JP4931518B2 - 皮膜を有する部材及び皮膜形成方法 - Google Patents

皮膜を有する部材及び皮膜形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、皮膜を有する部材及び皮膜形成方法に関する。
産業用製造ラインの部品に用いる部材には、業務用の接着剤の粘着や、成形樹脂の残留物の付着等を防止できること、つまり、非粘着性を有することが要求される。
特に、近年、精密性が要求される自動車部品及びIT部品の製造ラインや、試験製造装置等の部品に好適に用いることができる非粘着性部材に関するニーズがある。
従来より、基材表面に、フッ素樹脂コーティング等により、部材に非粘着性、撥水性及び離型性を付与する技術がある。
しかしながら、フッ素樹脂コーティング等により皮膜を形成してなる部材は、塗膜の密着性が弱いため、耐摩耗性が劣る。つまり、耐久性の点で問題がある。
この問題を解決した皮膜形成技術が特許文献1に開示されている。特許文献1の皮膜形成技術によれば、特定の下塗り塗膜層、中塗り塗膜層及び上塗り塗膜層を順次形成することにより、非粘着性及び離型性だけでなく、耐久性をも付与できる。
しかしながら、特許文献1の技術により皮膜を形成させる場合、皮膜の膜厚が数μm以上、場合によっては数十μm以上になりやすく、膜厚の薄い皮膜を形成させることが困難である。
特に、精密性が要求される自動車部品及びIT部品(例えば半導体)の製造ラインや、試験製造装置等の部品に用いられる部材ついては、形状が複雑になるにつれて、膜厚をより薄く、具体的には膜厚を1μm以下にすることが求められている。
特開2004−74646公報
本発明の主な目的は、撥水性、非粘着性(離型性)及び耐久性に優れた皮膜を有する部材及び該皮膜の形成方法を提供することである。
本発明者は、上記のような従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の方法により形成された皮膜を有する部材が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の皮膜を有する部材及び皮膜形成方法に係る。
1. 金属基材又はセラミックス基材表面に、アミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液を塗布することにより形成された皮膜を有する部材。
2. 金属が、合金鋼、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金である上記項1に記載の部材。
3. アミノ基含有シラノール誘導体が、下記一般式:

CH3−[Si(CH3)2O]m−[Si(CH3)(R1NH2)O]n−Si(OR2)3 (1)

(式中、mは1〜20の整数、nは1〜20の整数、R1はアルキレン基、R2は水素原子又はアルキル基を示す。)
で表される化合物である上記項1又は2に記載の部材。
4. 前記溶液がアミノ基含有シラノール誘導体を0.1〜10容量%含む上記項1〜3のいずれかに記載の部材。
5. 部材が、プレス金型用部材又はインジェクション金型用部材である上記項1〜4のいずれかに記載の部材。
6. 部材が、ゴム成型用金型部材又は樹脂成形用金型部材である上記項1〜5のいずれかに記載の部材。
7. 金属基材又はセラミックス基材表面に皮膜を形成させる方法であって、
(1)前記基材表面にアミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液を塗布することにより塗布物を得る工程、及び
(2)工程(1)により得られた塗布物を乾燥させることにより皮膜を形成させる工程
を含む皮膜形成方法。
8. 金属が、合金鋼、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金である上記項7に記載の皮膜形成方法。
9. アミノ基含有シラノール誘導体が、下記一般式:

CH3−[Si(CH3)2O]m−[Si(CH3)(R1NH2)O]n−Si(OR2)3 (1)

(式中、mは1〜20の整数、nは1〜20の整数、Rはアルキレン基、Rは水素原子又はアルキル基を示す。)
で表される化合物である上記項7又は8に記載の皮膜形成方法。
10. 前記溶液がアミノ基含有シラノール誘導体を0.1〜10容量%含む上記項7〜9のいずれかに記載の皮膜形成方法。
11. 工程(1)において、はけ塗り法、カーテンコート法、遠心塗布法、ディッピング法及びスプレー法から選ばれる少なくとも1種の方法により前記基材表面に前記溶液を塗布する上記項7〜10のいずれかに記載の皮膜形成方法。
12. 部材が、プレス金型用部材又はインジェクション金型用部材である上記項7〜11のいずれかに記載の皮膜形成方法。
13. 部材が、ゴム成型用金型部材又は樹脂成形用金型部材である上記項7〜12のいずれかに記載の皮膜形成方法。
皮膜を有する部材
本発明の部材は、金属基材又はセラミックス基材表面に、アミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液を塗布することにより形成された皮膜を有するものである。
本発明の部材は、皮膜を基材表面の全体又は一部に形成してなるものである。
基材に用いる金属としては、皮膜を好適に形成できるものであればよいが、特に合金鋼、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
合金鋼としては、例えばステンレス鋼、耐火鋼、耐熱鋼等が挙げられる。
アルミニウム合金としては、JIS規格2000系〜7000系のアルミニウム合金を好適に使用できる。JIS規格2000系〜7000系のアルミニウム合金としては、例えば、2000系のAl−Cu合金、3000系のAl−Mn合金、4000系のAl−Si合金、5000系のAl−Mg合金、6000系のAl−Mn−Si系合金、7000系のAl−Zn−Mg系合金等が挙げられる。
これら金属の中でも特に、炭素鋼及び鋳鉄が好ましい。
セラミックスとしては、例えば、アルミナ系セラミックス、シリカ系セラミックス、チタニア系セラミックス、炭化珪素系セラミックス、ジルコニア系セラミックス等が挙げられる。この中でも特に、ジルコニア系セラミックスが好ましい。
基材の形状は特に限定されず、板状、円板状、棒状等のいずれの形状であってもよく、また、複雑な形状であってもよい。特に、後記の皮膜形成方法によれば、複雑な形状の基材に対しても好適に皮膜を形成させることができる。
基材の表面粗さは、特に限定されないが、Ra(中心線平均粗さ)が5μm未満が好ましく、0.005μm〜0.3μmがより好ましく、0.03〜0.3μmがさらに好ましい。Raが0.3μm以下の場合、基材表面に対して皮膜をより確実に密着させることができる。なお、Raが0.03未満の場合、そのような基材を用意するのに高いコストがかかる。
また、Rmax(最大高さ)は50μm未満が好ましく、0.3〜3μmがより好ましい。Rmaxが0.3〜3μm、特に1μm程度の場合、アンカー効果による基材と皮膜との密着性の向上と、点接触になることによる非粘着性及び撥水性の向上を図ることができる。Rmaxが50μmを超える場合、非粘着性(離型性)の効果よりもアンカー効果の方が大きく影響することにより、本来非粘着性を発現したい相手材に対しても密着性を発現するおそれがある。
「アミノ基含有シラノール誘導体」とは、1分子内にアミノ基を含む有機基とシラノール基(またはその誘導体)とを有する化合物をいう。
例えば、下記一般式:
CH3−[Si(CH3)2O]m−[Si(CH3)(R1NH2)O]n−Si(OR2)3 (1)
(式中、mは1〜20の整数、nは1〜20の整数、R1はアルキレン基、R2は水素原子又はアルキル基を示す。)
で表される化合物が挙げられる。
以下、上記一般式(1)の化合物を代表例として説明する。
アルキレン基としては、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキレン基が挙げられる。
具体的には、(CH2)i(iは1〜40の整数)、(CH2)jC(CH3)2(jは2〜37の整数)等のアルキレン基、より具体的には、CHCH3CH2、CH2CHCH3、CHCH3(CH2)2、CH2CHCH3CH2、C(CH3)2CH2、CH2C(CH3)2等のアルキレン基を例示することができる。
アルキル基としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
上記の一般式(1)で表されるアミノ基含有シラノール誘導体は、公知の方法により製造することができる。また、市販品を入手してもよい。
アミノ基含有シラノール誘導体を溶媒に溶解させることにより溶液を調製する。溶媒としては、アルコール系溶剤、水、酢酸等、またはこれらの混合溶媒等が例示される。
特に、溶媒としては、揮発性の高い溶媒、すなわち、基材表面に溶液を塗布後、塗布物から容易に除去できる溶媒が好ましい。そのような溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール等が挙げられる。この中でも特に、アミノ基含有シラノール誘導体が均一に溶解し、且つ、均一に溶解した状態を長時間維持できる点から、iso−プロパノールが好ましい。
溶液中のアミノ基含有シラノール誘導体の含有量は、溶液の安定性及び基材表面への単分子皮膜の形成のし易さの点から、通常0.1〜10容量%程度、好ましくは1〜3容量%程度である。
溶液を調製する際、本発明の効果を妨げない範囲で、塗布液の調製に通常使用される公知の添加剤を加えてもよい。
前記溶液を塗布することにより形成された皮膜は、基材由来のヒドロキシル基とアミノ基含有シラノール誘導体とが脱水縮合反応することにより、又は、ヒドロキシル基とアミノ基含有シラノール誘導体とが水素結合することにより形成されると考えられる。具体的には、一般式(1)のシラノール誘導体におけるCH基を含む基、NH基を含む基又はOR基を含む基が、基材面側に配置し、図1のように、芝生構造を形成してなるものであると考えられる。特に、本発明においては、アミノ基を含む基が基材面側に配置していることが好ましい。なお、図1では、シラノール誘導体同士が独立して存在しているが、隣同士で相互作用していてもよい。
皮膜の厚さは、部材の使用環境、設置場所等に応じて適宜設定すればよいが、通常0.01〜5μm程度、好ましくは0.02〜0.5μm程度である。皮膜の厚さが0.01μm未満の場合、表面を均一に覆うだけのアミノ基含有シラノール誘導体が供給されず、ムラが生じやすくなる。本発明において、前記膜は、単分子層を形成するように、アミノ基含有シラノール誘導体のアミノ基を含む基が基材面側に配置(結合)ないし相互作用したものであることが好ましい。そのため、膜厚が高すぎる場合(膜厚が5μmを超える場合)、皮膜中の分子配向が乱れ、さらに、シラノール誘導体の基材からの距離が遠くなることにより、基材との結合ないし相互作用が弱くなり、結果、基材に対する皮膜の密着性が低下するおそれがある。なお、膜厚が高くなる原因としては、例えば、芝生構造を形成するシラノール誘導体上に、さらに他のシラノール誘導体が物理吸着する場合が挙げられる。
特に、本発明の部材を精密性が要求される自動車部品及びIT部品(例えば半導体)の製造ラインや、試験製造装置等の部品として用いる場合、皮膜の厚さは1μm以下が好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。
本発明の部材は、産業用製造ライン、特に、精密性が要求される自動車部品及びIT部品(例えば半導体)の製造ラインや、試験製造装置等の部品に用いられる部材として用いることができる。特に、本発明の部材は、プレス金型用部材又はインジェクション金型用部材として好適に用いることができる。
また、本発明の部材は、業務用の接着剤の粘着や、成形樹脂の残留物の付着等を有効に防止できるため、ゴム成型用金型部材又は樹脂成形用金型部材として特に好適に用いることができる。
皮膜形成方法
本発明の皮膜形成方法は、金属基材又はセラミックス基材表面に皮膜を形成させる方法であって、
(1)前記基材表面にアミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液を塗布することにより塗布物を得る工程、及び
(2)工程(1)により得られた塗布物を乾燥させることにより皮膜を形成させる工程
を含む。
金属基材及びセラミックス基材については、上記と同様のものを用いればよい。
工程(1)
工程(1)では、前記基材表面にアミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液を塗布することにより塗布物を得る。
アミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液としては、上記と同様の溶液を用いればよい。
前記溶液は、基材表面の全体又は一部に塗布すればよい。
塗布方法としては、はけ塗り法、カーテンコート法、遠心塗布法、ディッピング法及びスプレー法から選ばれる少なくとも1種の方法を採用すればよい。これら塗布方法は、いずれも公知の方法に従って行えばよい。これら塗布方法の中でも特にスプレー法が好ましい。
工程(2)
工程(2)では、工程(1)により得られた塗布物を乾燥させることにより皮膜を形成させる。塗布物を乾燥させることにより、シラノール誘導体を基材表面に配置することができる。また、溶液中の溶媒を除去することができる。
乾燥は、自然乾燥及び/又は加熱乾燥により行うことができる。特に本発明の皮膜形成方法では、加熱乾燥を行うことが好ましい。加熱乾燥を行うことにより、より脱水縮合を促進させることができるため、より強固な皮膜の形成が可能となる。その結果、より耐摩耗性、撥水性及び平滑性に優れた部材を得ることができる。また、加熱乾燥を行うことにより、脱水縮合反応をより短時間で進めることができる。
自然乾燥、すなわち、室温(25℃程度)下での乾燥の場合、乾燥時間は、使用する溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常24〜96時間程度であればよい。
加熱乾燥の場合、加熱温度は、100〜400℃程度、好ましくは100〜150℃程度である。加熱時間は、通常20分〜1時間程度であればよい。
以上の方法により、金属基材又はセラミックス基材表面に皮膜を形成させることができる。
また、工程(1)及び工程(2)をゾルゲル法により行うことによって、金属基材又はセラミックス基材表面に皮膜を形成させることもできる。具体的には、まず、上記アミノ基含有シラノール誘導体を水と共に攪拌することにより、溶液(ゾル)を調製する。得られた溶液を基材表面に塗布した後、100〜120℃で10〜20分間乾燥させることにより、基材表面のゾルをゲル化させる。次いで、基材表面のゲルを120〜150℃で1〜2時間焼成することにより、基材表面に皮膜を形成させることができる。
皮膜形成の回数は、目的とする耐摩耗性、撥水性、非粘着性等に応じて設定すればよく、通常1〜5回程度、好ましくは2〜3回程度である。
皮膜形成を2回以上行うことにより、図1の芝生構造におけるシラノール誘導体同士の隙間を補充することができ、皮膜の密度を向上させることができる。その結果、より非粘着性に優れた部材を得ることができる。また、皮膜形成の回数が5回を超える場合、皮膜中の分子配向が乱れ、シラノール誘導体の基材からの距離が遠くなることにより、基材との結合ないし相互作用が弱くなり、結果、基材に対する皮膜の密着性が低下するおそれがある。
本発明の部材は、撥水性及び耐久性に優れているため、産業用製造ラインの部品の部材、特に、プレス金型用部材又はインジェクション金型用部材として好適に使用できる。
加えて、本発明の部材は、非粘着性に優れているため、業務用の接着剤や成形樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等)、ゴム(例えばスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン‐プロピレンゴム等)の部材への付着等を有効に防止することができるため、メンテナンスが容易である。よって、本発明の部材は、特に、ゴム成型用金型部材又は樹脂成形用金型部材として好適に用いることができる。
本発明の皮膜形成方法によれば、撥水性、耐久性及び非粘着性に優れた部材を得ることができる。しかも、本発明の製造方法によれば、基材表面に厚みが1μm以下の皮膜を容易に形成させることができる。従って、本発明の皮膜形成方法によれば、精密性が要求される自動車部品及びIT部品の製造ラインや、試験製造装置等の部品に用いる部材を得ることができる。
さらに、本発明の皮膜形成方法によれば、複雑な形状の基材に対しても容易に皮膜を形成させることができる。
本発明の皮膜形成方法は、簡便な手法であるため、低コストで基材に皮膜を形成させることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
下記の通り、本発明の部材を作製した。
(1)アミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液の調製
液温25℃のiso−プロパノールを撹拌しながら、iso−プロパノールに、アミノ基含有シラノール誘導体CH3−[Si(CH3)2O]5−[Si(CH3)(C36NH2)O]10−Si(OC25)3を少しずつ添加した後、15〜30分間撹拌することにより、アミノ基含有シラノール誘導体を1容量%及びiso−プロパノールを99容量%含有する溶液を調製した。
(2)基材
基材としては、寸法50mm×50mm×3mmのSUS304をiso−プロパノールにて払拭したものを用いた。
(3)皮膜の形成
まず、気温25℃、湿度60%の条件下で、上記(2)の基材表面に、上記(1)により調製された溶液をエアスプレーを用いて膜厚が0.01μmになるまで塗布した。
得られた塗布物を、室温(25℃)下で、24時間放置した後、熱風乾燥炉を用いて150℃で20分間加熱処理を行うことにより、本発明の部材を得た。
実施例2
実施例1にて得られた部材を基材とし、この部材表面に、実施例1と同様の方法によって再度皮膜の形成を行うことにより、本発明の部材を得た。
実施例3
基材として、寸法50mm×50mm×3mmの鋳鉄(SS400)をiso−プロパノールにて払拭したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の部材を得た。
比較例1
寸法50mm×50mm×3mmのSUS304をエタノールにて払拭した。
次いで、基材表面にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)微粉末を静電塗装した後、350℃で30分間焼付け処理を行うことにより、フッ素樹脂コート層を有する部材を得た。
実施例1〜3及び比較例1にて得られた部材について、以下の方法により膜厚測定、接触角試験、耐摩耗性試験及び粘着試験を行った。
試験例1(膜厚測定)
接触式膜厚計(DeFelsko社製「PosiTector6000」)を用いることにより、実施例1〜3及び比較例1で得られた部材表面の皮膜の厚みを測定した。
結果を表1に示す。
試験例2(接触角試験)
FACE接触角測定装置(協和界面科学(株)製「CA−A型」)を用いて、液滴法(マイクロシリンジにより2μLの水滴を落として、正面から接触角を測定すること)により実施例1〜3及び比較例1で得られた部材表面の皮膜に対する水の接触角を測定した。
結果を表1に示す。
試験例3(耐摩耗性試験)
先端に羊毛フェルトを取付けた摺動試験器(大平理化工業(株)製)を用いて、加重1000gで実施例1〜3及び比較例1で得られた部材の皮膜面に羊毛フェルトを押しつけながら、往復10cmの距離を摺動させた。200往復後の重量変化および接触角の変化を測定した。
結果を表1に示す。
なお、接触角については、上記試験例2と同様の方法により測定した。
試験例4(粘着試験)
実施例1〜3及び比較例1で得られた部材にABS樹脂を0.5g載せて、電気炉(入江(株)製マッフル炉「KDF−S90」)にて260℃で30分間加熱処理を行った後に放冷することにより、部材にABS樹脂の硬化物を付着させた。
前記硬化物を基材表面から剥がす際に必要な力をピークホールド付きテンションゲージにより測定した。
結果を表1に示す。
Figure 0004931518
(1)表1から、実施例1〜3にて得られた部材の皮膜の厚みは、1μm以下であり、比較例1にて得られた部材の皮膜の厚みよりかなり小さいことがわかる。
(2)表1から、耐摩耗試験後において、実施例1の部材は、比較例1の部材に比べ、接触角が10度大きい。つまり、実施例1の部材は、比較例1の部材に比べ、良好な撥水性を有することがわかる。
また、皮膜形成を2回行うことにより得られた実施例2の部材は、実施例1の部材に比べ、さらに接触角が大きく、より良好な撥水性を有することがわかる。しかも、実施例2の部材は、耐摩耗性試験後においても接触角の変化が確認できず、好適な撥水性を持続できることがわかる。
さらに、基材として鋳鉄を用いた実施例3の部材も良好な撥水性を有することがわかる。
(3)表1から、耐摩耗性試験において、実施例1〜3の部材はいずれも比較例1の部材に比べて重量変化が小さく、耐摩耗性に優れていることがわかる。
(4)表1から、実施例1〜3にて得られた部材の場合、付着したABS樹脂の硬化物を、比較例1にて得られた部材の場合よりも、かなり小さい力で剥がすことができることがわかる。すなわち、実施例1〜3にて得られた部材は、比較例1にて得られた部材よりも非密着性に優れていることがわかる。
また、皮膜形成を2回行うことにより得られた実施例2の部材は、皮膜形成を1回行うことにより得られた実施例1の部材に比べ、より非密着性に優れていることがわかる。
図1は、本発明の部材の模式図を示すものである。

Claims (11)

  1. 金属基材又はセラミックス基材表面に、下記一般式:
    CH −[Si(CH ) O] −[Si(CH )(R NH )O] −Si(OR ) (1)
    (式中、mは1〜20の整数、nは1〜20の整数、R はアルキレン基、R は水素原子又はアルキル基を示す。)
    で表されるアミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液を塗布することにより形成された皮膜を有する部材。
  2. 金属が、合金鋼、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金である請求項1に記載の部材。
  3. 前記溶液がアミノ基含有シラノール誘導体を0.1〜10容量%含む請求項1又は2に記載の部材。
  4. 部材が、プレス金型用部材又はインジェクション金型用部材である請求項1〜のいずれかに記載の部材。
  5. 部材が、ゴム成型用金型部材又は樹脂成形用金型部材である請求項1〜のいずれかに記載の部材。
  6. 金属基材又はセラミックス基材表面に皮膜を形成させる方法であって、
    (1)前記基材表面に、下記一般式:
    CH −[Si(CH ) O] −[Si(CH )(R NH )O] −Si(OR ) (1)
    (式中、mは1〜20の整数、nは1〜20の整数、R はアルキレン基、R は水素原子又はアルキル基を示す。)
    で表されるアミノ基含有シラノール誘導体を含む溶液を塗布することにより塗布物を得る工程、及び
    (2)工程(1)により得られた塗布物を乾燥させることにより皮膜を形成させる工程
    を含む皮膜形成方法。
  7. 金属が、合金鋼、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金である請求項に記載の皮膜形成方法。
  8. 前記溶液がアミノ基含有シラノール誘導体を0.1〜10容量%含む請求項6又は7に記載の皮膜形成方法。
  9. 工程(1)において、はけ塗り法、カーテンコート法、遠心塗布法、ディッピング法及びスプレー法から選ばれる少なくとも1種の方法により前記基材表面に前記溶液を塗布する請求項のいずれかに記載の皮膜形成方法。
  10. 部材が、プレス金型用部材又はインジェクション金型用部材である請求項のいずれかに記載の皮膜形成方法。
  11. 部材が、ゴム成型用金型部材又は樹脂成形用金型部材である請求項10のいずれかに記載の皮膜形成方法。
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