれば、希土類金属の有機燐酸塩を懸濁する為に使用される溶媒は、パラフィン油、例えば、ペテロラタム油を含む高分子量の脂肪族溶媒と、上述の様な低分子量の溶媒(例えば、メチルシクロヘキサン)との混合物である。
【0016】
この懸濁液は、このパラフィン油中で、希土類金属の有機燐酸塩の極めて微細且つ均質な懸濁液を得る為の希土類金属の有機燐酸塩の分散的粉砕によって造られる。
本発明のその他の特徴によれば、前記の触媒系は、0.02モル/lに等しい或いは実質的に等しい濃度の希土類金属を含む。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記希土類金属のトリス[ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート]塩が塩として使用される。
【0017】
更に好ましくは、前記希土類金属塩は、ネオジミウムトリス[ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート]である。
本発明の触媒系で使用できるアルキル化剤としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、例えば、トリイソブチルアルミニウム又はジアルキルアルミニウムハイドライド、例えば、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが挙げられる。このアルキル化剤は、好ましくはジイソブチルアルミニウムハイドライド(後の記述においてはDiBAHとして参照される)で形成される。
本発明の触媒系で使用できるハロゲン供与体としては、アルキルアルミニウムハライド、好ましくはジエチルアルミニウムクロライド(後の記述においてはDEACとして参照される)が挙げられる。
【0018】
ハロゲン供与体:希土類金属の有機燐酸塩のモル比は2.6から3の値を有しても良い。
本発明によれば、前記触媒系を製造する為の方法は、
−前記溶媒中で前記希土類金属の有機燐酸塩の懸濁液を調製する第一工程、
−該懸濁液に前記共役ジエンモノマーを添加する第二工程、
−前記モノマーを含む懸濁液に前記アルキル化剤を添加してアルキル化塩を得る第三工程、及び、
−前記ハロゲン供与体を該アルキル化塩に添加する第四工程から成る。
【0019】
本発明の前述の特徴及びその他の特徴は、例示の為であって限定の為ではない本発明の実施態様の幾つかの実施例についての以下の記述を読む事によって良く理解されるであろう。
以下の実施例のそれぞれには、水蒸気分解C5溜分(イソプレンの濃縮がされていない溜分)が最初に使用され、その組成は次の通りである。
イソプレン 24%
アルカン類 14%
モノオレフィン 36%
(その内、
α−オレフィン 17%
β−オレフィン 19%)
アセチレン 1%
芳香族類 2%
ジエン類 23%
(その内、
1,4−ブタジエン 3%
ピペリレン 11%
シクロペンタジエン 8%
その他のジエン類 1%)
【0020】
【実施例】
実施例1
イソプレンの濃縮された第一のC5溜分からポリイソプレンの合成
I.本発明によるイソプレンの濃縮された第一のC5溜分の取得
初期C5溜分を、イソプレンの濃縮の一連の工程に掛けて、イソプレンの質量分率が62%の濃縮C5溜分を得た。
第一の濃縮工程では、50段のカラムでこの初期C5溜分の単純蒸留が行われ、この溜分中のシクロペンタジエンの質量分率が600ppmまで減少された。
【0021】
第二の濃縮工程では、前記第一工程で得られた溜分の無水マレイン酸上での蒸留が、無水マレイン酸:シクロペンタジエンのモル比を30として行われ、この溜分中のシクロペンタジエンの質量分率が5ppm未満まで減少された。更に、この溜分中に残留する「真」のアルキン類(ビニルアセチレン)の質量分率が750ppmまで減少された。
第三の濃縮工程では、前記第二工程で得られた溜分の蒸留がジイソブチルアルミニウム(DiBAH)上で行われ、ビニルアセチレンの質量分率がこの溜分中において10ppmまで減少された。この蒸留の為に、DiBAH:ビニルアセチレンのモル比40が使用された。
【0022】
第四の濃縮工程では、この様にして得られた溜分がアルミナ上に通され、残留極性化合物の全てが実質的に除去された。
これら4つの工程によって得られた濃縮C5溜分の組成を気相クロマトグラフィー(GPC、付録3参照)による分析で決定した(この溜分中の成分の質量分率として表示される)。
1−ペンテン 3%
2−メチル−1−ブテン 8%
ペンタン 21%
イソプレン 62%
その他 3%
2−ペンテン 3%
モノオレフィン:イソプレンの相対的質量比は、実施態様のこの実施例では実質的に22.6%であった。
α−オレフィン:イソプレン及びβ−オレフィン:イソプレンの相対的質量比に関しては、それらは、それぞれ実質的に17.7%と4.8%であった。
【0023】
II.イソプレンの重合の為の本発明の実施態様の第一実施例による触媒系1の調製:
1)この触媒系1の調製の為のネオジミウム有機燐酸塩の合成
a)ネオジミウムNdCl 3 ・6H 2 Oの水溶液の合成:
96gのNd2O3(ローディア社から市販されている)(錯体化分析によって85.3%(理論量85.7%)のNd又は0.57モルのNdを有することが確定されている)を背の高い600mlのビーカーに秤量して入れた。
【0024】
80mlの脱塩水を添加し、ヒュームフードの下で、磁気攪拌機で攪拌しながら、そこに36質量%濃度の濃塩酸(d=1.18)150ml、即ち、1.75モルの塩酸(HCl/Ndのモル比=1.75/0.57=3.07)を周囲温度でゆっくりと添加した。反応、
Nd2O3+6HCl+9H2O → 2NdCl3・6H2O
はかなりの発熱反応であった。
全ての塩酸が添加されたら、溶液を磁気攪拌しながら沸騰するまで持って行き、過剰の塩酸を除去した。NdCl3の水溶液は透明でモーブ色であった。不溶解生成物(Nd2O3)は残らなかった。
【0025】
この溶液を、次いで、ビーカー中で凡そ130mlの容量迄蒸発させた。NdCl3・6H2Oの溶液を、次いで更に濃縮した(溶液は周囲温度で結晶化する)。
次いで、NdCl3の濃縮溶液を、馬蹄形攪拌機付のモーターを使用して攪拌しながら、周囲温度で、4500mlの脱塩水を含む10リットルのドラムに注ぎ入れた。
溶液のpHは、25℃で測定してほぼ4であった。
次いで、1500mlの工業品アセトンを溶液に添加した。不溶解生成物は残らず、この様にして得られた溶液はピンク色であった。
【0026】
b)式:[RO] 2 P(O)ONa(R=2−エチルヘキシル)の有機ナトリウム燐酸塩の合成
フレーク状のNaOH68g、又は、1.70モルを、1500mlの脱塩水を含む5リットルのビーカーに溶解した。554gの有機燐酸(ビス(2−エチルヘキシル)燐酸、「アルドリッチ社」のカタログで、23,782−5として表示されている)、即ち、1.72モルのこの酸を、500mlのアセトンを含む別の3リットルのビーカーに溶解した。NaOH:有機燐酸のモル比は、1.70:1.72、即ち0.99であった。
【0027】
前記の有機燐酸の溶液を周囲温度で、ガラス攪拌機を使用して手で攪拌しながらNaOH溶液に注ぎ入れた。反応は次の通りである。
[RO]2P(O)OH+NaOH→[RO]2P(O)ONa+H2O
この反応は僅かに発熱であり、黄色の均質な溶液が得られた。溶液のpHは、25℃で測定してほぼ7であった。
【0028】
c)式:[[RO] 2 P(O)O] 3 Ndの燐酸ネオジミウム塩の合成
周囲温度で馬蹄形攪拌機付のモーターを使用して激しく攪拌しながら、上記セクションb)で得られた有機ナトリウムホスフェート塩を、上記セクションa)で得られたNdCl3・6H2Oの水溶液に注ぎ入れた。
非常に細かい白色沈殿物を直ちに形成した。得られた混合物の攪拌を30分間続け、今一度全ての有機ナトリウムホスフェートが添加された(モル比(RO)2P(O)ONa:NdCl3=1.70:0.57=2.98で)。反応は次の通りである。
3[RO]2P(O)ONa+NdCl3・6H2O →
Nd[OP(O)[OR]2]3+3NaCl+6H2O
【0029】
得られた燐酸ネオジミウム塩は回収され、「靴下」(sock)を備えた遠心分離機中で洗浄された。
母液のpHは、25℃で3〜4であった。母液は無色透明であった。
得られた塩を二つのサンプルに分け、次いで、それぞれのサンプルを、アセトン/脱塩水混合物で、以下に記述される洗浄サイクルを三回実施する事によって、全ての塩化物を除去した。
それぞれの洗浄サイクルは、初めに2リットルのアセトンを含む10リットルのプラスチック製バケット中で行われた。それぞれのサンプルは、次いで、"Ultra-Turrax"ホモジナイザーを用いて、凡そ1分間、アセトンと共に均質化されてミルク状の溶液とされた。
【0030】
次いで、4リットルの脱塩水をバケットに加え、得られた混合物を同じホモジナイザーを使用して3分間にわたり均質化した。
得られた混合物は遠心分離に掛けられ、燐酸ネオジミウム塩が「靴下」中で回収された。
最後の洗浄水に対する塩化物の定量分析テストは殆ど陰性であった(この反応は次の通りである:NaCl+AgNO3(HNO3媒体)→AgCl↓+NaNO3)。
【0031】
この様に洗浄されたネオジミウム塩は、オーブン中で60℃で、真空下で、空気流を伴って凡そ80時間乾燥された。
実施されたそれぞれの合成テストの最終収率は、洗浄操作による損失によって95%〜98%であった。それぞれの場合で、凡そ600gの乾燥燐酸ネオジミウム塩が得られた。
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)での錯滴定の逆滴定及び誘導結合プラズマ原子発光分光測定(略して「ICP−AES」)の両方で決められたネオジミウムの質量含有量は、実質的に12.5%〜12.8%であった(理論含有量τは13.01%(ここで、τ=[144.24/1108.50]x100、ここで、144.24g/mol=ネオジミウムのモル質量))。
【0032】
これら二つの方法のそれぞれに対して、ネオジミウム含有量測定は、砂浴中で或いは開放系で、或いは、閉鎖系のマイクロウエーブオーブン中における塩の湿潤酸ミネラル化後に行われた。
EDTAでの錯滴定の逆滴定は、ネオジミウムと過剰のEDTA(エチレンジアミン四酢酸)(過剰のEDTAは、pH=4.6で硫酸亜鉛で決められる)との錯化による逆滴定を含む。
当量点の光度検出には着色指示薬が使用された。
誘導結合プラズマ原子発光分光測定は、プラズマ中で励起状態にまで上昇された原子によって発光された放射線の観察を基本とした元素分析方法である。
【0033】
ネオジミウムの分析に使用される発光放射線は406.109nmと401.225nmの波長に相当する。
この分光分析方法は、既知のネオジミウム含有量を有する「対照」ネオジミウム塩でこの系を前以って較正することによって行われる。
以下の表は、これら二つの方法を用いて得られたNd含有量を示すものである(それぞれの塩のサンプルについて行われたテストの数は括弧の中で示される)。
【0034】
【表1】
【0035】
二つの方法によって得られた結果は比較できるものである(相対偏差<4%)。
2)触媒系1の合成:
a)この触媒系1の組成:
触媒系1は、上記セクション1)で合成された燐酸ネオジミウム塩を含み、(メチルシクロヘキサン(以後「MCH]と略称される)から成る)低分子量の不活性炭化水素溶媒に懸濁されている。
これらの触媒系1は、ネオジミウム塩に関して、次の相対モル比によって特徴付けられる。
Nd塩:ブタジエン(以後「Bd」):DiBAH:DEAC=1:25:1.8:2.6。
【0036】
b)この触媒系1を合成する為の工程:
第一工程:
この触媒系1を得る為に、粉末状のネオジミウム塩15.6gが、前以って不純物が除去されている1リットルの反応器に注ぎ込まれた。この塩は、次いで、反応器の底部からの窒素バブリングに15分間掛けられた。
第二工程:
溶媒として使用されたメチルシクロヘキサンの90%(質量分率)がネオジミウム塩を含む反応器に導入された。
【0037】
ネオジミウム塩とメチルシクロヘキサンの接触時間は30分で、接触温度は30℃であった。
第三工程:
次いで、触媒系を予備成形する為に、ブタジエンが、30℃の温度で、反応器に導入された(上記セクションa)で述べられた、1:25の塩:ブタジエンのモル比で)。
【0038】
第四工程:
次いで、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DiBAH)が、凡そ1Mの濃度で、ネオジミウム塩に対するアルキル化剤として、前記溶媒の全量の5%の質量分率に相当するメチルシクロヘキサンの量と一緒に反応器に導入された。アルキル化の時間は15分であり、アルキル化反応の温度は30℃であった。
第五工程:
次いで、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)が、凡そ1Mの濃度で、ハロゲン供与体として、この溶媒の全量の5%の残りの質量分率に相当するメチルシクロヘキサンの量と一緒に反応器に導入された。反応媒体の温度は60℃に調整された。
【0039】
第六工程:
この様にして得られた混合物の「予備成形」(又は熟成)は、2時間の間、60℃のこの温度を維持して行われた。
第七工程:
この方法において、凡そ700mlの触媒系1の溶液が得られた。反応器を空にしてこの溶液を、前以って洗浄、乾燥及び窒素バブリングに掛けられた750mlのスタイニーボトルに移した。
最後に、触媒溶液は、−15℃の温度でフリーザー中で窒素雰囲気下で貯蔵された。
【0040】
III.この第一実施例による濃縮C5溜分から、触媒系1の使用によるポリイソプレンの製造:
重合反応器は250mlのスタイニーボトルであり、イソプレンを10g含み、ボトルの密閉は、シリンジを使用して触媒系1の注入ができる「隔壁/無蓋シール」アセンブリーによって確保された。
イソプレンの重合は、シクロヘキサン中で、50℃で、不活性雰囲気(窒素)中で、このボトルを貯水槽中で攪拌しながら行われた。
一つは、上記セクションIでの濃縮C5溜分から、今一つは、実質的に純粋なイソプレン(「対照」のポリイソプレン)からポリイソプレンを製造する為に幾つかの重合テストが行われた。
【0041】
この実質的に純粋なイソプレンは、実験室において、
−無水マレイン酸上で最初のC5溜分を蒸留して残さのシクロペンタジエンを除去し、
−次いで、アルミナのカラムに通して極性不純物を除去し、そして、
−重合反応の直前に、20分間窒素バブリングする事によって、水蒸気分解C5ナフサ溜分から普通に抽出された。
【0042】
このC5溜分から抽出されたイソプレンの質量分率は気相クロマトグラフィー(GPC、付録3参照)で確定され、99.2%であった。
ネオジミウム触媒ベースの一定量が使用された(モノマー100g当たり凡そ300μモル、μMcmで表示される量)。
【0043】
テストは、S:M(溶媒:モノマー)の質量比を9として行われ、重合媒体中のイソプレンの質量分率は25%であった。
重合反応停止剤として、アセチルアセトンが使用され(シクロヘキサン中の1M濃度のアセチルアセトン溶液の1ml)、保護剤としてN−1,3−ジメチルブチル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPDと略称)が使用された(0.02gの質量に相当する、シクロヘキサン中の20g/lの濃度で1mlの容量で)。
【0044】
次いで、カルシウムタモレート(2mlのタモールと30g/lのCaCl2の50mlを使用する)の存在下で、30分間の水蒸気ストリッピングで得られたそれぞれの重合体溶液からポリイソプレンを抽出した。次いで、それぞれの抽出溶液を、凡そ18時間、60℃のオーブン中で、真空下で(200mmHgの圧力で)、穏やかな窒素気流の下で乾燥した。
【0045】
反応時間の関数としてのイソプレンのポリイソプレンへの転化率が、それぞれのテストの重合動力学を述べる為に測定された。
25℃で測定された、トルエン中で0.1g/dlの固有粘度は、得られたそれぞれのポリイソプレンのマクロ構造を特徴付けた。
以下の表Iはそれぞれの重合テストで得られた結果を示す。
【0046】
【表2】
表 I
【0047】
これらの結果は、本発明の触媒系1が、実質的に純粋なイソプレン(対照)の重合での反応速度と同じ反応速度で、イソプレンが62%に濃縮された水蒸気分解C5ナフサ溜分からイソプレンの選択的重合を可能とする事を示す。
更に、62%に濃縮された前記C5溜分から50℃の温度で製造されたポリイソプレンは、「対照」ポリイソプレンと同様に、全てが、13C−NMR方法とMIR方法で測定して(付録1参照)、98.0%に等しい同じシス−1,4結合含有量を有する。
得られたポリイソプレンは、2.1〜2.3で変動する、特に低い多分子指数(polymolecularity indices)(SEC測定方法の為の添付の付録2を参照)を有する。
【0048】
実施例2
イソプレンの濃縮された第二のC5溜分からポリイソプレンの合成
1.本発明によるイソプレンの濃縮された第二のC5溜分の取得
初期C5溜分を、イソプレンの濃縮の一連の工程に掛けて、イソプレンの質量分率が56%の濃縮C5溜分を得た。
この手順は、以下の点を除いては、実施例1のセクションIで述べた通りである。
【0049】
−50段カラムの蒸留の第一工程が「抽出」タイプであり、極性抽出溶剤(3%濃度のジメチルホルムアミドから成る)を用いて行われる点、
−この第一工程におけるシクロペンタジエンの質量分率が150ppmである点、
−無水マレイン酸上での第二蒸留工程におけるビニルアセチレンの質量分率が950ppmである点。
これら4つの工程によって得られた濃縮C5溜分の組成を気相クロマトグラフィー(付録3参照)による分析で決定した(この溜分中の成分の質量分率として表示される)。
1−ペンテン 5%
2−メチル−1−ブテン 11%
ペンタン 20%
イソプレン 56%
その他 3%
2−ペンテン 5%
【0050】
モノオレフィン:イソプレンの相対的質量比は、実施態様のこの実施例では実質的に37.5%であった。
α−オレフィン:イソプレン及びβ−オレフィン:イソプレンの相対的質量比に関しては、それらは、それぞれ実質的に28.6%と8.9%であった。
【0051】
II.イソプレンの重合の為の本発明の実施態様の第二実施例による触媒系2の調製:
触媒系2は、実施例1で合成されたものと同様の燐酸ネオジミウム塩を含み、実施例1の触媒系1とは、
−Nd塩:ブタジエン(以後、Bd):DiBAH:DEACの相対モル比が、それぞれ、1:30:1.8:2.6である、
−アルキル化工程の時間が30分である、そして、
−DEACでの「予備成形」の時間が1時間である、
点が相違する。
【0052】
III.実施態様のこの第二実施例による濃縮C5溜分から、触媒系2の使用によるポリイソプレンの製造:
実施例1と同様に、一つは、この第二実施例によるこの濃縮C5溜分から始める重合テストと、今一つは、99.2%の純粋イソプレンから始める重合テスト(「対照」テスト)が行われた。
重合条件及びポリイソプレンの回収は実施例1に記載されたものと同じである。
表IIは得られた結果を示す。
【0053】
【表3】
表II
【0054】
これらの結果は、本発明の触媒系2が、実質的に純粋なイソプレン(対照)の重合での反応速度と同じ反応速度で、イソプレンが56%に濃縮された水蒸気分解C5ナフサ溜分からイソプレンの選択的重合を可能とする事を示す。
実施例1でも述べた通り、イソプレンが56%に濃縮されたC5溜分から50℃の温度で製造されたポリイソプレンは、「対照」ポリイソプレンと同様に、全てが、13C−NMR方法とMIR方法で測定して(付録1参照)、98.0%に等しい同じシス−1,4結合含有量を有する。
得られたポリイソプレンは、2.1〜2.3で変動する、特に低い多分子指数(SEC測定方法の為の添付の付録2を参照)を有する。
【0055】
実施例3
イソプレンの濃縮された第三のC5溜分からポリイソプレンの合成
I.本発明によるイソプレンの濃縮された第三のC5溜分の取得
初期C5溜分を、イソプレンの濃縮の一連の工程に掛けて、イソプレンの質量分率が57%の濃縮C5溜分を得た。
この手順は、50段カラムでの抽出蒸留の第一工程に続いて、以下の三つの工程が順番に行われる点を除いては、実施例2のセクションIで述べた通りである。
−ビニルアセチレン(「真」のアルキン類)の質量分率が、二つの溜分のそれぞれにおいて10ppmまで減少される様な二つの連続触媒水素化操作(これらの触媒水素化操作前のビニルアセチレンの質量分率は、DiBAH上の蒸留工程前では実施例2と全く同じ950ppmである)、
−溜分中のシクロペンタジエンの質量分率が5ppm未満まで減少される様な無水マレイン酸上の蒸留(実施例1及び2と同じ方法で行われる蒸留)、次いで、
−この様にして得られた溜分を、実質的に全ての残留極性化合物を除去する為に、アルミナ上又は「3A]タイプのモレキュラーシーブ上に通して、本発明のこの第三の実施例による二つのC5溜分をそれぞれに得る工程。
【0056】
前述の二つの触媒水素化操作は同じリンドラー触媒(Lindlar catalyst)(鉛で「毒された」炭酸カルシウム上に、質量分率で5%の白金を含む)を使用して行われた。
これらの水素化操作の操作条件は次の通りである。
−反応器:250mlの「スタイニー」ボトル、貯水槽中で攪拌する(ボトルの密閉は、注射針を使用して水素の導入ができる「隔壁/無蓋シール」アセンブリーによって確保されている)、
−処理容量:100ml、即ち、68g、
−リンドラー触媒:70mg、
−反応器中の水素圧:それぞれの水素化操作に対して3bar、
−反応時間:それぞれの水素化操作に対して6時間、
−反応温度:60℃。
【0057】
この様にして水素化されたそれぞれのC5溜分は、次いで、「HPLC」品質のフィルターを使用して濾過された。
これら二つの水素化工程によって、それぞれのC5溜分中に存在するビニルアセチレンの質量分率(10ppm)は、DiBAH上での蒸留後では、実質的に実施例1及び2で得られた質量分率と同じである。
前述の4つの工程による本発明の実施態様のこの第三の実施例によるそれぞれの濃縮C5溜分の組成を気相クロマトグラフィーによる分析(付録3参照)で決定した(この溜分中の成分の質量分率として表示される)。
1−ペンテン 5%
2−メチル−1−ブテン 12%
ペンタン 21%
イソプレン 57%
その他 2%
2−ペンテン 3%
【0058】
モノオレフィン:イソプレンの相対的質量比は、実施態様のこの第三の実施例では実質的に35.1%であった。
α−オレフィン:イソプレン及びβ−オレフィン:イソプレンの相対的質量比に関しては、それらは、それぞれ実質的に29.8%と5.3%であった。
【0059】
II.イソプレンの重合の為の本発明の実施態様の第三実施例による触媒系3の調製:
触媒系3は、実施例1で合成されたものと同様の燐酸ネオジミウム塩を含み、実施例1の触媒系1とは、
−Nd塩:ブタジエン(以後、Bd):DiBAH:DEACの相対モル比が、それぞれ、1:30:1.8:2.6であり、そして、
−アルキル化工程の時間が30分である、
点が相違する。
【0060】
III.実施態様のこの第三実施例による濃縮C5溜分から、触媒系3の使用によるポリイソプレンの製造:
実施例1と同様に、一つは、この第三実施例によるこの濃縮C5溜分から始める重合テストと、今一つは、99.2%の純粋イソプレンから始める重合テスト(「対照」テスト)が行われた。
実施例1のテストとの唯一の相違は次の通りである。
−重合媒体におけるイソプレンの質量分率が10%であり、テストをS:M(溶媒:モノマー)比9で行った点、
−ネオジミウム触媒ベースの使用量が、本発明によるこの第三の実施例による二つのテストのそれぞれに対してはモノマー100g当たり440マイクロモルであり、前記「対照」テストに対してはモノマー100g当たり400マイクロモルであった点(μMcmとして表される量)。
【0061】
重合条件及びポリイソプレンの回収は実施例1に記載されたものと同じである。
表IIIは得られた結果を示す。
【0062】
【表4】
表III
【0063】
これらの結果は、本発明の触媒系3が、それぞれにイソプレンが57%に濃縮された水蒸気分解C5ナフサ溜分から、ビニルアセチレンの量を減少させる為の触媒水素化反応を実施する事によって、実質的に純粋なイソプレン(対照)の重合での反応速度と同じ反応速度でイソプレンの選択的重合を可能とする事を示す。
実施例1及び2で述べられた通り、この第三実施例によるそれぞれの濃縮されたC5溜分から50℃の温度で製造されたポリイソプレンは、「対照」ポリイソプレンと同様に、全てが、13C−NMR方法とMIR方法で測定して(付録1参照)、98.0%に等しい同じシス−1,4結合含有量を有する。
得られたポリイソプレンは、2.1〜2.3で変動する、特に低い多分子指数(SEC測定方法の為の添付の付録2を参照)を有する。
【0064】
付録1:
ポリイソプレンのミクロ構造の決定
1)炭素−13核磁気共鳴( 13 C−NMR分析)の方法による:
a)サンプルの調製
2gのポリイソプレンがアセトンで8時間の還流によって抽出された。抽出されたポリイソプレンは、次いで、周囲温度で、真空下で24時間乾燥された。この乾燥ポリイソプレンを、次いで、クロロホルムに再溶解した。ポリイソプレン溶液を濾過し、回転蒸発器で4時間掛けて溶媒を除去した(浴の温度は40℃であった)。
分析の目的の為に、この様に調製されたポリイソプレンの凡そ600mgを、13C−NMR管中で直接CDCl3(2ml)中に溶解した。
【0065】
b)装置の特徴:
"BRUKER AM250"の名称で販売されている分光光度計。
共鳴周波数=62.9MHz。
パルスプログラム:INVGATE.AU(13Cの定量NMR分析の"NOE"効果の消去)。
パルス時間:9μ秒(90°)。
緩和時間:10秒。
スキャンの累積数(NS)=8192。
c)スペクトルのピークの割当:
ピークは、Quang Tho Pham, R. Petiaud, H. Watson, M.F. Llauro Darricades, "roton and NMR Spectra of Polymers", 1991, Penton Pressにより同定された。
【0066】
d)積分方法:
1,2構造単位は検出されなかった。
3,4と1,4の含有量の比は、エチレン系炭素を用いて決定された。ポリイソプレン中のトランス−1,4及びシス−1,4結合の含有量は脂肪族炭素から計算された。
【0067】
2)中波赤外線放射分析( MIR) の方法による:
a)サンプルの調製:
この赤外線分析の為に、セクション1)で調製されたポリイソプレンがこの赤外線分析の為に使用され、NMRの場合は、サンプルはアセトンで抽出され、次いで、オーブン中で乾燥された。
CCl4中で正確に10g/lのポリイソプレンの溶液が、0.2mmの通過長さを持つKBrセルを使用して分析された。
b)装置:
"BRUKER IFS88"の名称で販売されている分光光度計。
記録条件:
ビーム開口部:最大。
解像度:2cm-1。
移動鏡の速度:0.639cm/秒。
検出器:DTGS。
集積:64スキャン。
パージ時間:3分。
スペクトルの窓:4000〜400/cm。
透過スペクトルが記録された。
対照:CCl4溶媒。
スペクトルの処理:
マイクロコンピュータに移送;
"BRUKER"のソフトウエア"OPUS"で処理。
【0068】
c)スペクトルの割当:
スペクトルの研究と以下の文献の内容が、異なる結合形式の特徴バンドを決定することを可能とした。
Y. Tanaka, Y. Takeuchi, M. Kobayashi, H. Tadokoro, Journal of Polymer science, Part A-2, 1972, 9(1), 43-57。
J.P. Kistel, G. Friedman, B. Kaempf, Bulletin de la Chimique de France, 1967, No. 12。
F. Asssioma, J. Marchal, C. R. Acad, Sc. Paris, Ser C, 1968, 266(22), 1563-6 and Ser D, 1968, 266(6), 369-72。
T. F. Banigan, A. J. Verbiscar, T. A. Oda, Rubber Chemistry and technology, 1982, 55(2), 407-15。
【0069】
3−4の高次構造は二つの特徴的バンドを示す。即ち、
−ビニル基(=CH2)の末端水素の面外変形振動(δC−H)に相当する880/cmにおける高い強度のバンド。
−同じ基(=CH2)のγC−H伸縮に相当する3070/cmにおけるバンド。
1−4シスの高次構造は、3030/cmの辺りに特徴的なバンドを有する。このバンドは、=CH2基のγC−H伸縮振動に相当する。
メチル基(δCH3)の対称的変形振動に相当するバンドは、三つの立体配置の全てを取り込んだ複合バンドである。トランス−1,4構造のδCH3に相当する吸収は、1385/cm辺りにその最大がある。これはこのバンドの肩部である。
【0070】
d)積分方法:
シス−3,4と1,4のバンドは接線面積方法によって積分された。
トランス−1,4の最大吸収は強いδCH3バンドの肩部に配置される。この場合の最も適切な方法は、基準線としてδCH3バンドの接線を使用してバンドの高さを測定することである。
【0071】
e)検量線:
ベール−ランバートの法則の記載:
Do(γ又はδ)=ε(γ又はδ)ec
(ここで、
Do(γ又はδ)=バンドγ又はδの光学密度;
ε(γ又はδ)=バンドγ又はδに対する応答性検体のモル吸光係数;
c=検体のモル濃度;及び、
e=サンプルの厚さ)。
市販のポリイソプレン("IR305"、"NATSYN 2200"及び"SKI-3S"の名称で市販されている)、実験室で合成されたポリイソプレン(MC78)及び天然ゴム(NR)が標準として使用された。等濃度(溶液)で比較される場合は、この法則は、
Dx=KX
(ここで、Dx=構造単位Xに相当するバンドの積分値、
X=ゴム中の構造単位Xの量(13C−NMRで決定された)、
K=較正定数)
と書かれても良い。
検量線Dx=f(X)は、従って、構造単位のそれぞれの為にプロットされても良い。
【0072】
付録2:
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法による、得られたエラストマーの分子量分布の決定。
a)測定の原理:
サイズ排除クロマトグラフィー又はSECは、多孔性の固定相で充たされたカラム中で膨潤状態でそのサイズによって高分子を物理的に分離する事を可能とする。高分子はその流体力学容量によって分離され、最も嵩高のものが最初に溶出される。
絶対的な方法ではないけれども、SECはポリマーの分子量分布による評価を可能にする。市販の標準品に基づいて、様々な数平均(Mn)及び重量平均(Mw)分子量を決める事ができ、多分散指数(polydispersity index)が計算された(IP=Mw/Mn)。
【0073】
b)ポリマーの調製:
分析前にポリマーのサンプルの特別な処理は行われない。凡そ1g/lの濃度で、単純にテトラヒドロフランに溶解される。
c)SEC分析:
使用された装置は、"WATERS model 150C"クロマトグラフィーである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名が"SHODEX KS807"、"WATERS type STYRAGEL HMW7"及び二つの"WATERS STYRAGEL HMW6E"の連続した四つのカラムのセットが使用される。
注入されるポリマーサンプルの溶液の容量は100μlである。検出器は"WATERS model RI32X"の示差屈折計であり、クロマトグラフデータを処理するためのソフトウエアは、システム"WATERS MILLENNUIM"(version 3.00)である。
付録3:
気相クロマトグラフィー(GPC)による、「対照」の水蒸気分解C5ナフサ溜分と本発明により濃縮された溜分の組成の決定
a)GPC/FID分析:
本発明の濃縮C5溜分と「対照」のC5溜分(イソプレンの質量分率がほぼ100%)のそれぞれの分析は、使用される水素炎イオン化検出器(FID)の応答を飽和させない為に、予め希釈する事なしに注入されたトレースから行われた。
c)結果:
それぞれのクロマトグラムのピークの面積の相対割合を計算して分布を得る為に半定量分析を行った。FIDは、非溶出及び溶出化合物の存在によるシグナルを検出しなかったので、溶出した化合物の応答における相違は考慮しなかった。
化合物の割合(%)は以下の式で与えられる。
%i=Ai/ΣAix100
(ここで、Ai=化合物iの面積であり、
ΣAi=全ての溶出した化合物(同定されたもの及び同定されなかったもの)の合計である)。
Claims (15)
- イソプレンの濃縮された水蒸気分解C5ナフサ溜分からポリイソプレンを得る方法であって、前記濃縮C5溜分の存在下で触媒系を実質的に反応させる方法において、
前記濃縮溜分中のイソプレンの質量分率が30%〜95%の範囲内にある、イソプレンの濃縮されたC5溜分を使用し、且つ、
少なくとも、共役ジエンモノマー、一種以上の希土類金属の有機燐酸塩、式:AlR3又はHAlR2のアルキルアルミニウムから成るアルキル化剤及びハロゲン化アルキルアルミニウムから成るハロゲン供与体を基本とした触媒系であって、前記塩が、前記触媒系に含まれる脂肪族又は脂環式タイプの少なくとも一種の不活性飽和炭化水素溶媒に懸濁していて、アルキル化剤:希土類金属の有機燐酸塩のモル比が1〜5の範囲にある触媒系を使用する事を特徴とする方法。 - アルキル化剤:希土類金属の有機燐酸塩のモル比が1〜2の範囲にある、請求項1に記載の方法。
- 前記希土類金属の有機燐酸塩が希土類金属のトリス[ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート]である触媒系を使用する事から成る、請求項1又は2に記載の方法。
- 触媒系として、前記希土類金属の有機燐酸塩がネオジミウムトリス[ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート]である触媒系を使用する事から成る、請求項3に記載の方法。
- 触媒系として、前記希土類金属を0.02モル/lに等しいか実質的に等しい濃度で含む触媒系を使用する事から成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 触媒系として、ハロゲン供与体:希土類金属の有機燐酸塩のモル比が2.6〜3の範囲内にある触媒系を使用する事から成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 触媒系として、共役ジエンモノマー:希土類金属の有機燐酸塩のモル比が25〜50の範囲内にある触媒系を使用する事から成る、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 触媒系として、前記共役ジエンモノマーがブタジエンである触媒系を使用する事から成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 触媒系として、前記アルキル化剤がジイソブチルアルミニウムハイドライドである触媒系を使用する事から成る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 触媒系として、前記ハロゲン供与体がジエチルアルミニウムクロライドである触媒系を使用する事から成る、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- イソプレンの質量分率が30%〜70%の範囲内にある、イソプレンの濃縮されたC5溜分を使用する事から成る、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記イソプレンの濃縮されたC5溜分が、脂肪族及び脂環式モノオレフィンを含み、脂肪族及び脂環式モノオレフィン:イソプレンの質量分率が50%以下である、イソプレンの濃縮されたC5溜分を使用する事から成る、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 脂肪族及び脂環式モノオレフィン:イソプレンの質量分率が20%〜50%である、イソプレンの濃縮されたC5溜分を使用する事から成る、請求項12に記載の方法。
- α−オレフィン:イソプレンの質量分率が30%以下であり、β−オレフィン:イソプレンの質量分率が20%以下である、イソプレンの濃縮されたC5溜分を使用する事から成る、請求項12に記載の方法。
- 前記ポリイソプレンが、炭素−13核磁気共鳴及び中波赤外線分析を使用して測定されるシス−1,4結合含有量を98.0%〜99.6%の範囲内で有する様に前記触媒系を使用する事から成る、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
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