本発明者らは、鋭意検討した結果、着色剤に鉄チタン複合酸化物を用い、黒トナーはX線回折において、2θ=32.5乃至33.1度にピーク(ピークA:ピーク強度IA)を、2θ=24.0乃至25.0度にピーク(ピークB:ピーク強度IB)を有し、そのX線強度、ピーク半値幅に優れた着色剤のトナー分散を用いることにより、着色力、黒色度の着色剤の特性を十分に引き出し、且つ、画像濃度の高い黒画像を得ることを見出した。更に、現像、転写、定着といった、電子写真方法に関する特性についても、十分に改善したトナーを供給することが出来ることを見出した。
本発明によると、一成分又は二成分現像に用いるトナーにおいて、黒トナーの飽和磁化を2.0Am2/kg以下、より好ましくは1.5Am2/kg以下、更に好ましくは1.0Am2/kg以下にするのが良い。特に、二成分現像において、飽和磁化が2.0Am2/kgを超える場合、現像器の現像剤担持体(現像ローラ)上に現像キャリアから遊離したトナーの存在が多くなる。この場合、サイクルが進んでも、現像に用いられず存在する、いわゆる、つれまわりと呼ばれる現象を発生する。現像剤担持体にトナー存在することで、現像剤担持体と現像キャリア間での電荷の受け渡しが不十分となり、その結果、現像領域の電界強度が下がり、現像効率の低下やゴーストといった画像不良を起こしやすくなる。
しかしながら、通常出発原料にマグネタイトを用い、酸化チタニル等で表面処理した後、焼成により、低磁化の鉄チタン複合酸化物を作製する場合、十分に飽和磁化を下げられなかったり、赤乃至黄味の色身がより易く、十分な色味と磁化を満足できなかった。
そこで、出発原料をNaによって被覆した後、焼成することにより、十分な磁化を減少させる効果があった。しかしながら、高濃度の画像として用いる場合、黒の色味を満足できたが、トナーにした際のハーフトーン領域での色味を満足するものではなかった。
これは以下によると考えている。着色剤の粒度分布が広く、微粉量が多く、そのため、赤身が強くなる。マグネタイトを原料にするため、磁化を下げるのに十分な焼成工程を必要とする。そのため、結晶子サイズが小さくなり赤味成分が増える。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、Naを用い黒色度を上げること、結晶子サイズを大きくすること、焼成の温度を下げ副生成反応により得られる、目的外の結晶構造の化合物を減らすことにより、上記問題を解決するにいたった。
次に、本発明に用いる着色剤である鉄チタンの複合酸化物について更に詳しく述べる。
該黒トナーはX線回折において、2θ=32.5乃至33.1度にピークを有し、該ピークの半値幅が0.200度以下であることが望ましい。より好ましくは、0.195度以下にすることが望ましい。これは、本発明の着色剤である鉄チタンの複合酸化物の結晶を制御することにより可能である。
本発明の前記鉄チタン複合酸化物は、結晶構造がFeTiO3−Fe2O3固溶体を主成分として含んでいる。この化合物は、三方晶構造であるヘマタイト(Fe2O3)のFeをTiに置き換えたコランダム構造をしている。X線回折において主ピークである(104)面はヘマタイトで2θ=33.1〜33.2にピークを有し、本発明の鉄チタン複合酸化物は2θ=32.5〜33.1にピーク(ピークA:ピーク強度IA)を有する。Fe原子がTi原子に置き換えが進むにつれ、X線回折における回折角が狭角側にシフトする。このピークの半値幅が0.200度を超える場合には、単体の結晶子が小さくなることによって、トナーが赤味を帯びやすく、良好な黒トナーを得られにくくなる。本発明の着色剤は、1つの粒子が多結晶により構成されており、その構成要素である結晶子が小さい場合、結晶子間の界面における抵抗の低下によって、十分な抵抗を持つ着色剤を得にくい。そのため、現像、転写時における、性能が下がり、カラートナーと併用する場合、画像ムラとして認識されやすくなった。また、結晶子が小さい場合、多結晶体である着色剤の粒径を大きくした場合においても、赤味を帯びやすく、良好な黒色度を持った着色剤を得難くなった。
本発明の前記鉄チタン複合酸化物は、更に、Naを含む複合酸化物、NaFeTi3O8を含有する。X線回折において、2θ=24.0乃至25.0にピーク(ピークB:ピーク強度IB)を有する。Naの添加量に伴い、この化合物の存在が多くなり、X線強度が大きくなった。この化合物は、黒色度が大きく、前記鉄チタン複合酸化物FeTiO3−Fe2O3固溶体を単体で用いる場合に対し、濃度、色味の両立を満足することが可能である。しかしながら、Naをこれら複合酸化物に多量に含有させることは、その処理工程で、粒子の微細化を伴い、色味を満足できない。そのため、これらのX線強度比(IB/IA)が0.005以上0.200以下であることが好ましい。
本発明の着色剤は、鉄チタン複合酸化物を用い、小粒径で飽和磁化の低い着色剤を得ることが出来た。しかしながら、鉄チタン複合酸化物の粒径が大きい場合、着色力が十分でなかったり、トナー表面に存在した場合、トナーからの欠落が発生しやすく、各種部材の汚染の原因になりやすい。また、粒径が小さい場合においては、赤味が強くなり品質の良い黒色を呈するのが困難であった。また一方で、製造時に凝集体を作りやすく、製造時において、例えば粉砕法で作る場合、混練強度を上げたりする分散の改良が必要となった。
即ち、鉄チタン複合酸化物単体では個数平均粒子径(Dp)は、トナーの着色剤として用いる場合0.05μm以上0.40μm以下が好ましく、0.10μm以上0.35μm以下がより好ましいが、更に、着色剤として、粒度の揃ったものを用いることが好ましい。
更に、二次粒子の体積平均粒子径(Da)と一次粒子の個数平均粒子径(Dp)の比(Da/Dp)が1.1以上2.8以下が好ましい。
1.1より小さい場合、粒子の生産が困難になり、2.8より大きい場合、加熱処理による焼結部分が多くなり所望の着色力が得られない。そのため、トナーに用いた場合、樹脂中での分散性が悪くなり所望の画像濃度を得にくくなる。より好ましくは、Da/Dpが1.1以上2.7以下である。
本発明に係る鉄チタン複合参加物の飽和磁化値は5Am2/kg未満が好ましい。飽和磁化値が5Am2/kgを超える場合には、現行の非磁性トナーを用いるシステムに容易に適合させることが困難であり、所望の画像濃度を得難くなり、またカブリ発生の可能性が高くなる。好ましくは3Am2/kg以下である。これにより、トナーの飽和磁化を満足する鉄チタン複合酸化物を得ることが出来る。
本発明に係る鉄チタン複合酸化物のBET比表面積は、3〜15m2/gが好ましい。BET比表面積が3m2/g未満の場合には、粗大粒子となり、着色力が低下する。15m2/gを超える場合には、所望の黒色度を得ることが困難となる。より好ましくは6〜12m2/g、更により好ましくは6.5〜11m2/gである。
本発明に係る鉄チタン複合酸化物のチタン含有量は10〜38原子%が好ましい。チタン含有量が10原子%より少ない場合は所望の黒色度を持った粒子粉末を得にくくなり、チタン含有量が38原子%を超える場合は濃度の高い着色剤が得にくい。
本発明に係る鉄チタン複合酸化物の構成相としては、FeTiO3−Fe2O3固溶体及びNaFeTi3O8を含有することが好ましい。NaFeTi3O8を含有させる場合には、FeTiO3−Fe2O3固溶体を作製時に生成する、黒色沈殿物、又はそれらを含有する水懸濁液にナトリウム化合物を添加することで達成できる。ナトリウム化合物としては、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム又は塩化ナトリウム等が挙げられる。黒色沈殿物にナトリウム化合物を添加した場合、上記X線強度比(IB/IA)は0.010以上、0.150以下であることがより好ましい。また、水懸濁液にナトリウム化合物を添加する場合、上記X線強度比(IB/IA)は0.005以上、0.100以下で十分に効果が発揮できる。
また、Fe2TiO5、Fe2TiO4−Fe3O4固溶体、FeTiO3、FeTiO4、Fe2TiO5等の、化合物との混合物であっても良い。原材料である、Fe3O4や、γ−Fe2O3等のスピネル酸化鉄が存在しても良いが、着色剤の磁化及びトナーの磁化を下げるためには、これらの存在量を出来るだけ少なくする方が良い。
これらの化合物は、該黒トナーはX線回折において、2θ=29.5乃至30.5度のピーク(ピークC:ピーク強度IC)、2θ=25.0乃至26.0度のピーク(ピークD:ピーク強度ID)が、IC/IB≦1.0且つID/IB≦1.0であることが好ましい。
Fe3O4やγ−Fe2O3のピークであるICが大きい場合、磁化が大きくなり、現像器内での連れ回り現象とかが発生し、結果、多量の画出し工程を行った場合、トナーの現像性が下がる結果となる。そのため、IC/IB ≦1.0にすることが好ましい。
また、Fe2TiO5のピークであるIDが大きい場合、赤味を帯びやすくなり、本発明の効果が得にくくなる。そのため、ID/IB≦1.0にすることが好ましい。
本発明においては、Fe3O4や、γ−Fe2O3、Fe2TiO5の化合物を同時に減少させることが可能であり、このことが、電子写真特性を満足させる結果となった。
本発明に係る鉄チタン複合酸化物の着色力は、35〜44が好ましい。着色力が44を超える場合には、該鉄チタン複合酸化物を用いた非磁性黒色トナーの使用した場合に、十分な画像濃度を得ることが困難である。着色力が35未満の鉄チタン複合酸化物は工業的に製造することが出来ない。より好ましくは、35〜43である。なお、鉄チタン複合酸化物の着色力は以下のようにして測定した。試料0.5g、ヒマシ油0.5ml及びニ酸化チタン1.5gとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、該塗布片について、分光色彩系カラーガイド(BYK−Gardner GmbH製)を用いて測色し、JIS Z8729に定めるところに従って表色指数(L*値)で示した。
本発明に係る鉄チタン複合酸化物は、結着樹脂100質量部に対し15乃至60質量部含有することが望ましい。より好ましくは20乃至55質量部である。15質量部より少ない場合、本発明の鉄チタン複合酸化物を用いた場合においても、隠ぺい力が不十分になり画像濃度が不十分にやすい。60質量部より多い場合、濃度、黒色度が優れるものの、定着性が下がると共に、転写性能もダウンし、画像ムラやかさツキの原因になりやすい。
なお、本発明に係る鉄チタン複合酸化物は、Fe、Ti、Na、以外にMg、Al、Si、P、Mn、Co、Ni、Cu、及びZnから選ばれる1種又は2種以上の元素を鉄とチタンの全量に対して0〜10原子%含んでも良い。
これらの着色剤を用いる場合、特に、トナー中における分散状態を制御することにより、十分な黒色度を持つトナー得ることが出来る。
更に、該黒トナーの断面写真において、面積から求めた円相当径が0.1μm以上の該着色剤の(1)式で表される線形度の個数頻度分布が、2.4より小さい範囲に最大頻度が存在することが好ましい。より好ましくは、1.4乃至2.0の範囲に最大頻度を存在させると良い。
更に、3.0以上の線形度を持つ着色剤の存在量が、30個数%より少なくすることが好ましく、より、好ましくは20個数%より少なくすると良い。
線形度は以下のようにして求められる。
線形度={(着色剤の絶対最大長)2/着色剤の面積}×π/4 ・・(1)
本発明では、線形度を以上のように制御することにより、黒トナーにおいて濃度、黒色度の色の特性だけでなく、プロセスにより求められる、トナーの特性が向上するとことが分かった。
該黒トナーにおいて着色剤の線形度の最大頻度が2.4より大きい場合、濃度が下がると共に、分散状態は不十分になった。特に、ハーフトーン部の低温定着において、トナー間でのトナーの接合や、紙への染み込み阻害し、低温オフセット、はがれ等の定着不良を引き起こしやすくなった。すなわち、着色剤の局所的なつながりが、定着における熱伝導を阻害し、紙への染み込みを阻害し、定着性能が低下すると考えられる。
そのため、着色剤の線形度の分布を下げることが有効であるが、濃度と色見の両立から、各着色剤にあわせ適宜制御を行うと良い。例えば、着色剤が0.1μm以下の微粒子成分を多く含む場合、着色剤の線形度を下げると、赤味を呈すやすくなるため、1.4乃至2.0の範囲に最大頻度を存在させることがより好ましい。
3.0以上の線形度を持つ着色剤が30個数%を超える場合、カーボンブラックに比べ高抵抗な着色剤である本発明の着色剤を用いた場合においても、トナー内に電流経路ができ、転写性能が低下してしまう。その結果、転写効率ダウンによる文字再現性の低下等、画像における問題が発生しやすくなる。
線形度を満足するためには、着色剤の形状、粒度分布、トナー中での分散状態を関連して制御することが必要であり、本発明により達成できたものである。粉砕トナーに本着色剤を用い線形度を制御するためには、結着樹脂の粘度や、混練の温度制御の制御でも可能であるが、粘弾性の異な2種類の樹脂を用いて低温で混練したりすることも有効である。また、樹脂微粒子や無機の微粉体を添加し、混練することによっても有効であることが分かった。これは、これらの微粉体が、フィラーとして働き、線形度を変えることが出来たと考えられる。
一方着色剤としては、粒径の均一で、トナー製造時に凝集を起こしにくいものを用いることが有効である。本発明の着色剤である鉄チタン複合酸化物については、加熱焼成時の温度を、下げることにより、凝集塊を作らず、粒径の揃った着色剤を得ることが可能となった。加熱焼成時の温度を下げた場合、焼成時における酸化チタン等の未反応体が残りやすいが、予めTi原子を内部に含む化合物を出発原料に用いることにより、低温での焼成工程で本発明を満足できる着色剤を用意することが可能となった。
本発明に用いるトナーにおいては、結着樹脂、着色剤、無機微粒子を有し、更にオイルレス定着に用いられるトナーとして離型剤を含むことが好ましい。
本発明のトナーは、これらの原材料を混合し、溶融混練したのち、機械的衝撃により粉砕し、風力分級等で目的の粒径を得る粉砕法のトナーや、懸濁重合、懸濁溶解、乳化造粒等によりトナー粒子を得るトナーを用いることが出来る。
以下に、粉砕法のトナーについて詳しく述べる。
本発明において結着樹脂は「ポリエステルユニット」を含有することが望ましい。「ポリエステルユニット」とは、ポリエステルに由来する部分を示し、ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、又は二以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸エステル等のカルボン酸成分とが原料モノマーとして使用できる。
具体的には、例えば二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
前記カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
前記ポリエステル樹脂は、特に下記一般式(A)で代表されるビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
〔式中、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる一種以上であり、x、yは1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。〕
また、架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための三価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、及びこれらの酸無水物やエステル化合物が挙げられる。三価以上の多価カルボン酸成分の使用量は、全モノマー基準で0.1乃至1.9mol%が好ましい。
また、本発明においては、(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有しているハイブリッド樹脂成分、又は(c)それらの混合物を含むことが好ましい。
本発明のハイブリット樹脂ではビニル系樹脂成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物であるハイブリット樹脂を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明のビニル樹脂を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートがあげられる。
本発明のトナーに用いられる好ましい結着樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂成分をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去して製造される。尚、ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行なって合成されるエステル化合物を用いることができる。
(2)ビニル系重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/またはポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/またはビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。
(4)ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)乃至(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)乃至(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及び/またはポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
本発明に用いられる離型剤としては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。さらにベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。特に好ましく用いられるワックスとしては、分子鎖が短く、かつ立体障害が少なくモビリティに優れるパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスである。
本発明に用いるトナーにおいては、結着樹脂、着色剤、離型剤、無機微粒子を有するオイルレス定着に用いられるトナーが好ましい。結着樹脂がポリエステルユニットを含むこと、離型剤は、炭化水素系ワックスであり、前記トナーの示差熱分析測定における吸熱曲線において、温度30乃至200℃の範囲に一個又は二個以上の吸熱ピークを有し、前記吸熱ピークの中の最大吸熱ピークの温度が60℃乃至90℃であることが好ましい。60℃より低い場合、耐ブロッキング特性に劣り、90℃を超える場合、定着時において、低温での離型性が低下する。そのため、省エネの観点から望まれる低温定着を行うことができず、また定着構成においてもかなりの圧力を要する負荷を必要とするためである。
本発明に用いられる離型剤は、結着樹脂100質量部に対する含有量が1乃至10質量部であることが好ましく、2乃至8質量部であることがより好ましい。前記含有量が1質量部より少ないと、オイルレス定着時にうまく離型性を発揮できなかったり、低温定着性を満足できなかったりすることがある。10質量部を超えると、トナー表面へ離型剤が滲み出しやすくなり、白抜けが悪化する場合がある。
更に、離型剤としてのワックスをワックス分散マスターバッチとして添加しても良い。
ワックス分散マスターバッチとしては、(i)ポリエステル樹脂、(ii)炭化水素系ワックス、(iii)スチレン系モノマー、及び(メタ)アクリル酸系モノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを用いて合成された共重合体とポリオレフィンとを少なくとも有するものが良い。
本発明のトナーには、公知の荷電制御剤と組み合わせて使用することもできる。このような荷電制御剤としては、例えば、有機金属錯体、金属塩、キレート化合物で、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体等が挙げられる。その他には、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類等のカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体等も挙げられる。また、荷電制御剤としては、ビスフェノール類、カリックスアレーン等のフェノール誘導体等も用いられる。
本発明に使用する荷電制御剤としては、芳香族オキシカルボン酸及び芳香族アルコキシカルボン酸から選択される芳香族カルボン酸誘導体、または、該芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物であることが好ましく、その金属としては、2価以上の金属原子が好ましい。2価の金属としてMg2+,Ca2+,Sr2+,Pb2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Zn2+,Cu2+,が挙げられる。2価の金属としては、Zn2+,Ca2+,Mg2+,Sr2+が好ましい。3価以上の金属としてはAl3+,Cr3+,Fe3+,Ni3+,があげられる。これらの金属の中で好ましいのはAl3+,Cr3+であり、特に好ましいのはAl3+である。
本発明においては、荷電制御剤として、ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物が特に好ましい。
本発明においては、荷電制御剤は、結着樹脂100質量部に対する含有量が0.1乃至10質量部であることが好ましく、0.2乃至5質量部であることがより好ましい。0.1質量部より少ないと高温高湿から低温低湿までの環境でのトナーの帯電量の変化が大きくなる場合がある。10質量部より多いとトナーの低温定着性に劣る場合がある。
本発明の黒トナーはフルカラー用の黒トナーに用いることが好ましい。黒トナーと併用して用いるカラートナーの着色剤としては、公知の顔料及び染料を単独で、又は併せて用いることができる。例えば染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等が挙げられる。
フルカラー画像形成用トナーとして使用するマゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
係る顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1の如き油溶染料;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料が挙げられる。
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17;C.I.アシッドブルー6;C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。特に好ましく用いるのは、C.I.ピグメントブルー15:3である。
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、155、180、185、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。
カラートナーに用いる着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して1乃至15質量部であることが好ましく、3乃至12質量部であることがより好ましく、4乃至10質量部であることがさらに好ましい。着色剤の含有量が15質量部より多い場合には、透明性が低下し、加えて人間の肌色に代表されるような中間色の再現性も低下し易くなり、さらにはトナーの帯電性の安定性が低下し、また低温定着性も得られにくくなる。着色剤の含有量が1質量部より少ない場合には、着色力が低くなり、濃度を出すためにトナーを多く使用しなければならなくなり、ドット再現性を損ないやすく、高い画像濃度の高品位画像が得られ難い。
本発明では、黒トナーは重量平均径(D4)が3.0乃至7.0μmが好ましい。画像の細線再現性、着色力等小粒径のトナーが優れる一方で、トナーの帯電分布の制御による、白地のカブリや、耐久時におけるチャージアップ等トナーの小径化の問題が発生しやすい。特に、着色剤の不均一性がある場合、これらの小粒径のトナーを使いこなすためには、問題が発生しやすかった。本発明では、こららの小粒径における問題点を解決し、画像の鮮明さを実現することが可能となった。好まくは4.0乃至6.5μmである。
トナーには、流動性、転写性、特にトナー離れを良化して白抜けを向上させる目的で、微粒子を外添して用いる。トナー表面に外添される外添剤としては、そのうちの一つが無機微粒子であり、少なくとも、酸化チタン、酸化アルミナ、シリカのうちいずれか一種類以上であり、無機微粒子の平均粒径(個数分布のピーク値)が80nm以上200nm以下であることが、キャリアとのトナー離れを良化するためのスペーサー粒子として機能させる上で好ましい。また、前記外添剤には、平均粒径(個数分布のピーク値)が50nm以下の微粒子を併用して用いることが、トナーの流動性を向上させる上で好ましい。
本発明の二成分系現像剤に使用される磁性キャリアとしては、例えば表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属およびそれらの磁性合金または磁性酸化物及び磁性フェライトが挙げられる。
特に好ましくは、樹脂中に磁性粉が分散された磁性粉分散型のキャリアを用いることが良い。磁性粉分散型のキャリアは、キャリアの密度、磁化の調整が容易であり、低磁化低密度のキャリアを用いることで、高画質で且つ、電子写真に用いる各種材料の長寿命化を達成できる。
本発明においては、上述の磁性キャリアをキャリアコアとして、該キャリアコアの表面を被覆材で被覆した被覆キャリアを用いることが好ましい。
被覆キャリアにおいて、キャリアコアの表面を被覆材で被覆する方法としては、被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁させて塗布しキャリアコアに付着させる方法、あるいは、単に粉体状態で混合する方法が適用できる。
キャリアコアの被覆材としては、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは単独或は複数で用いる。
上記被覆材の処理量は、適宜決定すれば良いが、樹脂コートキャリアに対し好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%が良い。
本発明に用いられるキャリアは、50%体積平均粒径が好ましくは10〜80μm、より好ましくは20〜70μmであることが良い。
キャリアの50%体積平均粒径が10μm未満の場合には、二成分系現像剤のパッキングが強まり、トナーとキャリアとの混合性が低下し、トナーの帯電性が安定しにくくなり、さらにキャリアの感光体ドラム表面への付着が生じやすくなる。
キャリアの50%体積平均粒径が80μmを超える場合には、トナーとの接触機会が減ることから、低帯電量のトナーが混在し、カブリが発生しやすくなる。さらにトナー飛散が生じやすい傾向にあるため二成分系現像剤中のトナー濃度の設定を低めにする必要があり、高画像濃度の画像形成ができなくなることがある。
磁性キャリアを上記の50%体積平均粒径及び特定の粒度分布を有するように調整する方法としては、例えば、篩を用いることによる分級によって、行うことが可能である。特に精度よく分級を行うために、適当な目開きの篩を用いて数回繰り返してふるうことが好ましい。またメッシュの開口の形状をメッキ等によって制御したものを使うことも有効な手段である。
本発明の磁性キャリアとトナーは、比表面積が合う形で混合して用いることができる。
トナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、例えば50%体積平均粒径が40μmのキャリアを用いると、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2〜15質量%、好ましくは3〜13質量%、より好ましくは4〜10質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低くなりやすく、15質量%を超える場合ではカブリや機内飛散が生じやすく、現像剤の耐用寿命が短くなる傾向にある。小粒径の磁性キャリアを用いる場合、磁性キャリアの比表面積や、トナーの電化量を調整するために、適宜現像剤中のトナー濃度を増やすことが有効である。
トナー濃度としては、二成分現像剤100質量%に対し、4質量%乃至12質量%程度で用いることが、帯電量付与、カブリ、画像濃度、白抜け防止など考慮して好ましく用いられる。
次に図を用いて本発明の画像形成方法に関して説明する。
図1は本発明を実施した画像形成装置である電子写真方式のフルカラー機の概略構成図である。
図1において、ABCDの各ステーションは、フルカラー画像のそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するがステーションの色順については一切問わない。以下の説明において、例えば一次帯電器21とあれば、ABCD各ステーションにおける一次帯電器21A、21B、21C、21D指すものとする。それぞれのステーションにおいて、画像形成は次のように行われる。
まず、像担持体である感光ドラム4を回転自在に設け、該感光ドラム4を一次帯電器21で一様に帯電し、次に例えばレーザーのような発光素子22によって情報信号を露光して静電潜像を形成し、現像装置9で可視像化する。次に該可視像を転写帯電器23により転写紙搬送シート27により搬送された転写紙24に転写される。
転写紙24は各ステーションでイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像が順に重ね転写される。
この4色の各トナー像が積層された転写紙24は定着装置25で熱と圧力とにより混色及び定着され、フルカラー像として装置外に排出される。
本発明に関する物性の好適な測定法について以下に説明する。
<粒子の個数平均粒径(Dp)>
鉄チタン複合酸化物粒子の個数平均粒径(Dp)は、電子顕微鏡観察で撮影した画像の粒子に対して統計回折(グラフテック株式会社製デジタイザKD4620)を用いて、任意に350個測定し、その個数平均値(Dp)から求めた。
<二次粒子の体積平均粒径(Da)>
鉄チタン複合酸化物粒子の、二次粒子の体積平均粒径(Da)の測定には、水400ml中に、取り出した鉄チタン複合酸化物粒子約20mg、更に分散剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸Na約1mlを加え、5分間超音波を照射する。その後、レーザー回折式粒度分布測定装置、(Sympatec GmbH製 HEROS&SUCELLにより体積基準による平均粒子径(Da)を求める。
<トナーのX線回折の測定>
本発明の黒トナーのX線回折測定は、CuKα線を用い、該シリカ粉体をサンプルとして、次の条件で測定したものである。
使用測定機/理学電機(株)社製、全自動X線回折装置RINT−TTRII
X線管球/Cu
管電圧/50KV
管電流/300mA
走査モード/連続 スキャン速度/4deg./min
サンプリング間隔/0.020deg.
スタート角度(2θ)/3deg.
ストップ角度(2θ)/60deg.
発散スリット/開放
発散縦制限スリット/10.00mm
散乱スリット/開放
受光スリット/開放
湾曲モノクロメーター使用
なお、特定ピークの回折角、半値幅の測定においては、測定精度を上げるため、以下の項目を変更し測定した。
走査モード/FTモード 計数時間/1.0sec
サンプリング間隔/0.005deg.
スタート角度(2θ)/32deg.
ストップ角度(2θ)/34deg.2θ=32.0〜34.0度の範囲で
<鉄チタン複合酸化物のTi原子の含有量>
鉄チタン複合酸化物のFe原子に対するTi原子の含有量の測定は、まず検量線用サンプルを用いて検量線を作成し、検量線から測定試料の添加量を算出する。詳細には、「蛍光X線分析装置 RIX−2100型」(理学電気工業(株)製)中へ検量線用サンプルを入れ、X線強度を測定した。濃度の異なる複数(例えば、比Ti/Feが0、0.1、0.2,0.3、0.4のサンプルに対して測定を繰り返し、検量線を作成した。次に測定試料のX線強度を測定し、検量戦に基づき、Ti原子の含有量を求めた。なお、蛍光X線分析は、JIS K0119蛍光X線分析通則に従って行う。
なお、試料に樹脂との混練物を用いる場合は、試料プレス成型機(MAEKAWA Testing machine(MFG Co.,LTD製)を用いてサンプルをプレス成形する。試料に鉄チタン複合酸化物を用いる場合には、鉄チタン複合酸化物と樹脂を混合し、トナーでの作製と同様に、試料プレス成型機を用いサンプルを成形した。プレスは約4gのサンプルに対して、196000kPa(2000kgw/cm2)の圧力を約30秒かけることにより行い、厚さ約2mmで、直径約39mmの測定片を作製した。
次に、2θテーブルよりFe原子及びTi原子のKαピーク角度(a)を求め、「蛍光X線分析装置 RIX−2100型」(理学電気工業(株)製)中へ検量線用サンプルを入れ、各々のサンプルのX線強度を求めた。なお、蛍光X線分析は、JIS K0119蛍光X線分析通則に従って行う。得られた信号を、検量線より求めた、Fe原子及びTi原子の信号より算出し、Ti原子の含有量とする。
<鉄チタン複合酸化物のBET比表面積値>
「Mono Sorb MS−II」(湯浅アイオニックス(株)製)を用いて、N2吸着によるBET多点法により求める。サンプルの前処理としては、50℃で10時間の脱気を行う。
<トナー粒子又はトナーの粒度分布の測定>
測定装置としては、コールターカウンターTA−II或いはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、約1%NaCl水溶液を用いる。電解液には、1級塩化ナトリウムを用いて調製された電解液や、例えば、ISOTON(登録商標)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン塩酸)を、0.1〜5mlを加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、前記測定装置により、試料の体積及び個数を各チャンネルごとに測定して、試料の体積分布と個数分布とを算出する。得られたこれらの分布から、試料の重量平均粒径を求める。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
<鉄チタン複合酸化物及びトナーの磁化の測定>
着色剤及びトナーの磁化の強さは、磁気特性と真比重とから求められる。着色剤及びトナーの磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を用いて測定することができる。測定方法としては、円筒状のプラスチック容器に十分密になるように鉄チタン複合酸化物、またはトナーを充填し、一方で10キロエルステッド(796kA/m)の外部磁場を作り、この状態で前記容器に充填したサンプルの磁化モーメントを測定する。さらに、前記容器に充填したサンプルの実際の質量を測定して、サンプルの磁化の強さ(Am2/kg)を求める。
<ワックスの吸熱ピークの測定方法>
示差走査熱量計(DSC測定装置),DSC−7(バーキンレルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。測定試料は2〜10mg、好ましくは5mgを精密に秤量する。これをアルミバン中に入れ、リファレンスとして空のアルミバンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線のメインピークの吸熱ピークが得られる。
<トナー粒子中の着色剤の線形度の測定>
トナーを水溶性樹脂(Tissue−Tek O.C.T Compound(Sakura Finetechnical Co.,Ltd.,Tokyo,Japan))中に分散させ、液体窒素を用いて、クライオミクロト―ム(Reichert社製 ULTRACUT N FC4E)装置内での設定温度−80℃雰囲気下にて水溶性樹脂を凍結させて固定した後、ガラスナイフを用いて切削面形状を約0.1ミリ幅、約0.2ミリ長にトリミングした。次にダイヤモンドナイフを用いて、水溶性樹脂を含むトナーの超薄切片(厚み設定:70nm)を作製し、まつげプローブを用いてTEM観察用グリッドメッシュ上に移動し、室温に戻した後、水溶性樹脂を純水に溶解させTEM観察試料とした。
これを電子顕微鏡H−7500(日立製作所製)を用いて、加速電圧100kVにて、写真を撮った。倍率は5000〜10000倍とする。
その画像情報をインターフェースを介して、600dpiで読み取り、画像解析装置Win ROOF Version5.0(マイクロソフト社製−三谷商事)に導入し、2値の画像データに変換する。そのうち、0.1μm以上の粒径を有する着色剤粒子についてのみ無作為に解析を行うこととし、サンプリング数が100回を超えるまで測定を繰り返し、着色剤粒子の線形度を求める。更に、この線形度分布を、0.2刻みで1.0から5.0まで頻度分布をとり、その最大頻度の範囲を求めた。また、3.0以上の存在量については、線形度の全範囲に対し、線形度3.0以上の頻度分布を求めた。
次に、画像形成装置を用いた黒トナーの評価方法について説明する。評価にはキヤノン製フルカラー複写機CLC5000を用い、レーザーは655nmの半導体レーザーを用い、スポット径を絞り、1200dpiで出力出来るようにした。また、定着ユニットの定着ローラーの表層をシリコーンチューブに変え、オイル塗布機構を取り外した改造機を作製し評価を行った。
<キャリアの密度の測定>
キャリアの真密度は、例えば、乾式自動密度計アキュピック1330(島津製作所(株)社製)により測定することができる。
<白地カブリ>
画像部濃度が1.4程度になるように、且つ白地部の電位(VD)と現像スリーブに印加される現像バイアスの直流成分(VDC)との電位差が150V(Vback)となるように、感光体上の電位を調整した。この条件でベタ白の画像形成を行い、画像形成中に感光体を止め、転写工程前の感光体上のトナーをマイラーテープを用いて剥ぎ取り、紙上に貼り付けた。また、マイラーテープをそのまま紙上に、貼り付けリファレンスとした。
測定に関しては、東京電色技術センター製DENSITOMETER TC−6DSを用い、反射率(%)を、測定し、レファレンスとの差分をカブリの値とした。
A:感光体上の反射率差が0.5%以下であり、良好なもの。
B:感光体上の反射率差が1.0%以下であり、画像として判別できないもの。
C:感光体上の反射率差が1.0%を超えるが、画像として現れず、実使用上問題ないもの。
D:感光体上の反射率差が1.0%を超え、画像上白地部にかぶりが見られるもの。
文字品位
<細線再現性の測定>
前記トナー及び前記改造機を用いて30H画像を形成し、この画像を目視にて観察し、前記画像の細線再現性について以下の基準に基づき評価した。なお、30H画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hをベタ白とし、FFHをベタ黒とするときのハーフトーン画像である。
A:全くガサツキを感じなく、なめらかである。
B:ガサツキを余り感じない。
C:ややガサツキ感はあるが、実用上問題ないレベルである。
D:ガサツキ感があり、問題である。
E:非常にガサツキ感がある。
<定着試験>
ベタ黒画像(FFH)の場合の載り量が1.0mg/cm2になるように画像を作製した。次に、このコントラスト条件で、ハーフトーン画像(30H)を作製し、定着器を通さず未定着画像として取り出した。一方、レーザージェット4100(ヒューレットパッカード社製)の定着器を取り外し、温度制御可能な外部定着試験用装置を作製した。この装置を用いて定着温度を変化させながら、A4紙上に上記の未定着画像の定着を行った。得られた定着画像に対して、こすり試験で画像が剥れるかどうかのコールドオフセット評価を行った。こすり試験においては、荷重4.9kPaでシルボン紙で10往復こすった際に、画像濃度低下率が10%を超える場合に画像が剥れたと判断した。また、定着器の1周後の白地部分に前周の画像が現れるかどうかのホットオフセット評価を目視で行った。なお、定着器の紙送り速度は100mm/sに設定した。
得られた、定着画像のこすり試験で画像が剥がれるかどうかのコールドオフセット試験、定着器の1周後の白地部分に前周の画像があらわれるかどうかのホットオフセット評価を行った。
A:ベタ画像の定着可能範囲が40℃以上あり、この領域でハーフトーン領域でのオフセットが発生しないもの。
B:ベタ画像の定着可能範囲が30〜40℃の範囲であり、この領域でハーフトーン領域でのオフセットが発生しないもの。
C:ベタ画像の定着可能範囲が30〜40℃の範囲あるが、この領域でハーフトーン領域でのオフセットが発生したもの。
D:定着可能範囲が30未満のもの。
<転写効率>
感光体上に載り量が0.6mg/cm2になるように感光体の電位コントラストを調整し、転写紙上に転写した画像と、感光体上の転写残の画像濃度を濃度計(X−rite 500Series)を用いて測定した。画像濃度から、載り量を換算し転写紙上への転写効率を求めた。なお、転写電流を変化させ、転写電流に対する転写効率のプロファイルを求めた。
次に、黒トナーの着色剤代わりに、C.I.Pigment Blue 15:3を5質量部用いたシアントナーを作製(実施例14のシアントナー1)し、紙上に転写した後、黒トナーの転写位置、黒トナーを流さず転写電流をかけ、紙から感光体に剥ぎ取られるトナー量を転写電流を振りプロファイルを取った(いわゆる再転写プロファイル)。このシアントナーと黒トナーの再転写と転写効率のプロファイルの比較を行った。
A:シアンの再転写効率が5%以内(紙上に95%以上)で、黒トナーの転写効率が95%以上になる転写電流条件が存在する。
B:シアンの再転写効率が5%以内(紙上に95%以上)で、黒トナーの転写効率が93%以上になる転写電流条件が存在する。
C:シアンの再転写効率が5%以内(紙上に95%以上)で、黒トナーの転写効率が90%以上になる転写電流条件が存在する。
D:シアンの再転写効率が5%以内(紙上に95%以上)で、黒トナーの転写効率が90%未満である。
<画像濃度>
画像濃度に関しては、X−rite社製反射濃度計500 Series Spectrodensitemeterを用いて評価した。
<黒の色相>
前記改造機を用いて、紙上(カラーレーザーコピア用紙TKCLA4、キヤノン製)に7段階(0.10g/cm2、0.15g/cm2、0.20g/cm2、0.25g/cm2、0.30g/cm2、0.35g/cm2、0.40g/cm2)で載り量を変化させて定着画像を形成し、各定着画像について、Gretag Macbeth社製 Spectroscanを用い(測定条件:D65、視野角2度)、CIE a*、b*を測定した。7段階の載り量に対する色度をプロットし、各点をなめらかに結ぶ曲線を引き、曲線上での、原点(a*=0、b*=0)からの最大の距離になる値を求めた。評価基準は以下のとおりである。
A:c*最大値が3以内である。
B:c*最大値が5以内である。
C:c*最大値が10以内である。
D:c*最大値が10を超えるもの。
なおc*=((a*)2+(b*)2)1/2で求められる。
<トナー電荷量の測定>
キヤノン製フルカラー複写機CLC5000改造機を用い測定を行った。
現像器に、現像剤を入れ、現像ローラー上のキャリアの載り量を、30mg/cm2になるように、規制ブレードで調整した。また、現像ローラーと感光体の間隔は400μmになるように調整した。
感光体はOPC感光体を用い、非露光部電位:−700V、露光部電位:−200V、バイアス電位をDC:−500V、AC:本体設定に設定した。表面電位変化量の測定で用いた評価機に、現像剤を入れトナー電荷量の測定を行った。
感光体上のトナー電荷量は、吸引式ファラデーケージ法を用いて求める。吸引式ファラデーケージ法とは、現像剤回収装置を用いて複写機又はプリンターの現像スリーブ上の一定面積における全ての一成分系現像剤を吸引回収し、回収した現像剤の電荷量及び吸引部の面積を測定し、測定された現像剤の電荷量と面積から、現像剤の単位面積当たりの電荷量、すなわち、トナー電荷量(μC/m2)を求める方法である。
この吸引式ファラデーケージ法で用いる現像剤回収装置は、エアーを吸引するための吸引装置部及びこの吸引装置に連結された現像剤を回収するための回収装置部とを有している。回収装置部は、現像スリーブ上の現像剤を吸引するための現像スリーブの外周曲率に対応した曲率の先端部を持った吸引口を有する外筒と、吸引した現像剤を回収するための円筒ろ紙を有する内筒とを有している。
この現像剤回収装置を用いて現像スリーブ上の現像剤の吸引回収を具体的に行うには、現像剤保持体から静電保持体上にトナーを現像し、トナー像が転写紙上に転写されるまでに停止し、上記の現像剤回収装置を用いて、静電保持体上の現像剤を、現像スリーブの一端側から他端側にかけて長手方向に沿って現像剤回収装置の吸引口を現像スリーブ表面に押し付けながら吸引し、吸引した現像剤を円筒ろ紙で回収する。
本実施例で用いた条件の場合、トナー電荷量が500μC/m2より大きい場合、白抜け、濃度ムラ等を改善することが出来た。トナー電荷量が500μC/m2より小さい場合、トナー電荷量が小さくなるに従い、白抜け、ムラ等が顕著にみられるようになった。
なお、評価基準は以下のようにした。
A:トナー電荷量が530μC/m2より大きい場合
B:トナー電荷量が530μC/m2以下の場合
C:トナー電荷量が500μC/m2以下の場合
D:トナー電荷量が470μC/m2以下の場合
(鉄系黒色粒子の製造例−1)
2.76NのNaOH溶液22.2Lに、1.8mol/Lの硫酸第一鉄水溶液17.8Lを添加し、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後この反応溶液を85℃に昇温し、200分間空気を通気するとともに0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液18Lを添加し、黒色沈殿物を生成した。この間、温度85℃、pH6.0に保持した。
この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、黒色沈殿物100gに対し、硫酸ナトリウム4.2gを加えて混合した。次いで得られた混合物をN2ガス流下730℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、ナトリウム含有鉄チタン複合酸化物を得た。
得られた黒色粒子粉末の個数平均粒子径(Dp)は0.22μm、標準偏差σは0.057μm、粒度分布(σ/D50)は32.8%、二次粒子の体積平均粒子径(Da)は0.51μm、Da/Dp=2.32、BET比表面積値は10.2m2/gであり、飽和磁化値σs(796kA/mでの磁化値)は0.28Am2/kgであり、全鉄に対するチタン含有量は26.5原子%であった。構成相はFeTiO3−Fe2O3固溶体とNaFeTi3O8の混合物であった。これを黒着色剤1とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−2)
球状マグネタイト粒子粉末10kgを含有する水懸濁液に、硫酸チタニル43.6molを含有する水溶液(マグネタイト粒子粉末の全Feに対してTi換算で30原子%に相当)を添加する。なお添加時に反応溶液のpHを8.5以上に保持するように混合溶液中にNaOHを添加した。次いで、混合溶液のpHを8.0に調整してマグネタイト粒子の粒子表面にチタンの含水酸化物を沈着させた後、濾別、水洗、乾燥して粒子表面がチタン含水酸化物で被覆されている球状黒色磁性酸化鉄粒子粉末を得た。この球状黒色磁性酸化鉄粒子粉末を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、黒色沈殿物100gに対し、硫酸ナトリウム4.2gを加えて混合した。次いで、N2ガス流下740℃で120分間加熱焼成した後、粉砕処理して、ナトリウム含有鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤2とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−3)
鉄系黒色粒子の製造例−2の乾燥工程を、790℃で120分間に変更した以外は同様にして、ナトリウム含有鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤3とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−4)
鉄系黒色粒子の製造例−1で作製した黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、黒色沈殿物100gに対し、硫酸ナトリウム0.3gを加えて混合した。次いで得られた混合物をN2ガス流下730℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、ナトリウム含有鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤4とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−5)
鉄系黒色粒子の製造例−1で作製した黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、黒色沈殿物100gに対し、硫酸ナトリウム10gを加えて混合した。次いで得られた混合物をN2ガス流下730℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、ナトリウム含有鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤5とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−6)
鉄系黒色粒子の製造例−1の乾燥工程を、760℃で120分間に変更した以外は同様にして、ナトリウム含有鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤6とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−7)
2.76NのNaOH溶液22.2Lに、1.8mol/Lの硫酸第一鉄水溶液17.8Lを添加し、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後この反応溶液を90℃に昇温し、150分間空気を通気するとともに0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液3.33Lを添加し、黒色沈殿物を生成した。この間、温度90℃、pH6.5に保持した。
更に、この黒色沈殿物を含む水懸濁液に、硫酸チタニル水溶液を16.67Lを加え、粒子表面がチタンで被覆されている黒色沈殿物を得た。
この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、さらにN2ガス流下790℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤7とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−8、9)
0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液の添加量を20L、pH9.5の条件に変更した以外は、鉄系黒色粒子の製造例−1の条件と同じようにして、黒色沈殿物を生成した。この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、さらにN2ガス流下730℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤8とする。
硫酸チタニル水溶液の添加量の変わりに、4塩化チタン水溶液を用い、チタン処理量を半分にした以外は、鉄系黒色粒子の製造例−1の条件と同じようにして、黒色沈殿物を生成した。この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、さらにN2ガス流下820℃で120分間加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤9とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−10)
鉄系黒色粒子の製造例−7の、硫酸チタニル水溶液から、四塩化チタニル水溶液に変更した。1回目の四塩化チタニル水溶液は四塩化チタン換算で3.2molになるよう添加し、2回目の四塩化チタニル水溶液は四塩化チタン換算で8molになるように変更した以外は、鉄系黒色粒子の製造例−2と同じ条件で、粒子表面がチタンで被覆されている黒色沈殿物を得た。
この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、さらにN2ガス流下770℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤10とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−11)
1回目の硫酸チタニル水溶液の添加量を10Lに、2回目の硫酸チタニル水溶液の添加量を10Lに変更した以外は、鉄系黒色粒子の製造例−10と同じ条件で、粒子表面がチタンで被覆されている黒色沈殿物を得た。
この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、さらにN2ガス流下740℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤11とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−12、13)
鉄系黒色粒子の製造例−1で作製した黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、黒色沈殿物100gに対し、硫酸ナトリウムの添加量を、0.5g、7.5gの二水準に変更した。次いで得られた混合物をN2ガス流下720℃で80分間加熱焼成した後、粉砕処理して、ナトリウム含有鉄チタン複合酸化物を得た。これを黒着色剤12、13とする。
(鉄系黒色粒子の製造例−14)
2.76NのNaOH溶液22.2Lに、1.8mol/Lの硫酸第一鉄水溶液17.8Lを添加し、全量40L、pH6.5の水酸化鉄塩コロイドを含む反応溶液を得た。その後この反応溶液を90℃に昇温し、100分間空気を通気するとともに0.48mol/Lの硫酸チタニル水溶液20Lを添加し、黒色沈殿物を生成した。その後、NaOH溶液を添加し、温度90℃、pH12.0に保持した。
この黒色沈殿物を濾別、水洗後、60℃で乾燥し、黒色沈殿物100gに対し、硫酸ナトリウム4.2gを加えて混合した。次いで得られた混合物をN2ガス流下810℃で60分間加熱焼成した後、粉砕処理して、ナトリウム含有鉄チタン複合酸化物を得た。
得られた黒色粒子粉末の個数平均粒子径(Dp)は0.23μm、二次粒子の体積平均粒子径(Da)は0.52μm、Da/Dp=2.26、BET比表面積値は6.9m2/gであり、飽和磁化値σs(796kA/mでの磁化値)は1.0Am2/kgであり、全鉄に対するチタン含有量は30.8原子%であった。構成相はFeTiO3−Fe2O3固溶体とNaFeTi3O8の混合物であった。これを黒着色剤14とする。
この黒色粒子粉末14にNaFeTi3O8が検出された理由としては、黒色沈殿物を濾別前にNaOH溶液を添加し、pHを高く設定したためと考えられる。
(ハイブリッド樹脂の製造方法−1)
ビニル系共重合体として、スチレン1.9mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.15mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、ジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れる。また、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.0mol、コハク酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0mol、フマル酸5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計,撹拌棒,コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、145℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系樹脂の単量体、架橋剤及び重合開始剤を4時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、4時間反応せしめてハイブリッド樹脂(1)を得た。
(ポリエステル樹脂製造例1)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.6mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.4mol、テレフタル酸3.0mol、無水トリメリット酸0.2mol、フマル酸1.7mol及び酸化ジブチル錫0.1gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計,撹拌棒,コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。窒素雰囲気下で、215℃で5時間反応させ、ポリエステル樹脂(1)を得た。
(ポリエステル樹脂製造例2)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.6mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.4mol、テレフタル酸2.0mol、無水トリメリット酸0.2mol、フマル酸2.7molのモノマー構成で上記と同様に反応させ、ポリエステル樹脂(2)を得た。
(キャリアの製造例)
個数平均粒径0.25μmのマグネタイト粉と、個数平均粒径0.60μmのヘマタイト粉に対して、夫々4.0質量%のシラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内で100℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を親油化処理した。
・フェノール 10質量部
・ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド40%、メタノール10%、水50%)
6質量部
・親油化処理したマグネタイト 63質量部
・親油化処理したヘマタイト 21質量部
上記材料と、28%アンモニア水5質量部、水10質量部をフラスコに入れ、攪拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて硬化させた。その後、30℃まで冷却し、更に水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性体が分散された状態の球状の磁性樹脂粒子を得た。
コート材として、メチルメタクリレートとパーフルオロアルキル基(炭素数7(即ち−(CF2)6−CF3))を有するメチルメタクリレートの共重合体(共重合比8:1 重量平均分子量45,000)をさらにコート樹脂100質量部に対し、メラミン粒子(個数平均粒径290nm)を10質量部、カーボン粒子(比抵抗1×10-2Ω・cm、個数平均粒径30nm)を6質量部加えて混合し、メチルエチルケトン:トルエン=1:10である混合溶液に、固形分濃度が10質量%となるように添加した。そして、超音波分散機で30分間分散することにより、コート溶液を作製した。
このコート溶液を剪断応力を連続して加えながら溶媒を70℃で揮発させて、磁性樹脂粒子表面への樹脂コートを行った。この樹脂コートされた磁性キャリア粒子を100℃で2時間撹拌しながら熱処理し、冷却後、解砕した後、200メッシュ(目開き75μm)の篩で分級して個数平均粒子径33μm、真比重3.53g/cm3、見かけ比重1.84g/cm3、磁化の強さ42Am2/kg(磁場79.6kA/mでの測定値)のキャリア(磁性キャリア1)を得た。
<実施例1>
以下の方法で黒トナー(ブラック1)を調製した。
・ハイブリッド樹脂(1) 100質量部
・黒着色剤1 30質量部
・ワックスA(パラフィン DSCによる吸熱ピーク68℃) 5質量部
・ワックス分散剤 2質量部
・ジ−ターシャリブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(荷電制御剤) 1質量部
(但し、ワックス分散剤は、ポリエチレンにスチレン−アクリル−アクリロニトリルをグラフト重合させたもの)
上記の処方の材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度140℃に設定した二軸混練機(PCM−45型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られたトナー粗砕物を、高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機を用いて粉砕した。得られた微粉砕物は、重量平均径4.5μmであった。次に、得られた微粉砕物を多分割分級装置で微粉及び粗粉を同時に厳密に除去してブラック分級品を得た。
得られたブラック分級品100質量部に対して、疎水化処理した平均粒径40nm酸化チタンを1.0質量部、平均粒径110nmのアモルファスシリカを2.0質量部外添混合し、黒トナー(黒トナー1)を得た。得られた黒トナーは、重量平均粒径4.8μm、個数平均粒径4.0μmであった。
この黒トナーを7質量部に対し、磁性キャリア1を93質量部をターブラーミキサーにより混合し、現像剤とした。
この現像剤を用いて、キヤノン製フルカラー複写機CLC−5000の改造機を用い、黒トナーの電子写真における特性の評価を行った。黒トナーの特性を表3に、改造機における試験結果を表4に記載する。
<実施例2、3>
実施例1で用いた黒着色剤1の添加量を表2載の量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、黒トナー2、3を作製した。詳しい、作製条件、及び結果は表1〜4に示す。
<比較例1、2>
実施例1で用いた黒着色剤1の代わりに、黒着色剤2、3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、黒トナー4、5を作製した。詳しい、作製条件、及び結果は表1〜4に示す。
<比較例3、4>
実施例1で用いた黒着色剤1の添加量を表2載の量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、黒トナー6、7を作製した。詳しい、作製条件、及び結果は表1〜4に示す。
<比較例5、6>
実施例1で用いた黒着色剤1の代わりに、黒着色剤6、7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、黒トナー8、9を作製した。詳しい、作製条件、及び結果は表1〜4に示す。
<実施例4〜12>
表1で示した、原材料を用いたとこと以外は、実施例1と同様にして、黒トナー10〜18を作製した。詳しい、作製条件、及び結果は表1〜4に示す。なお、ワックスBは、DSCによる吸熱ピーク85℃であるパラフィンワックスであり、ワックスCは、DSCによる吸熱ピーク62℃であるパラフィンワックスを用いた。
なお、実施例12に使用した、黒トナーは、濃度も高く、良好な評価結果が得られた。これは、黒色沈殿物を含む水懸濁液に、NaOH溶液を添加することにより製造したため、黒着色剤中のNaFeTi3O8の生成や、粒子の形成が効果的に働いたためと考えられる。
<実施例13>
以下の方法でシアントナー(シアン1)を調製した。
(第一の混練工程)
・ハイブリッド樹脂樹脂(1) 60質量部
・Cuフタロシアニンのろ過工程から、顔料スラリーから水をある程度除去し、ただの一度も乾燥工程を経ずに得た固形分40質量%の第1のペースト状顔料(残りの60質量%は水) 100質量部
上記の原材料を上記の処方でまずニーダー型ミキサーに仕込み、混合しながら非加圧下で昇温させる。最高温度(ペースト中の溶媒の沸点により必然的に決定される。この場合は90〜100℃程度)に達した時点で水相中の顔料が、溶融樹脂相に分配もしくは移行し、これを確認した後、さらに30分間加熱溶融混練させ、ペースト中の顔料を充分に移行させる。その後、一旦、ミキサーを停止させ、熱水を排出した後、さらに130℃まで昇温させ、約30分間加熱溶融混練を行ない、顔料を分散させるとともに水分を留去し、該工程を終了した後、冷却させ、混練物を取り出し第1の混練物を得た。この第1の混練物の含水量は0.5質量%程度であった。
(第二の混練工程)
・ハイブリッド樹脂(1) 92.5質量部
・上記第1の混練物(顔料粒子の含有量40質量%) 12.5質量部
・ワックスA(パラフィンDSCによる吸熱ピーク68℃) 5質量部
・ワックス分散剤 2.0質量部
・ジ−ターシャリブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(荷電制御剤)1.0質量部
上記の処方の材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られたトナー粗砕物を、実施例1と同様に高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機を用いて粉砕し、多分割分級装置で微粉及び粗粉を同時に厳密に除去してシアン分級品を得た。
得られたシアン分級品100質量部に対して、疎水化処理した平均粒径40nm酸化チタンを1.0質量部、平均粒径110nmのアモルファスシリカを1.5質量部外添混合し、シアントナー(シアン1)を得た。得られたシアントナーは、重量平均粒径5.5μmであった。
このシアントナーを8質量部に対し、磁性キャリア1を92質量部をターブラーミキサーにより混合し、現像剤とした。
次に、Cuフタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3 以下PB−15:3と記す)の代わりに、C.I.Pigment Yellow 74(以下PY−74と記す)、C.I.Pigment Red 122(以下PR−122と記す)を用い、表1に示す含有量になるように添加し、あとは実施例シアン1の作製と同様にしてイエロートナー1、マゼンタトナー1を作製した。また、実施例1で作製した黒トナー1を用い、4色の現像剤を用意した。
あとは、実施例1で用いた評価機でフルカラーの画像評価を行ったところ、鮮明で画像欠陥のないフルカラー画像を得ることが出来た。