JP4929787B2 - プロトン伝導性ポリマー含有組成物 - Google Patents

プロトン伝導性ポリマー含有組成物 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーが溶解あるいは分散された組成物に関するものであり、特に燃料電池の電極に添加した際に、電極中の触媒性能が有効に働く組成物である。
液体電解質のかわりに高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、高分子電解質型燃料電池や水電解槽を挙げることができる。また高分子電解質型燃料電池には、水素ガスを燃料として使用するタイプの燃料電池と、メタノールに代表されるような炭化水素系燃料と水の混合溶液を燃料として使用するタイプの燃料電池がある。構成としては、プロトン伝導性を有する電解質膜(高分子電解質膜、イオン交換膜、プロトン交換膜、プロトン伝導性ポリマー膜などとも言う)を一対の電極で挟み込んだ電極・電解質膜接合体により、片側の電極で酸化反応、もう一方の電極で還元反応を起こし、電池、あるいは水電解槽として作動させている。
高分子電解質膜の多様化が進んでおり、従来型のナフィオン(登録商標)を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜(フッ素系プロトン伝導性ポリマー膜)の他、芳香族炭化水素系ポリマーにスルホン酸基やホスホン酸基、リン酸基などのプロトン伝導性官能基を導入した芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーからなる高分子電解質膜(例えば特許文献1、特許文献2、非特許文献1)が種々検討されている。後者の膜については、フッ素系プロトン伝導性ポリマー膜と異なり、高温での膜の変形が少ない点や、メタノール等の液体燃料を燃料とするタイプの燃料電池に使用する場合のメタノール透過が少ないなどの長所が見られ、また価格的にもフッ素系プロトン伝導性ポリマーより安価が見込まれることから有望視されている。将来的には、それぞれのポリマーの特質を活かした展開が期待される。
上記電解質膜に電極を積層することで作製する電極・電解質膜接合体において使用される電極は、一般的にはプロトン伝導性ポリマーを溶剤等に溶解あるいは分散させた組成物と燃料電池反応に適した触媒を混合した触媒インクを、ガス拡散層あるいはフィルム上に塗布し、溶媒を除去することによって作製される。その後、電極を電解質膜に転写することによって、電極・電解質膜接合体が形成される(例えば特許文献3)。また、触媒インクを電解質膜上に直接塗布、あるいはスプレーなどによる間接塗布により形成させる方法も検討されている。
いずれの手法にせよ、電極・電解質膜接合体としては、電極あるいは電解質膜の特性を良い形で引き出すことが重要であり、電極に関しては、電極内部でのプロトンや反応ガスの物質移動がスムーズであり、また触媒性能も良好に引き出すことが望まれるし、電解質膜との接合性も良好なものとする必要がある。
そういった観点より、従来型のフッ素系プロトン伝導性ポリマー膜に対しては、類似した構造のフッ素系プロトン伝導性ポリマーの組成物を電極に介在させる手法が取られており、それに適したフッ素系プロトン伝導性ポリマーを含有する組成物あるいは触媒インクの調整も行われている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6)、この場合よく似た物性のポリマー同士であるため、電極と電解質膜の接合性も良好に保つことができる。
一方で、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーからなる電解質膜に対しても、芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを電極に介在させた電極と接合する方がより長期的に安定して動作できるという視点より検討されているが、電極に介在させるための組成物としての検討は十分になされていない。例えば特許文献7では非フッ素系プロトン伝導性ポリマーを溶解させた組成物が示されているが、この組成物は電極上に塗布形成させる方法で電解質膜とした際に、耐久性が良くなるというものであるし(電極には、ナフィオン(登録商標)を含有する市販電極を使用)、特許文献8での組成物は、流延法によって電解質膜を形成させるのに適した組成物であり、こちらも電極に介在させることを念頭に置いていない。
米国特許出願公開第2002/0091225号明細書 特開平6−93114号公報 特許第3516055号公報 特開2005−108827号公報 特開2000−188110号公報 特開2004−273434号公報 特開2003−317749号公報 特開2003−249244号公報 ジャーナル・オブ・メンブラン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、(オランダ)1993年、83巻、211−220頁)
本発明の課題は、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを電解質膜として構成する燃料電池の、電極中に介在させるのに適した、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを溶解あるいは分散させた組成物に関するものであり、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーからなる電解質膜との接合性を良好に維持できると共に、燃料電池用触媒の特性を引き出すことが可能である。
上記課題を達成するために、本発明者らは、特に燃料電池の電極に介在させた際に、燃料電池用触媒の性能を良好に引き出すことの可能な芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを含む組成物の発明に至ったものであり、本発明は、下記の構成を有する。
1.少なくとも芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを1〜30重量%の範囲で含む溶剤組成物であって、該プロトン伝導性ポリマー中の、ポリエチレングリコール換算分子量が2000〜23000の範囲である成分が、該プロトン伝導性ポリマー全量に対して10重量%以上含まれていることを特徴とする組成物である。
2.該芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーの分子量分布が二つ以上の極大値を有しており、極大値の少なくとも一つ以上がポリエチレングリコール換算分子量で2000〜23000の範囲にあり、かつ極大値の少なくとも一つ以上がポリエチレングリコール換算分子量で23000よりも大きい領域にあることを特徴とする上記1に記載の組成物である。
3.芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーの分子量分布における、ポリエチレングリコール換算分子量が23000よりも大きい領域にある極大値が、ポリエチレングリコール換算分子量で50000〜120000の範囲にあることを特徴とする上記2に記載の組成物である。
4.上記1〜3のいずれかに記載の組成物であって、組成物に含まれる溶剤が、少なくとも、1〜85重量%の範囲の水を含むことを特徴とする組成物である。
5.上記1〜4のいずれかに記載の組成物であって、該組成物の可視光吸収スペクトルにおける750nmでの吸光係数が、0〜0.3cm-1・%-1の範囲にあることを特徴とする組成物である。
6.上記1〜5のいずれかに記載の組成物と触媒とを含有することを特徴とする触媒インクである。
7.上記6に記載の触媒インクを用いて作製した電極を有し、かつ芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーからなる高分子電解質膜と積層して成ることを特徴とする電極・電解質膜接合体が組み込まれた燃料電池である。
本発明の芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを含有する組成物は、燃料電池用の触媒等と混合することで触媒インクを調整でき、また本発明の触媒インクを使用して作製した電極は、良好な触媒性能を発現する。また芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーからなる電解質膜と良好に接合する。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明における芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーについて述べる。本発明における芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーは、ポリマー主鎖に芳香族あるいは芳香環を有する構造を持つ非フッ素系のプロトン伝導性ポリマーであり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルフィドスルホン、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、少なくとも1種以上のイオン性基が導入されているポリマーが挙げられる。イオン性基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、およびそれらの誘導体の少なくとも1種以上が挙げられる。なお、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボシキル基、リン酸基などの官能基をポリマーに含むことで、ポリマーのプロトン伝導性が発現される。この中で特に有効に作用する官能基は、スルホン酸基である。また、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、特定のポリマー構造のみを意味するものではなく、分子中にスルホン基、エーテル基、スルフィド基、ケトン基などの構造を有するポリマーの総称を表す。また、これらのポリマーは直鎖状であってもよいし、側鎖や枝分かれ構造を有していても良い。また、共重合ポリマーの場合は、ランダム、交互、ブロックのいずれの共重合体であっても良い。さらに、これらのポリマーは、分子鎖の一部に脂肪族基を含んでいても良い。
上記官能基を含有するポリマーのうち、特に芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族系炭化水素系ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。本発明のプロトン伝導性ポリマー、特にプロトン伝導性がスルホン酸基によって発現されるポリマーを得るためには、これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号公報に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
また、上記芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種に酸性基を含むモノマーを用いて合成することもできる。酸性基は主鎖に結合していても、側鎖に結合していても良い。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基含有ジアミンを用いて酸性基含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。芳香族ジオールに変えて、芳香族ジチオールを用いることで、スルフィド基を導入することができる。この際、スルホン酸基含有ジオール(あるいはジチオール)を用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られた酸性基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。スルホン酸基を含有するジハライドモノマー中のジハライドの置換位置により主鎖あるいは側鎖にスルホン酸基を結合させるなどスルホン酸基の部位を制御することもできる。
本発明における芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーは、スルホン酸基含有ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物やスルホン酸基含有のポリアリーレン系化合物であることがより好ましい。これらのポリマーにおいて、エーテル基はスルフィド基であっても好ましい。
さらに、これらのポリマーのうち、ポリアリーレンエーテル構造を含む、芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーが特に好ましい。ポリアリーレンエーテル構造を含むことによって、水を含む混合溶媒への分散が容易であり、取扱い性に優れるためである。明らかではないが、エーテル基により水を含む混合溶媒との親和性が良好となると考えている。また、ポリアリーレンエーテル構造をポリマー中に有することで、ポリマーとしての靭性に優れるため、燃料電池とした際の耐久性が良好で特に好ましい傾向がある。エーテル基はスルフィド基であっても好ましい。
下記一般式(1)で示される構成成分を含むものは好ましい例である。
Figure 0004929787
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはカルボニル基、XはHおよび/または1価のカチオン種、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、O原子および/またはS原子が好ましく、O原子であることがさらに好ましい。
さらに、下記一般式(2)で示される構成成分を含むものはより好ましい。
Figure 0004929787
ただし、Ar’は2価の芳香族基、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、O原子および/またはS原子が好ましく、O原子であることがさらに好ましい。
上記一般式(2)で示される構成成分は、下記一般式(3)で示される構成成分であることが好ましい。
Figure 0004929787
ただし、Ar’は2価の芳香族基、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、O原子および/またはS原子が好ましく、O原子であることがさらに好ましい。
また、上記のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物においては上記一般式(1)および一般式(2)で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(1)または一般式(2)で示される以外の構造単位は本発明のスルホン酸を導入したポリアリーレンエーテルの50重量%以下であることが好ましい。50重量%以下とすることにより、スルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物の特性を活かした組成物とすることができる。
芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーとしては、スルホン酸基含有量が0.3〜2.8meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、十分なプロトン伝導性を示さない傾向があり、2.8meq/gよりも大きい場合にはポリマーの膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。その傾向はメタノール等の有機燃料を使用する燃料電池において特に顕著となる。より好ましくは0.6〜2.4meq/gである。なお、スルホン酸基含有量はポリマー組成より計算することができる。
またスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物は、下記一般式(4)および一般式(5)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することができる。一般式(4)で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(5)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
Figure 0004929787
ただし、Yはスルホン基またはカルボニル基、Xは1価のカチオン種、Wは塩素またはフッ素を示す。
本発明において、上記2,6−ジクロロベンゾニトリルおよび2,4−ジクロロベンゾニトリルは、異性体の関係にあり、いずれを用いたとしても良好なプロトン伝導性、耐熱性、加工性および寸法安定性を達成することができる。その理由としては両モノマーとも反応性に優れるとともに、小さな繰り返し単位を構成することで分子全体の構造をより硬いものとしていると考えられている。
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(4)、(5)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
また、上述の一般式(1)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(2)で表される構成成分中のAr’は、一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(4)、(5)で表される化合物とともに使用される芳香族ジオール成分モノマーより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、末端ヒドロキシル基含有ポリフェニレンエーテルオリゴマー、4,4’−チオビスベンゼンチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、4,4’−ビフェニルジチオール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−1,4−ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3−ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、1,5−ビス(ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,6−ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサン、等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。また、これらの芳香族ジオールには、炭素数1〜30の範囲のアルキル基、フェニル基などの芳香族系の置換基、ハロゲン、シアノ基、スルホン酸基およびその塩化合物などの置換基が結合していても良い。アルキル基や芳香族系の置換基にハロゲン、シアノ基、スルホン酸基などの置換基が結合していても良い。置換基の種類は特に限定されることはなく、芳香環あたり0〜2個であることが好ましい。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
スルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物を芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(4)および一般式(5)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物および/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。
重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。
芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、反応温度、ポリマー濃度、反応時間などを制御することで得られるポリマーの分子量を調整できる。反応温度としては、前記にあるように50℃〜250℃の範囲にあることが特に好ましく、温度が高いほど分子量の増加速度が速くなる傾向にあるので生産性に優れている。ポリマー濃度としては、モノマー濃度として2〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。2重量%よりも少ない場合は、分子量が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。反応時間は、0.2時間〜500時間、好ましくは1〜80時間である。反応時間が0.2時間より短いと系の温度が一定とならないため均一に反応させるのは困難な傾向にあり、500時間を超すと生産性の面から好ましくない。分子量としては反応時間が長いほど高くなる傾向にある。
また分子量を制御する手法として、ポリマーの末端を封鎖することで、重合反応が必要以上に進むことを抑制することも可能である。例えば、反応活性な部位が一カ所であるモノマーを添加する方法を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
本発明の組成物における芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーのポリエチレングリコール換算分子量は、2000〜23000の範囲にある成分を含むことが好ましい。詳しい理由は分かっていないが、この範囲に含まれる分子量の芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを含む組成物と燃料電池用触媒を混合調整した触媒インクから作製される電極を燃料電池に使用すると、燃料電池発電において触媒活性による電圧低下が起こりやすい低電流密度領域において、高い電圧を維持することが可能である。触媒への芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーの吸着状態が関与していると推測している。尚、ポリエチレングリコール換算分子量が2000よりも小さい分子量の成分は水に対する溶解性を持つなど、安定に使用できない傾向にあり、一方ポリエチレングリコール換算分子量23000よりも大きい分子量の成分は低電流密度領域での電圧低下抑制に対する寄与が少なくなり電圧が低下する傾向にある。より好ましくは、ポリエチレングリコール換算分子量が2500〜23000の範囲にある成分を含むことが好ましく、さらに好ましくは、3000〜20000の範囲であり、さらに一層好ましくは3000〜15000の範囲である。また芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーの全量に対する割合として、10重量%以上含んでいることが好ましく、15重量%以上含んでいることがより好ましく、20重量%以上含んでいることがさらに好ましい。芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーに対する含有量が5重量%より少ないと、電圧低下抑制の効果はより大きな分子量の成分の影響を受け、打ち消される傾向にある。
プロトン伝導性ポリマー重合時の分子量は、正規分布に代表されるような分子量分布を持つことから、ポリエチレングリコール換算分子量2000〜23000の成分を10重量%以上含む芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを重合反応により得る場合、分子量分布の極大値としては比較的小さなものとなりやすい傾向にある。分子量が小さいと、化学・物理的安定性が低下するので、燃料電池として使用した際に電極としての物理・化学的安定性が幾分低下する傾向にある。またその傾向も本質的な化学的安定性のために、フッ素系プロトン伝導性ポリマーよりも問題となりやすい。よって分子量を低下させ、触媒性能を十分に引き出すことができたとしても、燃料電池温度が高温になるなど、発電条件が過酷な場合、耐久性が低下しやすい傾向にある。よって、芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを含む組成物としては、少なくともポリエチレングリコール換算分子量2000〜23000の範囲に分子量分布の極大値を有する芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマー成分に加え、ポリエチレングリコール換算分子量が23000より大きな範囲に一つ以上、分子量分布の極大値を持つ芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを含む混合組成物は、化学・物理的安定性を改善する方策として、好ましいものである。より好ましくは、ポリエチレングリコール換算分子量2000〜23000に分子量極大値を有するプロトン伝導性ポリマー成分とともにポリエチレングリコール換算分子量の極大値が50000〜120000の範囲にある成分を含有すると触媒性能と耐久性をより良い関係で両立することができる。さらに好ましくは、分子量の極大値が大きい方の成分の分子量極大値が60000〜90000の範囲である。ポリエチレングリコール換算分子量の極大値が120000を超える場合、組成物の粘性が増すため取り扱い上好ましくない傾向にある。なお、このような分子量極大値を複数持つポリマー組成物の調整方法は、特に限定されるものではなく公知の手法と取ることが可能である。単純に分子量分布の異なるプロトン伝導性ポリマーを任意の比で混合する手法が簡便である。
本発明の芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーは、芳香族あるいは芳香環を有するプロトン伝導性ポリマーであることから、重合直後は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどの成分を含む溶媒に溶解した形で得られるが、必要により他の溶媒に置換することができる。重合時に使用される溶媒をそのまま用いると燃料電池とした際にも電極内にとどまり、初期性能に悪影響する傾向があるので、他の溶媒に置換することはより好ましい。
本発明の組成物において使用可能な有機溶媒の種類としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、などから選択される極性を有する有機溶媒を選択することは好ましい(微量に含有される不純物は除く。)。また、アルコール類、エーテル類、ケトン類から選択される有機溶媒に加え、水を含む溶媒を使用することはより好ましい傾向にある。水を含むことによって、組成物中でのプロトン伝導性ポリマーの溶解あるいは分散性が向上する傾向にある。また、水分により、触媒と混合した際の火災などの危険性が低減する。
より好ましい溶媒として使用できるアルコール類、エーテル類、ケトン類としては、触媒への影響や触媒インクとしての取り扱い性などを考慮すると、炭素数が6以下から構成されるものがさらに好ましく、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトシキエタノール、2−メチル−1−プロパノール、3−メチル−1−ブタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシブタノールやその誘導体などは好適に使用できる例である。またエーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチラール、1,4ジオキサンなどは好適に使用できる例である。またケトン系溶媒としては、アセトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、などが選択可能な例であるし、これらを組み合わせる事も可能である。中でも特に、ケトン類またはエーテル類から選択される有機溶媒あるいは、ケトン類またはエーテル類とアルコール類との併用はプロトン伝導性ポリマーの濃度が高い場合でも組成物が取扱いやすくなる傾向にあり、それら溶媒と共に水を含有する溶媒はさらに良好に取り扱うことができる。
重合時の溶媒を他の溶媒に置換する方法としては、例えば固形のプロトン伝導性ポリマーを得てから、本発明の組成物に適した溶媒に溶解・分散させる方法を取ることができる。重合時の溶媒を取り除く手法としては、重合反応終了後に、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄する方法がある。また反応溶液を、プロトン伝導性ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。後者の方法により、たとえば水中に沈殿させる場合、重合反応時に生成する塩を水に溶解除去できるので、プロトン伝導性ポリマーを精製する上では良好な手法である。また残留物の除去方法としては、洗浄操作のほか、濾過で除去することもできる。
得られた芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーは、例えばスルホン酸塩のような、塩の形で重合溶媒あるいは他の有機溶媒からなる混合溶液に溶解・分散させることも可能であるし、一度ポリマーを硫酸水溶液や塩酸水溶液のような酸性溶媒中で処理したのち水洗することによって、酸の形に変換したのち任意の溶媒に溶解・分散させることも可能である。酸型に変換する場合、過剰量の酸で処理することが一般的であるので、ポリマーが過剰な酸を含む可能性がある。そのため酸型に変換した後、水洗を繰り返すなどして、過剰な酸成分は除去することが望ましい。この際、洗浄に用いる水に塩が含まれていると酸型の官能基が塩型に変換される可能性があるので、少なくともイオン交換水のようなイオンを取り除く処理を行った水を使用することが好ましい。
また上記の組成物に占める水の割合としては、溶媒が、水とアルコールから選ばれる組み合わせの混合物である場合、水が1〜45重量%の範囲にあることが好ましく、より組成物の取り扱い性を良くするためには、水が1〜40重量%の範囲にあり、さらに好ましくは、1〜20重量%の範囲にあり、さらに一層好ましくは、2〜15重量%の範囲にあることが好まれる。混合溶媒に占める水分量が多く、45重量%を超えると、特に高濃度のプロトン伝導性ポリマーを含む組成物を得る場合、組成物の粘度が高く扱いにくくなる傾向がある。一方、水の割合が1重量%に満たない場合、プロトン伝導性ポリマーが固体状態で残るため、均質な組成物を得ることが困難である。その傾向も比較的高濃度のプロトン伝導性ポリマーの分散体を得る場合に問題となりやすい。
また水とアルコール系溶媒から選ばれる混合溶媒に占めるアルコール溶媒の割合としては、50〜98重量%の範囲にあることが好まれる。アルコール系溶媒の割合が50重量%未満となる場合、組成物の粘性が高く扱いにくく、特にゲル化する傾向が強いために好ましくない。一方アルコール系溶媒の割合が98重量%を超えるような場合、プロトン伝導性ポリマーの濃度が低くなるので、触媒インクを作製する時に有効的でない。より好ましくは、60〜95重量%の範囲である。
一方、上記組成物の溶媒として、水とアルコールに加え、エーテルあるいはケトン系溶媒を含む場合など、水とアルコールからなる2成分溶媒以外の組み合わせの場合、溶媒中の水分量あるいは有機溶媒の組み合わせにより溶媒の選択できる範囲を拡げることが可能である。その場合、水は1〜85重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、15〜75重量%の範囲にあり、さらに好ましくは、40〜65重量%の範囲である。組成物に占める水分量が増加しても、溶液の粘度を低く保つことが可能である。
また本発明の組成物におけるプロトン伝導性ポリマーの濃度としては、1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。プロトン伝導性ポリマーの濃度が1重量%に満たない場合、組成物に占めるポリマー量が少なく、触媒インクを作製する時に有効的では無く、逆に30重量%を超えると、粘度が高くなり取り扱いが困難となる傾向にある。プロトン伝導性ポリマーの濃度としては1〜25重量%の範囲である場合、特に良好に取り扱うことができ、さらに好ましくは2〜20重量%の範囲であり、さらに一層好ましくは3〜15重量%の範囲である。
本発明の組成物において、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーの組成物中での構造は、溶解(均一に広がった状態)あるいは分散(ポリマーを含む部分と溶媒のみから構成される部分が別々に存在)するか、その中間状態にあるものと考えられる。水と有機溶媒の種類や量の組み合わせにより、組成物中での構造は変化すると考えられる。混合溶媒へ溶解・分散させる時の挙動を考えた場合、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを水で膨潤させた後、有機溶媒を加える手法により溶解・分散が促進されることから、混合溶媒中で芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーが分散した構造を取る場合は、主として水により膨潤したミセル構造を持ち、そのミセルが有機溶媒中に分散した形を取るものと推定している。また有機溶媒の特性により、有機溶媒とポリマー・水との相溶性が高くなるにつれ、溶解状態に近づくものと推定している。
本発明の組成物としては、沈殿などの分離が無い状態になるよう均一に溶解・分散させることがより好ましい傾向にある。そのための手法としては、予め調整した水と一種類の有機溶媒の混合溶液を添加する方法や、プロトン伝導性ポリマーに水を加えて一旦膨潤させた後、有機溶媒を加えると共に、撹拌などに代表される物理的手法で混合したり、加熱する方法を取ることができる。組成物の調整の容易さという点では後者の方が優れている。
なお本発明の組成物を調整する際に使用する芳香族炭化水素系ポリマーとしては、大きなブロック状のものよりも、細かな粉末のように、見かけの表面積が大きいものの方が、溶媒が行き渡りやすく、良好に取り扱うことができる。溶媒として使用する水や有機溶媒においては、触媒を被毒するような不純物が含まれないように、純度には注意を払う必要がある。ポリマーの重合時に使用する溶媒がポリマー中に残留する可能性もある。重合時の溶媒が燃料電池の性能に悪影響を与える可能性があるので、できるだけ取り除くことが好ましく、ポリマー重量に対して、5重量%以下まで取り除くことが好ましく最適には1重量%以下である。
さらに本発明者らは、より良い発電性能を得るための検討を行った結果、ポリエチレングリコール換算分子量2000〜23000の範囲に含まれるプロトン伝導性ポリマー成分を含む組成物においては、組成物の750nmにおける可視光吸収スペクトルの吸光係数が0〜0.3cm-1・%-1の範囲にある場合、特に良好な燃料電池性能が得られることを見いだした。組成物の前記吸光係数が0.3cm-1・%-1よりも大きい組成物を用いて作った燃料電池においては、高電流密度領域における電圧低下が大きく、良好な性能が得られない傾向にある。より好ましくは吸光係数が0〜0.15cm-1・%-1の範囲であり、さらに好ましくは0.0001〜0.05cm-1・%-1の範囲である。高電流密度における電圧低下は、燃料あるいは酸素の拡散律速であると一般的に考えられていることより推定して、吸光係数が0.3cm-1・%-1を超える組成物を用いると、電極が密に詰まる傾向にあると推測している。しなしながら、この場合においても低電流密度領域では良好な発電性能を示すことが可能である。
さらに本発明の組成物においては、酸化防止剤を含んでいてもよく、燃料電池とした際の耐久性を向上することが可能である。なお酸化防止剤の種類や量に関しては、特に限定されるものではないが、ポリマーとの親和性の観点から、芳香族系の構造を分子内に含む酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール系の酸化防止剤やヒンダードアミン系の酸化防止剤が良好に使用できる。またプロトン伝導性ポリマーに対して0.01〜10重量%の範囲で混在させた場合に特に良好であり、0.01重量%よりも少ないと酸化を防止する効果は少なく、一方10重量%よりも多いと、ポリマーに対する割合が高くなり、燃料電池用の電極を作製する際、ひび割れが起こりやすくなってしまう。酸化防止剤の別の例としては、特開2003−201403号公報等に記載の酸化防止剤なども挙げられる。なお、本発明の組成物は、必要に応じて、酸化防止剤以外にも、例えば、熱安定剤、架橋剤、静電気防止剤、消泡剤、重合禁止剤や、シリカ粒子やアルミナ粒子やチタニア粒子やホスホタングステン酸粒子などの無機化合物、無機−有機のハイブリッド化合物、イオン性液体、カーボンナノファイバーなどのナノカーボン材料、などの各種添加剤を含んでいても良い。
本発明の組成物を用いて、燃料電池の電極を作製する際に使用する触媒インクを作製することができる。触媒インクの調整方法としては特に制限されるものではなく公知の技術を使用することができる。触媒インクに使用する触媒としては、耐酸性と触媒活性の観点から適宜選出できるが、白金族系金属およびこれらの合金や酸化物が特に好ましい。例えばカソード用電極への応用を考える場合には白金または白金系合金,アノード電極への応用を考える場合には白金または白金系合金や白金とルテニウムの合金を使用すると高効率発電に適している。これらの触媒微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されているものを用いるのが好ましい。カーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどのナノカーボン材料に担持されていても良好に使用することができる。このように適宜選択される触媒と本発明の組成物を混合することにより、触媒インクを作製することができる。この際、触媒と組成物の混合インクを作製したのち、一度溶媒をとばして触媒表面をプロトン伝導性ポリマーが覆った触媒粒子を作ったのち、再度溶媒に溶解させた触媒インクとすることも可能である。組成物に占める水の量が特に少ない場合、触媒の種類によっては、発火する可能性もあるので、あらかじめ触媒に微量の水分を含有させておき、その後、本発明の組成物を添加することも有効である。冷却することも有効である。触媒と本発明の組成物以外の成分を含んでいても良い。
また、このようにして調整される触媒インクを展開・乾燥させて得られる触媒層(電極)をプロトン伝導性の電解質膜上に形成させることで、電極・電解質膜接合体を作製することができる。この際、触媒層の外側には、集電体および燃料を効果的に輸送させる役割を持つ、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーが存在することが好ましい。電解質膜の種類としては、本発明における芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーで示した構造を持つ、すなわち芳香族あるいは芳香環を有するプロトン伝導性ポリマーから作製される電解質膜が好ましい。フッ素系プロトン電解質膜を使用する場合は、特性の違いにより、電極・電解質膜の界面が剥離しやすくなってしまう。本発明の組成物を用いて作製した電極は、触媒性能を良好に引き出すことが可能であり、かつ注目を集める芳香族系あるいは芳香環を有するプロトン伝導性の高分子電解質膜に対して良好な接着性を有する点において優れている。電極・電解質膜接合体としては、膜−電極間に大きな抵抗が生じないようにすることが重要であり、また機械的な力によって剥離や電極触媒の剥落が生じないようにすることが重要である。
この接合体の作製方法としては、例えば本発明の触媒インクをカーボンペーパー上に均一に塗布、乾燥させた後、電解質膜に熱圧着する手法や、カーボンペーパーの替わりに各種のフィルム上に触媒層を形成後、電解質膜に熱転写し、さらに多孔質性のカーボン層と重ね合わせるという手法を取ることができる。熱圧着または熱転写する際、電解質膜および/または電極層の水分量をコントロールした条件下で行うと、より良好な電極・電解質膜接合体とすることができる。また適宜、触媒層内に疎水性の物質や発泡剤を添加したり、電解質膜上に触媒層を形成した後、表面の疎水化処理を行うことで、触媒層のガス拡散性を向上するという手法を取ることも、良好な電極・電解質膜接合体を作製する手法の一つである。
また本発明の電極・電解質膜接合体を用いて、燃料電池を作製することもでき、作製した燃料電池は、長期にわたって良好な性能・接合性を持続する点で特に優れている。
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<プロトン伝導性ポリマーのイオン交換容量(酸型)>
イオン交換容量(IEC)としては、プロトン伝導性ポリマーに存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、ポリマー粉末を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケータ中で30分間放置冷却した後、乾燥重量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/l塩化ナトリウム超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉したまま、室温で24時間攪拌した。次いで、ガラスフィルターによって濾過した。濾液30mlを取り出し、10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IECを求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml、Wsの単位:g)
<ポリエチレングリコール換算分子量の測定方法>
プロトン伝導性ポリマーの分子量は、ポリエチレングリコール換算分子量として、GPCにより測定した。測定装置としては、Shodex GPC SYSTEM−21を用いた。カラムはTSKgel GMXXLカラム2本にTSKgel G2000HXLカラムをつなげたものを使用した(TOSOH製)。溶媒は30mMのLiBrと60mMのリン酸を溶解したN,N―ジメチルホルムアミドを用い、温度は40℃で流速は0.7ml/分とした。検出器はRI検出器を用いた。分子量は標準ポリエチレングリコール換算で計算して求めた。試料として、ポリマー固形分換算で0.05%に溶解後20μl注入した。
<可視光吸収スペクトル測定>
HITACHI U−2001型ダブルビーム分光光度計により、750nmの可視光に対する吸光度(E)をJIS K0115(2004)「吸光光度分析通則」に従い測定した。ブランクはプロトン伝導性ポリマーを含有しない溶剤のみの混合物を用い測定した。光源としては、ヨウ素タングステンランプを用いた。
E=log(Io/It) (Io:入射光の強度 It:透過光の強度)
次いで吸光係数(ε[cm-1・%-1])を下記式にて算出した。
吸光係数(ε)=E(吸光度)/[l(セル長)・C(ポリマー濃度%)]
<組成物の対数粘度>
ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
<発電特性>
電極・電解質膜接合体を自作の燃料電池評価用セルに組み込み、株式会社NF回路設計ブロック製の燃料電池評価装置を使用し、セル温度80℃で、アノード側の燃料に水素ガス、カソード側には空気を、それぞれ供給しながら、16時間発電することでエージングを行った。次いで電流−電位曲線を調べることで初期性能を評価した。また500mA/cm2の電流密度下で500時間定電流連続放電試験を実施しながら、電圧の安定性を調査することで耐久性を測定した。
実施例および比較例で用いたサンプルは下記の方法により作製した。
(プロトン伝導性ポリマーの合成例1)
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)、4,4’−ビフェノール、炭酸カリウム、のモル比で1.00:1.99:2.99:2.5の混合物14gをモレキュラーシーブ2.5gと共に100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。50mlのNMPを入れて、151℃で2時間撹拌した後、反応温度を190〜200℃に上昇させて系の粘性が上がるのを目安に反応を続けた。この際の反応時間を変えることで異なる分子量分布を持つプロトン伝導性ポリマーを合成した。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて、水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄する操作を2回繰り返した。次いで1mol/リットルの塩酸水溶液1リットルに一晩撹拌しながら浸積してから、再び沸騰水中で1時間洗浄する操作を7回繰り返した後、減圧乾燥することで、表1に示すポリエチレングリコール換算分子量の異なる芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを作製した。
Figure 0004929787
(組成物の作製)
表1に記載の芳香族炭化水素系のプロトン伝導性であるポリマーA、B、Cそれぞれと、ポリマーAとポリマーCの1対2混合物とを下記3種類の重量比となるよう溶解・分散し、プロトン伝導性ポリマーを5重量%含む組成物を得た。水としては超純水、有機溶剤は試薬特級グレードのものを用いた。
(1)プロトン伝導性ポリマー/水/1,2−ジメトキシエタン=5/10/85
(2)プロトン伝導性ポリマー/水/1,2−ジメトキシエタン/メタノール=5/5/23/67
(3)プロトン伝導性ポリマー/水/シクロヘキサノン=5/5/90
表2にそれぞれの組成物について吸光係数を測定した値を示す。またそれぞれの組成物を実施例1〜9の組成物と比較例1〜3の組成物に分けた。
Figure 0004929787
(触媒インクの作製)
市販の40%白金担持カーボン触媒(田中貴金属工業株式会社)に組成物を加え、均一になるまで撹拌することで実施例、および比較例の燃料電池用の触媒インクを得た。なお、実施例の番号の組成物を用いて作製した電極をそのまま実施例の番号の電極とする。例えば実施例1の組成物を用い作製した電極は、実施例1の電極とする。また触媒担持カーボンと組成物中に含まれるプロトン伝導性ポリマーの重量比は1:0.28となるように調整した。
(電極の作製)
触媒インクを市販のカーボンペーパー(E−Tek)に塗布・乾燥することで燃料電池用の電極を作製した。このときアノード電極用のカーボンペーパーには親水性のカーボンペーパー、カソード電極用のカーボンペーパーは疎水化処理したカーボンペーパーを用いた。
(電解質膜の作製)
表1記載のプロトン伝導性ポリマーCをNMPに溶解し(25%)、ホットプレート上のガラス板に流延法によりキャストし、フィルム状になるまでNMPを留去した後、水中に一晩浸漬した。さらに超純水を用いて1時間洗浄する操作を5回繰り返した。その後枠にはめて室温で乾燥することで芳香族炭化水素系の高分子電解質膜を得た。
(電極・電解質膜接合体の作製)
上記の電解質膜を20℃湿度80RH%の雰囲気下で水分と平衡させた後、同環境下において、前記2種類の電極で挟み込んだ(アノード電極およびカソード電極。触媒インク塗布面が電解質膜に接するように配置する。)。この電極と電解質膜の積層体を、ガスケットと共に2枚のステンレスプレートに挟んだ。次いで、130℃、加圧下でホットプレスして電極と電解質膜を接合した。ステンレスプレートで挟まれた状態のまま取り出し、室温になるまで自然冷却し、その後取り出し、実施例および比較例の電極・電解質膜接合体を得た。なお、実施例の番号の電極を用いて作製した電極・電解質膜接合体をそのまま実施例の番号の電極・電解質膜接合体とする。例えば実施例1の電極を用い作製した電極は、実施例1の電極・電解質膜接合体とする。
実施例1〜9および比較例1〜3の電極・電解質膜接合体について燃料電池発電試験を行った。その際、電流−電圧曲線の測定と共に、電流遮断法により電池の内部抵抗を測定した。触媒活性の良否は電流−電圧曲線の低電流密度領域における電圧の値より判断することが可能であるが、電池の内部抵抗による電圧低下を触媒性能が不良なためによる電圧低下と誤って考える可能性があるので、電池の抵抗成分を取り除いた際の抵抗フリー電圧を触媒活性の指標とし、下記式により求めた。
E(抵抗フリー電圧)=Ereal(実測電圧)−R(内部抵抗)I(電流密度)
0.1A/cm2の電流密度における抵抗フリー電圧を測定した結果を表3にまとめる。
Figure 0004929787
表3より実施例のポリエチレングリコール換算分子量2000〜23000の成分を10重量%以上含有するプロトン伝導性ポリマーを含む組成物を用いて作製した燃料電池においては、いずれも0.1A/cm2における抵抗フリー電圧が高く良好な触媒性能が発現されていることが分かる。それに対して比較例の燃料電池においては、十分な触媒性能が得られなかった。表2における吸光係数の値は、組成物中におけるプロトン伝導性ポリマーの分散あるいは溶解状態の指標となるが、触媒性能の発現には、いずれも関与していない傾向が見られた。従って、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを含む組成物としては、芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーの分子量を本発明の範囲に調整することが特に重要である。
また、燃料電池の電極においては、触媒活性と共に電極内のガス拡散性を良好に保つことが燃料電池の使用方法によっては重要である。電極内のガス拡散性が悪いと高電流を流すことが困難になる傾向にあるので、この場合好ましくない。そういった視点より、触媒活性が良好である実施例1〜9の燃料電池の電流−電位曲線において電圧が0.2Vの時の電流密度の値を調査した。結果を表4に示す。
Figure 0004929787
表4より、実施例の中でも0.2Vにおける電流密度の値には差があり、その傾向は組成物の吸光係数が小さい実施例3,5,6,7,8,9において特に良好なことが分かる。従って、吸光係数としては0〜0.3cm-1・%-1の範囲にある組成物を用いると、より良好に燃料電池を動作させることが可能である。なおこの際、分子量が小さいプロトン伝導性ポリマーを用いるほど、吸光係数が増加する傾向にあるので、組成物の調整が難しくなる傾向にある。
また、実施例3および9の燃料電池に関して500時間連続発電を行い耐久性を比較した。その結果、実施例3の燃料電池においては、0.5A/cm2における電圧が、初期0.72Vであったものが、0.68Vへとわずかに低下したが、実施例9の燃料電池においては、初期0.71Vから0.72Vの範囲で、ほぼ一定に推移した。従って、ポリエチレングリコール換算分子量2000〜23000の成分と共に、より高分子量成分のプロトン伝導性ポリマーを混在させた組成物を用いると、より良好に燃料電池を動作させることが可能であった。
また、本発明の組成物は芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを分散あるいは溶解させた組成物であり、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜と特に良好な接合性を有する。比較例4として、フッ素系のプロトン伝導性ポリマーが分散された組成物である市販のナフィオン(登録商標)溶液(5%)を使用して作製した燃料電池に関して、同様の耐久性試験を実施した。その結果、初期電圧は0.72Vと良好であったが500時間経過後は0.61Vまで電圧が低下した。原因を特定するために電流遮断法にて燃料電池の内部抵抗を測定した所、本発明の組成物を用いた場合では認められなかった抵抗増加が観察された。これは電極と高分子電解質膜との界面の接合性が低下したためだと推測している。
また異なる分子構造を持つ、芳香族炭化水素系ポリマーに関しても同様の検討を実施した。
(プロトン伝導性ポリマーの合成例2)
プロトン伝導性ポリマーの合成1において、S−DCDPSに変えて、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン2ナトリウム塩を用いて、プロトン伝導性ポリマーの合成1の手法に従い、異なる分子量分布を持つプロトン伝導性ポリマーDとEを合成した。
(プロトン伝導性ポリマーの合成例3)
4つ口のフラスコに、DCBN0.12モル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン0.1モル、炭酸カリウム0.27モル、NMP200mlをとり、オイルバス中、窒素雰囲気下で加熱し、モレキュラーシーブ30gと共に撹拌下130℃で反応させた。その後200℃で3時間反応させた。その後さらにDCBN0.02モルを加え、さらに4時間反応した。得られた反応液を放冷後、沈殿物を濾過除去し、濾液を4lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、NMPに溶解した。これをメタノール4lに再沈殿し、乾燥させた。次いで、得られたオリゴマー0.03モル、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)0.068モル、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド0.02モル、ヨウ化ナトリウム0.01モル、トリフェニルホスフィン0.028モル、亜鉛末0.18モルをフラスコにとり、乾燥窒素置換した。NMP100mlを加え、90℃に加熱し、反応時間を変えて重合をおこなった。重合溶液を水に加え再沈し、洗浄後、乾燥することで主鎖にポリアリーレンエーテル構造を持ち、側鎖にスルホン化ポリアリーレン構造を有する、異なる分子量分布を持つプロトン伝導性ポリマーFとGを得た。
(プロトン伝導性ポリマーの合成例4)
S−DCDPS0.014mol、DCBN0.036mol、末端ヒドロキシル基含有ポリフェニレンエーテルオリゴマー(略号:DPE)(大日本インキ製SPECIANOL DPE−PL、ロットC106)(フェニレンエーテルモノマーの繰り返し単位として、n=1〜7の成分を含む混合物。平均組成はn=4.0)0.05mol、炭酸カリウム0.065mol、乾燥したモレキュラーシーブ13gを200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。110mlのN−メチル−2−ピロリドンを入れて、加熱撹拌し、反応温度を190〜200℃に上昇させて反応させた。反応時間を変えることでポリマーの重合度を調整した。放冷の後、重合液を水中に注いでポリマーをストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。次いで1mol/リットルの硫酸水溶液1リットルに一晩撹拌しながら浸積してから、再び沸騰水中で1時間洗浄する操作を3回繰り返した後、減圧乾燥することで、異なる分子量分布を持つプロトン伝導性ポリマーHとIを得た。
プロトン伝導性ポリマーD,E,F,G,HおよびIの特性を表5に示す。
Figure 0004929787
ポリマーD,E,F,G,H,Iを含む組成物を調整した。組成物は、いずれもプロトン伝導性ポリマー/水/1−プロパノール/1,2−ジエトキシエタン=5/62/18/15(重量比)となるよう調整した。得られた組成物はいずれも透明であり、良好にポリマーを溶解(分散)できていることを確認した。それぞれの組成物を用いて作製した電極を使用し、電極・電解質膜接合体を前記手法に従い作製し、燃料電池に組み込み、抵抗フリー電圧を測定した。組成物の特性、および燃料電池の発電結果を表6に示す。
Figure 0004929787
表6において、実施例の同系統のポリマーを用いて作製した組成物を用いた燃料電池の比較(実施例10と比較例4の比較,実施例11と比較例5の比較、実施例12と比較例6の比較)より、実施例の燃料電池の方が、比較例に比べてより高い抵抗フリー電圧を示しており、優れた燃料電池特性を有していることが分かる。このようにプロトン伝導性ポリマーの構造を変えた場合でも、分子量の影響により発電性能に違いがでてくることが確認できた。従って、プロトン伝導性ポリマーの分子構造の違いによって、電極性能の絶対値は変化する可能性はあるが(プロトン伝導性ポリマー4において幾分低め)、本質的に同一系統のポリマーで比較した場合、分子量を本発明の範囲に抑えることによって、触媒性能を良好に引き出すことができる。
実施例で示した発電性能は、一例として水素を燃料として使用するタイプの燃料電池に関するものを示したが、メタノール等の炭化水素系燃料を使用するタイプの燃料電池においても同様に利用することができる。
本発明の芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを含む組成物を使用して作製した燃料電池は、良好な燃料電池の触媒性能を発現することが可能である。また芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーからなる高分子電解質膜との接合体は、電極と電解質膜間の接合性不良の問題を改善できる。そのため燃料電池に有用に使うことができる。

Claims (7)

  1. 少なくとも芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを1〜30重量%の範囲で含む溶剤組成物であって、該プロトン伝導性ポリマー中の、ポリエチレングリコール換算分子量が2000〜23000の範囲である成分が、該プロトン伝導性ポリマー全量に対して10重量%以上含まれていることを特徴とする組成物。
  2. 該芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーの分子量分布が二つ以上の極大値を有しており、極大値の少なくとも一つ以上がポリエチレングリコール換算分子量で2000〜23000の範囲にあり、かつ極大値の少なくとも一つ以上がポリエチレングリコール換算分子量で23000よりも大きい領域にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  3. 芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーの分子量分布における、ポリエチレングリコール換算分子量が23000よりも大きい領域にある極大値が、ポリエチレングリコール換算分子量で50000〜120000の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の組成物であって、組成物に含まれる溶剤が、少なくとも、1〜85重量%の範囲の水を含むことを特徴とする組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物であって、該組成物の可視光吸収スペクトルにおける750nmでの吸光係数が、0〜0.3cm-1・%-1の範囲にあることを特徴とする組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の組成物と触媒とを含有することを特徴とする触媒インク。
  7. 請求項6に記載の触媒インクを用いて作製した電極を有し、かつ芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーからなる高分子電解質膜と積層して成ることを特徴とする電極・電解質膜接合体が組み込まれた燃料電池。
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