次に本発明を具現化した一実施形態について説明する。図1は本実施形態であるインクジェットプリンタ20の構成の概略を示す構成図、図2はキャリッジ22の左側面の破断面図であり、図3は印刷ヘッド24の電気的接続を表す説明図、図4は紙送り機構31の説明図、図5はプラテン44上に形成されたインク受け領域68の説明図(下図はインク受け領域68のA−A断面図)であり、図6はキャッピング部材昇降機構90の説明図であり図6(a)が印刷ヘッド24とキャッピング部材41とが対向していないときの図、図6(b)が印刷ヘッド24とキャッピング部材41とが対向し且つ離間しているときの図、図6(c)が印刷ヘッド24とキャッピング部材41とが当接しているときの図であり、図7はノズル検査装置50の構成の概略を示す構成図である。
本実施形態のインクジェットプリンタ20は、図1に示すように、プラテン44上を図中奥から手前へと搬送される記録紙Sにノズルプレート27のノズル23(図2参照)からインク滴を吐出して印刷を行うプリンタ機構21と、印刷ヘッド24の電位を切り替える電位切替機構60と、駆動モータ33により駆動される紙送りローラ35を含む紙送り機構31と、記録紙Sの支持部材としてのプラテン44と、プラテン44の右端近傍に形成されたキャッピング部材41を昇降させるキャッピング部材昇降機構90(図6参照)と、キャッピング部材41の内部に形成され印刷ヘッド24からインク滴が正常に吐出されるか否かを検査するノズル検査装置50と、プラテン44の印刷可能領域を外れた図中左端に設けられたフラッシング領域49と、インクジェットプリンタ20全体をコントロールするコントローラ70とを備えている。なお、フラッシング領域49は、ノズル23の先端でインクが乾燥して固化するのを防止するために定期的又は所定のタイミングで印刷データとは無関係にインク滴を吐出させる、いわゆるフラッシング動作を行うときに利用される。
プリンタ機構21は、キャリッジベルト32によりキャリッジ軸28に沿って左右に往復動するキャリッジ22と、このキャリッジ22に搭載されイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26から供給された各インクに圧力をかける印刷ヘッド24とを備えている。キャリッジ22は、メカフレーム80の右側に取り付けられたキャリッジモータ34aとメカフレーム80の左側に取り付けられた従動ローラ34bとの間に架設されたキャリッジベルト32がキャリッジモータ34aによって駆動されるのに伴って移動する。このキャリッジ22の背面には、図2に示すように、リニア式エンコーダ25が接続されたキャリッジ用基板65がその背面中央に取り付けられている。リニア式エンコーダ25は、キャリッジ用基板65上の配線を束ねたコネクタ部67に差し込まれたフラットケーブル69を介して、メカフレーム80の裏面に取り付けられたメイン基板85(図1参照)上のコントローラ70と信号のやり取りを行う。リニア式エンコーダ25は、キャリッジ22の位置を検出するものであり、このリニア式エンコーダ25を用いてキャリッジ22のポジションが管理可能となっている。インクカートリッジ26は、図示しないが、溶媒としての水に着色剤としての染料又は顔料を含有したシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)などの印刷用に用いる印刷記録液としてのインクを各々収納する容器として構成されており、キャリッジ22に着脱可能に装着されている。このインクカートリッジ26は、図2に示すように各インクごとにインク供給口26aを有し、キャリッジ22に設けられたインク供給針22aがインク供給口26aに差し込まれることによりキャリッジ22の下面に形成された印刷ヘッド24へインクを供給可能となる。
印刷ヘッド24は、図2に示すように、複数のノズル23が穿設されたノズルプレート27を備えている。このノズルプレート27は、フレーム状のカバーヘッド29(図7参照)により印刷ヘッド24に固定されている。ノズルプレート27及びカバーヘッド29は、導電性を有する部材(SUSなど)により形成されている。このノズルプレート27には、図3に示すように、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)及びブラック(K)の各色のインクを吐出する複数のノズル23を配列したノズル列43が設けられている。なお、ここでは、すべてのノズルをノズル23と総称し、すべてのノズル列をノズル列43と総称し、シアンのノズル及びノズル列をノズル23C及びノズル列43C、マゼンタのノズル及びノズル列をノズル23M及びノズル列43M、イエローのノズル及びノズル列をノズル23Y及びノズル列43Y、ブラックのノズル及びノズル列をノズル23K及びノズル列43Kと称する。以下ノズル23Kを用いて説明する。この印刷ヘッド24では、180個のノズル23Kを記録紙Sの搬送方向に沿って配列してノズル列43Kを構成している。各ノズル23Kには、インク滴を吐出するための駆動素子として圧電素子48が設けられており、この圧電素子48に電圧をかけることによりこの圧電素子48を変形させてインクを加圧しノズル23Kから吐出する。
この印刷ヘッド24は、図3に示すように、各ノズル23Kをそれぞれ駆動する複数の圧電素子48に対応して設けられた複数のマスク回路47を備えている。マスク回路47には、コントローラ70で生成された原信号ODRVや印刷信号PRTnが入力される。なお、印刷信号PRTnの末尾のnはノズル列に含まれるノズルを特定するための番号であり、本実施形態ではノズル列は180個のノズルからなるため、nは1から180のいずれかの整数値となる。この原信号ODRVは、一画素分の区間内(キャリッジ22が一画素の間隔を横切る時間内)において、図3下部に示すように、第1パルスP1と第2パルスP2と第3パルスP3との3つの駆動波形からなっている。この3つの駆動波形を繰り返し単位とする原信号ODRVを、本実施形態では1セグメントと称する。マスク回路47は、原信号ODRVや印刷信号PRTnが入力されると、これらの信号に基づいて第1パルスP1と第2パルスP2と第3パルスP3とのうち必要なパルスを駆動信号DRVn(nの意味するところは印刷信号PRTnのnと同じ)としてノズル23Kの圧電素子48に向けて出力する。具体的には、マスク回路47から圧電素子48に第1パルスP1のみが出力されると、ノズル23Kから1ショットのインク滴が吐出され、記録紙Sには小さいサイズのドット(小ドット)が形成される。また、第1パルスP1と第2パルスP2とが圧電素子48に出力されると、ノズル23Kから2ショットのインク滴が吐出され、記録紙Sには中サイズのドット(中ドット)が形成される。また、第1パルスP1と第2パルスP2と第3パルスP3とが圧電素子48に出力されると、ノズル23Kから3ショットのインク滴が吐出され、記録紙Sには大きいサイズのドット(大ドット)が形成される。このように、インクジェットプリンタ20では、一画素区間において吐出するインク量を調整することにより3種類のサイズのドットを形成することが可能である。なお、他の色のノズル23C,23M,23Yやノズル列43C,43M,43Yについても上記ノズル23Kやノズル列43Kと同様である。また、印刷ヘッド24は、ここでは圧電素子48を変形させてインクを加圧する方式を採用しているが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用してもよい。
電位切替機構60は、図2に示すように、キャリッジ22を支持して主走査方向に導くキャリッジ軸28と、キャリッジ22の移動に伴いキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させるガイド部材63と、キャッピング部材41の移動に伴いキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させる接続解除部材41bと、ノズルプレート27とキャリッジ軸28とを電気的に接続する接続部材61とにより構成されている。キャリッジ軸28は、導電性の材質(SUSなど)により形成され、メカフレーム80(図1参照)を介してグランドに接地されている。このキャリッジ軸28は、印刷ヘッド24の背面に固定された軸受け部28aに挿入されている。ガイド部材63は、例えば樹脂などの絶縁材料により形成された部材であり、キャリッジ軸28の上方近傍にメカフレーム80内部の右端から左端へ設けられている(図1参照)。ガイド部材63の印刷ヘッド24側の面には、印刷ヘッド24の電位切離領域に対応する領域に台形状の突出部63aが固定されている。この印刷ヘッド24の電位切離領域については、印刷ヘッド24をグランド電位から切り離す領域として定められているが、詳しくは後述する。接続解除部材41bは、絶縁性の部材(例えば絶縁性の樹脂など)により四角柱状に形成され、キャッピング部材41の開口縁の上部に設けられている。この接続解除部材41bは、キャッピング部材41が印刷ヘッド24に向かって移動すると接続部材61の当接部61bに当接する。接続部材61は、導電性及び可撓性を有する部材(SUSなど)により板状に形成された部材であり、印刷ヘッド24の背面とキャリッジ軸28との間に設けられている。この接続部材61は、その一端である固定部61aが印刷ヘッド24の最下部に配置されたノズルプレート27に接続され、このノズルプレート27から上方のキャリッジ軸28へ向かって傾斜して固定されている。こうして、接続部材61は、キャリッジ軸28に向かって常に付勢した状態で固定されている。接続部材61の略中央には、キャリッジ軸28に向かって傾斜した当接部61bと、この当接部61bの上側に略垂直に形成されキャリッジ軸28に接触してノズルプレート27をグランド電位とする接触部61cとが形成されている。接続部材61の他端には、キャリッジ22がキャリッジ軸28に沿って移動する際に突出部63aと接触する位置に揺動部61dが設けられている。この揺動部61dの左右端部は印刷ヘッド24側に向かって傾斜して形成されている。この揺動部61dが突出部63aに当接すると、接続部材61が印刷ヘッド24の背面側に撓むことにより接続部材61とキャリッジ軸28とが離間する。また、接続解除部材41bが当接部61bに当接すると、接続部材61が印刷ヘッド24の背面側に撓むことにより接続部材61とキャリッジ軸28とが離間する。
紙送り機構31は、図4に示すように、給紙トレイ38に載置された記録紙Sを挿入する記録紙挿入口39と、給紙トレイ38に載置された記録紙Sを印刷ヘッド24に供給する給紙ローラ36と、印刷ヘッド24へ記録紙Sやロール紙を搬送する紙送りローラ35と、印刷後の記録紙Sを排紙する排紙ローラ37とを備えている。給紙ローラ36、紙送りローラ35及び排紙ローラ37は、図示しないギヤ機構を介して駆動モータ33(図1参照)により駆動される。なお、紙送り機構31は、給紙ローラ36の回転駆動力と図示しない分離パッドの摩擦抵抗とによって、複数の記録紙Sが一度に給紙されることを防いでいる。図1において、記録紙Sの搬送方向は奥側から手前に向かう方向であり、印刷ヘッド24と共に移動するキャリッジ22の移動方向は記録紙Sの搬送方向と直交する方向(主走査方向)である。
プラテン44には、図5に示すように、縁無し印刷時に各サイズの記録紙の端部からはみ出たインクを吸収するインク受け領域68と、このインク受け領域68を通過する記録紙を裏側から支持する複数の支持柱44aとが形成されている。インク受け領域68は、後述のノズル検査装置50の上側インク吸収体55、下側インク吸収体56、電極部材57と同様の部材により構成され、電極部材57がメカフレーム80を介して接地されることによりグランド電位となっている。このインク受け領域68には、各サイズの記録紙の側端部からはみ出たインクを吸収する第1〜第4側端部用インク吸収領域68a〜68dと、縁無し印刷時に記録紙の先端部や後端部からはみ出たインクを吸収する先後端部用インク吸収領域68eとが設けられている。第1側端部用インク吸収領域68aは、各サイズの記録紙の右端部をキャッピング部材41の近傍に設けられた基準ガイドに沿って配置したときにその右端部がその上方を通過するように形成されている。また、第2〜第4側端部用インク吸収領域68b〜68dは、それぞれハガキサイズ、B5サイズ、A4サイズの記録紙の左端部がその上方を通過するように形成されている。これら第1〜第4側端部用インク吸収領域68a〜68dの搬送方向の長さは、ノズル列43よりも長くなるよう設計されている。また、先後端部用インク吸収領域68eは、記録紙のうち最も大きなA4サイズの横幅を超える大きさに設計され、支持柱44aは、側端部でのインクの到達を妨げないようにインク受け領域68のうち第1〜第4側端部用インク吸収領域68a〜68d以外の領域に設けられている。この第1〜第4側端部用インク吸収領域68a〜68dの上方には、ガイド部材63の突出部63aがそれぞれの領域に対応して設けられている。
キャッピング部材昇降機構90は、図6に示すように、メカフレーム80内部の図中右側下端に固定されたキャップ部フレーム81と、キャッピング部材41が接続されキャリッジ22の下方且つキャップ部フレーム81の上方を移動可能に支持されたベース部材91と、ベース部材91を移動可能に支持するリンクアーム92と、キャップ部フレーム81とベース部材91とに接続されベース部材91を図中左下方向に常に付勢する引っ張りバネ96とを備えている。なお、図6では、理解の容易のため、ベース部材91に網掛けを施してある。また、キャップ部フレーム81は、ベース部材91の図中手前と奥とにそれぞれ立設されているが、図6では手前側のみを示した。ベース部材91は、その一端にはキャリッジ22の右端に形成された当接部84と当接可能に上方に延びる柱状体93が設けられ、他端の上部には当接部84と柱状体93とが当接したときにノズルプレート27と対向する位置にキャッピング部材41が設けられている。また、柱状体93の下端には、図中手前側に突出した棒状体91aが固定されている。ベース部材91の中央下部には、リンクアーム92に一端が支持軸92bを介して揺動可能に接続されている。リンクアーム92の他端には、キャップ部フレーム81の略中央に固定された回動軸92aが挿入されている。したがって、リンクアーム92は、ベース部材91を支えた状態で回動軸92aを中心として回動可能に構成されている。キャップ部フレーム81には、両側面に円弧溝81aが形成され、この円弧溝81aには棒状体91aが溝の形状に沿って移動可能なように嵌め込まれている。このキャッピング部材昇降機構90では、当接部84が柱状体93に当接した状態でキャリッジ22が図中右方向に移動すると、印刷ヘッド24のノズルプレート27の面とキャッピング部材41内の検査領域52の面とが水平となるよう対向した状態で右方向に移動しながらキャッピング部材41が印刷ヘッド24に向かって上昇し(図6(a),(b))、棒状体91aが円弧溝81aの図中右端に達するとキャッピング部材41がノズルプレート27に強く押し付けられた状態となる(図6(c))。また、キャッピング部材昇降機構90では、当接部84が柱状体93に当接した状態でキャリッジ22が左方向に移動すると、ノズルプレート27の面と検査領域52の面とが水平に対向した状態で左方向に移動しながらキャッピング部材41が印刷ヘッド24から離れるよう下降する。
ノズル検査装置50は、図7に示すように、印刷ヘッド24のノズル23から飛翔したインク滴が着弾可能な検査領域52を有するキャッピング部材41と、検査領域52(インク受け領域68)と印刷ヘッド24との間に所定の電位差を発生させる電圧印加回路53と、印刷ヘッド24での電圧変化を検出する電圧検出回路54とを備えている。
キャッピング部材41は、プラテン44の印刷可能領域から図1中右側に外れた位置に設けられ、略直方体で上部が開口した筐体であり、開口縁にはシリコンゴムなどの絶縁体からなるシーリング部材41aが形成されている。このキャッピング部材41は、ノズル詰まりの有無を検査する際に使用されるほか、印刷休止中などにノズル23が乾燥するのを防止するためにノズル23を封止するときにも利用される。また、キャッピング部材41には、吸引ポンプ45と開閉バルブ46とが別々に接続され、開閉バルブ46が閉状態のときに吸引ポンプ45が作動するとキャッピング部材41の内部空間に負圧が発生する。キャッピング部材41がノズル23を封止しているときにこの負圧を発生させることにより、ノズル23内のインクが強制的に吸い出される。なお、吸引ポンプ45や開閉バルブ46には伸縮性のあるチューブが接続されている。
検査領域52は、インク滴が直接着弾する上側インク吸収体55と、この上側インク吸収体55に着弾したあと下方に透過してきたインク滴を吸収する下側インク吸収体56と、上側インク吸収体55と下側インク吸収体56との間に配置されたメッシュ状の電極部材57とにより構成されている。上側インク吸収体55は、電極部材57と同電位となるように導電性を有するスポンジによって形成され、その表面が検査領域52となっている。このスポンジは、着弾したインク滴が速やかに下方に移動可能な透過性の高いものであり、ここではエステル系ウレタンスポンジ(商品名:エバーライトSK−E,ブリジストン(株)製)が用いられている。下側インク吸収体56は、上側インク吸収体55に比べてインクの保持力が高いものであり、フェルトなどの不織布によって作製されており、ここでは不織布(商品名:キノクロス,王子キノクロス(株)製)が用いられている。電極部材57は、ステンレス(例えばSUS)製の金属からなる格子状のメッシュとして形成されている。このため、上側インク吸収体55に一旦吸収されたインクは格子状の電極部材57の隙間を通って下側インク吸収体56に吸収・保持される。この電極部材57は、メカフレーム80(図1参照)を介して接地されグランド電位となっている。ここでは、電極部材57は、導電性を有する上側インク吸収体55と接触しているため、上側インク吸収体55の表面すなわち検査領域52も電極部材57と同様、グランド電位となっている。
電圧印加回路53は、カバーヘッド29に接続され、インクジェットプリンタ20の内部で引き回される数ボルトの電気配線の電圧を図示しない昇圧回路を介して数十〜数百ボルトに昇圧し、この昇圧後の電圧を、カバーヘッド29を介してノズルプレート27に印加する回路である。この電圧印加回路53は、カバーヘッド29を介してノズルプレート27に電圧を印加することにより、印刷ヘッド24内部のインクに電圧を印加する。電圧検出回路54は、図2及び図7に示すように、キャリッジ22に取り付けられたキャリッジ用基板65上にリニア式エンコーダ25と並設されている。この電圧検出回路54は、カバーヘッド29に接続され、インクを吐出する際に生じるノズルプレート27での電圧変化を検出するものであり、印刷ヘッド24の電圧信号を積分して出力する積分回路54aと、この積分回路54aから出力された信号を反転増幅して出力する反転増幅回路54bと、この反転増幅回路54bから出力された信号をA/D変換してコントローラ70へ出力するA/D変換回路54cとを備えている。積分回路54aは、1つのインク滴の飛翔・着弾による電圧変化が微弱なことから、同一のノズル23から吐出される複数のインク滴の飛翔・着弾による電圧変化を積分することにより大きな電圧変化として出力するものである。反転増幅回路54bは、電圧変化の正負を反転させると共に回路構成によって決まる所定の増幅率で積分回路から出力された信号を増幅して出力するものである。A/D変換回路54cは、反転増幅回路54bから出力されたアナログ信号をディジタル信号に変換してコントローラ70に出力するものである。
コントローラ70は、図1に示すように、メカフレーム80の裏面に取り付けられたメイン基板85上に設けられ、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM73と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM74と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリ75と、外部機器との情報のやり取りを行うインタフェース(I/F)79と、図示しない入出力ポートとを備えている。なお、ROM73には、後述するメインルーチンやノズル検査ルーチン、クリーニング処理ルーチン、印刷処理ルーチンの各処理プログラムが記憶されている。また、RAM74には、印刷バッファ領域が設けられており、この印刷バッファ領域にユーザPC99からI/F79を介して送られてきた印刷データが記憶される。このコントローラ70には、ノズル検査装置50の電圧検出回路54から出力された電圧信号やリニア式エンコーダ25からのキャリッジ22のポジション信号などが図示しない入力ポートを介して入力されるほか、ユーザPC99から出力された印刷ジョブなどがI/F79を介して入力される。また、コントローラ70からは、印刷ヘッド24(マスク回路47や圧電素子48を含む)への制御信号や駆動モータ33への制御信号、キャリッジモータ34aへの駆動信号、ノズル検査装置50(電圧印加回路53や吸引ポンプ45、開閉バルブ46を含む)への制御信号などが図示しない出力ポートを介して出力されるほか、ユーザPC99への印刷ステータス情報などがI/F79を介して出力される。
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンタ20の動作について説明する。まず、メインルーチンの動作について図8に基づいて説明する。図8は、コントローラ70のCPU72により実行されるメインルーチンのフローチャートの一例である。このルーチンは、インクジェットプリンタ20の電源がオンされたあと所定のタイミングごとに(例えば数msecごとに)CPU72により繰り返し実行される。このルーチンが開始されると、CPU72は、まず、印刷待ち状態の印刷ジョブが存在するか否かを判定する(ステップS100)。ユーザPC99から受信した印刷ジョブは、RAM74に形成された印刷バッファ領域に格納されて印刷待ち状態の印刷ジョブとなるため、印刷ジョブを受信したときに印刷中の場合だけでなく直ちに印刷可能な場合であっても一旦印刷待ち状態の印刷ジョブとなる。そして、ステップS100で印刷待ち状態の印刷ジョブが存在しないときには、そのままこのメインルーチンを終了する。
一方、ステップS100で、印刷待ち状態の印刷ジョブが存在したときには、各ノズル23からインクが正常に吐出されるか否かを検査するノズル検査ルーチンを実行する(ステップS110)。図9は、このノズル検査ルーチンのフローチャートの一例である。ノズル検査ルーチンが開始されると、CPU72は、まず、キャリッジモータ34aを駆動して印刷ヘッド24が検査位置になるようにキャリッジ22を移動させる(ステップS200)。検査位置は、キャリッジ22がキャリッジ軸28の図1中最右端に位置するホームポジション(図6(c)参照)に設定されている。図10は、検査位置での電位切替機構60の説明図である。キャリッジ22がホームポジション側に移動すると、図10に示すように、キャッピング部材昇降機構90によりキャッピング部材41が印刷ヘッド24に接近する。このとき、キャリッジ軸28と接続部材61とが接触する接触位置に接続解除部材41bが移動する。すると、キャッピング部材41に設けられた接続解除部材41bが接続部材61の当接部61bに当接する。そして、キャリッジ22がホームポジションの位置になると、図中点線で示したようにキャッピング部材41がノズルプレート27に密着すると共に、接続部材61が接続解除部材41bに押されて印刷ヘッド24の背面側に撓むことにより接続部材61とキャリッジ軸28とが離間する(下図参照)。このように、印刷ヘッド24が電位切離領域としてのホームポジション(検査位置)に位置するときには、ノズルプレート27がグランド電位から切り離され、電圧印加回路53によりノズルプレート27へ所定の電圧を印加可能となる。
次に、CPU72は、電圧印加回路53のスイッチSWを入れて印刷ヘッド24のノズルプレート27と検査領域52との間に所定の電位差を発生させ(ステップS210)、検査対象、つまりインクを吐出する対象であるノズル列43のうちの1つのノズル23のマスク回路47及び圧電素子48(図3参照)を介してそのノズル23から帯電したインク滴を吐出させる(ステップS220)。ここで、ノズル検査について説明する。検査領域52を接地してグランド電位とし、ノズルプレート27と検査領域52との間に電位差を生じさせた状態でインク滴をノズル23から吐出させる実験を実際に行ったところ、印刷ヘッド24での出力信号波形がサインカーブとして表れた。このような出力信号波形が得られる原理は明らかではないが、帯電したインク滴が検査領域52に接近するのに伴って静電誘導により誘導電流が流れたことに起因すると考えられる。また、印刷ヘッド24からの出力信号波形の振幅は、印刷ヘッド24から上側インク吸収体55(検査領域52)までの距離に依存したほか、飛翔するインク滴の有無やその大きさにも依存した。このため、ノズル23が詰まってインク滴が飛翔しなかったりインク滴が所定の大きさより小さかったりしたときには、出力信号波形の振幅が通常時に比べて小さくなるか略ゼロになるから、出力信号波形の振幅に基づいてノズル23の詰まりの有無を判定することができる。本実施形態では、インク滴が所定の大きさであっても1ショット分のインク滴による出力信号波形の振幅が微弱なことから、駆動波形を表す1セグメントの第1〜第3パルスP1,P2,P3のすべてを出力する操作を8回行うことにより24ショット分のインク滴を吐出するようにした。これにより、出力信号は24ショット分のインク滴による積分値となるため、電圧検出回路54からは十分大きな出力信号波形が得られた。なお、インク吐出数は、検査精度を確保可能な吐出数となるよう任意に設定することができる。なお、検査対象ノズルは、ノズル23Y(n=1)からノズル番号順に設定される。
さて、検査対象ノズルからインクを吐出すると、CPU72は、電圧検出回路54で検出された信号波形の振幅すなわち出力電圧Vopが閾値Vthr以上か否かを判定する(ステップS230)。この閾値Vthrは、24ショット分のインクが正常に吐出されたときの出力信号波形の出力電圧Vop(ピーク値)が超えるように、また24ショット分のインクが正常に吐出されなかったときにはノイズ等によって超えてしまうことのないように、経験的に定められた値である。ステップS230で出力電圧Vopが閾値Vthr未満だったときには、今回のノズル23に詰まりなどの異常が生じているとみなし、そのノズル23を特定する情報(例えばどのノズル列の何番目のノズルかを示す情報)をRAM74の所定領域に記憶する(ステップS240)。
ステップS240のあと又はステップS220で出力電圧Vopが閾値Vthr以上のとき(つまり今回のノズル23が正常だったとき)、CPU72は現在検査中のノズル列43に含まれるすべてのノズル23について検査を行ったか否かを判定し(ステップS250)、現在検査中のノズル列43に未検査のノズル23があるときには、検査対象となるノズル23を未検査のものに更新し(ステップS260)、その後再びステップS220以降の処理を行う。一方、ステップS250で現在検査中のノズル列43に含まれるすべてのノズル23について検査を行ったときには、印刷ヘッド24に含まれるすべてのノズル列43について検査を行ったか否かを判定し(ステップS270)、未検査のノズル列43が存在するときには、検査対象となるノズル列43を未検査のノズル列43に更新し(ステップS280)、その後再びステップS220以降の処理を行う。一方、ステップS270で印刷ヘッド24に含まれるすべてのノズル列43について検査を行ったときには、電圧印加回路53のスイッチSWをオフにし(ステップS290)、このノズル検査ルーチンを終了する。このルーチンを実行することにより、RAM74の所定領域には、印刷ヘッド24に配列された全ノズル23のうち異常が発生しているノズル23がある場合にはそのノズル23を特定する情報が記憶され、異常が発生しているノズル23がない場合には何も記憶されない。
さて、図8のメインルーチンに戻り、上述したノズル検査ルーチン(ステップS110)を実行したあと、CPU72は、印刷ヘッド24に配列された全ノズル23のうち異常が発生しているノズル23があるか否かをRAM74の所定領域の記憶内容に基づいて判定し(ステップS120)、異常が発生しているノズル23があるときには、詰まりが原因となっていることを考慮して印刷ヘッド24のクリーニングを行うが、その前に異常解消のために行ったクリーニングの回数が予め定められた上限回数(例えば3回)に至ったか否かを判定する(ステップS130)。そして、クリーニングの回数が上限回数未満のときには、印刷ヘッド24のクリーニング処理を実行する(ステップS140)。具体的には、開閉バルブ46を閉じ、吸引ポンプ45を駆動してキャッピング部材41内部を負圧にし詰まったインクをノズル23から吸引排出させる。このクリーニング処理を実行することにより、ノズル23内に溜まったインク(例えば長期間放置したことにより粘性が高くなったインクなど)を除去することができる。
ステップS140でクリーニング処理を実行した後、ノズル23の異常が解消されたか否かを調べるため再びステップS110のノズル検査ルーチンに戻る。なお、このステップS110では、異常が発生していたノズル23のみを再検査してもよいが、何らかの原因でクリーニング時に正常だったノズル23に詰まりが発生することも考えられることから、ここでは印刷ヘッド24のすべてのノズル23について再検査を行う。一方、ステップS130でクリーニングを行った回数が上限回数に達していたときには、クリーニングを行ったとしても異常が発生したノズル23は正常化しないとみなし、図示しない操作パネルにエラーメッセージを表示し(ステップS150)、このメインルーチンを終了する。一方、ステップS120で異常が発生しているノズル23がなかったときには、印刷処理ルーチンを実行し(ステップS160)、その後メインルーチンを終了する。
図11は、この印刷処理ルーチンのフローチャートである。印刷処理ルーチンが開始されると、CPU72は、まず、印刷データに含まれる情報に基づき印刷を行う記録紙Sのサイズを入力し(ステップS300)、給紙処理を実行する(ステップS310)。給紙処理は、駆動モータ33の駆動により給紙ローラ36(図4参照)を回転駆動させ給紙トレイ38に載置された記録紙Sを紙送りローラ35まで搬送する処理である。次に、CPU72は、キャリッジモータ34aの駆動によりキャリッジ22をホームポジションなどから図1において左方向に移動させ(ステップS320)、印刷データに含まれる情報に基づき現在印刷中の印刷データが縁無し印刷のものであるか否かを判定する(ステップS330)。なお、ユーザPC99は、ユーザにより縁無し印刷が選択されると、印刷指示された画像データを記録紙Sにフチが生じないように記録紙Sのサイズよりも大きな画像データに拡大加工し、この画像データと縁無し印刷用のデータである情報とを含む印刷データをインクジェットプリンタ20に送信するものとした。ステップS330で現在印刷中の印刷データが縁無し印刷のものであると判定されたときには、印刷ヘッド24の現在の位置が電位切離領域であるか否かを判定する(ステップS340)。この印刷ヘッド24の位置が電位切離領域であるか否かの判定は、縁無し印刷時のインクミスト発生を抑制するため、ノズルプレート27に電圧を印加するか否かを判定するために行う。
図12は、印刷ヘッド24の電位切離領域の説明図であり、図12(a)が記録紙Sの側端部にノズル列43が到達した図であり、図12(b)が記録紙Sの側端部をノズル列43が通過する図である。図12では、第2側端部用インク吸収領域68bでの電位切離領域を示している。この電位切離領域は、縁無し印刷時に記録紙Sの端部を外れた領域に吐出したインクをインク受け領域68に引き寄せるためノズルプレート27をグランド電位から切り離してノズルプレート27に電圧を印加可能にする領域であり、記録紙Sの端部及び端部から外れた領域に記録紙Sのサイズに応じて複数設定されている。なお、印刷ヘッド24の位置は、ノズル列43Kの位置に対応するリニア式エンコーダ25の値により定めるものとした。この電位切離領域は、図12(a)に示す記録紙Sの端部に最初に達するノズル列43(ここではノズル列43K)の位置から図12(b)に示す記録紙Sの端部に最後に達するノズル列43(ここではノズル列43Y)の位置までの領域に定められている。このように、第1〜第4側端部用インク吸収領域68a〜dのそれぞれに印刷ヘッド24の電位切離領域が定められている。ステップS340では、ステップS300で入力した記録紙Sのサイズに基づいて、現在印刷中の記録紙Sの側端部に対応する電位切離領域にキャリッジ22が位置しているか否かを判定するものとした。また、接続部材61をキャリッジ軸28から離間させる突出部63aは、図12(a)に示すように、ノズル列43Kが記録紙Sの側端部に達したときの接続部材61の左端部の位置と、図12(b)に示すように、ノズル列43Yが記録紙Sの側端部に達したときの接続部材61の右端部の位置との幅(図12の下図参照)に形成されている。このため、印刷ヘッド24が電位切離領域にあるときには、接続部材61は、キャリッジ軸28との接触を解除される。なお、印刷ヘッド24の電位切離領域は、記録紙Sのずれなどを考慮し余裕を持った領域に設定してもよい。具体的には、印刷後の記録紙Sの縁無し状態を確保可能な範囲(例えばプラテン44上に通常配置される記録紙Sの端部から内側に1mm、外側に1mmの範囲など)でインクを吐出するよう印刷ヘッド24の電位切離領域を定めてもよい。
さて、ステップS340で印刷ヘッド24の現在の位置が電位切離領域であると判定されたときには、CPU72は、電圧印加回路53のスイッチSWを入れて印刷ヘッド24のノズルプレート27とインク受け領域68との間に所定の電位差を発生させる(ステップS350)。そして、ステップS350のあと、またはステップS340で印刷ヘッド24の現在の位置が電位切離領域でないと判定されたとき、または、ステップS330で現在印刷中の印刷データが縁無し印刷のものでないと判定されたときには、印刷データに基づいて印刷ヘッド24の各ノズル23からインクを吐出させる(ステップS360)。なお、ステップS340で印刷ヘッド24の現在の位置が電位切離領域でないとき、または、ステップS330で現在印刷中の印刷データが縁無し印刷のものでないときには、ノズルプレート27への電圧の印加は行わない。続いて、CPU72は、現在のパスが終了したか否かを判定する(ステップS370)。ここで、「パス」とは、印刷ヘッド24が図1の記録紙Sの一端から他端まで1回移動する動作のことをいう。現在のパスが終了していないときには、CPU72は、上述したステップS320〜S370の処理を実行する。
ここで、ステップS320〜S370の処理について、図12及び図13を用いて説明する。図13は、ノズルプレート27の電位の切り替えの説明図であり、図13(a)がノズルプレート27がグランド電位のときの図、図13(b)がノズルプレート27に電圧を印加したときの図である。ステップS320でキャリッジ22を移動し、ステップS340で印刷ヘッド24の位置が電位切離領域でないときは、ノズル23から吐出されたインクは記録紙Sに到達する(図12(a)参照)。このとき、図13(a)に示すように、接続部材61の当接部61bがガイド部材63の突出部63aには接触せず、接続部材61がキャリッジ軸28に接触している状態、すなわちノズルプレート27がグランド電位となっている。続いて、キャリッジ22を移動すると共にノズル23からインクを吐出する処理を繰り返す。そして、印刷ヘッド24が電位切離領域に達すると、ノズル23から吐出されたインクは記録紙Sを外れた領域に飛翔する(図12(b)参照)。このとき、図13(b)に示すように、印刷ヘッド24が主走査方向へ移動することにより接続部材61の当接部61bがガイド部材63の突出部63aに接触し、キャリッジ軸28に向かって付勢した接続部材61の付勢力を突出部63aが解除することにより、接続部材61が印刷ヘッド24側に撓みキャリッジ軸28から離間した状態、すなわちノズルプレート27がグランド電位から切り離される。続いて、ステップS350で電圧印加回路53のスイッチSWをオンし、カバーヘッド29を介してノズルプレート27とインク受け領域68との間に所定の電位差を発生させる。すると、印刷ヘッド24内のインクに電圧が印加され、このインクが正に帯電する。そして、ステップS360で正に帯電したインク滴が記録紙Sの領域外に吐出されるが、インク受け領域68がグランド電位であるため、この正に帯電したインク滴がインク受け領域68に吸い寄せられる。このように、インクミストが機内を漂うことが抑制される。なお、ステップS330で縁無し印刷を実行しないときには、記録紙Sの領域外にインクを吐出することがなくインク滴をインク受け領域68に引き寄せる必要がないため、ノズルプレート27に電圧は印加しない。
ステップS370で現在のパスが終了したときには、CPU72は、現在印刷中の記録紙Sへ印刷すべき印刷データがあるか否かを判定し(ステップS380)、現在印刷中の記録紙Sへ印刷すべき印刷データがあるときには、紙送りローラ35を回転駆動し記録紙Sを所定量搬送する搬送処理を実行し(ステップS390)、上述したステップS320〜S380の処理を実行する。一方、ステップS380で現在印刷中の記録紙Sへ印刷すべき印刷データがないときには、CPU72は、排紙ローラ37を回転駆動し記録紙Sを排紙トレイに排出する排紙処理を実行する(ステップS400)。そして、CPU72は、次頁の印刷データがあるか否かを判定し(ステップS410)、次頁の印刷データがあるときには再びステップS310以降の処理を行い、次頁の印刷データがないときにはこの印刷処理ルーチンを終了する。このように、印刷状況に応じてノズルプレート27をグランド電位とする状態とグランド電位から切り離して電圧を印加する状態とを切り替えて印刷処理を実行する。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の電位切替機構60が電位切替手段に相当し、接続部材61が接続部材に相当し、キャリッジ軸28が導電部材に相当し、接続解除部材41b及び突出部63aが離間部材に相当し、検査領域52及びインク受け領域68が印刷記録液受け領域に相当し、キャリッジベルト32、キャリッジモータ34a、マスク回路47及び圧電素子48が印刷ヘッド駆動手段に相当し、電圧印加回路53が電位差発生手段に相当し、電圧検出回路54が電気的変化検出手段に相当し、キャッピング部材41が移動部材に相当し、キャッピング部材昇降機構90が距離変更手段に相当し、紙送り機構31が搬送手段に相当し、CPU72が制御手段に相当する。また、インクが本発明の印刷記録液に相当し、電位切離領域が所定領域に相当する。なお、本実施形態では、インクジェットプリンタ20の動作を説明することにより本発明の印刷記録液吐出装置の制御方法の一例も明らかにしている。
以上詳述した本実施形態のインクジェットプリンタ20によれば、印刷ヘッド24が電位切離領域に位置するときには印刷ヘッド24をグランド電位から切り離し、印刷ヘッド24が電位切離領域以外に位置するときには印刷ヘッド24をグランド電位となるよう切り替える。このように、印刷ヘッド24の位置に応じて印刷ヘッド24がグランド電位から切り離される。したがって、印刷ヘッド24が電位切離領域に位置するときには自由に印刷ヘッド24に電圧を印加することができる。
また、電位切替機構60は、グランド電位となるよう形成されたキャリッジ軸28と、印刷ヘッド24とキャリッジ軸28とを電気的に接続する接続部材61と、印刷ヘッド24が主走査方向を移動する区間内の電位切離領域でキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させる接続解除部材41b及び突出部63aとにより構成されているため、接続解除部材41b及び突出部63aを利用して比較的容易に印刷ヘッド24をグランド電位から切り離すことができる。また、接続解除部材41b及び突出部63aは、接続部材61をキャリッジ軸28から離間する方向へ撓ませることによりキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させるため、比較的容易に接続部材61とキャリッジ軸28とを接続・離間させることができる。更に、接続解除部材41bは、キャッピング部材41が印刷ヘッド24に向かって移動するとキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させるため、キャッピング部材41の移動を利用してキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させることができる。更にまた、突出部63aは、印刷ヘッド24が主走査方向へ移動することによりキャリッジ軸28に向かって付勢した接続部材61の付勢力を解除し電位切離領域でキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させるため、印刷ヘッド24の移動を利用してキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させることができる。そして、接続解除部材41b及び突出部63aは、プラテン44上に配置された記録紙Sから外れた領域に設けられ、記録紙S上ではキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させないため、記録紙S上では、印刷ヘッド24がグランド電位になり、記録紙Sの静電気による印刷ヘッド24の損傷を抑制することができる。そしてまた、印刷ヘッド24を支持して主走査方向に導くキャリッジ軸が本発明の導電部材であるため、導電部材を新たに設ける必要がない。
更に、電位切離領域で印刷ヘッド24をグランド電位から切り離すため、電圧印加回路53により印刷ヘッド24に電圧を印加することによって帯電したインクを検査領域52やインク受け領域68へ吐出することができる。また、キャリッジ軸28と接続部材61とを離間し印刷ヘッド24をグランド電位から切り離し、印刷ヘッド24内のインクと検査領域52及びインク受け領域68との間に電位差を生じさせてノズル検査を実行するため、確実にノズル検査を実行することができる。更に、キャッピング部材昇降機構90により印刷ヘッド24とキャッピング部材41との距離が短くしたあとノズル検査を実行するため、キャッピング部材昇降機構90による印刷ヘッド24とキャッピング部材41との相対距離の変更を利用してキャリッジ軸28と接続部材61とを離間することができる。更にまた、検査領域52がキャッピング部材41の内部に設けられているため、ノズル検査で吐出したインクを処理しやすいし、ノズル検査後のノズル23のクリーニングを迅速に行うことができる。そして、インク受け領域68は、グランドに接続され、縁無し印刷の実行時に、電位切替機構60が電位切離領域で印刷ヘッド24をグランド電位から切り離した際に電圧印加回路53に印刷ヘッド24内のインクへ所定の電圧を印加させた状態でインクをノズル23より吐出させるため、記録紙Sの端部領域外に飛翔したインクをインク受け領域68に引き寄せることができる。このため、インクミストによるインクジェットプリンタ20内部の汚れを低減することができる。そしてまた、印刷ヘッド24が電位切離領域に位置するときのみ電圧印加回路53に印刷ヘッド24内のインクへ所定の電圧を印加させるため、インクへ電圧を印加する時間を短縮可能であり、電圧を印加されることにより生じるインクの劣化を抑制することができる。そして更に、印刷ヘッド24内のインクをグランドに接地し検査領域52及びインク受け領域68に電圧を印加する場合には、検査領域52やインク受け領域68に溜まったインクなどによりプラテン44などを介して電流がリークして印刷ヘッド24内のインクとと検査領域52及びインク受け領域68との間に予定する電位差が生じないおそれがあるのに対して、検査領域52及びインク受け領域68をグランドに接地し印刷ヘッド24内のインクに電圧を印加する場合にはそのようなリークのおそれがないため好ましい。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。以下では、上述したインクジェットプリンタ20と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
例えば、上述した実施形態では、電圧印加回路53をカバーヘッド29に接続し、このカバーヘッド29を介してノズルプレート27への電圧の印加を行うものとしたが、図14に示すように、突出部63aの接続部材61と接触する面に電圧印加回路53と電気的に接続した電極板63bを設け、この電極板63bから接続部材61を介してノズルプレート27に電圧を印加する電位切替機構60Bとしてもよい。図14(a)に示すように接続部材61が突出部63aに接触しないときには、接続部材61を介してノズルプレート27がグランドに接地され、図14(b)に示すように、接続部材61が突出部63aに接触するときには、電極板63b及び接続部材61を介してノズルプレート27に電圧が印加される。こうすれば、本体側から印刷ヘッド24に比較的容易に高電圧を供給することができる。このとき、電圧印加回路53のスイッチSWを省略し、常に電極板63bに電圧を印加してもよい。つまり、電圧印加回路53のスイッチ制御を省略してもよい。こうすれば、印刷処理の制御を簡素化することができる。また、スイッチ制御を行わなくとも、印刷ヘッド24が電位切離領域に位置するときのみノズルプレート27に電圧が印加されるため、電圧が印加されることによるインクの劣化を抑制することができる。
上述した実施形態では、ノズル検査時に、絶縁性の接続解除部材41bにより接続部材61とキャリッジ軸28とを離間させ、電圧印加回路53のスイッチSWによりノズルプレート27に電圧を印加するものとしたが、接続解除部材41bを導電性を有する部材(SUSなど)で形成し、この接続解除部材41bに電圧印加回路53を接続し、この接続解除部材41bから接続部材61を介してノズルプレート27に電圧を印加してもよい。こうすれば、本体側から印刷ヘッド24に比較的容易に高電圧を供給することができる。このとき、電圧印加回路53のスイッチSWを省略してもよい。
上述した実施形態では、ガイド部材63を絶縁部材で形成しキャリッジ軸28と接続部材61とを離間させ、キャリッジ軸28を導電性の部材で形成しグランドに接地するとしたが、図15に示すように、キャリッジ軸28に電圧印加回路53を接続し、ガイド部材63を導電性の部材で形成すると共にグランドに接地し、突出部63aの代わりに接続部材61との接触を回避する凹状部63cを形成する電位切替機構60Cとしてもよい。図15(a)、(c)に示すように、印刷ヘッド24が電位切離領域にないときには、接続部材61がグランドに接地されたガイド部材63と当接し、電圧が印加されるキャリッジ軸28と離間され、図15(a)、(b)に示すように、印刷ヘッド24が電位切離領域にあるときには、接続部材61がグランドに接地されたガイド部材63と凹状部63cにより離間され、電圧が印加されたキャリッジ軸28と接触することにより、ノズルプレート27に電圧が印加される。こうしても、印刷ヘッド24が電位切離領域に位置するときには自由に印刷ヘッド24に電圧を印加することができる。
上述した実施形態では、ノズル検査装置50の検査領域52と、縁無し印刷時のインクを吸収するインク受け領域68とに印刷ヘッド24の電位切離領域を設け、ノズルプレート27をグランド電位から切り離すものとしたが、ノズル検査装置50を省略しノズル検査をしないものとしてもよい。この場合、印刷ヘッド24が電位切離領域としての第1〜第4側端部用インク吸収領域68a〜68dに位置するときには自由に印刷ヘッド24に電圧を印加することができる。また、縁無し印刷時のインクを吸収するインク受け領域68を省略し縁無し印刷をしないものとしてもよい。この場合、印刷ヘッド24が電位切離領域としての検査領域52に位置するときには自由に印刷ヘッド24に電圧を印加することができる。また、プラテン44上の印刷可能領域では必ず印刷ヘッド24がグランド電位になるため、記録紙Sの静電気により生じる印刷ヘッド24の損傷を確実に防止することができる。
上述した実施形態では、ノズルプレート27に対して検査領域52を接近離間させるキャッピング部材昇降機構90について説明したが、検査領域52に対して印刷ヘッド24を接近離間させる印刷ヘッド昇降機構を採用してもよい。一般に厚さの異なる印刷媒体を印刷するため印刷ヘッド24の高さを可変可能に構成することがあるため、本発明の距離変更手段としてその構成を利用することができる。なお、ノズルプレート27に対して検査領域52を接近離間させるキャッピング部材昇降機構90と、検査領域52に対して印刷ヘッド24を接近離間させる印刷ヘッド昇降機構との両方を備えるものとしてもよい。
上述した実施形態では、キャッピング部材41とノズルプレート27とが密着した状態で接続解除部材41bにより接続部材61がキャリッジ軸28と離間しノズルプレート27がグランド電位から切り離されノズル検査を実行するものとしたが、キャッピング部材41とノズルプレート27とが密着しない状態(例えば図6(b)の状態など)で接続解除部材41bにより接続部材61がキャリッジ軸28と離間しノズルプレート27がグランド電位から切り離されノズル検査を実行するものとしてもよい。こうすれば、キャッピング部材41とノズルプレート27との間にインクなどが介在して生じる電流のリークを防止可能であるため、確実にノズルプレート27を所定電位とすることができる。このとき、キャッピング部材41とノズルプレート27とが密着した状態(図6(c)参照)であるときには接続部材61がキャリッジ軸28と接触し、ノズルプレート27がグランド電位になるものとしてもよい。例えば、図10の下図において、接続解除部材41bを導電性の部材とし、キャッピング部材41とノズルプレート27とが密着しない状態(例えば図6(b)の状態など)では接続部材61とキャリッジ軸28とを離間し、キャッピング部材41とノズルプレート27とが密着した状態(図6(c))では離間した接続部材61とキャリッジ軸28とに接続解除部材41bが接触することによりノズルプレート27をグランド電位とするよう接続解除部材41bを形成する。こうすれば、印刷停止中のノズルプレート27の乾燥防止のためにキャッピング部材41をノズルプレート27に密着させている状態において、静電気などにより生じる印刷ヘッド24の損傷を防止することができる。
上述した実施形態では、キャリッジ22の左右方向への移動に伴ってキャッピング部材41が左右方向に移動しながら印刷ヘッド24へ接近離間するキャッピング部材昇降機構90について説明したが、キャッピング部材41を上下に移動可能な機構であれば、特にこれに限定されない。例えば、ホームポジションにキャッピング部材41が配置され、ボールネジによってリニアガイドを上下にスライドするスライダによりキャッピング部材41を上下方向にのみ昇降させるキャッピング部材昇降機構を採用してもよい。こうしても、ノズルプレート27に対して検査領域52を接近離間させることができる。
上述した実施形態では、検査領域52がキャッピング部材41の内部に配置されたノズル検査装置50について説明したが、図16に示すように、検査領域52がキャッピング部材41の内部以外(例えばフラッシング領域49の内部やその近傍など)の場所に配置されたノズル検査装置50Bとしてもよい。図16は、別のノズル検査装置50Bの説明図である。検査領域52を昇降させる検査領域昇降機構98としては、上述の実施形態と同様のものを採用してもよいし、検査領域52を上下方向にのみ昇降させる機構などを採用してもよい。こうしても、印刷ヘッド24が電位切離領域に位置するときには自由に印刷ヘッド24に電圧を印加することができる。
また、このように検査領域52をキャッピング部材41の内部以外に設けた場合には、キャッピング部材昇降機構90を省略してもよい。また、キャッピング部材昇降機構90を省略するか否かにかかわらず、接続解除部材41bに代えて突出部63aを検査領域52に対応するガイド部材63の領域に設け、キャリッジ22が検査領域52の上方に位置するときに、突出部63aにより接続部材61をキャリッジ軸28から離間させるとしてもよい。
上述した実施形態では、導電性のキャリッジ軸28と、キャリッジ軸28とノズルプレート27とを電気的に接続する接続部材61と、この接続部材61とキャリッジ軸28とを接触・離間させる接続解除部材41b及びガイド部材63とにより構成される電位切替機構60としたが、図17に示すように、印刷ヘッド24が主走査方向を移動する区間内のうち電位切離領域ではグランド電位から切り離され、この区間内のうち電位切離領域以外の領域ではグランド電位になるよう形成された領域切替部材としてのキャリッジ軸28と、印刷ヘッド24と領域切替部材とを電気的に接続する接続部材61とを備えた電位切替機構60Dとしてもよい。具体的には、印刷ヘッド24の電位切離領域に対応するキャリッジ軸28の領域に、絶縁材料による絶縁膜28aを形成し、ノズルプレート27に接続された接続部材61が常にキャリッジ軸28に接触しながらキャリッジ22を主走査方向に移動させる。なお、上述したガイド部材63は、省略する。絶縁膜28aは、図12に示した突出部63aと同様の幅及び位置となるようキャリッジ軸28の表面に形成してもよい。この絶縁膜28aは、例えば、酸化ケイ素膜(例えばテトラエチルオルソシリケート膜など)や酸化ジルコニウム膜、酸化タンタル膜、窒化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜などの絶縁無機材料膜としてもよいし、ポリイミド膜、フッ素樹脂膜などの絶縁有機材料膜としてもよい。また、絶縁無機材料膜をキャリッジ軸28上に形成する方法は、プラズマCVDやスパッタ法やスピンコート法、ゾルゲル法等が利用できる。絶縁膜28aの膜厚は、絶縁状態を長期間維持可能な厚さを適宜選択すればよい。こうすれば、グランド電位の接続・切り離しが可能に形成されたキャリッジ軸28を利用して比較的容易に印刷ヘッド24をグランド電位から切り離すことができる。また、キャリッジ軸28の表面に絶縁膜28aを形成するという比較的簡単な構成により電位切離領域で印刷ヘッド24をグランド電位から切り離すことができる。なお、ここでは、キャリッジ軸28の表面に絶縁膜28aを形成するとしたが、印刷ヘッド24の電位切離領域に対応する領域で細くなるよう形成した棒状体の該領域に絶縁性の樹脂などを埋め込み、表面を平滑化して得られたキャリッジ軸28を用いてもよい。こうすれば、絶縁性を保持しやすい。
あるいは、図18に示すように、印刷ヘッド24の電位切離領域に対応する領域で細くなる細状部28bを形成しグランドに接地された領域切替部材としてのキャリッジ軸28と、ノズルプレート27に接続されキャリッジ軸28に付勢されて接触しているがキャリッジ軸28の細状部28bではキャリッジ軸28と接触しない接続部材61とを備えた電位切替機構60Eとしてもよい。こうしても、グランド電位の接続・切り離しが可能に形成されたキャリッジ軸28を利用して比較的容易に印刷ヘッド24をグランド電位から切り離すことができる。あるいは、図19に示すように、この細状部28bを有するキャリッジ軸28と、ノズルプレート27に接続されキャリッジ軸28に付勢されて該キャリッジ軸28と接触する接続部材61と、接続部材61の揺動部61dと常に接触し突出部63aなどを有さず絶縁体で形成された離間部材としてのガイド部材63とを備えた電位切替機構60Fとしてもよい。こうすれば、キャリッジ軸28側に付勢された接続部材61が細状部28bで接触してしまうのをガイド部材63により防止することができる。また、よりなめらかに接続部材61とキャリッジ軸28とを接触・離間させることができる。
上述した実施形態では、キャリッジ軸28をグランドに接地し、このキャリッジ軸28を利用してノズルプレート27をグランドに接地するとしたが、特にこれに限定されず、キャリッジ軸28以外の軸やガイド部材などをグランドに接地し、これを利用してノズルプレート27をグランドに接地するとしてもよい。こうしても、新たな部材が必要になることはあるが、印刷ヘッド24が電位切離領域に位置するときには自由に印刷ヘッド24に電圧を印加することができる。また、上述した実施形態では、板バネ式の接続部材61について説明したが、接続部材61は、可撓性を有するものが好ましく、例えばコイル形状の接続部材61としてもよい。また、接続部材61は、可撓性を有しないものを用いても差し支えない。
上述した実施形態では、ガイド部材63を固定したものとしたが、図示しないモータの駆動により、突出部63aが揺動部61dに接触しなくなる位置までガイド部材63を図2において右方向に退避可能としてもよい。こうすれば、縁無し印刷以外の印刷のときには、接続部材61が常にキャリッジ軸28と接触可能となるため、プラテン44上に配置された記録紙Sの静電気などによる印刷ヘッド24の損傷を確実に防止することができる。
上述した実施形態では、縁無し印刷時又はノズル検査時に、ノズルプレート27をグランド電位から切り離して電圧印加回路53により電圧をノズルプレート27と検査領域52及びインク受け領域68とに印加するものとしたが、これに代えて又はこれに加えて、フラッシング領域49をグランドに接地し、フラッシング領域49でフラッシング処理を実行するときに、ノズルプレート27をグランド電位から切り離して電圧印加回路53により電圧を印加するものとしてもよい。こうすれば、フラッシング処理の際にフラッシング領域49に吐出したインク滴を確実にフラッシング領域49のインク吸収体に吸収させることができる。このため、インクミストによるインクジェットプリンタ20内部の汚れを低減することができる。なお、電位切離領域を設ける処理は、縁無し印刷処理とノズル検査処理に特に限られず、その他の処理であってもよい。
上述した実施形態では特に説明しなかったが、電圧印加回路53によりノズルプレート27に所定の電圧を印加している際に、図20に示すように、プリンタ機構21を覆うように形成されたプリンタカバー87がユーザなどにより開放されたことを接触式又は光学式の開放センサ88により検出したときには、ノズルプレート27がグランド電位となる電位切離領域以外の領域にキャリッジモータ34aを駆動して印刷ヘッド24を移動させてもよい。こうすれば、インクと検査領域52及びインク受け領域68とに電圧を印加しているときプリンタカバー87が開放されたとしても、ノズルプレート27がグランド電位になる領域に印刷ヘッド24を移動させるため、ノズルプレート27をより保護することができる。
上述した実施形態では、ノズルプレート27に電圧を印加することにより印刷ヘッド24内のインクに電圧を印加するものとしたが、特にこれに限定されず、印刷ヘッド24のインク室を形成する図示しないキャビティプレートに電圧を印加してもよいし、印刷ヘッド24内のインクに直接電圧を印加するものとしてもよい。
上述した実施形態では、電位切替機構60をノズルプレート27がグランド電位から切り離されるか否かをコントローラ70で切り替えるものとしたが、ノズルプレート27がグランド電位から切り離されるか否かを電位切替機構60を手動で切り替えるものとしてもよい。こうしても、印刷ヘッド24が電位切離領域に位置するときには自由に印刷ヘッド24に電圧を印加することができる。
上述した実施形態では、印刷ヘッド24が一方向に移動するときにインクを記録紙Sに吐出する単方向印刷を行うものとして説明したが、印刷ヘッド24が往復移動するときにインクを記録紙Sに吐出する双方向印刷を行うものとしてもよい。このとき、印刷ヘッド24の電位切離領域は、往路印刷と復路印刷とで印刷ヘッド24をグランド電位から切り離すのを満たす領域として定める。
上述した実施形態では、ノズル検査ルーチンは、メインルーチンのステップS100で印刷待ちの印刷データがあるときにステップS110で実行するとしたが、ノズル検査ルーチンは、例えば、キャリッジ22の移動回数が所定回数に達するごと(例えば100パスごとなど)に実行するとしてもよいし、所定のインターバルごと(例えば1日ごとや1週間ごとなど)に実行するとしてもよいし、図示しない操作パネルの操作によりユーザからの実行指示を受けて実行するものとしてもよい。また、ノズル検査ルーチンは、インクジェットプリンタ20の出荷前検査のときに実行するとしてもよい。
上述した実施形態では、クリーニング処理時にキャッピング部材41でノズルプレート27に蓋をして吸引ポンプ45で吸引するようにしたが、クリーニング処理以外でも印刷休止中などにキャッピング部材41でノズルプレート27に蓋をしてもよい。その場合には、吸引ポンプ45の吸引を行わず、蓋をして乾燥を防止するだけでもよい。
上述した実施形態では、電圧検出回路54によりノズルプレート27の出力信号波形を検出するように構成したが、この電圧検出回路54に代えて又は加えて、同様の電圧検出回路を電極部材57とグランドとの間に接続して検査領域52の出力信号波形を検出するように構成してもよい。
上述した実施形態では、キャッピング部材41の内部やインク受け領域68に上側インク吸収体55及び下側インク吸収体56を設けたが、これらのうち一方又は両方を省略してもよい。例えば、キャッピング部材41の内部に電極部材57のみを配置し、この電極部材57に直接インクを吐出させる構成としてもよいし、インク受け領域68に電極部材57のみを配置し、この電極部材57に直接インクを吐出させる構成としてもよい。また、ノズルプレート27内のインクと電極部材57との間に所定の電位差が生じるため、上側インク吸収体55は必ずしも導電性を有している必要はなく、例えば上側インク吸収体55が絶縁性材料で形成されていてもよい。
上述した実施形態では、インクジェット方式を採用したフルカラーのインクジェットプリンタ20としたが、スキャナを搭載したマルチファンクションプリンタとしてもよいし、FAX機やコピー機などの複合印刷装置としてもよい。また、上述した実施形態ではインクジェットプリンタ20の形態で説明したが、電位切替機構60を備えたプリンタ機構21の形態としても構わない。
20 インクジェットプリンタ、21 プリンタ機構、22 キャリッジ、22a インク供給針、22b 軸受け部、23,23Y,23M,23C,23K ノズル、24 印刷ヘッド、25 リニア式エンコーダ、26 インクカートリッジ、26a インク供給口、27 ノズルプレート、28 キャリッジ軸、28a 絶縁膜、28b 細状部、29 カバーヘッド、31 紙送り機構、32 キャリッジベルト、33 駆動モータ、34a キャリッジモータ、34b 従動ローラ、35 紙送りローラ、36 給紙ローラ、37 排紙ローラ、38 給紙トレイ、39 記録紙挿入口、41 キャッピング部材、41a シーリング部材、41b 接続解除部材、43,43Y,43M,43C,43K ノズル列、44 プラテン、44a 支持柱、45 吸引ポンプ、46 開閉バルブ、47 マスク回路、48 圧電素子、49 フラッシング領域、50,50B ノズル検査装置、52 検査領域、53 電圧印加回路、54 電圧検出回路、54a 積分回路、54b 反転増幅回路、54c A/D変換回路、55 上側インク吸収体、56 下側インク吸収体、57 電極部材、60,60B〜60F 電位切替機構、61 接続部材、61a 固定部、61b 当接部、61c 接触部、61d 揺動部、63 ガイド部材、63a 突出部、63b 電極板、63c 凹状部、65 キャリッジ用基板、67 コネクタ部、68 インク受け領域、68a〜68d 側端部用インク吸収領域、68e 先後端部用インク吸収領域、69 フラットケーブル、70 コントローラ、72 CPU、73 ROM、74 RAM、75 フラッシュメモリ、79 インタフェース(I/F)、80 メカフレーム、81 キャップ部フレーム、81a 円弧溝、84 当接部、85 メイン基板、87 プリンタカバー、88 開放センサ、90 キャッピング部材昇降機構、91 ベース部材、91a 棒状体、92 リンクアーム、92a 回動軸、92b 支持軸、93 柱状体、96 引っ張りバネ、98 検査領域昇降機構、99 ユーザPC。