JP6111892B2 - 鋳片の連続鋳造方法および連続鋳造鋳片 - Google Patents

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本発明は、凝固組織および析出物が微細な鋳片の連続鋳造方法に関し、特に、極厚鋼板に用いるために、中心偏析の生成抑制を図った鋳片の連続鋳造方法、およびその連続鋳造鋳片に関する。
近年、構造物の大型化や高強度化への要求に応えるため、構造物の素材となる極厚鋼板に対する品質の向上が、コストの低減とともに課題となっている。
従来、極厚鋼板は、インゴット鋳造により製造された大型鋼塊を分塊圧延することで分塊スラブを作製し、これを圧延することで製造されている。しかし、この分塊スラブを用いる場合には、大型鋼塊の上部に存在する押し湯部を除去したり、底部に生成した偏析や引け巣を除去したり必要があるため、歩留まりが低いという問題がある。また、鋼板を製造するには分塊圧延工程が必要であり、製造コストが大幅に増大するとともに製造期間も長くなり、生産効率の低下を招く。
これらの問題を解決するため、近年では、極厚鋼板用の素材として連続鋳造法で製造された鋳片が適用されるようになり、歩留まりの向上および生産効率の向上が図られてきている。
しかし、その場合、連続鋳造鋳片も極厚化するため、鋳片内部、特に中心部における凝固組織が粗大化する。これにともなって、ミクロ偏析およびマクロ偏析、特に鋳片の中心部に中心偏析が生成し、品質向上を阻害するという新たな問題が顕在化する。
そのため、連続鋳造鋳片において中心偏析の生成を抑制する技術について、従来から多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、鋳片の厚さ方向中心部の固相率が0.4以下の時点から鋳片の軽圧下を開始して、鋳片の厚さ方向中心部が凝固完了するまで軽圧下を継続し、且つ、軽圧下しつつ鋳片の厚さ方向中心部が凝固完了するまで鋳片表面を強冷却して、この冷却による鋳片の熱収縮速度を所定の範囲に制御する連続鋳造方法が開示されている。この連続鋳造方法では、熱収縮速度と軽圧下速度の和も所定の範囲に抑制することで、中心偏析低減効果を一層発揮させることができるとされている。
また、特許文献2には、連続鋳造用鋳型より引き抜いた鋳片ストランドの引き抜き移動中に、それを両側に挟む金敷にて該鋳片ストランドの凝固完了点近傍に鍛圧加工を施すに当たり、鋳片ストランドの鋳造速度もしくは冷却速度を調整して鍛圧加工点におけるストランドの固相率を変化させる連続鋳造方法が開示されている。この連続鋳造方法では、鋳片圧下点における固相率の許容範囲は0.5〜0.95が好適であり、鋳造時間の経過とともに固相率を徐々に高めていくか、または低くしていくような手法が有効であるとされている。
しかしながら、特許文献1および2に開示された連続鋳造方法は、いずれも鋳片の未凝固領域が残存する部分を圧下する方法である。鋳片の未凝固領域が残存する部分を圧下すると未凝固領域の溶質濃度が変化し、それとともに固相率も変化するため、最適とされる固相率に制御して圧下することは操業上難しい。
特許文献3には、動的再結晶に着目し、連続鋳造鋳片を中心部まで凝固させた後、鋳片の厚さ方向中心部の温度と鋳片の表面温度との差を400℃以上とし、歪速度を1×10-3-1〜1×10-2-1として圧下することにより、微細組織を有し機械的性質に優れた連続鋳造鋳片を製造する方法が開示されている。この連続鋳造方法によれば、合金元素を添加することなく凝固2次組織が微細化した連続鋳造鋳片を安価に製造することができるとされている。この連続鋳造鋳片を用いることにより、鋳片から極厚鋼板等を低圧下比で製造する際の特別な設備や複雑な製造工程は不要となる。また、この連続鋳造鋳片を熱間圧延加工することにより、厚さ方向中心部の材質特性に優れた鋼材を得ることが可能である。
しかしながら、上述のとおり、極厚鋼板を製造するための連続鋳造鋳片は極厚であることから、鋳片の中心近傍の冷却速度は小さく、凝固組織が粗大となるため、凝固組織の形成に伴って生成するミクロ偏析も著しくなる。さらに、ミクロ偏析に起因してマクロ偏析が生じ、鋳片の厚さ方向での溶質濃度が変化し、中心偏析となる。中心偏析が生成した場合、所望の機械的特性に優れた鋼材を製造することは困難である。
特開2001−138021号公報 特開平5−154633号公報 特開2004−237291号公報 特開2008−290103号公報
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、中心偏析の生成を抑制することが可能で極厚鋼板の製造に適した鋳片の連続鋳造方法およびこの連続鋳造方法による鋳片を提供することを目的とする。
大型構造物の素材となる極厚鋼板の機械的特性を確保するには、組成が鋼板内で均一であることが前提となる。連続鋳造法で製造され、極厚鋼板用の素材となる鋳片には、厚さ方向の中心近傍で粗大なデンドライトを含む凝固組織が形成されており、このデンドライトの凝固に伴ってミクロ偏析が生じる。そのため、デンドライトおよびデンドライトの間隙において、デンドライトの成長方向に溶質元素の濃度が大きく変化する。
また、ミクロ偏析は、中心偏析および粗大な析出物が発生する原因となる。これは、ミクロ偏析が元になって、鋳片の厚さ方向中心部においてマクロ偏析が生じ、このマクロ偏析が顕在化して中心偏析が生成し、これにともない粗大な析出物が生成することによる。
通常の操業範囲内の熱処理では、このようにデンドライトおよびデンドライトの間隙において、デンドライトの成長方向に濃度が大きく変化した溶質元素を拡散させ、組成を均一とすることが困難である。そのため、この鋳片を熱間圧延しても、残存したデンドライトを含む凝固組織が単に圧延されるだけで、デンドライトの間隙には濃化した溶質元素が残存したままとなる。
また、鋳片の凝固組織の大きさは冷却速度に依存するため、鋼の成分が同一である場合には、冷却速度を高めればデンドライトを小さくすることができる。しかし、極厚鋼板用の鋳片のように鋳片の厚さが厚くなると、凝固シェル自体が熱伝導律速となり、鋳片内部の冷却速度を高めることができない。
このため、冷却速度を高めて製造した極厚鋼板用の鋳片では、鋳片表層のデンドライトは小さいものの、鋳片の厚さ方向の中心に向かってデンドライトが大きくなり、鋳片の厚さ方向の中心近傍ではデンドライトの1次アーム間隔が数mmに達する場合もある。このように、鋳片の表層部と中心近傍とではデンドライトの大きさの差が著しく、熱処理および熱間圧延工程を経てもこのデンドライトの大きさの差の影響による溶質元素の濃度の不均一さを解消することができない。
極厚鋼板用の鋳片の場合、このようなデンドライトの大きさの差が特に顕著であり、この鋳片から得られた極厚鋼板は、部位によって機械的特性が異なり、不均一な状態となる。極厚鋼板は、単にそのまま鋼板として使用される場合は少なく、大入熱溶接によって構造物を構築したり、切削加工によって鋼板の厚さ方向のいずれかの部位が表面に露出したりする。
前述のように、特許文献3では、鋼板の厚さ方向中心部の凝固2次組織を微細化させ、機械的特性を向上させる技術が開示されている。しかし、同文献では、凝固組織であるデンドライトや析出物については考慮されておらず、デンドライトの間隙で溶質元素が濃化し、溶質元素の濃度が低いデンドライトと濃度が高い間隙からなる凝固組織が形成されることについては検討されていない。
つまり、従来の技術では、凝固組織は組成が均一であることが前提とされており、デンドライトを含む凝固組織のミクロ偏析や析出物を伴う場合については検討されていない。
そこで、鋳片の凝固組織であるデンドライトの間隙に生じるミクロ偏析およびマクロ偏析と熱処理との関連について検討した結果、以下の2点が明らかとなった。
・ミクロ偏析およびマクロ偏析の大きさは隣接するデンドライトの間隔の大きさ(1次アーム間隔や2次アーム間隔の大きさ)に依存する。
・隣接するデンドライトの間隔が狭いほど熱処理を行う際の溶質元素の拡散が進行し易い。
溶質元素の拡散が進行し易いと、連続鋳造した鋳片における溶質元素の濃度が均一化しやすく、最終製品の機械的特性の向上が図れる。
さらに、本発明者らは、後述する基礎実験等の検討を行い、下記(a)〜(d)の知見を得た。
(a)本発明者らは、厚さ方向の組成が均一ではない鋳片に対して、熱処理および圧延を施して、厚さ方向の凝固組織を微細化することにより、厚さ方向の組成が均一であり、中心偏析のない鋼板とすることができることを知見した。鋼板、特に極厚鋼板の機械的特性を向上させるには、鋼板の厚さ方向の組成を均一にする必要がある。厚さ方向の組成は、連続鋳造鋳片において均一でない場合でも、最終製品である鋼板において均一であれば鋼板の機械的特性を向上させることができる。従来の文献には、連続鋳造鋳片の厚さ方向の組成が均一ではない場合に加熱工程および圧延工程によって鋼板の厚さ方向の組成を均一化させるという概念は見当たらない。
(b)本発明者らは、連続鋳造鋳片の凝固組織を微細化するには、凝固が完了した後で鋳片の圧下を行うことが有効であることを知見した。特に、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に圧下を行うと、鋳片の厚さ方向中心部において圧下量が大きくなり、凝固組織の変形量が大きくなるため、凝固組織の微細化により有効であることを知見した。
(c)本発明者らは、凝固過程における析出物は、凝固組織であるデンドライトの間隙で生成する場合が多く、また、粗大化しやすいことを知見した。これはデンドライトの間隙において溶質元素が濃化し、析出物の溶解度積が上限を超えるためである。このようにデンドライトの間隙で生成する析出物は、溶質濃度の高い領域で生成することから、デンドライトの間隙の広さで析出物自体の大きさが決まる。逆に、析出物を微細化するには、デンドライトの間隙を狭くすればよい。デンドライトの間隙を狭くするには、鋳片を圧下すればよい。圧下によりデンドライトの間隙を強制的に狭くすることができる。鋳片の圧下は、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に行うのが、デンドライトの間隙を狭くするのにより効果的である。
(d)本発明者らは、凝固組織であるデンドライトを微細化するとともに析出物を微細化するには、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後における圧下の他に、界面活性元素(Bi、SnおよびTe)を溶鋼中に添加して、鋳片を連続鋳造することが効果的であることを知見した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、下記の連続鋳造方法にある。
質量%で、C:0.01%〜0.20%、Si:0.02%〜0.50%、Mn:0.6%〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.002〜0.030%、Al:0.0005〜0.0500%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.002〜0.010%およびO:0.0001〜0.0150%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋳片の連続鋳造方法であって、圧下を行うことなく鋳造した場合の鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λを基準とし、鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λと前記λの比の値λ/λが0.1〜0.となるように、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に、圧下直前の鋳片の厚さを圧下直後の鋳片の厚さで割った値である圧下比を1.41以上2.00以下とする圧下を行うことを特徴とする鋳片の連続鋳造方法。
本発明の連続鋳造方法では、鋳片は、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.05〜1.50%、Ni:0.05〜5.00%、Cr:0.02〜1.00%、Mo:0.02〜1.00%、Nb:0.005〜0.050%、V:0.005〜0.100%、およびB:0.0004〜0.0040%のうちの1種以上を含有してもよい。また、鋳片が、Feの一部に代えて、質量%で、Bi、SnおよびTeのうちの1種以上を合計で0.001〜0.0300%を含有することが好ましい。
また、圧下を行うことなく鋳造した場合の鋳片の厚さ方向中心における析出物の直径d0を基準とし、鋳片の厚さ方向中心における析出物の直径dと前記d0の比の値d/d0が0.1〜0.9となるように、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に圧下を行うことが好ましい。
デンドライトの大きさや形状を特徴付ける寸法として1次アーム間隔の他に2次アーム間隔がある。一般的には1次アーム間隔と2次アーム間隔の間には比例関係があることから、本発明で指標とする1次アーム間隔は、2次アーム間隔から算出することもできる。
また、本発明の要旨は、下記の連続鋳造鋳片にある。
質量%で、C:0.01%〜0.20%、Si:0.02%〜0.50%、Mn:0.6%〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.002〜0.030%、Al:0.0005〜0.0500%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.002〜0.010%およびO:0.0001〜0.0150%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる連続鋳造鋳片であって、
圧下を行うことなく鋳造した場合の鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λ を基準とし、鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λと前記λ の比の値λ/λ が0.1〜0.8であることを特徴とする連続鋳造鋳片。
この連続鋳造鋳片は、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.05〜1.50%、Ni:0.05〜5.00%、Cr:0.02〜1.00%、Mo:0.02〜1.00%、Nb:0.005〜0.050%、V:0.005〜0.100%、およびB:0.0004〜0.0040%のうちの1種以上を含んでもよい。
以下の説明では、鋼の成分組成についての「質量%」を、単に「%」と表記する。
本発明の連続鋳造方法は、鋳片の厚さによらず適用が可能であるとともに、鋳片の凝固が完了した直後に圧下を行うため、鋳片の未凝固領域の固相率の制御を行う必要がなく、容易に実施することができる。
また、本発明の連続鋳造鋳片は、凝固組織が微細かつ均一であり、析出物も微細であり、中心偏析の生成が抑制され、組成が均一であるため、機械的特性が良好であり、大型構造物に用いられる極厚鋼板用の素材として適する。この連続鋳造鋳片は、本発明の連続鋳造方法によって製造することができる。
本発明の連続鋳造方法は、C:0.01%〜0.20%、Si:0.02%〜0.50%、Mn:0.6%〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.002〜0.030%、Al:0.0005〜0.0500%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.002〜0.010%およびO:0.0001〜0.0150%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋳片の連続鋳造方法であって、圧下を行うことなく鋳造した場合の鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λを基準とし、鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λと前記λの比の値λ/λが0.1〜0.となるように、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に、圧下直前の鋳片の厚さを圧下直後の鋳片の厚さで割った値である圧下比を1.41以上2.00以下とする圧下を行うことを特徴とする。
1.基礎実験(1)
本発明者らは、既に、特許文献4において、鋼中に界面活性元素を添加することで、凝固組織であるデンドライト組織を微細化可能とする技術を開示している。この技術によれば、デンドライトの間隙に濃化した溶質元素の拡散が促進され、凝固後の組織の均一化が図れることがわかっている。界面活性元素としては、Bi、SnおよびTeが挙げられる。
しかし、本発明者らは、まず、界面活性元素を含有しない鋼の鋳片に熱処理および圧延を施して得られた鋼板の組織について調査を行った。
1−1.実験条件
連続鋳造機内での圧下を行わずに0.11%C−1.5%Mn鋼の連続鋳造を行い、得られた厚さ240mm、幅1200mmの連続鋳造鋳片から、長さ8000mmのスラブを複数採取した。
熱処理時間の影響および熱処理温度の影響を調査することを目的とし、各スラブについて異なる条件で熱処理を施した後、熱間圧延して鋼板とし、これを試片とした。また、熱処理を施さず、圧延もしなかった鋳造ままのスラブを基準試片とした。
熱処理時間の影響の調査は、加熱温度を1250℃、加熱時間を2時間、5時間、10時間および24時間とし、圧延により厚さを200mm、150mmおよび50mmとした鋼板を試片として用いた。
熱処理温度の影響の調査は、加熱温度を1100℃、1200℃および1250℃、加熱時間を10時間とし、圧延により厚さを150mmとした鋼板を試片として用いた。
各試片から、厚さ方向中心を含む、30mm角の組織観察用の試料を採取し観察面を研磨した。組織観察用試料の凝固組織の顕出にはピクリン酸飽和溶液を用いた。
組織観察後の試料を用いて、析出物の析出位置の確認を行った。観察の対象はMnS析出物とし、試料を再度研磨して鏡面とした面について、SEM−EDAX(エネルギー分散型X線分光走査型電子顕微鏡)を用いて倍率10000倍で観察した。
また、組織観察後の試料を用いて、溶質元素の偏析の測定を行った。測定の対象とした溶質元素はMnとした。鋳片の圧延方向のMn濃度の分析はEPMA(電子線マイクロアナライザ)を用い、ビーム径50μmで厚さ方向に線分析を行って、鋼板内のMn濃度分布を測定し、測定範囲でのMnの最大濃度を求めた。Mnの最大濃度の値を溶鋼段階の化学分析から求めたMnの初期含有率で割った値を偏析比とした。
1−2.実験結果
上記条件で作製した試片について、「析出物の径比d/d0」および「偏析比指数」を評価項目として評価を行い、その結果を表1および2に示した。表1には熱処理時間の影響の調査結果を示し、表2には熱処理温度の影響の調査結果を表2に示した。
Figure 0006111892
Figure 0006111892
「析出物の径比d/d0」および「偏析比指数」は、それぞれ「試片の厚さ方向中心における析出物の大きさd」および「偏析比」について、基準試片(鋳造ままのスラブ)の値に対する各試片(鋼板)での値の比の値である。
表1から、スラブの加熱時間が長いほど、また試片の厚さが薄いほど、d/d0および偏析比指数のいずれも小さいことがわかる。また、表2から、加熱温度が高いほど、d/d0および偏析比指数のいずれも小さいことがわかる。
SEM―EDAXによる観察の結果、凝固組織はデンドライト形状であること、MnSの析出は主にデンドライトの間隙において生じていたこと、およびデンドライトの間隙ではMnS析出物が粗大化しやすいことがわかった。また、EPMAによる分析の結果、鋳片および鋼板ともに、厚さ方向のMn濃度は均一ではなかった。
1−3.まとめ
以上の結果について検討したところ、鋳片の熱処理および熱間圧延だけでは、鋼板の厚さ方向の組成を十分に均一にすることはできないことがわかった。最終製品である鋼板の厚さ方向の組成を均一にし、かつ析出物を微細化するには、まず鋳片の段階で凝固組織を微細化する必要があると考えた。さらに、デンドライトの間隙に濃化した溶質元素を熱処理によって拡散させることで、鋼板の厚さ方向の組成をより均一にし、析出物をより微細化できると考えた。
2.基礎実験(2)
本発明者らは、基礎実験(1)の結果を踏まえ、基礎実験(1)に用いた鋳片に加えて、Biを含有する鋳片を用いた実験を行った。
2−1.実験条件
連続鋳造鋳片がBiを0.0010%含有する点以外は基礎実験(1)と同様の条件で、実験を行った。Biは、溶鋼に添加して含有させた。厚さ240mm、幅1200mmの連続鋳造鋳片から採取した、長さ8000mmのスラブに対して、1200℃、2時間の熱処理を施した後、厚さが50mmとなるように熱間圧延し、鋼板の試片(以下「Bi添加鋼板」という。)を作製した。
比較対象として、このBi添加鋼板と同様の熱処理条件および圧下条件で、基礎実験(1)において作製したBiを添加しない鋼板の試片(以下「Bi無添加鋼板」という。)を用いた。Bi無添加鋼板では、Biの含有率は測定限界以下であった。
2−2.実験結果
組織観察の結果、Bi無添加鋼板では厚さ方向中心部の凝固組織のデンドライトの1次アームの間隔が1100±120μmであったのに対して、Bi添加鋼板では540±30μmであった。このように、Bi添加鋼板は、Bi無添加鋼板と比べて凝固組織(デンドライト)が微細であった。また、EPMAによる分析の結果、Bi添加鋼板では、Bi無添加鋼板と比べて厚さ方向のMn濃度は均一化されていた。
2−3.まとめ
基礎実験(2)の結果から、界面活性元素の添加の有無に関わらず、連続鋳造鋳片を、熱処理後、熱間圧延することによって、デンドライトの1次アームの間隔を縮小し、凝固組織の微細化を実現でき、この熱間圧延により得られた鋼板の厚さ方向の溶質濃度を均一化する効果が得られることがわかった。また、界面活性元素を添加することにより、その効果が大きくなることがわかった。
本発明者らは、さらに検討を行い、連続鋳造鋳片の凝固組織を微細化するには、凝固が完了した後で鋳片の圧下を行うことが有効であることを知見した。特に、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に圧下を行うと、鋳片の厚さ方向中心部において圧下量が大きくなり、凝固組織の変形量が大きくなるため、凝固組織の微細化により有効であることを知見した。
これは、鋳片の表層から厚さ方向中心に向かって温度が高くなることによると考えられる。汎用の熱応力解析プログラムで解析および計算を行ったところ、鋳片の厚さ方向中心が凝固完了した直後の温度分布での圧下では、鋳片の厚さ方向中心部における圧下量が大きかったのに対して、鋳片の表層から厚さ方向中心に向かって温度勾配がなく、鋳片の断面全体の温度が均一である場合の圧下では、鋳片の厚さ方向中心部よりも、鋳片の表層近傍における圧下量が大きかったことから、この知見の裏付けが得られた。
本発明は、以上の基礎実験(1)、(2)および検討の結果から得られた上述の(a)〜(d)の知見に基づいて完成された。
3.鋳片の組成の範囲および限定理由
次に、本発明における鋳片の組成の限定理由について説明する。
3−1.必須元素
C:0.01%〜0.20%
Cは、鋼の強度向上に寄与する元素である。極厚鋼板を大型構造物用として十分な強度にするには、C含有率を0.01%以上とする必要がある。しかし、C含有率が0.20%を超えると、鋼の溶接性が不十分となる。これらのことから、本発明では、C含有率を0.01%〜0.20%とする。
Si:0.02%〜0.50%
Si含有率が、0.02%未満では鋼の強度を確保できない。また、Si含有率が0.50%を超えて高くなると溶接性が不十分となる。これらのことから、本発明では、Si含有率を0.02〜0.50%とする。
Mn:0.6〜3.0%
Mnは、鋼板の高強度化と靭性の確保のために有効な元素である。鋼板を高強度化し、靭性を確保するには、Mn含有率を0.6%以上とする必要がある。一方、Mn含有率が3.0%を超えて高くなると靭性が不十分となる。これらのことから、本発明では、Mn含有率を0.6〜3.0%とする。
P:0.02%以下
Pは、鋼板の延性、靭性および加工性を劣化させる元素である。特に、P含有率が0.02%を超えると、鋼板のこれらの特性が不十分となる。そのため、本発明では、P含有率を0.02%以下とする。
S:0.002〜0.030%
Sは、MnS等の介在物を形成して結晶粒内にフェライトの生成を促進する効果がある。しかし、S含有率が0.002%未満ではフェライトを生成する効果がほとんど無い。一方、S含有率が0.030%を超えて高くなると鋼板の延性が不十分となる。これらのことから、本発明では、S含有率を0.002〜0.030%とする。
Al:0.0005〜0.0500%
Alは、溶鋼からの脱酸をするための元素であり、Ti含有酸化物の生成を抑制するため含有率は低い方が望ましい。しかし、溶鋼中の酸素をある程度残して鋼の靭性を確保するために、Al含有率の下限は0.0005%とする。一方、Al含有率が0.0500%を超えて高くなると、Ti含有酸化物の生成量(任意元素として後述するMgを含有させた場合はMg含有酸化物の生成量も)が不十分となる。これらのことから、本発明では、Al含有率を0.0005〜0.0500%とする。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、主として炭窒化物を析出し、その析出強化作用により鋼の強度の向上に寄与する有効な元素である。しかし、Ti含有率が0.005%未満では、炭窒化物の析出強化作用により鋼の強度を向上させる効果が不十分である。一方、Ti含有率が0.030%を超えて高くなると、鋼中に粗大な析出物や介在物を形成して、鋼の靭性が不十分となる。これらのことから、本発明では、Ti含有率を0.005〜0.030%とする。
N:0.002〜0.010%
Nは、Tiと反応してTiNを析出させるために必要な元素である。しかし、N含有率が0.010%を超えて高くなると、鋼の靭性が低下する。そのため、N含有率の上限は余裕をもって0.010%とする。一方、工業的にNを完全に鋼から除去することは不可能である。そのため、実操業において低減可能な範囲を考慮し、N含有率の下限を0.002%とする。N含有率は、0.002〜0.008%とすることが好ましい。
O:0.0001〜0.0150%
Oは酸化物を生成させるために必要な元素である。O含有率が0.0001%未満では酸化物の個数が不足する。また、O含有率が0.0150%を超えて高くなると、酸化物が多くなり過ぎて鋼の靭性が不十分となる。これらのことから、本発明では、O含有率を0.0001〜0.0150%とする。
上述の成分以外の残部は、Feおよび不純物である。
3−2.任意元素
Feの一部に代えて、以下の任意元素を含有させてもよい。
3−2−1.界面活性元素
Bi、SnおよびTeのうち1種以上:合計で0.001%〜0.0300%
Bi、SnおよびTeは、いずれも鋼の凝固過程において界面活性元素として作用し、デンドライト状の凝固組織を微細化する効果を有する元素である。これらの元素のうちの1種を含有させるだけでもこの微細化効果を得ることができる。この微細化効果を十分に得るには、これらの元素の含有率を合計で0.0001%以上とする必要がある。また、これらの元素の含有率を合計で0.0011%以上とすると、圧下比1.41でのλ/λ を小さくする効果がある。一方、これらの元素の含有率が合計で0.0300%を超えると、これらの元素の粗大な酸化物が生成し、鋼の靱性が不十分となる。以上のことから、本発明では、Bi、SnおよびTeの1種以上の含有率を、合計で0.001%〜0.0300%とすることが好ましい。
3−2−2.その他の任意元素
Cu:0.05〜1.50%
Cuは、焼入れ性の向上および析出強化に有効な元素である。しかし、Cu含有率が0.05%未満では、焼入れ性向上効果および析出強化効果が得られない。一方、Cu含有率が1.50%を超えて高くなると、鋼の熱間加工性が不十分となる。これらの理由から、Cu含有率は0.05〜1.50%とすることが好ましい。
Ni:0.05〜5.00%
Niは、鋼の靭性を向上させる効果を有する元素である。しかし、Ni含有率が0.05%未満では、鋼の靭性を向上させる効果が得られない。一方、Ni含有率が5.00%を超えて高くなると、焼入れ性が過剰となり、鋼の靭性に悪影響を及ぼす。これらの理由から、Ni含有率は0.05〜5.00%とすることが好ましい。
Cr:0.02〜1.00%
Crは、焼入れ性の向上、および析出強化による鋼の強度の向上に有効な元素である。しかし、Cr含有率が0.02%未満では、焼入れ性向上効果および析出強化効果が得られない。一方、Cr含有率が1.00%を超えて高くなると、鋼の靭性および溶接性が劣化する傾向が認められる。これらの理由から、Cr含有率は0.02〜1.00%とすることが好ましい。
Mo:0.02〜1.00%
Moは、焼入れ性の向上および強度の向上に有効な元素である。しかし、Mo含有率が0.02%未満では、焼入れ性向上効果および強度向上効果が明確ではない。一方、Mo含有率が1.00%を超えて高くなると、鋼の靭性および延性の低下ならびに溶接性の劣化が顕在化する。これらの理由から、Mo含有率は0.02〜1.00%とすることが好ましい。
Nb:0.005〜0.050%
Nbは、炭化物や窒化物を生成して鋼の強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、Nb含有率が0.005%未満では、炭化物や窒化物の生成による鋼の強度向上効果が明確ではない。一方、Nb含有率が0.050%を超えて高くなると、鋼中に粗大な炭化物や窒化物を形成するため、逆に靭性が不十分となる。これらの理由から、Nb含有率は0.005〜0.050%とすることが好ましい。
V:0.005〜0.100%
Vは、炭化物や窒化物を生成して鋼の強度を向上させる効果を有する元素である。しかし、V含有率が0.005%未満では、炭化物や窒化物の生成による鋼の強度向上効果が明確ではない。一方、V含有率が0.100%を超えて高くなると、鋼の靭性が不十分となる。これらの理由から、V含有率は0.005〜0.100%とすることが好ましい。
B:0.0004〜0.0040%
Bは、焼入れ性を増大させるとともに、Nと反応してBNを生成することで固溶Nの含有率を低下させ、HAZ(熱影響部)の靭性を向上させる効果を有する元素である。しかし、B含有率が0.0004%未満では、焼入れ性の増大効果およびHAZの靭性向上効果が明確ではない。一方、B含有率が0.0040%を超えて高くなると、鋼中に粗大な硼化物が析出し、これにより鋼の靭性が不十分となる。これらの理由から、B含有率は0.0004〜0.0040%とすることが好ましい。
3−3.鋼組成の限定の効果
連続鋳造鋳片の鋼組成を上述の範囲とすることにより、連続鋳造鋳片の凝固組織を一定の範囲で微細化することができる。この組成の鋳片を、以下の方法で圧下して歪を加えることにより、さらに凝固組織を微細化することができる。
4.鋳片の連続鋳造方法(圧下方法)
上述の組成であり、通常の方法で、圧下を行うことなく連続鋳造した場合の鋳片の、厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔をλとする。本発明の鋳片の連続鋳造方法では、通常の方法で連続鋳造した上述の組成の鋳片について、このλを基準とし、鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λとλの比の値λ/λが0.1〜0.となるように、鋳片の厚さ方向中心が完全に凝固した直後に、圧下直前の鋳片の厚さを圧下直後の鋳片の厚さで割った値である圧下比を1.41以上2.00以下とする圧下を行う。圧下には圧下用ロール対を使用し、圧下の際の歪速度を2×10−3−1〜1×10−1−1の範囲とすることにより、λ/λを0.1〜0.9とすることができる。
このように連続鋳造鋳片の厚さ方向中心が完全に凝固した直後に圧下を行って歪を加えることにより、鋳片の凝固組織を微細化し、均一化することができる。また、この連続鋳造鋳片に熱間圧延を施して得られた鋼板は、鋼板の厚さ方向の組成が均一であるとともに、内部組織も均一であるため大型構造物用の素材として適している。
また、上述の組成であり、通常の方法で、圧下を行うことなく連続鋳造した場合の鋳片の厚さ方向中心における析出物の直径をd0とする。本発明の鋳片の連続鋳造方法では、通常の方法で連続鋳造した上述の組成の鋳片について、λ/λ0が0.1〜0.9となるとともに、このd0を基準とし、鋳片の厚さ方向中心における析出物の直径dとd0の比の値d/d0が0.1〜0.9となるように、鋳片の厚さ方向中心が完全に凝固した直後に圧下を行うことが好ましい。
本発明の鋳片の連続鋳造方法の効果を確認するため、以下に示す試験を実施して、その結果を評価した。
1.試験条件
1−1.鋳造条件
溶鋼成分:上述の必須元素(C、Si、Mn、P、S、Ti、N、AlおよびO)が後述する表3に記載された組成に調製された溶鋼を使用し、任意元素である界面活性元素(Bi、SnおよびTe)(以下、「添加金属」ともいう。)については下記の添加方法により添加して表3に示される組成に調製
溶鋼温度:1570℃(タンディッシュ内溶鋼温度)
鋳型サイズ:幅1200mm×厚さ240mm
鋳造速度:1.0m/分
添加金属の添加方法:添加金属を充填した直径3mmの鉄被ワイヤーを溶鋼に添加
添加金属の添加位置:レードル内
圧下用ロール径:直径800mm
鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後の圧下後の鋳片厚さ:120mm、140mm、170mm
鋳片の熱処理条件:1250℃、90分
本試験では、溶鋼成分および鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後の圧下の条件を変化させて連続鋳造を行い、連続鋳造鋳片を作製した。本発明例の試験において鋳造された溶鋼の成分組成および圧下条件を表3および表4中の試験番号1〜6の欄に示し、比較例の試験において鋳造された溶鋼の成分組成および圧下条件を同表中の試験番号7の欄に示した。表4に示す「圧下比」は、圧下直前の鋳片の厚さを圧下直後の鋳片の厚さで割った値である。比較例では、鋳片の連続鋳造鋳片の圧下を行わなかったため、鋳片の厚さは240mmであり、圧下比は1.00である。表3において「−」はその元素の含有率が測定限界以下であることを示し、以下、元素について含有率が測定限界以下であることを「含まない」ともいう。
Figure 0006111892
Figure 0006111892
試験番号1〜6は、いずれも上述の必須元素(試験番号1〜3では必須元素および界面活性元素)を全て本発明の規定範囲内で含有し、デンドライト1次アーム間隔の比の値(λ/λ0)が本発明の規定範囲内である、本発明例である。
試験番号7は、必須元素の含有率が本発明の規定範囲内であり、界面活性元素を含まず(すなわち界面活性元素の含有率が測定限界以下の0.00001%未満である。)、また、鋳片の圧下を行わなかった比較例である。
1−2.評価条件
本発明の連続鋳造方法の効果の評価は、鋳片の組織観察および偏析の測定によって行った。また、参考用の評価として、靭性の測定も行った
組織観察および偏析の測定用の試料は、上記条件で作製した連続鋳造鋳片の横断面の中心部から採取した。この試料を用いて、デンドライト1次アーム間隔、析出物の大きさ、および偏析の測定を行った。
試料は、観察面をエメリー・ペーパーおよび研磨剤(粒径が6μmおよび1μmのダイヤモンドの砥粒)を順に使用して研磨した。研磨面の組織の顕出に用いた溶液は、デンドライト組織を観察する場合にはピクリン酸飽和溶液とした。
デンドライト1次アーム間隔は、光学顕微鏡を用いて倍率10倍で試料を観察して測定し、観察視野(30mm×30mm)内での測定結果の平均値をその試料の値とした。
大きさの測定対象とする析出物はMnSとした。MnSの直径は、SEM−EDAXを用いて倍率10000倍で試料を観察して測定した。MnS粒子の形状が球ではない場合には、そのMnS粒子の最長の長さを直径とした。100個のMnSの直径を測定し、その平均値を各試験番号の鋳片の析出物の直径とした。
偏析の測定対象とする溶質元素はMnとした。EPMAを用いてビーム径を50μmとして線分析を行って試料のMn濃度分布を測定し、測定範囲でのMnの最大濃度を求めた。Mnの最大濃度の値を溶鋼段階の化学分析から求めたMnの初期含有率で割った値を偏析比とした。
靭性の測定用の試料は、上記条件で作製した連続鋳造鋳片に、1250℃で90分保持する熱処理を行った後、その表面から厚さ方向に1/2の位置から採取した。試料の形状は、縦10mm、横10mm、長さ100mmの角柱状とした。この試料を用いて再現HAZ試験およびシャルピー試験を行なった。
再現HAZ試験は、高周波誘導加熱装置を用いてArガス雰囲気中で行い、試料の長さ方向の中心の幅10mmの領域を加熱した。加熱は室温から1450℃まで30秒間で加熱し、60秒間保持した後、Heガスを用いて加熱部を急速冷却した。
再現HAZ試験を行った試験片の長さ方向の中心部にノッチを入れ、温度0℃の雰囲気中においてシャルピー試験を行い、吸収エネルギーを求めた。
2.試験結果
上記条件で作製した連続鋳造鋳片について、「デンドライト1次アーム間隔比λ/λ0」、「析出物の径比d/d0」および「偏析比指数」を評価項目として評価を行い、その結果を前記表4に示した。また、「靭性指数」を参考用の評価項目として評価を行い、併せて前記表4に示した。
「デンドライト1次アーム間隔比λ/λ0」、「析出物の径比d/d0」、「偏析比指数」および「靭性指数」は、それぞれ「連続鋳造鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λ」、「連続鋳造鋳片の厚さ方向中心における析出物の大きさd」、「偏析比」および「吸収エネルギー」について、比較例である試験番号7での値に対する各試験番号での値の比の値である。靭性指数は、大きいほど吸収エネルギーが高く靭性が良好であることを示す。
試験番号7では、界面活性元素の含有率の合計が0.0001%未満であり、連続鋳造鋳片を圧下しなかったため、「デンドライト1次アーム間隔比λ/λ0」、「析出物の径比d/d0」、「偏析比指数」および「靭性指数」の基準とした。
表4に示すように、試験番号1〜6の本発明例では、λ/λ0は0.5〜0.8、d/d0は0.50〜0.80、偏析比指数は0.4〜0.8であり、いずれも試験番号7の比較例よりも小さい値であった。
このことから、本発明の連続鋳造方法によれば、鋳片の圧下を行わない場合よりも優れたデンドライト組織の微細化効果および析出物の微細化効果を得ることができるとともに、偏析の発生を抑制できることがわかる。すなわち、連続鋳造鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に圧下を行うと、デンドライト組織および析出物のいずれも微細化することが可能であり、さらに中心偏析の生成を抑制できることがわかる。
表4で、試験番号1〜3と試験番号4〜6を比較すると、λ/λ0、d/d0および偏析比指数のいずれも、試験番号1〜3の方が小さい値であった。このことから、連続鋳造鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に圧下する場合、溶鋼に界面活性元素を添加することにより、さらにデンドライト組織および析出物を微細化するとともに中心偏析の生成を抑制できることがわかる。
また、靭性指数は、本発明例では1.5以上と良好な値であり、製品としての許容範囲内であった。このことから、本発明の連続鋳造方法によれば、圧下を行わない場合よりも靭性が良好な鋳片が得られることがわかる。さらに、溶鋼に界面活性元素を添加することにより、靭性指数が2.1以上となり、より靭性が良好な鋳片が得られることがわかる。
本発明の連続鋳造方法は、鋳片の厚さによらず適用が可能であるとともに、鋳片の凝固が完了した直後に圧下を行うため、鋳片の未凝固領域の固相率の制御を行う場合と比べて容易に実施することができる。
また、本発明の連続鋳造鋳片は、凝固組織が微細かつ均一であり、析出物も微細であり、中心偏析の生成が抑制され、組成が均一であるため、機械的特性が良好であり、大型構造物に用いられる極厚鋼板用の素材として適する。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01%〜0.20%、Si:0.02%〜0.50%、Mn:0.6%〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.002〜0.030%、Al:0.0005〜0.0500%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.002〜0.010%およびO:0.0001〜0.0150%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋳片の連続鋳造方法であって、
    圧下を行うことなく鋳造した場合の鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λを基準とし、
    鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λと前記λの比の値λ/λが0.1〜0.となるように、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に、圧下直前の鋳片の厚さを圧下直後の鋳片の厚さで割った値である圧下比を1.41以上2.00以下とする圧下を行うことを特徴とする鋳片の連続鋳造方法。
  2. 鋳片が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.05〜1.50%、Ni:0.05〜5.00%、Cr:0.02〜1.00%、Mo:0.02〜1.00%、Nb:0.005〜0.050%、V:0.005〜0.100%、およびB:0.0004〜0.0040%のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋳片の連続鋳造方法。
  3. 鋳片が、Feの一部に代えて、質量%で、Bi、SnおよびTeのうちの1種以上を合計で0.001〜0.0300%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋳片の連続鋳造方法。
  4. 圧下を行うことなく鋳造した場合の鋳片の厚さ方向中心における析出物の直径dを基準とし、
    鋳片の厚さ方向中心における析出物の直径dと前記dの比の値d/dが0.1〜0.9となるように、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に圧下を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋳片の連続鋳造方法。
  5. 質量%で、C:0.01%〜0.20%、Si:0.02%〜0.50%、Mn:0.6%〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.002〜0.030%、Al:0.0005〜0.0500%、Ti:0.005〜0.030%、N:0.002〜0.010%およびO:0.0001〜0.0150%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる連続鋳造鋳片であって、
    圧下を行うことなく鋳造した場合の鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λ を基準とし、鋳片の厚さ方向中心におけるデンドライト1次アーム間隔λと前記λ の比の値λ/λ が0.1〜0.8であることを特徴とする連続鋳造鋳片
  6. Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.05〜1.50%、Ni:0.05〜5.00%、Cr:0.02〜1.00%、Mo:0.02〜1.00%、Nb:0.005〜0.050%、V:0.005〜0.100%、およびB:0.0004〜0.0040%のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項5に記載の連続鋳造鋳片。
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