JP2008264827A - 連鋳におけるバネ用鋼の中心偏析改善方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】具体的操業条件に基づいて、中心偏析を少なくできるバネ用鋼の連続鋳造方法を提供することにある。
【解決手段】鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を270〜310とし、鋳造速度Vc[m/min]を0.80〜0.95とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.20〜0.60とし、溶鋼過熱度ΔT[℃]を15〜45とする。メニスカス距離M[m]が24.2〜25.9の区間のロール勾配GRD[mm/m]を0.6〜4.4とし、同じく25.9〜27.5の区間は0.5〜2.5とし、27.5〜29.1の区間は0.2〜1.6とし、29.1〜30.7の区間は0.0〜0.6とする。
【選択図】図3
【解決手段】鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を270〜310とし、鋳造速度Vc[m/min]を0.80〜0.95とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.20〜0.60とし、溶鋼過熱度ΔT[℃]を15〜45とする。メニスカス距離M[m]が24.2〜25.9の区間のロール勾配GRD[mm/m]を0.6〜4.4とし、同じく25.9〜27.5の区間は0.5〜2.5とし、27.5〜29.1の区間は0.2〜1.6とし、29.1〜30.7の区間は0.0〜0.6とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、連鋳において、バネ用鋼(例えば弁バネ用鋼や懸架バネ用鋼など)の中心偏析を改善する方法に関する。
この種の技術として、特許文献1及び特許文献2(以下、特許文献1等)は、鋳片厚み中心部の計算固相率が所定値となる時点から完全凝固する時点に至るまで鋳片に対して軽圧下する技術を開示する。
上記の特許文献1等に開示される方法では、鋳片内部の固相率に応じて圧下条件を設定するものであるが故、当該鋳片内部の固相率を十分に精度よく把握する必要がある。この固相率は、実際の連続鋳造工程にて計測することが極めて困難であるから、一般的には凝固伝熱計算により求められている(上記特許文献1等中、「“計算”固相率」という記載からも理解されよう。)。この連続鋳造工程における凝固伝熱計算を精度よく実行するためには、少なくとも、鋼種の高温域における物性データ(例えば、凝固潜熱/熱伝導度/比熱など)及び外部からの抜熱条件(鋳型内部での抜熱/2次冷却帯におけるスプレー又はミスト冷却による熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数など)などの計算条件を精度良くに把握する必要がある。上記の計算条件のうち特にその計算結果に大きく影響を与えるものとして、(1)(物性データ)凝固潜熱と、(2)(外部からの抜熱条件)2次冷却帯における熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数と、が挙げられる。
前者(1)の凝固潜熱は、一般的に約55〜65[cal/g]の値が採用されているが、多くの元素を含む鋼の凝固潜熱を精確に求めるのは極めて困難である。後者(2)の2次冷却帯における熱伝達係数は、一般的に、鋼材を所定のスプレー流量で冷却させたときの温度変化を実験的に測定してみて、その測定結果に基づいて推定している。しかし、該2次冷却帯におけるスプレー/ミスト冷却の熱伝達係数は多種のパラメータが連関する複雑な関数として表されることが報告されている(三塚ら:鉄と鋼、69(1983)、262/三塚:鉄と鋼、91(2005)、1を参照)。該パラメータは例えば、スプレー流量/水滴のサイズ及び運動量/エアーの量及び圧力/鋳片の表面温度などのことである。そして上記熱伝達係数は、これらのパラメータが適宜に決定されたとしても測定条件によって結局は大きくバラついているのが現状である。加えて、上記の実験では、(a)鋳片の上下面における冷却能の差異の、鋳片の移動に伴う変化や、(b)浸漬ノズルの詰まりによる影響、(c)ガイドロール間の溜り水による影響、(d)低温ロールからの冷却による影響、(e)鋳片の酸化具合(スケールの付着厚み)による影響、など実機において発生し得る種々の影響を見積もることが当然できない。
上述(1)(2)の如く、凝固伝熱計算の計算条件が不確定な要素を数多く含んでいる限り、個々の鋼種/鋳造条件に応じて鋳片内部の固相率を精度よく予測することは現状では極めて困難である。参考として、凝固伝熱計算の計算結果の一例を図17に示す。本図は、前述した三塚らの文献に記載された予測式を用い、上記凝固潜熱を55又は65[cal/g]として計算してみたものである。本図において、実線は当該凝固潜熱を65[cal/g]として計算したものであり、破線は55[cal/g]として計算したものである。本図から判る通り、前記凝固潜熱を略主観的に決定している現状では、結果として、当該固相率とメニスカス距離との関係に、例えば数mオーダにまで及ぶ大きなズレが生じてしまうのである。また、前述した三塚らの予測式が全ての鋳造条件に適合するとは考え難く、何れの予測式を採用するかによっても、同様に該固相率とメニスカス距離との関係に大きなズレが生じることが容易に推測される。
従って、上記の特許文献1等に開示される方法では、その圧下条件の設定基準たる固相率すら精度よく予測できないのであるから、中心偏析の低減効果が本当に奏されるかは確率の問題である。事実、中心偏析の低減効果には大きなバラツキのあることが判明しており、鋼種成分や操業条件などが変動しても良好な鋳片を鋳造できるということは極めて困難とされている。なお、上記の特許文献1等には、鋳型内溶鋼湯面から20〜32mの範囲に軽圧下帯が設けられている点が記載されているが、この記載は、とりあえず軽圧下帯を設けたという事実を表現しているに過ぎず、何ら、技術的に有用な情報を新規に公開したことにはならない(段落番号0034参照)。
本発明は係る諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、凝固速度に対して支配的な具体的操業条件に基づいて、中心偏析を少なくできるバネ用鋼の中心偏析改善方法を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、炭素含有量C[wt%]を0.35〜0.70とし、ケイ素含有量Si[wt%]を0.10〜2.60とし、マンガン含有量Mn[wt%]を0.10〜1.00とし、クロム含有量Cr[wt%]を0.40〜1.20とするバネ用鋼の中心偏析の改善は、以下のような方法で行われる。即ち、鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を270〜310とし、鋳造速度Vc[m/min]を0.80〜0.95とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.20〜0.60とし、溶鋼過熱度ΔT[℃]を15〜45とする。メニスカス距離M[m]が24.2〜25.9である鋳造経路としての第1経路部Int1におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.6〜4.4とし、メニスカス距離M[m]が25.9〜27.5である鋳造経路としての第2経路部Int2におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.5〜2.5とし、メニスカス距離M[m]が27.5〜29.1である鋳造経路としての第3経路部Int3におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.2〜1.6とし、メニスカス距離M[m]が29.1〜30.7である鋳造経路としての第4経路部Int4におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.0〜0.6とする。これによれば、バネ用鋼の中心偏析を改善できる。
<用語の定義>
(ロール勾配GRD・ロールギャップG)
本明細書中において用いる「ロール勾配GRD[mm/m]」を図1に基づいて以下の如く定義する。即ち、鋳造経路に沿って並設される複数対のロール対のうち、任意のロール対と、該ロール対に対して前記鋳造経路の下流側に隣り合うロール対と、の間のロール勾配GRD1-2[mm/m]は、前者ロール対のロールギャップG1[mm]と、後者ロール対のロールギャップG2[mm]と、両ロール対のロールピッチL1-2[m]と、に基づいて下記式により求められるものとする。
GRD1-2=(G1−G2)/L1-2
(ロール勾配GRD・ロールギャップG)
本明細書中において用いる「ロール勾配GRD[mm/m]」を図1に基づいて以下の如く定義する。即ち、鋳造経路に沿って並設される複数対のロール対のうち、任意のロール対と、該ロール対に対して前記鋳造経路の下流側に隣り合うロール対と、の間のロール勾配GRD1-2[mm/m]は、前者ロール対のロールギャップG1[mm]と、後者ロール対のロールギャップG2[mm]と、両ロール対のロールピッチL1-2[m]と、に基づいて下記式により求められるものとする。
GRD1-2=(G1−G2)/L1-2
なお、ロールギャップG[mm]とは、鋳片を挟んで一対で設けられる両ロールの面間最短距離[mm]のことである。
(メニスカス距離M)
本明細書中において用いる「メニスカス距離M[m]」の定義に関して説明する。即ち、「メニスカス距離M[m]」は、注湯された溶鋼を冷却して所定の形状の凝固シェルを形成するための鋳型内に収容されている溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念する距離[m]を意味するものとする。
本明細書中において用いる「メニスカス距離M[m]」の定義に関して説明する。即ち、「メニスカス距離M[m]」は、注湯された溶鋼を冷却して所定の形状の凝固シェルを形成するための鋳型内に収容されている溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念する距離[m]を意味するものとする。
(溶鋼過熱度ΔT)
本明細書中において用いる「溶鋼過熱度ΔT[℃]」の定義に関して説明する。即ち、「溶鋼過熱度ΔT[℃]」は、タンディッシュ内の溶鋼についての溶鋼過熱度ΔT[℃]を意味するものとする。なお、その測定基準は、後述する資料1を参照されたい。
本明細書中において用いる「溶鋼過熱度ΔT[℃]」の定義に関して説明する。即ち、「溶鋼過熱度ΔT[℃]」は、タンディッシュ内の溶鋼についての溶鋼過熱度ΔT[℃]を意味するものとする。なお、その測定基準は、後述する資料1を参照されたい。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
先ず、本実施形態に係るバネ用鋼の中心偏析改善方法に供される連続鋳造機100について、図2を参照しつつ概説する。
本図に示す如く本実施形態において連続鋳造機100は、注湯される溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型1と、該鋳型1へ溶鋼を所定流量で注湯するために設けられる図略のタンディッシュと、鋳型1の直下から所定の鋳造経路に沿って並設される複数対のロール対2・2・・・と、を備えている。本実施形態において前記の鋳造経路は、その上流から下流へ向かって順に、(1)鉛直方向に延びる垂直経路部と、(2)該垂直経路部の下流側に設けられ、所定の円弧半径を有して円弧状に延びる円弧経路部と、(3)該円弧経路部の下流側に設けられ、水平方向に延びる水平経路部と、(3)前記の円弧経路部及び水平経路部の間に設けられ、前記円弧半径を漸増させることにより前記の円弧経路部及び水平経路部を滑らかに接続する矯正経路部と、から構成されている。要するに、本実施形態に係る連続鋳造機100は、所謂垂直逐次曲げ型連続鋳造機に構成されている。
また、前記のロール対2・2・・・の夫々は、鋳造対象としてのバネ用鋼を、両広面でもって挟持する一対のロール2a・2aから構成されている。この一対のロール2a・2aのロールギャップG(図1参照)は適宜の手段により調節可能に構成されている。
また、前記の鋳造経路に沿っては、前記の鋳型1内で形成され該鋳型1から引き抜かれる凝固シェルに対して所定の流量で冷却水を噴霧する冷却スプレー4・4・・・が適宜に設けられている。一般に、上記鋳型1が1次冷却帯と称されるのに対し、この意味で、これら冷却スプレー4・4・・・が設けられている経路部は2次冷却帯と称されている。
また、鋳型1から引き抜かれ鋳造経路に沿って搬送される凝固シェルは、自然放熱や上記冷却スプレー4・4・・・などにより更に冷却されて収縮する。従って、上記のロール対2・2・・・のロールギャップGの夫々は、一般に、鋳造経路の下流側へ進むに連れて緩やかに小さく(即ち、狭く)なるように調節されている。換言すれば、前記のロール勾配GRDは、原則として、鋳造経路の全域に亘って、常に、ゼロ以上となるように設定されている。
次に、上記の連続鋳造機100の作動について概説する。
1.バネ用鋼の連続鋳造を開始する前に予め図略のダミーバーを前記の連続鋳造機100内に適宜に挿入しておく。
2.前述した図略のタンディッシュから鋳型1へ所定の流量で溶鋼を注湯する。
3.鋳型1内に所定量の溶鋼が注湯されたら、前記のダミーバーを鋳造経路の下流側へ向かって所定の速度で引き抜く。
4.所定のメニスカス距離において上記ダミーバーを適宜の手段により回収し、もって、バネ用鋼は連続的に鋳造され始める。
2.前述した図略のタンディッシュから鋳型1へ所定の流量で溶鋼を注湯する。
3.鋳型1内に所定量の溶鋼が注湯されたら、前記のダミーバーを鋳造経路の下流側へ向かって所定の速度で引き抜く。
4.所定のメニスカス距離において上記ダミーバーを適宜の手段により回収し、もって、バネ用鋼は連続的に鋳造され始める。
本実施形態において、バネ用鋼を鋳造する速度としての鋳造速度Vc[m/min]は0.80〜0.95としている。また、前記の鋳型1の上端における鋳型厚D[mm]は、270〜310としている。また、上記の2次冷却帯に設けられている複数の冷却スプレー4・4・・・によって噴霧される冷却水の量としての所謂比水量Wt[L/kgSteel]は、0.20〜0.60としている。また、所謂溶鋼過熱度ΔT[℃]は15〜45としている(測定基準については後述(資料1)する。)。なお、所謂鋳型内溶鋼攪拌強度M-EMS[gauss]は100〜250としている(測定基準については後述(資料2)する。)。
また、本実施形態において連続鋳造の対象たるバネ用鋼の成分は、以下の通りとする。
・炭素含有量C[wt%]:0.35〜0.70
・ケイ素含有量Si[wt%]:0.10〜2.60
・マンガン含有量Mn[wt%]:0.10〜1.00
・クロム含有量Cr[wt%]:0.40〜1.20
・炭素含有量C[wt%]:0.35〜0.70
・ケイ素含有量Si[wt%]:0.10〜2.60
・マンガン含有量Mn[wt%]:0.10〜1.00
・クロム含有量Cr[wt%]:0.40〜1.20
次に、鋳造経路に沿って並設される前記複数のロール対2・2・・・の夫々のロールギャップGを適宜に調節することにより設定される前記のロール勾配GRDについて、図3を参照しつつ詳細に説明する。
即ち、本図において斜線領域で示す如く本実施形態においては、メニスカス距離M[m]が24.2〜25.9である鋳造経路としての第1経路部Int1におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.6〜4.4とし、メニスカス距離M[m]が25.9〜27.5である鋳造経路としての第2経路部Int2におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.5〜2.5とし、メニスカス距離M[m]が27.5〜29.1である鋳造経路としての第3経路部Int3におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.2〜1.6とし、メニスカス距離M[m]が29.1〜30.7である鋳造経路としての第4経路部Int4におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.0〜0.6とする。
なお、この第1〜第4経路部Int1〜4におけるロール勾配GRD[mm/m]は夫々、各数値範囲内であれば、一定であっても変動するものであっても何れでもよい。
本実施形態における前記ロール勾配GRD[mm/m]の具体的な一設定値を図4に示す。図4は、本実施形態に係る前記のロール勾配GRD[mm/m]に関する条件をすべて満たしている例を示す図であって、図中の太線は各メニスカス距離M[m]におけるロール勾配GRD[mm/m]の設定値を表す。
これに対比させるかたちで、上記ロール勾配GRD[mm/m]に関する条件のすべては満たしていない例(比較例)を図5〜7に例示する。図5〜7は夫々、本実施形態における前記のロール勾配GRD[mm/m]に関する条件のすべては満たしていない例を示す図である。
次に、本実施形態における前記ロール勾配GRD[mm/m]の設定の仕方について、図8を参照しつつ例示する。図8は、ロール勾配の一設定方法を例示する図である。
ここでは、本図に示す如く前記複数のロール対2・2・・・が、所定対毎にロールスタンドに回転自在に支持されている場合における前記ロール勾配GRD[mm/m]の設定の仕方について説明する。なお、この場合、一のロールスタンドに支持されている複数のロール2a・2a・・・のロールアライメントは可及的に均一であることが好ましい。
説明の都合上、本図において上流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も下流側のロール対2をロール対2iと称し、同じく下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・を上流側から順にロール対2i+1、2i+2、・・・、2i+j-1、2i+jと称する。そして、この下流側のロールスタンドに支持されているロール対2・2・・・(2i+1〜2i+j)の対の数をn対とする。つまり、(i+j)-(i+1)+1=nである。
同様に、説明の都合上、上記夫々のロール対2・2・・・(2iや2i+jなど)のメニスカス距離Mは、各ロール対2・2・・・の符号に付される添え字を伴って表記することとする。例えば、上記のロール対2iのメニスカス距離Mはメニスカス距離Miと表記し、ロール対2i+jのメニスカス距離Mはメニスカス距離Mi+jと表記する、である。
以下、ロール勾配GRDの設定の仕方を、本図に示す如くSTEP1とSTEP2に分けて説明する。一例として、メニスカス距離M[m]がMi〜Mi+jである経路部のロール勾配GRD[mm/m]を設定してみる。なお、上流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も下流側のもの(ロール対2i)がメニスカス距離Mi[m]に配置され、下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も下流側のもの(ロール対2i+j)がメニスカス距離Mi+j[m]に配置されているものとする。
<STEP1:(1)〜(3)>
(1) メニスカス距離Mi[m]に配置されているロール対2iのロールギャップGiを測定する。
例:Gi[mm]=286
(2) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、前記のロール対2iと、の間の距離(Mi+j−Mi)[m]を測定する。
例:Mi+j−Mi[m]=1.6
(3) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+jのロールギャップGi+jを求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+jを前記のロール対2i+jに対して適用する。
Gi+j=Gi−GRD×(Mi+j−Mi)
例:GRD[mm]=2.0、Gi+j[mm]=286−2.0×1.6=282.80
(1) メニスカス距離Mi[m]に配置されているロール対2iのロールギャップGiを測定する。
例:Gi[mm]=286
(2) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、前記のロール対2iと、の間の距離(Mi+j−Mi)[m]を測定する。
例:Mi+j−Mi[m]=1.6
(3) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+jのロールギャップGi+jを求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+jを前記のロール対2i+jに対して適用する。
Gi+j=Gi−GRD×(Mi+j−Mi)
例:GRD[mm]=2.0、Gi+j[mm]=286−2.0×1.6=282.80
<STEP2:(4)〜(5)>
(4) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も上流側のロール対2i+1と、の間の距離(Mi+j−Mi+1)[m]を求める。
例:(Mi+j−Mi+1)[m]=1.28
(5) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+1に対して適用すべきロールギャップGi+1を求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を同様に適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+1を前記のロール対2i+1に対して適用する。
Gi+1=Gi+j+GRD×(Mi+j−Mi+1)
例:Gi+1[m]=282.80+2.0×1.28=285.36
(4) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も上流側のロール対2i+1と、の間の距離(Mi+j−Mi+1)[m]を求める。
例:(Mi+j−Mi+1)[m]=1.28
(5) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+1に対して適用すべきロールギャップGi+1を求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を同様に適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+1を前記のロール対2i+1に対して適用する。
Gi+1=Gi+j+GRD×(Mi+j−Mi+1)
例:Gi+1[m]=282.80+2.0×1.28=285.36
以下、本実施形態に係るバネ用鋼の中心偏析改善方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
<評価方法とその根拠>
先ず、各試験における技術的効果の評価の方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図9は、中心偏析の評価方法の手順を説明するための図である。
先ず、各試験における技術的効果の評価の方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図9は、中心偏析の評価方法の手順を説明するための図である。
本評価の対象は、鋳片の中心偏析の程度である。特に、C偏析とSi偏析に着目するものである。以下、下記(1)〜(4)においてはC偏析の評価方法を詳細に説明し、下記(5)においてはSi偏析の評価方法を簡単に説明する。
(1) 小鋳片の採取
即ち、第1に、鋳造された鋳片から鋳造方向において400mm分だけ鋳片の部分を抜き出す。第2に、前記鋳片の部分を、その鋳片幅方向において半分とするように狭面と平行に切断して小鋳片を得る(図9上、参照)。
即ち、第1に、鋳造された鋳片から鋳造方向において400mm分だけ鋳片の部分を抜き出す。第2に、前記鋳片の部分を、その鋳片幅方向において半分とするように狭面と平行に切断して小鋳片を得る(図9上、参照)。
(2) 切粉試料の採取
第3に、上記切断により得られた小鋳片を穿孔して切粉試料を採取する。具体的には下記の如くである(図9下、参照)。
即ち、上記切断により得られた小鋳片を、図9中“L断面”及び星印で示す断面側より、φ5mmのドリル刃を用いて、鋳片厚み方向略中央に視認される線上で、鋳造方向に沿って所定間隔p(p=10mm)で、該断面に対して垂直に所定深さdp(dp=4〜6mm)で、穿孔し、合計38箇所の切粉試料を採取する。
第3に、上記切断により得られた小鋳片を穿孔して切粉試料を採取する。具体的には下記の如くである(図9下、参照)。
即ち、上記切断により得られた小鋳片を、図9中“L断面”及び星印で示す断面側より、φ5mmのドリル刃を用いて、鋳片厚み方向略中央に視認される線上で、鋳造方向に沿って所定間隔p(p=10mm)で、該断面に対して垂直に所定深さdp(dp=4〜6mm)で、穿孔し、合計38箇所の切粉試料を採取する。
(3) 成分分析
第4に、上記穿孔で得られた38箇所分の切粉試料の夫々を、所定の成分分析方法(例えば、燃焼赤外線吸収法など)により成分分析する。
第5に、成分分析の対象たる鋳片(凝固シェル)を鋳型内で形成している時に前述したタンディッシュから予め採取しておいた溶鋼試料を、第4と同様、所定の成分分析方法により成分分析する。
上記の第4及び第5の成分分析においては共に、試料の炭素含有量C[wt%]を測定する。
第4に、上記穿孔で得られた38箇所分の切粉試料の夫々を、所定の成分分析方法(例えば、燃焼赤外線吸収法など)により成分分析する。
第5に、成分分析の対象たる鋳片(凝固シェル)を鋳型内で形成している時に前述したタンディッシュから予め採取しておいた溶鋼試料を、第4と同様、所定の成分分析方法により成分分析する。
上記の第4及び第5の成分分析においては共に、試料の炭素含有量C[wt%]を測定する。
(4) 評価
第6に、一の小鋳片から採取された前記複数箇所分の切粉試料のうち最も炭素含有量C[wt%]の高い切粉試料の該炭素含有量C[wt%]をCmax[wt%]として記録する。
第7に、第6で記録されたCmax[wt%]を、第5で得られた炭素含有量C[wt%]としてのCo[wt%]で除して得られる比Cmax/Coを算出して記録する。
第8に、該比Cmax/Coが1.2以下だった試験を「○(中心偏析少)」と、同じく1.2を超えた試験を「×(中心偏析顕著)」と、評価した。
第6に、一の小鋳片から採取された前記複数箇所分の切粉試料のうち最も炭素含有量C[wt%]の高い切粉試料の該炭素含有量C[wt%]をCmax[wt%]として記録する。
第7に、第6で記録されたCmax[wt%]を、第5で得られた炭素含有量C[wt%]としてのCo[wt%]で除して得られる比Cmax/Coを算出して記録する。
第8に、該比Cmax/Coが1.2以下だった試験を「○(中心偏析少)」と、同じく1.2を超えた試験を「×(中心偏析顕著)」と、評価した。
(5) Si偏析
上記(1)〜(4)に記載したC偏析の評価方法は、上述のSi偏析の評価にも同様に適用できる。ただし、C偏析の評価方法と、Si偏析の評価方法と、は評価の閾値において相違する。
即ち、C偏析を評価するためのパラメータとしての比Cmax/Coは、“1.2以下を良好とする”とした。これに対し、Si偏析を評価するためのパラメータとしての比Simax/Sioは、“1.4以下を良好とする”ものとする。
上記(1)〜(4)に記載したC偏析の評価方法は、上述のSi偏析の評価にも同様に適用できる。ただし、C偏析の評価方法と、Si偏析の評価方法と、は評価の閾値において相違する。
即ち、C偏析を評価するためのパラメータとしての比Cmax/Coは、“1.2以下を良好とする”とした。これに対し、Si偏析を評価するためのパラメータとしての比Simax/Sioは、“1.4以下を良好とする”ものとする。
以上に、各試験における技術的効果の評価の方法を説明した。次に、上記の(4)及び(5)に記載の評価の閾値(C偏析:1.2、Si偏析:1.4)の根拠を以下[A]〜[D]に詳説する。
[A] 本願発明の対象鋼種たるバネ用鋼(例えば弁バネ用鋼や懸架バネ用鋼など)は、例えばコールドヘッダーなどに用いられる他の鋼種と比較して、中心偏析の程度の大小が極めて重要である。何故なら、加工度が大きく中心偏析の程度の如何によっては、伸線時に破断してしまうからである。
[B] 一般に、バネ用鋼としての鋳片は、下記(a)及び(b)の工程を経て所定の寸法の最終製品に成形する。
(a) 上記の連続鋳造機100によって連続的に鋳造されたブルーム鋳片は、適宜の加熱炉で加熱(1230〜1310℃・1〜5時間)した後、適宜の分塊圧延設備にて断面155mm×155mmの所謂ビレットに分塊圧延する。
(b) 上記(a)で得られた所定断面のビレットは、熱処理(800〜1100℃・30〜120分)を行い、適宜の圧延を経て、所定の寸法の製品とする。
(a) 上記の連続鋳造機100によって連続的に鋳造されたブルーム鋳片は、適宜の加熱炉で加熱(1230〜1310℃・1〜5時間)した後、適宜の分塊圧延設備にて断面155mm×155mmの所謂ビレットに分塊圧延する。
(b) 上記(a)で得られた所定断面のビレットは、熱処理(800〜1100℃・30〜120分)を行い、適宜の圧延を経て、所定の寸法の製品とする。
[C] 上記(b)における「圧延」は、数回に分けて段階的に行われる。その複数の段階のうち一の段階(φ5.5mm)における鋼材を下記の如く評価した。
(a) 即ち、φ5.5mmに至るまで圧延した鋼材を、熱処理(660〜720℃・1〜2時間)し、所定の被膜処理し、冷間で減面率70〜80%で伸線した。
(b) この伸線の際に鋼材に断線が発生したか否かを記録し、該鋼材の上記中心偏析に係る評価試験と相互に対応させながら、図10及び図11に示す如く集計した。これらの図10及び図11においてグラフの縦軸は、上記の伸線の際に破断した回数を、鋼材10000tonあたりに換算したもの(以下、伸線の断線率とも称する。)である。
(a) 即ち、φ5.5mmに至るまで圧延した鋼材を、熱処理(660〜720℃・1〜2時間)し、所定の被膜処理し、冷間で減面率70〜80%で伸線した。
(b) この伸線の際に鋼材に断線が発生したか否かを記録し、該鋼材の上記中心偏析に係る評価試験と相互に対応させながら、図10及び図11に示す如く集計した。これらの図10及び図11においてグラフの縦軸は、上記の伸線の際に破断した回数を、鋼材10000tonあたりに換算したもの(以下、伸線の断線率とも称する。)である。
[D](a) 上記図10及び図11によれば、前記比Cmax/Coは1.2以下とし、前記比Simax/Sioは1.4以下とすれば、上記伸線に係る鋼材の評価を極めて良好とできることが判る。
(b) 以上の考察に基づいて、C偏析及びSi偏析の評価の閾値を上記の如く夫々、1.2及び1.4と設定したのである。
(b) 以上の考察に基づいて、C偏析及びSi偏析の評価の閾値を上記の如く夫々、1.2及び1.4と設定したのである。
以上に各試験における技術的効果の評価の方法とその根拠を説明した。
<試験条件とその試験結果>
次に、各試験の試験条件とその試験結果を下記表1及び表2に分けて示す。
次に、各試験の試験条件とその試験結果を下記表1及び表2に分けて示す。
なお、各試験の試験条件であって上記の表1・表2に記載のない試験条件については以下の通りである。
<特記ない鋳造経路におけるロール勾配>:上記の第1経路部Int1〜第4経路部Int4以外の経路部におけるロール勾配GRD[mm/m]は、特記ない限り、0〜0.25とした。
<特記ない鋳造経路におけるロール勾配>:上記の第1経路部Int1〜第4経路部Int4以外の経路部におけるロール勾配GRD[mm/m]は、特記ない限り、0〜0.25とした。
以上説明したように上記実施形態において、炭素含有量C[wt%]を0.35〜0.70とし、ケイ素含有量Si[wt%]を0.10〜2.60とし、マンガン含有量Mn[wt%]を0.10〜1.00とし、クロム含有量Cr[wt%]を0.40〜1.20とするバネ用鋼の中心偏析の改善は、以下のような方法で行われる。即ち、鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を270〜310とし、鋳造速度Vc[m/min]を0.80〜0.95とし、比水量Wt[L/kgSteel]を0.20〜0.60とし、溶鋼過熱度ΔT[℃]を15〜45とする。メニスカス距離M[m]が24.2〜25.9である鋳造経路としての第1経路部Int1におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.6〜4.4とし、メニスカス距離M[m]が25.9〜27.5である鋳造経路としての第2経路部Int2におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.5〜2.5とし、メニスカス距離M[m]が27.5〜29.1である鋳造経路としての第3経路部Int3におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.2〜1.6とし、メニスカス距離M[m]が29.1〜30.7である鋳造経路としての第4経路部Int4におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.0〜0.6とする。これによれば、バネ用鋼の中心偏析を改善できる(上記表1・表2を参照されたい。)。
また、別の観点から言えば、上記実施形態に係るバネ用鋼の中心偏析改善方法は、従来技術と比較して以下のような優れた効果を発揮できる。
即ち、上記の中心偏析の改善は、計算誤差や操業バラツキに起因して精確には求め得ない中心固相率は全く基準とせず、凝固速度に対して支配的な具体的操業条件(具体的には、鋳型厚D・鋳造速度Vc・比水量Wt・メニスカス距離Mとロール圧下勾配GRDとの具体的関係)に基づいて実施される。
従って、中心固相率を計算するための高価な機材の導入や高度な計算技術、計算に長けた人員の確保を不要とできるし、現存の如何なる連続鋳造機においても極めて容易にその実施をできる。しかも、技術的効果の再現性(効果の現出安定性)も極めて高い。
即ち、上記の中心偏析の改善は、計算誤差や操業バラツキに起因して精確には求め得ない中心固相率は全く基準とせず、凝固速度に対して支配的な具体的操業条件(具体的には、鋳型厚D・鋳造速度Vc・比水量Wt・メニスカス距離Mとロール圧下勾配GRDとの具体的関係)に基づいて実施される。
従って、中心固相率を計算するための高価な機材の導入や高度な計算技術、計算に長けた人員の確保を不要とできるし、現存の如何なる連続鋳造機においても極めて容易にその実施をできる。しかも、技術的効果の再現性(効果の現出安定性)も極めて高い。
ここで、中心偏析の改善に係る本発明の技術的効果を一層明瞭に把握できるよう、図12〜15を参照されたい。図12及び図14は夫々、従来技術におけるC偏析又はSi偏析の実績を示す図である。一方、図13及び図15は夫々、本発明の一実施形態におけるC偏析又はSi偏析の実績を示す図である。
なお、これら図12〜15の横軸はC偏析の度合い(Cmax/Co)(又はSi偏析の度合い(Simax/Sio))を表し、縦軸は度数を表す。ここで、「度数」とは具体的には、一の取鍋(溶鋼収容量=250ton)分に対して一のサンプルを採取し、これを所定回繰り返し、採取されたの複数のサンプルの成分分析結果を各偏析度合いごとに積算したものである。
なお、これら図12〜15の横軸はC偏析の度合い(Cmax/Co)(又はSi偏析の度合い(Simax/Sio))を表し、縦軸は度数を表す。ここで、「度数」とは具体的には、一の取鍋(溶鋼収容量=250ton)分に対して一のサンプルを採取し、これを所定回繰り返し、採取されたの複数のサンプルの成分分析結果を各偏析度合いごとに積算したものである。
これら図12〜15によれば、本発明の一実施形態に係る技術は、従来技術と比較して、中心偏析を改善する点において極めて有用な効果を発揮することが容易に把握されよう。
なお、上記の表1・表2によれば、本発明の一実施形態に係るバネ用鋼の中心偏析改善方法は、強度面・疲労特性面・耐候性面などの観点(例えば特開2002-47539や特開2005-29887などを参照されたい。)からCuやNi、Mo、V、Nb、Ti、Bなどが適宜に添加された鋼材に対しても、上記中心偏析の改善に係る有用な効果を奏することが判る。参考のために、各主要元素(CやSiなど)と各添加元素(CuやNiなど)の性質を以下に簡単に紹介する。
・C:強度と靭延性に係る。
・Si:軟化抵抗性及び耐へたり性を向上させる。過度の投入は、大型介在物を生成させ、疲労特性を低下させる。
・Mn:焼入れ性及び強度を向上させる。過度の投入は、過冷組織生成により伸線性を低下させる。
・Cr:靭延性に係り、耐へたり性を向上させ、耐環境性を低下させる。
・Cu:耐食性を向上させ、靭性を低下させる。
・Ni:焼入れ性を向上させ、低温脆化を抑制できる。耐食性を向上させる。残留オーステナイト組織を生成させて、強度を低下させる。
・Mo:低温焼鈍後の耐力を向上させ、加工性を低下させる。
・V:靭延性を向上させ、加工性を低下させる。
・Nb:靭延性を向上させ、加工性を低下させる。
・Ti:耐環境性を向上させる。窒化物を析出させて寿命を低下させる。
・B:TiNの発生を防止する。
・Si:軟化抵抗性及び耐へたり性を向上させる。過度の投入は、大型介在物を生成させ、疲労特性を低下させる。
・Mn:焼入れ性及び強度を向上させる。過度の投入は、過冷組織生成により伸線性を低下させる。
・Cr:靭延性に係り、耐へたり性を向上させ、耐環境性を低下させる。
・Cu:耐食性を向上させ、靭性を低下させる。
・Ni:焼入れ性を向上させ、低温脆化を抑制できる。耐食性を向上させる。残留オーステナイト組織を生成させて、強度を低下させる。
・Mo:低温焼鈍後の耐力を向上させ、加工性を低下させる。
・V:靭延性を向上させ、加工性を低下させる。
・Nb:靭延性を向上させ、加工性を低下させる。
・Ti:耐環境性を向上させる。窒化物を析出させて寿命を低下させる。
・B:TiNの発生を防止する。
<資料1>
さて、上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]の測定基準を詳説する。
さて、上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]の測定基準を詳説する。
即ち、『測定する時刻』は、「タンディッシュ内の溶鋼の流動が定常状態に至った時刻、より詳しくは、転炉から該タンディッシュへ溶鋼を搬送するための取鍋内に収容されている溶鋼の1/4〜1/3程度が該タンディッシュへ注湯された時刻」とする。
また、『測定する方法』は、以下第1及び第2の如くである。
即ち、第1に、上記『測定する時刻』において、タンディッシュ内に保持されている(入れ替わっている、流出入している)溶鋼の温度を適宜の温度測定器を用いて測定する。
(例)この温度測定器とは例えばその先端部に温度感知部を備える熱電対型のものが挙げられ、この場合、この温度感知部をタンディッシュ内に保持されている溶鋼の中へ深さ100mm以上浸漬させて該溶鋼の温度を測定することとする。なお、熱電対は測定対象の温度に応じてその出力電圧を昇降させる特性を有するのは周知の通りであるから、溶鋼の温度を測定することは、熱電対が出力する電圧を適宜の手段により読み取ることと換言できる。
(例)この温度測定器とは例えばその先端部に温度感知部を備える熱電対型のものが挙げられ、この場合、この温度感知部をタンディッシュ内に保持されている溶鋼の中へ深さ100mm以上浸漬させて該溶鋼の温度を測定することとする。なお、熱電対は測定対象の温度に応じてその出力電圧を昇降させる特性を有するのは周知の通りであるから、溶鋼の温度を測定することは、熱電対が出力する電圧を適宜の手段により読み取ることと換言できる。
第2に、第1で測定された溶鋼の温度と、該溶鋼の溶鋼成分により唯一に決まる所謂液相線温度と、を比較する。そして上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]は、前者から後者を除いた(引いた)残りとして求めることとする。
<資料2>
上述した鋳型内溶鋼攪拌強度M-EMS[gauss]の測定基準を説明する。即ち、この鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、水平方向は鋳型1の幅方向中央且つ厚み方向中央であって、垂直方向はEMSコイルのコア(鉄心)中央部となる深さ地点において適宜のガウスメータにより測定される値(単位は[gauss]とする。)とする。
上述した鋳型内溶鋼攪拌強度M-EMS[gauss]の測定基準を説明する。即ち、この鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、水平方向は鋳型1の幅方向中央且つ厚み方向中央であって、垂直方向はEMSコイルのコア(鉄心)中央部となる深さ地点において適宜のガウスメータにより測定される値(単位は[gauss]とする。)とする。
<資料3>
上記の表1・表2によれば、上記の実施形態に係るバネ用鋼の中心偏析改善方法が前記の鋳型厚D[mm]を270〜310の範囲内に設定することを求めることが判る。換言すれば、この鋳型厚D[mm]の数値範囲の上限及び下限の臨界的意義は、上記表1・表2により既に合理的に裏付けられている。
上記の表1・表2によれば、上記の実施形態に係るバネ用鋼の中心偏析改善方法が前記の鋳型厚D[mm]を270〜310の範囲内に設定することを求めることが判る。換言すれば、この鋳型厚D[mm]の数値範囲の上限及び下限の臨界的意義は、上記表1・表2により既に合理的に裏付けられている。
ここでは、鋳型厚D[mm]の上記数値範囲の上限及び下限の臨界的意義を、別の視点((A)〜(D))から一層強力に裏付けてみる。
(A) 一般に、鋳片の中心が完全に凝固するメニスカス距離M[m](以下、単に完全凝固位置L[m]と称する。)は下記式によって表される。
L=Vc×(To/(2k))2
Vc:鋳造速度[m/min]
To(上記実施形態における符号Dに概ね対応する。):鋳片厚[mm]
k:凝固定数[mm/min1/2]
L=Vc×(To/(2k))2
Vc:鋳造速度[m/min]
To(上記実施形態における符号Dに概ね対応する。):鋳片厚[mm]
k:凝固定数[mm/min1/2]
(B) 上記実施形態に係るバネ用鋼の前記凝固定数kは、鋲打ち試験の結果により26.6程度であることが判っている。そこで、鋳片厚To[mm]を290とし鋳造速度Vc[m/min]を0.8〜0.95とすると、前記完全凝固位置L[m]は23.8〜28.2の範囲として求められる。
一方、中心偏析を改善するための鋳片に対する圧下は、この完全凝固位置L[m]の範囲近傍で施されることが好ましいことは理解されよう。
一方、中心偏析を改善するための鋳片に対する圧下は、この完全凝固位置L[m]の範囲近傍で施されることが好ましいことは理解されよう。
(C) 即ち、上記実施形態において指定された鋳造速度Vc[m/min]の範囲内における任意の鋳片厚To[mm]の完全凝固位置L[m]が上記の23.8〜28.2の範囲内であれば、中心偏析の少ない鋳片が得られよう。一方、該完全凝固位置L[m]がこの範囲外であれば、中心偏析の少ない鋳片は得られ難いだろう。
(D) ここで、図16を参照されたい。図16は、鋳片厚To[m]と完全凝固位置L[m]との関係を示しており、横軸を鋳造速度Vc[m/min]とし縦軸をメニスカス距離M[m]としている。本図中の各プロットは、任意の鋳片厚To[mm]及び鋳造速度Vc[m/min]に対応する完全凝固位置L[m]を示している(ただし、炭素含有量C[wt%]は0.6としている。)。
本図によれば、上記表1・表2においてその技術的効果が十二分に立証された鋳片厚To[mm](290)は約10%程度なら増減させても差し支えないことが判る。換言すれば、鋳片厚To[mm]を290±20とするというように、鋳片厚To[mm]の設定範囲に若干の幅を持たせても鋳片の中心偏析を少なくでき得ると言えよう。
以上の考察の如く、上述した鋳型厚D[mm]の数値範囲の上限及び下限の臨界的意義は、完全凝固位置L[m]の観点からも、その存在が十分に裏付けられた。
本図によれば、上記表1・表2においてその技術的効果が十二分に立証された鋳片厚To[mm](290)は約10%程度なら増減させても差し支えないことが判る。換言すれば、鋳片厚To[mm]を290±20とするというように、鋳片厚To[mm]の設定範囲に若干の幅を持たせても鋳片の中心偏析を少なくでき得ると言えよう。
以上の考察の如く、上述した鋳型厚D[mm]の数値範囲の上限及び下限の臨界的意義は、完全凝固位置L[m]の観点からも、その存在が十分に裏付けられた。
M メニスカス距離
GRD ロール勾配
GRD ロール勾配
Claims (1)
- 炭素含有量C[wt%]を0.35〜0.70とし、ケイ素含有量Si[wt%]を0.10〜2.60とし、マンガン含有量Mn[wt%]を0.10〜1.00とし、クロム含有量Cr[wt%]を0.40〜1.20とするバネ用鋼の中心偏析改善方法において、
鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を270〜310とし、
鋳造速度Vc[m/min]を0.80〜0.95とし、
比水量Wt[L/kgSteel]を0.20〜0.60とし、
溶鋼過熱度ΔT[℃]を15〜45とし、
メニスカス距離M[m]が24.2〜25.9である鋳造経路としての第1経路部Int1におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.6〜4.4とし、
メニスカス距離M[m]が25.9〜27.5である鋳造経路としての第2経路部Int2におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.5〜2.5とし、
メニスカス距離M[m]が27.5〜29.1である鋳造経路としての第3経路部Int3におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.2〜1.6とし、
メニスカス距離M[m]が29.1〜30.7である鋳造経路としての第4経路部Int4におけるロール勾配GRD[mm/m]を0.0〜0.6とする、
ことを特徴とするバネ用鋼の中心偏析改善方法
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