JP4246553B2 - アルミナクラスターの少ない鋼材とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用鋼板、構造用・耐摩耗鋼用厚板や油井管用鋼管等に適したアルミナクラスターの少ない鋼材に関するものである。
【0002】
【特許文献1】
特開昭52-70918号公報
【特許文献2】
特開2001-26842号公報
【特許文献3】
特開平11-323426号公報
【特許文献4】
特許1150222 号公報
【特許文献5】
特許1266834 号公報
【特許文献6】
特開平9-192799号公報
【非特許文献1】
材料とプロセス,4(1991),p.1214(城田ら)
【非特許文献2】
鉄と鋼,(1995), p.17(安中ら)
【非特許文献3】
ISIJ Int., 37(1997), p.936 (H. Yin et al.)
【0003】
【従来の技術】
鋼板などの圧延鋼材は、一般的に転炉で溶製された未脱酸の溶鋼をAlで脱酸するアルミキルド鋼として製造されている。脱酸時に生成するアルミナは硬質で、クラスター化しやすく、数100 μm以上の介在物として残留する。したがって、溶鋼からの除去が不十分な場合、薄板での熱延、冷延時のスリバー疵(線状疵)、構造用厚板での材質不良、耐摩耗鋼用厚板での低温靭性低下や油井管用鋼管での溶接部UST 欠陥不良等の原因となる。
【0004】
このアルミナを溶鋼から除去する方法として、(1) 脱酸後に、アルミナの凝集、合体による溶鋼からの浮上、分離時間をできるだけ長くとるように転炉での出鋼時に脱酸剤のAlを投入する方法や、(2) 二次精錬法のひとつであるCAS やRH処理で溶鋼の強攪拌を行い、アルミナの浮上、分離を促進する方法や、(3) 溶鋼中へのCaの添加によってアルミナを低融点介在物のCaO-Al2O3に形態制御し無害化する方法等が行われていた。
【0005】
ところが、前記(1) 、(2) の方法によるアルミナの浮上分離対策では限界があって、数100 μm 以上の介在物を完全に除去できないため、スリバー疵を防止できないという問題があった。 (3)のCaによる酸化物系介在物の改質は、介在物の低融点化によってクラスター生成が防止でき微細化する。しかし、前記の非特許文献1によれば、アルミナを溶鋼中で液相のカルシウムアルミネートにするためには[Ca]/[T.O] を0.7 〜1.2 の範囲に制御する必要がある。そのためには、例えばT.O が40ppm で28〜48ppm という多量のCaを添加する必要がある。一方、タイヤ用のスチールコードや弁バネ材では、介在物を圧延加工時に変形しやすい低融点のCaO-SiO2-Al2O3(-MnO)系に制御し、無害化することが一般的に良く知られている。しかしながら、これらの方法では通常Caを安価なCaSi合金で添加するため、Siの上限の厳しい自動車用鋼板や缶用冷延鋼板では実用化されていないのが現状である。
【0006】
CeやLa等のREM を利用した溶鋼の脱酸では、▲1▼Alキルドを前提とし、Al脱酸後にREM をアルミナの改質剤として使用する方法や▲2▼Alを使用しないでREM を単独、またはCa、Mg等と組み合わせて脱酸する方法が知られている。
【0007】
Alキルドを前提にした方法として、前記の特許文献1によれば、Al脱酸、またはAl-Si 脱酸後にSe、Sb、LaまたはCeの一種以上を0.001 〜0.05%添加することにより、またはこれと溶鋼攪拌と組み合わせることによって、溶鋼/アルミナクラスター間の界面張力を制御して溶鋼中のアルミナクラスターを浮上分離させて除去する非金属介在物の少ない清浄鋼の製造法が示されている。また、前記の特許文献2では溶鋼をAlおよびTiで脱酸後、Caおよび/またはREM を添加することにより、酸化物系介在物の大きさを50μm以下で、組成をAl2O3:10〜30wt%、Caおよび/またはREM 酸化物:5〜30wt%、Ti酸化物:50〜90wt%とする表面性状および内質に優れる冷延鋼板ならびにその製造方法が開示されている。さらに、前記の特許文献3ではAl、REM およびZrの複合脱酸によってアルミナクラスターがなく、欠陥の少ない清浄なAlキルド鋼の製造方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では、アルミナクラスターを確実に浮上分離させることが困難で、介在物欠陥を要求される品質レベルまで低減することができなかった。
【0008】
Alを使用しない方法として、前記の特許文献4では、溶鋼をCaO 含有フラックスで脱酸後、Ca、Mg、REM の一種以上を含む合金を例えば100 〜200ppm添加し、介在物を低融点、軟質化するスチール用鋼の製造方法が開示されている。また、前記の特許文献5ではMn、Si等のAl以外の脱酸剤でT.O ≦100ppmに調整後、空気酸化防止を目的にREM を50〜500ppm添加する極細伸線性の良好な線材の製造方法が示されている。しかしながら、これらの方法では、脱酸で安価なAlを使用しないため、脱酸剤のコストアップという問題があった。また、Siで脱酸する場合には、Si上限の厳しい薄板材への適用は困難であった。
【0009】
一方、アルミナ粒子のクラスター化にはいくつかの生成機構が提案されている。例えば、前記の特許文献6では溶鋼中のP2O5がAl2O3粒子の凝集合体を促進していると考え、Caを添加して、nCaO・mP2O5とし、Al2O3のバインダーであるP2O5の結合力を低下させることにより、浸漬ノズルへのAl2O3付着が防止できることが示されている。また、前記の非特許文献2によれば、連続鋳造で浸漬ノズルの閉塞防止のために用いているArガスに捕捉されたアルミナ粒子が、冷延鋼板に発生するスリバー疵の原因であると推察している。さらに、前記の非特許文献3は、気泡に捕捉されたアルミナ粒子がキャピラリー効果により気泡表面で凝集合体するという観察結果を示している。このように、アルミナクラスターの微視的な生成機構についても解明されつつあるが、クラスター化防止のための具体的方法が明らかでなかったため、アルミナクラスターによる介在物欠陥を、要求される品質レベルまで低減することが困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来の問題点を有利に解決するためになされたものであり、薄板、厚板、鋼管、形鋼、棒鋼等の鋼材において製品欠陥の原因となる粗大なアルミナクラスターの生成を溶鋼中およびAr気泡表面で防止することにより、自動車、家電用途の薄板のスリバー疵、構造用厚板の材質不良、耐摩耗用厚板の低温靭性低下、油井管用鋼管の溶接部UST 欠陥等の表面疵や内部欠陥が少ない鋼材及びその製造方法を提供することを目的として完成されたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく、本発明者らは先に特願2002-214160号として、酸化物系介在物をAl2O3、REM酸化物が主成分で、質量%でREM酸化物の含有量を0.15%以上15%未満とすることで、溶鋼中および浸漬ノズル閉塞防止のために用いているArガス気泡表面でのアルミナ粒子の凝集・合体を抑制したアルミナクラスターの少ない鋼材を提案した。しかしその後の研究により、これにさらにMgを添加し、Al2O3-REM酸化物-MgO系介在物とすることにより、REMとMgの相乗効果によりアルミナクラスターの生成をさらに抑制できることが分かった。
【0012】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものであり、請求項1に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材は、質量 % で C:0.0005 〜 1.5% 、 Si:0.005 〜 1.2% 、 Mn:0.05 〜 3.0% 、 P:0.001 〜 0.1% 、 S:0.0001 〜 0.05% 、 Al:0.005 〜 1.5% 、 REM:0.2 〜 27.8ppm 、 Mg : 0.1 〜 12.2ppm 、 T.O:80ppm 以下を含有し、残部が Fe 及び不可避的不純物である鋼組成を有し、含有される酸化物系介在物が、 78.6 〜 96.6 %の Al2O3 とを主成分とし、REM酸化物を0.1%以上、およびMgOを0.1以上含有し、REM酸化物とMgOの総含有量を0.2%以上15%未満としたことを特徴とするものである。なお、本発明におけるREM(希土類金属)とは原子番号57のLaから原子番号71のLuを指す。
【0013】
鋼材は更に(a) Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.1〜10.0%、Cr:0.1〜10.0%、Mo:0.05〜1.5%の1種または2種以上、または(b) Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.3%、Ti:0.001〜0.25%の1種または2種以上、または(c) B:0.0005〜0.005%の(a) (b) (c)何れか一つまたは二つ以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物とすることが好ましい。
【0014】
さらに、鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径が100μm以下であることが好ましく、また鋳片のスライム抽出で得られる20μm以上のアルミナクラスターの個数が2個/kg以下であることが好ましい。
【0015】
また請求項7に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法は、質量 % で C:0.0005 〜 1.5% 、 Si:0.005 〜 1.2% 、 Mn:0.05 〜 3.0% 、 P:0.001 〜 0.1% 、 S:0.0001 〜 0.05% 、 Al:0.005 〜 1.5% 、 T.O:80ppm 以下を含有し、残部が Fe 及び不可避的不純物である鋼組成を有する Al 脱酸または Al-Si 脱酸された溶鋼中に、 Ce 、 La 、 Pr または Nd の 1 種類以上の希土類金属 (REM) を 0.2 〜 27.8ppm 添加した後に 0.1 〜 12.2ppm の Mg を添加し、鋼中に存在するアルミナ系介在物を、 78.6 〜 96.6 %の Al 2 O 3 とを主成分とし、 REM 酸化物を 0.1% 以上、および MgO を 0.1 以上含有し、 REM 酸化物と MgO の総含有量を 0.2% 以上 15% 未満の介在物に組成制御することを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
上記のように本発明は、溶鋼中の酸化物系介在物をAl2O3-REM酸化物-MgO系介在物とすることにより、REMとMgの相乗効果によりアルミナクラスターの生成をさらに抑制しようとするものであるが、アルミナクラスター生成抑制のための適正酸化物の濃度が存在し、このためにREM酸化物を0.1%以上、およびMgOを0.1%以上含有し、アルミナ中のREM酸化物とMgOの総含有量を0.2%以上15%未満とする。アルミナ中のREM酸化物とMgOの含有量が0.1%未満では、アルミナクラスター生成抑制の相乗効果が得られない。逆に0.2%未満ではREMとMgを添加した効果が無く、アルミナ粒子は粗大クラスターを生成する。また、15%以上でも、粗大クラスターが生成する。以上の関係は図1に示すとおりである。
【0017】
なお、本発明におけるAl脱酸、Al-Si 脱酸で製造される鋼材とは、質量%でC:0.0005〜1.5%、Si:0.005〜1.2%、Mn:0.05 〜3.0%、P:0.001 〜0.1%、S:0.0001〜0.05% 、Al:0.005〜1.5%、REM:0.2 〜 27.8ppm 、 Mg : 0.1 〜 12.2ppm 、T.O ≦80ppm とし、あるいはさらに(a) Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.1〜10.0% 、Cr:0.1〜10.0% 、Mo:0.05 〜1.5%の1種または2種以上、または(b)Nb:0.005 〜0.1%、V:0.005 〜0.3%、Ti:0.001〜0.25% の1種または2種以上、または(c)B:0.0005 〜0.005%の(a) 、(b) 、(c) 何れか一つまたは二つ以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる炭素鋼であり、鋼材に必要な圧延を加えることにより、薄板、厚板、鋼管、形鋼、棒鋼等へ適用できる。この範囲が好ましい理由は以下の通りである。
【0018】
Cは鋼の強度を最も安定して向上させる基本的な元素であるため、所望する材料の強度によって含有量を0.0005〜1.5 %の範囲で調整する。強度あるいは硬度確保のためには0.0005%以上含有させることが望ましいが、1.5 %より多いと靭性が損なわれるので1.5 %以下がよい。
【0019】
Siを0.005 〜1.2 %としたのは、0.005%未満では予備処理が必要となって精錬に大きなコスト負担をかけ経済性を損ねることとなり、1.2 %より多いとメッキ不良が発生し、表面性状や耐食性を劣化するためである。
【0020】
Mnを0.05〜3.0 %としたのは、0.05%未満では精錬時間が長くなって、経済性を損ねることになり、3.0 %より多いと鋼材の加工性が大きく劣化するためである。
【0021】
Pを0.001 〜0.1 %したのは、0.001%未満では溶銑予備処理に時間とコストがかかり経済性を損ねることとなり、0.1 %より多いと鋼材の加工性が大きく劣化するためである。
【0022】
Sを0.0001〜0.05%としたのは、0.0001%未満では溶銑予備処理に時間とコストがかかり経済性を損ねることとなり、0.05%より多いと鋼材の加工性と耐食性が大きく劣化するためである。
【0023】
Alを0.005 〜1.5 %としたのは、0.005%未満ではAlN としてNをトラップし、固溶Nを減少させることができない。また、1.5 %より多いと表面性状と加工性が劣化するので1.5 %以下が良い。
【0024】
T.O を80ppm 以下としたのは、80ppm より多いとアルミナ粒子の衝突頻度が増加するため、クラスターが粗大化する場合が有るためである。また、アルミナの改質に必要なREM の添加量が増大するため、コストがかかり経済性も損ねる。ここで、T.O は鋼中の総酸素量で溶存酸素と介在物中酸素の合計を示す。
【0025】
以上が基本成分系であるが、本発明では、これらの他にそれぞれの用途に応じて、(a) Cu、Ni、Cr、Moの1種以上、 (b)Nb、V 、Tiの1種以上、 (c)B の(a)、(b) 、(c) 何れか一つまたは二つ以上を含有させることができる。
【0026】
Cu、Ni、Cr、Moは何れも鋼の焼入れ性を向上させる元素であって、Cu、NiおよびCrは0.1%以上、Moは0.05%以上含有させることによって、強度向上効果を示すが、Cuは1.5 およびMoは1.5%、NiおよびCrは10%を超えて添加すると靭性および加工性を損なうおそれがあるため、Cuは0.1 〜1.5%、NiおよびCrはそれぞれ0.1〜10%、Moは0.05〜1.5%の範囲に限定する。
【0027】
Nb、V 、Tiはいずれも析出強化により鋼の強度を向上させる元素であって、NbおよびV は0.005%以上、Tiは0.001%以上含有させることによって、強度向上効果を示すが、Nbは0.1%、V は0.3%、Tiは0.25%を超えて添加すると靭性を損なうおそれがあるため、Nbは0.005 〜0.1%、V は0.005 〜0.3%、Tiは0.001 〜0.25%の範囲に限定する。
【0028】
Bは鋼の焼入れ性を向上させ、強度を高める元素であって、0.0005%以上含有させることによって、強度向上効果を示すが、0.005%を超えて添加するとBの析出物を増加させ靭性を損なうおそれがあるため、0.0005〜0.005%の範囲に限定する。
【0029】
さらに、鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径が100 μm以下としたのは、100 μm より大きいと製品での表面欠陥や内部欠陥に繋がるためである。また、鋳片のスライム抽出で得られる20μm以上のアルミナクラスターの個数が2個/kg以下としたのは、2個/kgより多いと圧延後に表面欠陥や内部欠陥に繋がるためである。
【0030】
溶鋼中へのREM 及びMgの添加は、例えば二次精錬装置のCAS やRHを使って、溶鋼のAl脱酸後に行う。REM はCe、La等の純金属、REM 金属の合金または他金属との合金のいずれでも良く、形状は塊状、粒状、またはワイヤー等であっても良い。REM添加量は極微量なので、溶鋼中REM 濃度を均一にするため、RH槽内での還流溶鋼中への添加や取鍋添加後のArガス等での攪拌が望ましい。また、タンディッシュ、鋳型内溶鋼へREM を添加することもできる。
【0031】
Al脱酸またはAl-Si脱酸した溶鋼中にCe、La、PrまたはNd等の1種類以上の希土類金属(REM)を添加した後に、Mgを添加するのはMgの歩留まりが向上し、Mgのボイリングによる攪拌効果で介在物組成がより均一化するためである。Mgは例えばSi-Mg合金として添加することができる。以下に本発明の実施例を示す。
【0032】
【実施例】
270tの転炉において吹錬後、所定の炭素濃度に調整して出鋼した。2次精錬で目標の溶鋼成分に調整し、Al脱酸後、REMとMgを別々に添加した。 REMはCe、La、ミッシュメタル(例えば、質量%でCe:45%、La:35%、Pr:6%、Nd:9%、他不可避不純物からなる合金)、あるいはミッジュメタル、SiおよびFeの合金(Fe-Si-30%REM)として添加した。MgはSi-10%Mg合金、Si-3%Mg合金として添加した。その結果を表1,表2に示す。また比較例を表3,表4に示す。表2は表1の続き、表4は表3の続きである。表中に示す溶鋼を垂直曲げ型連続鋳造機により、鋳片寸法が245mm 厚×1200〜2200mm幅、鋳造速度が1.0 〜1.8m/min、タンディッシュ内溶鋼温度が1520〜1580℃の条件で鋳片を製造した。その後、熱間圧延、酸洗、さらには必要に応じて冷間圧延を実施し、品質調査を行った。熱間圧延後の板厚は2〜100mm、冷間圧延後の板厚は0.2〜1.8mm であった。
【0033】
鋳片から採取したサンプルの最大クラスター径、クラスター個数、平均介在物組成や欠陥発生率等は、表2,表4に示すとおりで、本発明がアルミナクラスター起因の製品欠陥を大幅に低減して優れた生産性を示すものであることが確認できた。
【0034】
なお、表中における*1〜*10の意味は以下のとおりである。
*1 REMはCe、La、Pr、Ndの合計。
*2 MM:ミッシュメタル。質量%でCe:45%、La:35%、Pr:6%、Nd:9%、他不可避不純物からなる合金。
MMSi:REM-Si-Fe合金。組成はREM:30%、Si:30%、残部Fe。
*3 3MgはSi-3%Mg合金、10MgはSi-10%Mg合金。
*4 REM→MgはREM合金添加後、Mg合金を添加。Mg→REMはMg合金を添加後、REM合金を添加。
*5 鋳片断面から任意抽出した10個の介在物組成の平均値。組成はEDS付きSEMで同定した。
*6 鋳片断面から任意抽出した10個の介在物中REM酸化物濃度の最大値と最小値の差。組成はEDS付きSEMで同定した。
*7 最大クラスター径の測定方法は、質量1kg ±0.1kg の鋳片からスライム電解抽出(最小メッシュ20μm を使用)した介在物を実体顕微鏡で写真撮影(40倍)し、写真撮影した介在物の長径と短径の平均値を全ての介在物で求めてその平均値の最大値を最大介在物径とした。クラスター個数は質量1±0.1kg のスライム電解抽出(最小メッシュ20μm を使用)した介在物であり、光学顕微鏡(100 倍)で観察した20μm以上の全ての介在物個数を1kg単位個数に換算した。
*8 欠陥発生率は、以下の式による。
薄板は板表面でのスリバー疵発生率(=スリバー疵総長/コイル長×100,%)。厚板は製品板でのUST 欠陥発生率あるいはセパレーション発生率(=欠陥発生板数/検査総板数×100,%)。シャルピー試験後の破面観察でセパレーション発生有無を確認した。なお、表2,4の厚板材欠陥発生率では、欠陥がUST 欠陥の場合は (UST)、セパレーション欠陥の場合は(SPR)と記述した。鋼管は油井管溶接部でのUST 欠陥発生率(=欠陥発生管数/検査総管数×100, %)。
*9 −20℃での圧延方向におけるVノッチシャルピー衝撃試験値。試験片5本の平均値。
*10室温における製品板の板厚方向絞り値(=引張り試験後の破断部分の断面積/試験前の試験片断面積×100,%)。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によればREMとMgの相乗効果によりアルミナクラスターの生成を抑制し、Al脱酸、Al-Si 脱酸鋼で、最終製品における粗大アルミナクラスター起因の表面疵や内部欠陥が少ない鋼材を得ることができる。よって、本発明は従来のAl脱酸鋼やAl-Si 脱酸鋼における問題点を一掃したアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法として、産業の発展に寄与するところは極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるAl2O3中のREM 酸化物及びMgOの総含有量と、最大アルミナクラスター径との関係を示すグラフである。
Claims (7)
- 質量 % で C:0.0005 〜 1.5% 、 Si:0.005 〜 1.2% 、 Mn:0.05 〜 3.0% 、 P:0.001 〜 0.1% 、 S:0.0001 〜 0.05% 、 Al:0.005 〜 1.5% 、 REM:0.2 〜 27.8ppm 、 Mg : 0.1 〜 12.2ppm 、 T.O:80ppm 以下を含有し、残部が Fe 及び不可避的不純物である鋼組成を有し、含有される酸化物系介在物が、 78.6 〜 96.6 %の Al 2 O 3 とを主成分とし、REM酸化物を0.1%以上、およびMgOを0.1以上含有し、REM酸化物とMgOの総含有量を0.2%以上15%未満としたことを特徴とするアルミナクラスターの少ない鋼材。
- 質量 % で Cu:0.1 〜 1.5% 、 Ni:0.1 〜 10.0% 、 Cr:0.1 〜 10.0% 、 Mo:0.05 〜 1.5% の 1 種または 2 種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材。
- 質量 % で Nb:0.005 〜 0.1% 、 V:0.005 〜 0.3% 、 Ti:0.001 〜 0.25% の 1 種または 2 種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材。
- 質量 % で B:0.0005 〜 0.005% を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアルミナクラスターの少ない鋼材。
- 鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径が 100 μ m 以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルミナクラスターの少ない鋼材。
- 鋳片のスライム抽出で得られる 20 μ m 以上のアルミナクラスターの個数が 2 個 /kg 以下である請求項5に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材。
- 質量 % で C:0.0005 〜 1.5% 、 Si:0.005 〜 1.2% 、 Mn:0.05 〜 3.0% 、 P:0.001 〜 0.1% 、 S:0.0001 〜 0.05% 、 Al:0.005 〜 1.5% 、 T.O:80ppm 以下を含有し、残部が Fe 及び不可避的不純物である鋼組成を有する Al 脱酸または Al-Si 脱酸された溶鋼中に、 Ce 、 La 、 Pr または Nd の 1 種類以上の希土類金属 (REM) を 0.2 〜 27.8ppm 添加した後に 0.1 〜 12.2ppm の Mg を添加し、鋼中に存在するアルミナ系介在物を、 78.6 〜 96.6 %の Al 2 O 3 とを主成分とし、 REM 酸化物を 0.1% 以上、および MgO を 0.1 以上含有し、 REM 酸化物と MgO の総含有量を 0.2% 以上 15% 未満の介在物に組成制御することを特徴とするアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法。
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