JP5214266B2 - 連続鋳造における鋳片の軽圧下方法 - Google Patents
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また、後者(2)の2次冷却帯における熱伝達係数は、一般的に、実験において鋼材を所定のスプレー流量で冷却させたときの温度変化を測定し、その測定結果に基づいて推定している。
参考として、凝固伝熱計算の計算結果の一例を図12に示す。この図12は、前述した三塚らの文献に記載された予測式を元に、凝固潜熱を55cal/g、又は、65cal/gとして計算したものである。この図12において、実線は潜熱が65cal/gのケース、破線は55cal/gのケースをそれぞれ示す。本図からわかるように、実際には正確に求められない凝固潜熱の違いにより、固相率とメニスカス距離との関係に、例えば数mオーダにまで及ぶ大きなズレが生じてしまうことがわかる。さらに、前述した三塚らの予測式が全ての鋳造条件に適合するとは限らず、用いる予測式によっては、同様に、当該固相率とメニスカス距離との関係にズレが生じることも容易に予測できる。
0.67×S≦X<Sの第1区間において、0≦R≦1.0
S≦X<1.16×Sの第2区間において、1.2≦R≦1.8
1.16×S≦X<1.23×Sの第3区間において、0.4≦R≦1.5であることを特徴とするものである。
但し、前記基準距離Sは、少なくともタンディッシュ内における溶鋼過熱度ΔT、比水量Q、鋳型内電磁攪拌強度P、鋳造速度Vc、鋳片の厚みT及び炭素含有量[%C]に基づいて算出され、下記S 1 と下記S 2 との間にある(S 1 及びS 2 を含む)。
S 1 =(0.715+0.0007×ΔT+0.03×Q+6×10 −8 ×P)×Vc×(T/k/2) 2
ここで、k=28−3.3×[%C] 2 である
S 2 =0.022×ΔT−0.94×Q−1.87×10 −6 ×P+38.4×Vc+0.118×T+1.83×[%C]−52.0
P=f×B2・・・(1)
上記式(1)の周波数f[Hz]は、鋳型1内の溶鋼に作用される磁場の周波数(「磁場の周波数」とは、交流の電流周波数であり、磁束密度B[gauss]は、鋳型1中心でメニスカスから300mmの位置における磁束密度実効値である。
R=Vc×Y・・・(2)
Y=(G1−G2)/D
0.67×S≦X<Sの範囲(以下、第1区間とする)において、0≦R≦1.0
S≦X<1.16×Sの範囲(以下、第2区間とする)において、1.2≦R≦1.8
1.16×S≦X<1.23×Sの範囲(以下、第3区間とする)において、0.4≦R≦1.5
となっている。なお、上記した基準距離S[m]は、過熱度ΔT(10〜45[℃])、比水量Q(0.25〜1.0[l/kg])、鋳型内電磁攪拌強度P(50000〜500000[Gauss2/sec])、鋳造速度Vc(0.50〜0.65[m/min])、鋳片の厚みT(380±30[mm])及び炭素含有量%C[wt%]に基づいて算出される。
鋳片からの抜熱が鋳片凝固殻内の熱伝導に支配される条件下においては、鋳片厚みT[mm]の鋳片を鋳造速度Vc[m/min]で引き抜いて、中心まで凝固完了するまでに必要とされるメニスカスからの距離L[m]は、凝固定数k[mm/min0.5]を用いて、
L=Vc×(T/k/2)2
と表現できる。凝固定数kは、鋼の成分に支配され、その中でも特に影響が大きい炭素含有量%C[wt%]を用いて、
k=28−3.3×(%C)2
と近似される。しかしながら、実際の鋳造においては鋳片からの抜熱が鋳片凝固殻内の熱伝導だけによって完全に支配されるわけではないため、この距離Lは、タンディッシュ内の溶鋼過熱度ΔT、2次冷却水の比水量Q、鋳型内電磁攪拌強度Pの影響を受ける。更に、中心偏析を抑制するためには、鋳片が中心まで完全に凝固する位置よりも上流側で軽圧下を行う必要があり、基準距離S[m]は、上記Lよりも小さい値とする必要がある。Lに対するSの比率を、定数α1〜α4を用いて、ΔT、Q、Pの一次関数で近似することにより、Sは、
S=(α1+α2×ΔT+α3×Q+α4×P)×Vc×(T/k/2)2
と表現され、T、Vc、[%C]、ΔT、Q、Pを変化させて、中心偏析が良好な鋳片が得られる条件を調査することにより、定数α1〜α4を決定することができる。
本発明者らは、各定数を、α1=0.715、α2=0.0007、α3=0.03、α4=6×10−8とし、Sを下記の(3)式で計算することにより、中心偏析が良好な鋳片が得れらる事を見出した。
S=(0.715+0.0007×ΔT+0.03×Q+6×10−8×P)×Vc×(T/k/2)2・・・(3)
尚、(3)式では、Lとの関係からSを導出したが、本発明の範囲内であれば、Sをより簡単に、T、Vc、[%C]、ΔT、Q、Pの一次式の形で(4)式のように近似することも可能である。
(3)式で算出したSと(4)式で算出したSの差異は0.4以下となり、実用上、大きな違いはない。
S=0.022×ΔT−0.94×Q−1.87×10−6×P+38.4×Vc+0.118×T+1.83×[%C]−52.0・・・(4)
(4)式より、中心偏析が良好な鋳片が得られるある軽圧下条件を把握できた場合には、その軽圧下条件をベースとして、溶鋼過熱度の増加、比水量の減少、鋳型内電磁攪拌強度の減少、鋳造速度の増加、鋳片厚みの増加、炭素含有量の増加にともなってSを増加させ、逆に、溶鋼過熱度の減少、比水量の増加、鋳型内電磁攪拌強度の増加、鋳造速度の減少、鋳片厚みの減少、炭素含有量の減少にともなってSを減少させれば良いことがわかる。
以上説明した本実施形態の軽圧下方法について、より具体的な実施例と比較例により検証した。
まず、本発明の実施例としては、鋳片の厚み、鋼に含まれる元素(炭素、珪素、マンガン、リン、及び、硫黄)の含有量、鋳造速度、溶鋼過熱度、比水量、鋳型内電磁攪拌強度の各条件については、下記の範囲内でそれぞれ決定して、鋳片を鋳造した。
鋳片の厚み(鋳型厚み):380±30[mm]
炭素含有量:0.70〜0.90[wt%]
珪素含有量:0.15〜0.25[wt%]
マンガン含有量:0.45〜0.55[wt%]
リン含有量:0〜0.03[wt%]
硫黄含有量:0〜0.01[wt%]
鋳造速度:0.50〜0.65[m/min]
溶鋼加熱度:10〜45[℃]
比水量:0.25〜1.0[l/kg]
鋳型内電磁攪拌強度:50000〜500000[Gauss2/sec]
次に、ロール対4の実施例及び比較例における具体的構成について説明する。図5はロール対4の配置構成を示す概略図であり、図6(a)〜(c)は、ロール対4の間隔を制御する方法を説明するための図である。図5に示すように、鋳片が送られる鋳造経路の両側において、鋳造方向に並ぶ4つのロール5は1つのロールスタンドに設けられている。ここで、鋳造経路の下側に位置するロールは、ロールスタンドの下側固定フレーム7に設置されている。一方、鋳造経路の上側に位置するロールは、その傾きと上下方向の位置を調整可能な可動フレーム6に設置されている。つまり、上側の可動フレーム6の傾き及び上下方向位置を調整することにより、ロール対4A〜4Dの間隔を4対ごとにセットで設定することが可能となっている。
ロールスタンド内のロールギャップ誤差の2乗和
=(誤差A)2+(誤差B)2+(誤差C)2+(誤差D)2
が最小となるように、最小2乗法によりフレーム6及び7の間隔及び傾きの調整量を算出して、最適な軽圧下を行うことができる。
0.67×S≦X≦Sの第1区間において、0≦R≦1.0
S≦X≦1.16×Sの第2区間において、1.2≦R≦1.8
1.16×S≦X≦1.23×Sの第3区間において、0.4≦R≦1.5
の範囲内で設定し、且つ、第1〜第3区間の各ロール対の間隔と目標値との誤差の2乗和をそれぞれ最小とする。その一方で、この実施例に対する比較例として、少なくとも何れかの1つの区間において、Yの値が前述の範囲から外れている条件での軽圧下も行った。
次に、鋳造された鋳片に生じている中心偏析の程度を評価する手法について説明する。
中心偏析が問題となる代表的な鋼種に、タイヤの補強材等として用いられるスチールコード材がある。このスチールコード材は、例えば、以下のような工程で製造される。まず、鋳造された幅600mm×厚さ380mmの鋳片を加熱炉で3時間ほど加熱した後に、155mm角のビレットに形成する。そして、このビレットを圧延することにより、直径5.5mmの線材を得る。
そして、実施例及び比較例における、鋳型厚み(即ち、鋳片厚み)、成分元素の含有量、鋳造速度、溶鋼過熱度(ΔT)、比水量Q、鋳型内電磁攪拌強度P、第1〜第3区間の圧下速度(R0〜R2)の諸条件と、鋳造により得られた鋳片における偏析状況を、表1〜表5に示す。
4 ロール対
5 ロール
6,7 ロールスタンド
20 中心偏析
21 V偏析
100 連鋳機
Claims (3)
- 炭素含有量が0.70〜0.90[wt%]、珪素含有量が0.15〜0.25[wt%]、マンガン含有量が0.45〜0.55[wt%]、リン含有量が0〜0.03[wt%]、硫黄含有量が0〜0.01[wt%]の範囲にある鋼線用溶鋼を、タンディッシュ内における溶鋼過熱度を10〜45[℃]として鋳型内に注入し、50000〜500000[Gauss2/sec]の強度で鋳型内電磁攪拌し、2次冷却帯において、0.25〜1.0[l/kg]の比水量で冷却しながら、0.50〜0.65[m/min]の鋳造速度で連続鋳造して、厚みが350〜410[mm]の鋳片を製造する際に、前記鋳片を複数のロール対により軽圧下する方法であって、
溶鋼のメニスカスからの鋳造方向距離をX[m]、前記複数のロール対のそれぞれの間隔を下流側に向かって狭める度合いを示す圧下速度をR[mm/min]、並びに、基準距離をS[m]としたときに、
0.67×S≦X<Sの第1区間において、0≦R≦1.0
S≦X<1.16×Sの第2区間において、1.2≦R≦1.8
1.16×S≦X<1.23×Sの第3区間において、0.4≦R≦1.5
であることを特徴とする連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
但し、前記基準距離Sは、少なくとも前記タンディッシュ内における溶鋼過熱度ΔT、前記比水量Q、前記鋳型内電磁攪拌強度P、前記鋳造速度Vc、前記鋳片の厚みT及び前記炭素含有量[%C]に基づいて算出され、下記S 1 と下記S 2 との間にある(S 1 及びS 2 を含む)。
S 1 =(0.715+0.0007×ΔT+0.03×Q+6×10 −8 ×P)×Vc×(T/k/2) 2
ここで、k=28−3.3×[%C] 2 である
S 2 =0.022×ΔT−0.94×Q−1.87×10 −6 ×P+38.4×Vc+0.118×T+1.83×[%C]−52.0 - 前記基準距離S[m]は、
前記溶鋼過熱度の増加、前記比水量の減少、前記鋳型内電磁攪拌強度の減少、前記鋳造速度の増加、前記鋳片の厚みの増加、前記炭素含有量の増加に伴って、増加し、
前記溶鋼過熱度の減少、前記比水量の増加、前記鋳型内電磁攪拌強度の増加、前記鋳造速度の減少、前記鋳片の厚みの減少、前記炭素含有量の減少に伴って、減少することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。 - 前記複数のロール対のそれぞれの間隔は、少なくとも3つのロール対からなるロールスタンド毎に変更可能であって、
前記圧下速度R[mm/min]に基づいて、前記複数のロール対のそれぞれの間隔の目標値を設定した場合に、
当該複数のロール対は、前記ロールスタンド毎に、各ロール対の間隔と前記目標値との誤差の2乗和が最小となるように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続鋳造における鋳片の軽圧下方法。
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