JP4022175B2 - アルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用鋼板、構造用・耐摩耗鋼用厚板や油井管用鋼管等に適したアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開昭52-70918号公報
【特許文献2】
特開2001-26842号公報
【特許文献3】
特開平11-323426号公報
【特許文献4】
特許1150222 号公報
【特許文献5】
特許1266834 号公報
【特許文献6】
特開平9-192799号公報
【非特許文献1】
城田ら、材料とプロセス, 4(1991), p.1214
【非特許文献2】
安中ら、鉄と鋼,(1995), p.17
【非特許文献3】
H. Yin et al. ISIJ Int., 37(1997), p.936
【0003】
鋼板などの圧延鋼材は、一般的に転炉で溶製された未脱酸の溶鋼をAlで脱酸するアルミキルド鋼として製造されている。脱酸時に生成するアルミナは硬質で、クラスター化しやすく、数100 μm以上の介在物として残留する。したがって、溶鋼からの除去が不十分な場合、薄板での熱延、冷延時のスリバー疵(線状疵)、構造用厚板での材質不良、耐摩耗鋼用厚板での低温靭性低下や油井管用鋼管での溶接部UST 欠陥不良等の原因となる。さらにアルミナは連続鋳造時に浸漬ノズル内壁に付着、堆積し、閉塞の原因となることが良く知られている。
【0004】
このアルミナを溶鋼から除去する方法として、(1) 脱酸後に、アルミナの凝集、合体による溶鋼からの浮上、分離時間をできるだけ長くとるように転炉での出鋼時に脱酸剤のAlを投入する方法や、(2) 二次精錬法のひとつであるCAS やRH処理で溶鋼の強攪拌を行い、アルミナの浮上、分離を促進する方法や、(3) 溶鋼中へのCaの添加によってアルミナを低融点介在物のCaO-Al2O3に形態制御し無害化する方法等が行われていた。
【0005】
ところが、前記(1) 、(2) の方法によるアルミナの浮上分離対策では限界があって、数100 μm 以上の介在物を完全に除去できないため、スリバー疵を防止できないという問題があった。(3) のCaによる酸化物系介在物の改質は、介在物の低融点化によってクラスター生成が防止でき微細化する。しかし、非特許文献1(城田ら・材料とプロセス, 4(1991), p.1214 )によれば、アルミナを溶鋼中で液相のカルシウムアルミネートにするためには[Ca]/[T.O] を0.7 〜1.2 の範囲に制御する必要がある。そのためには、例えばT.O が40ppm で28〜48ppm という多量のCaを添加する必要がある。一方、タイヤ用のスチールコードや弁バネ材では、介在物を圧延加工時に変形しやすい低融点のCaO-SiO2-Al2O3(-MnO)系に制御し、無害化することが一般的に良く知られている。しかしながら、これらの方法では通常Caを安価なCaSi合金で添加するため、Siの上限の厳しい自動車用鋼板や缶用冷延鋼板では実用化されていないのが現状である。
【0006】
CeやLa等のREM を利用した溶鋼の脱酸では、▲1▼Alキルドを前提とし、Al脱酸後にREM をアルミナの改質剤として使用する方法や▲2▼Alを使用しないでREM を単独、またはCa、Mg等と組み合わせて脱酸する方法が知られている。
【0007】
Alキルドを前提にした方法として、特許文献1(特開昭52-70918号公報)によれば、Al脱酸、またはAl-Si 脱酸後にSe、Sb、LaまたはCeの一種以上を0.001 〜0.05%添加することにより、またはこれと溶鋼攪拌と組み合わせることによって、溶鋼/アルミナクラスター間の界面張力を制御して溶鋼中のアルミナクラスターを浮上分離させて除去する非金属介在物の少ない清浄鋼の製造法が示されている。また、特許文献2(特開2001-26842号公報)では溶鋼をAlおよびTiで脱酸後、Caおよび/またはREM を添加することにより、酸化物系介在物の大きさを50μm以下で、組成をAl2O3:10〜30wt%、Caおよび/またはREM 酸化物:5〜30wt%、Ti酸化物:50〜90wt%とする表面性状および内質に優れる冷延鋼板ならびにその製造方法が開示されている。さらに、特許文献3(特開平11-323426号公報)ではAl、REM およびZrの複合脱酸によってアルミナクラスターがなく、欠陥の少ない清浄なAlキルド鋼の製造方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では、アルミナクラスターを確実に浮上分離させることが困難で、介在物欠陥を要求される品質レベルまで低減することができなかった。
【0008】
Alを使用しない方法として、特許文献4(特許1150222 号公報)では、溶鋼をCaO 含有フラックスで脱酸後、Ca、Mg、REM の一種以上を含む合金を例えば100 〜200ppm添加し、介在物を低融点、軟質化するスチール用鋼の製造方法が開示されている。また、特許文献5(特許1266834 号公報)ではMn、Si等のAl以外の脱酸剤でT.O ≦100ppmに調整後、空気酸化防止を目的にREM を50〜500ppm添加する極細伸線性の良好な線材の製造方法が示されている。しかしながら、これらの方法では、脱酸で安価なAlを使用しないため、脱酸剤のコストアップという問題があった。また、Siで脱酸する場合には、Si上限の厳しい薄板材への適用は困難であった。
【0009】
一方、アルミナ粒子のクラスター化にはいくつかの生成機構が提案されている。例えば、特許文献6(特開平9-192799号公報)では、溶鋼中のP2O5がAl2O3粒子の凝集合体を促進していると考え、Caを添加して、nCaO・mP2O5とし、Al2O3のバインダーであるP2O5の結合力を低下させることにより、浸漬ノズルへのAl2O3付着が防止できることが示されている。また、非特許文献2(安中ら・鉄と鋼,(1995), p.17)によれば、連続鋳造で浸漬ノズルの閉塞防止のために用いているArガスに捕捉されたアルミナ粒子が、冷延鋼板に発生するスリバー疵の原因であると推察している。さらに、非特許文献3(H. Yin et al. ISIJ Int., 37(1997), p.936)は、気泡に捕捉されたアルミナ粒子がキャピラリー効果により気泡表面で凝集合体するという観察結果を示している。このように、アルミナクラスターの微視的な生成機構についても解明されつつあるが、クラスター化防止のための具体的方法が明らかではなかった。
【0010】
そこで本発明者らは、研究を重ねた結果、特願2002-214160号として、微量REM添加でアルミナ中の介在物組成を0.5〜15%とすることにより、自動車、家電用途の薄板のスリバー疵、構造用厚板の材質不良、耐摩耗用厚板の低温靭性低下、油井管用鋼管の溶接部UST欠陥等の表面疵や内部欠陥の原因となる粗大アルミナクラスターの少ない鋼材を提案した。また、特願2002-214161号として、溶鋼中のREM/T.Oを0.05〜0.5の範囲とし、アルミナクラスターの生成を抑制することにより、製品での表面疵や内部欠陥を低減し、連続鋳造時の浸漬ノズル閉塞を防止する方法を提案した。しかしながら、0.1〜10ppmの極微量REMの添加ではアルミナ中のREM酸化物含有量がばらつくため、REM添加によるアルミナクラスター生成抑制効果のばらつきも大きかった。すなわち、粗大アルミナクラスター生成を低位に安定して防止できないため、結果として、アルミナクラスター径や個数、ノズル閉塞改善効果のばらつきも大きかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来の問題点を有利に解決するためになされたものであり、薄板、厚板、鋼管、形鋼、棒鋼等の鋼材において製品欠陥の原因となる粗大なアルミナクラスターの生成を溶鋼中およびAr気泡表面で防止することにより、自動車、家電用途の薄板のスリバー疵、構造用厚板の材質不良、耐摩耗用厚板の低温靭性低下、油井管用鋼管の溶接部UST 欠陥等の表面疵や内部欠陥が少ない鋼材の製造を可能とするアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法を提供するためになされたものである。また本発明の他の目的は、連続鋳造時の浸漬ノズル閉塞による操業トラブルの防止により、耐火物コスト低減や浸漬ノズル交換に伴う生産性低下防止を可能にするアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこの課題を解決するため、実験および検討を重ね、その成果として、合金中REM濃度を調整することによって、得られる鋼材のアルミナ中REM酸化物含有量のばらつきを小さくできることを突き止めた。本発明はこの知見に基づいてなされたものであって、質量 % で、 C:0.0005 〜 1.5% 、 Si:0.005 〜 1.2% 、 Mn:0.05 〜 3.0% 、 P:0.001 〜 0.1% 、 S:0.0001 〜 0.05% 、 Al:0.005 〜 1.5% 、 T.O:80ppm 以下で、残部が Fe 及び不可避的不純物からなる Al 脱酸された後の溶鋼に、 REM 含有量が 1 〜 50% の Fe-Si-REM 合金を添加することにより、質量 % で Ce 、 La 、 Pr または Nd 等の 1 種類以上の希土類金属 (REM) を 0.00001 〜 0.0010% 含有する Al キルド鋼または Al-Si キルド鋼を製造することを特徴とするものである。なお本発明における希土類元素とは、原子番号57のLaから原子番号71のLuをさす。
【0013】
鋼の成分は質量%で、C:0.0005〜1.5%、Si:0.005〜1.2%、Mn:0.05〜3.0%、P:0.001〜0.1%、S:0.0001〜0.05%、Al:0.005〜1.5%とし、あるいはさらに(a) Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.1〜10.0%、Cr:0.1〜10.0%、Mo:0.05〜1.5%の1種または2種以上、または(b) Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.3%、Ti:0.001〜0.25%の1種または2種以上、または(c) B:0.0005〜0.005%の(a) 、(b)、(c)の何れか一つまたは二つ以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物とすることが好ましい。
【0014】
さらに、鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径を100μm以下とすることが好ましく、また、鋳片のスライム抽出で得られる20μm以上のアルミナクラスターの個数を2個/kg以下とすることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では、質量%でCe、La、PrまたはNd等の1種類以上の希土類金属(REM)を0.00001〜0.0010%を含有するAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼を製造するために、 Al 脱酸後の溶鋼に、REM含有量が1〜50%のFe-Si-REM合金を添加する。このようにREM含有量が50%以下のREM合金を用いることにより溶鋼中のREM酸化物濃度のばらつきが小さくなり、粗大アルミナクラスターの生成を安定して抑制することができる。
【0016】
本発明において鋼材のREM含有量が0.00001〜0.0010%のAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼に限定するのは、0.00001%未満ではアルミナクラスター生成抑制効果がなく、0.0010%超ではどのようなREM合金を使用してもアルミナ中REM酸化物含有量のばらつきが小さいためである。また合金中のREM含有量を1〜50%に限定するのは、1%未満では所定のREM濃度にするために大量の合金が必要なため溶鋼の温度降下が大きくなりすぎることがあり、50%超では従来と同様にアルミナ中REM酸化物含有量のばらつきが大きくなるためである。
【0017】
なお、本発明の製造方法で用いられるAl脱酸、Al-Si 脱酸鋼とは、質量%でC:0.0005〜1.5%、Si:0.005〜1.2%、Mn:0.05 〜3.0%、P:0.001 〜0.1%、S:0.0001〜0.05%、Al:0.005〜1.5%とし、あるいはさらに(a) Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.1〜10.0%、Cr:0.1〜10.0%、Mo:0.05 〜1.5%の1種または2種以上、または(b)Nb:0.005 〜0.1%、V:0.005 〜0.3%、Ti:0.001〜0.25%の1種または2種以上、または(c)B:0.0005 〜0.005%の(a) 、(b) 、(c) 何れか一つまたは二つ以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる炭素鋼であり、鋼材に必要な圧延を加えることにより、薄板、厚板、鋼管、形鋼、棒鋼等へ適用できる。この範囲が好ましい理由は以下の通りである。
【0018】
Cは鋼の強度を最も安定して向上させる基本的な元素であるため、所望する材料の強度によって含有量を0.0005〜1.5 %の範囲で調整する。強度あるいは硬度確保のためには0.0005%以上含有させることが望ましいが、1.5 %より多いと加工性が悪くなるので1.5 %以下がよい。
【0019】
Siは0.005 〜1.2 %としたのは、0.005%未満では予備処理が必要となって精錬に大きなコスト負担をかけ経済性を損ねることとなり、1.2 %より多いとメッキ不良が発生し、表面性状や耐食性を劣化するためである。
【0020】
Mnを0.05〜3.0 %としたのは、0.05%未満では精錬時間が長くなって、経済性を損ねることになり、3.0 %より多いと鋼材の加工性が大きく劣化するためである。
【0021】
Pを0.001 〜0.1 %したのは、0.001%未満では溶銑予備処理に時間とコストがかかり経済性を損ねることとなり、0.1 %より多いと鋼材の加工性が大きく劣化するためである。
【0022】
Sを0.0001〜0.05%としたのは、0.0001%未満では溶銑予備処理に時間とコストがかかり経済性を損ねることとなり、0.05%より多いと鋼材の加工性と耐食性が大きく劣化するためである。
【0023】
Alを0.005 〜1.5 %としたのは、0.005%未満ではAlN としてNをトラップし、固溶Nを減少させることができない。また、1.5 %より多いと加工性が劣化するので1.5 %以下が良い。
【0024】
以上が基本成分系であるが、本発明ではこれらの他にそれぞれの用途に応じて、(a) Cu、Ni、Cr、Moの1種以上、 (b) Nb、V 、Tiの1種以上、 (c) B の、(a)、(b) 、(c) 何れか一つまたは二つ以上を含有させることができる。
【0025】
Cu、Ni、Cr、Moは何れも鋼の焼入れ性を向上させる元素であって、Cu、NiおよびCrは0.1%以上、Moは0.05%以上含有させることによって、強度向上効果を示すが、Cuは1.5 およびMoは1.5%、NiおよびCrは10%を超えて添加すると靭性および加工性を損なうおそれがあるため、Cuは0.1 〜1.5%、NiおよびCrはそれぞれ0.1〜10%、Moは0.05〜1.5%の範囲に限定する。
【0026】
Nb、V 、Tiはいずれも析出強化により鋼の強度を向上させる元素であって、NbおよびV は0.005%以上、Tiは0.001%以上含有させることによって、強度向上効果を示すが、Nbは0.1%、V は0.3%、Tiは0.25%を超えて添加すると靭性を損なうおそれがあるため、Nbは0.005 〜0.1%、V は0.005 〜0.3%、Tiは0.001 〜0.25%の範囲に限定する。
【0027】
Bは鋼の焼入れ性を向上させ、強度を高める元素であって、0.0005%以上含有させることによって、強度向上効果を示すが、0.005%を超えて添加するとB の析出物を増加させ靭性を損なうおそれがあるため、0.0005〜0.005%の範囲に限定する。
【0028】
さらに、鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径が100 μm以下としたのは、100 μm より大きいと製品での表面欠陥や内部欠陥に繋がるためである。また、鋳片のスライム抽出で得られる20μm以上のアルミナクラスターの個数が2個/kg以下としたのは、2 個/kgより多いと圧延後に表面欠陥や内部欠陥に繋がるためである。
【0029】
溶鋼中へのREM合金の添加は、例えば二次精錬装置のCAS やRHを使って、溶鋼のAl脱酸後に行う。REM 添加量は極微量なので、溶鋼中REM濃度を均一にするため、RH槽内での還流溶鋼中への添加や取鍋添加後のArガス等での攪拌が望ましい。また、タンディッシュ、鋳型内溶鋼へREM合金を添加することもできる。
【0030】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
270tの転炉において吹錬後、所定の炭素濃度に調整して出鋼した。2次精錬で目標の溶鋼成分に調整し、Al脱酸後、REM合金 を添加した。REMはミッシュメタル(REM100%)、Fe-Si-REM合金として添加した。Fe-Si-REM合金の濃度は、Fe-45%Si-2%REM、Fe-40%Si-10%REM、Fe-30%Si-33%REM、Fe-20%Si-49%REM、Fe-10%Si-59%REM、Fe-5%Si-78%REMである。REM合金の添加1分後に溶鋼を採取し、介在物中REM酸化物濃度をSEM/EDSで分析した。各サンプル10個ずつ、サンプル断面からアルミナを任意抽出し、Fe分を除いた酸化物の合計が100%になるように換算した。最大と最小REM酸化物濃度の差を介在物組成のばらつきとした。REM酸化物濃度はCe2O3、La2O3、Pr2O3、Nd2O3の合計である。
【0031】
表中の溶鋼を垂直曲げ型連続鋳造機により、鋳片寸法が245mm 厚×1200〜2200mm幅、鋳造速度が1.0〜1.7m/min、タンディッシュ内溶鋼温度が1520〜1580℃の条件で鋳片を製造した。鋳片から採取したサンプルの最大クラスター径、クラスター個数、鋳造後の浸漬ノズル閉塞状況等は表2に示すとおりで、本発明がアルミナクラスター起因の製品欠陥を大幅に低減して優れた生産性を示すものであることが確認できた。
【0032】
なお、表1と表2における*1〜*6の意味は以下のとおりである。
*1 REMはCe、La、Pr、Ndの合計。
*2 MM:ミッシュメタル。質量%でCe:45%、La:35%、Pr:6%、Nd:9%、他不可避不純物からなる合金。
2REM:Fe-45%Si-2%REM合金、10REM:Fe-40%Si-10%REM合金、33REM:Fe-30%Si-33%REM合金、49REM:Fe-20%Si-49%REM合金、59REM:Fe-10%Si-59%REM合金、78REM:Fe-5%Si-78%REM合金。
*3 鋳片断面から任意抽出した10個の介在物組成の平均値。組成はEDS付きSEMで同定した。
*4 鋳片断面から任意抽出した10個の介在物中REM酸化物濃度の最大値と最小値の差。組成はEDS付きSEMで同定した。
*5 最大クラスター径の測定方法は、同一チャージ内で得られた5つの鋳片から、鋳片当たり質量1kg±0.1kgの鋼片を切り出してスライム抽出(最小メッシュ250μmを使用)した介在物を実体顕微鏡で写真撮影(40倍)し、写真撮影した介在物の長径と短径の平均値を全ての介在物で求めてその最大値を最大介在物径とした。クラスター個数は前述の総質量5kgの鋼片からスライム抽出した介在物であり、光学顕微鏡(100倍)で観察した20μm以上の全ての介在物個数を1kg単位個数に換算した。
*6 鋳造後に浸漬ノズル内壁の介在物付着厚みを測定。円周方向10点の平均値からノズル閉塞状況を以下の通りレベル分けした。付着厚さは、○:1mm未満、△:1〜5mm、×:5mm超。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば質量%でCe、La、PrまたはNd等の1種類以上の希土類金属(REM)を0.00001〜0.0010%を含有するAlキルド鋼またはAl-Siキルド鋼を製造するにあたり、Al脱酸後に、REM含有量が1〜50%のREM合金を添加することで、最終製品における表面疵や内部欠陥の原因となる粗大アルミナクラスターの生成を確実に防止できる。したがって、本発明は従来のAl脱酸鋼やAl-Si脱酸鋼における問題点を一掃したアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法として、産業の発展に寄与するところは極めて大である。さらに本発明によって、連続鋳造における溶鋼中アルミナの浸漬ノズルへの付着の確実に防止可能である。したがって、浸漬ノズル閉塞防止に対する効果も大きい。
Claims (6)
- 質量 % で、 C:0.0005 〜 1.5% 、 Si:0.005 〜 1.2% 、 Mn:0.05 〜 3.0% 、 P:0.001 〜 0.1% 、 S:0.0001 〜 0.05% 、 Al:0.005 〜 1.5% 、 T.O:80ppm 以下で、残部が Fe 及び不可避的不純物からなる Al 脱酸された後の溶鋼に、 REM 含有量が 1 〜 50% の Fe-Si-REM 合金を添加することにより、質量 % で Ce 、 La 、 Pr または Nd 等の 1 種類以上の希土類金属 (REM) を 0.00001 〜 0.0010% 含有する Al キルド鋼または Al-Si キルド鋼を製造することを特徴とするアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法。
- 質量 % で Cu:0.1 〜 1.5% 、 Ni:0.1 〜 10.0% 、 Cr:0.1 〜 10.0% 、 Mo:0.05 〜 1.5% の 1 種または 2 種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法。
- 質量 % で Nb:0.005 〜 0.1% 、 V:0.005 〜 0.3% 、 Ti:0.001 〜 0.25% の 1 種または 2 種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法。
- 質量 % で B:0.0005 〜 0.005% をさらに含有することを特徴とする請求項1または2または3に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法。
- 鋳片のスライム抽出で得られるアルミナクラスターの最大径を 100 μ m 以下とすることを特徴とする請求項 1 〜4の何れかに記載のアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法。
- 鋳片のスライム抽出で得られる 20 μ m 以上のアルミナクラスターの個数を 2 個 /kg 以下とする請求項5に記載のアルミナクラスターの少ない鋼材の製造方法。
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