JP4046255B2 - 介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄鋼板向け炭素鋼の連続鋳造鋳片とその製造方法に関し、特に介在物性欠陥発生の少ない鋳片およびその製造方法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、連続鋳造法で製造した鋳片における介在物性の欠陥は非常に少なくなってきている。これは、溶鋼段階での脱酸法の技術改善や、連続鋳造における種々の介在物対策が効を奏した結果である(第126・127回西山記念技術講座「高清浄鋼」社団法人日本鉄鋼協会,1988)。
【0003】
しかしながら、薄板向け鋳片、特に飲料缶素材用鋳片においては、益々の介在物低減が要求されており、個数の低減とともにそのサイズを小さくすることが求められている。鋳片内の介在物個数を低減する技術としては、例えば特開平7−300612号公報、特開平5−331522号公報等が、また、介在物のサイズを小さくする技術としては、例えば特開平5−43977号公報等がある。
【0004】
飲料缶用鋳片内の介在物個数を低減する技術として、上記特開平7−300612号公報には、二次精錬において、溶鋼中にガス吹き込みランスからフラックスを吹き込んで、該フラックスを介在物と凝集合体させ、浮上させることが記載されているが、吹き込んだフラックスが溶鋼中に残留して介在物となる恐れがあった。
【0005】
また、上記特開平5−331522号公報では、転炉内へCaOを投入してスラグを固化させた後、取鍋内に出鋼し、その後取鍋上のスラグにAlを添加して、スラグ中FeO濃度を2%以下にすることを記載しているが、スラグ中FeO濃度を安定的に2%以下にするには、多量のAl投入が必要となり、コスト的に高くなる。また、スラグ中FeO濃度を2%以下にしても、Al脱酸を行なう限り、脱酸生成物であるアルミナが生成してクラスタ状になる。これは比重が大きいため、溶鋼表面への浮上によるアルミナクラスタ個数の大幅減少は、期待出来ない。
【0006】
介在物のサイズを小さくする技術としては、特開平5−43977号公報にTiとMgを溶鋼中に添加することが開示されているが、TiやMg添加前の溶鋼酸素濃度が規定されていない。酸素濃度が高い場合には、TiやMgを添加して脱酸を行なっても、介在物の微細化効果が十分に発揮されないことから、生成した介在物は大きなものとなってしまう。
【0007】
このようなことから、前記各号公報の技術では、薄板向鋼板用鋳片の介在物個数の低減と介在物サイズの微細化を安定して達成することは困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、鋳片の介在物個数の低減と介在物サイズの微細化を安定して達成することによって、介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片とその製造方法を提供することである。
すなわち、本発明は、薄板製品で介在物性欠陥が発生しないための鋳片内介在物条件を満足する鋳片とその鋳片の製造方法である。特に、薄鋼板用鋳片で制約を受ける、MnやSi含有量に依存しない、介在物性欠陥の少ない鋳片とその製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶鋼に脱酸材を添加する前に、減圧雰囲気でC脱酸を行なって溶鋼中の酸素濃度を低減して、その後、脱酸材としてTi、Mgの順で金属または合金として添加して脱酸し、53μm以上の酸化物介在物の個数が200個/kg以下で、かつ、その内、アルミナクラスタ介在物の個数が20個/kg以下の鋳片にして、製品加工において、介在物欠陥の発生を防止するものであり、その手段1は、C:0.001〜0.2重量、Mn:0.01〜0.5重量%、Si:0.001〜0.5重量%、P:0.001〜0.3重量%、S:0.0005〜0.05重量%、Al:0.006重量%以下、Ti:0.005〜0.06重量%、Mg:0.0005〜0.01重量%、N:0.0005〜0.01重量%、酸素:0.0005〜0.0050重量%を含み、残部鉄および不可避的不純物からなる炭素鋼で、鋳片中の酸化物系介在物のうち、53μm以上の介在物の個数が200個/kg以下であり、かつその内、アルミナ粒子が2個以上合体したアルミナクラスタ介在物の個数が20個/kg以下である介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片である。
【0010】
更に、手段2は、前記手段1に、Nb:0.001〜0.10重量%、V:0.005〜0.20重量%、Cr:0.01〜0.50重量%、Mo:0.01〜0.50重量%、Cu:0.01〜0.50重量%、Ni:0.01〜0.50重量%、B:0.0002〜0.0020重量%の一種または二種以上を含有せしめるものである。
【0011】
手段3は、C:0.001〜0.2重量%、Mn:0.01〜0.5重量%、Si:0.001〜0.5重量%、P:0.001〜0.3重量%、S:0.0005〜0.05重量%、Al:0.006重量%以下、Ti:0.005〜0.06重量%、Mg:0.0005〜0.01重量%、N:0.0005〜0.01重量%、酸素:0.0005〜0.0050重量%を含み、残部鉄および不可避的不純物からなる炭素鋼溶鋼を連続鋳造設備で鋳造して鋳片を製造する際に、脱炭を行なった溶鋼を、減圧雰囲気でC脱酸を行なって該溶鋼中の酸素濃度を300ppm以下とし、その後、Ti、Mgの順で金属または合金として添加して脱酸する介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片の製造方法である。
【0012】
手段4は、前記手段3に、Nb:0.001〜0.10重量%、V:0.005〜0.20重量%、Cr:0.01〜0.50重量%、Mo:0.01〜0.50重量%、Cu:0.01〜0.50重量%、Ni:0.01〜0.50重量%、B:0.0002〜0.0020重量%の一種または二種以上を含有せしめるたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
発明者らは、まず、製品にとって介在物性欠陥の発生しにくい鋳片の介在物条件について検討した。ここで、介在物とは、製品欠陥に悪影響を与えやすい酸化物系のものを示す。鋳片内の介在物個数が多くなると、製品での介在物性欠陥が発生しやすくなる。そこで、鋳片内の介在物の大きさや個数と製品欠陥発生との関係を調査した結果、図1に示すように、鋳片内の介在物のうち、53μm以上の大きさのものが、鋳片1kgあたり200個以下で、しかも、53μm以上のアルミナクラスタが、鋳片1kg当たり20個以下であると製品欠陥発生率が極めて低い。
【0014】
これに対し、それ以外の場合(53μm以上の介在物が鋳片1kgあたり200個超、アルミナクラスタが鋳片1kg当たり20個超である場合)には製品欠陥発生率が高い、すなわち製品欠陥が発生しやすい傾向にあることが判明した。
【0015】
ここで、前記アルミナクラスタとは、複数のアルミナ粒子が凝集したもので、、この集合体を1個と数える。一般的にAl脱酸後の生成物であるアルミナは、一つ一つの粒子は小さいが、生成後すぐに粒子どうしが凝集し、クラスタ状となってサイズが大きくなる。また、このクラスタは、構成粒子どうしの間に鉄を含むので、比重が大きく浮上しにくい。また、アルミナクラスタのほうが他の介在物よりも、製品欠陥に与える影響が大きい。なお、53μmという数字は、介在物分析法におけるフィルターの編み目のサイズである。
【0016】
以下に本発明の鋳片について詳細に説明するために、発明の条件を規定した理由を述べる。
Cは鋼の強度を持たす為に用いられる元素であるが、薄板向けでは深絞り用鋼板等でCを極力低減させたほうが望ましい場合もある。しかしながら、Cが0.001重量%以下では本発明におけるC脱酸が非常に困難になるので、下限を0.001重量%とし、上限は板材で用いられる最大炭素量として0.2重量%とした。
【0017】
また、Mnも強度を得るためやSによる脆化を抑制するために必要であり、上限はハイテン材等で使用される場合の最大値0.5重量%とした。また、下限は不可避的に混入するために0.01重量%とした。
Siも強度を得るためや高温特性を改善するために用いられる元素であり、上限は0.5重量%とした。また、不可避的に混入するためその下限を0.001重量%とした。
【0018】
Pは鋼に有害な元素であるため、極力少ないほうが望ましいが、不可避的に混入するため下限値0.001重量%が現実的である。しかしながら、鋼の強度や耐食性向上の観点から多量のP添加を求められる場合があるので、その上限を0.3重量%とした。これ以上では、Pによる脆化の影響が強くなる。
Sも同様に製品特性に害をなす場合が多く、極力低位とすることが望ましいが、不可避的に混入するため下限値0.0005重量%が現実的である。また上限は連続鋳造時の割れを防ぐために0.05重量%とした。
【0019】
Alは脱酸元素として一般的に使用されているが、鋳片中の酸化物系介在物のうち、53μm以上の介在物の個数が200個/kg以下であり、かつその内、アルミナ粒子が2個以上合体したアルミナクラスタ介在物の個数が20個/kg以下であることを満たすためには、本発明では極力Alを脱酸元素として用いないことが、基本思想である。
【0020】
しかしながら、不可避的に混入される場合があったり、後述のようにスラグ改質のためにスラグ中にAlを添加した時に溶鋼中にもAlがついてしまう場合がある。そこで、上限を0.006重量%とした。これは、前記特開平05−43977に記載された条件と同じであり、Al含有量を0.006重量%以下に制限すれば、TiとMgの効果が阻害されない。
【0021】
TiおよびMgは本発明の重要な元素である。鋳片中の酸化物系介在物のうち、53μm以上の介在物の個数が200個/kg以下であり、かつその内、アルミナ粒子が2個以上合体したアルミナクラスタ介在物の個数が20個/kg以下であることを満たすためには、Alを脱酸材として用いるのではなく、後述するようにTiやMgを用いる必要があることを、発明者らは知見した。
【0022】
Tiの下限値は、脱酸効果を得るために0.005重量%とし、上限については、多量に添加するとMg脱酸の効果を阻害するので、0.06重量%と規定した。
Mgについても、十分な脱酸効果を得るために、下限値は0.0005重量%とした。上限値は、過剰に入れても効果が飽和するレベルとして0.01重量%とした。
【0023】
Nは、Tiと化合してTiNをつくり、結晶粒の成長を抑えることに利用される。この観点から用いられている添加量の上限値として、0.01重量%とした。また、不可避的に混入される分を考慮して、下限値として0.0005重量%とした。
【0024】
鋳片中の酸素量は、そのほとんどが鋳片内の酸化物系介在物として含まれる分である。製品で有害となる53μm以上の介在物については、極力少ないほうが望ましいが、大きな介在物が少なくなれば、必ず酸素量が低くなるという訳ではない。
すなわち、製品に無害な微細介在物が多数あっても、酸素量は高くなる。従って、酸素量があるレベル以下では、必ずしも酸素量は介在物個数の指標とは成り得ないが、酸素値が非常に高い場合には、大きな介在物個数が多くなる傾向が見られるので、上限を0.0050重量%とした。また、下限については、不可避的に混入する分を考慮して、0.0005重量%とした。
【0025】
以上が、本発明が対象とする鋼の基本成分であるが、強度や耐食性、焼き入れ性を初めとする材料の諸特性を向上させるために、鋼の用途に応じてNb,V,Cr,Mo,Cu,Ni,Bの一種または二種以上を添加しても、本発明の効果は何ら損なわれるものではない。
すなわち、その添加量の範囲は、Nb:0.001〜0.10重量%、V:0.005〜0.20重量%、Cr:0.01〜0.50重量%、Mo:0.01〜0.50重量%、Cu:0.01〜0.50重量%、Ni:0.01〜0.50重量%、B:0.0002〜0.0020重量%とする。
【0026】
この他の元素として、CaやREMの元素が溶鋼中に含まれる場合もあるが、当該1元素につき10ppmまでなら、含まれても本発明の効果に影響を与えることはない。
【0027】
なお、実際の製造プロセスでは、添加した元素が100%溶鋼中に含まれることになるわけではないので、歩留を考慮して余分に添加する必要がある。また、添加方法については、特に規定はしない。上記条件を満足するように鋼中に含有できる方法であれば、どのような方法でも構わない。
また、鋳片中の酸化物系介在物のうち、53μm以上の介在物の個数を200個/kg以下とし、かつその内のアルミナクラスタの個数を20個/kg以下としたのは、図1に示したように、製品欠陥の発生率が小さくなる条件から決定したものである。
【0028】
次に、このような鋳片内の介在物条件を満たすための製造方法について検討した。発明者らは、まず脱酸元素について着目した。溶鋼の脱酸元素としては、一般にAlが広く用いられている。しかしながら、Al脱酸後の生成物であるアルミナは、一つ一つの粒子は小さいが、生成後すぐに粒子どうしが凝集し、クラスタ状となってサイズが大きくなる。また、このクラスタは、構成粒子どうしの間に鉄を含むので、比重が大きく浮上しにくい。従って、Al脱酸で生成したアルミナ介在物を浮上・除去するためには、静置時間を非常に長くとる、Arガスを多量に溶鋼中へ吹き込んで、ガスと介在物を合体させて浮上を促進する等の対策が必要であった。
【0029】
そこで、発明者らはAlを脱酸材として用いないことを考え、Alに代わる脱酸元素として、Mgに着目した。Mgで脱酸すると、脱酸生成物であるMgOが生成するが、そのサイズが他の脱酸元素に較べて小さい特徴がある。しかしながら、このMgOのサイズは、Mg添加前の溶鋼酸素濃度に大きく依存する。
【0030】
発明者らは、MgO介在物のサイズが小さくなるMg添加前の溶鋼酸素濃度について、ラボ実験により求めた。鋼の成分は0.04%C−0.0010%NでTi,Mg,酸素量を変化させた。なお、他の成分は含まれていない。図2には、Mg脱酸直後のMgO介在物平均粒径と、Mg脱酸前の溶鋼酸素濃度の関係を示すが、溶鋼酸素濃度が50pppm以下の場合に、生成したMgO介在物の平均サイズが10μm以下と非常に小さくなることが判った。
【0031】
次に、Mg添加前の溶鋼酸素濃度を50ppm以下に制御する手段について検討した。熱力学的に検討すると、溶鋼酸素濃度を50ppm以下にするためには、Siよりも酸素親和力の強い脱酸元素を選択するのが良い。これは、Siを0.5重量%と比較的多量に入れて脱酸した時に、溶鋼温度1600℃で熱力学的に平衡する溶鋼酸素濃度が約70ppmであることから推測出来る。
【0032】
これに当てはまる脱酸元素としては、Ti,Al,Mg,Caが挙げられるが、Mgはその後の脱酸で用いるので、除外される。また、CaはMgよりも酸素親和力の強い元素なので、除かれる。また、Alについては、脱酸元素として用いないことが本発明の基本思想であるから除いた。
以上の考察から、Mg添加前の溶鋼酸素濃度を50ppm以下に制御する手段として、Tiを用いることにした。Ti脱酸は、脱酸するために必要な濃度が数百ppmと、MnやSiの場合に較べて非常に少ないことも特徴である。
【0033】
しかしながら、Ti脱酸においても、Mg脱酸と同様に、Ti添加前の溶鋼酸素濃度が、生成するTi酸化物のサイズに大きく影響する。すなわち、溶鋼酸素濃度が高い場合には、生成するTi酸化物が大きいものになり、本発明の意図と矛盾することになる。
そこで、発明者らは、Ti酸化物のサイズが小さくなるTi添加前の溶鋼酸素濃度について、ラボ実験により求めた。図3には、Ti脱酸直後のTi酸化物の平均粒径と、Ti脱酸前の溶鋼酸素濃度の関係を示すが、溶鋼酸素濃度が300ppm以上では、生成したTi酸化物のサイズが急激に大きくなることが判った。従って、Ti添加前の溶鋼酸素濃度を300ppm以下とする必要があることが判明した。
【0034】
次に、Ti添加前の溶鋼酸素濃度を300ppm以下に制御する手段について検討した。熱力学的に検討すると、溶鋼酸素濃度を300ppm以下にするためには、Mn脱酸やSi脱酸が挙げられるが、本発明が対象とする薄鋼板用鋳片では、材質上MnやSi濃度を低く制約される場合がある。従って、MnやSi濃度に依存しない脱酸法を考える必用があった。
【0035】
発明者らは、Cに着目し、減圧下でC脱酸を行なうことにより、溶鋼酸素濃度を300ppm以下にすることを考えた。C脱酸平衡から検討すると、例えばC濃度0.04重量%の場合、溶鋼温度1600℃で雰囲気中のCO分圧が約0.4であれば、平衡する溶鋼酸素濃度は約300ppmとなり、本発明で要求される条件を満足する事が出来る。C脱酸は、脱酸生成物がCOガスであるため、溶鋼中に残留して介在物とならないことも大きな特徴である。
【0036】
なお、脱酸を行なう前に、取鍋内溶鋼上のスラグにCaOやAlを添加して、スラグ中の酸素ポテンシャルを低下させる、いわゆるスラグ改質を行なうことは、本発明の効果にとっても有利な方法であり、スラグ改質を行なうほうが、更なる介在物個数の低減と介在物の微細化が期待できる。
【0037】
【実施例】
表1に示す成分の炭素鋼を表3に示す製造条件で製造し、得られた鋳片の介在物個数と、鋳片を圧延して得られた鋼板および、それを素材として加工した場合の結果について調査した。調査方法としては、表4に示した方法で行なった。
なお、水準A−1、C−1、D−1はスラグ改質として、C脱酸前に、取鍋内のスラグ上に、溶鋼300tにつきCaOを1.5t、Alを500kg添加した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
結果を表2に示す。表より、本発明の場合の条件を満たす場合には、鋳片内の介在物個数が少なく、表面疵や内部欠陥による不合格が発生せず、更に加工時の欠陥も発生しないという良好な結果が得られた。
【0043】
一方、本発明を満たさない比較材については、次の通り問題のある結果となった。
すなわち、比較材B−2、E−2、F−2では、脱酸用合金元素であるTi,Mgの添加前にC脱酸を行なっていないので、結果的に脱酸用合金元素添加前の溶鋼酸素濃度が300ppmより高くなり、Ti−Mgの順序で添加を行なっても、鋳片内介在物個数が多くなっている。特にE−2では、アルミナクラスタ個数は少ないが、総介在物個数が多くなっている。
【0044】
比較材A−2、D−2では、脱酸用合金元素添加前にC脱酸を行なったにもかかわらず、脱酸用合金元素添加前の溶鋼酸素濃度が300ppm以下を満たしていないので、アルミナクラスタ個数は少ないが、総介在物個数が多くなっている。比較材C−2、G−2、H−2では、脱酸元素の添加順序が本発明を満たしていなかったので製品加工時に欠陥が発生した。特にC−2とH−2では、アルミナクラスタ個数は少ないが、総介在物個数が多くなっている。
【0045】
また、比較材I−1ではTi濃度が低く本発明を満たさないため、またJ−1ではAlが高く、本発明を満たさないため、K−1ではTi、Mg、酸素の濃度が高く本発明を満たしていないために、鋳片内介在物個数が多くなっている。特にJ−1の場合には、53μm以上の介在物個数は、条件を満たしているが、アルミナクラスタ個数が本発明範囲よりも多くなっている。
【0046】
この結果、本発明の条件を満たさない場合には、鋳片内介在物の個数が多く、圧延後のコイル欠陥や製品加工時の欠陥も発生している。ここで、表3中の加工欠陥の欄で、−印となっているものは、コイル段階で不合格になったために、製品にはならず、加工に至らなかったものである。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明は、有害な介在物の個数が大幅に減少した薄鋼板用鋳片であることから、圧延後の鋼板に介在物に起因する欠陥や製品加工時の欠陥が非常に少なくなり、良好な製品を得ることが可能となって、製品歩留を向上出来る。更に、本発明により、介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片の製造を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳片内介在物個数と製品欠陥の発生率の関係を示した図。
【図2】Mg添加前の溶鋼酸素量と介在物サイズとの関係を示した図。
【図3】Ti添加前の溶鋼酸素量と介在物サイズとの関係を示した図。
Claims (4)
- C:0.001〜0.2重量%、Mn:0.01〜0.5重量%、Si:0.001〜0.5重量%、P:0.001〜0.3重量%、S:0.0005〜0.05重量%、Al:0.006重量%以下、Ti:0.005〜0.06重量%、Mg:0.0005〜0.01重量%、N:0.0005〜0.01重量%、酸素:0.0005〜0.0050重量%を含み、残部鉄および不可避的不純物からなる炭素鋼で、鋳片中の酸化物系介在物のうち、53μm以上の介在物の個数が200個/kg以下であり、かつその内、アルミナ粒子が2個以上合体したアルミナクラスタ介在物の個数が20個/kg以下であることを特徴とする介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片。
- Nb:0.001〜0.10重量%、V:0.005〜0.20重量%、Cr:0.01〜0.50重量%、Mo:0.01〜0.50重量%、Cu:0.01〜0.50重量%、Ni:0.01〜0.50重量%、B:0.0002〜0.0020重量%の一種または二種以上を含有せしめることを特徴とする請求項1記載の介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片。
- C:0.001〜0.2重量%、Mn:0.01〜0.5重量%、Si:0.001〜0.5重量%、P:0.001〜0.3重量%、S:0.0005〜0.05重量%、Al:0.006重量%以下、Ti:0.005〜0.06重量%、Mg:0.0005〜0.01重量%、N:0.0005〜0.01重量%、酸素:0.0005〜0.0050重量%を含み、残部鉄および不可避的不純物からなる炭素鋼溶鋼を連続鋳造設備で鋳造して鋳片を製造する際に、脱炭を行なった溶鋼を、減圧雰囲気でC脱酸を行なって該溶鋼中の酸素濃度を300ppm以下とし、その後、Ti、Mgの順で金属または合金として添加して脱酸することを特徴とする、介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片の製造方法。
- Nb:0.001〜0.10重量%、V:0.005〜0.20重量%、Cr:0.01〜0.50重量%、Mo:0.01〜0.50重量%、Cu:0.01〜0.50重量%、Ni:0.01〜0.50重量%、B:0.0002〜0.0020重量%の一種または二種以上を含有せしめることを特徴とする請求項3記載の介在物性欠陥の少ない薄鋼板用鋳片の製造方法。
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