JP6372209B2 - 鋼の連続鋳造方法および連続鋳造鋳片 - Google Patents

鋼の連続鋳造方法および連続鋳造鋳片 Download PDF

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本発明は、鋼の連続鋳造方法および連続鋳造鋳片に関し、より詳細には、極厚鋼板を得るための鋳片を製造するのに適した連続鋳造方法、およびこの方法により製造された連続鋳造鋳片に関する。
近年、鋼構造物に対する大型化および高強度化の要求が厳しくなっており、構造物を構成する部材となる極厚鋼板に対する品質の向上が、コストの低減とともに課題となっている。極厚鋼板は、従来、インゴット鋳造法で大型鋼塊を製造し、この大型鋼塊を分塊圧延することで分塊スラブを作製し、これを圧延することで製造されてきた。
しかし、この方法による場合、大型鋼塊の上部に形成された押し湯部、底部に生成した偏析部、ならびに粗大な介在物および引け巣を除去する必要があり、歩留まりが著しく低下するという問題があった。また、分塊スラブを形成するために分塊圧延の工程が必要であるため、製造コストが大幅に増大するとともに、製造工程も長くなり生産効率の低下を招いていた。
この問題を解決するため、極厚鋼板用のスラブ鋳片の製造に連続鋳造法が適用され、歩留まりの向上および生産効率の向上が図られてきている。しかし、その場合、連続鋳造鋳片も極厚となるため、鋳片内部、特に断面中心部で凝固組織が粗大化し、これにともない、ミクロ偏析およびマクロ偏析が生じやすくなる。この中心偏析により鋳片全体の品質の向上が阻害されるという新たな問題が生じてきた。このため、連続鋳造鋳片の中心偏析を抑制する技術について、従来から多くの提案がなされている。
特許文献1には、連続鋳造鋳片の中心偏析低減方法が開示されている。この方法では、鋳片の厚み方向中心部の固相率が0.4以下の時点から鋳片の軽圧下を開始して、鋳片厚み方向中心部の凝固が完了するまで軽圧下を継続し、かつ、軽圧下しつつ鋳片厚み方向の中心部が凝固完了するまで鋳片表面を強冷却して、この冷却による鋳片の熱収縮速度を0.25〜1.0mm/分の範囲に制御する。特許文献1によれば、熱収縮速度と軽圧下速度との和を0.8〜1.8mm/分の範囲に抑制することで、中心偏析の低減効果を一層発揮させることができるとされている。しかしながら、軽圧下により溶質濃度が変化するため固相率も変わり、最適とされる固相率に制御して圧下することは、操業上困難である。
特許文献2には、連続鋳造鋳片の偏析調整方法が開示されている。この方法では、連続鋳造用鋳型より引き抜いた鋳片ストランドの引き抜き移動中に、それを両側に挟む金敷にて該鋳片ストランドの凝固完了点近傍に鍛圧加工を施すに当たり、鋳片ストランドの鋳造速度または冷却速度を調整して鍛圧加工点におけるストランドの固相率を変化させる。特許文献2によれば、鋳片圧下点における固相率の許容範囲は0.5〜0.95が好適であり、鋳造時間の経過とともに固相率を徐々に高めていくか、あるいは低くしていくような手法が有効であるとされている。しかしながら、未凝固領域が残存する凝固完了点近傍域において圧下すると、溶質濃度が変化することにより固相率が変わってしまうため、最適とされる固相率に制御して圧下することは、操業上困難である。
特許文献3には、動的再結晶に着目し、連続鋳造鋳片を中心部まで凝固させた後、鋳片の厚み方向中心部の温度と鋳片の表面温度との差を400℃以上とし、歪速度を1×10-3-1〜1×10-2-1として圧下する連続鋳造方法が開示されている。特許文献3によれば、この連続鋳造方法により、合金元素を添加することなく凝固二次組織を微細化させ、機械的性質に優れた連続鋳造鋳片を安価に製造することができるとされている。また、特許文献3によれば、この連続鋳造鋳片を用いることにより、鋳片から極厚鋼板等を低圧下比で製造する際の特別な設備、および複雑な製造工程は不要となり、また、この連続鋳造鋳片を熱間圧延加工することにより、厚み方向中心部付近の材質特性に優れた鋼材を得ることが可能であるとされている。
しかしながら、極厚鋼板を製造するための連続鋳造鋳片は極厚であることから、鋳片中心近傍の冷却速度は小さく、凝固組織が粗大となることから、凝固組織の形成に伴って生成するミクロ偏析も著しくなる。この著しいミクロ偏析が原因でマクロ偏析が生じ、これにより、鋳片の厚み方向での溶質濃度が変化するため、機械的特性に優れた鋼材を製造することは困難である。
特許文献4には、炭素量が0.2〜0.6質量%であるスラブ鋳片を圧下ロールによって圧下しつつ連続鋳造し、その後の熱間圧延によって、鋼材製品厚みと圧下開始前のスラブ鋳片厚みとが所定の関係を満足する鋼材を得るスラブ鋳片を製造するための連続鋳造設備が開示されている。この設備は、連続鋳造時におけるスラブ鋳片の圧下に際して、スラブ鋳片の中心固相率が0.7となる位置から下流側5mまでの範囲を圧下有効領域とするとともに、この圧下有効領域に、ロール径が530mm以上で軸方向に一体的に形成された圧下ロールを1対以上配置し、鋳片への総圧下量が13mm以上となるように構成されている。
しかしながら、特許文献4には、炭素量が0.2質量%未満であるスラブ鋳片に関する記載はなく、他の成分についての記載もない。また、特許文献4には、スラブ鋳片の中心固相率が0.7となる位置から下流5mとなる位置まで圧下するとの記載があるが、この範囲内に渡ってスラブ鋳片の一部が未凝固状態にあるのか、そして、スラブ鋳片の一部が未凝固の状態で圧下を開始し凝固完了した後も圧下を行うのかに関しては、記載がない。したがって、この方法の適用可能な範囲は、限定的であると言わざるを得ない。
特許文献5には、鋳型内に溶鋼を注入し鋳型内で表面が凝固して形成された鋳片を、複数本のロールに案内させながら凝固させ、鋳片の凝固末期に、鋳片を挟持するロールの開度を徐々に狭めて、鋳片を軽圧下しつつ引き抜く軽圧下帯を配置した連続鋳造設備を用いて鋳片を連続鋳造する鋼の連続鋳造方法が開示されている。この方法では、鋳片厚み方向中央部の固相率が1となる鋳造方向の距離の幅方向分布であるクレーターエンド形状を求め、このクレーターエンド形状が平坦でない場合に、そのクレーターエンド形状に応じて軽圧下帯の上流側部分で、鋳片の幅方向両端部のいずれかを優先して軽圧下する。しかしながら、クレーターエンド形状が鋳造中に変化すると、これに対応するように軽圧下することは、操業上困難である。
特開2001−138021号公報 特開平5−154633号公報 特開2004−237291号公報 特開2009−255173号公報 特開2012−66303号公報
そこで、本発明の目的は、中心偏析を低減して、機械的特性に優れた鋳片を安定して製造することができる連続鋳造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、中心偏析が少なく、機械的特性に優れた連続鋳造鋳片を提供することである。
本発明は、下記(1)の連続鋳造方法、および下記(2)の連続鋳造鋳片を要旨とする。
(1)鋳型を用い、横断面が矩形の鋳片を連続鋳造する方法であって、
前記鋳型のキャビティーは、幅方向の中央領域に、厚み方向に広がった凹状領域を備え、
前記凹状領域を除く両端領域の厚みが一定であり、前記両端領域を基準とした前記凹状領域の最大凹み量は、前記鋳型の上端部で20mm〜50mmであり、前記鋳型の下端部で5mm〜30mmであるとともに、
前記凹状領域は、前記キャビティーの全幅に対して占める割合が10%以上であり、前記両端領域のそれぞれの幅は、当該両端領域の前記キャビティーの厚みの1/2以上であり、
前記鋳型の上端部での前記凹状領域の幅は、前記鋳型の下端部での前記凹状領域の幅より大きく、
前記鋳型から引き抜かれた鋳片を、前記鋳片の厚み方向中央部まで完全に凝固した後に、鋳片の厚み方向に、最大圧下率を5%〜30%として圧下する、連続鋳造方法。
(2)前記(1)の鋳造方法によって製造された連続鋳造鋳片であって、
前記鋳片の横断面において、前記鋳片の幅方向中央部で前記鋳片の厚み方向に沿ってMn含有率を線分析し、分析領域内の各部のMn含有率を当該鋳片の鋳造に用いた溶鋼中のMn含有率で除した値が1.1を超える領域の合計長さを求めたとき、前記分析領域の長さに対する前記合計長さの百分率割合で定義される偏析幅の割合が、10%以内である、連続鋳造鋳片。
本発明の連続鋳造方法によれば、鋳片においてキャビティーの凹状領域に対応する部分、すなわち、鋳片の幅方向中央部が最終凝固位置となる。この部分では、結晶粒が粗大化しやすく、かつ偏析が生じやすい。しかし、鋳片において、キャビティーの凹状領域に対応して形成された凸部が圧下されることにより、この部分およびその周辺の結晶粒は微細化される。結晶粒が微細になると、加熱時の偏析元素の拡散速度が大きくなる。これにより、偏析が効率的に低減される。したがって、本発明の連続鋳造方法により、鋳片の厚み方向中央領域の組織が微細で偏析が少ない鋳片を安定して製造することが可能である。このような鋳片は、組織が微細であること自体によって機械的特性が向上されているとともに、偏析が少ないことによっても機械的特性が向上されている。
本発明の連続鋳造方法によって、本発明の連続鋳造鋳片を製造することができる。本発明の連続鋳造鋳片は、機械的特性が向上されている。
図1は、本発明の一実施形態に係る連続鋳造方法で用いることができる鋳型の横断面図である。
1.鋼板の機械的特性
大型構造物を構成する部材となる極厚鋼板について、良好な機械的特性を確保するには、鋳片中央部におけるマクロ偏析を低減することが必要である。連続鋳造法で製造され、極厚鋼板用の素材となる鋳片には、厚み方向の中央近傍で粗大なデンドライトを含む凝固組織が形成されている。このデンドライトを生ずる凝固に伴ってミクロ偏析が生じ、このデンドライトの樹間に存在する、溶質元素が濃化した液相が、デンドライトの樹間部を流れて移動することで、マクロ偏析が形成される。
デンドライトの成長態様(たとえば、成長速度)は、溶鋼および凝固シェルから鋳型への抜熱、二次冷却帯における鋳片の未凝固部および凝固シェルの冷却条件、ならびに、鋳片の未凝固部における液相の流動状態に依存する。このため、鋳造条件および溶鋼の流動状態の最適化により、デンドライトを均一成長させて、マクロ偏析を抑制する取り組みがなされてきたが、必ずしも所望の結果が得られてはいない。
これは、連続鋳造鋳型内に注がれる溶鋼の温度が一定ではないこと、この溶鋼の温度に依存して鋳造速度が変動すること、浸漬ノズルが鋳造とともに閉塞して鋳型内での溶鋼の流動状態が変動すること、および鋼種により鋳造条件が変わる等の要因による。これらの変動に伴い、連続鋳造鋳片の最終凝固位置が変化し、特に鋳片の幅方向で最終凝固位置が鋳造中に変わり、マクロ偏析の状態も鋳片の幅方向で鋳造中に変動することになる。
このような変動が生じると、鋳片の品質が一定とならず最終製品の品質が安定しなくなる。特に、鋳片の厚みの大きい極厚鋳片においては、この傾向が顕著であり、製品の機械的特性の一つである靭性が安定しない。この場合、評価試験として製品の各部について測定して得られた靱性値のうち、最も低い値が製品の靭性値として採用される。
また、極厚鋼板の機械的特性を確保するには、鋳片中央部における結晶粒径の微細化も必要である。しかし、極厚鋼板では、鋳片の厚み方向中央領域の冷却速度が小さいことから、凝固組織および結晶粒が粗大化しやすい。さらに、上述の偏析により液相の溶質元素の濃度が上昇すると、固相線温度の低下、および相変態温度の低下が生じ、これにより、結晶粒の粗大化が促進される。この結果、結晶粒径が大きい鋼板が得られる。このような鋼板の機械的特性は、低い。
2.本発明の技術思想
本発明者らは、鋳造条件が変わっても常に最終凝固位置が鋳片の幅方向中央近傍になるようにすれば、マクロ偏析が顕在化する位置を特定することが可能であることに想到した。マクロ偏析が顕在化し得る位置を特定することができれば、後述の方法によってマクロ偏析を低減させることができる。結果として、鋳片全体の組成を均一にすることができ、製品の機械的特性が低下する部位をなくすことできる。
最終凝固位置が鋳片の幅方向中央近傍になるようにするためには、連続鋳造用鋳型のキャビティー(以下、単に、「キャビティー」ともいう。)の厚み(対向する内壁同士の距離)を、幅方向中央近傍で、他の部分に比して大きくすればよい。鋳型キャビティーの厚みが大きい部分では、未凝固状態にある溶鋼の量が、他の部分に比して増えるため、凝固が開始するまでに時間を要し、冷却速度が小さくなることから温度勾配も小さくなる。これにより、鋳型内で凝固シェルを形成するデンドライトの成長が遅くなり、鋳片の幅方向中央近傍の凝固は遅れ、その結果、最終凝固位置は、常に鋳片の幅方向中央部となる。
以上のような鋳造により、最終的に凝固が完了した鋳片において偏析を鋳片の幅方向中央に集中させることができる。すなわち、キャビティーの幅方向中央部の厚み(特に、鋳型上部における厚み)を大きくすることで、マクロ偏析が鋳片の幅方向に偏在することを抑制できる。
また、鋳型下部でのキャビティーの幅方向中央部の厚みを大きくすることで、鋳型から下方に引き抜かれる鋳片には、幅方向中央領域に凸部(凸条)が形成される。このようにして鋳造された鋳片を、鋳型下方に配置されたロールで圧下し、鋳片に形成された凸部を押し潰す。これにより、鋳片の凸部形成領域では、鋳片の厚み方向中央領域まで歪が付与され、凝固組織が微細化される。微細な組織を有する鋳片では、加熱時に偏析元素の拡散が促進される。
また、鋳片を、完全に凝固した位置で圧下することにより、鋳片の厚み方向中央領域の結晶粒を微細化することもできる。これは、従来の連続鋳造方法では不可能であった。鋳片において完全凝固していない部分を、ロールで圧下しても、鋳片の中央領域に残存している溶質濃化溶鋼が鋳片移動方向下流側に移動するだけであり、鋳片に歪を付与して結晶粒の微細化を図ることはできない。
凝固組織を微細化して拡散の促進が可能である理由を、以下に説明する。凝固過程で、デンドライトが成長すると、溶質元素は、その平衡分配係数に依存してデンドライトの樹間部または樹芯部に濃化する。たとえば、製品の強度を増すために含有されるMnの場合、平衡分配係数が小さいことから、凝固過程におけるデンドライトの樹間に濃化し、逆に樹芯部でのMn濃度は低くなる。
通常操業の加熱処理の条件範囲内では、この濃化した溶質元素を拡散させて組成を均一にすることが困難であり、この鋳片を熱間圧延しても、デンドライトを含む凝固組織が単に引き延ばされるだけで、溶質元素がデンドライトの樹間には濃化した状態は維持される。
また、鋳片の凝固組織は冷却速度により変化し、鋼の成分が同一である場合には、冷却速度を大きくすればデンドライトを小さくすることができる。しかし、極厚鋼板用の鋳片のように鋳片の厚みが大きくなると、凝固シェルの形成自体が熱伝導により律速され、鋳片内部の冷却速度を大きくすることができない。このため、冷却速度を大きくして製造した極厚鋼板では、鋳片表層部のデンドライトは小さいものの、鋳片の厚み方向の中央に向かってデンドライトが大きくなり、鋳片の厚み方向の中央近傍ではデンドライトの一次アーム間隔が数mmに達する場合がある。このように、鋳片の表層部と中央近傍とではデンドライトの大きさが著しく異なり、加熱処理および熱間圧延工程を経ても、この差に起因して生じた溶質元素の濃度の不均一を解消することはできない。
このため、極厚鋼板用の鋳片では、表層部と中央近傍とでデンドライトの大きさの差が大きいことにより、この鋳片から得られた極厚鋼板は、部位によって機械的特性が異なる。極厚鋼板は、鋳造後そのままの鋼板として使用される場合は少なく、大入熱溶接によって構造物を構築したり、切削加工によって鋼板の厚み方向のいずれかの部位が表面に露出したりする。これらの場合、機械的特性が劣る部位で不具合を生じることがある。
上述のように、特許文献3では、鋼板の厚み方向中心部近傍の凝固二次組織を微細化させ、機械的特性を向上させる技術が開示されている。しかし、同文献では、凝固組織を構成するデンドライトについては考慮されておらず、デンドライトの一次アーム間隙および二次アーム間隙に溶質元素が濃化し、溶質元素の濃度が低いデンドライト樹芯と濃度が高い樹間とが形成されることについては、対応策が検討されていない。このように、従来の技術では、凝固組織は均一な組成を有することが前提とされている。マクロ偏析は、ミクロ偏析に起因して鋳片の厚み方向中央領域において顕在化する。従来の技術では、マクロ偏析も考慮されていない。
本発明者らは、デンドライトを含む凝固組織の形成に伴って生じるミクロ偏析およびマクロ偏析を、偏析元素の拡散により低減することについて検討した。その結果、ミクロ偏析およびマクロ偏析は、デンドライトの間隙の大きさに依存するとともに、この間隙が小さいほど、加熱時の拡散が進行しやすいことが分かった。拡散が進行すると、鋳片における溶質濃度が均一化し、最終製品の機械的特性の向上が図れる。また、この拡散は温度が高いほど進行しやすいことが判明した。
溶質の拡散は、拡散の効果を表す指標としてフーリエ数Foで評価することができる。このフーリエ数Foが大きいほど、拡散の効果は大きい。フーリエ数Foは、以下のように定義される。
Fo=(拡散係数D(T)×時間t)/(拡散距離λ)2
この式を基に、操業で変更可能な条件について、以下で検討した。
拡散距離λは、連続鋳造鋳片に見られるデンドライトの一次アーム間隔に相当する。λは、通常は鋳片の冷却速度の約0.5乗に反比例して小さくなるが、指数が0.5であることから冷却速度が大きく変わったとしてもλの変化は小さい。通常の連続鋳造方法において冷却速度を大きく変えることは困難であることから、冷却速度によりλを大きく低減させることは困難である。
拡散係数Dは温度Tの関数であり、温度を高くすることで、拡散係数Dを増大させて拡散を促進させることが可能である。拡散係数Dを増大させることは、操業においては、たとえば、加熱炉の温度を高めることに相当する。しかし、加熱炉の通常の操業温度は、1200℃〜1300℃程度であり、これ以上に温度を高めることは、コストの大幅な上昇を招くだけでなく、加熱時のスケール発生量の増加に伴う歩留りの低下、および鋳片の表面性状の劣化による圧延後の鋼板の表面性状の悪化を招くので、事実上困難である。
時間tを長くすると、フーリエ数Foが大きくなり、拡散を促進させることができる。時間tを長くすることは、操業においては、たとえば、鋳片を加熱炉内で熱処理する時間を延長することに相当する。たとえば、通常の加熱時間を数時間とすると、Mnの偏析を解消するには、計算によれば、その数倍の時間を要する。このため現状の操業形態でこのような加熱時間の延長を行うと、生産量が大幅に低下することになる。したがって、加熱時間の延長は、事実上困難である。
本発明者らは、デンドライトの一次アーム間隔を、鋳片の冷却速度によらず、機械的に小さくすることにより、拡散距離λを低減し、フーリエ数Foを大きくすれば、拡散の促進が可能であることに想到した。また、本発明者らは、拡散係数Dは温度が高いほど大きいことから、連続鋳造直後で鋳片の温度が高いときに、機械的にデンドライトの一次アーム間隔(拡散距離λ)は小さくすれば、そのときのフーリエ数Foを大きくして、効率的に溶質元素の拡散を生じさせ得ることに想到した。
本発明者らは、以上の検討に基づき、本発明を完成するに至った。
3.鋳型
図1は、本発明の一実施形態に係る連続鋳造方法で用いることができる鋳型の横断面図である。
この鋳型1には、横断面において大略的に矩形のキャビティー2が形成されている。キャビティー2は、幅方向中央領域に、厚みT方向に広がった(すなわち、鋳型1の内壁面が凹んだ)凹状領域を備えている。すなわち、この凹状領域は、キャビティー2の一部である。キャビティー2において、凹状領域を除く両端領域の厚みは一定である。キャビティー2の両端領域を基準とした凹状領域の最大凹み量Hは、鋳型1の上端部で20mm〜50mmであり、鋳型1の下端部で5mm〜30mmである。
鋳型1の上端部で凹状領域の最大凹み量が20mmより小さい場合、および鋳型1の下端部で凹状領域の最大凹み量が5mmより小さい場合は、鋳片の幅方向に関して、最終凝固位置を常に同じにすることが困難になる。鋳型1の上端部で凹状領域の最大凹み量が50mmより大きい場合は、鋳型1の下端部で凹状領域の最大凹み量が小さいことにより、鋳型1内で生成した凝固シェルが拘束されて、鋳造が困難になる。鋳型1の下端部で凹状領域の最大凹み量が30mmより大きい場合は、鋳片にほぼ同じ高さの凸部が形成されるので、ロールの圧下による圧延により、鋳片の表面を平坦にすることが困難になる。
凹状領域は、キャビティーの厚み方向の方向に両側に設けられていて、両凹状領域の最大凹み量Hは、互いにほぼ等しいことが好ましいが、両凹状領域の最大凹み量Hは互いに異なっていてもよく、また、キャビティー2の厚み方向の一方側にのみ凹状領域が設けられていてもよい。
両端領域のそれぞれの幅は、両端領域でのキャビティー2の厚みTの1/2以上である。以下、この要件について説明する。
連続鋳造鋳片の横断面の凝固組織を観察すると、キャビティー2の長辺面および短辺面からデンドライトが成長したことがわかる。鋳片のコーナー近傍では、長辺面から成長したデンドライトと短辺面から成長したデンドライトが衝突している。短辺面からのデンドライトの成長は、凝固時の短辺面からの冷却の影響が大きいことにより生ずる。
この領域の溶鋼(液相)は凝固しやすく、キャビティー2の対応領域に凹状領域を形成しても、効率的に凝固を遅らせることができないばかりか、当該対応領域を含む広い領域に凹状領域を形成すると、鋳片に形成される凸部の幅が広くなり、十分な圧下量で鋳片を圧下することが困難になる。したがって、キャビティー2の幅方向に関して、凹状領域を形成する範囲は、この短辺面からの冷却の影響が大きい範囲を除外して設定する必要がある。このため、凹状領域を形成する範囲は、短辺面からデンドライトが成長しない領域に対応する範囲とする。
キャビティー2内において、短辺面からデンドライトが成長する領域の短辺面からの長さは、両端領域でのキャビティー2の厚みTのほぼ半分である。このため、両端領域の幅は、上述の通り、両端領域でのキャビティー2の厚みTの1/2以上とする。図1に示す例では、両端領域の幅は、両端領域でのキャビティー2の厚みのほぼ1/2であり、凹状領域の幅Cは、両端領域の幅の要件を満たす範囲で、ほぼ最大にされている。
キャビティー2の幅方向に関して、凹状領域の幅(長さ)Cは、キャビティー2の全幅Wの10%以上とする。凹状領域の幅が全幅Wの10%未満である場合は、鋳片の厚み方向中央領域に発生するマクロ偏析を、キャビティー2の幅方向中央領域に十分に集めることができない。図1に示す例では、凹状領域の幅Cは、キャビティー2の全幅Wの約65%を占める。
鋳型1の上端部での凹状領域の幅Cは、鋳型1の下端部での凹状領域の幅Cより大きい。ただし、鋳型1上部での凹状領域の幅Cと鋳型1下部での凹状領域の幅Cとの差が大きすぎると、鋳型1からの鋳片の引き抜きに要する力が増大し、操業が困難になる。このため、これらの幅の差は、500mm以下とすることが好ましい。鋳型1の上端部での凹状領域の幅Cが鋳型1の下端部での凹状領域の幅Cと同じかそれ以下であると、凹状領域では、鋳片は、下方に移動するに従って膨らみ、表面割れを生じる。鋳型1の上端部での凹状領域の幅Cを鋳型1の下端部での凹状領域の幅Cより大きくすることにより、このような表面割れを抑制することができる。
4.圧下
鋳型から引き抜かれた鋳片は、鋳片の厚み方向中央部まで完全凝固した位置で、最大圧下率が5%〜30%になるように、鋳片の厚み方向に圧下する。鋳片の圧下率は、この圧下前に突出量が最大であった部分で最大となる。鋳片が完全凝固した位置で圧下し、鋳片が完全に凝固していない位置では実質的に圧下しないことにより、鋳片中の液相が移動してマクロ偏析が生じることを抑制または防止できる。
また、鋳片の最終凝固位置は、キャビティーの凹状領域に対応して形成された鋳片の凸部近傍にあり、その部分ではデンドライトが大きく成長している。凸部を圧下して押し潰すことにより、大きく成長したデンドライトに歪みを与えて、その領域の組織を確実に微細化することができる。
鋳片において、凸部が形成されていない領域の厚み(鋳型の下端部におけるキャビティーの厚みにほぼ等しい)をTs、いずれの長辺面に形成された凸部の最大高さ(鋳型の下端部におけるキャビティーの凹状領域の最大凹み量にほぼ等しい)もHsとし、圧下後の鋳片の厚みがTsであるとすると、最大圧下率は、2Hs/(Ts+2Hs)×100(%)で与えられる。
最大圧下率5%未満であると、鋳片に十分な歪みを与えて組織を微細化することができない。最大圧下率が30%を超える場合は、組織を微細にする効果が飽和するだけでなく、鋳片の凸部が形成された面を平坦にするのに要する力が大きくなりすぎて、操業が困難になる。
圧下は、鋳片において表面温度が750℃〜1350℃である部分で行うことが好ましい。この場合、偏析元素の拡散を効率的に生じさせることができる。このような効果を得るため、圧下は、鋳片において表面温度が900℃〜1350℃である部分で行うことが、より好ましい。
凹状領域がキャビティーの幅方向中央領域に形成されていることにより、鋳片には、鋳片の幅方向中央領域に、対応する凸部が形成される。このため、キャビティーの幅を変更して鋳片の幅を変更しても、鋳片の主たる圧下位置は変わらないので、ロールの配置を変更する必要はない。
5.連続鋳造鋳片
本発明の連続鋳造方法により、偏析が十分に少ない連続鋳造鋳片を得ることができる。本発明の連続鋳造鋳片は、鋳片の横切断面において、鋳片の幅方向中央部で鋳片の厚み方向に沿ってMn含有率を線分析し、分析領域内の各部のMn含有率を溶鋼中のMn含有率で除した値が1.1を超える領域の合計長さを求めたとき、分析領域の長さに対する当該合計長さの百分率割合で定義される偏析幅の割合は、10%以内である。このため、この連続鋳造鋳片の機械的特性は良好である。
線分析は、たとえば、EPMA(Electron Probe Microanalyzer)により行うことができる。線分析は、具体的には、鋳片の幅方向中央を基準に幅方向両側に25mmの幅で、鋳片の厚み方向中央を基準に厚み方向両側に50mmの長さの試験片を採取し、その試験片の幅方向に無作為に10箇所選択して厚み方向全域を、ビーム径50μmで行うものとすることができる。
6.鋳片の化学組成
本発明の連続鋳造方法により鋳造する鋳片の化学組成は、特に限定されないが、たとえば、質量%で、C:0.03%〜0.2%、Si:0.005%〜0.5%、Mn:0.2%〜5.0%、P:0.02%以下、S:0.002〜0.03%、Al:0.0005〜0.5%、N:0.002〜0.010%およびO:0.0001〜0.015%を含有し、残部がFeおよび不純物からなるものであってもよい。この場合、本発明の連続鋳造方法により鋳造される鋳片を、大型構造物を構成する部材として適したものとすることができる。
以下、各元素について説明する。以下の説明で、含有率の単位は、いずれも質量%である。
C:0.03%〜0.20%
Cは、鋼の強度向上に寄与する元素である。極厚鋼板が、大型構造物用として十分な強度を有するようにするには、C含有率を0.02%以上とする必要がある。しかし、C含有率が0.20%を超えると、鋼の溶接性が劣化する。これらのことから、C含有率は、0.02%〜0.20%であることが好ましい。C含有率のさらに好ましい下限は、0.04%である。C含有率のさらに好ましい上限は、0.18%である。
Si:0.005%〜0.5%
Siは、鋼の曲げ性を大きく劣化させることなく、強度の向上に寄与する元素である。しかし、Si含有率が0.5%を超えると、非めっき鋼板の場合には化成処理性が劣化し、溶融亜鉛めっき鋼板の場合にはめっきの濡れ性、合金化処理性、およびめっき密着性が劣化する。これらのことから、Si含有率は、0.005%〜0.5%であることが好ましい。Si含有率のさらに好ましい下限は、0.08%である。Si含有率のさらに好ましい上限は、0.3%である。
Mn:0.2%〜5.0%
Mnは、鋼の強度向上に寄与する元素である。厚鋼板を機械構造物用として十分な強度にするには、Mn含有率を0.8%以上とする必要がある。しかし、Mn含有率が5.0%を超えると、製造コストが上昇する。これらのことから、Mn含有率は、0.2%〜5.0%であることが好ましい。Mn含有率のさらに好ましい下限は、0.5%である。Mn含有率のさらに好ましい上限は、4.0%である。
P:0.02%以下
Pは、一般には鋼に不可避的に含有される不純物であるものの、固溶強化元素でもあり鋼板の強化に有効であるため、積極的に含有させてもよい。しかしながら、P含有率が0.02%を超えると靭性が劣化する。そのため、P含有率は、0.02%以下であることが好ましい。より確実に鋼板を強化するには、P含有率は0.003%以上であることが好ましい。
S:0.002〜0.03%
Sは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、曲げ性および溶接性の観点からは、含有率は低いほど好ましい。そのため、S含有率を0.002〜0.03%であることが好ましい。S含有率のさらに好ましい下限は、0.005%である。S含有率のさらに好ましい上限は、0.015%である。
Al:0.0005%〜0.5%
Alは、鋼を脱酸させるために添加される元素であり、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させるのに有効に作用する元素である。しかし、Al含有率が0.5%を超えると、酸化物系介在物が増加するため、鋼板の表面性状も劣化する。これらのことから、Al含有率は、0.0005%〜0.5%であることが好ましい。Al含有率のさらに好ましい下限は、0.001%である。Al含有率のさらに好ましい上限は、0.3%である。
N:0.002〜0.01%
Nは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、鋼板の曲げ性を向上させるためには、含有率は低いほど好ましいが、窒化物を活用(たとえば、溶接時の熱影響部のような高温にさらされる部分で安定なAlNを、結晶粒の粗大化の抑制に活用)するには0.002%以上必要である。そのため、本発明では、N含有率を0.002〜0.01%とすることが好ましい。N含有率のさらに好ましい下限は、0.005%である。N含有率のさらに好ましい上限は、0.008%である。
O:0.0001〜0.015%
Oは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、鋼中に粗大な介在物を形成して鋼の靭性を低下させるため、靭性を高くするためには、含有率は低いほど好ましいが、酸化物を活用(たとえば、溶接時の熱影響部のような高温にさらされる部分で安定なAl23を、結晶粒の粗大化の抑制に活用)するには0.0001%以上必要である。そのため、O含有率は、0.0001〜0.015%であることが好ましい。
本発明の連続鋳造方法の効果を確認するため、以下の試験を実施して、その結果を評価した。
(i) 鋳造条件
表1に、試験に用いた溶鋼の化学組成を示す。溶鋼温度は、タンディッシュ内で、1570℃とした。
Figure 0006372209
試験には、図1に示すものと同様の形状を有する鋳型を用いた。鋳型において、キャビティーの幅は1400mmであり、両端領域でのキャビティーの厚みは200mmであった。したがって、凹状領域の幅は、本発明の要件を満たすためには、140mm以上、かつ1200mm以下とする必要があった。
表2に、用いた鋳型のキャビティーのサイズ、圧下条件、および評価結果を示す。キャビティーのサイズとして、表2には、鋳型上端部での凹状領域の最大凹み量および幅、ならびに鋳型下端部での凹状領域の最大凹み量および幅を示す。キャビティーにおいて、両長辺面に形成された凹状領域の最大凹み量および幅は、互いに同じであった。
Figure 0006372209
表1および表2の「区分」の欄において、上記サイズおよび圧下条件のすべてが本発明で規定する要件を満たすものを「本発明例」と記し、上記サイズおよび圧下条件のいずれか一つでも本発明で規定する要件を満たさないものを「比較例」と記している。
鋳造速度は、1.2m/分とした。鋳片が完全に凝固している位置において、直径が500mmの圧下用ロールで、鋳片の長辺面を圧下した。すなわち、鋳片は、その厚み方向に圧下した。鋳片において圧下部の表面温度は、750℃〜1350℃であった。後述の試験番号7の比較例を除き、圧下後の鋳片の厚みは、200mm、すなわち、圧下前の鋳片の凸部非形成領域の厚みとほぼ同じであり、ロールによる最大圧下量は、凹状領域の最大凹み量の2倍に等しかった。表2に、圧下条件として、各試験での最大圧下量、および最大圧下率(表2には、それぞれ、単に、「圧下量」、および「圧下率」と記す。)を示す。
(ii) 評価方法
偏析幅の割合を、上述の手法により求めた。線分析には、EPMAを用い、ビーム径を50μmとして、試料のMn含有率分布を測定した。溶鋼のMn含有率は、鋳造時に溶鋼を採取し、化学分析により求めた。表2に、評価結果として、偏析幅の割合を示す。この偏析幅の割合の値が大きいほど、偏析が顕著である領域は広く、その鋳片の機械的特性等が劣ることが予想される。
(iii) 試験結果
本発明例(試験番号1〜5)では、いずれも、鋳型のキャビティーの形態について、本発明で規定する要件が満たされており、各キャビティーに対応した形態の鋳片が形成され、本発明で規定する圧下率で圧下されている。偏析幅の割合は、いずれも、13%以下と小さい。これに対して、比較例(試験番号6および8〜10)では、下記の通り、本発明のいずれかの要件が満たされておらず、偏析幅の割合は、いずれも、23%以上と大きい。
試験番号6の比較例では、キャビティーに凹状領域が形成されておらず、したがって、鋳片に凸部が形成されなかった。このため、鋳片は実質的に圧下されず、最大圧下率は0であった。
試験番号7の比較例では、鋳型上端部での凹状領域の最大凹み量が本発明で規定する大きさより低く、また、鋳型下端部での凹状領域の幅は鋳型上端部での凹状領域の幅よりも大きい。
試験番号8の比較例では、鋳型上端部の凹状領域の幅が長く、両端領域の幅が、本発明で規定する幅より短い。これにより、幅の長い凸部が鋳片に形成され、圧下に要する変形抵抗が大きくなり、十分な圧下量で圧下することができず、最大圧下率が、本発明で規定するものより小さかった。
試験番号9の比較例では、鋳型の上端部および下端部のいずれにおいても、凹状領域の最大凹み量が本発明で規定する大きさに満たなかったため、最大圧下率が本発明で規定するものより小さかった。
試験番号10の比較例では、鋳型上端部および下端部のいずれにおいても、凹状領域の幅が本発明で規定する幅に満たなかった。このため、鋳片には、幅の狭い凸部が形成された。
以上のように、試験番号6および8〜10の比較例では、組織が十分に微細化する程度には圧下されなかったため、Mnが十分に拡散せずに、偏析幅の割合が大きかったものと考えられる。試験番号7の比較例では、表面割れが発生した。これは、鋳型下端部での凹状領域の幅が鋳型上端部での凹状領域の幅よりも大きいことにより、凹状領域での鋳片が下方に移動するに従って膨らんだことに起因しているものと考えられる。
本発明の連続鋳造方法によれば、大型構造物の部材として用いる極厚鋼板に適した鋳片を製造することができる。
1:鋳型、 2:キャビティー

Claims (3)

  1. 鋳型を用い、横断面が矩形の鋳片を連続鋳造する方法であって、
    前記鋳型のキャビティーは、幅方向の中央領域に、厚み方向に広がった凹状領域を備え、
    前記凹状領域を除く両端領域の厚みが一定であり、前記両端領域を基準とした前記凹状領域の最大凹み量は、前記鋳型の上端部で20mm〜50mmであり、前記鋳型の下端部で5mm〜30mmであるとともに、
    前記凹状領域の幅は、前記キャビティーの全幅に対して占める割合が10%以上であり、前記両端領域のそれぞれの幅は、当該両端領域での前記キャビティーの厚みの1/2以上であり、
    前記鋳型の上端部での前記凹状領域の幅は、前記鋳型の下端部での前記凹状領域の幅より大きく、
    前記鋳型から引き抜かれた鋳片を、前記鋳片の厚み方向中央部まで完全に凝固した位置で、鋳片の厚み方向に、最大圧下率を5%〜30%として圧下する、連続鋳造方法。
  2. 前記圧下を、前記鋳片の表面温度が750℃〜1350℃である部分で行う、請求項1に記載の連続鋳造方法。
  3. 質量%で、C:0.02%〜0.20%、Si:0.005%〜0.5%、Mn:0.2%〜5.0%、P:0.02%以下、S:0.0005〜0.03%、Al:0.0005〜0.5%、N:0.002〜0.010%およびO:0.0001〜0.015%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる、連続鋳造鋳片であって、
    前記鋳片の横断面において、前記鋳片の幅方向中央部で前記鋳片の厚み方向に沿ってMn含有率を線分析し、分析領域内の各部のMn含有率を当該鋳片の鋳造に用いた溶鋼中のMn含有率で除した値が1.1を超える領域の合計長さを求めたとき、前記分析領域の長さに対する前記合計長さの百分率割合で定義される偏析幅の割合が、10%以内である、連続鋳造鋳片。
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