JP4887629B2 - プロトン伝導性ポリマー組成物、燃料電池電極触媒層用インク及び電極・電解質膜接合体 - Google Patents

プロトン伝導性ポリマー組成物、燃料電池電極触媒層用インク及び電極・電解質膜接合体 Download PDF

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Description

本発明は、芳香環炭化水素系プロトン伝導性ポリマーが水/有機溶媒の混合溶媒中に含有された組成物に関するものであり、特に燃料電池電極の触媒層形成に好適な組成物である。
液体電解質のかわりに高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、高分子電解質型燃料電池や水電解槽を挙げることができる。高分子電解質型燃料電池には、水素ガスを燃料として使用するタイプの燃料電池と、メタノールに代表されるような炭化水素系燃料と水の混合溶液を燃料として使用するタイプの燃料電池がある。燃料電池は、プロトン伝導性を有する電解質膜を一対の電極で挟み込んだ電極・電解質膜接合体を主構成材として有し、該接合体の片側の電極で酸化反応、もう一方の電極で還元反応を起こすことで電池として作動する。
これらの電解質膜に用いられる高分子膜は、カチオン交換膜としてプロトン伝導性とともに化学的、熱的、電気化学的および力学的な安定性が求められる。これまで、主に米国デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜(フッ素系プロトン伝導性ポリマー)が使用されてきた。しかしながら、ナフィオン膜は100℃を越える条件で運転しようとすると、膜の含水率が急激に落ちるほか、膜の軟化も顕著となる。このため使用温度が制限される問題がある。また、メタノール等の炭化水素系液体燃料を燃料とするタイプの燃料電池に使用すると、膜をメタノールが透過して性能を低下させる現象が顕著であり、さらには、膜が高価なことが欠点となっている。
このような欠点を克服するため、フッ素系プロトン伝導性ポリマーに替えて、芳香族炭化水素系ポリマーにスルホン酸基やホスホン酸基などのプロトン伝導性官能基を導入した非フッ素系のプロトン伝導性ポリマーからなる高分子電解質膜が種々検討されている(例えば、非特許文献1、特許文献1、2)
米国特許出願公開第2002/0091225号明細書 特開平6−93114号公報 ジャーナル・オブ・メンブラン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、(オランダ)1993年、83巻、P.211−220
非フッ素系プロトン伝導性ポリマーからなる電解質膜を用いて、電極・電解質膜接合体を製造する場合、電極と電解質膜との接合性を向上させることが必要であり、フッ素系プロトン伝導性ポリマーで一般に行われる電極を電解質膜に熱転写する手法以外に、電極(金属触媒とフッ素系プロトン伝導性ポリマーが含有される触媒層を含む)の上に、非フッ素系のプロトン伝導性ポリマー溶液を塗布・乾燥させることが検討されている(例えば特許文献3、4)。しかしながら、触媒層の均一性や接合性に関して改善の余地があった。
特開2003−317749号公報 特開2004−55522号公報
本発明の課題は、燃料電池電極の触媒層の形成に好適な芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマー組成物を提供することにあり、該組成物を用いて電極の触媒層の均一性や非フッ素系プロトン伝導性電解質膜との接合性を改善し、長期に渡って良好な接合性を持つ燃料電池を提供しようとすることである。
前記課題を克服するために、本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマー、水及び有機溶媒を含有する組成物であり、該組成物が前記プロトン伝導性ポリマーを1〜30重量%含有し、かつ構造粘性を示すことを特徴とするプロトン伝導性ポリマー組成物である。
また、前記有機溶媒が、アルコール類、エーテル類、ケトン類から選ばれる1種又は2種以上の有機溶媒であり、かつ前記水と有機溶媒の混合溶媒に占める水の割合が10〜40重量%であることを特徴とする第1の発明に記載のプロトン伝導性ポリマー組成物である。
さらに、前記プロトン伝導性ポリマーが、スルホン化ポリアリーレンエーテル系ポリマーであることを特徴とする第1又は第2の発明に記載のプロトン伝導性ポリマー組成物である。
また、第1〜3の発明のいずれかに記載のプロトン伝導性ポリマー組成物を含有することを特徴とする燃料電池電極触媒層用インクである。
さらに、第4の発明に記載の触媒層用インクを用いてなることを特徴とする燃料電池用電極である。
さらにまた、第5の発明に記載の電極と非フッ素系のプロトン伝導性電解質膜とを接合してなることを特徴とする電極・電解質膜接合体である。
本発明の芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを含有した水/有機溶媒系組成物は、構造粘性を示すため、該組成物を使用した触媒インクは、コーティング法などで触媒層を形成させると、均一性に優れる触媒層を形成することができる。また、該触媒層を有する電極と非フッ素系プロトン伝導性電解質膜との接合体は接合性に優れ、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明における芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーについて述べる。本発明における芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーは、ポリマー主鎖に芳香族あるいは芳香環とエーテル結合、スルホン結合、イミド結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、カーボネート結合およびケトン結合から選択される少なくとも1種以上の結合基を有する構造を持つ非フッ素系のプロトン伝導性ポリマーであり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、およびそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。なお、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボシキル基などの官能基をポリマーに含むことで、ポリマーのプロトン伝導性が発現される。この中で特に有効に作用する官能基は、スルホン酸基である。また、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。
上記官能基を含有するポリマーのうち、特に芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族系炭化水素系ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。本発明のプロトン伝導性ポリマー、特にプロトン伝導性がスルホン酸基によって発現されるポリマーを得るためには、これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
また、上記芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種に酸性基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基やホスホン酸基を含有するジアミンを用いて酸性基含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られた酸性基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。
本発明における芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーは、スルホン酸基含有ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物、ポリアリーレン系化合物であることがより好ましい。
さらに、これらの下記一般式(1)で示される構成成分を含むポリマーが特に好ましい。
Figure 0004887629
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHおよび/または1価のカチオン種、Zは芳香環をつなぐ結合様式より選択されるが、直接結合、エーテル結合または/およびチオエーテル結合(OまたはS)が好ましい。その中でもエーテル結合が好ましい傾向にある。
さらに下記一般式(2)の構成成分を含む方が好ましい。
Figure 0004887629
ただし、Ar’は2価の芳香族基、Zは芳香環をつなぐ結合様式より選択されるが、直接結合、エーテル結合または/およびチオエーテル結合(OまたはS)が好ましい。その中でもエーテル結合が好ましい傾向にある。
よって、プロトン伝導性ポリマーとして、一般式(3)とともに一般式(4)で示される構成成分を含むことがより好ましい。
Figure 0004887629
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 0004887629
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
上記一般式(4)で示される構成成分は、下記一般式(5)で示される構成成分であることが好ましい。
Figure 0004887629
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
また、上記のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物においては上記一般式で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式で示される以外の構造単位は50重量%以下であることが好ましい。50重量%以下とすることにより、スルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物の特性を活かした組成物とすることができる。
スルホン酸基含有化合物としては、スルホン酸基含有量が0.3〜3.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、十分なプロトン伝導性を示さない傾向があり、3.5meq/gよりも大きい場合にはポリマーの膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。なお、スルホン酸基含有量はポリマー組成より計算することができる。より好ましくは1.0〜3.0meq/gである。
本発明のスルホン酸基含有化合物は、下記一般式(6)および一般式(7)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することができる。一般式(6)で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、およびそれらのスルホン酸基が1価あるいは多価のカチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(7)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
Figure 0004887629
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Wは塩素またはフッ素を示す。
本発明において、上記2,6−ジクロロベンゾニトリルおよび2,4−ジクロロベンゾニトリルは、異性体の関係にあり、いずれを用いたとしても良好な特性を得ることができる。その理由としては両モノマーとも反応性に優れるとともに、小さな繰り返し単位を構成することで分子全体の構造をより安定なものとしていると考えられる。また極性を有しているため静電的作用により構造をより安定化としていると考えられる。
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(6)、(7)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
また、上述の一般式(1)や(3)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(2)や(4)や(5)で表される構成成分中のAr’は、例えば一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(6)、(7)で表される化合物とともに使用される芳香族ジオール成分モノマーより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、4,4’−ビフェニルジチオール等があげられるが、この他にも例えば芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
本発明のスルホン酸基含有化合物を芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(6)および一般式(7)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。
使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。
本発明の芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーは、芳香族あるいは芳香環を有するプロトン伝導性ポリマーであることから、重合直後は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどの成分を含む溶媒に溶解した形で一般的には得られる。そのため、本発明の組成物を得るための方法としては、重合時の溶媒を置換する必要がある。例えば固体のプロトン伝導性ポリマーを得てから、本発明の組成物に適した溶媒に含有させる方法を取ることができる。
重合時の溶媒を取り除く手法としては、重合反応終了後に、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄する方法がある。また反応溶液を、プロトン伝導性ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。後者の方法により、たとえば水中に沈殿させる場合、重合反応時に生成する塩を水に溶解除去できるので、プロトン伝導性ポリマーを精製する上では良好な手法である。また残留物の除去方法としては、洗浄操作のほか、濾過で除去することもできる。
得られたプロトン伝導性ポリマーは、例えばスルホン酸塩のような、塩の形で水と一種類の有機溶媒からなる混合溶液に含有させることも可能であるし、一度ポリマーを硫酸水溶液や塩酸水溶液のような酸性溶媒中で処理することによって、酸の形に変換したのち含有させることも可能である。酸型に変換する場合、過剰量の酸で処理することが一般的であるので、ポリマーが過剰な酸を含む可能性がある。そのため酸型に変換した後、水洗を繰り返すなどして、過剰な酸成分は除去することが望ましい。この際、洗浄に用いる水に塩が含まれていると酸型の官能基が塩型に変換される可能性があるので、少なくともイオン交換水のようなイオンを取り除く処理を行った水を使用することが好ましい。
また、水と一種類の有機溶媒の混合溶液に芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを含有させた組成物としては、沈殿などが無い状態になるよう、均一に含有させることが好まれる。そのための手法としては、プロトン伝導性ポリマーに水を加えて一旦膨潤させた後、有機溶媒を加えると共に、撹拌などに代表される物理的手法で混合したり、加熱する方法により均一化させるのが好ましい。芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーに、予め調整した、水と一種類の有機溶媒の混合溶液を添加することによっても芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーが含有した組成物を作製することは可能であるが、均一化させる際、本発明の製造方法に比較して時間かかるので、生産性を考慮した場合望ましくない。また未溶解の状態で残る場合がある。本発明の組成物を製造する際、特に水の添加量が少ない場合は、ポリマー量に比べて水の量が少なく、一部のポリマーのみが水を含む状態となるため、次いで有機溶媒を添加して組成物を作る時に、均一化させるのにかかる時間が長くなる傾向がある。そのため、なるべく水分を均等に行き渡らせてから有機溶媒を加える手法が好ましい。この傾向はポリマー量が多くなればなるほど顕著となる。
水分を均等に行き渡らせる手法としては、撹拌などの物理的手法を取ることが有効であり、また加熱などの熱的手法を取ることも有効である。また任意の環境下に静置し、自然に水分が行き渡ることを待つこともできる。またこれらの手法を併用しても良い。なお本発明の組成物を調整する際に使用する芳香族炭化水素系ポリマーとしては、大きなブロック状のものよりも、細かな粉末のように、見かけの表面積が大きいものの方が、水分が行き渡りやすく、良好に取り扱うことができる。
一方、溶媒として使用する水や有機溶媒においては、触媒を被毒するような不純物が含まれないように、純度には注意を払う必要がある。ポリマーの重合時に使用する溶媒がポリマー中に残留する可能性もある。重合時の溶媒が燃料電池の性能に悪影響を与える可能性があるので、できるだけ取り除くことが好ましく、ポリマー重量に対して、最適には0重量%、あるいはその近くまで取り除くことが好ましい。少なくとも1重量%以下が好ましい。例えばプロトン伝導性ポリマーを水と有機溶媒の混合溶液には分散させず、重合溶媒に溶解させた形の組成物を作製し、燃料電池の電極を作製する時に使用すると、本発明による組成物を使用して作製した電極を用いた場合よりも性能が低下するという結果も認められている。
本発明の組成物において、芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーの組成物中での構造は、溶解(均一に広がった状態)あるいは分散(ポリマーを含む部分と溶媒のみから構成される部分が別々に存在)するか、その中間状態にあるものと考えられる。水と有機溶媒の種類や比率の組み合わせにより、組成物中での構造は変化すると考えられる。例えば、芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを水で膨潤させた後に、有機溶媒を加える手法を採用すると、より溶解・分散が促進されることから、混合溶媒中で芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーが分散した構造を取る場合は、主として水により膨潤したミセル構造を持ち、そのミセルが有機溶媒中に分散した形を取り、また、有機溶媒とポリマー・水との相溶性が高くなるにつれ、溶解状態に近づくと考えられる。
本発明の組成物における有機溶媒の種類としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類から選択される有機溶媒から構成されることが好ましい(微量に含有される不純物は除く。)。なお触媒への被毒性や触媒インクとしての取り扱い性などを考慮すると、炭素数が6以下から構成される溶媒が好ましく、アルコール系溶媒としては、特にエタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトシキエタノールなどは好適に使用できる。またエーテル系溶媒としては、エチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチラール、などは好適に使用できる。またケトン系溶媒としては、アセトン、ジエチルケトンなどが選択可能であり、ニトリル系溶媒としては、アセトニトリルなどが挙げられる。
これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合溶媒であっても良い。
また上記の水と有機溶媒との混合溶媒に占める水の割合としては、10〜40重量%(残りは有機溶媒)の範囲にあることが好ましく、より組成物の取り扱い性を良くするためには、水が10〜30重量%の範囲にあることが望ましい。本発明の組成物においては、組成物の粘性をコントロールすることが重要である。この際、混合溶媒に占める水分量が多く、50重量%を超えると、プロトン伝導性ポリマーが組成物に溶解・分散されにくい傾向にあるので好ましくない。また溶解・分散する場合でも粘度が非常に高くなる傾向にあり、組成物としての取り扱いが困難となる。40重量%から50重量%にかけても幾分溶解・分散されにくい傾向にある。一方水の割合が10重量%に満たない場合、組成物を触媒と混合することにより、触媒インクを作製するとき発火しやすくなるため、安全上好ましくない傾向にある。
プロトン伝導性ポリマーの濃度としては、1〜30重量%程度にあることが好ましい。プロトン伝導性ポリマーの濃度が1重量%に満たない場合、組成物に占めるポリマー量が少なく、触媒インクを作製する時に有効的では無く、逆に30重量%を超えるものは、プロトン伝導性ポリマーが組成物に溶解・分散されにくい傾向にあるので好ましくない。また溶解・分散する場合でも粘度が非常に高くなる傾向にあり、組成物としての取り扱いが困難になる。プロトン伝導性ポリマーの濃度としては5〜20重量%の範囲である場合、特に良好に取り扱うことができる。
本発明のプロトン伝導性ポリマー組成物は、構造粘性(せん断をかけると粘度が大きく低下する現象)を示す。本発明で定義する構造粘性とは、E型粘度計で測定した際の周波数(せん断速度)2(1/秒)から40(1/秒)まで変化させた時に、少なくとも粘度が1/3以下となることであり、好ましくは、1/5以下である。
触媒を加えて触媒インクとして使用する場合、構造粘性を示すことで、例えばドクターブレードなどを用いたコーティングなどで触媒層を形成させる段階では、せん断がかかるので粘度が低く流動性に優れる触媒インクとなるが、せん断がかからなくなった段階で、流動性が低下するので、一度塗布された触媒インクが移動したり流れ落ちるといった問題を低減させることができる。その結果、より均一性に優れる触媒層を形成することができる。また静止した状態では、触媒インクの粘度が高いため、触媒が良好に分散した状態で保存することができるというメリットを有する。なお、静的な状態での組成物の粘度は、少なくとも1Pa・s以上あることが好ましい。粘度が1Pa・sに満たない場合、たとえ構造粘性を示す組成物であっても、本質的に粘度が低いため、構造粘性を示す組成物としての特徴を生かすことは難しい傾向にある。
さらに本発明の組成物においては、酸化防止剤を含んでいてもよく、燃料電池とした際の耐久性を向上させることが可能である。なお酸化防止剤の種類や量に関しては、特に限定されるものではないが、ポリマーとの親和性の観点から、芳香族系の構造を分子内に含む酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール系の酸化防止剤やヒンダードアミン系の酸化防止剤が良好に使用できる。またプロトン伝導性ポリマーに対して0.01〜10重量%の範囲で混在させた場合に特に良好であり、0.01重量%よりも少ないと酸化を防止する効果は少なく、一方10重量%よりも多いと、ポリマーに対する割合が高くなり、燃料電池用の電極を作製する際、ひび割れが起こりやすくなってしまう。酸化防止剤の別の例としては、特開2003−201403号公報等に記載の酸化防止剤なども挙げられる。なお、本発明の組成物は、必要に応じて、酸化防止剤以外にも、例えば、熱安定剤、架橋剤、静電気防止剤、消泡剤、重合禁止剤や、シリカ粒子やアルミナ粒子やチタニア粒子やホスホタングステン酸粒子などの無機化合物、無機―有機のハイブリッド化合物などの各種添加剤を含んでいても良い。
燃料電池の電極を作製する際に使用する触媒インクの調整方法は、特に制限されるものではなく公知の技術を使用することができる。触媒インクに使用する触媒としては、耐酸性と触媒活性の観点から適宜選出できるが、白金族系金属およびこれらの合金や酸化物が特に好ましい。例えばカソード用電極への応用を考える場合には白金または白金系合金,アノード電極への応用を考える場合には白金または白金系合金や白金とルテニウムの合金を使用すると高効率発電に適している。これらの触媒微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されているものを用いるのが好ましい。カーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどのナノカーボン材料に担持されていても良好に使用することができる。このように適宜選択される触媒と本発明の組成物を少なくとも混合することにより、触媒インクを作製することができる。組成物に占める水の量が特に少ない場合、触媒の種類によっては、発火する可能性もあるので、あらかじめ触媒に微量の水分を含有させておき、その後、本発明の組成物を添加することも有効である。また触媒インクには、触媒と本発明の組成物以外の成分を含んでいても良い。また、このようにして調整される触媒インクを乾燥させて得られる触媒層(電極)をプロトン伝導性の電解質膜上に形成させることで、燃料電池や水電解槽に使用可能な電極・電解質膜接合体を作製することができる。
触媒層の形成方法は特に制限されるものでは無く、公知の技術を用いることができる。例えば、フィルム上に触媒インクをコートして乾燥させたものを、電解質膜に熱転写する方法が挙げられる。この際、本発明の触媒インクを用いると、触媒インクをコートする工程では流動性の高い触媒インクであり、良好なインク層を形成することができる。さらにコート後は触媒インクの粘度が上昇し流動しにくくなるため、コートした時の形態を維持しやすく、その結果、均一性に優れる触媒層とすることができる。熱転写時に触媒層の凹凸が少ないため、より良好な形で触媒層を電解質膜上に形成可能である。また電解質膜上に直接触媒インクを塗布する場合でも同様に、触媒インク塗布時は流動性に優れ、塗布後は流動性が低下するため、均一性に優れる触媒層を形成することが可能である。またスプレーやインクジェットなどの手法で触媒層を形成させる場合においても、静止時はインクの分散性に優れ、かつノズル部分では流動性が増すので、ノズルが詰まりにくく良好に使用できる。またスプレーにより一旦形成された触媒層は、インクが流動しにくいため、均一性に優れる触媒層とすることができる。
また、触媒層の外側には、集電体および燃料を効果的に輸送させる役割を持つ、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーなどから構成されるガス拡散層が存在することが好ましい。触媒層とガス拡散層を併せて電極と言う場合もあるが、本発明における電極とは、触媒層を含む構造を有するものであり、触媒層そのものや、触媒層とガス拡散層を合わせた形のもの、いずれも含む。なお、ガス拡散層については特に限定されず、公知の物を使用することができる。
また、電解質膜の種類として、本発明における芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーで示した構造を持つ、すなわちポリマーの主鎖が、芳香族のみ、あるいは芳香環とエーテル結合、スルホン結合、イミド結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、カーボネート結合およびケトン結合から選択される少なくとも1種以上の結合基を有するプロトン伝導性ポリマーから作製される電解質膜と接合すると特に良好な電極・電解質膜接合体とすることができる。フッ素系プロトン電解質膜を使用する場合は、特性の違いにより、電極・電解質膜の界面が剥離しやすくなってしまう。本発明の組成物を用いて作製した電極は、燃料電池の性能に悪影響を与えず、かつ上記に示すような芳香族系あるいは芳香環を有するプロトン伝導膜に対して良好な接着性を有する点において特に優れている。また触媒層の均一性が良いことも接合性に優れる要素として働いている。
電極・電解質膜接合体としては、膜―電極間に大きな抵抗が生じないようにすることが重要であり、また機械的な力によって剥離や電極触媒の剥落が生じないようにすることが重要である。熱圧着または熱転写により電極と電解質膜を接合する際は、電解質膜および/または電極の水分量をコントロールした条件下で行うと、より良好な電極・電解質膜接合体とすることができる。また適宜、触媒層内に疎水性の物質や発泡剤を添加したり、電解質膜上に触媒層を形成した後、表面の疎水化処理を行うことで、触媒層内部のガス拡散性を向上するという手法を取ることも、良好な電極・電解質膜接合体を作製する手法の一つである。また熱圧着や熱転写の条件は特に制限されるものではなく、例えば110〜250℃の範囲で行うことが可能である。また特に120〜200℃が好ましい。また本発明の電極・電解質膜接合体を用いて、燃料電池を作製することもでき、作製した燃料電池は、長期にわたって良好な性能・接合性を持続する点で特に優れている。
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<組成物の粘度>
E型粘度計を用いて、30℃において粘度を測定した。周波数(せん断速度)(1/s)と粘度(Pa・s)の挙動を調査した。
<発電特性>
電極・電解質膜接合体を自社製の燃料電池評価用セルに組み込み、NF回路設計ブロック社性燃料電池評価装置を使用し、セル温度40℃で、アノード側の燃料に5モル/リットルのメタノール水溶液(特級メタノールと超純水から調整)、カソード側には空気を、それぞれ供給しながら、5時間発電することでエージングを行った。次いで開回路電圧(OCV)と、100mA/cm2で定電流放電試験を行った時の電圧(V)と、電流遮断法により求まる抵抗(mΩ・cm2)を調べることで初期性能を評価した。また100mA/cm2で300時間定電流連続放電試験を実施し、電流遮断法により抵抗値(mΩ・cm2)の経時変化を調査した。電極と電解質膜接合体における抵抗値が増加する場合、電極と電解質膜の間の接合性が低下したことを示す。発電後の外観からも接合状態を確認した。
実施例1
(プロトン伝導性ポリマーの作製)
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)、4,4’−ビフェノール、炭酸カリウム、のモル比で1.00:1.29:2.29:2.47の混合物12gをモレキュラーシーブ2.85gと共に100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。50mlのNMPを入れて、150℃で2時間撹拌した後、反応温度を195℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約6時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて、水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄する操作を2回繰り返した。次いで2mol/リットルの塩酸水溶液1リットルに一晩撹拌しながら浸積してから、再び沸騰水中で1時間洗浄する操作を2回繰り返した後、減圧乾燥し、芳香族炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーを得た。
(組成物の作製)
次いで乾燥状態にあるプロトン伝導性ポリマー2gにイオン交換水4.94gを加え、ハイブリッドミキサー(キーエンス)で5分間撹拌し、水分を均一に行き渡らせた。次いでイソプロパノールを33.06g加えた。さらに60℃のウォーターバス中で均一になるまで撹拌することにより、実施例1の組成物を得た。組成物に含まれるプロトン伝導性ポリマーは、5重量%である。また、水と有機溶媒の混合溶媒に占める水の割合は13重量%である。
(触媒インクの作製)
市販の40%白金担持カーボン触媒、または54%白金/ルテニウム担持カーボン触媒(田中貴金属工業株式会社)に組成物を加え、均一になるまで撹拌することで燃料電池用の触媒インクを得た。なお触媒担持カーボンと組成物中に含まれるプロトン伝導性ポリマーの重量比は1:0.31となるように調整した。
(電極の作製)
得られた触媒インクを市販のカーボンペーパー(E−Tek)上に、ドクターブレードを用いて塗布し、その後乾燥することで燃料電池用の電極を作製した。なお、白金/ルテニウム担持カーボン触媒を含有させた触媒インクを用いてアノード電極、白金担持カーボン触媒を含有させた触媒インクを用いてカソード電極とした。またアノード電極用のカーボンペーパーには親水性のカーボンパーパー、カソード電極用のカーボンペーパーは疎水化処理したカーボンペーパーを用いた。
(電解質膜の作製)
上記プロトン伝導性ポリマーをNMPに溶解し(27重量%)、ホットプレート上のガラス板に流延法によりキャストし、フィルム状になるまでNMPを留去した後、水中に一晩浸積した。さらに超純水を用いて1時間洗浄する操作を5回繰り返した。その後枠にはめて室温で乾燥することで、非フッ素系プロトン伝導性電解質膜を得た。
(電極・電解質膜接合体の作製)
上記の非フッ素系プロトン伝導性電解質膜を20℃、湿度65RH%の雰囲気下で3時間放置することで、水分と平衡させた後、同環境下において、前記2種類の電極(アノード電極およびカソード電極)で触媒層面が電解質膜に接するように挟み込んだ。この電極と電解質膜の積層体を、ガスケットと共に2枚のステンレスプレートに挟んで、130℃、加圧下でホットプレスして電極と電解質膜を接合した。ステンレスプレートで挟まれた状態のまま取り出し、室温になるまで自然冷却することによって、電極・電解質膜接合体を得た。
実施例2
乾燥状態にある実施例1のプロトン伝導性ポリマー2.0gにイオン交換水11.0gを加え、ハイブリッドミキサー(キーエンス)で5分間撹拌し、水分を均等に行き渡らせた。次いでイソプロパノールを27.0g加えた。60℃で撹拌することにより、実施例2の組成物を得た。組成物に含まれるプロトン伝導性ポリマーは5重量%である。また水と有機溶媒の混合溶媒に占める水の割合は29重量%である。
得られたプロトン伝導性ポリマー組成物を用いて実施例1と同様にして電極、電解質膜及び電極・電解質膜接合体の作製した。
実施例3
乾燥状態にある実施例1のプロトン伝導性ポリマー2.0gにイオン交換水3.0gを加え、ハイブリッドミキサー(キーエンス)で5分間撹拌し、水分を均等に行き渡らせた。次いでエチレングリコールジメチルエーテル3.0gとイソプロパノール12.0gを加えた。60℃で撹拌することにより実施例3の組成物を得た。組成物に含まれるプロトン伝導性ポリマーは10重量%である。また水と有機溶媒の混合溶媒に占める水の割合は16.7重量%である。
得られたプロトン伝導性ポリマー組成物を用いて実施例1と同様にして電極、電解質膜及び電極・電解質膜接合体の作製した。
比較例1
(組成物の作製)
乾燥状態にある実施例1のプロトン伝導性ポリマー2gにイオン交換水2.54gを加え、ハイブリッドミキサー(キーエンス)で5分間撹拌し、水分を均等に行き渡らせた。次いでイソプロパノールを35.46g加えた。60℃で撹拌することにより、比較例1の組成物を得た。組成物に含まれるプロトン伝導性ポリマーは5重量%である。また水と有機溶媒の混合溶媒に占める水の割合は6.7重量%である。
(電極の作製)
比較例1の組成物を用い、実施例1と同様の方法で比較例1の電極を作製した。得られた電極は、実施例1の電極に比べて、触媒層に斑が目立った。なお、触媒インクの状態で粘度が低く、触媒の一部に沈殿が見られたので、触媒としての塗布量が部分的に異なっていた可能性がある。また触媒インクは、塗布後も流動性が高く、触媒層の斑につながったと考えられる。
(電極・電解質膜接合体の作製)
比較例1の電極を用い、実施例1と同様の方法で比較例1の電極・電解質膜接合体を作製した。
比較例2
乾燥状態にある実施例1のプロトン伝導性ポリマー3.5gに超純水3.25gを加え、ハイブリッドミキサー(キーエンス)で5分間撹拌し、水分を均等に行き渡らせた。次いでイソプロパノールを3.25g加えた。60℃で撹拌することにより、比較例2の組成物を得た。しなしながら、組成物は完全に均一化しておらず、かつゼリー状に固まったような状態であり、良好な組成物として取り扱えるものではなかった。このため、電極及び電極・電解質膜接合体の作製は中止した。なお、組成物に含まれるプロトン伝導性ポリマーは35重量%であり、水と有機溶媒の混合溶媒に占める水の割合は50重量%である。
比較例3
実施例1において、芳香族炭化水素系プロトン伝導性ポリマーの代わりに市販のナフィオン(デュポン社登録商標)を用いる以外は実施例1と同様にして比較例3の触媒インク、電極、電極・電解質膜接合体を作製した。なお、触媒層には斑が目立っていた。
実施例1〜3及び比較例1の組成物の粘度を評価した結果は図1に示したが、この図から、実施例の組成物は、粘度が周波数(せん断速度)増加に伴い急激に低下する、構造粘性を示す組成物であり、一方、比較例の組成物は、粘度の周波数(せん断速度)に対する依存性が少ない組成物であることが判る。触媒インクとした際の取り扱い性を比較してみると、実施例1〜3の触媒インクは、触媒の沈殿など観察されない分散性の良好なものであったが、比較例のものは一部、触媒の沈殿が観察された。なお触媒インクを調整する際に、実施例1の触媒インクは、静止状態で粘度が高いため、混合しにくいように思われたが、撹拌を始めると、急激に粘度が低下するため、すぐに均一な触媒インクとすることが可能であった。
実施例1、比較例1及び3の電極・電解質膜接合体を用いて発電性能を評価した結果を表1に示す。
Figure 0004887629
初期性能の段階で、実施例1の方が比較例の電極・電解質膜接合体に比べて抵抗値が小さく、良好な接合状態を持つことが確認された。特に実施例1と比較例1においては、同じプロトン伝導性ポリマーが同量、電極中に含まれているにもかかわらず、差が認められる。このことは、触媒層の均一性が実施例で優れているためと推定できる。また、300時間連続発電後において、比較例3の電極・電解質膜接合体を用いた燃料電池の抵抗値が著しく増加した。この段階で発電を中止し、セルを分解した所、比較例3の電極・電解質膜接合体において、電極の剥離が観察された。その影響はアノード側で大きかった。比較例1の電極・電解質膜接合体においても、比較例3よりは小さいが抵抗増加が観察された。初期発電の段階で抵抗が高かったことを考慮すると、接合状態に分布があり、接合不足の部分から触媒層の剥離が起きているものと推定できる。セルを分解した所、電極(触媒層)の一部の剥離が観察された。一方、実施例1の電極・電解質膜接合体では目立った変化は無く、300時間発電した後も良好な接合性を維持していた。
本発明の組成物は、燃料電池電極用触媒を配合して燃料電池電極の触媒層を安定に形成することができる。該触媒層を有する電極と電解質膜との接合体は、電極と電解質膜間の接合性が良好であるため、炭化水素系燃料を使用するタイプの燃料電池のみならず、水素等を燃料とするタイプの燃料電池にも有用である。
本発明及び比較例の組成物の粘度と周波数(せん断速度)との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. スルホン化ポリアリーレンエーテル系ポリマーからなるプロトン伝導性ポリマー、水及び有機溶媒を含有する組成物であり、該有機溶媒が、アルコール類、エーテル類、ケトン類から選ばれる1種又は2種以上の有機溶媒であり、かつ前記水と有機溶媒の混合溶媒に占める水の割合が10〜40重量%で、該組成物が前記プロトン伝導性ポリマーを1〜30重量%含有し、かつ構造粘性を示し、該組成物は前記プロトン伝導性ポリマーに水を加えて一旦膨潤させた後に有機溶媒を加えると共に、混合して得られる組成物であることを特徴とするプロトン伝導性ポリマー組成物。
  2. 請求項に記載のプロトン伝導性ポリマー組成物を含有することを特徴とする燃料電池電極触媒層用インク。
  3. 請求項に記載の触媒層用インクを用いてなることを特徴とする燃料電池用電極。
  4. 請求項に記載の電極と非フッ素系プロトン伝導性電解質膜とを接合してなることを特徴とする電極・電解質膜接合体。
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