JP7119641B2 - 鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼の製造方法に関し、具体的には、例えば、自動車用鋼板、構造用・耐摩耗用厚板や油井管用鋼管等の素材に好適なアルミナクラスターが少ない鋼材の製造方法に関する。
鋼板等の鋼材は、通常、転炉等の一次精錬炉により大気圧下で脱炭精錬を行われた未脱酸の溶鋼を取鍋に出鋼した後、脱炭精錬により増加した溶鋼中の酸素を、例えばRH真空脱ガス装置でAlまたはAl-Siにより脱酸するAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼として、製造されている。
脱酸時に不可避的に生成するアルミナは、硬質であり、凝集してクラスター化し易く、数100μm以上の大きさの介在物として鋼中に残留する。このため、溶鋼からのアルミナの除去が不十分であると、連続鋳造時にタンディッシュの浸漬ノズルでノズル孔内付着によるノズル詰まりを生じる。
また、アルミナが最終製品である鋼材に残存すると、例えば、薄板では熱間圧延または冷間圧延でのスリバー疵(線状疵)、構造用厚板では材質不良、耐摩耗用厚板では低温靭性の低下、油井用鋼管では溶接部のUST欠陥といった、アルミナクラスターに起因した介在物欠陥が発生する。
アルミナを溶鋼から除去する方法として、
(a)脱酸後に、アルミナの凝集、合体による溶鋼からの浮上、分離時間をできるだけ長く確保するため、脱酸剤のAlを転炉での出鋼時に投入する方法、
(b)二次精錬法の一つであるCAS法やRH真空脱ガス法処理で溶鋼の強攪拌を行い、アルミナの浮上、分離を促進する方法、
(c)溶鋼中へのCaの添加によってアルミナを低融点介在物であるCaO-Alに形態制御して無害化する方法
等が行われていた。
ところが、(a)、(b)の方法によるアルミナの浮上分離対策には限界があり、数100μm以上の大きさの介在物を完全に除去できないため、スリバー疵を防止できないという問題があった。
(c)のCaによる酸化物系介在物の改質は、介在物の低融点化によってアルミナクラスターの生成を防止でき、微細化する。しかし、非特許文献1によれば、アルミナを溶鋼中で液相のカルシウムアルミネートにするためには、[Ca]/[T.O]を0.7~1.2の範囲に制御する必要がある。このためには、例えば、T.Oが40ppmで28~48ppmという多量のCaを添加する必要がある。
一方、タイヤ用のスチールコードや弁バネ材では、介在物を圧延加工時に変形し易い低融点のCaO-SiO-Al(-MnO)系に制御し、無害化することが一般的に広く知られている。
しかし、これらの方法では、通常、Caを安価なCaSi合金で添加するため、Si含有量の上限の制限が厳しい自動車用鋼板や缶用冷延鋼板では実用化されていないのが現状である。
CeやLa等のREM(希土類元素)を利用した溶鋼の脱酸では、(i)Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼を前提とし、AlまたはAl-Si脱酸後にREMをアルミナの改質剤として使用する方法や(ii)Alを使用せずにREMを単独で、またはCa、Mg等と組み合わせて脱酸する方法が知られている。
特許文献1には、Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼を前提にした方法として、Al脱酸またはAl-Si脱酸後にSe、Sb、LaおよびCeの一種以上を0.001~0.05質量%添加することにより、または、これと溶鋼攪拌と組み合わせることにより、溶鋼/アルミナクラスター間の界面張力を制御して溶鋼中のアルミナクラスターを浮上分離させて除去することによって、非金属介在物が少ない清浄鋼を製造する方法が開示されている。
特許文献2には、溶鋼をAlおよびTiにより脱酸した後、Caおよび/またはREMを添加することにより、酸化物系介在物の大きさを50μm以下とし、組成をAl:10~30質量%、Caおよび/またはREM酸化物:5~30質量%、Ti酸化物:50~90質量%とすることにより、表面性状および内質に優れる冷延鋼板を製造する方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、Al、REMおよびZrの複合脱酸によってアルミナクラスターがなく、欠陥が少ない清浄なAlキルド鋼を製造する方法が開示されている。しかし、特許文献1~3により開示された方法では、アルミナクラスターを確実に浮上分離させることが困難であり、介在物欠陥を要求される品質レベルまで低減することができなかった。
特許文献4には、Alを使用しない方法として、溶鋼をCaO含有フラックスで脱酸した後、Ca、MgおよびREMの一種以上を含む合金を、例えば100~200ppm添加し、介在物を低融点化および軟質化することにより、スチールコード用鋼を製造する方法が開示されている。
特許文献5には、Mn、Si等のAl以外の脱酸剤によりT.O≦100ppmに調整した後、空気酸化防止を目的にREMを50~500ppm添加することにより極細伸線性が良好な線材を製造する方法が開示されている。
しかし、特許文献4,5により開示された方法では、脱酸により安価なAlを使用しないため、脱酸剤のコストが上昇するという問題があった。また、Siで脱酸する場合には、Si含有量の上限値の制限が厳しい薄板材への適用は困難であった。
一方、アルミナ粒子のクラスター化に関して幾つかの生成機構が開示されている。例えば、特許文献6には、溶鋼中のPがAl粒子の凝集合体を促進しているとし、Caを添加してPをnCaO・mPとし、AlのバインダーであるPの結合力を低下させることにより、浸漬ノズルへのAlの付着を防止できることが開示されている。
非特許文献2には、連続鋳造でタンディッシュの浸漬ノズルの閉塞防止のために用いているArガスに捕捉されたアルミナ粒子が、冷延鋼板に発生するスリバー疵の原因であると推定されることが開示されている。
さらに、非特許文献3には、気泡に捕捉されたアルミナ粒子がキャピラリー効果により気泡表面で凝集合体するという観察結果が開示されている。このように、アルミナクラスターの微視的な生成機構についても解明されつつあるが、クラスター化の防止のための具体的方法が明らかでなかった。このため、アルミナクラスターによる介在物欠陥を、要求される品質レベルまで低減することは困難であった。
本発明者らは、特許文献7として、酸化物系介在物をAl、REM酸化物が主成分で、REM酸化物の含有量を0.5質量%~15質量%にすることにより、溶鋼中および浸漬ノズル閉塞防止のために用いているArガス気泡の表面でのアルミナ粒子の凝集・合体を抑制したアルミナクラスターが少ない鋼材を開示した。
さらに、本発明者らは、特許文献8により、特許文献7により開示した発明においてREMを添加した後にMgを添加することによりAl-REM酸化物-MgO系介在物とすることによって、REMとMgの相乗効果によりアルミナクラスターの生成をさらに抑制できる発明を開示した。
特許文献8により開示された発明によれば、介在物欠陥の原因となる粗大なアルミナクラスターの生成を、溶鋼中およびArガス気泡の表面で防止できる。このため、自動車用や家電用の薄板のスリバー疵、構造用厚板の材質不良、耐摩耗用厚板の低温靭性の低下、油井管用鋼管の溶接部のUST欠陥といった介在物欠陥を大幅に抑制できる。
特開昭52-70918号公報 特開2001-26842号公報 特開平11-323426号公報 特開昭56-5915号公報 特開昭56-47510号公報 特開平9-192799号公報 特開2004-52076号公報 特開2005-2420号公報
材料とプロセス,4(1991),p.1214(城田ら) 鉄と鋼,(1995),p.17(安中ら) ISIJ Int.,37(1997),p.936(H.Yin et al.)
特許文献8により開示された発明によれば、確かに、アルミナクラスターが少ない鋼材を提供できる。一方、近年、アルミナクラスターによる介在物欠陥を低減することへの要請は、鋼材の需要家の生産性向上のための無欠陥指向や加工特性の向上の要求の高まりにより、従来に増して一段と高まっており、アルミナクラスターによる介在物欠陥をより一層低減することが強く求められている。
このため、製鋼工程での溶鋼の徹底的な清浄化や、鋳片の重手入れ化といった様々な対策も行われてはいるものの、アルミナクラスターによる介在物欠陥を、現在要求される程度まで十分に低減することは、実現できていない。
本発明は、従来の技術が有するこの課題に鑑みてなされたものであり、アルミナクラスターに起因する介在物欠陥を、現在要求される程度まで十分に低減しながら、鋼を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らが特許文献8により開示したように、低融点酸化物であるFeOは、Alにより脱酸された平衡状態の溶鋼中には本来存在しない。しかし、1600℃程度の溶鋼(O濃度:6~8ppm程度)の一部に、O濃度が0.2質量%程度の溶鋼が非平衡に存在すると、Alと液体のFeOとが同時に生成し、液体のFeOがAl同士の間にバインダーとして介在することにより、アルミナクラスターが発生する。
本発明者らは、アルミナクラスターのこの発生機構に基づき、アルミナクラスターの発生防止手段を鋭意検討した結果、以下に列記の知見(A)~(F)が得られた。
(A)製鋼工程でMn濃度の調整のために、AlまたはAl-Si脱酸後に投入されるMeMn(「金属Mn」を意味する。なお、本明細書では、以下成分濃度の調整用合金における「金属」を同様に「Me」と表現する。)は、例えば0.5質量%程度と極微量ではあるものの、Oを含有する。Oを含有するMeMnが溶鋼に持ち込む全O量は、例えば15ppm以上になる。
このため、従来のようにAlまたはAl-Si脱酸後にMeMnを投入すると、MeMnからの持込みOにより、溶鋼は局所的に酸素汚染され、これにより、液体状態のFeOがAlと同時に生成し、生成したFeOがAl同士のバインダーになってアルミナクラスターが発生する。
(B)MeMnの投入量が多い鋼種、すなわち持込み酸素量が15ppm以上と多い鋼種では、MeMnを、従来のようにAlまたはAl-Si脱酸後の溶鋼に投入するのではなくて、AlまたはAl-Si脱酸前の溶存酸素量が50ppm以上である溶鋼に投入するとともにAlまたはAl-Si脱酸後の溶鋼に投入することにより、液体状態のFeOがAlと同時に生成することを阻止してアルミナクラスターの生成を抑制できるため、アルミナクラスターによる介在物欠陥を低減できる。
(C)脱酸後持込み酸素量を10ppm以下にすることにより、アルミナクラスターによる介在物欠陥を低減できる。
(D)AlまたはAl-Siによる脱酸前に投入されるMeMnから溶鋼に持ち込まれる脱酸前持込み酸素量と、AlまたはAl-Siによる脱酸後に投入されるMeMnから溶鋼に持ち込まれる脱酸後持込み酸素量との比率(脱酸前持込み酸素量/脱酸後持込み酸素量)を2以上に高めることにより、アルミナクラスターによる介在物欠陥を低減できる。
(E)AlまたはAl-Si脱酸前にMeMnを投入することにより、Mnの投入歩留まりは若干低下するものの、アルミナクラスターによる介在物欠陥を、現在要求される品質レベルまで十分に低減できる。このため、最終製品である鋼材の生産性や品質を顕著に向上でき、鋼材の製造コストを大幅に抑制することが可能になる。
(F)溶鋼の成分調整用合金としては、MeMn以外に、MeTi、MeCu、MeNi、FeMn、FeP、FeTi、FeS、FeSi、FeCr、FeMo、FeBおよびFeNb等があり、これらの成分調整用合金もOを含有する。このため、これらの成分調整用合金を、上記(B)に記載したようにAlまたはAl-Si脱酸の前後に投入することにより、アルミナクラスターの発生を防ぐことができる。
本発明は、これらの知見(A)~(F)に基づくものであり、以下に列記の通りである。
(1)転炉で溶製された未脱酸の溶鋼を取鍋に出鋼した後、出鋼された溶鋼を、AlまたはAl-Siにより脱酸し、Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼を製造する方法であって、
酸素を含有する成分調整用合金を、前記取鍋への出鋼中または出鋼後であって、前記Alまたは前記Al-Siによる脱酸の前の溶存酸素量が50ppm以上の溶鋼に投入するとともに前記Alまたは前記Al-Siによる脱酸の後の溶鋼に投入し、
前記Alまたは前記Al-Siによる脱酸の前に投入される成分調整用合金から溶鋼に持ち込まれる脱酸前持込み酸素量(ppm)と、前記Alまたは前記Al-Siによる脱酸の後に投入される成分調整用合金から溶鋼に持ち込まれる脱酸後持込み酸素量(ppm)との比率(脱酸前持込み酸素量/脱酸後持込み酸素量)を2以上とし、
前記脱酸後持込み酸素量を10ppm以下とし、
脱酸前持込み酸素量と脱酸後持込み酸素量の合計を15ppm以上とするとともに、
前記Alまたは前記Al-Siにより脱酸され、その後に前記成分調整用合金を投入された溶鋼に、1種類以上のREMを添加した後、Mgを添加する、鋼の製造方法。
(2)前記成分調整用合金は、MeMn、MeTi、MeCu、MeNi、FeMn、FeP、FeTi、FeS、FeSi、FeCr、FeMo、FeB、およびFeNbから選択される1種以上である、上記(1)に記載の鋼の製造方法。
(3)前記Alキルド鋼または前記Al-Siキルド鋼の化学組成が、質量%で、
C:0.0005~1.5%、
Si:0.005~1.2%、
Mn:0.05~3.0%、
P:0.001~0.2%、
S:0.0001~0.05%、
T.Al:0.005~1.5%、
Cu:0~1.5%、
Ni:0~10.0%、
Cr:0~10.0%、
Mo:0~1.5%、
Nb:0~0.1%、
V:0~0.3%、
Ti:0~0.25%、
B:0~0.005%、
REM:0.1~20ppm、
Mg:0.1~20ppm、
T.O:5~50ppm、
残部がFeおよび不純物である、上記(1)または(2)に記載の鋼の製造方法。
(4)前記Alキルド鋼または前記Al-Siキルド鋼の前記化学組成が、質量%で、
Cu:0.1~1.5%、
Ni:0.1~10.0%、
Cr:0.1~10.0%、および
Mo:0.05~1.5%、
から選択される1種以上を含有する、上記(3)に記載の鋼の製造方法。
(5)前記Alキルド鋼または前記Al-Siキルド鋼の前記化学組成が、質量%で、
Nb:0.005~0.1%、
V:0.005~0.3%、および
Ti:0.001~0.25%、
から選択される1種以上を含有する、上記(3)または(4)に記載の鋼の製造方法。
(6)前記Alキルド鋼または前記Al-Siキルド鋼の前記化学組成が、質量%で、
B:0.0005~0.005%、
を含有する、上記(3)~(5)のいずれかに記載の鋼の製造方法。
(7)前記鋼は、Al、REM酸化物、およびMgOを含み、質量%で、
REM酸化物:0.1%以上、
MgO:0.1%以上、
を含有し、前記REM酸化物および前記MgOの総含有量が0.2%以上15%未満である酸化物系介在物を有する、
上記(1)~(6)のいずれかに記載の鋼の製造方法。
(8)前記鋼は、鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径が100μm以下である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の鋼の製造方法。
(9)前記鋼は、鋳片のスライム抽出で得られる20μm以上のアルミナクラスターの個数が2個/kg以下である、上記(8)に記載の鋼の製造方法。
本発明によれば、酸素を含有する成分調整用合金をAlまたはAl-Si脱酸後の溶鋼に投入することに起因した、Alおよび液体のFeOの同時発生、およびアルミナクラスターの発生を防ぐことができる。また、本発明によれば、REMとMgの相乗効果によりアルミナクラスターの生成を抑制することができる。
このため、本発明によれば、Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼からなる最終製品における表面疵や内部欠陥の原因となる粗大なアルミナクラスターの発生を、現在要求される程度まで十分に低減しながら、溶鋼を製造できるようになる。
さらに本発明によれば、連続鋳造における溶鋼中アルミナの浸漬ノズルへの付着も防止できる。したがって、浸漬ノズルの閉塞防止効果も大きい。したがって、本発明は、従来のAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼における課題を一掃し、アルミナクラスターが少ない鋼材を確実に製造でき、産業の発展に寄与するところは極めて大きい。
図1は、本発明における酸化物系介在物中のREM酸化物およびMgOの総含有量と、最大アルミナクラスター径との関係を示すグラフである。 図2は、実施例における脱酸前持込み酸素量と脱酸後持込み酸素量との関係を示すグラフである。
本発明を説明する。以降の説明において化学組成は特段の断りがない限り、質量%を用いる。
1.本発明の概要
本発明では、基本的に、転炉で溶製された未脱酸の溶鋼を取鍋に出鋼した後、出鋼された溶鋼を、AlまたはAl-Siにより脱酸し、Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼を製造する。
この際、酸素を含有する成分調整用合金を、取鍋への出鋼中または出鋼後であって、AlまたはAl-Siによる脱酸の前の溶存酸素量が50ppm以上の溶鋼に投入するとともに、AlまたはAl-Siによる脱酸の後の溶鋼に投入する。なお、溶鋼の溶存酸素量は、500ppm以下であることが好ましい。
さらに、AlまたはAl-Siにより脱酸され、かつその後に成分調整用合金を投入された溶鋼に、1種類以上のREM(希土類元素)を添加し、その後にMgを添加することにより、鋼中に存在する酸化物系介在物を、Al、REM酸化物およびMgOを主成分とする組成に制御する。
ここで、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称である。これらの17元素のうちの1種以上を鋼材に含有することができ、REM含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。
本発明では、成分調整用合金と、REMと、Mgは、例えば、以下に示す投入順序で溶鋼に投入される。
(i)転炉 未脱酸溶鋼(成分調整用合金、REM、Mgのいずれも未投入)
(ii)転炉またはRH真空脱ガス装置(脱酸前成分調整用合金投入)
(iii)RH真空脱ガス装置(AlまたはAl-Si脱酸→脱酸後成分調整用合金投入→REM投入)
(iv)ワイヤー添加装置(Mg投入)
これにより、Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼からなる最終製品における表面疵や内部欠陥といった介在物欠陥の原因になる粗大なアルミナクラスターの発生を、現在要求される程度まで十分に低減しながら、溶鋼を製造できる。
2.成分調整用合金
本発明では、取鍋への出鋼中または出鋼後であって、かつAlまたはAl-Siによる脱酸前および脱酸後に、酸素を含有する成分調整用合金を溶鋼に投入する。すなわち、酸素を含有する成分調整用合金の溶鋼への投入タイミングを、従来のAlまたはAl-Siによる脱酸後だけではなく、取鍋への出鋼中または出鋼後であってAlまたはAl-Siによる脱酸前および脱酸後に変更する。
本発明では、AlまたはAl-Siによる脱酸前に投入される成分調整用合金から、溶存酸素量が50ppm以上の溶鋼に持ち込まれる脱酸前持込み酸素量(ppm)と、AlまたはAl-Siによる脱酸後に投入される成分調整用合金から溶鋼に持ち込まれる脱酸後持込み酸素量(ppm)との比率(脱酸前持込み酸素量/脱酸後持込み酸素量)を2以上にする。この比率は、好ましくは、2.5以上、130以下である。
なお、持込み酸素量(脱酸前持込み酸素量、脱酸後持込み酸素量)は、各成分調整用合金からの持込み酸素量(質量ppm)を、成分調整用合金投入量(kg)×当該成分調整用合金中酸素濃度(%)/100/溶鋼量(kg)×10により求め、全ての成分調整用合金からの持込み酸素量を合計して求めることができる。さらに、本発明では、脱酸後持込み酸素量を10ppm以下にし、好ましくは、0.2ppm以上、5ppm以下とする。
これらにより、Alおよび液体のFeOが溶鋼中で同時に発生することを防止でき、アルミナクラスターの発生を防ぐことができる。このため、アルミナクラスターによる介在物欠陥を、現在要求される品質レベルまで十分に低減しながら、溶鋼を製造することができる。
本発明では、脱酸前持込み酸素量と脱酸後持込み酸素量との合計が15ppm以上である。脱酸前持込み酸素量と脱酸後持込み酸素量との合計の持込み酸素量が15ppm未満であると、Alおよび液体のFeOが少量しか発生せず、酸素を含有する成分調整用合金を溶鋼に投入することの弊害が発生しないからである。なお、合計の持込み酸素量は、好ましくは、170ppm以下である。
成分調整用合金の溶鋼への投入タイミングは、取鍋への出鋼中または出鋼後であって、かつAlまたはAl-Siによる脱酸前および脱酸後であれば、特に制限されない。しかし、AlまたはAl-Siによる脱酸よりできるだけ前のタイミング、例えば取鍋への出鋼直後に投入すれば、AlまたはAl-Siによる脱酸前に一旦生成した液体FeOが確実に溶鋼中に溶解することになるために、好ましい。
酸素を含有する成分調整用合金としては、MeMn、MeTi、MeCu、MeNi、FeMn、FeP、FeTi、FeS、FeSi、FeCr、FeMo、FeB、およびFeNbから選択される1種以上が例示される。
各成分調整用合金の酸素濃度としては、MeMn:0.5%程度、MeTi:0.2%程度、MeCu:0.04%程度、MeNi:0.002%程度、FeMn:0.4%程度、FeP:1.5%程度、FeTi:1.3%程度、FeS:6.5%程度、FeSi:0.4%程度、FeCr:0.1%程度、FeMo:0.01%程度、FeB:0.4%程度、FeNb:0.03%程度が例示される。
3.REMおよびMg添加による溶鋼中の酸化物系介在物の組成制御
Al脱酸またはAl-Si脱酸した後に成分調整用合金を投入した溶鋼中に、1種類以上のREMを添加した後に、Mgを添加する理由は、Mgの歩留まりが向上し、Mgのボイリングによる攪拌効果により介在物組成がより均一化するためである。Mgは、例えばSi-Mg合金として添加することができる。なお、本発明におけるREMとは、上述したように、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称を意味する。
溶鋼中へのREMの添加は、例えば二次精錬装置のCASやRHを使って、溶鋼のAlまたはAl-Si脱酸後であって成分調整用合金を投入した後に行う。REMは、Ce、La等の純金属、REM金属の合金または他金属との合金のいずれでもよく、形状は塊状、粒状、またはワイヤー等であってもよい。また、溶鋼中へのMgの添加は、例えばワイヤー添加装置を使って、溶鋼のAlまたはAl-Si脱酸後であって成分調整用合金を投入した後に、行う。二次精錬装置のCASやRHを使う場合は、Mg合金は塊状、粒状等であってもよい。
REM添加量は極微量であるので、溶鋼中REM濃度を均一にするため、RH槽内での還流溶鋼中への添加や取鍋添加後のArガス等での攪拌を行うことが望ましい。また、タンディッシュ、鋳型内溶鋼へREMを添加することもできる。
本発明では、溶鋼中の酸化物系介在物を、Al-REM酸化物-MgO系介在物(Al、REM酸化物、およびMgOを含む。)に組成制御することにより、REMとMgの相乗効果によりアルミナクラスターの生成をさらに抑制する。
酸化物系介在物には、アルミナクラスターの生成抑制のための適正な酸化物濃度が存在する。酸化物系介在物は、REM酸化物を0.1%以上含有し、MgOを0.1%以上含有する。酸化物系介在物中のREM酸化物、MgOそれぞれの含有量が0.1%未満では、アルミナクラスターの生成抑制の相乗効果が得られない。
図1は、本発明における酸化物系介在物中のREM酸化物およびMgOの総含有量と、最大アルミナクラスター径との関係を示すグラフである。
図1のグラフに示すように、酸化物系介在物中のREM酸化物およびMgOの総含有量が0.2%未満であると、REMとMgを複合して添加した効果がなく、アルミナ粒子が粗大なクラスターを生成する。一方、酸化物系介在物中のREM酸化物およびMgOの含有量が15%以上であると、粗大なアルミナクラスターが生成する。このため、本発明において、鋼中の酸化物系介在物は、Al、REM酸化物およびMgOを含み、酸化物系介在物におけるREM酸化物およびMgOの総含有量は0.2%以上15%未満であるのが好ましい。
4.本発明により製造されるAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼の化学組成
本発明により製造されるAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼の化学組成は、質量%で、C:0.0005~1.5%、Si:0.005~1.2%、Mn:0.05~3.0%、P:0.001~0.2%、S:0.0001~0.05%、T.Al:0.005~1.5%、Cu:0~1.5%、Ni:0~10.0%、Cr:0~10.0%、Mo:0~1.5%、Nb:0~0.1%、V:0~0.3%、Ti:0~0.25%、B:0~0.005%、REM:0.1~20ppm、Mg:0.1~20ppm、T.O:5~50ppm、残部Feおよび不純物である、炭素鋼または合金鋼であることが好ましい。この化学組成を有する鋼材に必要な加工を加えることにより、薄板、厚板、鋼管、形鋼、棒鋼等へ適用できる。上記組成範囲が好ましい理由は以下の通りである。
C:0.0005~1.5%
Cは、鋼の強度を最も安定して向上させる基本的な元素である。C含有量は、強度あるいは硬度の確保のためには好ましくは0.0005%以上である。しかし、C含有量が1.5%を超えると鋼の靭性が損なわれる。このため、C含有量は、所望する材料の強度に応じて好ましくは0.0005~1.5%の範囲で調整する。
Si:0.005~1.2%
Si含有量が0.005%未満であると溶銑予備処理を行う必要が生じ、精錬に大きな負担をかけ経済性が損なわれる。一方、Si含有量が1.2%を超えるとメッキ不良が発生し、鋼の表面性状や耐食性が劣化する。このため、Si含有量は好ましくは0.005~1.2%である。
Mn:0.05~3.0%
Mn含有量が0.05%未満であると、精錬時間が長くなって経済性が損なわれる。一方、Si含有量が3.0%を超えると鋼の加工性が大きく劣化する。このため、Mn含有量は、好ましくは0.05~3.0%である。
P:0.001~0.2%
P含有量が0.001%未満であると溶銑予備処理の時間およびコストが増加し、経済性が損なわれる。一方、P含有量が0.2%を超えると鋼の加工性が大きく劣化する。このため、P含有量は好ましくは0.001~0.2%である。
S:0.0001~0.05%
S含有量が0.0001%未満であると、溶銑予備処理の時間およびコストがかかり経済性が損なわれる。一方、S含有量が0.05%を超えると、鋼の加工性および耐食性が大きく劣化する。このため、S含有量は好ましくは0.0001~0.05%である。
T.Al:0.005~1.5%
本発明では、Al含有量について材質に影響する固溶Al(sol.Al)量と、介在物であるAlに由来するAl(insol.Al)量の合計量である、Al量をT.Al(Total.Al)として規定する。換言すれば、T.Al=sol.Al+insol.Alを意味する。
T.Al含有量が0.005%未満であるとAlNとしてNをトラップし、固溶Nを減少させることができない。一方、T.Al含有量が1.5%を超えると鋼の表面性状と加工性が劣化する。このため、T.Al含有量は好ましくは0.005~1.5%である。
以上が必須元素であるが、本発明では、これらの他にそれぞれの用途に応じて、任意元素として、(i)Cu、Ni、CrおよびMoから選択される1種以上、(ii)Nb、VおよびTiから選択される1種以上、および(iii)B、を含有してもよい。
Cu:0~1.5%、Ni:0~10.0%、Cr:0~10.0%およびMo:0~1.5%から選択される1種以上
Cu、Ni、Cr、Moは、いずれも、鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、前記元素から選択される1種以上を必要に応じて含有させてもよい。
しかし、CuおよびMoは1.5%を超えて、NiおよびCrは10.0%を超えて、それぞれ含有すると、鋼の靭性および加工性が損なわれる。このため、好ましくはCu:1.5%以下、Ni:10.0%以下、Cr:10.0%以下、Mo:1.5%以下とする。鋼の強度を確実に高めるためには、Cu含有量、Ni含有量およびCr含有量はそれぞれより好ましくは0.1%以上であり、また、Mo含有量はより好ましくは0.05%以上である。
Nb:0~0.1%、V:0~0.3%およびTi:0~0.25%から選択される1種以上
Nb、V、Tiは、いずれも、析出強化により鋼の強度を向上させる元素であり、必要に応じて1種以上を含有させてもよい。
しかし、Nbは0.1%を超えて、Vは0.3%を超えて、Tiは0.25%を超えて、それぞれ含有すると、鋼の靭性が損なわれる。このため、好ましくはNb:0.1%以下、V:0.3%以下、Ti:0.25%以下である。鋼の強度を確実に高めるためには、Nb含有量およびV含有量はそれぞれより好ましくは0.005%以上であり、Ti含有量はより好ましくは0.001%以上である。
B:0~0.005%
Bは、鋼の焼入れ性を向上させ、鋼の強度を高める元素である。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかし、0.005%を超えて含有させると、Bの析出物を増加させ、鋼の靭性を損なうおそれがある。このため、B含有量は、好ましくは、0.005%以下とする。鋼の強度を確実に高めるためには、B含有量はより好ましくは0.0005%以上である。
REM:0.1~20ppm
Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼のREM含有量が0.1ppm未満であると、アルミナ粒子のクラスター化の防止効果が得られない。一方、REM含有量が20ppm超であると、REM酸化物とAlの複合酸化物からなる粗大クラスターが生成する恐れがある。また、スラグとの反応によって複合酸化物が多量に生成するため、溶鋼清浄性が悪化し、タンディッシュの浸漬ノズルを閉塞させる可能性がある。このため、REM含有量は好ましくは0.1~20ppmとする。REM含有量は15ppm以下であるのよりが好ましい。
Mg:0.1~20ppm
Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼のMg含有量が0.1ppm未満であると、アルミナ粒子のクラスター化の防止効果が得られない。一方、Mg含有量が20ppm超であると、Mg酸化物とAlの複合酸化物からなる粗大クラスターが生成する恐れがある。また、スラグとの反応によって複合酸化物が多量に生成するため、溶鋼清浄性が悪化し、タンディッシュの浸漬ノズルを閉塞させる可能性がある。このため、Mg含有量は好ましくは0.1~20ppmとする。Mg含有量は15ppm以下であるのが好ましい。
T.O:5~50ppm
本発明では、O含有量について材質に影響する固溶O(sol.O)量と、介在物に存在するO(insol.O)量の合計量である、O量をT.O(Total.O)として規定する。Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼のT.Oが5ppm未満では二次精錬、例えばRHでの処理時間が大幅に増大するため、コストがかかり経済性も損ねる。一方、T.Oが50ppm超であると、アルミナ粒子の衝突頻度が増加して、クラスターが粗大化する場合があるためである。また、アルミナの改質に必要なREMおよびMgの添加量を増大するため、コストがかかり経済性も損ねる。このため、T.Oは好ましくは5~50ppmとする。
5.アルミナクラスターの最大径および個数
5-1.最大径
鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径は100μm以下であるのが好ましい。上記アルミナクラスターの最大径が100μmより大きいと、鋼の表面欠陥や内部欠陥に繋がるためである。
5-2.個数
鋳片のスライム抽出で得られる20μm以上のアルミナクラスターの個数が2個/kg以下であるのが好ましい。上記20μm以上のアルミナクラスターの個数が2個/kgより多いと加工後に鋼の表面欠陥や内部欠陥に繋がるためである。
270トンの転炉で溶製された未脱酸の溶鋼を、所定の炭素濃度に調整して取鍋に出鋼した後、出鋼された溶鋼を、RH真空脱ガス処理装置においてAlまたはAl-Siにより脱酸することによってAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼を溶製した。
この際、取鍋への出鋼中または出鋼後であって、かつAlまたはAl-Siによる脱酸前の溶存酸素量を有する溶鋼、および脱酸後の溶鋼に、酸素を含有する成分調整用合金を投入した。表1に投入した成分調整用合金の合金濃度および酸素濃度を示す。
Figure 0007119641000001
表2~4に、合金投入条件(溶存酸素量,投入タイミング(未脱酸時の出鋼開始からの経過時間))、投入合金種(脱酸前、脱酸後)、持込み酸素量(脱酸前持込み酸素量、脱酸後持込み酸素量)、比率(脱酸前持込み酸素量/脱酸後持込み酸素量)、脱酸前持込み酸素量と脱酸後持込み酸素量との合計)を示す。
Figure 0007119641000002
Figure 0007119641000003
Figure 0007119641000004
表2~4における「合金投入条件」は、脱酸前と脱酸後の比較で持ち込み酸素量が多いほうの投入条件を示す。
なお、持込み酸素量(脱酸前持込み酸素量、脱酸後持込み酸素量)は、各成分調整用合金からの持込み酸素量(質量ppm)を、成分調整用合金投入量(kg)×当該成分調整用合金中酸素濃度(%)/100/溶鋼量(kg)×10により求め、全ての成分調整用合金からの持込み酸素量を合計して求めた。
また、Al脱酸後またはAl-Si脱酸後であって成分調整用合金を投入した溶鋼に、REMを添加した後Mgを添加した。REMは、Ce、La、ミッシュメタル(例えば、質量%でCe:45%、La:35%、Pr:6%、Nd:9%、他不純物からなる合金)、あるいはミッシュメタル、SiおよびFeの合金(Fe-Si-30%REM)として、RHを使って添加した。また、MgはSi-10%Mg合金、Si-3%Mg合金として、ワイヤー添加装置を使って添加した。その結果を表2~4に併せて示す。
溶製されたAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼の溶鋼を垂直曲げ型連続鋳造機により連続鋳造し、寸法が245mm厚×1200~2200mm幅、鋳造速度が1.0~1.8m/min、タンディッシュ内溶鋼温度が1520~1580℃の条件で連続鋳造鋳片を製造した。
その後、連続鋳造鋳片に、(a)熱間圧延および酸洗を行って、表5~7に示す化学組成を有する厚板を製造し、(b)熱間圧延、酸洗および冷間圧延を行って、表5~7に示す化学組成を有する薄板を製造し、または(c)熱間圧延および酸洗を行って製造した厚板を素材として、表5~7に示す化学組成を有する溶接鋼管を製造した。熱間圧延後の板厚は2~100mmとし、冷間圧延後の板厚は0.2~1.8mmとした。
鋳片から採取したサンプルの最大クラスター径、クラスター個数、欠陥発生率およびノズル閉塞状況等を、表5~7に示す。また、図2に、脱酸前持込み酸素量と脱酸後持込み酸素量との関係をグラフで示す。
Figure 0007119641000005
Figure 0007119641000006
Figure 0007119641000007
表5~7における「REM」は、Ce、La、Pr、Ndといった各REM元素の合計含有量を示し、「REM」,「Mg」,「T.O」は、REM→MgではMg添加から1分経過時に採取した溶鋼サンプルの分析値であり、Mg→REMではREM添加から1分経過時に採取した溶鋼サンプルの分析値である。
表5~7における「添加金属」の欄では、MM:ミッシュメタル(Ce:45%、La:35%、Pr:6%、Nd:9%、他不可避不純物からなる合金)、MMSi:REM-30%Si-30%Fe合金、10Mg:Si-10%Mg合金、3Mg:Si-3%Mg合金を意味する。
表5~7における「合金投入順序」の欄では、REM→Mg:REM合金を添加した後にMg合金を添加すること、Mg→REM:Mg合金を添加した後にREM合金を添加することを意味する。
表5~7における介在物組成は、鋳片断面から任意に抽出した10個の介在物組成の平均値であり、組成はEDS付SEMにより同定した。
表5~7における最大クラスター径は、質量1kgの鋳片からスライム電極抽出(最小メッシュ20μmを使用)した介在物を実体顕微鏡で写真撮影(40倍)し、写真撮影した介在物の長径と短径の平均値を全ての介在物で求めてその平均値の最大値を最大クラスター径とすることにより、測定した。
表5~7におけるクラスター個数は、質量1kgのスライム電解抽出(最小メッシュ20μmを使用)した介在物であり、光学顕微鏡(100倍)で観察した20μm以上の全ての介在物個数を1kg単位個数に換算することにより、測定した。
表5~7における欠陥発生率は、薄板の場合には、板表面でのスリバー疵発生率(=スリバー疵総長/コイル長×100,%)であり、厚板の場合には、製品板でのUST欠陥発生率あるいはセパレーション発生率(=欠陥発生板数/検査総板数×100,%)であり、鋼管の場合には、油井管溶接部でのUST欠陥発生率(=欠陥発生管数/検査総管数×100,%)である。
厚板の場合には、シャルピー試験後の破面観察でセパレーションの発生の有無を確認した。なお、表5~7における厚板材の欠陥発生率では、欠陥がUST欠陥のときにはUSTと記載し、セパレーション欠陥のときにはSPRと記載した。
表5~7における衝撃吸収エネルギーは、-20℃での圧延方向における幅が10mmのVノッチシャルピー衝撃試験値であり、試験片5本の平均値である。表5~7における絞り値は、室温における製品板の板厚方向絞り値(=引張り試験後の破断部分の断面積/試験前の試験片断面積×100,%)である。
さらに、ノズル閉塞状況は、連続鋳造後に浸漬ノズルの内壁における介在物の付着厚みを測定し、円周方向10点の平均値からノズル閉塞状況を以下の通りレベル分けした。付着厚さは、○:1mm未満、△:1~5mm、×:5mm超である。
表5の区分の欄におけるNo.A1~A31は、本発明の規定を全て満足する本発明例であり、表6の区分の欄におけるNo.B1~B16は、AlまたはAl-Siによる脱酸の前の溶存酸素量、比率(脱酸前持込み酸素量/脱酸後持込み酸素量)、または脱酸後持込み酸素量のいずれかが本発明の規定を満足しない比較例であり、表7の区分の欄におけるNo.C1~C13はREM酸化物およびMgOの総含有量が本発明の範囲を満足しない比較例である。
表5~7に示すように、本発明例によれば、酸素を含有する成分調整用合金を、AlまたはAl-Si脱酸後の溶鋼に投入することに起因した、Alおよび液体のFeOの同時発生、およびアルミナクラスターの発生を防ぐことができる。これにより、アルミナクラスターに起因した介在物欠陥の発生を、現在要求される程度まで十分に低減しながら、溶鋼を製造でき、最終製品である鋼材における粗大アルミナクラスターに起因する表面疵や内部欠陥を低減できる。

Claims (8)

  1. 転炉で溶製された未脱酸の溶鋼を取鍋に出鋼した後、出鋼された溶鋼を、AlまたはAl-Siにより脱酸し、Alキルド鋼またはAl-Siキルド鋼を製造する方法であって、
    酸素を含有する成分調整用合金を、前記取鍋への出鋼中または出鋼後であって、前記Alまたは前記Al-Siによる脱酸の前の溶存酸素量が50ppm以上の溶鋼に投入するとともに前記Alまたは前記Al-Siによる脱酸の後の溶鋼に投入し、
    前記Alまたは前記Al-Siによる脱酸の前に投入される成分調整用合金から溶鋼に持ち込まれる脱酸前持込み酸素量(ppm)と、前記Alまたは前記Al-Siによる脱酸の後に投入される成分調整用合金から溶鋼に持ち込まれる脱酸後持込み酸素量(ppm)との比率(脱酸前持込み酸素量/脱酸後持込み酸素量)を2以上とし、
    前記脱酸後持込み酸素量を10ppm以下とし、
    脱酸前持込み酸素量と脱酸後持込み酸素量の合計を15ppm以上とするとともに、
    前記Alまたは前記Al-Siにより脱酸され、その後に前記成分調整用合金を投入された溶鋼に、1種類以上のREMを添加した後、Mgを添加することで、
    Al 、REM酸化物、およびMgOを含み、質量%で、
    REM酸化物:0.1%以上、
    MgO:0.1%以上、
    を含有し、前記REM酸化物および前記MgOの総含有量が0.2%以上15%未満である酸化物系介在物を有する鋼を製造する、鋼の製造方法。
  2. 前記成分調整用合金は、MeMn、MeTi、MeCu、MeNi、FeMn、FeP、FeTi、FeS、FeSi、FeCr、FeMo、FeB、およびFeNbから選択される1種以上である、請求項1に記載の鋼の製造方法。
  3. 前記Alキルド鋼または前記Al-Siキルド鋼の化学組成が、質量%で、
    C:0.0005~1.5%、
    Si:0.005~1.2%、
    Mn:0.05~3.0%、
    P:0.001~0.2%、
    S:0.0001~0.05%、
    T.Al:0.005~1.5%、
    Cu:0~1.5%、
    Ni:0~10.0%、
    Cr:0~10.0%、
    Mo:0~1.5%、
    Nb:0~0.1%、
    V:0~0.3%、
    Ti:0~0.25%、
    B:0~0.005%、
    REM:0.1~20ppm、
    Mg:0.1~20ppm、
    T.O:5~50ppm、
    残部がFeおよび不純物である、請求項1または2に記載の鋼の製造方法。
  4. 前記Alキルド鋼または前記Al-Siキルド鋼の前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.1~1.5%、
    Ni:0.1~10.0%、
    Cr:0.1~10.0%、および
    Mo:0.05~1.5%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項3に記載の鋼の製造方法。
  5. 前記Alキルド鋼または前記Al-Siキルド鋼の前記化学組成が、質量%で、
    Nb:0.005~0.1%、
    V:0.005~0.3%、および
    Ti:0.001~0.25%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項3または4に記載の鋼の製造方法。
  6. 前記Alキルド鋼または前記Al-Siキルド鋼の前記化学組成が、質量%で、
    B:0.0005~0.005%、
    を含有する、請求項3~5のいずれかに記載の鋼の製造方法。
  7. 前記鋼は、鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径が100μm以
    下である、請求項1~のいずれかに記載の鋼の製造方法。
  8. 前記鋼は、鋳片のスライム抽出で得られる20μm以上のアルミナクラスターの個数が2個/kg以下である、請求項に記載の鋼の製造方法。
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