JP4926743B2 - 高炭素高りん鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高炭素高りん鋼の連続鋳造方法に関する。
この種の技術として、特許文献1は、高炭素鋼(炭素濃度0.3%以上)の連続鋳造方法を開示する。この連続鋳造方法は、鋳片の表面欠陥や内部欠陥に着目して発案されたものである。
また、特許文献2は、りんを0.005〜0.3重量%含む炭素鋼についての鋳片の製造方法を開示する。この連続鋳造においては、溶鋼にCeやLaを添加することとしている。
特許3526705号公報 特開平08-218112号公報
ところで、一般に、最終製品の脆性を考慮して、鋼のりん含有量は極力低くなるように成分調整が為される。一方で、自動車コンロッドなどの特定の製品においては炭素含有量に加えてりん含有量が意図的に高く設定され、この鋼種(高炭素高りん鋼)は、デンドライトアームの樹間に吸い上げられた高いりん濃度の濃化溶鋼(ミクロ偏析)が凝固して形成されるりん濃化部を起点として鋳造段階において内部割れが発生し易いメカニズムとなっている。
上記の特許文献1には、高い炭素含有量の鋼種を鋳造する際の割れ感受性については言及があるものの、これに加えて高いりん含有量の鋼種を鋳造する際の上記の問題については一切、記載も示唆も為されていない。また、特許文献2には、溶鋼の成分により内部品質を改質しようとするものであり、CeやLaなどの特殊な元素を必須成分とするものであって本発明とは視点が大きく異なる。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、炭素含有量C[wt%]が0.30〜0.60であり、りん含有量P[wt%]が0.035〜0.100である鋼の連続鋳造方法において、この鋼の連続鋳造における内部割れの発生を十分に低減することにある。本発明の他の目的は、この鋼の連続鋳造における表面疵の発生を十分に低減することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、上記の内部割れについて、本発明の発明者は、以下の知見を得た。即ち、上記成分系の鋼の鋳造においては、鋳型内での溶鋼流動、および鋳型内バルジングに対し注意を払う必要があり、特に鋳造速度・M-EMS強度・鋳型内テーパーを重視して製造を行う必要がある。鋳造速度が大きいと、鋳型内で成長する凝固シェル厚みが薄くなり、鋳造時に内部割れを発生させる要因となる。またM-EMSの攪拌において、回転流が直接鋳型に当たる部位においては、更に凝固シェル厚みが薄くなり、部分的に内部割れを発生させる起点となる。その上、鋳型内テーパーが大きいと凝固時に鋳型下部(「鋳型下部」とは、具体的には鋳型における長さ方向のちょうど中央より下〜鋳型の下端部までを意味する。)におけるバルジングが大きくなり、内部割れの成長を促す。従って、高炭素かつ高りん鋼を製造する際には、内部割れを発生させないためのM-EMS強度かつ凝固シェル厚みを確保させるための鋳造速度条件が必要となる。
また、鋳片の表面割れの発生は鋳造での鋳造速度条件が影響を及ぼす。内部割れの発生を防止するべく鋳造速度を低下させたとしても、2次冷却帯およびその下部を通過する際の温度が目的とする鋼の脆下温度域まで低下し、表面に割れを発生させる要因となる。
従って比較的割れ感受性の高い鋼において、内部割れおよび表面割れのいずれも良好な鋼を作るに当たっては、M-EMS強度、鋳造速度条件、鋳型内テーパー条件、及び2次冷却比水量を適正な範囲に規定することが肝要となる。
以下、上述した課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第一の観点によれば、炭素含有量C[wt%]が0.30〜0.60であり、りん含有量P[wt%]が0.035〜0.100である鋼の連続鋳造は、以下のような方法で、行われる。即ち、鋳造速度Vc[m/min]を0.45〜0.75とし、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]を140〜300とし、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.24〜0.54とし、広面側の内壁面又は狭面側の内壁面のうち少なくとも何れか一方に対して適用する鋳型内テーパTp[%/m]を0.47〜1.20とする。以上の方法によれば、上記鋼の連続鋳造における内部割れの発生を十分に低減できる。
上記の鋼の連続鋳造は、更に以下のような方法で行われるのが好ましい。即ち、鋳造速度Vc[m/min]を0.65〜0.75とし、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.24〜0.50とする。以上の方法によれば、上記鋼の連続鋳造における表面疵の発生を十分に低減できる。
以下、本発明の第一実施形態を説明する。
本実施形態において連続鋳造の対象鋼種は、以下の通りとする。
・炭素含有量C[wt%]:0.30〜0.60
・りん含有量P[wt%]:0.035〜0.100
・添加成分(Si(シリコン)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)など)の含有量については特に限定しない。
・その他、不可避の不純物成分(硫黄など)を含む。
上記対象鋼種の連続鋳造に供される連続鋳造機について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る連続鋳造機の概略図である。
本図に示されるように、本実施形態に係る連続鋳造機100は、主として、溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するのに供される鋳型1と、該鋳型1の下方に形成される所定の鋳造経路Qを形成する複数のロール2・2・・・と、該鋳型1の上方に配され、この鋳型1へ注湯される溶鋼を一時的に保持する所謂バッファーとしてのタンディッシュ(図略)と、を含んで構成される。
図2を参照されたい。図2は、図1の2-2線矢視断面図である。本図において、対向する一対の内壁面1a・1aの上端における離隔距離を符号a[mm]で観念して「上端における鋳型幅」と称する。同様に、下端における離隔距離を符号b[mm]で観念して「下端における鋳型幅」と称し、この内壁面の鉛直方向における長さを符号c[mm]で観念して「鋳型高さ」と称する。上端又は下端における鋳型幅は、狭面側のものと広面側のものとに区別され、本図において符号a又はbで示される各鋳型幅は、狭面側のものに該当する。本実施形態において上記の鋳型1のサイズは、下記の通りとする。
・上端における鋳型幅a(ただし、広面側のもの。)[mm]:300〜500
・上端における鋳型幅a(ただし、狭面側のもの。)[mm]:200〜400
・鋳型高さc[mm]:850〜1250
また、本図に示されるように、対向する一対の内壁面1a・1aには、凝固シェルの凝固収縮及び熱収縮に追従するよう下方へ向かって窄まるテーパが適宜に付される。ここで、鋳型内テーパTp[%/m]を下記式(1)により定義する。なお、この鋳型内テーパTp[%/m]は、狭面側の内壁面1a・1aに対して適用されるもの(本図に表れる。)と、広面側の内壁面に対して適用されるもの(本図には表れない。)と、が考えられる。本実施形態では、狭面側の内壁面1a・1a又は広面側の内壁面のうち少なくとも何れか一方に対して、0.47〜1.20の範囲内の鋳型内テーパTp[%/m]を適用する。
Tp=(a-b)/b/c・・・(1)
鋳造速度Vc[m/min]は、0.45〜0.75とする。
鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]は、140〜300とする。ここで、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]を詳細に説明する。即ち、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]は、鋳型1内に埋設された電磁コイルの作用により鋳型1内に注湯された溶鋼が攪拌される程度を示す一つの指標であり、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]は、以下のように測定するものとする。
・測定地点:鋳型1の広面側の内壁面の幅方向における中央であり、鉛直方向において上記電磁コイルの中心と同じ高さであり、鋳型1の広面側の内壁面から15[mm]だけ離れた地点とする。
・測定機器:適宜のガウスメータによる。
そして、上記測定地点において上記測定機器により測定された複数の測定値(ただし、単位は[Gauss]である。)を平均し、その平均により求められた値を、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]とする。なお、鋳型内溶鋼に作用される磁場の周波数[Hz](ただし、「磁場の周波数」とは、鋳型内の電磁攪拌装置内のコイルに導通される電流が1秒の間に向きを変える度数を意味する。)は、1〜5が好ましい。
図1に示される鋳造経路Qは、経路の上流側から下流側へ向かって順に、鋳型1の下端から鉛直下方へ延びる垂直鋳造経路部Q1と、円弧状に湾曲する円弧鋳造経路部Q2と、矯正鋳造経路部Q3と、水平方向の延びる水平鋳造経路部Q4と、から成り、所謂垂直逐次曲げ型に該当する。矯正鋳造経路部Q3は、円弧鋳造経路部Q2と、水平鋳造経路部Q4と、を滑らかに接続するために介設される。鋳型1の下端から下流側であって少なくとも矯正鋳造経路部Q3に至る以前においては、鋳型1内で形成された凝固シェルに対して冷却水を噴射するスプレー4・4・・・が該凝固シェルを挟むように対を成し、鋳造経路Qに沿って複数で配される。このスプレー4・4・・・のうち最も上流側に配されるスプレー4を起点とし、同じく最も下流側に配されるスプレー4に至るまでの鋳造経路として観念される二次冷却帯において鋳片1[kg]あたりに噴射される冷却水の水量としての二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]は、0.24〜0.54とする。
続いて、本発明の第二実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
鋳造速度Vc[m/min]は、0.65〜0.75とし、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]は、0.24〜0.50とする。対象鋼種やその他の鋳造条件は、上記第一実施形態と同じである。
以下、上述の第一実施形態に係る鋼の連続鋳造の技術的効果を確認するための試験を、上記の第二実施形態に係るそれと併せて、説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
先ず、本発明の発明者が実施した技術試験を簡単に紹介すると共に、各技術試験において共通する試験条件を説明する。
<各技術試験の簡単な紹介>
即ち、第一確認試験(表2、図3に対応する。)は、鋳造速度Vc[m/min]に関する。第二確認試験(表3、図4に対応する。)は、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]に関する。第三確認試験(表4、図5に対応する。)は、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]に関する。第四確認試験(表5、図6に対応する。)は、鋳型内テーパTp[%/m]に関する。
<各技術試験に共通する試験条件>
・鋳造対象としての鋼種は、下記表1に示す6通り検証する。
・上端における鋳型幅a(ただし、広面側のもの。図2参照。)[mm]:430
・上端における鋳型幅a(ただし、狭面側のもの。図2参照。)[mm]:300
・鋳型高さc[mm](図2参照。):1200
・以降、鋳型内テーパTp[%/m]は、狭面側の内壁面1a・1aに対して適用される鋳型内テーパTp[%/m]を指すものとする。
・溶鋼過熱度[℃]は、15〜50とする。
・垂直鋳造経路部Q1[m]は、3.2とする。
・円弧鋳造経路部Q2[m]の円弧半径は、10とする。
・二次冷却帯の長さ[m]は、6.9とする。
・二次冷却帯の上流側端のメニスカス距離M[m]は、1.3とする。なお、「メニスカス距離M[m]」とは、鋳型内の溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路Qに沿って観念する距離をいう。
・二次冷却帯の下流側端のメニスカス距離M[m]は、7.2とする。
・鋳型内溶鋼に作用される磁場の周波数[Hz]は、2とする。
Figure 0004926743
<第一確認試験>
本試験は、鋳造速度Vc[m/min]と、内部割れ長さ[mm]及び表面疵個数[個/本]と、の間の関係に着目するものである。以下、本試験の試験条件及び試験方法を説明し、その試験結果を図3に示す。
(試験条件)
本試験において、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]及び鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]、鋳型内テーパTp[%/m]は夫々同一値に設定した。その他の条件については、下記表2を参照されたい。
Figure 0004926743
(試験方法)
上記表1に記載の鋼種のうち何れかの鋼種に成分調整が為された取鍋(取鍋内の溶鋼:90[ton])1チャージ分につき図3において1プロットを得た。内部割れ長さ[mm]及び表面疵個数[個/本]は以下のように測定するものとする。併せて、これら内部割れ長さ[mm]及び表面疵個数[個/本]の評価基準を説明する。
内部割れ長さ[mm]の測定方法は、以下の通りである。即ち、鋳造後の鋳片(断面430×300[mm])を鋳造方向に対して垂直に切断し、該切断面に対してサルファープリントを介して観測し得るすべての割れの長さを測定し、その総和を「内部割れ長さ[mm]」とした。内部割れ長さ[mm]は、80以下を良好と評価する。その理由は、内部割れ長さ[mm]が80以下であれば、後の圧延工程において圧着され、内部不良が改善されるからである。
表面疵個数[個/本]の測定方法は、以下の通りである。即ち、鋳造後の鋳片(断面430×300[mm])を鋼片(断面155×155[mm])に圧延後、一本の鋼片(長さ10[m])の表面を観察し、視認し得る疵長さ10[mm]以上の縦割(ただし、圧延により初めて発生した疵と判断できるものは除く。)の個数を計数する。表面疵個数[個/本]は、40以下を良好と評価する。その理由は、表面疵個数[個/本]が40以下であれば、手入れ工程(通常、チッピングまたはグラインダーなどによる。)において製品として救済できるからである。
(考察)
(i)図3によれば、鋳造速度Vc[m/min]を0.75以下とすると、内部割れ長さ[mm]についての評価を良好とできることが判る(表2において評価の欄に「○」又は「◎」が記載された試験を参照。)。これは、高炭素・高りんの鋼の脆性が悪化する溶鋼においても、成長したシェル厚みが内部割れを発生させない強度にまで到達したからだと考えられるからである。一方、生産性の観点から鋳造速度Vc[m/min]は0.45以上とすると良い。以上の考察から、内部割れ長さ[mm]に着目すれば、鋳造速度Vc[m/min]は0.45〜0.75とすることが望ましいことが判る。更に、(ii)(i)に加えて表面疵個数[個/本]にも着目すれば、鋳造速度Vc[m/min]は0.65〜0.75とすることが望ましいことが判る(表2において評価の欄に「◎」が記載された試験を参照。)。鋳造速度Vc[m/min]を0.65以上とすると表面疵個数[個/本]についての評価を良好とできるのは、疵個数が40を下回り、手入れにて救済可能な確率が大幅に向上すると考えられるからである。更には、鋳造速度Vc[m/min]を0.65以上として表面疵個数[個/本]が40を下回った理由としては、連鋳機において歪みを大きく発生させる部位(例えば矯正部)を通過する際の鋳片表面温度がその鋼の脆化温度域より高い温度であったためと考えられる。
<第二確認試験>
本試験は、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]と、内部割れ長さ[mm]及び表面疵個数[個/本]と、の間の関係に着目するものである。以下、本試験の試験条件及び試験方法を説明し、その試験結果を図4に示す。
(試験条件)
本試験において、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]、鋳型内テーパTp[%/m]は夫々同一値に設定した。その他の条件については、下記表3を参照されたい。
Figure 0004926743
(試験方法)
上記の第一確認試験と同様である。
(考察)
(i)図4によれば、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.24以上とすると、内部割れ長さ[mm]についての評価を良好とできることが判る(表3において評価の欄に「○」又は「◎」が記載された試験を参照。)。これは、二次冷却帯比水量の増加により冷却能が増し、凝固シェル厚みの成長が適正となるだと考えられるからである。一方、鋼の脆化温度域まで表面温度を低下させないようにして表面疵の発生を防止する観点からは二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]は0.54以下とすると良い。以上の考察から、内部割れ長さ[mm]及び表面疵個数[個/本]の両方に着目すれば、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]は0.24〜0.54とすることが望ましいことが判る。更に、(ii)(i)に加えて表面疵個数[個/本]にも着目すれば、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]は0.24〜0.50とすることが望ましいことが判る(表3において評価の欄に「◎」が記載された試験を参照。)。二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.50以下とすると表面疵個数[個/本]についての評価を良好とできるのは、先述同様、疵個数が40を下回り、手入れにて救済できる確率が大幅に向上すると考えられるからである。更には、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.50以下として、表面疵個数[個/本]が40を下回った理由としては、連鋳機において歪みを大きく発生させる部位(例えば矯正部)を通過する際の鋳片表面温度がその鋼の脆化温度域より高い温度であったためと考えられる。
<第三確認試験>
本試験は、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]と、内部割れ長さ[mm]及び中心偏析度と、の間の関係に着目するものである。以下、本試験の試験条件及び試験方法を説明し、その試験結果を図5に示す。
(試験条件)
本試験において、鋳造速度Vc[m/min]及び二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]、鋳型内テーパTp[%/m]は夫々同一値に設定した。その他の条件については、下記表4を参照されたい。
Figure 0004926743
(試験方法)
上記表1に記載の鋼種のうち何れかの鋼種に成分調整が為された取鍋(取鍋内の溶鋼:90[ton])1チャージ分につき図5において1プロットを得た。中心偏析度は以下のように測定するものとする。併せて、中心偏析度の評価基準を説明する。
中心偏析度の測定方法は、以下の通りとする。即ち、(1)鋳造後の鋳片(断面430×300[mm])から鋳造方向において500[mm]分だけ鋳片の部分を抜き出し、(2)前記鋳片の部分を、その鋳片幅方向において半分とするように狭面と平行に切断して小鋳片を得、(3)上記切断により得られた小鋳片を穿孔して切粉試料を採取する(即ち、上記切断により得られた小鋳片を、φ5mmのドリル刃を用いて、鋳片厚み方向中央の線上で、鋳造方向に沿って所定間隔(12[mm])で、該断面に対して垂直に所定深さ(10[mm])で、穿孔し、合計38箇所の切粉試料を採取する。)。そして、(4)上記穿孔で得られた38箇所分の切粉試料の夫々を、所定の成分分析方法(例えば、燃焼赤外線吸収法など)により成分分析し、(5)成分分析の対象たる鋳片(凝固シェル)を鋳型内で形成している時に前述したタンディッシュから予め採取しておいた溶鋼試料を、(4)と同様、所定の成分分析方法により成分分析する。なお、上記の(4)及び(5)の成分分析においては共に、試料の炭素含有量C[wt%]を測定する。(6)一の小鋳片から採取された前記複数箇所分の切粉試料のうち最も炭素含有量C[wt%]の高い切粉試料の該炭素含有量C[wt%]をCmax[wt%]として記録し、(7)(6)で記録されたCmax[wt%]を、(5)で得られた炭素含有量C[wt%]としてのCo[wt%]で除して得られる比Cmax/Coを算出して記録する。中心偏析度は、1.20以下を良好と評価する。その理由は、中心偏析度が1.20以下であれば、炭素濃化を起点とした加工時の引張り時に発生する折損や切断を防止できる保証のレベルだと考えられるからである。
(考察)
(i)図5によれば、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]を300以下とすると、内部割れ長さ[mm]についての評価を良好とできることが判る。これは、鋳型内において凝固シェル内の溶鋼に過度な流速が付与されることなく該凝固シェルが十分に成長できたので、鋳型から下方へ抜けた直後のバルジングの程度が抑えられ、もって、バルジングに起因する内部割れの発生を防げたからだと考えられる。一方、中心偏析度の観点から鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]は140以上とすると良い。これは、凝固シェル内の溶鋼に対する攪拌の程度が十分に確保されることで、軸芯部における濃化溶鋼による偏析が抑制されたからだと考えられる。以上の考察から、内部割れ長さ[mm]及び中心偏析度の双方に着目すれば、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]は140〜300とすることが望ましいことが判る(表4において評価の欄に「◎」が記載された試験を参照。)。
<第四確認試験>
本試験は、鋳型内テーパTp[%/m]と、内部割れ長さ[mm]と、の間の関係に着目するものである。以下、本試験の試験条件及び試験方法を説明し、その試験結果を図6に示す。
(試験条件)
本試験において、鋳造速度Vc[m/min]及び二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]は夫々同一値に設定した。その他の条件については、下記表5を参照されたい。
Figure 0004926743
(試験方法)
上記の第一確認試験と同様である。なお、鋳造速度Vc[m/min]を上述した鋳造速度Vc[m/min]の範囲の上限値である0.75としているのは、鋳造速度Vc[m/min]の全範囲における包括的に調査とするために、敢えて内部割れが発生し易い条件を選択したことによる。即ち、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]及び鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]を同一とし鋳造速度Vc[m/min]を0.75よりも小さい値へ変更した場合、内部割れ長さ[mm]は、鋳型内テーパTp[%/m]を如何に設定しようとも、一様に短くなるものと推測される。なぜなら、内部割れ長さを決定する因子としての凝固シェル厚みが、鋳造速度に反比例しており、鋳造速度が小さくなるにつれシェル厚みが厚くなってゆくと考えられるからである。
(考察)
(i)図6によれば、鋳型内テーパTp[%/m]を0.47〜1.20とすると、内部割れ長さ[mm]についての評価を良好とできることが判る(表5において評価の欄に「◎」が記載された試験を参照。)。鋳型内テーパTp[%/m]を0.47以上とすると内部割れ長さ[mm]についての評価を良好とできたのは、鋳型1の内壁面1a・1aが凝固シェルの凝固収縮及び熱収縮に適切に追従し、もって、鋳型1内における凝固シェルのバルジングが抑制されたからだと考えられる。一方、鋳型内テーパTp[%/m]を1.20以下とすると内部割れ長さ[mm]についての評価を良好とできたのは、内部割れの他の発生原因として考えられる、凝固シェルに対する鋳型1の内壁面1a・1aの物理的な押し込みが発生しない、即ち、鋳型1の内壁面1a・1aの狭窄の程度が凝固シェルの凝固収縮及び熱収縮を超えることがないからだと考えられる。以上の考察から、内部割れ長さ[mm]に着目すれば、鋳型内テーパTp[%/m]は0.47〜1.20とすることが望ましいことが判る。
以上説明したように上記第一実施形態において、炭素含有量C[wt%]が0.30〜0.60であり、りん含有量P[wt%]が0.035〜0.100である鋼の連続鋳造は、以下のような方法で、行われる。即ち、鋳造速度Vc[m/min]を0.45〜0.75とし、鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]を140〜300とし、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.24〜0.54とし、狭面側の内壁面1a・1aに対して適用する鋳型内テーパTp[%/m]を0.47〜1.20とする。以上の方法によれば、上記鋼の連続鋳造における内部割れの発生を十分に低減できる。更には、中心偏析も十分に抑制できる。
上記の鋼の連続鋳造は、更に、以下のような方法で行われる。即ち、鋳造速度Vc[m/min]を0.65〜0.75とし、二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.24〜0.50とする。以上の方法によれば、上記鋼の連続鋳造における表面疵の発生を十分に低減できる。
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記各実施形態は更に以下のように変更できる。
◆ 即ち、例えば、上記第一実施形態及び第二実施形態においては鋳型1の狭面側の内壁面1a・1aに対して所定の鋳型内テーパTp[%/m]を適用することとしたが、これに加えて又は代えて、鋳型1の広面側の内壁面に対して同様の鋳型内テーパTp[%/m]を適用することとしてもよい。
<資料>
さて、上述した溶鋼過熱度[℃]の測定基準を詳説する。即ち、『測定する時刻』は、「タンディッシュ内の溶鋼の流動が定常状態に至った時刻、より詳しくは、転炉から該タンディッシュへ溶鋼を搬送するための取鍋内に収容されている溶鋼の1/4〜1/3程度が該タンディッシュへ注湯された時刻」とする。また、『測定する方法』は、以下第1及び第2の如くである。即ち、第1に、上記『測定する時刻』において、タンディッシュ内に保持されている(入れ替わっている、流出入している)溶鋼の温度を適宜の温度測定器を用いて測定する。(例)この温度測定器とは例えばその先端部に温度感知部を備える熱電対型のものが挙げられ、この場合、この温度感知部をタンディッシュ内に保持されている溶鋼の中へ深さ100mm以上浸漬させて該溶鋼の温度を測定することとする。なお、熱電対は測定対象の温度に応じてその出力電圧を昇降させる特性を有するのは周知の通りであるから、溶鋼の温度を測定することは、熱電対が出力する電圧を適宜の手段により読み取ることと換言できる。第2に、第1で測定された溶鋼の温度と、該溶鋼の溶鋼成分により唯一に決まる所謂凝固開始温度と、を比較する。そして上述した溶鋼過熱度[℃]は、前者から後者を除いた(引いた)残りとして求めることとする。
本発明の第一実施形態に係る連続鋳造機の概略図 図1の2-2線矢視断面図 第一確認試験の試験結果のグラフ 第二確認試験の試験結果のグラフ 第三確認試験の試験結果のグラフ 第四確認試験の試験結果のグラフ
符号の説明
1 鋳型
2 ロール
4 スプレー
Q 鋳造経路
100 連続鋳造機

Claims (2)

  1. 炭素含有量C[wt%]が0.30〜0.60であり、りん含有量P[wt%]が0.035〜0.100である鋼の連続鋳造方法において、
    鋳造速度Vc[m/min]を0.45〜0.75とし、
    鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[Gauss]を140〜300とし、
    二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.24〜0.54とし、
    広面側の内壁面又は狭面側の内壁面のうち少なくとも何れか一方に対して適用する鋳型内テーパTp[%/m]を0.47〜1.20とする、
    ことを特徴とする鋼の連続鋳造方法
  2. 鋳造速度Vc[m/min]を0.65〜0.75とし、
    二次冷却帯比水量Wt[L/kgSteel]を0.24〜0.50とする、
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法
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