JP4704979B2 - 連続鋳造における鋳片の軽圧下方法 - Google Patents

連続鋳造における鋳片の軽圧下方法 Download PDF

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本発明は、連続鋳造により鋳造される鋳片を、中心偏析の改善を目的として軽圧下する方法に関する。
従来から、連続鋳造によりスラブやブルーム等の半製品(鋳片)を製造する場合に、鋳片の中心部に、溶鋼中に含まれていた炭素(C)、珪素(Si)、マンガン(Mn)等の成分が偏析する、いわゆる中心偏析が問題となることがある。
この中心偏析は以下のようなメカニズムで発生することが知られている。即ち、溶鋼の凝固末期に、鋳片の表面側から中心部へ向けてデンドライト(樹枝状晶)が成長したときに、鋳片の中心部においてデンドライト間に未凝固部が取り残される。そして、この取り残された未凝固部が凝固収縮する際に、前述したC、Si、Mn等の成分を高い含有率で含む濃化溶鋼が流入し、その結果、鋳片の中心部にこれらの成分が偏析することになる。
このような中心偏析は、鋼の靭性の低下や水素誘起割れなどの原因となるため、可能な限り抑制されることが好ましい。そこで、溶鋼の凝固末期に、取り残された未凝固部の凝固収縮分を補う程度に鋳片を外部から圧下する(以下、軽圧下という)ことにより、濃化溶鋼の流動を極力防止して中心偏析を抑制する方法が、近年では一般的に採用されている。
ところで、軽圧下時における圧下量が小さすぎると、その圧下が鋳片中心部に伝わらず、中心偏析が十分に改善されない。その一方で、圧下量が大きすぎると、デンドライト間の濃化溶鋼が鋳片中心部へ絞り出されてしまい、中心偏析が逆に悪化してしまう。そのため、中心偏析を効果的に抑制するには、鋳片の凝固状態に応じて適切な圧下量で軽圧下を行う必要がある。そこで、従来の軽圧下方法においては、鋳片内部の固相率に応じて圧下区間や圧下量といった圧下条件を決定している(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2001−259810号公報 特開平8−132204号公報
特許文献1、2に開示された軽圧下方法においては、鋳片内部の固相率を正確に把握することが必要不可欠となる。ここで、鋳片内部の固相率を実際の連続鋳造工程において検出することはほとんど不可能であることから、固相率は計算により予測されるのが一般的である。
この連続鋳造工程における凝固伝熱計算を精度よく実行するためには、少なくとも、鋼種の高温域における物性データ(例えば、凝固潜熱/熱伝導度/比熱など)及び外部からの抜熱条件(鋳型内部での抜熱/2次冷却帯におけるスプレー又はミスト冷却による熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数など)などの計算条件を正確に把握する必要がある。これらの計算条件のうち特にその計算結果に大きく影響を与えるものとして、(1)(物性データ)凝固潜熱と、(2)(外部からの抜熱条件)2次冷却帯における熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数と、が挙げられる。
前者(1)の凝固潜熱は、一般的に約55〜65cal/gの値が採用されているが、多くの元素を含む鋼の凝固潜熱を正確に求めるのは極めて困難である。
また、後者(2)の2次冷却帯における熱伝達係数は、一般的に、実験において鋼材を所定のスプレー流量で冷却させたときの温度変化を測定し、その測定結果に基づいて推定している。
しかし、当該2次冷却帯におけるスプレー/ミスト冷却の熱伝達係数は多種のパラメータが連関する複雑な関数として表されることが報告されている(三塚ら:鉄と鋼、69(1983)、262/三塚:鉄と鋼、91(2005)、1を参照)。当該パラメータは例えば、スプレー流量/水滴のサイズ及び運動量/エアーの量及び圧力/鋳片の表面温度などのことである。
そして上記熱伝達係数は、これらのパラメータが適宜に決定されたとしても測定条件によって結局は大きくバラついているのが現状である。加えて、上記の実験では、(a)鋳片の上下面における冷却能の差異の、鋳片の移動に伴う変化や、(b)浸漬ノズルの詰まりによる影響、(c)ガイドロール間の溜り水による影響、(d)低温ロールからの冷却による影響、(e)鋳片の酸化具合(スケールの付着厚み)による影響、など実機において発生し得る種々の影響を見積もることが当然できない。
以上のように、凝固伝熱計算の計算条件が不確定な要素を数多く含んでいる限り、個々の鋼種/鋳造条件に応じて鋳片内部の固相率を精度よく予測することは現状では極めて困難である。
参考として、凝固伝熱計算の計算結果の一例を図12に示す。この図12は、前述した三塚らの文献に記載された予測式を元に、凝固潜熱を55cal/g、又は、65cal/gとして計算したものである。この図12において、実線は潜熱が65cal/gのケース、破線は55cal/gのケースをそれぞれ示す。本図からわかるように、実際には正確に求められない凝固潜熱の違いにより、固相率とメニスカス距離との関係に、例えば数mオーダにまで及ぶ大きなズレが生じてしまうことがわかる。さらに、前述した三塚らの予測式が全ての鋳造条件に適合するとは限らず、用いる予測式によっては、同様に、当該固相率とメニスカス距離との関係にズレが生じることも容易に予測できる。
以上の理由から、前述した特許文献1、2に示されているように、固相率に基づいて圧下条件(圧下区間や圧下量)を決定したとしても、実際には中心偏析を十分に抑制できないことも多い。
本発明の目的は、計算で求められる固相率ではなく、実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を決定することにより、中心偏析を確実に抑制することのできる、鋳片の軽圧下方法を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
第1の発明の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法は、炭素含有量が0.70〜0.90wt%、珪素含有量が0.15〜0.25wt%、マンガン含有量が0.45〜0.55wt%の範囲のスチールコード用鋼であり、過熱度が10〜45℃の溶鋼を、0.25〜1.0l/kgの比水量で冷却しながら0.50〜0.65m/minの鋳造速度で連続鋳造して、厚みTが380±30mm、幅Bと厚みTとの比B/Tが1〜2の鋳片を製造する際に、前記鋳片を複数のロール対により軽圧下する方法であって、
溶鋼のメニスカスからの鋳造方向距離をX[m]、鋳造方向に対する前記ロール対の面間距離の減少勾配をY[mm/m]としたときに、
10.0≦X≦22.3の範囲において、0≦Y≦5.0
22.3≦X≦25.9の範囲において、2.0≦Y≦3.0
25.9≦X≦27.5の範囲において、0.6≦Y≦2.6
27.5≦X≦32.3の範囲において、0.5≦Y≦1.5
であることを特徴とするものである。
この第1の発明によれば、鋼の成分や鋳片のサイズ、鋳造速度等の鋳造条件が決定された上で、さらに、軽圧下を行うロール対の面間距離の減少勾配Y(鋳造方向の単位距離(1m)当たりのロール面間距離の減少量(mm)、圧下勾配ともいう)が、メニスカスからの鋳造方向距離Xに基づいて具体的に決定される。つまり、実際に予測するのが困難な鋳片内部の固相率の代わりに、実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を決定することから、鋳片の凝固末期の部分を適切な圧下条件で圧下することができ、鋳片の中心偏析をより効果的に抑制することができる。
第2の発明の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法は、前記第1の発明において、10.0≦X≦22.3の範囲では、2.0≦Y≦3.5であることを特徴とするものである。
特に、比較的厚さの大きい鋳片を製造する場合に、圧下初期段階の圧下量が少ないと、炭素等の含有量の高い濃化溶鋼が鋳片の中心部に向かって流動するのに起因して、その鋳片中心部の周辺に、断面V字状となる偏析模様(V偏析という)が生じやすい。しかし、この第2の発明によれば、圧下初期段階において、ある程度の大きさの圧下量で圧下を行うことから、V偏析の発生を防止することが可能となる。
次に、本発明の実施の形態について説明する。まず、本実施形態の連続鋳造機(以下、連鋳機という)について、図1を参照して説明する。図1に示すように、連鋳機100は、溶鋼を所定形状に凝固させる鋳型1と、この鋳型1内へ溶鋼を注湯するタンディッシュ2と、鋳型1の下流側に順に並設された複数のロール3とを備えている。
複数のロール3は、鋳型1の直下から鉛直下方に延び、その後、円弧状に曲がって最終的に水平方向に延びる、所定の鋳造経路に沿ってこの経路の両側にそれぞれ配設されている。また、経路を挟むように配置された2つのロール3から1対のロール対8が構成されており、各ロール対8の2つのロール3は所定面間を空けて配設されている。また、ロール3間には、鋳片に対して水を噴射することにより鋳片を冷却する、冷却水噴射装置(図示省略)が設けられている。
そして、鋳型1に注湯された溶鋼は、鋳型1と接する部分からシェル(凝固部)を形成し、内部に未凝固部を有する鋳片となる。この鋳片は、ロール3の間から噴射される水により冷却されながら、複数のロール対8により鋳造方向下流へ送られてシェルが成長していき、最終的に、内部まで完全に凝固した鋳片となる。
ここで、本実施形態の連鋳機100による連続鋳造の鋳造条件は、以下の通りである。まず、対象となる鋼に含まれる元素の含有量は、炭素(C)の含有量が0.70〜0.90wt%、珪素(Si)の含有量が0.15〜0.25wt%、マンガン(Mn)の含有量が0.45〜0.55wt%の範囲となっている。尚、C、Si、Mn以外の他の元素の含有量については特に限定されるものではなく、一般的に使用される範囲内であればよい。例えば、リン(P)の含有量は0.03wt%以下であり、硫黄(S)の含有量は0.01wt%以下である。
そして、本実施形態の連鋳機100は、過熱度(液相線温度に対する温度)が10〜45℃の溶鋼を、比水量(鋼1kgに対して与える水の量)0.25〜1.0l/kgで冷却しながら、0.50〜0.65m/minの鋳造速度で鋳造して、鋳片を製造する。
さらに、連鋳機100による連続鋳造によって得られる鋳片は、図2に示すように、断面がほぼ矩形状であり、幅をB、厚さをTとしたときの、比B/Tが1〜2となる鋳片(ブルーム)である。さらに、この鋳片の厚さTは、300±30mmである。
ところで、前述したように、溶鋼の凝固末期には、鋳片内部の未凝固部分の凝固収縮に伴って、鋳片の中心部に、炭素、珪素、マンガン、リン、硫黄といった溶鋼に含まれる元素を高い含有率で含む、濃化溶鋼が流れ込む。そのため、図3に示すように、鋳片の中心部には中心偏析20が生じやすい。尚、図3は、鋳片の幅方向中央を鉛直面で切断したときの断面を示している。
そこで、図1に示すように、連鋳機100において、鋳造経路が水平になっている領域の、ロール3よりも鋳造方向下流側の位置には、複数の圧下ロール対4が鋳造経路に沿って送られる鋳片を挟むように設けられている。各圧下ロール対4を構成する2つの圧下ロール5は、所定の面間距離を空けて経路の上下両側にそれぞれ配置されている。
これらの複数の圧下ロール対4は、鋳片に中心偏析が生じるのを抑制するために、溶鋼の凝固末期に、鋳片内部の未凝固部分の凝固収縮分を補う程度に鋳片を圧下(軽圧下)するためのものである。そして、複数の圧下ロール対4は、鋳造方向下流側に向かうほど面間が狭まるように配置されており、これらの圧下ロール対4の間を鋳片が鋳造方向下流側へ送られるにつれて、各圧下ロール対4の上下2つの圧下ロール5により、鋳片が厚み方向両側から圧下されるようになっている。
ここで、図4に示すように、ある2対の圧下ロール対4を考えたときに、これら2つの圧下ロール対4のうちの鋳造方向上流側に位置する圧下ロール対4の面間距離をG1[mm]、鋳造方向下流側に位置する圧下ロール対4の面間距離をG2[mm]、2対の圧下ロール対4の鋳造方向に関する離間距離をL[m]、2対の圧下ロール対4の間におけるロール面間距離の減少勾配(鋳造方向に関する単位距離当たりの面間距離減少量、以下、圧下勾配ともいう)をY[mm/m]とすると、Y=(G1−G2)/Lで表される。
そして、本実施形態では、鋳型1の溶鋼湯面であるメニスカスからの鋳造方向距離をX[m]としたときに、
10.0≦X≦22.3の範囲において、0≦Y≦5.0
22.3≦X≦25.9の範囲において、2.0≦Y≦3.0
25.9≦X≦27.5の範囲において、0.6≦Y≦2.6
27.5≦X≦32.3の範囲において、0.5≦Y≦1.5
となっている。
このように、鋳片サイズや鋳造速度等の鋳造条件が決定された上で、さらに、軽圧下を行う圧下ロール対4の面間距離の減少勾配(圧下勾配)Yが、メニスカスからの鋳造方向距離Xに応じて決定されている。つまり、実際に予測するのが困難な鋳片の固相率の代わりに、実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を決定することから、鋳片の凝固末期の部分を適切な圧下条件で確実に圧下することができ、鋳片の中心部に生じる中心偏析を効果的に抑制することができる。
尚、圧下初期段階の圧下量が比較的小さい場合には、濃化溶鋼が鋳片の中心部に向かって流動するのに起因して、図3に示すように、その中心部の周辺において鋳造方向下流側ほど広がるように傾斜した、断面V字状となる偏析模様、いわゆる、V偏析21が生じやすい。そこで、圧下初期段階に比較的大きな量の圧下を行ってV偏析の発生を抑制するために、10.0≦X≦22.3の範囲では2.0≦Y≦3.5とすることが好ましい。
以上説明した本実施形態の軽圧下方法について、より具体的な実施例と比較例により検証した。
[鋳造条件]
まず、本発明の実施例としては、鋳片の厚み、鋼に含まれる元素(炭素、珪素、及び、マンガン)の含有量、鋳造速度、溶鋼過熱度、比水量の各条件については、下記の範囲内でそれぞれ決定して、鋳片を鋳造した。
鋳片の厚み(鋳型厚み):380±30mm
炭素含有量:0.70〜0.90wt%
珪素含有量:0.15〜0.25wt%
マンガン含有量:0.45〜0.55wt%
鋳造速度:0.50〜0.65m/min
溶鋼加熱度:10〜45℃
比水量:0.25〜1.0l/kg
尚、上述の溶鋼過熱度ΔTの測定に関して少し補足しておく。連続鋳造では、取鍋からの溶鋼を、タンディッシュという、耐火物で内張りされた容器に受けた後に、このタンディッシュ下部から鋳型の中に溶鋼を注入する。そして、鋳造中は、このタンディッシュ内に常に溶鋼が溜められた状態となっている。そして、溶鋼の温度測定は、このタンディッシュの溶鋼表面から中へ温度計を浸漬させることにより行う。具体的には、温度計として熱電対タイプのものを用い、この温度計の先端部に設けられた温度検知部をタンディッシュ内の溶鋼の表面から50mm以上浸漬させた状態で温度計から出力された値を、その時に溶鋼温度とした。そして、溶鋼過熱度は、上述した方法で測定された溶鋼温度から、その溶鋼の成分から唯一に決まる凝固開始温度を引いた値として求められる。
その一方で、少なくとも何れか1つの鋳造条件が前述の範囲から外れるように設定することにより、実施例に対する比較例の鋳片を鋳造した。尚、何れの実施例及び比較例においても鋳片の幅は600mmとなるように連続鋳造を行った。
[圧下ロール対の具体的構成]
次に、圧下ロール対4の実施例及び比較例における具体的構成について説明する。図5は圧下ロール対4の配置構成を示す概略図であり、図6は、図5の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。図5、図6に示すように、鋳片が送られる鋳造経路の両側において、鋳造方向に並ぶ4つの圧下ロール5は1つのロールスタンド6,7に設けられている。ここで、鋳造経路の下側に位置するロールスタンド7は固定されている。一方、鋳造経路の上側に位置するロールスタンド6は、その傾きと上下方向の位置を調整可能に構成されている。つまり、上側のロールスタンド6の傾き及び上下方向位置を調整することにより、圧下ロール対4の面間距離を自由に設定することが可能となっている。
また、圧下ロール5の径Dは300mm、1つのロールスタンド6,7に設けられている4つの圧下ロール5は等間隔で並んでおり、その間隔Lc(ロール中心間距離)は320mmである。また、図5中の左から1番目のロールスタンド6,7は、鋳造方向最下流に位置する圧下ロール5の、メニスカスからの鋳造方向距離X1が22.3mとなるように設置されている。同様に、左から3番目のロールスタンド6,7の最下流ロール5の鋳造方向位置X2は25.9m、左から4番目のロールスタンド6,7の最下流ロール5の鋳造方向位置X3は27.5m、左から7番目(図5中の右から1番目)のロールスタンド6,7の最下流ロール5の鋳造方向位置X4は32.3mである。
そして、メニスカスからの鋳造方向距離に基づいて、上側のロールスタンド6の傾き及び上下方向位置を適宜変更することにより、最上流の圧下ロール対4と最下流の圧下ロール対4の面間をそれぞれ調整して、ロール面間距離の減少勾配を適切な値に設定する。
例えば、距離Xが25.9m〜27.5mの間における面間距離の減少勾配を所望の値に設定する場合には、ロールスタンド6A,7Aに設けられた最上流ロール対4Aと最下流ロール対4Dの面間距離をそれぞれ調整する。まず、図6に示すように、ロールスタンド6A,7Aよりも上流側に位置するロールスタンド6,7の、最下流ロール対4Xの面間距離Gxを測定する。そして、この面間距離Gxが、例えば、376mmである場合に、距離Xが25.9m〜27.5mの間における面間距離の減少勾配を1.1mm/mとするには、最上流ロール対4Aと最下流ロール対4Dの面間距離を以下のように設定すればよい。
まず、最下流ロール対4Dの面間距離Gdは、Gd=Gx−1.1[mm/m]×1.6[m]=374.24[mm]となる。一方、圧下ロール対4A,4B,4C,4Dの間隔Lcはそれぞれ320mmであるから、最上流ロール対4Aの面間距離Gaは、Ga=1.1[mm/m]×(0.32[m]×3)+Gd=375.296[mm]となる。
これと同様にして、他のロールスタンド6,7に設けられた圧下ロール対4に関しても、メニスカスからの鋳造方向距離に基づいて、所望の減少勾配となるように面間距離を設定した。本発明の実施例としては、鋳型の溶鋼湯面であるメニスカスからの鋳造方向距離をX[m]としたときの、圧下ロール対の面間距離の減少勾配(圧下勾配)Y[mm/m]を、
10.0≦X≦22.3の範囲において、0≦Y≦5.0
22.3≦X≦25.9の範囲において、2.0≦Y≦3.0
25.9≦X≦27.5の範囲において、0.6≦Y≦2.6
27.5≦X≦32.3の範囲において、0.5≦Y≦1.5
の範囲内で設定して軽圧下を行った。その一方で、この実施例に対する比較例として、少なくとも何れかの1つの区間において、Yの値が前述の範囲から外れている条件での軽圧下も行った。
[中心偏析評価]
次に、鋳造された鋳片に生じている中心偏析の程度を評価する手法について説明する。
中心偏析が問題となる代表的な鋼種に、タイヤの補強材等として用いられるスチールコード材がある。このスチールコード材は、例えば、以下のような工程で製造される。まず、鋳造された幅600mm×厚さ380mmの鋳片を加熱炉で3時間ほど加熱した後に、155mm角のビレットに形成する。そして、このビレットを圧延することにより、直径5.5mmの線材を得る。
ここで、鋳片に中心偏析が生じている場合には、鋳片中心部における炭素、珪素、マンガン等の元素の含有量が高くなっている。そのため、このような鋳片を圧延して得られた線材ではその軸芯部が硬くなり、伸線時に断線しやすい。
例えば、溶鋼中に含まれる元素として炭素を例に挙げると、炭素の中心偏析の程度は、タンディッシュ内の溶鋼から取り出したサンプルの炭素含有量C0と、鋳造された鋳片の中心部における炭素含有量の最大値Cmaxとの比、Cmax/C0で評価できる。Cmax/C0が1である場合には中心偏析がない状態を示している。逆に、Cmax/C0が大きいほど、炭素の中心偏析の度合が大きいことになる。
そして、本願の発明者らが検討した結果、Cmax/C0と、その鋳片から製造される線材の伸線時における断線回数との間には、図7のような関係が見いだされた。この図7からわかるように、Cmax/C0の値が1.1以下である場合には、線材はほとんど断線することがないが、Cmax/C0が1.2以上となると断線が発生するようになる。つまり、炭素の中心偏析に起因する断線を防止するには、Cmax/C0≦1.1であることが必要である。
同様にして、珪素の中心偏析の程度は、溶鋼から取り出したサンプルの珪素含有量Si0と、鋳片の中心部における珪素含有量の最大値Simaxとの比、Simax/Si0で評価できる。また、マンガンの中心偏析の程度は、溶鋼から取り出したサンプルのマンガン含有量Mn0と、鋳片の中心部におけるマンガン含有量の最大値Mnmaxとの比、Mnmax/Mn0で評価できる。そして、Simax/Si0と断線回数との間、Mnmax/Mn0と断線回数との間にも、炭素同様、ある関係が見いだされた。これらの関係を図8、図9にそれぞれ示す。そして、図8及び図9の関係から、断線を防止するためには、Simax/Si0≦1.2、且つ、Mnmax/Mn0≦1.1であることが必要となる。
尚、Cmax、Simax、Mnmaxの測定は以下のようにして行った。まず、図10に示すように、鋳片(例えば、幅600mm×厚さ380mm)の、その幅方向中央を通る鉛直断面において、鋳造方向に所定長さ(例えば、250mm)を有する矩形状のサンプル片Saを切り出す。さらに、図11に示すように、このサンプル片Saの厚さ方向中央部を5.0mmφのドリルでくり抜くことにより採取した、切り屑中の炭素、珪素、及び、マンガンの含有量を測定する。また、このような切り屑は、鋳造方向にそれぞれ10mmのピッチで互いに離れた計25カ所の位置で採取し、これら25カ所から測定された炭素、珪素、及び、マンガンの含有量のうちの最も大きな値を、それぞれCmax、Simax、Mnmaxとする。そして、Cmax/C0≦1.1、Simax/Si0≦1.2、Mnmax/Mn0≦1.1の全ての条件が満たされているか否かにより、鋳片の中心偏析の評価を行う。
[V偏析について]
さらに、鋳片の中心部の周辺にV偏析が生じているか否かについては、以下のようにして確認する。まず、前述した中心偏析の測定と同様に、鋳造された鋳片からサンプル片Sa(図10、図11参照)を切り出す。そして、このサンプル片Saの表面を研磨した後に、塩酸にて10分ほど腐食させてから、表面にV字状の偏析模様(図3に示すV偏析21)が出現しているか否かを肉眼にて確認する。
[評価結果]
そして、実施例及び比較例における、鋳型厚み(即ち、鋳片厚み)、成分元素の含有量、鋳造速度、溶鋼過熱度(ΔT)、比水量、メニスカスからの距離に対する圧下ロール対の面間距離の減少勾配(圧下勾配)の諸条件と、鋳造により得られた鋳片における偏析状況を、表1〜表5に示す。尚、表中の圧下勾配の欄において、距離Xの範囲は境界値を四捨五入した簡易的な値で表示している(例えば、25.9≦X≦27.5の区間を、26−28と表示している)。
Figure 0004704979
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これら表1〜表5より、鋳造条件及び圧下勾配Yが全て前述した範囲内にある(表中に○で示す)、実施例の鋳片においては、Cmax/C0≦1.1、Simax/Si0≦1.2、Mnmax/Mn0≦1.1の3つの条件を満たしており(表中に○で示す)、炭素、珪素、及び、マンガンの中心偏析がそれぞれの抑制されていることがわかる。一方、鋳造条件と圧下勾配Yの少なくとも何れか1つの条件が前述した範囲内にない(表中に×で示す)、比較例の鋳片においては、Cmax/C0≦1.1、Simax/Si0≦1.2、Mnmax/Mn0≦1.1の3つの条件のうちの少なくとも何れか1つが満たされず(表中に×で示す)、中心偏析が十分に改善されていないことがわかる。
さらに、中心偏析の抑制が確認された実施例の中でも、さらに、距離Xが10.0≦X≦22.3の範囲である場合に、圧下勾配Yが2.0≦Y≦3.5(表中に◎で示す)である実施例(No.20,29,36,43,49)では、V偏析が見られなかった(表中のV偏析の欄に◎で示す)。
本発明の実施形態に係る連鋳機の概略構成図である。 鋳片の断面サイズを示す図である。 鋳片内に中心偏析及びV偏析が生じている状態を模式的に示す、鋳片の鉛直断面図である。 ロール面間距離と圧下勾配の関係を説明する説明図である。 圧下ロール対の配置構成を示す概略図である。 図5の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。 炭素の中心偏析(Cmax/C0)と線材の断線回数との関係を示すグラフである。 珪素の中心偏析(Simax/Si0)と線材の断線回数との関係を示すグラフである。 マンガンの中心偏析(Mnmax/Mn0)と線材の断線回数との関係を示すグラフである。 鋳片からの中心偏析評価のためのサンプル片の切り出しに関する説明図である。 ドリルにより切り屑を採取するときのサンプル片の表面を示す図である。 凝固伝熱計算の計算結果を示すグラフである。
符号の説明
1 鋳型
4 圧下ロール対
5 圧下ロール
6,7 ロールスタンド
20 中心偏析
21 V偏析
100 連鋳機

Claims (2)

  1. 炭素含有量が0.70〜0.90wt%、珪素含有量が0.15〜0.25wt%、マンガン含有量が0.45〜0.55wt%の範囲のスチールコード用鋼であり、過熱度が10〜45℃の溶鋼を、0.25〜1.0l/kgの比水量で冷却しながら0.50〜0.65m/minの鋳造速度で連続鋳造して、厚みTが380±30mm、幅Bと厚みTとの比B/Tが1〜2の鋳片を製造する際に、前記鋳片を複数のロール対により軽圧下する方法であって、
    溶鋼のメニスカスからの鋳造方向距離をX[m]、鋳造方向に対する前記ロール対の面間距離の減少勾配をY[mm/m]としたときに、
    10.0≦X≦22.3の範囲において、0≦Y≦5.0
    22.3≦X≦25.9の範囲において、2.0≦Y≦3.0
    25.9≦X≦27.5の範囲において、0.6≦Y≦2.6
    27.5≦X≦32.3の範囲において、0.5≦Y≦1.5
    であることを特徴とする連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
  2. 10.0≦X≦22.3の範囲において、2.0≦Y≦3.5であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
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