以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の滅菌システム(1)は、医薬品等に関する処理室内の空調と滅菌処理とを行うものであり、本発明に係る空調システムを構成している。図1に示すように、この滅菌システム(1)は、順に隣接する3つの処理室(2a,2b,2c)を対象としている。本実施形態において、第1処理室(2a)は製造機器や検査機器等を搬入出するためのパスボックスPB(パスルームともいう)であり、第2処理室(2b)は医薬品の製造等を行う主室であり、第3処理室(2c)は作業者が出入りする附室である。そして、これら処理室(2a,2b,2c)には、出入りするための開閉扉(3)が設けられ、該開閉扉(3)の開放によって処理室(2a,2b,2c)同士が連通する。また、これら処理室(2a,2b,2c)は、無菌室を構成している。
この滅菌システム(1)は、空調系統回路(5)と滅菌系統回路(50)を備えている。空調系統回路(5)は、各処理室(2a,2b,2c)へ空気を供給する給気系統(10)と、各処理室(2a,2b,2c)から空気が排出する排気系統(30)とを備えている。
上記給気系統(10)は、給気側主流路(11)と、3つの給気流路(12,13,14)とを備えている。
上記給気側主流路(11)は、外気が取り込まれて流れる。この給気側主流路(11)には、上流側から順に、外気処理空調機(21)と顕熱空調機(23)が設けられている。外気処理空調機(21)は、上流側から順に、中性能フィルタ(21a)、HEPAフィルタ(high efficiency particulate air filter)(21b)および給気ファン(21c)が配設されている。この外気処理空調機(21)では、取り込まれた空気が中性能フィルタ(21a)およびHEPAフィルタ(21b)によって塵埃等が除去される。顕熱空調機(23)は、上流側から順に、冷却コイル(23a)、電気ヒータ(23b)、加湿器(23c)および給気ファン(23d)が配設されている。この顕熱空調機(23)では、外気処理空調機(21)を出た空気が取り込まれ、必要に応じて冷却コイル(23a)で冷却され、電気ヒータ(23b)で加熱され、加湿器(23c)で加湿される。また、給気側主流路(11)における外気処理空調機(21)と顕熱空調機(23)の間には、主遮断ダンパ(22)が設けられている。この主遮断ダンパ(22)は、流路の開放と遮断とを行う切り換えるように構成されている。なお、後述する各種遮断ダンパについても同様の構成である。
上記各給気流路(12,13,14)は、給気側主流路(11)における顕熱空調機(23)よりも下流部分に互いに並列接続されている。そして、第1給気流路(12)は第1処理室(2a)に、第2給気流路(13)は第2処理室(2b)に、第3給気流路(14)は第3処理室(2c)にそれぞれ繋がっている。各給気流路(12,13,14)は、上流側から順に、遮断ダンパ(25)および定風量装置(26)を有し、給気側主流路(11)から処理室(2a,2b,2c)へ空気を供給する。定風量装置(26)は、図示しないが、バルブと風速センサを備えた給気量調節手段である。つまり、この定風量装置(26)は、処理室(2a,2b,2c)への給気量(風量)が一定になるように、風速センサの計測値に基づいてバルブの開度が調節される。なお、各処理室(2a,2b,2c)の給気流路(12,13,14)が繋がる入口部には、HEPAフィルタ(27)が設けられている。
上記排気系統(30)は、排気側主流路(31)と、3つの排気流路(32,33,34)とを備えている。
上記排気側主流路(31)には、排気ファン(43)が設けられ、その下流側に主排気用遮断ダンパ(44)が設けられている。各排気流路(32,33,34)は、排気側主流路(31)における排気ファン(43)よりも上流部分に互いに並列接続されている。そして、第1排気流路(32)は第1処理室(2a)に、第2排気流路(33)は第2処理室(2b)に、第3排気流路(34)は第3処理室(2c)にそれぞれ繋がっている。各排気流路(32,33,34)は、遮断ダンパ(42)が設けられている。なお、第1排気流路(32)だけは、遮断ダンパ(42)が2つ直列に設けられている。この排気系統(30)では、排気ファン(43)によって各処理室(2a,2b,2c)の空気が各排気流路(32,33,34)および排気側主流路(31)を通って室外へ排出される。
上記排気系統(30)には、遮断ダンパ(42)以外に、開度可変に構成された調節ダンパが設けられている。具体的に、各排気流路(32,33,34)には、遮断ダンパ(42)の上流側に排気量調節手段としての調節ダンパ(41)が1つずつ設けられている。また、排気側主流路(31)には、主遮断ダンパ(44)の下流側に主調節ダンパ(45)が設けられている。この排気系統(30)では、各調節ダンパ(41)の開度調節によって、各処理室(2a,2b,2c)の排気量が調節され、その処理室(2a,2b,2c)の室圧制御が行われる。また、各処理室(2a,2b,2c)の排気流路(32,33,34)が繋がる出口部には、HEPAフィルタ(46)が設けられている。なお、本実施形態において、給気系統(10)の定風量装置(26)と、排気系統(30)の調節ダンパ(41)とは、処理室(2a,2b,2c)の給排気量を調節する調節手段を構成している。
上記給気系統(10)と排気系統(30)の間には、調節ダンパ(37)を有する還気流路(36)が接続されている。この還気流路(36)の入口側である一端は、排気側主流路(31)における排気ファン(43)と主遮断ダンパ(44)との間に接続されている。還気流路(36)の出口側である他端は、給気側主流路(11)における主遮断ダンパ(22)と顕熱空調機(23)との間に接続されている。つまり、還気流路(36)は、処理室(2a,2b,2c)から排気系統(30)に排出された空気の一部または全部を給気系統(10)に戻す循環流路を構成している。
上記滅菌系統回路(50)は、滅菌ガス循環流路(51)と、滅菌ガス供給主流路(52)と、3つの滅菌ガス供給路(53,54,55)と、滅菌ガス戻し主流路(57)と、3つの滅菌ガス戻し路(58,59,61)とを備えている。
上記滅菌ガス循環流路(51)の下流端は、滅菌側空調機(85)を介して滅菌ガス供給主流路(52)に接続されている。滅菌ガス循環流路(51)の上流端は、滅菌ガス循環ファン(86)を介して滅菌ガス戻し主流路(57)に接続されている。また、滅菌ガス循環流路(51)の途中には、滅菌ガス発生機(81)が設けられ、その滅菌ガス発生器(81)の入口側および出口側に入口遮断ダンパ(74)および出口遮断ダンパ(73)が設けられている。ている。滅菌ガス発生機(81)および滅菌側空調機(85)の詳細については、後述する。
上記3つの滅菌ガス供給路(53,54,55)は、滅菌ガス供給主流路(52)と給気系統(10)の各給気流路(12,13,14)との間に接続されている。具体的に、第1〜第3滅菌ガス供給路(53,54,55)の各上流端は、滅菌ガス供給主流路(52)に接続されている。第1〜第3滅菌ガス供給路(53,54,55)の各下流端は、各給気流路(12,13,14)における遮断ダンパ(25)と定風量装置(26)との間に接続されている。また、各滅菌ガス供給路(53,54,55)には、遮断ダンパ(56)が1つずつ設けられている。
上記3つの滅菌ガス戻し路(58,59,61)は、滅菌ガス戻し主流路(57)と排気系統(30)の各排気流路(32,33,34)との間に接続されている。具体的に、第1〜第3滅菌ガス戻し路(58,59,61)の各上流端は、各排気流路(32,33,34)における調節ダンパ(41)と遮断ダンパ(42)との間に接続されている。第1〜第3滅菌ガス戻し路(58,59,61)の各下流端は、滅菌ガス戻し主流路(57)に接続されている。また、各滅菌ガス戻し路(58,59,61)には、遮断ダンパ(63)が1つずつ設けられている。
上記滅菌ガス発生器(81)には、外気処理空調機(91)を有する給気流路(92)が接続されている。この給気流路(92)の外気処理空調機(91)は、上述した空調系統回路(5)の外気処理空調機(21)と同様に、中性能フィルタ(91a)とHEPAフィルタ(91b)と給気ファン(91c)を備えている。また、給気流路(92)には、外気処理空調機(91)の下流に定風量装置(93)が設けられている。つまり、給気流路(92)では、外気処理空調機(91)によって取り込まれた外気が定風量装置(93)で一定風量に制御された後、滅菌ガス発生器(81)へ供給される。
ここで、滅菌ガス発生器(81)の内部構成について、図2を参照しながら説明する。滅菌ガス発生器(81)は、第1通路(101)と第2通路(102)と戻し通路(103)を有している。第1通路(101)の上流端は入口側の滅菌ガス循環流路(51)および給気流路(92)の双方に繋がっており、下流端は出口側の滅菌ガス循環流路(51)に繋がっている。第2通路(102)の上下流端は、何れも室外に開口している。第1通路(101)には、上流側から順に、第1ファン(104)、一次冷却器(105)、吸着ロータ(106)、二次冷却器(107)、加熱器(108)、加湿器(108)および過酸化水素発生部(110)が設けられている。吸着ロータ(106)は、水分を吸脱着可能な吸着剤が担持され、回転可能に構成されている。第2通路(102)には、上流側から順に、再生加熱器(111)、上述した吸着ロータ(106)および第2ファン(112)が設けられている。つまり、吸着ロータ(106)は、第1通路(101)と第2通路(102)の双方に跨って配置されている。そして、戻し通路(103)は、第1通路(101)に接続されている。具体的に、戻し通路(103)の一端は加湿器(108)と過酸化水素発生部(110)の間に接続され、他端は第1ファン(104)の上流に接続されている。過酸化水素発生部(110)は、過酸化水素の水溶液から過酸化水素ガスを発生させ、第1通路(101)の空気に付与して滅菌ガスを生成するように構成されている。
上記第1通路(101)では、一次冷却器(105)で冷却された空気が吸着ロータ(106)を通過する際にその空気中の水分が吸着されて除湿される。除湿後の空気は、必要に応じて、二次冷却器(107)および加熱器(108)で温度が調節され、加湿器(108)で湿度が調節される。また、第2通路(102)では、室外より取り込まれた空気が再生加熱器(111)で加熱されて吸着ロータ(106)を通過するため、吸着ロータ(106)における第1通路(101)で吸着した部分が再生される。この吸着ロータ(106)の再生部分は、回転して再び第1通路(101)へ移動し、その第1通路(101)の空気を除湿する。この滅菌ガス発生器(81)において、吸着ロータ(106)、冷却器(105,107)、加熱器(108)、加湿器(108)および再生加熱器(111)は、空気の温湿度調整部(114)を構成している。このように、滅菌ガス発生器(81)は、温湿度調整した、また過酸化水素ガスを付与した空気を滅菌ガス循環流路(51)へ流すように構成されている。なお、滅菌ガス発生器(81)は、適宜、過酸化水素発生部(110)および温湿度調整部(114)の一方だけを運転または停止させることができる。
上記滅菌側空調機(85)は、上流側から順に、冷却コイル(85a)、電気ヒータ(85b)および供給ファン(85c)が設けられている。そして、供給ファン(85c)が上述した滅菌ガス供給主流路(52)に接続されている。
また、上記滅菌系統回路(50)は、分解用流路(65)と、除湿用流路(66)と、バイパス流路(67)と、第4滅菌ガス供給路(68)と、滅菌ガス排出路(69)を備えている。
上記分解用流路(65)と除湿用流路(66)とバイパス流路(67)は、滅菌ガス循環流路(51)に互いに並列に接続されている。つまり、分解用流路(65)と除湿用流路(66)とバイパス流路(67)は、何れも、上流端が滅菌ガス循環ファン(86)と入口遮断ダンパ(74)との間に接続され、下流端が滅菌側空調機(85)と出口遮断ダンパ(73)との間に接続されている。そして、分解用流路(65)には、Pt触媒により構成された過酸化水素分解器(82)が設けられている。この過酸化水素分解器(82)は、通過する滅菌ガスから過酸化水素ガスを分解除去するように構成されている。除湿用流路(66)には、除湿器(84)が設けられている。この除湿器(84)は、取り込んだ外気(空気)を除湿して除湿用流路(66)へ流すように構成されている。また、分解用流路(65)および除湿用流路(66)には、過酸化水素分解器(82)および除湿器(84)の入口側および出口側に入口遮断ダンパ(72,76)および出口遮断ダンパ(71,75)がそれぞれ設けられている。バイパス流路(67)には、遮断ダンパ(77)が設けられている。
上記第4滅菌ガス供給路(68)の上流端は、滅菌ガス循環流路(51)における滅菌ガス発生器(81)と出口遮断ダンパ(73)との間に接続されている。第4滅菌ガス供給路(68)の下流端は、給気系統(10)の第1給気流路(12)における遮断ダンパ(25)と定風量装置(26)との間に接続されている。この第4滅菌ガス供給路(68)には、上流側から順に、遮断ダンパ(78)、ミキシングチャンバ(88)、滅菌ガス供給ファン(89)および遮断ダンパ(79)が設けられている。また、第4滅菌ガス供給路(68)には、PB用循環流路(95)が接続されている。このPB用循環流路(95)は、上流端が第1処理室(2a)における出口部のHEPAフィルタ(46)に接続され、下流端がミキシングチャンバ(88)に接続されている。このミキシングチャンバ(88)は、第1処理室(2a)からPB用循環流路(95)へ排出した滅菌ガスと滅菌ガス発生器(81)からの滅菌ガスとを混合させるものである。
上記滅菌ガス排出路(69)の上流端は、排気系統(30)の第1排気流路(32)における調節ダンパ(41)と遮断ダンパ(42)との間に接続されている。滅菌ガス排出路(69)の下流端は、室外へ開口している。この滅菌ガス排出路(69)には、上流側から順に、遮断ダンパ(94)、滅菌ガス排気ファン(87)および過酸化水素分解器(83)が設けられている。この過酸化水素分解器(83)は、上述した分解用流路(65)に設けられたものと同様に構成されている。
上記分解用流路(65)と滅菌ガス排出路(69)とには、遮断ダンパ(97)を有する接続流路(96)が接続されている。この接続流路(96)は、一端が分解用流路(65)における入口遮断ダンパ(72)の上流側に接続され、他端が滅菌ガス排出路(69)における滅菌ガス排気ファン(87)と過酸化水素分解器(83)との間に接続されている。
この滅菌システム(1)は、コントローラ(120)と各種センサ(131,132)を備えている。
各処理室(2a,2b,2c)には、ドアスイッチ(131)が設けられている。このドアスイッチ(131)は、開閉扉(3)の開状態および閉状態を検知するものであり、各開閉扉(3)毎に設けられている。また、各処理室(2a,2b,2c)には、室圧を検出する圧力検出手段としての圧力センサ(132)が設けられている。
コントローラ(120)は、モード切換部(121)と滅菌時制御部(122)と定常時制御部(123)を備えている。モード切換部(121)は、後述する各種運転モードを切り換えるように構成されている。滅菌時制御部(122)および定常時制御部(123)は、外部から処理室(2a,2b,2c)への菌類の侵入防止のために、処理室(2a,2b,2c)の室圧が外気より僅かに陽圧(微陽圧)になるように制御する。
具体的に、滅菌時制御部(122)は、後述する滅菌運転時において、全ての処理室(2a,2b,2c)の室圧が同じ設定圧力(微陽圧)で維持されるように各調節ダンパ(41)の開度を制御する。一方、定常時制御部(123)は、後述する定常運転時において、処理室(2a,2b,2c)の室圧が重要度に応じて定められた異なる設定圧力(設定値)で維持されるように各調節ダンパ(41)の開度を制御する。つまり、定常運転時において、各処理室(2a,2b,2c)の設定室圧は、その処理室(2a,2b,2c)の重要度(滅菌レベルまたは無菌レベル)が高い程高く設定される。本実施形態の場合、第2処理室(2b)の設定室圧が最も高く、第1処理室(2a)および第3処理室(2c)の設定室圧が同圧に設定される。滅菌時制御部(122)および定常時制御部(123)は、各処理室(2a,2b,2c)の圧力センサ(132)の検出値に基づいて調節ダンパ(41)の開度制御を行う。
さらに、定常時制御部(123)は、定常運転時において開閉扉(3)が開状態になると行う「特別モード」を備えている。例えば、処理室(2a,2b,2c)間の開閉扉(3)が開くと、第1所定時間の間、その開放によって連通する設定室圧の高い処理室(2a,2b,2c)の調節ダンパ(41)の開度が減少され、設定室圧の低い処理室(2a,2b,2c)の調節ダンパ(41)の開度が増大される。また、室外に面する開閉扉(3)(即ち、図1における第1処理室(2a)の左側の開閉扉(3)、または第3処理室(2c)の右側の開閉扉(3))が開くと、所定時間の間、第1処理室(2a)または第3処理室(2c)の調節ダンパ(41)の開度が減少される。そして、この特別モードでは、上記第1所定時間が経過してから第2所定時間が経過するまで、圧力センサ(132)の検出値に基づいて調節ダンパ(41)の開度制御が行われる。この調節ダンパ(41)の開度制御は、開閉扉(3)が閉状態であるときの制御に比べて、圧力センサ(132)の検出値に対する応答性が遅れるように構成されている。さらに、この特別モードでは、上記第2所定時間が経過してから開閉扉(3)が閉状態になるまで、調節ダンパ(41)の開度制御が停止される。なお、定常時制御部(123)は、ドアスイッチ(131)の検出信号が入力され、その信号によって開閉扉(3)の開状態および閉状態を判別する。
−運転動作−
次に、この滅菌システム(1)の運転動作について説明し、続いて処理室(2a,2b,2c)の室圧制御について詳細に説明する。
滅菌システム(1)では、各種運転モードが切換可能に構成されている。具体的に、コントローラ(120)のモード切換部(121)は、「準備モード」、「調整モード」、「滅菌モード」、「第1稀釈モード」、「第2稀釈モード」、「定常モード」および「PB単独滅菌モード」の運転モードを切り換える。
〈準備モード〉
この準備モードは、後の調整モードや滅菌モードによる滅菌効果を高めるため、処理室(2a,2b,2c)の温度と湿度を適切な値(目標値)にする運転である。例えば、その目標温度は25℃に設定され、目標湿度は相対湿度30%に設定される。
図3示すように、この準備モードでは、太線で示すラインの遮断ダンパ(56,63,・・・)が開状態に設定され、それ以外の遮断ダンパ(22,25,・・・)が閉状態に設定される。また、各滅菌ガス戻し路(58,59,61)の調節ダンパ(41)が適切な開度に設定される。この状態で、滅菌系統回路(50)で運転が行われる。具体的に、滅菌ガス発生器(81)の温湿度調整部(114)、除湿器(84)、滅菌側空調機(85)、外気処理空調機(91)および滅菌ガス循環ファン(86)が運転される。なお、滅菌ガス発生器(81)の過酸化水素発生部(110)は停止している。
先ず、室外から外気処理空調機(91)へ取り込まれた空気は、定風量装置(93)によって一定風量で滅菌ガス発生器(81)へ供給される。滅菌ガス発生器(81)へ供給された空気は、温湿度調整部(114)で温度および湿度が調節されて、滅菌ガス循環流路(51)へ流れる。一方、除湿器(84)において、室外から取り込まれた空気が除湿され、除湿用流路(66)へ流れる。この除湿用流路(66)の空気は、滅菌ガス循環流路(51)へ流れ、滅菌ガス発生器(81)からの空気と合流する。合流後の空気は、滅菌側空調機(85)へ流れて温度調節される。温度調節された空気は、滅菌ガス供給主流路(52)から各滅菌ガス供給路(53,54,55)へ流れ、定風量装置(26)およびHEPAフィルタ(27)を介して各処理室(2a,2b,2c)へ供給される。なお、各処理室(2a,2b,2c)へ供給される空気は、定風量装置(26)によって一定風量に制御される。
続いて、各処理室(2a,2b,2c)内の空気は、滅菌ガス循環ファン(86)により、HEPAフィルタ(46)および調節ダンパ(41)を順に介して滅菌ガス戻し路(58,59,61)へ排出され、滅菌ガス戻し主流路(57)へ流れる。その後、空気は、滅菌ガス循環流路(51)へ流れ、分解用流路(65)と除湿用流路(66)とバイパス流路(67)とに分流する。分解用流路(65)へ流れた空気は、接続流路(96)を通って滅菌ガス排出路(69)へ流れ、過酸化水素分解器(83)で過酸化水素が分解除去されて室外へ排出される。除湿用流路(66)へ流れた空気は、除湿器(84)で外気と混合し、再び除湿される。バイパス流路(67)へ流れた空気は、滅菌ガス循環流路(51)へ流れて、滅菌ガス発生器(81)および除湿器(84)からの空気と合流する。
このように、滅菌ガス発生器(81)、除湿器(84)および滅菌側空調機(85)で温度と湿度が調節された空気が各処理室(2a,2b,2c)へ供給される。そして、各処理室(2a,2b,2c)の温度および湿度が目標値に達すると、準備モードが終了する。つまり、第1処理室(2a)では、他の処理室(2b,2c)に比べて、滅菌ガスがHEPAフィルタ(27,46)を通過する度合いが多くなるので、滅菌ガスの塵埃等の除去率が向上する。
〈調整モードおよび滅菌モード〉
コントローラ(120)のモード切換部(121)は、準備モードが終了すると、調整モードおよび滅菌モードへ順に切り換える。先ず、調整モードは、滅菌ガス発生器(81)で生成した滅菌ガスを各処理室(2a,2b,2c)へ供給し、処理室(2a,2b,2c)内の過酸化水素の濃度を目標濃度(例えば、300ppm)にする。そして、滅菌モードは、過酸化水素の濃度を所定範囲(例えば、目標濃度−10%〜目標濃度+10%)内で所定時間維持する。なお、処理室(2a,2b,2c)には、過酸化水素の濃度を検出する濃度センサ(図示せず)が設けられている。
図4に示すように、調整モードでは、除湿器(84)が停止されると共に、除湿用流路(66)の入口遮断ダンパ(76)および出口遮断ダンパ(75)が閉状態に設定される。また、滅菌ガス発生器(81)の入口遮断ダンパ(74)が開状態に設定される。そして、滅菌ガス発生器(81)において、温湿度調整部(114)が停止される一方、過酸化水素発生部(110)が運転される。その他は、準備モードと同じ状態である。
先ず、外気処理空調機(91)から滅菌ガス発生器(81)へ供給された空気は、過酸化水素発生部(110)によって過酸化水素ガスが付与され、滅菌ガスとなる。この滅菌ガスは、滅菌ガス循環流路(51)から滅菌側空調機(85)へ流入して温度調節される。その後、滅菌ガスは、各滅菌ガス供給路(53,54,55)から処理室(2a,2b,2c)へ供給される。各処理室(2a,2b,2c)の空気は、滅菌ガス戻し路(58,59,61)へ排出されて滅菌ガス循環流路(51)へ流れる。そして、この空気は、一部が滅菌ガス発生器(81)へ流入し、残りが分解用流路(65)とバイパス流路(67)とに分流する。滅菌ガス発生器(81)へ流入した空気は、外気処理空調機(91)からの空気と混合し、過酸化水素ガスが付与された後、滅菌ガス循環流路(51)へ流れる。この滅菌ガスは、バイパス流路(67)からの空気と合流して滅菌側空調機(85)へ流れ、この循環を繰り返される。なお、分解用流路(65)へ流れた空気は、準備モードと同様に、過酸化水素分解器(83)を通って室外へ排出される。
このように、調整モードでは、処理室(2a,2b,2c)へ滅菌ガスが供給される一方、処理室(2a,2b,2c)内の空気が排出されるため、処理室(2a,2b,2c)内の過酸化水素濃度が次第に高くなる。そして、その過酸化水素濃度が目標値へ達すると、調整モードが終了し、滅菌モードが開始される。
図5に示すように、滅菌モードでは、滅菌ガス発生器(81)の入口遮断ダンパ(74)が閉状態に設定される。また、滅菌ガス発生器(81)において、温湿度調整部(114)が過酸化水素発生部(110)と共に運転される。その他は、調整モードと同じ状態である。
この場合、滅菌ガス発生器(81)において、各処理室(2a,2b,2c)から排出した滅菌ガスは流入せず、外気処理空調機(91)からの新たな空気のみが供給される。そして、滅菌ガス発生器(81)へ流入した空気は、過酸化水素ガスが付与されると共に、温度および湿度が適切に調節される。つまり、調整モードとは異なり、温湿度が適切に調節された滅菌ガスが各処理室(2a,2b,2c)へ供給される。これにより、各処理室(2a,2b,2c)において、過酸化水素濃度が所定の範囲で維持され、さらに温度および湿度が滅菌に適した値(温度25℃、相対湿度30%)に維持される。したがって、滅菌効果が効果的に発揮される。そして、滅菌モードは、所定時間が行われると終了する。
〈第1稀釈モード〉
コントローラ(120)のモード切換部(121)は、滅菌モードが終了すると、第1稀釈モードに切り換える。この第1稀釈モードは、処理室(2a,2b,2c)の過酸化水素の濃度を所定値(例えば、10ppm)以下に低下させるための運転である。
図6に示すように、この第1希釈モードでは、分解用流路(65)の入口遮断ダンパ(72)および出口遮断ダンパ(71)が開状態に設定される。また、滅菌ガス発生器(81)において、過酸化水素発生部(110)が停止される。その他は、滅菌モードと同じ状態である。
この状態では、各処理室(2a,2b,2c)から排出された滅菌ガスが滅菌ガス循環流路(51)へ流れる。この滅菌ガスは、分解用流路(65)とバイパス流路(67)とに分流する。分解用流路(65)へ流入した滅菌ガスの一部は、そのまま分解用流路(65)の過酸化水素分解器(82)へ流れて過酸化水素が分解除去された後、滅菌ガス循環流路(51)へ流れる。分解用流路(65)へ流入した滅菌ガスの残りは、接続流路(96)から滅菌ガス排出路(69)へ流れ、過酸化水素分解器(83)で過酸化水素が分解除去されて室外へ排出される。
一方、滅菌ガス発生器(81)で温湿度が適切に調節された空気は、滅菌ガス循環流路(51)へ流れる。バイパス流路(67)へ流入した滅菌ガスは、滅菌ガス循環流路(51)において、滅菌ガス発生器(81)および過酸化水素分解器(82)からの空気と合流し、稀釈される。稀釈された滅菌ガスは、各処理室(2a,2b,2c)へ供給され、この循環が繰り返される。これにより、各処理室(2a,2b,2c)内の過酸化水素濃度が次第に低下する。そして、各処理室(2a,2b,2c)内の過酸化水素濃度が所定値(10ppm)以下になると、第1稀釈モードが終了する。
〈第2稀釈モード〉
コントローラ(120)のモード切換部(121)は、第1稀釈モードが終了すると、第2稀釈モードに切り換える。この第2稀釈モードは、処理室(2a,2b,2c)の過酸化水素濃度をさらに低い値(例えば、1ppm)にするための運転である。つまり、このモードは、無菌空気を処理室(2a,2b,2c)へ供給すると共に、処理室(2a,2b,2c)内の低濃度の滅菌ガスを直接室外へ排出させる運転である。さらに、この第2稀釈モードによれば、処理室(2a,2b,2c)の温度および湿度が目標値に制御される。例えば、その目標温度は22℃に設定され、目標湿度は相対湿度50%に設定される。
図7に示すように、この第2稀釈モードでは、滅菌系統回路(50)の運転を停止し、空調系統回路(5)のみを運転させる。具体的に、滅菌系統回路(50)において、全ての遮断ダンパ(56,58,・・・)が閉状態に設定される。そして、空調系統回路(5)において、図7に太線で示すラインの遮断ダンパ(25,42,・・・)が開状態に設定され、主調節ダンパ(45)および調節ダンパ(37,41)が適切な開度に設定される。
この状態で、外気処理空調機(21)、顕熱空調機(23)および排気ファン(43)を運転させる。そうすると、先ず、室外から給気側主流路(11)へ取り込まれた空気は、外気処理空調機(21)で塵埃等が除去され、顕熱空調機(23)へ流入する。顕熱空調機(23)では、空気の温度および湿度が調節される。この調節された空気は、各給気流路(12,13,14)へ流れ、HEPAフィルタ(27)を通過して各処理室(2a,2b,2c)へ供給される。ここで、供給された空気は、外気処理空調機(21)やHEPAフィルタ(27)によって無菌空気となっている。また、第2給気流路(13)および第3給気流路(14)へ流れた空気は、レヒートコイル(24)によって温度が微調整される。
各処理室(2a,2b,2c)の空気(低濃度の滅菌ガス)は、排気ファン(43)によって、HEPAフィルタ(46)を通過して排気流路(32,33,34)へ排出され、排気側主流路(31)へ流れる。この排気側主流路(31)の空気は、一部が還気流路(36)へ流れ、残りが主調節ダンパ(45)を通って室外へ排出される。還気流路(36)へ流れた空気は、給気側主流路(11)へ流れて外気処理空調機(21)からの空気と合流する。ここで、室外へ排出される空気量および還気流路(36)へ流れる空気量は、主調節ダンパ(45)および調節ダンパ(37)の開度制御によって調節される。
このように、処理室(2a,2b,2c)において、新たな無菌空気が供給される一方、滅菌ガスが室外へ排出されるので、処理室(2a,2b,2c)内の過酸化水素濃度がさらに低下する。そして、処理室(2a,2b,2c)において、過酸化水素濃度が所定値(1ppm)以下になり、且つ、温度および湿度が目標値(温度22℃、相対湿度50%)になると、第2稀釈モードが終了する。本実施形態では、準備モードから第2稀釈モードまでの一連の運転が行われて処理室(2a,2b,2c)の滅菌処理が完了する。
〈定常モード〉
コントローラ(120)のモード切換部(121)は、第2稀釈モードが終了すると、定常モードに切り換える。この定常モードは、各処理室(2a,2b,2c)の温度および湿度を第2稀釈モードで設定した値(温度22℃、相対湿度50%)に維持すると共に、処理室(2a,2b,2c)内の無菌状態を維持する空調運転である。
具体的に、この定常モードでは、図7に示す第2稀釈モードと同様に空気が流れる。つまり、室外から取り込まれた空気は、外気処理空調機(21)やHEPAフィルタ(27)によって無菌化され、顕熱空調機(23)やレヒートコイル(24)によって温度および湿度が調節される。そして、この調節された無菌空気が各処理室(2a,2b,2c)へ供給され、処理室(2a,2b,2c)の空気が室外へ排出される。したがって、定常モードの運転により、処理室(2a,2b,2c)の温度と湿度が設定値に維持されるとともに、無菌状態が維持される。
−単独運転−
次に、本実施形態の滅菌システム(1)は、何れかの処理室(2a,2b,2c)に対して単独で滅菌処理を行ったり、空調を行うことができる。
例えば、第2処理室(2b)のみを単独で滅菌処理する場合、第1滅菌ガス供給路(53)および第3滅菌ガス供給路(55)の遮断ダンパ(25)と、第1滅菌ガス戻し路(58)および第3滅菌ガス戻し路(61)の遮断ダンパ(63)がそれぞれ閉状態に設定される。この状態において、上述した準備モード〜第2稀釈モードの運転が順次行われる。この場合、例えば滅菌モードでは、図8に示す状態となる。滅菌側空調機(85)から滅菌ガス供給主流路(52)へ流れた滅菌ガスは、第2滅菌ガス供給路(54)のみを通って第2処理室(2b)へ供給される。そして、第2処理室(2b)の空気は、第2滅菌ガス戻し路(59)へ排出されて、滅菌ガス戻し主流路(57)から滅菌ガス循環流路(51)へ流れる。したがって、第2処理室(2b)に対してのみ滅菌ガスを供給することができ、単独で滅菌処理を行うことができる。
このように、処理室(2a,2b,2c)の各滅菌ガス供給路(53,54,55)および各滅菌ガス戻し路(58,59,61)に遮断ダンパ(56,63)を設けたので、その遮断ダンパ(56,63)を切り換えるだけで処理室(2a,2b,2c)の何れかを単独で滅菌処理することができる。したがって、滅菌処理の必要がない処理室(2a,2b,2c)まで対象としなくてもよいため、運転の煩雑化を避けることができる。また、過酸化水素発生部(110)における過酸化水素ガスの発生量は、第2処理室(2b)で必要な分だけですむ、即ち対象とする処理室(2a,2b,2c)の分だけですむ。したがって、過酸化水素発生部(110)において、無駄な過酸化水素ガスを発生させなくてもく、経済的な運転を行うことができる。
なお、定常モードでの空調運転についても同様である。つまり、処理室(2a,2b,2c)の各給気流路(12,13,14)および各排気流路(32,33,34)に遮断ダンパ(25,42)を設けたので、処理室(2a,2b,2c)の何れかに対して単独で空調運転を行うことができる。
−室圧制御−
次に、各処理室(2a,2b,2c)の室圧制御について説明する。
上述した準備モードから第2稀釈モードまでの運転中(以下、滅菌運転時という)には、コントローラ(120)の滅菌時制御部(122)によって処理室(2a,2b,2c)の室圧が制御される。また、定常モードの運転中(以下、定常運転時という)には、コントローラ(120)の定常時制御部(123)によって処理室(2a,2b,2c)の室圧が制御される。
滅菌運転時では、滅菌時制御部(122)によって、全ての処理室(2a,2b,2c)の室圧が同じ設定圧力(微陽圧:15〜20Pa)になるように各排気流路(32,33,34)の調節ダンパ(41)の開度が制御される。具体的に、この調節ダンパ(41)の開度は、上記設定圧力と圧力センサ(105)の検出値との偏差が第1所定量(例えば、所定値の10%)以上になると調節される。例えば、圧力センサ(105)の検出値が設定圧力よりその12%分だけ低い場合、その処理室(2a,2b,2c)に対応する調節ダンパ(41)の開度を小さくして処理室(2a,2b,2c)からの排気量を減少させる。これにより、処理室(2a,2b,2c)の室圧が上昇する。逆に、圧力センサ(105)の検出値が設定圧力よりその12%分だけ高い場合、その処理室(2a,2b,2c)に対応する調節ダンパ(41)の開度を大きくして処理室(2a,2b,2c)からの排気量を増大させる。これにより、処理室(2a,2b,2c)の室圧が低下する。また、圧力センサ(132)の検出値と設定圧力との偏差が第1所定量未満(例えば、設定圧力の8%)である場合、調節ダンパ(41)の開度は調節されない。このように、各処理室(2a,2b,2c)への給気量が定風量装置(26)によって一定制御されているため、各処理室(2a,2b,2c)からの排気量を変更することにより室圧が調節される。この室圧制御によって、処理室(2a,2b,2c)が微陽圧に維持されるので、外部からの菌類の侵入を防止することができる。
定常運転時では、定常時制御部(123)によって、第1処理室(2a)および第3処理室(2c)の室圧が第1設定圧力(微陽圧:15〜20Pa)になるように、第2処理室(2b)の室圧が第1設定圧力よりも高い第2設定圧力(微陽圧:35〜40Pa)になるように調節ダンパ(41)の開度が制御される。具体的に、全ての開閉扉(3)が閉状態である場合、この調節ダンパ(41)の開度は、滅菌時制御部(122)と同様に、上記設定圧力と圧力センサ(105)の検出値との偏差が第1所定量(例えば、所定値の10%)以上になると調節される。
ここで、例えば、第1処理室(2a)および第2処理室(2b)の間の開閉扉(3)が開くと、そのドアスイッチ(131)から検出信号が定常時制御部(123)へ入力される。入力されると、定常時制御部(123)は、特別モードで処理室(2a,2b,2c)の室圧制御を行う。具体的に、開閉扉(3)の開放直後、第1処理室(2a)用の調節ダンパ(41)の開度が数%増大され、第2処理室(2b)用の調節ダンパ(41)の開度が数%減少される。そうすると、第1処理室(2a)においては排気量が増大して室圧が低下する傾向になり、第2処理室(2b)においては排気量が減少して室圧が上昇する傾向になる。つまり、設定圧力の高い処理室(2b)の排気量を減少させ、設定圧力の低い処理室(2a)の排気量を増大させる。これにより、開閉扉(3)の開放直後において、第2処理室(2b)の室圧を第1処理室(2a)の室圧より高い状態に確実に維持することができる。したがって、第2処理室(2b)から第1処理室(2a)へ向かう空気流れ(気流)を確実に形成することができる。つまり、重要度(滅菌レベル)の高い第2処理室(2b)において、重要度(滅菌レベル)の低い第1処理室(2a)からの空気の侵入を防止できる。
この制御が行われない場合、開閉扉(3)の開放直後、室圧差によって一時的に第2処理室(2b)から第1処理室(2a)へ空気が流れるが、直ぐに双方の室圧が平衡状態になる。そうすると、第2処理室(2b)から第1処理室(2a)へ空気が侵入する恐れがあり、第2処理室(2b)の滅菌状態が損なわれる恐れがある。ところが、上記の制御を行うことにより、第2処理室(2b)の滅菌状態を確実に確保することができる。
次に、開閉扉(3)が開いてから所定時間が経過しても開閉扉(3)が未だ開いている場合、第1処理室(2a)および第2処理室(2b)のそれぞれに対応する調節ダンパ(41)の開度が圧力センサ(132)の検出値に基づいて制御される。具体的に、調節ダンパ(41)の開度は、設定圧力と圧力センサ(105)の検出値との偏差が上記第1所定量より大きい第2所定量(例えば、所定値の20%)以上になると調節される。つまり、圧力センサ(132)の検出値に基づく調節ダンパ(41)の開度制御の応答性が遅れ、処理室(2a,2b)の室圧が多少増減しても調節ダンパ(41)の開度が変化しないようにした。
ここで、設定圧力との偏差を第1所定量のままとした場合に生じる問題点について説明する。第2処理室(2b)から第1処理室(2a)へ空気が流れている状態では、第1処理室(2a)の室圧が第1設定圧力より高くなり、第2処理室(2b)の室圧が第2設定圧力より低くなっている。そうすると、第1処理室(2a)用の調節ダンパ(41)の開度が増大されて該第1処理室(2a)の室圧が低下し、第2処理室(2b)用の調節ダンパ(41)の開度が減少されて該第2処理室(2b)の室圧が上昇する。ところが、室圧差が生じても、その分だけ第2処理室(2b)から第1処理室(2a)へ向かう空気の流速が増大し、双方の室圧が設定圧力になかなか近づかない。したがって、第1処理室(2a)の調節ダンパ(41)の開度がさらに増大され、第2処理室(2b)の調節ダンパ(41)の開度がさらに減少され、最終的に調節ダンパ(41)の開度が最小開度または最大開度になる。この状態で開閉扉(3)が閉まると、第1処理室(2a)では過剰な陰圧状態に、第2処理室(2b)では過剰な高圧状態になってしまう。その結果、第1処理室(2a)においては菌類が侵入する恐れがあり、第2処理室(2b)においては作業環境の悪化を招く。また、開閉扉(3)の開放中は、第2処理室(2b)から第1処理室(2a)へ向かう過剰な空気流れが生じてしまい、やはり作業環境が悪化する。ところが、本実施形態のように、調節ダンパ(41)の開度制御の応答性を遅らすことにより、開閉扉(3)の開放中に調節ダンパ(41)の開度が極端に小さくまたは大きくなるのを抑制することができる。その結果、開閉扉(3)が閉じられた直後、処理室(2a,2b)において過度の高圧または低圧状態になるのを抑制することができ、菌類の侵入や作業環境の悪化を抑制できる。これは、開閉扉(3)の開放時間が長いほど、その抑制効果が大きい。
また、上述した特別モードの室圧制御は、室外に面する開閉扉(3)を開いた場合も同様に行われる。例えば、第1処理室(2a)の室外に面する開閉扉(3)が開くと、第1処理室(2a)用の調節ダンパ(41)の開度が数%減少される。そうすると、第1処理室(2a)において、排気量が増大して室圧が上昇する傾向になる。したがって、開閉扉(3)の開放直後において、第1処理室(2a)から室外へ排出する空気流れ(気流)が確実に形成される。これにより、第1処理室(2a)における菌類の侵入を防止でき、滅菌状態を確保できる。そして、調節ダンパ(41)の開度が数%減少してから所定時間が経過すると、第1処理室(2a)用の調節ダンパ(41)が圧力センサ(132)の検出値に基づいて制御される。このままでは、調節ダンパ(41)の開度が次第に減少されて最小開度になってしまうが、調節ダンパ(41)の制御応答性を遅らしているため、それを抑制することができる。これにより、開閉扉(3)が閉じられた直後、第1処理室(2a)が過度の高圧状態になるのを抑制でき、作業環境の悪化を抑制できる。
〈PB単独滅菌モード〉
コントローラ(120)のモード切換部(121)は、定常運転時において、適宜、PB単独滅菌モードに切り換えることができる。
このPB単独滅菌モードは、第2処理室(2b)および第3処理室(2c)において定常運転が行われつつ、第1処理室(2a)において単独で滅菌運転が行われるものである。例えば、このモードは、外部から第1処理室(2a)へ搬入した機材等に対して滅菌処理を行うためのものである。この場合、機材の確実な滅菌を図るため、単に第1処理室(2a)へ滅菌ガスを供給するだけでは足りず、滅菌ガスを機材の隙間等に行き渡らせることが重要である。このモードでは、その点を考慮した特別な運転が行われる。
具体的に、このモードは、滅菌ガス発生器(81)の滅菌ガスを第1処理室(2a)のみへ供給し、第1処理室(2a)内の過酸化水素の濃度を目標濃度にし、その後過酸化水素の濃度を所定範囲(例えば、目標濃度−10%〜目標濃度+10%)内で所定時間維持する運転である。そして、目標濃度は、上述した滅菌モードにおける目標濃度(300ppm)よりも高濃度(例えば、800ppm)に設定されている。これにより、搬入した機材の滅菌効果を高めている。
図9に示すように、PB単独滅菌モードは、定常モードの状態から、第1給気流路(12)および第1排気流路(32)の各遮断ダンパ(25,42)が閉状態に設定される。これにより、第1処理室(2a)が空調系統回路(5)から独立する。また、滅菌系統回路(50)において、第4滅菌ガス供給路(68)および滅菌ガス排出路(69)の各遮断ダンパ(68,79,94)が開状態に設定される。この状態において、外気処理空調機(91)、滅菌ガス発生器(81)における温湿度調整部(114)と過酸化水素発生部(110)、滅菌ガス供給ファン(89)および滅菌ガス排気ファン(87)が運転される。
上記の状態において、外気処理空調機(91)から滅菌ガス発生器(81)へ供給された空気は、温湿度調整部(114)で温度および湿度が調整され、過酸化水素発生部(110)から過酸化水素ガスが付与されて滅菌ガスとなる。この滅菌ガスは、滅菌ガス供給路(53,54,55)を通って第1給気流路(12)へ流れ、定風量装置(26)およびHEPAフィルタ(27)を通過して第1処理室(2a)へ供給される。第1処理室(2a)の空気は、第1排気流路(32)とPB用循環流路(95)とに排出される。第1排気流路(32)へ排出された空気は、滅菌ガス排出路(69)へ流れ、過酸化水素分解器(83)で過酸化水素が分解除去された後、室外へ排出される。PB用循環流路(95)へ排出された空気は、ミキシングボックス(88)へ流れ、滅菌ガス発生器(81)からの滅菌ガスと混合する。混合した滅菌ガス(空気)は、再び、第1給気流路(12)から第1処理室(2a)へ供給され、この循環を繰り返す。そして、第1処理室(2a)内の過酸化水素濃度が目標濃度(800ppm)に達し、その後目標濃度を維持しながら所定時間運転されると滅菌運転が終了する。なお、この運転の際、滅菌時制御部(122)は、第1処理室(2a)の室圧が設定圧力(微陽圧:15〜20Pa)になるように、第1排気流路(32)の調節ダンパ(41)の開度を制御する。
この運転の特徴として、上述した定常モードや滅菌モード時よりも大風量の滅菌ガスが第1処理室(2a)へ供給されるように、滅菌ガス供給ファン(89)が制御されている。そして、供給された滅菌ガスの大部分がPB用循環流路(95)へ排出される。つまり、第1処理室(2a)において滅菌ガスの換気量が増大する。この高濃度且つ大風量の滅菌ガスの換気作用により、滅菌ガスが確実に機材の隙間に行き渡り、滅菌効果が高められる。
さらに、この運転では、滅菌ガス供給ファン(89)が連続運転ではなく間欠運転が行われる。つまり、滅菌ガス供給ファン(89)は、大風量運転および停止が所定時間毎に交互に繰り返される。これにより、第1処理室(2a)において、滅菌ガスが間欠的に供給され、滅菌ガスの脈動が生じる。この脈動効果により、第1処理室(2a)における滅菌ガスの拡散が促進される。したがって、滅菌効果が一層高められる。
また、この滅菌ガスの拡散が促進されることにより、第1処理室(2a)の過酸化水素濃度が早く目標濃度に達する。したがって、第1処理室(2a)は、頻繁に機材の搬入等が行われるため、頻繁に滅菌運転を行う必要があるが、運転を短時間で終了させることができ、頻繁に行うことの煩わしさを解消することができる。
また、本実施形態では、PB用循環流路(95)によって滅菌ガスを循環させるようにしている。つまり、第1処理室(2a)において、滅菌ガスの過酸化水素ガスの一部は分解して滅菌ガス排出路(69)へ排出されるが、残りの過酸化水素ガスはPB用循環流路(95)を通って再び第1処理室(2a)へ供給される。したがって、PB用循環流路(95)による滅菌ガスの循環量の分だけ、滅菌ガス発生器(81)における滅菌ガスの生成量、また外気処理空調機(91)における外気の取り込み量も少なくてすむ。その結果、低コストな運転が可能となる。
なお、図示しないが、この滅菌運転の前には、上述した準備モードに相当する準備運転が行われる。この準備運転は、滅菌ガス発生器(81)の過酸化水素発生部(110)が停止され、他は上記滅菌運転と同じ状態で行われる。つまり、滅菌運転の効果を高めるため、滅菌ガス発生器(81)の温湿度調整部(114)で温度および湿度が調整された空気を第1処理室(2a)へ供給し、第1処理室(2a)の温度および相対湿度を目標値(25℃、20%)にする。また、図示しないが、滅菌運転の終了後には、上述した第1および第2稀釈モードに相当する稀釈運転が行われる。この稀釈運転は、上記準備運転時と同じ状態で行われる。そして、この稀釈運転が終了すると、滅菌系統回路(50)の運転を停止すると共に、第1給気流路(12)および第1排気流路(32)の各遮断ダンパ(25,42)が開状態に設定され、第1処理室(2a)に対して定常運転が復帰される。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、開閉扉(3)の開放直後は、強制的に、設定室圧の高い処理室(2a,2b,2c)の排気量を減少させ、設定室圧の低い処理室(2a,2b,2c)の排気量を増大させるようにした。これにより、設定室圧の高い処理室(2a,2b,2c)から設定室圧の低い処理室(2a,2b,2c)へ確実に空気を流すことができる。したがって、開閉扉(3)の開放直後に両処理室(2a,2b,2c)の室圧が平衡して設定室圧の低い処理室(2a,2b,2c)から設定室圧の高い処理室(2a,2b,2c)へ空気が流れる状態を回避することができる。その結果、設定室圧の高い処理室(2a,2b,2c)の滅菌レベルの低下を防止でき、室圧制御の信頼性を向上させることができる。
さらに、開閉扉(3)の開放中において、処理室(2a,2b,2c)の室圧に対する調節ダンパ(41)の制御の応答性を遅くしたので、調節ダンパ(41)の開度が通常制御時よりも過度に最小または最大となるのを回避できる。これにより、開閉扉(3)の閉鎖後、処理室(2a,2b,2c)の室圧が過度の低圧状態または高圧状態になるのを防止することができる。その結果、処理室(2a,2b,2c)における菌類の侵入や作業環境の悪化を防止できる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態では、処理室(2a,2b,2c)が3室の場合について説明したが、2室または4室以上の場合でも本発明は適用される。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。