JP5009019B2 - 鋼材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼材の製造方法に係り、詳しくは中心偏析やザク欠陥に関する。
連続鋳造機により鋳造された鋳片の中心部に生成される所謂中心偏析は、鋼の靭性の確保及び水素誘起割れの防止の観点から問題とされている。この中心偏析は、連続鋳造の凝固末期における溶鋼の凝固収縮に伴って、樹枝状晶(所謂デンドライト)の樹間に残された所謂濃化溶鋼(炭素・マンガン・珪素などの各成分が高濃度である溶鋼)が鋳片中心部にサクション流動して集積することにより生成される、と考えられている。上記の中心偏析を防止する方法として、前記凝固末期において溶鋼の凝固収縮を補償する程度に鋳片を外部から圧下し上述した濃化溶鋼のサクション流動を抑制する方法が一般的に知られている。
また、連続鋳造機により鋳造された鋳片の中心部に生成される微小な空洞欠陥(所謂ザ
ク欠陥)も、所謂UT不良(後述する超音波探傷試験に基づく製品不良)の防止の観点から問題とされている。このザク欠陥は、後工程である熱間圧延工程などにおける圧延工程によって完全に解消される場合がある。しかし、最終製品厚みが例えば90mm以上である所謂厚鋼材を製造する場合には、当該圧延の圧下比は十分には得られないので、製品中心部におけるザク欠陥が残存してしまい(即ちUT不良となり)、製品化の大きな妨げとなってしまう。そこで、前記の厚鋼材の製造において、UT不良の発生を効果的に防止するためには、連続鋳造段階での圧下によりザク欠陥を効果的に抑制/解消することが肝要であると考えられる。
そして、上記の中心偏析及びザク欠陥を改善するためには、鋳片の凝固状態に応じてその圧下量を適切に設定することが重要とされる。具体的に例えば、圧下量が過小の場合は、外部からの圧下が鋳片の中心部にまで十分に伝わらず、中心偏析やザク欠陥が改善され難い。一方、圧下量が過大の場合は、確かにザク欠陥は解消されるが、デンドライトの樹間に残された前述の濃化溶鋼が鋳造方向とは逆の方向へ絞り出される現象である所謂逆V偏析(図14(a2)参照)が生じてしまう。
この種の技術として、例えば特許文献1や特許文献2に開示されたものがある。これらに開示されている圧下方法は、鋳片内部の固相率に応じて圧下区間や圧下量といった圧下条件を設定しようとするものである。
特開2001-259810号公報 特開平05-212517号公報
上記の特許文献1及び2に開示される圧下方法では、鋳片内部の固相率に応じて圧下条件を設定するものであるが故、当該鋳片内部の固相率を十分に精度よく把握する必要がある。この固相率は、実際の連続鋳造工程にて計測することが極めて困難であるから、一般的には凝固伝熱計算により求められている。この連続鋳造工程における凝固伝熱計算を精度よく実行するためには、少なくとも、鋼種の高温域における物性データ(例えば、凝固潜熱/熱伝導度/比熱など)及び外部からの抜熱条件(鋳型内部での抜熱/2次冷却帯におけるスプレー又はミスト冷却による熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数など)などの計算条件を正確に把握する必要がある。上記の計算条件のうち特にその計算結果に大きく影響を与えるものとして、(1)(物性データ)凝固潜熱と、(2)(外部からの抜熱条件)2次冷却帯における熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数と、が挙げられる。
前者(1)の凝固潜熱は、一般的に約55〜65[cal/g]の値が採用されているが、多くの元素を含む鋼の凝固潜熱を正確に求めるのは極めて困難である。後者(2)の2次冷却帯における熱伝達係数は、一般的に、鋼材を所定のスプレー流量で冷却させたときの温度変化を実験的に測定してみて、その測定結果に基づいて推定している。しかし、当該2次冷却帯におけるスプレー/ミスト冷却の熱伝達係数は多種のパラメータが連関する複雑な関数として表されることが報告されている(三塚ら:鉄と鋼、69(1983)、262/三塚:鉄と鋼、91(2005)、1を参照)。当該パラメータは例えば、スプレー流量/水滴のサイズ及び運動量/エアーの量及び圧力/鋳片の表面温度などのことである。そして上記熱伝達係数は、これらのパラメータが適宜に決定されたとしても測定条件によって結局は大きくバラついているのが現状である。加えて、上記の実験では、(a)鋳片の上下面における冷却能の差異の、鋳片の移動に伴う変化や、(b)浸漬ノズルの詰まりによる影響、(c)ガイドロール間の溜り水による影響、(d)低温ロールからの冷却による影響、(e)鋳片の酸化具合(スケールの付着厚み)による影響、など実機において発生し得る種々の影響を見積もることが当然できない。
上述(1)(2)の如く、凝固伝熱計算の計算条件が不確定な要素を数多く含んでいる限り、個々の鋼種/鋳造条件に応じて鋳片内部の固相率を精度よく予測することは現状では極めて困難である。参考として、凝固伝熱計算の計算結果の一例を図13に示す。本図は、前述した三塚らの文献に記載された予測式を用い、上記凝固潜熱を55又は65[cal/g]として計算してみたものである。本図において、実線は当該凝固潜熱を65[cal/g]として計算したものであり、破線は55[cal/g]として計算したものである。本図から判る通り、前記凝固潜熱を略主観的に決定している現状では、結果として、当該固相率とメニスカス距離との関係に、例えば数[m]オーダにまで及ぶ大きなズレが生じてしまうのである。また、前述した三塚らの予測式が全ての鋳造条件に適合するとは考え難く、何れの予測式を採用するかによっても、同様に当該固相率とメニスカス距離との関係に大きなズレが生じることが容易に推測される。従って、上記の特許文献1及び2に開示される圧下方法では、その圧下条件の設定基準たる固相率すら精度よく予測できないのであるから、中心偏析やザク欠陥が本当に改善されるとは到底考え難い。
本発明は係る諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定することにより、中心偏析とザク欠陥とを同時に且つ確実に抑制可能な鋼材の製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第一の観点によれば、鋼材の製造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする。圧下勾配S[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
これによれば、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件に基づいて、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係が具体的に求められる。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、中心偏析とザク欠陥とを同時に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比の小さな鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
本発明の第二の観点によれば、鋼材の製造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする。圧下勾配S[mm/m]を1.0〜3.8とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
これによれば、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件に基づいて、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係が具体的に求められる。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、中心偏析とザク欠陥とを同時に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を良好に低減できる。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比の小さな鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
本発明の第三の観点によれば、鋼材の製造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする。圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(3)で定められるメニスカス距離Lm[m]で終了する。圧下勾配S[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を、前記メニスカス距離Lm[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
Ls+Vc×1.5≦Lm≦Ls+Vc×1.7・・・(3)
これによれば、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件に基づいて、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係が具体的に求められる。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、ザク欠陥を確実に抑制できると共に、中心偏析を極めて良好に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比が小さく、中心偏析に対する要求の厳しい鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
本発明の第四の観点によれば、鋼材の製造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする。圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(3)で定められるメニスカス距離Lm[m]で終了する。圧下勾配S[mm/m]を1.0〜3.8とする圧下を、前記メニスカス距離Lm[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
Ls+Vc×1.5≦Lm≦Ls+Vc×1.7・・・(3)
これによれば、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件に基づいて、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係が具体的に求められる。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、ザク欠陥を確実に抑制できると共に、中心偏析を極めて良好に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を良好に低減できる。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比が小さく、中心偏析に対する要求の厳しい鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
上述した鋼材の製造は、以下のような方法で行われるのが好ましい。即ち、圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(4)で定められるメニスカス距離Lv[m]から開始し、前記メニスカス距離Ls[m]で終了する。
Lv≦Ls-1.0・・・(4)
これによれば、鋳片を狭面に平行な断面で切断した際に、鋳片厚み方向略中央から若干広面側へ離れた位置に視認し得る、鋳造方向上流側に向かってハ字状に開く、模様としてのV偏析(図14(b1)参照)の発生を抑制できる。加えて、鋳片を狭面に平行な断面で切断した際に、鋳片厚み方向略中央から若干広面側へ離れた位置に視認し得る、鋳造方向下流側に向かってハ字状に開く、模様としての逆V偏析(図14(b2)参照)が発生することもない。つまり、図14(b1)に図示されるV偏析と図14(b2)に図示される逆V偏析とを同時に抑制できる。
(用語の説明)
・圧下勾配S[mm/m]は、鋳造方向に対するロール対の面間距離の減少勾配[mm/m]を意味する。即ち、鋳造経路の単位距離[m]におけるロール対の面間距離の減少量[mm]を意味する。詳しくは後述する。
・面間距離[mm]は、ロール対を構成する一対のロールの外周面間の最短距離を意味する。
・メニスカス距離[m]は、鋳型内溶鋼の湯面(メニスカス)を基準として、鋳造方向に沿って観念する距離[m]を意味する。
・溶鋼熱度ΔT[℃]は、鋳型に注湯される溶鋼の溶鋼温度から、当該溶鋼の液相線温度を減じたものを意味する。なお、「鋳型に注湯される溶鋼の溶鋼温度」は、タンディッシュ内で浸漬ノズルに流入する直前の溶鋼の温度を意味するものであり、「溶鋼の液相線温度」とは、溶鋼の成分に応じて一義的に求められる。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、鋼1kgに対して用いられる冷却水の容積を意味する。
≪第一実施形態≫
以下、図面を参照しつつ、本発明の第一実施形態に関して説明する。
先ず、本実施形態に係る連続鋳造機100を、図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る連続鋳造機の全体概略図である。本図に示す如く、本実施形態に係る連続鋳造機100は、溶鋼を冷却し所定形状のシェル(凝固殻)を形成するための鋳型1と、当該鋳型1へ溶鋼を適宜の流量で注湯するためのバッファーとしてのタンディッシュ2と、当該鋳型1からみて下流側に順に並設される複数のロール3・3・・・と、を備えている。
前記複数のロール3・3・・・は、前記鋳型1の直下から鉛直下方に延び、やがて円弧状に曲がって最終的には水平方向に延びる所定の鋳造経路に沿って、且つ、当該鋳造経路の両側に夫々配設されている。また、当該鋳造経路を挟むように配置された一対のロール3・3はロール対8を構成し、当該一対のロール3・3は所定面間距離を空けて配設されている。また、鋳造方向に沿って隣り合うロール3・3の間には、鋳片に対して水を噴射して当該鋳片を所定の冷却強度(所謂比水量)で冷却するための図略の冷却水噴射装置が設けられている。
そして、本図に示す如く、前記のタンディッシュ2から適宜の浸漬ノズル2aを介して鋳型1内へ溶鋼が注湯され、注湯された溶鋼が鋳型1によって冷却されることでシェルが形成され、即ち内部に未凝固部を有する鋳片が形成される。この鋳片は、前述の冷却水噴射装置により冷却されながら、また、前記複数のロール対8・8・・・に挟持されながら、前記の鋳造経路の下流側へ送られていく。これに伴い、前記のシェルが徐々に鋳片内部へ向かって凝固成長していき、やがて内部まで完全に凝固した鋳片が形成される。
次に、本実施形態における鋼材の製造方法を具体的に説明する。
(連続鋳造条件)
本実施形態において鋳造対象とする鋼材は、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55のものである。一方、本実施形態において炭素以外の他の元素(例えば珪素など)の含有量は特に限定しない。即ち、一般的な範囲であれば自由に設定してよい。この条件を満足する鋼材として、例えば、高HAZ靭性鋼(C[wt%]:0.03、Si[wt%]:0.1、Mn[wt%]:1.45)や金型用鋼(C[wt%]:0.55、Si[wt%]:0.24、Mn[wt%]:0.74)、中炭厚板向け汎用鋼(C[wt%]:0.1〜0.15)などが挙げられる。
また、本実施形態において鋳造するスラブ鋳片は、断面が略矩形状であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310のものである。なお、鋳片厚みD[mm]は、鋳型の上端における鋳型厚み[mm]を意味する。
鋳造速度Vc[m/min]は下記式(A),(B)を満たすものとする。
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]は10〜43とする。
比水量Wt[L/kgSteel]は、0.7〜1.5とする。なお、本実施形態において冷却水は、0.8〜36のメニスカス距離[m]で観念される2次冷却帯で鋳片に対して噴射/噴霧される(他の実施形態でも同様とする。)。
そして、前記の鋳片を前記複数のロール対8・8・・・で挟持しながら連続鋳造するのである。
鋳造された上記の鋳片は、連続鋳造工程の後工程である熱間圧延工程や鍛造工程などにおいて、適宜の均熱拡散処理を施した後、最終製品厚みDf[mm]が90〜200となるように圧延する。
ところで、本実施形態に係る前記連続鋳造機100の鋳造経路のうち水平な経路においては、前記一対のロール3・3から成るロール対8に代えて、一対の圧下ロール5・5から成る圧下ロール対(ロール対)4・4・・・が当該経路に沿って配設されている。当該圧下ロール5・5も、前記ロール3・3と同様に、前記鋳造経路を沿って送られてくる鋳片を挟んで向かい合い且つ所定面間距離を空けて配設されている。即ち、圧下ロール5・5の一方は鋳造経路の上側に、他方は当該鋳造経路の下側に夫々配置されている。
以下、前記圧下ロール5・5の面間距離に関して詳細に説明する。図2は、ロール面間距離の説明図である。
本図に示す如く各圧下ロール対4・4・・・におけるロール面間距離Gは、鋳造方向に進むにつれて緩やかに狭まるように設定されている。例えば、本図の如く、上流側の圧下ロール対4aのロール面間距離G1と比較して、下流側の圧下ロール対4bのロール面間距離G2は小さくなるように設定されている。これにより、鋳造方向の上流側から送られてくる鋳片は、前記の圧下ロール対4a及び圧下ロール対4bをこの順に通過することによって、各圧下ロール対4a・4bを構成する二対の圧下ロール5・5、5・5によって鋳片厚み方向に圧下されるように構成されている。
ここで、先に簡単に説明した圧下勾配S[mm/m]を本図に基づいて詳細に説明する。この圧下勾配S[mm/m]は、鋳造方向に対するロール対の面間距離の減少勾配[mm/m]を意味する。即ち、鋳造経路の単位距離[m]におけるロール対の面間距離の減少量[mm]を意味する。
例えば本図に示す如く鋳造方向に隣り合う二対の圧下ロール対4a・4bが距離L[m]だけ離間しており、当該圧下ロール対4aのロール面間距離をG1[mm]とし、同じく圧下ロール対4bのそれをG2[mm]とすると、当該区間における圧下勾配S1-2[mm/m]は下記式で表される。
圧下勾配S1-2=(G1-G2)/L
そして、本実施形態では、圧下勾配S[mm/m](圧下勾配SLs-Lf[mm/m])を0.8〜3.8とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
このように本実施形態では、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件を設定した上で、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係を具体的に求めている。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定することから、中心偏析とザク欠陥とを同時に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる(◆欠陥エコー高さを10%未満とできる。)。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とするように圧延時圧下比の小さい鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
なお、炭素・マンガン・珪素などの中心偏析が抑制されると製品(特に厚板製品)のUT不良率が低減するのは、以下の理由による。即ち、炭素・マンガン・珪素などの中心偏析が抑制されると、中心部におけるマンガン等量が低減され、その結果、ベイナイト組織が低減されることにより水素性欠陥が防止されるからである。
以下、本実施形態に係る鋼材の製造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
先ず、各試験の評価に供される指標に関して説明する。
<中心部ザク性状>
JISの超音波探傷基準(JIS B0901)の4倍の判定基準(欠陥エコー<25%)で超音波探傷試験を行い、測定される欠陥エコー高さの大小によってUT欠陥の発生状況について評価した。このときの評価基準は下記の通りである。なお、「欠陥エコー高さ」とは、底面エコー高さに対する欠陥エコー高さの割合(%)を示すものであり、この値が小さいほどザク欠陥が発生していないことを意味する。要するに、UT欠陥の発生状況に基づいてザク欠陥の有無を評価しようとするものである。
○:製品(100mm厚)の欠陥エコー高さの最大値が5%以下
△:製品(100mm厚)の欠陥エコー高さの最大値が5%よりも大きく10%未満
×:製品(100mm厚)の欠陥エコー高さの最大値が10%以上
<中心偏析Cmax/Co>
本評価の対象は、C偏析に着目するものである。以下、下記(1)〜(4)においてC偏析の評価方法を詳細に説明する。図3を参照されたい。図3は、中心偏析Cmax/Coの評価方法の説明図である。(1:小鋳片の採取)第1に、鋳造された鋳片から鋳造方向において250mm分だけ鋳片の部分を抜き出す。第2に、前記鋳片の部分を、その鋳片幅方向において半分とするように狭面と平行に切断して小鋳片を得る(本図上、参照)。(2:切粉試料の採取)第3に、上記切断により得られた小鋳片を穿孔して切粉試料を採取する。具体的に言えば、下記の如くである(本図下、参照)。即ち、上記切断により得られた小鋳片を、図3中“L断面”及び星印で示す断面側より、φ5mmのドリル刃を用いて、鋳片厚み方向略中央に視認される線上で、鋳造方向に沿って所定間隔p(p=10mm)で、該断面に対して垂直に所定深さdp(dp=20mm)で、穿孔し、合計25箇所の切粉試料を採取する。(3:成分分析)第4に、上記穿孔で得られた25箇所分の切粉試料の夫々を、所定の成分分析方法(例えば、燃焼赤外線吸収法など)により成分分析する。第5に、成分分析の対象たる鋳片を鋳造している時に前述したタンディッシュから予め採取しておいた溶鋼試料を、第4と同様、所定の成分分析方法により成分分析する。上記の第4及び第5の成分分析においては共に、試料のC含有量C[wt%]を測定する。(4:評価)第6に、一の小鋳片から採取された前記複数箇所分の切粉試料のうち最もC含有量C[wt%]の高い切粉試料の該C含有量C[wt%]をCmax[wt%]として記録する。第7に、第6で記録されたCmax[wt%]を、第5で得られたC含有量C[wt%]としてのCo[wt%]で除して得られる比Cmax/Co(以下、中心偏析Cmax/Coと称する。)を算出して記録する。第8に、該中心偏析Cmax/Coが1.1以下だった試験を「◎」と、該中心偏析Cmax/Coが1.1よりも大きく1.2未満だった試験を「○」と、該中心偏析Cmax/Coが1.2以上だった試験を「×」と評価した。なお、中心偏析Cmax/Coが1.2未満だと、中心偏析を拡散させるための均熱拡散処理を省略しても問題ないとされる。
次に、各確認試験における試験条件とその評価結果を表に示しつつ、当該各確認試験に関して説明する。
<第一試験:メニスカス距離Ls[m]>
本試験では、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)を対象とした(後述する第二試験乃至第十五試験においても同様の鋼種を対象とした。)。
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下勾配 [mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を開始するメニスカス距離[m]を上述した式(1)で求められる範囲内とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。なお、表1において中心偏析Cmax/Coの列に「(V)」とあるのは、鋳片を狭面に平行な断面で切断した際に、鋳片厚み方向略中央近傍に視認し得る、鋳造方向上流側に向かってV字状に開く、模様としてのV偏析(図14(a1)参照)の発生が確認できたことを意味する。一方、「(逆V)」とあるのは、鋳片を狭面に平行な断面で切断した際に、鋳片厚み方向略中央近傍に視認し得る、鋳造方向下流側へ向かってV字状に開く、模様としての逆V偏析(図14(a2)参照)の発生が確認できたことを意味する。
<第二試験:メニスカス距離Lf[m]>
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を終了するメニスカス距離[m]を上述した式(2)で求められる範囲内とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
<第三試験:圧下勾配SLs-Lf[mm/m]>
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下を開始するメニスカス距離[m]から開始し圧下を終了するメニスカス距離[m]で終了する圧下の圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
一方、圧下勾配[mm/m]が0.8未満だと、中心部ザク性状が十分には改善されなかった。また、圧下勾配[mm/m]が3.8よりも大きいと、中心偏析が悪化した。
<第四試験:溶鋼熱度ΔT[℃]>
Figure 0005009019
本試験によれば、溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
なお、溶鋼の溶鋼熱度ΔT[℃]が10未満の場合は、以下の問題を生じ得る。即ち、前記のタンディッシュ2から鋳型1へ溶鋼を注湯する際のガイドとしての機能を有する前記の浸漬ノズル2a(図1参照)が詰まり易い。また、メニスカスにおいて溶鋼が凝固してしまう所謂メニスカス皮張りが発生する恐れがある。更に、圧下条件が最適位置から大きくズレるため、前記のメニスカス距離Lsやメニスカス距離Lfを一々再設定する必要が生じ、手間が増え、生産性が低下してしまう。一方、溶鋼の溶鋼熱度ΔT[℃]が43よりも高い場合は、以下の問題を生じ得る。即ち、柱状晶ブリッジングが生じ易くなり、中心偏析が悪化すると共に鋳片中心部に巨大ザク(巨大ポロシティ)が残存し易くなってしまう。また、鋳型1内においてシェルが十分には形成され難くなるので、所謂ブレークアウトの恐れもある。またこの場合も上記同様、手間が増え、生産性が低下してしまう。
<第五試験:比水量Wt[L/kgSteel]>
Figure 0005009019
本試験によれば、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
なお、当該比水量Wt[L/kgSteel]が0.7〜1.5の範囲を外れると、鋳片の未凝固部の性状が大きく変化することから、前記のメニスカス距離Lsやメニスカス距離Lfを一々再設定しなければならず、手間が増え、生産性が低下してしまう。
<第六試験:メニスカス距離Ls[m]>
第六試験乃至第十試験は、第一試験乃至第五試験に夫々対応するものであり、鋳造速度Vc[m/min]において相違する点に留意されたい。
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を開始するメニスカス距離[m]を上述した式(1)で求められる範囲内とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
<第七試験:メニスカス距離Lf[m]>
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を終了するメニスカス距離[m]を上述した式(2)で求められる範囲内とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
<第八試験:圧下勾配SLs-Lf[mm/m]>
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下を開始するメニスカス距離[m]から開始し圧下を終了するメニスカス距離[m]で終了する圧下の圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
一方、圧下勾配[mm/m]が0.8未満だと、中心部ザク性状が十分には改善されなかった。また、圧下勾配[mm/m]が3.8よりも大きいと、中心偏析が悪化した。
<第九試験:溶鋼熱度ΔT[℃]>
Figure 0005009019
本試験によれば、溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。なお、溶鋼熱度ΔT[℃]が10〜43の範囲を外れる場合に生じる問題は、第四試験の項目で説明した通りである。
<第十試験:比水量Wt[L/kgSteel]>
Figure 0005009019
本試験によれば、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。なお、比水量Wt[L/kgSteel]が0.7〜1.5の範囲を外れる場合に生じる問題は、第五試験の項目で説明した通りである。
<第十一試験:メニスカス距離Ls[m]>
第十一試験乃至第十六試験は、第一試験乃至第五試験に夫々対応するものであり、鋳片厚みD[mm]において相違する点に留意されたい。
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を開始するメニスカス距離[m]を上述した式(1)で求められる範囲内とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
<第十二試験:メニスカス距離Lf[m]>
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を終了するメニスカス距離[m]を上述した式(2)で求められる範囲内とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
<第十三試験:圧下勾配SLs-Lf[mm/m]>
Figure 0005009019
本試験によれば、圧下を開始するメニスカス距離[m]から開始し圧下を終了するメニスカス距離[m]で終了する圧下の圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。
一方、圧下勾配[mm/m]が0.8未満だと、中心部ザク性状が十分には改善されなかった。また、圧下勾配[mm/m]が3.8よりも大きいと、中心偏析が悪化した。
<第十四試験:溶鋼熱度ΔT[℃]>
Figure 0005009019
本試験によれば、溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。なお、溶鋼熱度ΔT[℃]が10〜43の範囲を外れる場合に生じる問題は、第四試験の項目で説明した通りである。
<第十五試験:比水量Wt[L/kgSteel]>
Figure 0005009019
本試験によれば、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。なお、比水量Wt[L/kgSteel]が0.7〜1.5の範囲を外れる場合に生じる問題は、第五試験の項目で説明した通りである。
≪第二実施形態≫
次に、本発明の第二実施形態に関して説明する。以下、当該第二実施形態が前述の第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
上記第一実施形態においてメニスカス距離Ls[m]から開始しメニスカス距離Lf[m]で終了する圧下の圧下勾配SLs-Lf[mm/m]は0.8〜3.8とした。これに対し、本実施形態において同じく圧下勾配SLs-Lf[mm/m]は1.0〜3.8とする。
このように本実施形態では、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件を設定した上で、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係を具体的に求めている。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定することから、中心偏析とザク欠陥とを同時に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を良好に低減できる(◆欠陥エコー高さを5%未満とできる。)。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とするように圧延時圧下比の小さい鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
以下、本実施形態に係る鋼材の製造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、上記の確認試験により合理的に裏付けられている。表3及び表8、表13を必要に応じて適宜、参照されたい。
即ち、表3及び表8、表13によれば、圧下を開始するメニスカス距離[m]から開始し圧下を終了するメニスカス距離[m]で終了する圧下の圧下勾配[mm/m]を1.0〜3.8とすると、中心部ザク性状及び中心偏析に関する評価を同時に良好とできることが判る。とりわけ、中心部ザク性状が良好である。
≪第一実施形態と第二実施形態との比較≫
ここで、上記の第二実施形態を前述した第一実施形態と比較して、相互に相違する点と、夫々の実施形態の意義と、を説明する。図4を参照されたい。図4は、圧下勾配S[mm/m]と欠陥エコー高さ[%]の関係を示す図であり、表3のデータと対応するものである。本図において、前述した第一実施形態と第二実施形態は、メニスカス距離Ls[m]から開始しメニスカス距離Lf[m]で終了する圧下の圧下勾配SLs-Lf[mm/m]において相違し、前者は0.8〜3.8とする一方で後者は1.0〜3.8とする。本図によれば、圧下勾配SLs-Lf[mm/m]が0.8〜1.0の領域の欠陥エコー高さ[%]は出荷基準値に限りなく近い10未満とされ、一方、圧下勾配SLs-Lf[mm/m]が1.0〜3.8の領域の欠陥エコー高さ[%]は安定して極めて低い数値を示している。そして、圧下勾配SLs-Lf[mm/m]が0.8未満の領域の欠陥エコー高さ[%]は同じく0.8以上の領域のそれと比較して極めて大きな値となっている。このことから、第一実施形態に係る圧下勾配SLs-Lf[mm/m]は実質的な出荷基準値を充足でき、第二実施形態に係る圧下勾配SLs-Lf[mm/m]は出荷基準値を完全に充足できると言える。
≪第三実施形態≫
次に、本発明の第三実施形態に関して説明する。以下、当該第三実施形態が前述の第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
上記第一実施形態においては、圧下勾配S[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下をメニスカス距離Ls[m]から開始しメニスカス距離Lf[m]で終了した。これに対し、本実施形態では、圧下勾配S[mm/m](圧下勾配SLs-Lm[mm/m])を0.6±0.2とする圧下をメニスカス距離Ls[m]から開始し下記式(3)で定められるメニスカス距離Lm[m]で終了し、圧下勾配S[mm/m](圧下勾配SLm-Lf[mm/m])を0.8〜3.8とする圧下をメニスカス距離Lm[m]から開始しメニスカス距離Lf[m]で終了する。
Ls+Vc×1.5≦Lm≦Ls+Vc×1.7・・・(3)
このように本実施形態では、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件を設定した上で、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係を具体的に求めている。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定することから、ザク欠陥を確実に抑制できると共に、中心偏析を極めて良好に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる(◆欠陥エコー高さを10%未満とできる。)。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とするように圧延時圧下比の小さい鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
以下、本実施形態に係る鋼材の製造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
<第十六試験:メニスカス距離Lm[m]>
本試験では、鋼種は金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とした(後述する第十七試験及び第二十一試験においても同様の鋼種を対象とした。)。
Figure 0005009019
<第十七試験:メニスカス距離Lm[m]>
Figure 0005009019
<第十八試験:メニスカス距離Lm[m]>
Figure 0005009019
<第十六試験乃至第十八試験の考察>
上記の第十六試験乃至第十八試験によれば、圧下勾配[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を圧下を開始するメニスカス距離[m]から開始しメニスカス距離Lm[m]で終了し、圧下勾配[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下をメニスカス距離Lm[m]から開始し圧下を終了するメニスカス距離[m]で終了すると、ザク欠陥を確実に抑制できると共に、中心偏析を極めて良好に且つ確実に抑制できる。更に、製品のUT不良率を低減できる(◆欠陥エコー高さを10%未満とできる。)。
なお、本発明の発明者による他の試験研究の結果より、圧下を開始するメニスカス距離からメニスカス距離Lm[m]までの圧下勾配[mm/m]を0.4未満とするとV偏析(図14(a1)参照)が発生してしまい、同じく圧下を開始するメニスカス距離からメニスカス距離Lm[m]までの圧下勾配[mm/m]を0.8よりも大きくすると逆V偏析(図14(a2)参照)が発生してしまうことが明らかとなっている。
≪第四実施形態≫
次に、本発明の第四実施形態に関して説明する。以下、当該第四実施形態が前述の第三実施形態と相違する点を中心に説明する。
上記第三実施形態においては、圧下勾配SLs-Lm[mm/m]を0.6±0.2とする圧下をメニスカス距離Ls[m]から開始しメニスカス距離Lm[m]で終了し、圧下勾配SLm-Lf[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下をメニスカス距離Lm[m]から開始しメニスカス距離Lf[m]で終了した。これに対し、本実施形態では、圧下勾配SLs-Lm[mm/m]を0.6±0.2とする圧下をメニスカス距離Ls[m]から開始しメニスカス距離Lm[m]で終了し、圧下勾配SLm-Lf[mm/m]を1.0〜3.8とする圧下をメニスカス距離Lm[m]から開始しメニスカス距離Lf[m]で終了する。
このように本実施形態では、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件を設定した上で、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係を具体的に求めている。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定することから、ザク欠陥を確実に抑制できると共に、中心偏析を極めて良好に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる(◆欠陥エコー高さを5%未満とできる。)。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とするように圧延時圧下比の小さい鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
以下、本実施形態に係る鋼材の製造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、上記の確認試験により合理的に裏付けられている。
先ず、鋳造速度Vc[m/min]が1.0の場合についての技術的効果について説明する。試験No.3(第一試験)と、試験No.19(第十六試験)と、を比較されたい。これらの試験において圧下位置は両者とも22.6〜29.1[m]と同一であり、中心部のザク性状に関しては両者とも○の評価を得ている。しかし、中心偏析に関して言えば、試験No.3ではCmax/Co=1.15(○)の評価しか得られず、一方で、試験No.19ではCmax/Co=1.05(◎)の評価が得られた。
次に、試験No.1(第一試験)と、試験No.18(第十六試験)と、を比較されたい。試験No.1では圧下位置が19.4〜29.1[m]で圧下勾配が1.5[mm/m]であり中心部のザク性状に関しては○の評価を得ているが、中心偏析に関しては1.32であって×の評価を受けている。一方で、試験No.18では圧下位置が22.6〜24.3[m]での圧下勾配を0.6±0.2[mm/m]とし、その後の圧下勾配を1.5[mm/m]とすることにより、前部の過圧下の影響が無くなり、Cmax/Co=1.08(◎)の評価が得られ、大幅な改善効果が認められる。
次に、鋳造速度Vc[m/min]が1.2の場合についての技術的効果について説明する。試験No.43(第六試験)と、試験No.58、No.59(第十七試験)と、を比較されたい。これらの試験において中心部のザク性状に関しては両者とも○の評価を得ている。しかし、中心偏析に関して言えば、試験No.43では○の評価しか得られず、一方で、試験NO.58、No.59では◎の評価が得られ、大幅な改善効果が認められる。
上記の通り、圧下を開始するメニスカス距離[m]から開始しメニスカス距離Lm[m]で終了する圧下の圧下勾配[mm/m]を0.6±0.2とし、メニスカス距離Lm[m]から開始し圧下を終了するメニスカス距離[m]で終了する圧下の圧下勾配[mm/m]を1.0〜3.8とすると、ザク欠陥を確実に抑制できると共に、中心偏析を極めて良好に且つ確実に抑制できる。更に、製品のUT不良率を低減できる(◆欠陥エコー高さを5%未満とできる。)。
≪第五実施形態≫
次に、本発明の第五実施形態に関して説明する。以下、当該第五実施形態が前述の第一実施形態乃至第四実施形態と相違する点を中心に説明する。
本実施形態では、前述の第一実施形態乃至第四実施形態において、圧下勾配S[mm/m](圧下勾配SLv-Ls[mm/m])を0.6±0.2とする圧下を、下記式(4)で定められるメニスカス距離Lv[m]から開始しメニスカス距離Ls[m]で終了する。
Lv≦Ls-1.0・・・(4)
これによれば、鋳片を狭面に平行な断面で切断した際に、鋳片厚み方向略中央から若干広面側へ離れた位置に視認し得る、鋳造方向上流側に向かって開く、V偏析(図14(b1)参照)の発生を抑制できる。加えて、鋳片を狭面に平行な断面で切断した際に、鋳片厚み方向略中央から若干広面側へ離れた位置に視認し得る、鋳造方向下流側に向かって開く、逆V偏析(図14(b2)参照)が発生することもない。つまり、図14(b1)に図示されるV偏析と図14(b2)に図示される逆V偏析とを同時に抑制できる。
なお、本実施形態は、前述の第一実施形態乃至第四実施形態の何れとも組み合わせて実施できるものであり、いわば、前記の第一実施形態乃至第四実施形態の「更なる改善」を期するものである。
以下、本実施形態に係る鋼材の製造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
<第十九試験:メニスカス距離Lv[m]>
下記表19に示される「周辺V偏析残」は前述したV偏析(図14(b1)参照)の発生が確認できたことを意味し、「周辺V偏析無し」は前述したV偏析(図14(b1)参照)の未発生が確認できたことを意味する(第二十試験及び第二十一試験においても同様とする。)。
Figure 0005009019
<第二十試験:メニスカス距離Lv[m]>
Figure 0005009019
<第二十一試験:メニスカス距離Lv[m]>
Figure 0005009019
<第十九試験乃至第二十一試験の考察>
上記の第十九試験乃至第二十一試験によれば、圧下勾配S[mm/m](圧下勾配SLv-Ls[mm/m])を0.6±0.2とする圧下を、メニスカス距離Lv[m]から開始しメニスカス距離Ls[m]で終了すると、鋳片の鋳造方向に沿う切断面の軸心周囲(厚み方向中央周囲)にV偏析(図14(b1)参照)が現れるのを抑制できることが判る。
なお、本発明の発明者による他の試験研究の結果より、上記の圧下勾配SLv-Ls[mm/m]を0.4未満とするとV偏析(図14(b1)参照)が発生してしまい、同じく圧下勾配SLv-Ls[mm/m]を0.8よりも大きくすると逆V偏析(図14(b2)参照)が発生してしまうことが明らかとなっている。
次に、本発明の技術的内容の理解を容易とすべく、上述した第一実施形態乃至第五実施形態の一実施態様を図5乃至図12に基づいて説明する。
<第一実施態様>
本実施態様は、前述の第一実施形態のみを実施する態様である。本実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を図5に模式的に表す。本図において矩形で囲まれた領域は、圧下勾配S[mm/m]の好適な範囲を示す(図6乃至図12においても同様とする。)。
<第二実施態様>
本実施態様は、前述の第二実施形態のみを実施する態様である。本実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を図6に模式的に表す。
<第三実施態様>
本実施態様は、前述の第三実施形態のみを実施する態様である。本実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を図7に模式的に表す。
<第四実施態様>
本実施態様は、前述の第四実施形態のみを実施する態様である。本実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を図8に模式的に表す。
<第五実施態様>
本実施態様は、前述の第一実施形態と第五実施形態を組み合わせて実施する態様である。本実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を図9に模式的に表す。
<第六実施態様>
本実施態様は、前述の第二実施形態と第五実施形態を組み合わせて実施する態様である。本実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を図10に模式的に表す。
<第七実施態様>
本実施態様は、前述の第三実施形態と第五実施形態を組み合わせて実施する態様である。本実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を図11に模式的に表す。
<第八実施態様>
本実施態様は、前述の第四実施形態と第五実施形態を組み合わせて実施する態様である。本実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を図12に模式的に表す。
以上説明した如く上記第一実施形態において鋼材の製造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする。圧下勾配S[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
これによれば、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件に基づいて、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係が具体的に求められる。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、中心偏析とザク欠陥とを同時に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比の小さな鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
以上説明した如く上記第二実施形態において鋼材の製造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする。圧下勾配S[mm/m]を1.0〜3.8とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
これによれば、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件に基づいて、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係が具体的に求められる。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、中心偏析とザク欠陥とを同時に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を良好に低減できる。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比の小さな鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
以上説明した如く上記第三実施形態において鋼材の製造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする。圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(3)で定められるメニスカス距離Lm[m]で終了する。圧下勾配S[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を、前記メニスカス距離Lm[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
Ls+Vc×1.5≦Lm≦Ls+Vc×1.7・・・(3)
これによれば、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件に基づいて、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係が具体的に求められる。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、ザク欠陥を確実に抑制できると共に、中心偏析を極めて良好に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比が小さく、中心偏析に対する要求の厳しい鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
以上説明した如く上記第四実施形態において鋼材の製造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする。圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(3)で定められるメニスカス距離Lm[m]で終了する。圧下勾配S[mm/m]を1.0〜3.8とする圧下を、前記メニスカス距離Lm[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する。
(D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
Ls+Vc×1.5≦Lm≦Ls+Vc×1.7・・・(3)
これによれば、溶鋼の成分・鋳片のサイズ・鋳造速度などの具体的な鋳造条件に基づいて、圧下勾配S[mm/m]と、圧下を開始し終了するメニスカス距離[m]と、の関係が具体的に求められる。即ち、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、ザク欠陥を確実に抑制できると共に、中心偏析を極めて良好に且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を良好に低減できる。当該効果は、最終製品厚みDf[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比が小さく、中心偏析に対する要求の厳しい鋼材を製造する場合において特に有用である。更には、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
また、上記鋼材の製造は、更に、以下のような方法で行われる。即ち、圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(4)で定められるメニスカス距離Lv[m]から開始し、前記メニスカス距離Ls[m]で終了する。
Lv≦Ls-1.0・・・(4)
これによれば、鋳片を狭面に平行な断面で切断した際に、鋳片厚み方向略中央から若干広面側へ離れた位置に視認し得る、鋳造方向上流側に向かって開く、V偏析(図14(b1)参照)の発生を抑制できる。加えて、鋳片を狭面に平行な断面で切断した際に、鋳片厚み方向略中央から若干広面側へ離れた位置に視認し得る、鋳造方向下流側に向かって開く、逆V偏析(図14(b2)参照)が発生することもない。つまり、図14(b1)に図示されるV偏析と図14(b2)に図示される逆V偏析とを同時に抑制できる。
換言すれば、上記の圧下勾配を採用することによって、圧下勾配が0.4mm/m未満において現れる軸芯周囲のV偏析、かつ圧下勾配が0.8mm/mより大きい時に現れる軸芯周囲の逆V偏析を防止することが可能になる。
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
◆ 即ち、例えば、上記各実施形態において特に言及のない鋳造経路における圧下勾配S[mm/m]は、原則、実施の態様に応じて自由に設定されたい。特記ない限り、圧下勾配S[mm/m]は、通常、0.05〜0.10程度が採用される。
本発明の第一実施形態に係る連続鋳造機の全体概略図 ロール面間距離の説明図 中心偏析Cmax/Coの評価方法の説明図 圧下勾配S[mm/m]と欠陥エコー高さ[%]の関係を示す図 本発明の第一実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を示す図 本発明の第二実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を示す図 本発明の第三実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を示す図 本発明の第四実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を示す図 本発明の第五実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を示す図 本発明の第六実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を示す図 本発明の第七実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を示す図 本発明の第八実施態様における圧下勾配S[mm/m]とメニスカス距離[m]との関係を示す図 固相率の計算困難性の説明図 図3に類似する図であって、種々の偏析態様を模式的に表す説明図
1 鋳型
2 タンディッシュ
3 ロール
4 圧下ロール対
5 圧下ロール
8 ロール対
100 連続鋳造機
G ロール面間距離
Ls メニスカス距離
Lf メニスカス距離
Lm メニスカス距離
Lv メニスカス距離

Claims (5)

  1. 炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、
    鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
    240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
    280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
    溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、
    比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、
    最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする鋼材の製造方法において、
    圧下勾配S[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する、
    ことを特徴とする鋼材の製造方法。
    (D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
    Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
  2. 炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、
    鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
    240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
    280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
    溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、
    比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、
    最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする鋼材の製造方法において、
    圧下勾配S[mm/m]を1.0〜3.8とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する、
    ことを特徴とする鋼材の製造方法。
    (D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
    Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
  3. 炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、
    鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
    240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
    280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
    溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、
    比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、
    最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする鋼材の製造方法において、
    圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(3)で定められるメニスカス距離Lm[m]で終了し、
    圧下勾配S[mm/m]を0.8〜3.8とする圧下を、前記メニスカス距離Lm[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する、
    ことを特徴とする鋼材の製造方法。
    (D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
    Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
    Ls+Vc×1.5≦Lm≦Ls+Vc×1.7・・・(3)
  4. 炭素含有量C[wt%]が0.03〜0.55であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、
    鋳造速度Vc[m/min]を下記式(A),(B)を満たすものとし、
    240≦D<280のとき、-0.009D+3.52≦Vc≦-0.00425D+2.42・・・(A)
    280≦D≦310のとき、-0.006D+2.68≦Vc≦-0.007667D+3.377・・・(B)
    溶鋼熱度ΔT[℃]を10〜43とし、
    比水量Wt[L/kgSteel]を0.7〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、
    最終製品厚みDf[mm]を90〜200とする鋼材の製造方法において、
    圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(1)で定められるメニスカス距離Ls[m]から開始し、下記式(3)で定められるメニスカス距離Lm[m]で終了し、
    圧下勾配S[mm/m]を1.0〜3.8とする圧下を、前記メニスカス距離Lm[m]から開始し、下記式(2)で定められるメニスカス距離Lf[m]で終了する、
    ことを特徴とする鋼材の製造方法。
    (D/61)2×Vc≦Ls≦(D/58)2×Vc・・・(1)
    Lf≧(D/52.4)2×Vc・・・(2)
    Ls+Vc×1.5≦Lm≦Ls+Vc×1.7・・・(3)
  5. 請求項1〜4の何れか一に記載の鋼材の製造方法において、
    圧下勾配S[mm/m]を0.6±0.2とする圧下を、下記式(4)で定められるメニスカス距離Lv[m]から開始し、前記メニスカス距離Ls[m]で終了する、
    ことを特徴とする鋼材の製造方法。
    Lv≦Ls-1.0・・・(4)
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