JP4729857B2 - イオン交換膜 - Google Patents

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Description

本発明はイオン交換膜に関係し、詳しくは、燃料電池に使用される、特に液体燃料の透過抑止性に優れるイオン交換膜に関するものでる。
イオン交換膜を高分子固体電解質として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を上げることができる。これらに用いられるイオン交換膜は、カチオン交換膜としてプロトン伝導性を有するともに化学的、熱的、電気化学的および力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとしては、主に米デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。しかしながら、ナフィオン(商品名)膜をメタノール等の液体有機燃料を燃料とする燃料電池に使用する場合、燃料極側に供給したメタノールがイオン交換膜を透過して空気極側に流れ込んでしまうクロスオーバーという問題が顕著である。このクロスオーバーが生じると、液体燃料と酸化剤が直接反応してしまい電力が低下するという問題や、液体燃料が空気極側から外部に漏れ出すといった問題が発生する。クロスオーバーを抑制するために一般的に行われる手法は、燃料であるメタノールの濃度を制限することであり、3〜6%程度の希薄メタノールを使用することで対応されている。しかしながら希薄メタノールで燃料電池を動作させる場合、燃料タンクが大きくなるので、燃料電池サイズが大きくなり、実用上好ましくない。このような観点から、高濃度の液体燃料を含む溶液を燃料として使用可能なイオン交換膜が望まれている。また、クロスオーバーを抑制するための一手法として、イオン交換膜の厚みを増加させるという手法も取られている。しかしながら厚みを増すと、メタノール透過係数も増加してしまうという欠点を有しているため、メタノール透過抑止の効果はそれほど大きくなかった。すなわち、イオン交換膜の厚みが増加した分、厚みに比例して抵抗値が上昇するのに対して、メタノール透過抑止性は十分に改善されないので、厚みを増す効果が良好に発現されなかった。このような観点から、メタノール透過係数の厚み依存性が小さな燃料電池用のイオン交換膜が望まれている。また、このような依存性が観察される理由として、本発明者らは、イオン交換膜内部でメタノール濃度の分布が発生する中、膜の膨潤性がメタノールと水で異なっていることが影響しているものと考えている。
また、非フッ素系芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入したイオン交換膜も検討されており、化学的・物理的安定性に優れるものとして、ポリアリールエーテルスルホンをスルホン化したもの(例えば、非特許文献1参照。)、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの(例えば、特許文献1参照。)、等が報告されている。例えばNafion(商品名)よりも幾分良好な液体燃料透過性を有するポリマーも一部紹介されている(非特許文献2参照)。しかしながら、これらの膜についての検討は近年始まったものであり、非フッ素系ポリマーを用いたイオン交換膜におけるポリマー構造を最適化して行く必要性が示されている。
特開平6−93114号公報(第15−17頁) ジャーナル・オブ・メンブラン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、(オランダ)1993年、83巻、P.211−220 The Electrochemical Society 203rd Meeting−Paris,Abs No.1167
本発明は、ダイレクトメタノール型燃料電池を始めとする液体燃料を使用するタイプの燃料電池において問題視されている、イオン交換膜の液体燃料透過抑止性が低いという問題を解決するものである。本発明のイオン交換膜は、高濃度の液体燃料を用いた場合でも、液体燃料のクロスオーバー量を少なく抑えることが可能なイオン交換膜であり、燃料電池とした場合、高濃度の液体燃料を使用することができる。さらには、メタノール透過係数の膜厚依存性が少ないため、厚みを増加させる効果を有効に働かせることが可能なイオン交換膜である。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、高濃度の液体燃料を用いた場合でも、液体燃料のクロスオーバー量を少なく抑えることが可能なイオン交換膜を発明した。また、本発明のイオン交換膜を使用した燃料電池は、高濃度の液体燃料を利用可能な優れた燃料電池であり、特に燃料電池の大きさを低減することが可能である。
すなわち本発明は、プロトン伝導性を有する燃料電池用の非フッ素系イオン交換膜であって、イオン交換膜のメタノール透過係数のメタノール濃度依存性を示す下記式において、傾きαが、0.08よりも小さいことを特徴とする、メタノール透過抑止性に優れるイオン交換膜である。
メタノール透過係数[μmol/m/s]=α×(メタノール水溶液の濃度[mol/l])
また、上記のイオン交換膜であって、50μm、200μmと厚みを変えて作り、両者のメタノール透過係数を比較した時、メタノール透過係数の差が25%以内となることを特徴とするイオン交換性ポリマーを含むことを特徴とするイオン交換膜である。
また、イオン交換膜として、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むことを特徴とするイオン交換膜である。
Figure 0004729857
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 0004729857
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
また、上記いずれかのイオン交換膜を使用したイオン交換膜・電極接合体である。
また、上記イオン交換膜・電極接合体を使用した燃料電池である。
本発明は、液体燃料溶液中に含まれる液体燃料の濃度を増加させた場合においても、液体燃料の透過を抑制可能なことを特徴とするイオン交換であり、本発明によるイオン交換膜は、液体燃料を使用する燃料電池に良好に使用可能であり、特に燃料電池の小型化に貢献する。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、膨潤の少ない、芳香環上に酸性基を導入したプロトン伝導性を有する炭化水素系のイオン交換膜であり、そのイオン交換膜を使用して作製した、例えばダイレクトメタノール型燃料電池は良好な発電性能を示すことが可能となる。本発明のイオン交換膜の特徴として、メタノールを始めとする液体燃料の濃度が高くても、液体燃料の透過を低く抑えることが可能であり、例えば代表的なフッ素系イオン交換膜であるNafion(商品名)において、後述の手法により測定された、下記式に示すイオン交換膜のメタノール透過係数(μmol/m/s)のメタノール水溶液濃度(mol/l)依存性の係数であるαが0.14の速度で透過しやすくなるという結果に対して、0.08以下に抑えることが可能であり、高濃度のメタノールを使用した際に透過量が増加する影響を小さく抑えることが可能となる。
メタノール透過係数[μmol/m/s]=α×(メタノール水溶液の濃度[mol/l])
その結果、高濃度のメタノール水溶液を使用してもメタノールのクロスリークを低減できるので、燃料濃度を高くすることができ、燃料電池に占める燃料タンクの大きさを小さくすることが可能である。αの値として、より好ましくは0.06以下であり、さらに好ましくは0.04以下であり、さらに好ましくは、0.02以下である。なお、αの値が0.08よりも大きくなると、燃料がクロスリークしやすいイオン交換膜となるため好ましくない。
また、本発明のイオン交換膜の特徴として、膜厚を増加させた場合でも効果的に液体燃料の透過を低く抑えることが可能であり、例えば代表的なフッ素系イオン交換膜であるNafion(商品名)において厚みが増加すると、イオン交換膜のメタノール透過係数が増加するという現象に対して、本発明のイオン交換膜は、メタノール透過係数を一定に保つことが可能である。その結果、イオン交換膜の膜厚みを増加させた際に、メタノール透過を抑制する機能を効果的に発現させることができ、メタノール透過の少ない良好なイオン交換膜を提供することができる。すなわち、従来のイオン交換膜においては、厚みを二倍にしても、メタノール透過抑止能力は、若干改善されるものの二倍にはならないため、有効に厚みを増加する効果が発現されなかったのに対して、本発明のイオン交換膜においては、メタノール透過抑止能力は二倍となり、厚み増加の効果が有効に作用することを特徴とする。
メタノール透過係数の厚み依存性を知る手法としては、メタノール透過係数は、厚みが増えると増す傾向にあるので、同じ組成のポリマーからなる、約50μmの膜厚のイオン交換膜と約200μmの膜厚のイオン交換膜を作製し、メタノール透過係数を比較することは好ましい比較方法である。また、約50μmから約200μmの範囲で、複数の異なる厚みを有する膜を作製し、それぞれに対して測定したメタノール透過係数と厚みの関係から、メタノール透過係数の厚み依存性を求めることも可能である。厚みの異なるイオン交換膜を作製するためには、例えばポリマー溶液から流延法によってポリマー溶液を引き伸ばした後、溶媒を除去することによって、各種任意の厚みを有するイオン交換膜を作製することはり良好な方法である。ポリマー溶液の作製に当たっては、既に特定の厚みに成型されているイオン交換膜を、溶媒に溶解させるという手法を取ることも可能である。膜の作製方法に関する詳細は後述する。
メタノール透過係数の厚み依存性は小さい程好ましく、少なくとも50μmのイオン交換膜と200μmのイオン交換膜を比較した際、メタノール透過係数の差が25%よりも小さいイオン交換膜が好ましく、より望ましくは15%以下であり、さらに好ましくは、10%以下にある膜が望ましい。上記範囲の厚みにおいてメタノール透過係数の差が25%よりも大きいと、厚みを増加させた際のメタノール透過抑止の効果は良好には発現されず、膜の抵抗増加による負の影響が大きくなるため好ましくない。なお、メタノール透過係数の厚み依存性を求める際に、実験誤差を小さくする意味では、約50μmから約200μmの間で異なる複数の膜厚のサンプルを調査することによって得られる、メタノール透過係数と厚みの間に見られる関係式から、メタノール透過係数の差を求める方法が好ましい。
本発明のイオン交換膜およびイオン交換膜を作製するためのポリマーの種類としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(トリフルオロスチレン)スルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリビニルスルホン酸成分の少なくとも1種を含むアイオノマーが挙げられる。さらに、芳香族系のポリマーとして、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、およびそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。
上記酸性基を含有するポリマーのうち、芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
また、上記ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種にイオン交換性官能基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基含有ジアミンを用いて酸性化含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られたポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。
なお本発明におけるイオン交換膜を形成するためのポリマーは、スルホン酸基含有ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物であることがより好ましい。
さらに、これらのポリアリーレンエーテル系化合物のうち、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むものが特に好ましく、特に優れている。
Figure 0004729857
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 0004729857
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
上記一般式(2)で示される構成成分は、下記一般式(3)で示される構成成分であることが好ましい。
Figure 0004729857
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
また、本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーにおいては上記一般式(1)および一般式(2)で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(1)または一般式(2)で示される以外の構造単位は50重量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーの特性を活かした組成物とすることができる。
本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーとしては、スルホン酸基含有量が0.3〜3.6meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、イオン交換膜として使用したときに十分なイオン伝導性を示さない傾向があり、3.6meq/gよりも大きい場合にはイオン交換膜を高温高湿条件においた場合に膜膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。なお、スルホン酸基含有量はポリマー組成より計算することができる。より好ましくは0.5〜2.5meq/gである。
さらに本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーとしては、下記一般式(4)とともに一般式(5)で示される構成成分を含むものが特に好ましい。ビフェニレン構造を有していることにより高温高湿条件での寸法安定性に優れるとともに、強靱性も高いものとなる。
Figure 0004729857
Figure 0004729857
ただし、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーは、下記一般式(6)および一般式(7)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することができる。一般式(6)で表される化合物の具体例としては、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルケトン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(7)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
Figure 0004729857
Figure 0004729857
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Zは塩素またはフッ素を示す。本発明において、上記2,6−ジクロロベンゾニトリルおよび2,4−ジクロロベンゾニトリルは、異性体の関係にあり、いずれを用いたとしても良好なイオン伝導性、耐熱性、加工性および寸法安定性を達成することができる。その理由としては両モノマーとも反応性に優れるとともに、小さな繰り返し単位を構成することで分子全体の構造をより硬いものとしていると考えられている。
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(6)、(7)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
また、上述の一般式(1)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(2)で表される構成成分中のAr'は、一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(6)、(7)で表される化合物とともに使用される芳香族ジオール成分モノマーより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4'−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーを芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(6)および一般式(7)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
また、本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーは、ポリマー対数粘度が0.1以上であることが好ましい。対数粘度が0.1よりも小さいと、イオン交換膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。還元比粘度は、0.3以上であることがさらに好ましい。一方、還元比粘度が5を超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
なお、必要に応じて、本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーは、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、ラジカル防止剤などの各種添加剤や、イオン交換膜の特性をコントロールするための貴金属、無機化合物や無機―有機のハイブリッド化合物、イオン性液体、などを含んでいても良い。また、可能な範囲で複数のものが混在していても良い。
以上に示したポリマーを、押し出し、圧延またはキャストなど任意の方法でイオン交換膜とすることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。この溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール等のアルコール類から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50重量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1重量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50重量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。イオン交換膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してイオン交換膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥によることがイオン交換膜の均一性の観点からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン交換膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、2000μmよりも厚いと不均一なイオン交換膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。本発明のイオン交換膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には5〜300μmであることが好ましく、25〜250μmであることがさらに好ましい。イオン交換膜の厚みが5μmより薄いとイオン交換膜の取扱が困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、300μmよりも厚いとイオン交換膜の電気抵抗値が高くなり燃料電池の発電性能が低下する傾向にある。また本発明においては、イオン交換膜として記載したが、中空糸状に加工することも好ましい形であり、加工に際しては公知の処方を利用できる。
最終的に得られたイオン交換膜を使用する場合、膜中のイオン性官能基は適当な酸処理により酸型に変換した形が好ましい。この際、イオン交換膜のイオン伝導率は1.0x10-3S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導率が1.0x10-3S/cm以上である場合には、そのイオン交換膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0x10-3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。
なお、液体燃料のクロスリークを防ぐ意味では、メタノール透過係数の小さいイオン交換膜を使用することが好ましく、具体的には0.01から0.35μmol/m/sの範囲にあることが好ましく、より好適には、0.3μmol/m/sよりも小さいことが望ましく、さらには、0.25μmol/m/sよりも小さいことが好ましく、より望ましくは0.2μmol/m/sよりも小さいものが好適である。メタノール透過係数が0.35μmol/m/sよりも大きいと、メタノール透過抑止性の低いイオン交換膜となってしまう。逆に、0.01μmol/m/sよりも小さいとイオン伝導率と両立することが困難となる。そのような観点から、本発明で特に紹介した、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むものが特に好ましく優れている。
Figure 0004729857
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 0004729857
ただし、Ar’は2価の芳香族基を示す。
また、上述した本発明のイオン交換膜に電極を設置することによって、本発明のイオン交換膜と電極との接合体を得ることができる。触媒の種類や電極の構成や電極に使用されるガス拡散層の種類や接合方法などは特に限定されるものではなく、公知のものが使用でき、また公知の技術を組み合わせたものも使用できる。電極に使用する触媒としては耐酸性と触媒活性の観点から適宜選出できるが、白金族系金属およびこれらの合金や酸化物が特に好ましい。例えばカソードに白金または白金系合金,アノードに白金または白金系合金や白金とルテニウムの合金を使用すると高効率発電に適している。複数の種類の触媒を使用していても良く、分布があっても良い。電極中の空孔率や、電極中に触媒と一緒に混在させるイオン伝導性樹脂の種類・量なども特に制限されるものではない。また疎水性化合物の含浸などに代表されるガス拡散性をコントロールするための手法なども好適に利用できる。電極を膜に接合する技術としては、膜―電極間に大きな抵抗が生じないようにすることが重要であり、また膜の膨潤収縮や、ガス発生の機械的な力によって剥離や電極触媒の剥落が生じないようにすることも重要である。この接合体の作製方法としては、従来から燃料電池または、水電解における電極−膜接合方法の公知技術として知られている手法、例えば触媒担持カーボンとイオン交換樹脂およびポリテトラフルオロエチレン等の撥水性を有する材料を混合してあらかじめ電極を作製し、これを膜に熱圧着する手法や、前記混合物を膜にスプレーやインクジェット等で直接析出させる方法などが好適に用いられる。また、化学めっきによる、例えば白金族のアンミン錯イオンのように金属イオンをカチオン型にした溶液に膜を浸漬してイオン交換(吸着)させてから、膜を還元剤溶液に接触させて、膜表面近傍の金属イオンを還元させると同時に膜内部の金属イオンを表面に拡散させ、強固な金属析出層を膜表面に形成させる方法などが上げられる。後者については、さらに化学めっき浴を用いて活性な金属析出層の上に所定の金属種および量をめっき成長させる方法もある。
また上記のイオン交換膜・電極接合体を燃料電池に組み込むことによって良好な性能を有する燃料電池を提供できる。燃料電池に使用されるセパレータの種類や、燃料や酸化ガスの流速・供給方法・流路の構造・燃料電池の構造などや、運転方法、運転条件、温度分布、燃料電池の制御方法などは特に限定されるものではない。
本発明のイオン交換膜は、高濃度の液体燃料を使用した場合でも、液体燃料透過抑止性に優れる。また、液体燃料透過抑止性の厚み依存性が小さい。それらの特性を生かして、例えばダイレクトメタノール型燃料電池のイオン交換膜として好適に利用することができ、そうして作製した燃料電池は優れた性能を示す。
以下に本発明の実施例を示すが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
評価法・測定法
<イオン交換膜の膜厚>
イオン交換膜の厚みは、マイクロメーター(Mitutoyo 標準マイクロメーター 0−25mm 0.01mm)を用いて測定することにより求めた。測定は5×5cmの大きさのサンプルに対して20箇所測定し、その平均値を膜厚とした。なお測定は、室温が20℃で湿度が30±5RH%にコントロールされた測定室内で評価を行った。サンプルは、24時間以上、測定室内で静置したものを使用した。
<イオン交換容量(酸型)>
イオン交換容量(IEC)としては、イオン交換膜に存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケータ中で30分間放置冷却した後、乾燥重量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/l塩化ナトリウム-超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉状態で、室温で24時間攪拌した。次いで溶液30mlを取り出し、10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IEC(酸型)を求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml Wsの単位:g)
<膨潤率>
膨潤率は、サンプル(5×5cm)の正確な乾燥重量(Ws)と、サンプルを70℃の超純水に2時間浸漬した後取り出し、サンプル表面に存在する余分な水滴をキムワイプ(商品名)を用いてふき取り、直ぐに測定した重量(Wl)から、下記式を用いて求めた。
膨潤率(%)=(Wl−Ws)/Ws×100(%)
<イオン伝導率>
イオン伝導率σは次のようにして測定した。自作測定用プローブ(ポリテトラフルロエチレン製)上で幅10mmの短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に試料を保持し、白金線間の10kHzにおける交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を10mmから40mmまで10mm間隔で変化させて測定し、極間距離と抵抗測定値をプロットした直線の勾配Dr[Ω/cm]から下記の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルして算出した。
σ[S/cm]=1/(膜幅×膜厚[cm]×Dr)
<メタノール透過速度およびメタノール透過係数>
イオン交換膜の液体燃料透過速度はメタノール透過速度およびメタノール透過係数として、以下の方法で測定した。25℃に調整したメタノール水溶液に24時間浸漬したイオン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlのメタノール水溶液(メタノール水溶液の調整には、市販の試薬特級グレードのメタノールと超純水(18MΩ・cm)を使用。)を、他方のセルに100mlの超純水を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフを用いて測定することで算出した(イオン交換膜の面積は、2.0cm2)。なお具体的には、超純水を入れたセルのメタノール濃度変化速度[Ct](mmol/L/s)より以下の式を用いて算出した。
メタノール透過速度[mmol/m2/s]=(Ct[mmol/L/s]× 0.1[L])/2×10-4[m2
メタノール透過係数[μmol/m/s]=メタノール透過速度[mmol/m2/s]×膜厚[m]×1000
なお、メタノール透過係数のメタノール濃度依存性を測定する方法としては、まず、メタノール水溶液として、1.0mol/lのメタノール水溶液と5.0mol/lのメタノール水溶液を用いた試験を行い、それぞれの濃度でメタノール透過係数を求めた。次いで、メタノール透過係数とメタノール水溶液濃度をプロットした図の傾きから、下記式の傾きαを算出した。なお、測定は5回行い、計算にはその平均値を用いた。傾きαを求めるに際して、切片は必ずしも0となっていない(切片はあるものとしてαを算出している。)。理由として、メタノール水溶液濃度に対してメタノール透過係数が、必ずしも直線的に変化するわけではないと推定している。しかしながら、本発明におけるメタノール透過係数のメタノール水溶液濃度依存性を求めるに当たっては、上記のように、異なる二種類の濃度のメタノール水溶液を用いた試験を行い、その2点の間から求まる直線の傾きとして算出した。
メタノール透過係数[μmol/m/s]=α×(メタノール水溶液の濃度[mol/l])
<発電特性>
デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液に、市販の54%白金/ルテニウム触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社 燃料電池用触媒)と、少量の超純水およびイソプロパノールを加え、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060(疎水化処理品)に白金の付着量が2mg/cm2になるように均一に塗布・乾燥して、アノード用の電極触媒層付きガス拡散層を作製した。また、同様の手法で、白金/ルテニウム触媒担持カーボンに替えて市販の白金触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社 燃料電池用触媒)を用いて、疎水化したカーボンペーパー上に電極触媒層を形成することで、カソード用の電極触媒層付きガス拡散層を作製した(1mg−白金/cm2)。上記2種類の電極触媒層付きガス拡散層の間に、イオン交換膜を、電極触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレス法により135℃、2MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度40℃で、アノードおよびカソードにそれぞれ40℃のメタノール水溶液と空気を供給しながら、電流密度0.1A/cm2で放電試験を行った際の電圧を調べた。メタノール水溶液としては1mol/lおよび5mol/lの液を用い、それぞれ個別に評価した。
実施例1
モル比で1.00:1.99:2.99:3.21となるように、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニトリル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムの混合物を調整し、その混合物15.1gをモリキュラーシーブ4.20gと共に100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。溶媒としてはNMPを加え、145℃で一時間撹拌した後、反応温度を190−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約5.5時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰させた超純水中で1時間洗浄した後、乾燥した。ポリマーの25%NMP溶液を調整した。流延法によってポリマー溶液を薄く引き延ばし、100℃次いで150℃で一晩乾燥することフィルムを作製した。次いで、2mol/lの硫酸水溶液中に2時間浸漬し、水洗5回後、枠に固定した状態で室温で乾燥し、実施例1のイオン交換膜を作製した。
実施例2
3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニトリル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムをモル比で1.00:2.31:3.31:3.46となるように仕込んだ事を除いて実施例1の手法を用いて実施例2のイオン交換膜を作製した。
実施例3
3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニトリル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムをモル比で1.00:3.25:4.25:4.46となるように仕込んだ事を除いて実施例1の手法を用いて実施例3のイオン交換膜を作製した。
実施例4、5、6、7
流延法によってポリマー溶液を引き伸ばす際の、ポリマー溶液の厚みを変えたことを除いて、実施例1の手法により、実施例1のイオン交換膜とは厚みのことなる、実施例4、5、6、7のイオン交換膜を作製した。
比較例1
市販のNafion(商品名)117膜を比較例1のイオン交換膜とした。
比較例2
市販のNafion(商品名)112膜を比較例2のイオン交換膜とした。
比較例3
3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムをモル比で1.00:1.38:2.38:3.15となるように仕込んだ事を除いて実施例1の手法を用いて比較例2のイオン交換膜を作製した。すなわち、実施例1で用いた2,6−ジクロロベンゾニトリルの変わりに4,4'−ジクロロジフェニルスルホンを用い、かつ実施例1のイオン交換膜と同程度のIECを有する膜とするために、仕込み比を調整した。
実施例1、2、3、4、5、6、7、比較例1、2、3、の物性評価結果を表1に示す。
Figure 0004729857
メタノール濃度がメタノール透過性に及ぼす影響を比較するための実験として行った、実施例1,2,3及び比較例1,3の結果を比較考察する。まず実施例1、2、3の結果より、本発明のイオン交換膜は、いずれもメタノール濃度を上げた際にメタノール透過係数の上昇は少なく(αが小さい)、その結果、発電試験において高濃度のメタノール水溶液を燃料として使用した場合でも、発電性能が良好な、優れた燃料電池となることが分かる。しかしながら、比較例1のパーフルオロカーボンスルホン酸膜や、比較例3の炭化水素系膜は、αの値が大きく、高濃度のメタノール溶液を使用した時にメタノールのクロスオーバー量の増加が著しいものであり、高濃度のメタノール溶液を燃料として使用した場合、劇的な性能低下が生じた。比較例1の膜において特にαが大きかった原因は、フッ素のメタノールに対する親和性が強いためであると推定される。一方、比較例3の膜は、炭化水素系の膜であり、比較例1に比べれば良好な膜であったが、膨潤が大きく、メタノール透過抑止性は充分でなかったものと考えられる。比較例3の膜は、フッ素系膜よりもダイレクトメタノール型燃料電池用のイオン交換膜として有用なものであるとして、最近注目を集めるイオン交換膜である。しかしながら、ポリマー組成の観点から十分に最適化はされておらず、実施例に示したイオン交換膜ほど、良好なα値を持たないものであった。
次にメタノール透過係数の厚み依存性を比較するための実験として行った、実施例1、4、5、6、7及び比較例1、2の結果を比較考察する。比較例1と比較例2のイオン交換膜の特性を比較してみると、メタノール透過係数の膜厚依存性が大きいため、膜厚を4倍にしても、メタノール透過抑止性は1.75倍しか改善されておらず、メタノール透過抑止性の改善効果に比べて抵抗の増加が大きいことが分かる。一方実施例の膜は、厚みによらずメタノール透過係数はほぼ一定であるため、厚みが4倍になった場合、メタノール透過抑止性もほぼ4倍となり、比較例のイオン交換膜に比べて改善効果が大きな、より優れたイオン交換膜であると言える。
以上のことから、本発明のイオン交換膜は、ダイレクトメタノール型燃料電池をはじめとする液体燃料を使用するタイプの燃料電池用のイオン交換膜として良好に働く、新規なイオン交換膜であり、燃料電池に使用した際に優れた性能を示す。
燃料電池とした際に、液体燃料透過抑止性に優れるイオン交換膜を提供することができ、信頼性に優れ、高性能な燃料電池を供給することが可能となる。

Claims (4)

  1. プロトン伝導性を有する燃料電池用の非フッ素系イオン交換膜であって、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含有し、メタノール透過係数のメタノール濃度依存性を示す下記式において、傾きαが、0.08よりも小さいことを特徴とするイオン交換膜。
    メタノール透過係数[μmol/m/s]=α×(メタノール水溶液の濃度[mol/l])
    Figure 0004729857
    ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
    Figure 0004729857
    ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
  2. 50μm、200μmと厚みを変えて作り、両者のメタノール透過係数を比較した時、メタノール透過係数の差が25%以内となることを特徴とする、請求項1の範囲のイオン交換膜。
  3. 請求項1乃至のいずれかの範囲のイオン交換膜を使用したイオン交換膜・電極接合体。
  4. 請求項の範囲のイオン交換膜・電極接合体を使用した燃料電池。
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