JP5433912B2 - 潤滑離型コーティング用組成物およびそれを用いた潤滑離型膜の形成方法、並びに金型およびその製造方法 - Google Patents
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すなわち、本発明の潤滑離型コーティング用組成物は、変性シリコーン樹脂とその硬化触媒と反応性シリコーンオイルとを含み、前記変性シリコーン樹脂が、アクリルシリコーン樹脂存在下で3官能シラン類を加水分解重縮合して得られる無機−有機ハイブリッド型ポリシルセスキオキサン樹脂であることを特徴とする。本発明によれば、特定のフッ素化合物を用いることなく、ゴムやプラスチック成型品を成型するための金属製の金型の内面に離型性や潤滑性を付与しつつ、耐熱性、耐圧性、耐久性に優れ、さらには可撓性、耐クラック性にも優れた潤滑離型膜を形成し得る潤滑離型コーティング用組成物を提供することができる。
[潤滑離型コーティング用組成物]
本発明の潤滑離型コーティング用組成物は、変性シリコーン樹脂とその硬化触媒と反応性シリコーンオイルとを必須成分とする。また、必要に応じて、溶剤やその他の成分を含有する。これらの成分を適宜混合および攪拌することで、本発明の潤滑離型コーティング用組成物を調製することができる。
以下、構成成分ごとに説明する。
本発明に用いる変性シリコーン樹脂は、特に制限は無く、従来より公知のものを問題なく使用することができる。他の成分との相溶性、反応性、耐熱性、耐圧性、可撓性、耐クラック性等必要特性の観点から適宜選択すればよい。
本発明の潤滑離型コーティング用組成物においては、前記変性シリコーン樹脂として、アクリルシリコーン樹脂存在下で3官能シラン類を加水分解重縮合して得られる無機−有機ハイブリッド型ポリシルセスキオキサン樹脂を用いることが好ましい。
本発明の潤滑離型コーティング用組成物における変性シリコーン樹脂の配合割合としては、10〜98質量%の範囲が好ましく、30〜80質量%の範囲がより好ましく、50〜70質量%の範囲がさらに好ましい。
本発明の潤滑離型コーティング用組成物に使用するに適した硬化触媒としては、用いる変性シリコーン樹脂を硬化させ得るものであればよく、特に制限はない。例えば、変性シリコーン樹脂として、上で述べた無機−有機ハイブリッド型ポリシルセスキオキサン樹脂を用いた場合には、これを硬化させ得る触媒として、湿気硬化性シリコーンオリゴマーを硬化させ得る触媒であれば特に制限されない。
本発明における反応性シリコーンオイルは、特に制限は無く、従来より公知のものを問題なく使用することができる。変性シリコーン樹脂との反応性、潤滑離型機能発現性の観点から適宜選択すればよい。
両シリコーンオイルの配合割合としては、「低分子量」:「高分子量」として9:1〜1:9の範囲内であることが好ましく、7:3〜3:7の範囲内であることがより好ましい。
本発明の潤滑離型コーティング用組成物には、溶剤を配合してもよい。溶剤を配合することにより、適宜濃度、粘度(動粘度)を調整することができる。使用可能な溶剤としては、必須構成成分である変性シリコーン樹脂、硬化触媒および反応性シリコーンオイルを溶解または分散できるものであれば、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶剤;ミネラルスピリットなどの石油系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチルのようなエステル系溶剤;オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの低重合度(低分子量)の環状メチルポリシロキサン(環状シリコーン)や、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンなどの低重合度の直鎖状メチルポリシロキサン(直鎖状シリコーン)などのシリコーン系溶剤などが挙げられる。これら溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上併用してもかまわない。
本発明の潤滑離型コーティング用組成物には、従来公知のその他各種添加剤を添加することもできる。添加可能な添加剤としては、形成される潤滑離型膜の性能に影響を与えない、若しくは軽微なものが好ましく、例えば各種消泡剤、レべリング剤、スリッピング剤、酸化防止剤、防錆剤等を挙げることができる。
本発明の金型は、ゴム乃至プラスチックを成型するための金型であって、被成型物との接触面(いわゆる金型の内面)に、下地層としてシリコーンアクリル系プライマー層が形成され、さらにその上に積層された上記本発明の潤滑離型コーティング用組成物を含む潤滑離型膜が形成されてなるものである。
本発明の金型の製造方法、すなわち潤滑離型膜の形成方法により金型基材に潤滑離型膜を形成する好ましい方法は、次項において詳述する。
本発明の潤滑離型膜の形成方法は、被塗対象面に、溶剤型シリコーンアクリル系プライマーを塗布後、焼付け硬化させること無く前記本発明の潤滑離型コーティング用組成物を塗布し、次いで塗布膜全体を焼付け硬化させることを特徴とするものである。また、本発明の金型の製造方法は、当該本発明の潤滑離型膜の形成方法において、金型基材における被成型物との接触面を被塗対象面とするものである。
下記表1に示す組成に従い、プライマー、実施例1〜3および比較例1〜3の潤滑離型コーテイング組成物を調製した。これらを用いて、炭素鋼基材にディッピングによりプライマーを塗布し、さらにその上に各実施例乃至比較例の潤滑離型コーテイング組成物を塗布し、200℃で30分間熱硬化させていわゆる2コート1ベイク(比較例1は1コート1ベイク)の塗布工程を経て試験板を得た。膜厚を含む各条件を下記表1にまとめる。
[シリコーンアクリルプライマー主剤]
側鎖に第3級アミノ基を有するアクリル樹脂アクリディックA−9540(DIC(株)製、有効成分=45%、ガードナー形泡粘度(25℃):(X−Y)−Z2、アミン価:16、溶媒:トルエン/イソブタノール)100部をキシレン60部にて希釈して、シリコーンアクリルプライマー主剤を得た。
エポキシ系シランカップリング剤含有シリコーンアクリル樹脂硬化剤アクリディックA−9585(DIC(株)製、有効成分=80%、ガードナー形泡粘度(25℃):A5以下、エポキシ当量:530〜585、溶媒:キシレン)16部をキシレン144部にて希釈して、シリコーンアクリルプライマー硬化剤を得た。
N2導入管、温度計、サーモメーター、還流冷却器を取り付けた1リットル四つ口フラスコに353部のメタノールを仕込み60℃まで加温した。別にメチルメタクリレート(MMA)122部、ブチルメタクリレート(BMA)116部、エチルアクリレート(EA)163部、側鎖に加水分解性アルコキシシリル基含有メタクリル系モノマーKBM−503(信越化学工業(株)製)94部、アゾ系重合開始剤V−65(和光純薬(株)、2,2’−Azobis(2.4−dimethylvaleronitrile))5.9部の混合物を計り取り、滴下ロートにて3時間かけて上記フラスコに滴下した。滴下後更に2時間60℃にて反応させた後、V−651.5部を45部のメタノールで希釈したものを滴下し、ついで、3時間60℃反応を続けアクリルシリコーン樹脂溶液を得た(淡黄色透明粘性液体、有効成分=55%、ガードナー形泡粘度(25℃):XY+、Mw=121000)。
末端メトキシ型ポリ−メチルトリメトキシシラン系ストレートシリコーン樹脂に反応性シリコーンオイルを添加した撥水・撥油性シリコーン樹脂溶液(アトミクス(株)製)。触媒により常温で硬化し、撥水、撥油、汚染除去、落書き防止用途に使用される。無色透明低粘性液体、粘度:4.5秒(岩田カップ粘度計・23℃)、有効成分:45%、溶媒:イソオクタン/トルエン/キシレン/メタノール。
有機錫系シリコーン樹脂硬化剤、有効成分:2.3%、溶媒:イソオクタン。外観:無色透明低粘性液体、粘度:4秒(岩田カップ・23℃)、比重0.72。
ナノシリカ含有、末端SiOH型ポリ−メチルトリメトキシシラン系ストレートシリコーン樹脂のイソプロパノール(IPA)溶液(アトミクス(株)製)。熱硬化性ハードコート樹脂で、プラスチック、フイルム、金属などに塗布し、120℃30分間加熱硬化させることにより、鉛筆硬度9Hのガラス状セラミックス被膜を形成する。乳白色半透明低粘性液体、有効成分=20%、溶媒:IPA/イソブタノール/メタノール、粘度:5〜50m・Pa・S、ナノシリカ/シラン=30/70(質量基準)、ピーク分子量:600〜850。
両末端SiOH型高粘度タイプ反応性シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、動粘度(25℃)3000mm2/S
両末端SiOH型低粘度タイプ反応性シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、動粘度(25℃)80mm2/S
得られた実施例および比較例の各試験板について、以下の各評価試験を行った。結果は下記表2にまとめて示す。
なお、発明者らの研究の結果、下記(2)基材密着性試験、(3)熱衝撃試験および(4)油性マジック拭き取り性試験が良好であれば、ゴム成型加工にて、ある程度のメンテナンスフリーの耐久性が期待できることがわかっている。
評価用塗膜を目視にて濁り、艶びけ、ブツ、クラックなどの有無を確認した。
JIS K5600−5−6(2mm碁盤目付着性試験)に従って、実施した。
180℃に30分保持し、それを室温に出しそのままの状態で30分間保持することで急冷する。これを10サイクル繰り返し、表面状態を観察した。評価基準は以下のとおりである。
○・・・10サイクル後も表面状態に変化なし。
×・・・試験の途中で割れ、ハガレ、クラックなどの不具合が出た。
油性マジック(黒)にて塗膜を汚し、ウエス拭き取り性を確認した。評価基準は以下のとおりである。
○・・・マジック痕が全く残らず良好な拭き取り性であった。
△・・・薄くマジック痕が残った。
×・・・全く拭き取ることができなかった。
試験用の液体試料に精製水を用い、その液滴を1μリットル塗膜表面に滴下した。測定は室温下で行い、10回の試験の平均値を水に対する接触角として求めた。当該接触角の測定は、実施例1および比較例1〜3について行った。
Ball−on−Disc型往復摩擦試験機(神鋼造機(株)製)を用い、室温下無潤滑条件で評価を行った。ディスク試験片(25×30mm、厚さ5mm)には各実施例乃至比較例の潤滑離型コーテイング処理(プライマー+潤滑離型コーティング用組成物による塗装+乾燥硬化)したものを用い、相手材であるボールにはポリアセタール樹脂[ポリオキシメチレン(POM)、直径d=3/16inch≒4.76mm]を用いた。これらの試験片は、試験前にアセトン中で超音波洗浄を5分間行い、乾燥させた後に試験に供した。試験条件は平均線速度20mm/s(ストローク:10mm)及び荷重2Nの条件下において1500秒の試験を行い、1500秒経過時の摩擦係数を求めた。当該摩擦摩耗試験は、実施例1、比較例2および3について行った。
フッ素ゴムに対する引き剥がし試験を実施した。表裏両面に各実施例乃至比較例の潤滑離型コーテイング処理(プライマー+潤滑離型コーティング用組成物による塗装+乾燥硬化)した試験片を用い、試験片と引き剥がし試験専用持具をフッ素ゴムにて接着し、この状態で加硫固定した。これをオートグラフ試験機により引っ張り引き剥がし力(N)を測定した。10回の試験の平均値を引き剥がし力(N)として求めた。当該引き剥がし試験は、実施例1、比較例2および3について行った。
以上の結果より、溶剤型シリコーンアクリル系プライマーを塗布した後に本発明の潤滑離型コーテイング組成物を塗布し2コート1ベイクすることで得た潤滑離型膜は、初期における密着性が確保され、その優れた性能が長期にわたって持続できることがわかる。
Claims (7)
- 少なくとも変性シリコーン樹脂とその硬化触媒と反応性シリコーンオイルとを含み、
前記変性シリコーン樹脂が、アクリルシリコーン樹脂存在下で3官能シラン類を加水分解重縮合して得られる無機−有機ハイブリッド型ポリシルセスキオキサン樹脂であることを特徴とする潤滑離型コーティング用組成物。 - 前記反応性シリコーンオイルが、両末端シラノール型で動粘度(25℃)が100mm2/s未満のシリコーンオイルと、両末端シラノール型で動粘度(25℃)が2000mm2/s以上のシリコーンオイルとを併用してなることを特徴とする請求項1に記載の潤滑離型コーティング用組成物。
- 被塗対象面に、溶剤型シリコーンアクリル系プライマーを塗布後、焼付け硬化させること無く請求項1又は2に記載の潤滑離型コーティング用組成物を塗布し、次いで塗布膜全体を焼付け硬化させることを特徴とする潤滑離型膜の形成方法。
- 前記塗布膜全体の焼付け硬化の条件が、温度160〜220℃で10分〜60分間であることを特徴とする請求項3に記載の潤滑離型膜の形成方法。
- ゴム乃至プラスチックを成型するための金型であって、被成型物との接触面に、下地層としてシリコーンアクリル系プライマー層が形成され、さらにその上に積層された請求項1又は2に記載の潤滑離型コーティング用組成物からなる潤滑離型膜が形成されてなることを特徴とする金型。
- 金型基材における被成型物との接触面に、溶剤型シリコーンアクリル系プライマーを塗布後、焼付け硬化させること無く請求項1又は2に記載の潤滑離型コーティング用組成物を塗布し、次いで塗布膜全体を焼付け硬化させることを特徴とする金型の製造方法。
- 前記塗布膜全体の焼付け硬化の条件が、温度160〜220℃で10分〜60分間であることを特徴とする請求項6に記載の金型の製造方法。
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