JP4925415B2 - メタクリル酸製造用触媒の製造方法 - Google Patents

メタクリル酸製造用触媒の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に使用する触媒(以下、メタクリル酸製造用触媒という。)の製造方法、メタクリル酸製造用触媒、および、メタクリル酸の製造方法に関する。
従来知られているメタクリル酸製造用触媒の製造方法として、特許文献1には、少なくともモリブデン、リンおよびバナジウムを含む溶液またはスラリー(A液)と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む溶液またはスラリー(C液)を混合し、次いでアンモニア化合物を含む溶液またはスラリー(B液)を混合し、得られた混合液または混合スラリー(ABC液)のpHを5〜10に調整することが好ましいと記載されている。特許文献2には、全ての触媒原料を水に溶解又は懸濁させた溶液のpHが3〜9の範囲になるようにアンモニウム根及び硫酸根を存在させることを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法が記載されている。特許文献1の方法では、ABC液のpHは5〜10が好ましいとされ、pH5未満については記載も示唆もされていない。また、特許文献2では、特許文献1のような触媒原料のA液、C液、B液の添加順序に関する記載はない。
特開2005−230720号 特開平6−86933号
上記文献に記載された方法を用いて製造された触媒はメタクリル酸の収率は必ずしも十分でなく、工業触媒としてさらなる触媒性能の向上が望まれている。
本発明は、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、メタクリル酸収率の高いメタクリル酸製造用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、メタクロレインを分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いるメタクリル酸製造用触媒の製造方法であって、モリブデン及びリンを含む溶液またはスラリー(A液)、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む溶液またはスラリー(B液)、アンモニウム根を含む溶液またはスラリー(C液)を調製する工程を含み、A液とB液を混合したAB液を調製した後にC液を混合し、得られたスラリー(ABC液)のpHを2以上以下、かつA液、B液及びC液に含まれるモリブデン原子12モルに対するC液に含まれるアンモニウム根量を4.3モル以上5.8モル以下に調整することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法である。
本発明によれば、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造するための触媒の製造方法を提供することができる。
本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法は、モリブデン原子およびリン原子を含む溶液またはスラリー(A液)、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む溶液またはスラリー(B液)、アンモニウム根を含む溶液またはスラリー(C液)を混合して製造する。
なお、アンモニウム根とは、アンモニウム(NH4+)になり得るアンモニア(NH)、およびアンモニウム塩等のアンモニウム含有化合物に含まれるアンモニウムの総称である。
<A液の調製>
A液は、少なくともモリブデンの化合物およびリンの化合物、またはモリブデン及びリン化合物を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。A液は、モリブデン原子およびリン原子の他に、例えば、バナジウム原子、銅原子、X元素、Y元素、Z元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム根を含んでいてもよい。ただし、Z元素およびアンモニウム根はA液中に触媒原料のZ元素およびアンモニウム根の全量は含まない。ここで、X元素はアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、スズ、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Y元素は鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、コバルト、マンガン、バリウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Z元素はカリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。
A液に含まれるアンモニウム根の量は、モリブデン原子12モルに対して0〜1.5モルが好ましく、0〜1.0モルがより好ましい。アンモニウム根の量をこの範囲とすることにより、収率の高い触媒が得られる。A液中に含まれるアンモニウム根の量は、アンモニウム根を含む触媒原料の使用量により調節することができる。
A液の製造に用いる触媒原料としては、各元素の酸化物、硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩等を適宜選択して使用することができる。例えば、モリブデンの原料としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸等のアンモニウムを含まない化合物が好ましいが、パラモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、テトラモリブデン酸アンモニウム等の各種モリブデン酸アンモニウムも少量であれば使用できる。また、リンの原料としては、正リン酸、五酸化リン、リン酸アンモニウム等が使用できる。さらに、モリブデンおよびリンの原料として、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム等のヘテロポリ酸を使用することもできる。触媒原料は、各元素に対して1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
A液の溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、アセトン等が挙げられるが、水を用いることが好ましい。A液中の溶媒の量は、A液中に含まれるモリブデン化合物と溶媒の含有比(質量比)1:0.1〜1:100が好ましく、1:0.5〜1:50がより好ましい。溶媒の量をこの範囲とすることで、より収率の高い触媒が得られる。
A液は、室温で撹拌して調製してもよいが、加熱撹拌して調製することが好ましい。加熱温度は、80℃以上150℃以下が好ましく、90℃以上130℃以下がより好ましい。加熱温度をこのような範囲にすることで、より活性の高い触媒が得られる。加熱時間は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。加熱時間をこのような範囲にすることで、触媒原料同士の反応を十分に進行させることができる。また、加熱時間は、24時間以下が好ましく、特に12時間以下がより好ましい。
<B液の調製>
B液はアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。B液はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の他に触媒原料となるモリブデンやX元素など他の元素の化合物も全量でなければ含んでも構わないが、これらの元素は含まない方が好ましい。
B液の調製に使用するアルカリ金属およびアルカリ土類金属の原料としては、各元素の硝酸塩、炭酸塩、水酸化物等を適宜選択して使用することができる。本発明では、アルカリ金属を使用することで優れた効果が得られ、カリウム、ルビジウムおよびセシウムを用いることが好ましく、セシウムを用いることがより好ましい。例えば、セシウムの原料としては、硝酸セシウム、炭酸セシウム、水酸化セシウム等が使用できる。触媒原料は、各元素に対して1種を用いても、2種以上を併用してもよい。また、それぞれ別々の溶液またはスラリーとしてもよく、2種以上を含む溶液、またはスラリーとしてもよい。
B液の溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、アセトン等が挙げられるが、水を用いることが好ましい。B液中の溶媒量は特に限定されないが、B液中に含まれる元素の原料と溶媒の含有比(質量比)は1:0.1〜1:100であることが好ましく、1:0.5〜1:50がより好ましい。
B液は、室温で撹拌して調製できるが、加熱撹拌して調製する方が好ましい。加熱温度は100℃程度までが好ましく、80℃以下がより好ましい。
<C液の調製>
C液は、アンモニウム根含有化合物を溶媒に溶解あるいは懸濁させて調製する。C液は、アンモニウム根含有化合物の他に、例えば、リン原子、モリブデン原子、バナジウム原子、銅原子、前記X元素、Y元素、Z元素、Z元素以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属を含んでもよいが、これらの元素は含まないことが好ましい。
C液に含まれるアンモニウム根の量は、A液、B液及びC液に含まれるモリブデン原子12モルに対して、A液、B液に含まれるアンモニウム根を除いた量として5.8モル以下が好ましく、より好ましくは5.5モル以下、好ましくは1モル以上、より好ましくは2.5モル以上である。C液に含まれるアンモニウム根の量をこの範囲とすることで、メタクリル酸収率のより高い触媒が得られる。
C液の調製に用いるアンモニウム根含有化合物はアンモニアや各種のアンモニウム塩である。例えば、アンモニア(アンモニア水)、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられるが、特に、アンモニア水を使用することが好ましい。アンモニウム根含有化合物は1種を用いても、2種以上を併用してもよい。また、それぞれ別々の溶液またはスラリーとしてもよく、2種以上を含む溶液、またはスラリーとしてもよい。
C液の溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、アセトン等が挙げられるが、水を用いることが好ましい。C液中の溶媒の量は特に限定されないが、通常、C液中に含まれるアンモニウム根含有化合物と溶媒の含有比(質量比)は1:0.1〜1:100であることが好ましく、1:0.5〜1:50がより好ましい。溶媒の量をこの範囲とすることで、メタクリル酸収率のより高い触媒が得られる。
C液は、通常、室温で撹拌して調製できるが、必要に応じて80℃程度まで加熱して調製してもかまわない。ただし、アンモニウム根含有化合物としてアンモニア水をそのまま用いる場合は、溶媒である水を既に含んでいるので、このような調製工程は必ずしも必要ではない。
<A液とB液の混合>
本発明において、A液とB液の混合方法は特に限定されず、例えば、A液にB液を添加して混合する方法、B液にA液を添加して混合する方法、A液とB液を同時に混合する方法等、任意の方法が適用できる。中でも好ましいのは、A液にB液を添加して混合する方法である。また、B液を2回以上に分けて混合してもよい。
A液とB液の混合は、室温で行ってもよいが、加熱して調製してもよい。混合時の温度はそれぞれ100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。このような温度範囲内でA液とB液の混合液(以下、AB液という)を調製することで、メタクリル酸収率のより高い触媒が得られる。
得られたAB液のpHは4以下が好ましく、pH3以下がより好ましい。
必要であれば調製したAB液に触媒の製造に使用するC液以外の原料を添加してもよく、混合して得られる混合液のpHは4以下が好ましい。これらの原料は、そのまま加えても溶液や懸濁液の状態で加えてもよい。使用する溶媒は例えば、水、エチルアルコール、アセトン等およびそれらの混合液が挙げられるが、水を用いることが好ましい。この溶媒量は特に限定されない。
<AB液とC液の混合>
本発明において、AB液、C液の混合方法は特に限定されず、例えば、AB液にC液を添加して混合する方法、C液にAB液を添加して混合する方法、AB液とC液を同時に混合する方法等の任意の方法が適用できる。中でも好ましいのは、AB液にC液を添加して混合する方法である。また、C液を2回以上に分けて混合してよい。
AB液とC液の混合は、室温で行ってもよいが、加熱して調製してもよい。混合時の温度はそれぞれ100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。このような温度範囲内でAB液とC液の混合液を調製することで、より収率の高い触媒が得られる。
本発明において、AB液とC液の混合液(以下、ABC液という)の温度は、混合開始時から終了時まで、混合開始時を基準として−3〜+3℃の範囲に保持することが好ましく、−2.5〜+2.5℃の範囲に保持することがさらに好ましい。このような温度範囲に保持することで、収率が高い触媒を再現性よく製造できる。
本発明において、AB液とC液混合時の溶液の温度を上記範囲に保持するためには、AB液とC液の混合速度を調節する方法、AB液とC液の濃度を調節する方法、ABC液を調製する槽のジャケット部に冷却または加熱媒体を通じることによる方法、混合時の撹拌翼の回転速度を調節する方法など、様々な方法を用いることができる。これらの方法は単独で行ってもよいし、組み合わせてもよいが、AB液とC液の混合速度と、ABC液を調製する槽のジャケット部に冷却または加熱媒体を通じる方法を組み合わせる方法が好ましい。ここで、AB液とC液の混合速度は、混合開始時から終了時まで同じ速度でもよいし、途中で速度を変えてもよい。また、加熱時間は特に限定されず、適宜決めればよい。
本発明において、AB液とC液を混合する時間は0.1〜15分間が好ましい。この混合時間は0.5分間以上が好ましく、1分間以上がより好ましい。また、この混合時間は14分間以下が好ましく、13分間以下がより好ましい。
本発明において、AB液とC液を混合して得られたスラリー(ABC液)のpHを2以上4.5以下に調整することが必要であり、pH2.5以上4以下に調整することが好ましい。ABC液をこのようなpH領域に制御することにより、触媒の比表面積や結晶構造が大きく変わり、収率の高い触媒が得られる。
pHを調整する方法としては、アンモニウム根量の調節、各元素の水酸化物の利用、酸の添加等があるが、1つの方法を使用してもこれらの方法を組み合わせて使用しても構わないが、C液に含まれるアンモニア根量でpHを調整する方法が好ましい。
次いで、必要であれば上記で調製したABC液と、触媒の製造に使用する原料(以下、残原料とする。)を混合し、触媒前駆体を含む溶液またはスラリーを調製する。本発明では、混合する残原料としては、X元素、Y元素、Z元素およびその他化合物も少量であれば酸化物や水酸化物のような化合物として添加することが可能であり、混合後のpHは混合前のABC液のpHを基準として−1〜+1の範囲に制御することが望ましい。混合する残原料は、1種を用いても2種以上を併用してもよい。
これらの残原料はABC液にそのまま加えてもよく、溶液や懸濁液の状態で加えてもよい。使用する溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、アセトン等およびそれらの混合液が挙げられるが、水を用いることが好ましい。この溶媒の量は特に限定されない。
ABC液と残原料の混合方法は、特に限定されず、例えばABC液に残原料を添加する方法、原料にABC液を混ぜていく方法、ABC液と残原料を同時に混ぜる方法、残原料の溶液をABC液に添加する方法が利用できる。ABC液と残原料を混合する際の溶液の温度は特に限定されない。
<乾燥および焼成>
次いで、全ての触媒原料を含む溶液またはスラリーを乾燥し、触媒前駆体である乾燥物を得る。乾燥方法としては種々の方法を用いることが可能であり、例えば、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法等を用いることができる。乾燥に使用する乾燥機の機種や乾燥時の温度、時間等は特に限定されず、乾燥条件を適宜変えることによって目的に応じた触媒前駆体を得ることができる。
このようにして得られた触媒前駆体は、必要により粉砕した後、成形せずにそのまま次の焼成を行ってもよいが、成形品を焼成することが好ましい。成形方法は特に限定されず、公知の乾式および湿式の種々の成形法が適用できるが、シリカ等の担体などを含めずに成形することが好ましい。具体的な成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形、担持成形等が挙げられる。成形品の形状についても特に限定されず、例えば、円柱状、リング状、球状等の所望の形状を選択することができる。なお、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。そして、このようにして得られた触媒前駆体またはその成形品を焼成し、メタクリル酸製造用触媒を得る。
焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、用いる触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、好ましくは200〜500℃、より好ましくは300〜450℃で、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1〜40時間で行う。ここで、不活性ガスとは、触媒の反応活性を低下させないような気体のことをいい、具体的には、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
上記のようにして製造される本発明のメタクリル酸製造用触媒は、下記式(1)で示される組成を有することが好ましい。
MoCu (1)
(P、Mo、V、Cu及びOは、それぞれリン、モリブデン、バナジウム、銅および酸素を示し、Xはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、スズ、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、コバルト、マンガン、バリウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。a、b、c、d、e、f、gおよびhは各元素の原子比率を表し、b=12のときa=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0.01〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。)
<メタクリル酸の製造方法>
次に、本発明のメタクリル酸の製造方法について説明する。本発明のメタクリル酸の製造方法は、上記のようにして得られる本発明の触媒の存在下でメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造するものである。反応は、固定床で行うことが好ましい。また、固定床の触媒層は1層でも2層以上でもよい。
上記のような本発明の触媒を用いてメタクリル酸を製造する際には、メタクロレインと分子状酸素とを含む原料ガスを触媒と接触させる。原料ガス中のメタクロレイン濃度は広い範囲で変えることができるが、1〜20容量%が適当であり、3〜10容量%がより好ましい。分子状酸素源としては空気を用いることが経済的であるが、必要ならば純酸素で富化した空気等も用いることができる。原料ガス中の分子状酸素濃度は、メタクロレイン1モルに対して0.4〜4モルが適当であり、0.5〜3モルがより好ましい。原料ガスは、メタクロレインおよび分子状酸素源を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであってもよい。また、原料ガスには水蒸気を加えてもよい。水の存在下で反応を行うと、より高収率でメタクリル酸が得られる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1〜50容量%が好ましく、1〜40容量%がより好ましい。また、原料ガス中には、低級飽和アルデヒド等の不純物を少量含んでいてもよいが、その量はできるだけ少ないことが好ましい。メタクリル酸製造反応の反応圧力は、大気圧から数気圧まで用いられる。反応温度は、230〜450℃の範囲で選ぶことができるが、250〜400℃がより好ましい。原料ガスの流量は特に限定されないが、接触時間は1.5〜15秒が好ましく、2〜5秒がより好ましい。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例中の「部」は質量部を意味する。触媒の組成は触媒成分の原料仕込み量から求めた。反応原料ガスおよび生成物の分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。
なお、メタクロレインの転化率、生成したメタクリル酸の選択率、メタクリル酸の単流収率は以下のように定義される。
メタクロレインの転化率(%)=(β/α)×100
メタクリル酸の選択率(%)=(γ/β)×100
メタクリル酸の単流収率(%)=(γ/α)×100
ここで、αは供給したメタクロレインのモル数、βは反応したメタクロレインのモル数、γは生成したメタクリル酸のモル数である。
[実施例1]
純水200部に三酸化モリブテン100部、85質量%リン酸6.66部、五酸化バナジウム2.63部、三酸化アンチモン2.53部および硝酸第二銅1.40部を純水2.80部に溶解した溶液を加え、還流下で5時間撹拌してA液を調製した。A液中に含まれるアンモニウムの量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して0モルであった。B液である硝酸セシウム水溶液は、硝酸セシウム13.54部を純水28.43部に加え60℃に加熱して溶解して調製した。A液を50℃まで冷却した後、A液を撹拌しながらA液にB液を滴下し、15分間撹拌してAB液を得た。次に、AB液を70℃まで昇温して、C液である28質量%アンモニア水18.0部をAB液に滴下した。C液中に含まれるアンモニウム根量は、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対して5.1モルであった。C液を滴下した後、30分間撹拌してpH2.8のスラリー(ABC液)を得た。
このABC液を101℃まで加熱し、撹拌しながら蒸発乾固した。そして、得られた固形物を130℃で16時間乾燥し、乾燥物を加圧成形した後、空気流通下、375℃にて10時間焼成してメタクリル酸製造用触媒を得た。得られた触媒の酸素を除く組成は、P1.2Mo120.5Cu0.1Sb0.3Cs1.2であった。
(メタクリル酸の合成反応)
この触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5%、酸素10%、水蒸気30%、窒素55%(容量%)の混合ガスを、大気圧下、反応温度290℃、接触時間3.6秒で通じメタクリル酸を製造した。このときの反応結果は、メタクロレイン転化率87.5%、メタクリル酸選択率87.5%、メタクリル酸収率76.6%であった。
[実施例2〜3、比較例1、2]
実施例1において、C液の添加量を表1に示す量に変更してABC液のpHを変えた以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸製造用触媒を調製した。その結果、A液中に含まれるモリブデン原子12モルに対するC液中に含まれるアンモニウム根量を表1に示す。また、調製した触媒を用いてメタクリル酸の製造を実施例1と同様に行った結果を表1に示す。
Figure 0004925415

Claims (2)

  1. メタクロレインを分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いるメタクリル酸製造用触媒の製造方法であって、モリブデン及びリンを含む溶液またはスラリー(A液)、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む溶液またはスラリー(B液)、アンモニウム根を含む溶液またはスラリー(C液)を調製する工程を含み、A液とB液を混合したAB液を調製した後にC液を混合し、得られたスラリー(ABC液)のpHを2以上4以下、かつA液、B液及びC液に含まれるモリブデン原子12モルに対するC液に含まれるアンモニウム根量を4.3モル以上5.8モル以下に調整することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
  2. C液がリン、モリブデン、バナジウム、銅、X元素、Y元素、およびZ元素を実質的に含まない溶液またはスラリーである請求項1記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。(Xはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、スズ、タングステンおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、コバルト、マンガン、バリウム、ガリウム、セリウム、およびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類の元素を示す。)
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