JP5958157B2 - 塗膜形成方法 - Google Patents
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Description
即ち、本発明は以下を要旨とする。
重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)が下記式(1)で表される片末端ラジカル重合性ポリアルキルシロキサンであり、
単量体(b)が2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり、
単量体(c)及び単量体(d)が、それぞれ、(メタ)アクリル酸及びその誘導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
単量体(d)のガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であり、
重合体(II)と重合体(III)の合計100重量部において、重合体(II)の含有量が2〜99重量部であり、
重合体(III)の水酸基価が50〜225mg−KOH/gであるコーティング用樹脂組成物に、
水酸基当量/NCO当量が1.0/1.8〜1.8/1.0となるようにイソシアネート系架橋剤を添加した塗膜形成材料を硬化させることを特徴とする塗膜形成方法。
このようなことから、本発明のコーティング用樹脂組成物により形成された塗膜によれば、これを建材等の表面に形成して、防汚性、清掃性及びその持続性に優れた表面を安価に形成することができる。
本発明のコーティング用樹脂組成物は、重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)7〜30重量%と、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートよりなる単量体(b)15〜30重量%と、単量体(b)以外の(メタ)アクリル酸系単量体(c)50〜70重量%とを重合させてなる重合体(I)100重量部に対し、(メタ)アクリル酸系単量体(d)20〜100重量部を重合させてなる重合体(II)と、水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体(III)とを含むものであり、好ましくはこれらが溶剤に溶解された溶液として提供され、このコーティング用樹脂組成物にイソシアネート系架橋剤を添加すると硬化反応が起こり、塗膜が形成される。
重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)としては、下記式(1)で表され、その数平均分子量が500〜11000の片末端ラジカル重合性ポリジメチルシロキサンが好適である。
単量体(b)は水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートであり、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。
単量体(c)は、上記の単量体(b)以外の(メタ)アクリル酸系単量体(c)である。単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好適である。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、炭素数1〜20、特に1〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好適であり、アルキル(メタ)アクリレートとしては、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が好適である。
重合体(I)は、上述の重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)と水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートである単量体(b)と(メタ)アクリル酸系単量体(c)とを所定の割合で用い、常法に従って、重合させることにより製造される。
また、重合体(I)の製造には、本発明の目的を損なわない範囲において、重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)と単量体(b),(c)以外の共重合成分を用いてもよい。
重合体(II)は、上述の重合体(I)に対して、(メタ)アクリル酸系単量体(d)をグラフト重合させてなるものである。(メタ)アクリル酸系単量体(d)としては、前記水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートよりなる単量体(b)と(メタ)アクリル酸系単量体(c)から選ばれるものが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸系単量体(c)から選ばれるものが挙げられる。
また、重合体(II)の製造には、本発明の目的を損なわない範囲において、単量体(d)以外のグラフト成分を用いてもよい。
重合体(III)は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体であればよく、特に制限はないが、上記単量体(b)及び単量体(c)の共重合体が好適であり、その水酸基価は50〜225mg−KOH/g、特に70〜200mg−KOH/g程度であることが好ましい。このため、重合体(III)の製造原料における単量体(b),(c)の合計における単量体(b)の割合は20〜50重量%、特に25〜45重量%程度で、単量体(c)の割合は50〜80重量%、特に55〜75重量%程度であることが好ましい。
また、重合体(III)の製造には、本発明の目的を損なわない範囲において、単量体(b),(c)以外の共重合成分を用いてもよい。
重合体(I)〜(III)は、公知の方法、例えば、溶液重合で得られる。その際に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などを用いることができる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。合成時の単量体の仕込み濃度は、20〜50重量%程度が好ましい。
本発明のコーティング用樹脂組成物において、重合体(II)と重合体(III)との混合割合は、重合体(II)と重合体(III)との合計100重量部中、重合体(II)が2〜99重量部、特に4〜86重量部となる割合であることが好ましい。この範囲よりも重合体(II)が多いとシロキサン成分を低減して安価なコーティング用樹脂組成物を提供する本発明の目的を十分に達成し得ず、少ないと水と油の接触角が低く、かつ水の滑落性、油の滑落性の向上効果が十分でない傾向がある。
本発明のコーティング用樹脂組成物は、通常、重合体(II)と重合体(III)とを溶媒に溶解させた溶液として調製される。その溶媒としては、上記の重合体(I)〜(III)の溶液重合に用いられる溶媒を用いることができ、本発明のコーティング用樹脂組成物における重合体(II)と重合体(III)の合計の固形分濃度は10〜60重量%、特に30〜40重量%であることが好ましい。この固形分濃度が上記範囲よりも大きいと、形成される塗膜が平滑にならず、また水と油の接触角が低く、かつ水の滑落性、油の滑落性の向上効果が十分でなく、小さいと塗膜を形成し得ない傾向がある。
本発明のコーティング用樹脂組成物は、重合体(II)と重合体(III)とを架橋させるためのイソシアネート系架橋剤を添加した塗膜形成材料(塗料)として塗膜形成に用いられる。
また、本発明の塗膜形成材料には、組成物中の架橋性官能基を架橋させるために、必要に応じて上記イソシアネート系架橋剤以外の種々の架橋剤を用いることもできる。
本発明のコーティング用樹脂組成物及び塗膜形成材料においては、必要に応じ、本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、着色顔料、体質顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤等の各種の添加剤を含有していてもよい。
本発明の塗膜形成材料は、撥水・撥油性、撥インキ性、防汚性、水の滑落性、着雪防止性等の各種の機能が必要とされる基材表面に塗布され、基材との密着性、加工性、各種の耐候性に優れたコーティングがなされる。その塗布方法には特に限定はないが、浸漬塗装、吹き付け塗装、刷毛塗りなどで塗布することができる。塗装された塗膜は、風乾または30〜300℃で数秒〜数週間養生することにより、強靱な塗膜とすることができる。
以下の実施例及び比較例における、塗膜の特性(透明性、鉛筆硬度、接触角、水滑落角、45°傾斜面滑落水量、油滑り性)の評価方法は次の通りである。
塗膜の透明性を目視観察により評価した。
JISK5600−5−4に従う鉛筆法により、塗膜の硬度を測定する。
試験を行う鉛筆の芯先を、固い平らな面に置いた研磨紙400番に対し直角にあて、先が平らで角が鋭くなるように研ぎ、研いだ芯を試験面に対して45°にあて、縦に引っ掻き、塗膜が破れるか否かを調べた。鉛筆を硬度の高い順に用いて試験を行い、塗膜が破れなくなった芯の硬度を鉛筆硬度とした。
得られた塗膜について、接触角計「CA−X150型」(協和界面科学株式会社製)を用い、蒸留水又は食用菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名「キャノーラ油」)を用いて、接触角(度)を測定した。
塗膜上に水2滴(9μL)を5箇所に滴下した後、塗膜を形成したガラス板を徐々に傾斜させ、2番目〜4番目の水滴が転がりはじめたときの傾斜角度を水滑落角とした。また、この水滑落角から、水滑落性を以下の基準で評価した。
◎:水滑落角が30°未満である
○:水滑落角が30°以上、50°未満である
△:水滑落角が50°以上、75°未満である
×:水滑落角が75°以上、或は90°でも滑落しない
以下の手順で評価した。
(i) 塗膜を形成したガラス板を45°に傾斜させた状態で保持する。
(ii) マイクロピペッターで3μLの水を押出し、針の先に水滴を作る。
(iii) マイクロピペッターを塗膜面に静かに移動させて、水滴を塗膜に付着させる。
(iv) 針を元の位置に戻し、再度、水滴を針の先に押し出し、前の水滴に付着させる。
(v) (ii)〜(iv)を繰り返し、塗膜面の水滴が滑り始めた量を滑落水量とする。
食用菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、商品名「キャノーラ油」)2滴(0.0130g)を、塗膜に付着させた後、塗膜を形成したガラス板を9.5°傾斜させ、90秒後の液滴の移動距離(単位mm)を計測する。
<合成例1:重合体(I−1)の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのフラスコに、イソプロピルアルコール45部、4−メチル−2−ペンタノン40部、シクロヘキサノン15部と共に、表1の通り、メチルメタクリレート40部、n−ブチルアクリレート15部、n−ブチルメタクリレート9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部、メタクリル酸1部、ジアルキルシリコン基を含有するアクリル樹脂「サイラプレンFM−0721」(JNC株式会社製商品名;片末端ラジカル重合性メタクリロイル型ポリジメチルシロキサン、数平均分子量5000)20部を入れ、攪拌して均一にした後、窒素ガスをフィードしながら昇温した。温度が70℃に達した後、別途4−メチル−2−ペンタノン50部にアゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と記載する。)3.0部を溶解させた溶液を一括で添加し、窒素ガスを微量に流しながら反応温度94℃に保持し、3時間反応させた。その後、更にAIBN0.1部を添加し、同温度にて1時間反応させ、固形分濃度40%、水酸基価(固形分値)64.2mg−KOH/gの重合体(I−1)の溶液250部を得た。
合成例1において、原料配合を表1に示す通り変更したこと以外は同様にして、それぞれ重合体(I−2)〜(I−12)(いずれも固形分濃度40%)を得た。得られた各重合体の水酸基価(固形分値)を表1に示す。
<合成例13:重合体(II−1)の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのフラスコに、合成例1で得られた重合体(I−1)の溶液を全量(約250部、固形分として100部)入れ、攪拌及び窒素ガスをフィードしながら昇温した。70℃に達した後、別途4−メチル−2−ペンタノン14部に溶解させたAIBN0.3部を添加し、更に昇温した。温度が94℃に達した後、別途、イソプロピルアルコール27部、4−メチル−2−ペンタノン40部、シクロヘキサノン9部と共に、表2の通り、n−ブチルアクリレート60部、並びにAIBN1.8部を溶解しておいた溶液を窒素ガスを微量流しながら温度を94℃に保ったまま滴下ロートにより1時間かけて添加した。その後、更にAIBN0.1部を添加し、同温度にて1時間反応させて、水酸基価(固形分値)40.1mg−KOH/gの重合体(II−1)の溶液(固形分濃度40%)を得た。
合成例13において、原料配合を表2に示す通り変えたこと以外は同様にしてそれぞれ重合体(II−2)〜(II−14)(いずれも固形分濃度40%)を合成した。得られた各重合体の水酸基価(固形分値)を表2に示す。
<合成例27:重合体(III−1)の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた500mlのフラスコに、イソプロピルアルコール45部、4−メチル−2−ペンタノン40部、シクロヘキサノン15部と共に、表3の通り、メチルメタクリレート50部、n−ブチルアクリレート15部、n−ブチルメタクリレート9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート25部、およびメタクリル酸1部を入れ、攪拌して均一にした後、窒素ガスをフィードしながら昇温した。温度が70℃に達した後、別途4−メチル−2−ペンタノン50部にAIBN3.0部を溶解させた溶液を一括で添加し、窒素ガスを微量に流しながら反応温度94℃に保持し、3時間反応させた。その後、更にAIBN0.1部を添加し、同温度にて1時間反応させて、水酸基価(固形分値)107mg−KOH/gの重合体(III−1)の溶液(固形分濃度40%)を得た。
合成例27において、原料配合を表3に示す通り変えたこと以外は同様にしてそれぞれ重合体(III−2)〜(III−4)(いずれも固形分濃度40%)を合成した。得られた各重合体の水酸基価(固形分値)を表3に示す。
<実施例1>
合成例13で得られた重合体(II−1)溶液を固形分として12部、および合成例27で得られた重合体(III−1)溶液を固形分として88部十分に混合して均一化した後、混合樹脂の水酸基価から算出した架橋剤「タケネートD−170N」(三井化学株式会社商品名、ヘキサメチレンジイソシナネートヌレート変性、NCO%20.7)を水酸基当量/NCO当量=1/1となるように13.9部添加し、十分に混合してコーティング用樹脂組成物(固形分濃度40%)とした。
このコーティング用樹脂組成物を、アプリケータにて、ガラス板の上に乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗布し、室温下、7日間養生して成膜した。
この塗膜の特性の評価結果を、組成物物性と共に表4に示した。
重合体(II),(III)として表4に示すものを用い、架橋剤の添加量を表4に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にしてコーティング用樹脂組成物(いずれも固形分濃度40%)を調製して同様に膜厚50μmの塗膜を成膜した。形成された塗膜の特性の評価結果を、組成物物性と共に4に示した。
表5,6に示す組成物配合としたこと以外は実施例1と同様にして、コーティング用樹脂組成物を調製して表5,6に示す膜厚の塗膜を成膜した。形成された塗膜の特性の評価結果を表5,6に示した。
なお、実施例1、比較例16、18の塗膜についてX線電子分光分析により塗膜の表面から深さ20nmまでの範囲と表面から100〜200nmまでの範囲のケイ素原子の割合を測定したところ次の通りであった。
Claims (1)
- 重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)7〜30重量%と、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートよりなる単量体(b)15〜30重量%と、単量体(b)以外の(メタ)アクリル酸系単量体(c)50〜70重量%とを重合させてなる重合体(I)100重量部に対し、(メタ)アクリル酸系単量体(d)20〜100重量部を重合させてなる重合体(II)と、水酸基を有する(メタ)アクリル酸系重合体(III)とを含むコーティング用樹脂組成物であって、
重合性アルキルシロキサン系マクロモノマー(a)が下記式(1)で表される片末端ラジカル重合性ポリアルキルシロキサンであり、
単量体(b)が2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり、
単量体(c)及び単量体(d)が、それぞれ、(メタ)アクリル酸及びその誘導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
単量体(d)のガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であり、
重合体(II)と重合体(III)の合計100重量部において、重合体(II)の含有量が2〜99重量部であり、
重合体(III)の水酸基価が50〜225mg−KOH/gであるコーティング用樹脂組成物に、
水酸基当量/NCO当量が1.0/1.8〜1.8/1.0となるようにイソシアネート系架橋剤を添加した塗膜形成材料を硬化させることを特徴とする塗膜形成方法。
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