JP4936509B2 - 吸気ダクト取付構造 - Google Patents
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これに対し、車両は、フロントフードの直下に配置されるインタークーラを、衝突時の入力によって後退可能に装着し、この後退によってクラッシャブルスペースの拡大を図ったものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、フロントフードを吸気ダクトに対して高い位置に配置すれば、その変形量は確保できるが、この場合車両のデザインに対する制約が大きくなる。
本発明の課題は、吸気性能を確保しつつ歩行者保護性能を向上した吸気ダクト取付構造を提供することである。
請求項1の発明は、エンジンに導入される空気が吸入される開口部を備え、少なくとも一部が車両外板の下面部に対向して配置された吸気ダクトと、車体側に固定され、前記吸気ダクトを支持する支持部と、前記吸気ダクトと前記支持部とを連結するとともに、前記吸気ダクトに作用する下向きの外力に応じて、前記吸気ダクトの前記支持部からの脱落を許容する連結部とを備える吸気ダクト取付構造であって、前記連結部は、前記吸気ダクトの前記開口部の下縁部に形成されたダクト側連結部と、前記支持部に対して固定され、その下面部が前記ダクト側連結部の上面部と対向して配置された車体側連結部と、前記ダクト側連結部、前記車体側連結部の一方から他方側へ突き出して形成され、略上下方向に延在する突起部と、前記ダクト側連結部、前記車体側連結部の他方に形成され、前記突起部が挿入される穴部又は溝部と、円筒状に形成されるとともに外周面部に周方向溝が形成され、内径側に前記突起部が挿入され、かつ、前記周方向溝に前記穴部又は前記溝部の周縁部が嵌め込まれることによって、前記支持部に対して前記吸気ダクトを支持するとともに、前記下向きの外力に応じて変形することによって前記支持部と前記吸気ダクトとの連結を解除する弾性部材とを備えることを特徴とする吸気ダクト取付構造である。
(1)吸気ダクトの流路断面積を確保するために吸気ダクトの上面部と外板とを近接させて配置し、また、吸気負圧による変形を防止するために吸気ダクトの変形強度を向上させた場合であっても、衝突時に外板が変形し、吸気ダクトを押圧することによって吸気ダクトが脱落し、クラッシャブルスペースが確保されるから、外板の変形量を大きくして歩行者保護性能を向上することができる。
(2)弾性部材を介して吸気ダクトを支持し、この弾性部材の変形によって脱落させるようにしたから、弾性部材の材質、形状等のチューニングによって脱落に必要な荷重等を適切に設定することができ、また、吸気ダクトの防振も図ることができる。
(3)車体側連結部の下面部とダクト側連結部の上面部とを対向させて配置したことによって、吸気ダクトをその脱落を妨げることなく支持することができる。
(4)車体側連結部とダクト側連結部とを、一方に形成された突起部を他方に形成された穴部又は溝部に挿入して支持することによって、吸気ダクトの脱落を可能としつつ他の方向への移動を拘束することができる。
図1は、実施例1の吸気ダクト取付構造を上方から見た状態を示す平面図である。
図2は、図1のII−II部矢視断面図である。
実施例1において、吸気ダクト取付構造が備えられる車両は、例えば車両の前部にエンジンルームを有し、ここにガソリンエンジン等の内燃機関を搭載した乗用車である。
吸気ダクト取付構造1は、吸気ダクト10、ラジエータパネル20、ブラケット30、ゴムブッシュ40を備え、その上方側にフロントフード50が設けられている。
上面部11は、吸気ダクト10の空気流路の上部に配置される壁面部であって、図2に示すように、フロントフード50の下面部に対向して配置されている。
下面部12は、吸気ダクト10の空気流路の下部に配置される壁面部であって、図2に示すように、上面部11に対して間隔を隔てて対向して配置されている。
側面部13は、上面部11及び下面部12の縁部にわたして配置された壁面部であって、吸気ダクト10の車幅方向における両側にそれぞれ設けられている。
エアクリーナ接続部15は、吸気ダクト10の後流側(エンジン側)に設けられる図示しないエアクリーナケースに接続される部分であって、吸気ダクト10の後端部に設けられた開口部である。エアクリーナ接続部15は、その流路幅が吸気口14よりも小さく形成され、また、車幅方向における位置が右側に寄せて配置されている。このため、図1に示すように、吸気ダクト10は、その車幅方向における寸法が吸気口14側からエアクリーナ接続部15側にかけて徐々に絞られ、連続的に小さくなるように形成されている。
ラジエータパネル20は、図2に示すように、上面部が略平板状に形成され、その前端部及び後端部を下側に折り曲げて形成されている。
また、ラジエータパネル20は、ブラケット30の固定に用いられるウェルディングナット21を備えている。ウェルディングナット21は、ラジエータパネル20の下面側に固定され、車幅方向に離間して例えば2つ設けられている。
ブラケット30は、突起部32を備えている。突起部32は、ブラケット30がラジエータパネル20の後端部よりも後方側へ突き出した部分における下面部から突き出して形成され、略上下方向に延在している。また、突起部32の先端部(下端部)には、外径側につば状に張り出して形成されたフランジ部32a(図3参照)が形成されている。
図3は、ゴムブッシュ部の分解斜視図である。
ゴムブッシュ40は、その中心部に形成された開口に、突起部32が挿入されることによって、ブラケット30に対して固定される。このとき、突起部32のフランジ部32aは、ゴムブッシュ40の下端部側へ突出し、ゴムブッシュ40の端面に係止されることによって、突起部32からのゴムブッシュ40の脱落を防止する。
また、吸気ダクト10のダクト側取付部16の開口16aは、その周縁部が、ゴムブッシュ40の溝部41に嵌め込まれることによってゴムブッシュ40に対して固定される。
アウターパネル51は、フロントフード50のうち車両の外表面に露出して配置された部分を構成するものである。
インナーパネル52は、アウターパネル51の下面側に設けられ、アウターパネル51とその外周縁部を接合された枠状の補剛部材である。
<比較例1>
図4は、比較例1の吸気ダクト取付構造を上方から見た状態を示す平面図である。
図5は、図4のV−V部矢視断面図である。
比較例1の吸気ダクト取付構造2は、実施例1のようなブラケット30、ゴムブッシュ40を設けずに、吸気ダクト10を、直接ラジエータパネル20の上面部に直接固定したものである。
吸気ダクト10は、そのダクト側連結部16の下面部が、ラジエータパネル20の上面部に当接した状態とされ、ダクト側連結部16に形成された開口にボルト17を挿入し、このボルト17をウェルディングナット21に締結することによってラジエータパネル20に固定されている。
図6は、比較例2の吸気ダクト取付構造の断面図であって、比較例1における図5に相当する断面を示すものである。
比較例2の吸気ダクト取付構造3は、比較例1の吸気ダクト取付構造1における吸気ダクト10とラジエータパネル20との連結部に、以下説明するゴムブッシュ60を設けて、吸気ダクト10をラジエータパネル20に対してフローティングマウントしたものである。
ゴムブッシュ60は、円筒状に形成され、その外周面部には周方向に延在する溝部が形成されている。この溝部は、吸気ダクト10のダクト側連結部16に形成された開口の周縁部が嵌め込まれるものである。
また、ボルト17は、ゴムブッシュ60に挿入された状態でラジエータパネル20のウェルディングナット21に締結されている。
そして、フロントフード50がこの状態以上に変形するためには、吸気ダクト10を押し潰しながら変形する必要がある。
しかし、吸気ダクト10は、エンジンの吸気負圧による変形を防止するため、その変形強度をある程度大きくする必要があることから、フロントフード50が吸気ダクト10を押し潰しながら変形する場合、この変形に必要な荷重が大きくなって、歩行者への加害性を十分に低減することができない。
これに対して、例えば吸気ダクト10を部分的に軟質の材料によって形成し、吸気負圧に対する強度を確保しつつ衝突時における外力による変形強度を低くすることも考えられるが、この場合吸気ダクト10の製造が煩雑となってコストも増大し、また、適切な強度の設定は困難である。
実施例1においては、吸気ダクト10の上面部11がフロントフード50の下面部によって押圧されると、吸気ダクト10のダクト側連結部16に固定されたゴムブッシュ40には、ブラケット30の突起部32に対して下向きに引き抜こうとする力が作用する。そして、このような力が所定値よりも小さければ、突起部32のフランジ部32aがゴムブッシュ40の下端部との係合を維持することによってゴムブッシュ40の脱落は防止されるが、力が所定値以上となると、ゴムブッシュ40が弾性変形することによってその下端部とフランジ部32aとの係合が解除され、ゴムブッシュ40は突起部32から脱落する。
これによって、図7に示すように、吸気ダクト10は、もとの位置から脱落して下側に移動し、これによってフロントフード50の変形に供されるクラッシャブルスペースは拡大し、フロントフード50の変形量を十分に確保することができる。このため、フロントフード50の衝撃吸収性能を高めて、例えば歩行者の頭部に加わる重力加速度(G)を低減することができる。
(1)吸気ダクト10を、吸気負圧による変形が生じないようにその変形強度を十分大きく設計し、かつ、その上面部11がフロントフード50の下面部と近接して配置した場合であっても、衝突時には吸気ダクト10が脱落することによって、フロントフード50の変形に必要なクラッシャブルスペースが確保されるから、吸気ダクト10の吸気性能を確保して十分なエンジン出力等を得るとともに歩行者保護性能を向上することができる。
(2)ゴムブッシュ40を介して吸気ダクト10を支持し、このゴムブッシュ40の変形によって吸気ダクト10を脱落させるようにしたから、ゴムブッシュ40の形状や材質をチューニングすることによって、脱落に必要な荷重等を適切に設定することができ、また、エンジン振動や吸気脈動等による吸気ダクト10の振動が車体側に伝達されることを防止でき、車両の快適性や静粛性を向上することができる。
(3)ブラケット30の下面部と吸気ダクト10のダクト側連結部16の上面部とを対向させて配置したことによって、吸気ダクト10をその脱落を妨げることなく支持することができる。
(4)ダクト側連結部16の開口16aに、ブラケット30の突起部32をゴムブッシュ40を介して挿入することによって、吸気ダクト10の下側への移動を許容しつつ前後方向や車幅方向への移動を拘束することができる。
図8は、実施例2におけるゴムブッシュ部の分解斜視図である。
実施例2は、実施例1における吸気ダクト10のダクト側連結部16に、開口16aに代えて、溝部16bを形成したものである。
溝部16bは、ダクト側連結部16の車両前方側の端縁から、車両の前後方向に沿って切り込まれた形状とされ、その溝底部(後端部)は他の部分よりも溝幅が大きく形成されることによっていわゆる鍵穴状に形成されている。この溝幅が大きく形成された部分のサイズや形状は、実施例1における開口16aと実質的に同じとされ、この部分の縁部がゴムブッシュ40の溝部41に嵌め込まれるようになっている。
以上説明した実施例2によれば、上述した実施例1と同様の効果に加え、ゴムブッシュ40を吸気ダクト10に組み込む際の作業性を向上することができ、また、吸気ダクト10の脱落に必要な荷重を低減させる場合にも有効である。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)吸気ダクト、支持部、連結部等の形状や構造等は各実施例に限定されることなく、適宜変更することができる。例えば、各実施例は吸気ダクトの開口部の下端部に形成されたダクト側連結部を支持する構成であったが、これ以外の箇所を支持するようにしてもよい。また、支持部は、ラジエータパネルに限らず、他の部材であってもよい。さらに、吸気ダクトは、フロントフードの下面部側に配置されるものに限らず、例えば、フロントフード前端部よりも前方側に配置されるノーズ内に挿入されるものであってもよい。
(2)各実施例は、ブラケット側に突起部を設け、吸気ダクト側の穴部又は溝部に挿入しているが、これとは逆に、吸気ダクト側に上方に突き出した突起部を形成し、支持部側に形成された穴部又は溝部に挿入するようにしてもよい。また、各実施例はブラケットをラジエータパネルと別体に形成しているが、これらを一体化してもよい。
10 吸気ダクト
11 上面部
12 下面部
14 吸気口
16 ダクト側連結部
20 ラジエータパネル
30 ブラケット
32 突起部
40 ゴムブッシュ
50 フロントフード
51 アウターパネル
52 インナーパネル
Claims (1)
- エンジンに導入される空気が吸入される開口部を備え、少なくとも一部が車両外板の下面部に対向して配置された吸気ダクトと、
車体側に固定され、前記吸気ダクトを支持する支持部と、
前記吸気ダクトと前記支持部とを連結するとともに、前記吸気ダクトに作用する下向きの外力に応じて、前記吸気ダクトの前記支持部からの脱落を許容する連結部と
を備える吸気ダクト取付構造であって、
前記連結部は、
前記吸気ダクトの前記開口部の下縁部に形成されたダクト側連結部と、
前記支持部に対して固定され、その下面部が前記ダクト側連結部の上面部と対向して配置された車体側連結部と、
前記ダクト側連結部、前記車体側連結部の一方から他方側へ突き出して形成され、略上下方向に延在する突起部と、
前記ダクト側連結部、前記車体側連結部の他方に形成され、前記突起部が挿入される穴部又は溝部と、
円筒状に形成されるとともに外周面部に周方向溝が形成され、内径側に前記突起部が挿入され、かつ、前記周方向溝に前記穴部又は前記溝部の周縁部が嵌め込まれることによって、前記支持部に対して前記吸気ダクトを支持するとともに、前記下向きの外力に応じて変形することによって前記支持部と前記吸気ダクトとの連結を解除する弾性部材と
を備えることを特徴とする吸気ダクト取付構造。
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