JP4269791B2 - フードストッパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両前部の上端側にフード閉止時の緩衝材として設けられるフードストッパに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フード閉止時の緩衝材として、ラジエータサポートの上端部にゴム製のフードストッパを設ける技術が知られている。以下、二例について簡単に説明する。
【0003】
図5に示されるフードストッパ100は、円柱形状に形成されている。フードストッパ100の軸方向中間部の外周面には、環状の係止溝102が形成されている。これに対応して、ラジエータサポート104には取付孔106が形成されている。取付孔106の内径は、係止溝102の内径よりも大きくかつフードストッパ100の外径よりも小さく設定されている。
【0004】
一方、図6に示されるフードストッパ110は、略円柱形状に形成されている。より具体的には、下部112は円柱形状に形成されており、上部114は円錐台形状に形成されている。そして、下部112と上部114との境界部分の外周部に、環状の係止溝116が形成されている。なお、取付孔106の内径が係止溝116の内径よりも大きくかつフードストッパ110の外径よりも小さく設定されている点は、図5に示されるフードストッパ100と同じである。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−193348号公報
【特許文献2】
特開2000−2281号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、車両が歩行者と接触した際の歩行者保護の要請が高まっている。そこで、歩行者保護の観点から、上記フードストッパ100、110の作用について考察すると、車両が歩行者と接触し、歩行者からフード118に下向きの荷重が入力されると、フードストッパ100、110はフード118によって車両下方側に押される。
【0007】
ここで、従来のフードストッパ100、110は、開閉強度及び建付けの観点から、取付孔106よりもフード当たり面108、120の方が径が大きく設定されている。従って、フード118によってストッパ100、110が押されても、ストッパ100、110は動くことなく、フード118を受けとめる作用をする。すなわち、歩行者からフード118に荷重が入力されても、フードストッパ100の上下方向の剛性が高いため、フード118が荷重作用方向に変形するのを妨げてしまい、フード118がストロークすることはない。
【0008】
なお、先行技術文献調査をした結果、バンパーラバーを対象とした文献しか摘出されなかった。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、フードに歩行者が接触した際の歩行者保護性能を向上させることができるフードストッパを得ることが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明に係るフードストッパは、車両前部の上端側にフード閉止時の緩衝材として設けられるフードストッパであって、前記車両前部の上端側への取付部位よりも上方側へ突出する部分に、全周に亘って環状に形成されかつ軸線に沿った縦断面形状が略楔形状とされたスリットとして構成されると共に、前記フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分を縮径させることで当該突出部分を前記車両前部の上端側から離脱させて前記フードの荷重作用方向への変形を可能とする縮径手段を設けた、ことを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の本発明に係るフードストッパは、前記車両前部の上端側への取付部位よりも上方側へ突出する部分に、全周に亘って環状に形成されかつ軸線に沿った縦断面形状が略楔形状とされたスリットとして構成されると共に、前記フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分を縮径させることで当該突出部分を前記車両前部の上端側から離脱させて前記フードと前記車体前部の上端側との間に所定の隙間を形成する縮径手段を設けた、ことを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の本発明に係るフードストッパは、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記突出部分の上面であるフード当たり面の大きさを、前記車体前部の上端側に設けられたフードストッパ取付用の取付孔の大きさよりも小さく設定し、前記フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分が前記取付孔から離脱する、ことを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の本発明に係るフードストッパは、請求項3記載の発明において、前記突出部分は略円錐台形状を成しており、当該突出部分の裾部が径方向内側へ弾性変形しながら前記取付孔内へ引き込まれることにより、当該突出部分が当該取付孔内へ抜け落ちる、ことを特徴としている。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、フードを閉止すると、車両前部の上端側に設けられたフードストッパが緩衝材として作用する。
【0015】
ここで、本発明では、車両前部の上端側への取付部位よりも上方側へ突出する部分に、全周に亘って環状に形成されかつ軸線に沿った縦断面形状が略楔形状とされたスリットとして構成された縮径手段を設けたので、フードストッパの突出部分がフードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けると、突出部分が縮径して車両前部の上端側への取付部位から離脱される。このため、フードにフードストッパの高さに相当する変形ストロークがもたらされる。その結果、フードは荷重作用方向へ変形することが可能となり、前記荷重を吸収する。
また、本発明では、縮径手段を設けたことにより、前記荷重入力時には当該突出部分が縮径される。このため、フードストッパが車両前部の取付部位から離脱し易くなる。
【0016】
請求項2記載の本発明によれば、フードを閉止すると、車両前部の上端側に設けられたフードストッパが緩衝材として作用する。
【0017】
ここで、本発明では、車両前部の上端側への取付部位よりも上方側へ突出する部分に、全周に亘って環状に形成されかつ軸線に沿った縦断面形状が略楔形状とされたスリットとして構成された縮径手段を設けたので、フードストッパの突出部分がフードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けると、突出部分が縮径して車体前部の上端側への取付部位から離脱される。このため、フードとその取付部位である車両前部の上端側との間に所定の隙間が形成される。そして、この隙間がフードの荷重作用方向への変形ストロークとなる。その結果、フードは荷重作用方向へ変形することが可能となり、前記荷重を吸収する。
また、本発明では、縮径手段を設けたことにより、前記荷重入力時には当該突出部分が縮径される。このため、フードストッパが車両前部の取付部位から離脱し易くなる。
【0019】
請求項3記載の本発明によれば、突出部分の上面であるフード当たり面の大きさを、車体前部の上端側に設けられたフードストッパ取付用の取付孔の大きさよりも小さく設定し、フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分が取付孔から離脱するようにしたので、フードストッパがフードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けると、フードストッパは取付孔から離脱する。このため、フードにフードストッパの高さに相当する変形ストロークがもたらされる。その結果、フードは荷重作用方向へ変形することが可能となり、前記荷重を吸収する。
【0020】
請求項4記載の本発明によれば、突出部分は略円錐台形状を成しており、当該突出部分の裾部が径方向内側へ弾性変形しながら取付孔内へ引き込まれることにより、当該突出部分が当該取付孔内へ抜け落ちる。これにより、フードストッパが車体前部の上端側の取付孔から離脱される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係るフードストッパの一実施形態について説明する。
【0022】
図1には、本実施形態に係るフードストッパ10の全体構成図が示されている。この図に示されるように、フードストッパ10は弾性材料(ゴム製)によって構成されており、車両前部に配置されるラジエータサポート12の上端側に装着されている。具体的には、ラジエータサポート12には所定径寸法の取付孔14が形成されており、この取付孔14内へフードストッパ10が弾性的に装着されている。
【0023】
フードストッパ10は、円柱形状に形成された下部16と、円錐台形状に形成された上部18とによって構成されている。下部16と上部18との境界部の外周部には、環状の係止溝20が形成されている。なお、上部18が請求項1〜請求項4記載の「突出部分」に相当する。
【0024】
下部16の外径寸法は、ラジエータサポート12の取付孔14の内径寸法よりも大きく設定されている。また、係止溝20の内径寸法は取付孔14の内径寸法よりも小さく設定されている。さらに、上部18の裾部18Aの外径寸法は、下部16の外径寸法よりも大きく設定されている。また、上部18の上端面、即ちフード閉止時にフード22に当接して緩衝作用をするフード当たり面24の外径寸法は、取付孔14の内径寸法よりも小さく設定されている(本実施形態では、フード当たり面24の外径寸法が係止溝20の内径寸法に概ね一致するように設定されている)。
【0025】
なお、図1に付記したA線は、フードストッパ10のラジエータサポート12への取付位置(係合代の終縁位置)を表している。また、B線は取付孔14の穴の位置(取付孔14の内周面の位置)を表している。さらに、C線はフード当たり面24の位置(外周縁の位置)を表している。なお、従来図である図5、図6にも、比較のために同様にA線、B線、C線を付記しておいた。本実施形態の場合、各部の径方向の寸法関係は、A>B>Cとなるように設定されている。因みに、図5に示される従来構造の場合、A=C>Bに設定されており、図6に示される従来構造の場合、A>C>Bに設定されている。
【0026】
さらに、上記構成のフードストッパ10の上部18には、フード当たり面24から軸線に対して略平行に切れ込む「縮径手段」としてのスリット26が形成されている。スリット26は、フードストッパ10の上部18の全周に亘って環状に形成されており、断面形状は略楔形状とされている。また、スリット26は、上部18の中間部付近まで延びている。
【0027】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0028】
図1に二点鎖線で示した状態がフード22の閉止状態である。この状態では、フードストッパ10のフード当たり面24にフード22が軽く接触するようになっている。従って、フード閉止時には、フードストッパ10の上下方向(軸方向)の剛性は充分に保たれる。
【0029】
図1に示されるフード閉止時において、車両が歩行者と接触し、フード22に所定値以上の車両下方側への接触荷重Fが入力されると、当該フード22からフードストッパ10のフード当たり面24に下向きの荷重が作用し、ラジエータサポート12からフードストッパ10の上部18に上向きの荷重(反力)が作用する。このため、フードストッパ10の上部18は軸方向へ圧縮される。
【0030】
これにより、図2に示される如く、フードストッパ10の上部18の裾部18Aが径方向内側へ弾性変形しながら(引き込まれながら)、取付孔14内へ抜け落ちて行く。このとき、フードストッパ10の上部18に環状のスリット26が形成されていることから、フードストッパ10の上部18は径方向内側へより変形(縮径)し易くなる。
【0031】
そして、最終的には、図3に示されるように、フードストッパ10の上部18がラジエータサポート12の取付孔14から完全に抜け落ちる(離脱される)。これにより、フード22とその取付部位であるラジエータサポート12との間に所定の隙間28(即ち、フードストッパ10の上部18の高さに相当する変形ストロークH(図1参照))が形成される。その結果、フード22は荷重作用方向、つまり車両下方側へ塑性変形することが可能となり、歩行者との接触荷重を吸収することが可能となる。
【0032】
このように本実施形態に係るフードストッパ10では、その上部18のフード当たり面24の外径寸法をラジエータサポート12の取付孔14の内径寸法よりも小さく設定することにより、フード22に車両下方側への所定値以上の接触荷重が入力された場合に、フードストッパ10を取付孔14から離脱させる構成としたので、フード22の変形ストロークを確保することができる。その結果、本実施形態によれば、フード22に歩行者が接触した際の歩行者保護性能を向上させることができる。
【0033】
前記効果を補足すると、本実施形態に係るフードストッパ10の場合、上部18の裾部18A(A線からB線までの部分)がフード22の開閉強度を受け持つ部分となるため、A線からB線までの距離(寸法)をチューニングすることにより、通常使用時に要求されるフードストッパ10の剛性確保とフード22に歩行者が接触したときのフード22の変形ストロークの確保との両立を図ることができる。
【0034】
図4は、上述した本実施形態に係るフードストッパ10の基本的な効果をグラフ化して表現したものである。図4(A)は従来構造の場合で、図4(B)は本実施形態の場合である。P線矢視部はフード22に歩行者が接触した際に発生する一次ピーク荷重であり、Q線矢視部は底付きした際に発生する二次ピーク荷重である。前者は主としてフード22のアウタパネルの材質と形状で決まり、後者はエンジンコンパートメント内の隙間や干渉物の硬度で決まる。
【0035】
歩行者との接触時に問題となるのは二次ピーク荷重Qの方であるが、本実施形態によれば、フードストッパ10がラジエータサポート12の取付孔14から離脱することでフード22の変形ストロークを稼ぐことができるので、二次ピーク荷重Qが充分に下げられていることが解る。
【0036】
また、本実施形態に係るフードストッパ10では、その上部18に環状のスリット26を形成したので、歩行者との接触時にフードストッパ10の上部18を容易に縮径させることができる。その結果、フードストッパ10がラジエータサポート12の取付孔14から離脱し易くなり、迅速に歩行者保護性能を発揮させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るフードストッパ10によれば、新設部品を使う構成ではないので、部品点数や組付工数が増加することもない。従って、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0040】
なお、上述した本実施形態では、フード当たり面24の外径を取付孔14の内径よりも小さく設定したが、必ずしもそのような寸法関係に設定しなくても、フードストッパを取付孔から離脱させることは可能である。例えば、本実施形態のように環状のスリット26をフードストッパ10の上部18に設定しておくことにより、当該上部18を縮径させることができるので、フード当たり面の外径を取付孔14の内径よりも若干大きめに設定しておいても差し支えない。
【0041】
また、上述した本実施形態では、縮径手段としてフードストッパ10の上部18にフード当たり面24から切れ込む環状のスリット26を形成したが、これに限らず、周方向に所定の間隔でフードストッパの軸方向へ延びる複数の楔状等のスリットを不連続に形成する構成を採ってもよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係るフードストッパは、車両前部の上端側への取付部位よりも上方側へ突出する部分に、全周に亘って環状に形成されかつ軸線に沿った縦断面形状が略楔形状とされたスリットとして構成されると共に、フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分を縮径させることで当該突出部分を車両前部の上端側から離脱させてフードの荷重作用方向への変形を可能とする縮径手段を設けたので、フードに歩行者が接触した際の歩行者保護性能を向上させることができるという優れた効果を有する。また、縮径手段を備えたことにより、フードストッパが離脱し易くなり、迅速に歩行者保護性能を発揮させることができるという優れた効果も得られる。
【0044】
請求項2記載の本発明に係るフードストッパは、車両前部の上端側への取付部位よりも上方側へ突出する部分に、全周に亘って環状に形成されかつ軸線に沿った縦断面形状が略楔形状とされたスリットとして構成されると共に、フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分を縮径させることで当該突出部分を車両前部の上端側から離脱させてフードと車体前部の上端側との間に所定の隙間を形成する縮径手段を設けたので、フードの変形ストロークを確保することができ、その結果、フードに歩行者が接触した際の歩行者保護性能を向上させることができるという優れた効果を有する。また、縮径手段を備えたことにより、フードストッパが離脱し易くなり、迅速に歩行者保護性能を発揮させることができるという優れた効果も得られる。
【0045】
請求項3記載の本発明に係るフードストッパは、請求項1又は請求項2記載の発明において、突出部分の上面であるフード当たり面の大きさを、車体前部の上端側に設けられたフードストッパ取付用の取付孔の大きさよりも小さく設定し、フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分が取付孔から離脱する構成としたので、フードに歩行者が接触した際の歩行者保護性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るフードストッパの構造を示す縦断面図である。
【図2】図1のフードストッパがラジエータサポートから抜け落ちる過程を示す縦断面図である。
【図3】図1のフードストッパがラジエータサポートから完全に抜け落ちた状態を示す縦断面図である。
【図4】従来構造と本実施形態との効果をグラフ化して示した特性図である。
【図5】一つ目の従来例に係るフードストッパの構造を示す縦断面図である。
【図6】二つ目の従来例に係るフードストッパの構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 フードストッパ
12 ラジエータサポート
14 取付孔
18 上部(突出部分)
18A 裾部
22 フード
24 フード当たり面
26 スリット(縮径手段)
28 隙間
Claims (4)
- 車両前部の上端側にフード閉止時の緩衝材として設けられるフードストッパであって、
前記車両前部の上端側への取付部位よりも上方側へ突出する部分に、全周に亘って環状に形成されかつ軸線に沿った縦断面形状が略楔形状とされたスリットとして構成されると共に、前記フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分を縮径させることで当該突出部分を前記車両前部の上端側から離脱させて前記フードの荷重作用方向への変形を可能とする縮径手段を設けた、
ことを特徴とするフードストッパ。 - 車両前部の上端側にフード閉止時の緩衝材として設けられるフードストッパであって、
前記車両前部の上端側への取付部位よりも上方側へ突出する部分に、全周に亘って環状に形成されかつ軸線に沿った縦断面形状が略楔形状とされたスリットとして構成されると共に、前記フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分を縮径させることで当該突出部分を前記車両前部の上端側から離脱させて前記フードと前記車体前部の上端側との間に所定の隙間を形成する縮径手段を設けた、
ことを特徴とするフードストッパ。 - 前記突出部分の上面であるフード当たり面の大きさを、前記車体前部の上端側に設けられたフードストッパ取付用の取付孔の大きさよりも小さく設定し、前記フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に当該突出部分が前記取付孔から離脱する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフードストッパ。 - 前記突出部分は略円錐台形状を成しており、当該突出部分の裾部が径方向内側へ弾性変形しながら前記取付孔内へ引き込まれることにより、当該突出部分が当該取付孔内へ抜け落ちる、
請求項3記載のフードストッパ。
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