以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態である駆動装置を説明するための分解斜視図、図2は組立完成状態の駆動装置の軸方向に沿う断面図、図3はマグネットの着磁状態を示す図である。
図1および図2に示すように、この駆動装置は、第1のステータヨーク1A、第2のステータヨーク1B、第1のコイル2A、第2のコイル2B、第1のマグネット3A、第2のマグネット3B、支持バー4、およびスライダヨーク5を備えている。
第1のステータヨーク1Aは、軟磁性材料から形成され、底部に中心孔を有する有底円筒状の天板部1A2と、天板部1A2の中心孔の反対側の端部に同軸上に連設された略半円筒状の磁極部1A1とを有している。磁極部1A1と天板部1A2とは略同一径とされており、また、磁極部1A1は中心角が180°以下とされている。
第2のステータヨーク1Bは、軟磁性材料から形成され、底部に中心孔を有する有底円筒状の天板部1B2と、天板部1B2の中心孔の反対側の端部に同軸上に連設された略半円筒状の磁極部1B1とを有している。磁極部1B1と天板部1B2とは略同一径とされており、また、磁極部1B1は中心角が180°以下とされている。第2のステータヨーク1Bと第1のステータヨーク1Aは軸方向に互いに対向配置され、且つ磁極部1B1と磁極部1A1とが周方向に並べて配置される。
第1のコイル2Aは、導線が環状に巻回されたものであり、スライダヨーク5の磁極部を励磁する。第1のコイル2Aは、ステータヨーク1A,1Bと同軸に配置され、その外径はステータヨーク1A,1Bの内径に略等しい寸法に設定されている。
第2のコイル2Bは、導線が環状に巻回されたものであり、スライダヨーク5の磁極部を励磁する。第2のコイル2Bは、第1のコイル2Aと同形状であり、抵抗値、巻き数もほぼ等しい。また、第2のコイル2Bは、ステータヨーク1A,1Bと同軸に配置され、その外径はステータヨーク1A,1Bの内径に略等しい寸法に設定されている。
第1のマグネット3Aは、略半円筒状に形成されており、その外径は第1のコイル2Aの外径と略同径とされ、内径は第1のコイル2Aの内径と略同径とされている。また、第1のマグネット3Aは、中心角が180°以下とされている。
第1のマグネット3Aは、内周面に第1の着磁部を備えている。着磁部のパターンについては後述する。また、第1のマグネット3Aの外周面は、内周面に比べ弱い着磁分布を有するか、まったく着磁されていないか、あるいは内周面と逆の極性に着磁されているかのいずれかである。
第2のマグネット3Bは、略半円筒状に形成されており、その外径は第2のコイル2Bの外径と略同径とされ、内径は第2のコイル2Bの内径と略同径とされている。また、第2のマグネット3Bは、中心角が180°以下とされており、第1のマグネット3Aと周方向に並べて配置される。
第2のマグネット3Bは、内周面に第2の着磁部を備えている。着磁部のパターンについては後述する。また、第2のマグネット3Bの外周面は、内周面に比べ弱い着磁分布を有するか、まったく着磁されていないか、あるいは内周面と逆の極性に着磁されているかのいずれかである。
支持バー4は、非磁性材料からなる、軸方向に延びる棒状の部材であり、スライダヨーク5の内径部に嵌合することでスライダヨーク5を軸方向へ移動可能に支持する。
ここで、図2に示すように、第1のステータヨーク1Aの磁極部1A1の内側に第1のコイル2Aおよび第1のマグネット3Aを固定する。また、第2のステータヨーク1Bの磁極部1B1の内側に第2のコイル2Bおよび第2のマグネット3Bを固定する。そして、第1のステータヨーク1Aの磁極部1A1と第2のステータヨーク1Bの磁極部1B1とが中心軸を挟んで径方向に向き合うように配置する。この状態で、不図示の固定手段によって支持バー4をステータヨーク1A,1B5と同軸に固定することにより、駆動装置の固定子を構成する。
スライダヨーク5は、軟磁性材料から形成されており、略円筒状をなして、外周部に多条ネジ形状の磁極部51を有する。また、スライダヨーク5は回転止め52を有しており、マグネット3A,3Bに対しての回転方向の運動が規制されている。スライダヨーク5の軸方向の長さは、少なくとも駆動装置に求められている移動量に、固定子の長さを加えた長さである。スライダヨーク5の磁極部51の多条ネジの条数は、第1および第2のマグネット3A,3Bの極数nの半分となっている。
磁極部51の多条ネジのネジ山部の外径は、第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bの内径よりもわずかに小さく設定されている。また、磁極部51のリード角は、第1のマグネット3aおよび第2のマグネット3Bの内周面に形成された着磁部のリード角と同じに設定されている。
スライダヨーク5の内径は、支持バー4の外径に略等しい寸法に設定されている。これにより、スライダヨーク5は、支持バー4を介してステータヨーク1A,1Bに対して軸方向に移動可能に支持される。
スライダヨーク5が支持バー4に支持されると、スライダヨーク5の磁極部51は第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bの着磁面とわずかな空隙を隔てて対向する。これにより、磁気回路の抵抗を安定して小さくすることができ、駆動装置の駆動効率を上げている。
ここで、図3を参照して、第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bの着磁部の着磁パターンについて説明する。
図3は、第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bを、周方向に展開したものを内周側より見た展開図である。
第1のマグネット3Aに設けられた第1の着磁部の着磁パターンを説明するために、まず、円筒状の第1の仮想マグネットを考える。この第1の仮想マグネットの内周面は、螺旋状にn分割された着磁部となっており、S極とN極が交互に着磁されている。このときのnはスライダヨーク5の磁極部51の条数の2倍であり、第1の仮想マグネットの螺旋状着磁部のリード角はスライダヨーク5の磁極部51のリード角に等しい。
この第1の仮想マグネットを軸方向に沿って分割し、半円筒状に形成したものが第1のマグネット3Aである。
次に、第2のマグネット3Bに設けられた第2の着磁部の着磁パターンを説明するために、円筒状の第2の仮想マグネットを考える。第2の仮想マグネットは第1の仮想マグネットと同様、内周面は螺旋状にn分割された着磁部となっており、S極とN極とが交互に着磁されている。このときのnはスライダヨーク5の磁極部51の条数の2倍であり、第2の仮想マグネットの着磁部の螺旋のリード角はスライダヨーク5の磁極部51のリード角に等しい。また、第2の仮想マグネットの着磁部の位相は第1の仮想マグネットの着磁部に対して所定の位相差がつけられている。所定の位相差とは、着磁ピッチの1/4(電気角で90°)を基本とし、磁気回路同士の干渉を避けるためにその値から数%ずらす場合もある。
この第2の仮想マグネットを軸方向に沿って分割し、半円筒状に形成したものが第2のマグネット3Bである。
次に、上記構成の駆動装置においてスライダヨーク5をステータヨーク1A,1Bに対して軸方向に移動させる駆動原理を説明する。
まず、第1のコイル2Aおよび第2のコイル2Bに電流を流したときに形成される磁路について説明する。
図4はコイルへの通電によって発生した磁束の流れを説明するための断面図、図5はコイルへの通電によって発生した磁束を周方向に展開して外側より見た展開図であり、紙面に対して垂直に通る磁束を記号を用いて表している。なお、図5ではコイルによって発生する磁束のみを表示するため、第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bの図示は省略する。また、図5に示す矢印はコイルに通電する電流を示している。
第1のコイル2Aに通電すると、アンペールの法則にしたがって図4および図5に示すような磁束が発生する。
図4中、磁束A1として示すループは、スライダヨーク5の磁極部51、第1のマグネット3A、第1のステータヨーク1Aの磁極部1A1、第1のステータヨーク1Aの天板部1A2、スライダヨーク5の磁極部51と一周する。
また、磁束A2として示すループは、スライダヨーク5の磁極部51、第2のマグネット3B、第1のステータヨーク1Aの天板部1A2、スライダヨーク5の磁極部51と一周する。
磁束A1は磁束A2に比べて磁気抵抗が大幅に低いため、第1のコイル2Aによって発生する磁束の大部分は、磁束A1側に集中する。その結果、第1のコイル2Aに通電することで、スライダヨーク5の磁極部51が第1のマグネット3Aと対向する部分を励磁することができる。
同様に、第2のコイル2Bに通電すると、アンペールの法則にしたがって図4および図5に示すような磁束が発生する。
図4中、磁束B1として示すループは、スライダヨーク5の磁極部51、第2のステータヨーク1Bの天板部1B2、第2のステータヨーク1Bの磁極部1B1、第2のマグネット3B、スライダヨーク5の磁極部51と一周する。
また、磁束B2として示すループは、スライダヨーク5の磁極部51、第2のステータヨーク1Bの天板部1B2、第1のマグネット3A、スライダヨーク5の磁極部51と一周する。
磁束B1は磁束B2に比べて磁気抵抗が大幅に低いため、第2のコイル2Bによって発生する磁束の大部分は、磁束B1側に集中する。その結果、第2のコイル2Bに通電することで、スライダヨーク5の磁極部51が第2のマグネット3Bと対向する部分を励磁することができる。
次に、図6〜図9を参照して、第1のコイル2Aおよび第2のコイル2Bに通電することで励磁されたスライダヨーク5の動作例について説明する。
図6は、第1のコイル2Aに正通電をしてスライダヨーク5の磁極部51の第1のマグネット3Aの対向箇所をS極に励磁し、第2のコイル2Bに正通電をしてスライダヨーク5の磁極部51の第2のマグネット3Bの対向箇所をS極に励磁した状態を示している。
スライダヨーク5のS極に励磁された磁極部51と、第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bとの磁気的なバランスにより、図6の位置でスライダヨーク5は安定する。
図7は、第1のコイル2Aに逆通電をしてスライダヨーク5の磁極部51の第1のマグネット3Aの対向箇所をN極に励磁し、第2のコイル2Bに正通電をしてスライダヨーク5の磁極部51の第2のマグネット3Bの対向箇所をS極に励磁した状態を示している。
スライダヨーク5のN極およびS極に励磁された磁極部51と、第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bとの磁気的なバランスにより、図7の位置でスライダヨークは安定する。図7のスライダヨーク5の位置は、図6の位置からマグネット3A,3Bの軸方向ピッチ(図3に示すS=P/sinθ)の1/4だけ進んだ位置である。
図8は、第1のコイル2Aに逆通電をしてスライダヨーク5の磁極部51の第1のマグネット3Aの対向箇所をN極に励磁し、第2のコイル2Bに逆通電をしてスライダヨーク5の磁極部51の第2のマグネット3Bの対向箇所をN極に励磁した状態を示している。
スライダヨーク5のN極に励磁された磁極部51と、第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bとの磁気的なバランスにより、図8の位置でスライダヨーク5は安定する。図8のスライダヨーク5の位置は、図6の位置からマグネット3A,3Bの軸方向ピッチ(図3に示すS=P/sinθ)の2/4だけ進んだ位置である。
図9は、第1のコイル2Aに正通電をしてスライダヨーク5の磁極部51の第1のマグネット3Aの対向箇所をS極に励磁し、第2のコイル2Bに逆通電をしてスライダヨーク5の磁極部51の第2のマグネット3Bの対向箇所をN極に励磁した状態を示している。
スライダヨーク5のS極およびN極に励磁された磁極部51と、第1のマグネット3Aおよび第2のマグネット3Bとの磁気的なバランスにより、図9の位置でスライダヨーク5は安定する。図9のスライダヨーク5の位置は、図6の位置からマグネット3A,3Bの軸方向ピッチ(図3に示すS=P/sinθ)の3/4だけ進んだ位置である。
このように、第1のコイル2Aおよび第2のコイル2Bへの通電方向を順次切り替えることにより、スライダヨーク5をマグネット3A,3Bの軸方向ピッチの1/4ずつ、ステータヨーク1A,1Bに対して軸方向に移動させることができる。
上記のように構成された本実施の形態の駆動装置は、以下に示す効果を奏する。
即ち、本実施の形態によれば、スライダヨーク5の磁極部51を多条ねじ形状で構成しているため、転造などの大量生産に適した加工法によって、スライダヨーク5を安価に精度良く製造することができる。
また、従来のように軸方向に長いマグネットを用いた場合、駆動装置の移動精度はマグネットの着磁のばらつきによって決定される。しかし、螺旋状のマグネットをばらつきなく着磁させるのは困難であった。これに対し、本実施の形態では、駆動装置の移動精度はスライダヨーク5の磁極部51の加工精度で決まる。これにより、マグネットの着磁パターンに比べて管理が容易となり、精度良く管理の容易な駆動装置とすることができる。
さらに、従来の駆動装置のように固定子よりも長いマグネットを用いると、駆動装置の外部に磁場が漏れ、外部の機器に悪影響を与えることがあった。これに対し、本実施の形態で用いるマグネット3A,3Bは、固定子よりも短く、ステータヨーク1A,1Bで覆われているため、外部に漏れる磁束が少なく、外部の機器に与える影響が少ない。
また、本実施の形態では、半円筒形状のマグネット3A,3Bを用いている。円筒状のマグネットの内周部を着磁する場合、内周部に着磁ヨークと着磁コイルを設置する必要がある。しかし、着磁ヨークやコイルの大きさは決まっているため、磁石を小径化していくと、その内周部に着磁ヨークと着磁コイルとを設置することができず、ある一定以下の径のマグネットを内周に着磁することは困難である。これに対し、本実施の形態で用いる半円筒形状のマグネット3A,3Bでは、開放された側に着磁ヨークと着磁コイルを設置することができ、円筒状のマグネットでは着磁できない小径のマグネットでも製造することができる。
さらに、本実施の形態では、スライダヨーク5の着磁部を多条ねじ形状とすることで、スライダヨーク5の磁極部51およびマグネット3A,3Bのリード角θを大きくすることが容易となる。
さらに、ステータヨーク1A,1Bとスライダヨーク5との間に発生する力をFとすると、軸方向の移動に使われる力の成分はFsinθとなる。また、1ステップでの移動量はP/(4sinθ)である。このため、θは大きければ大きいほど強い力を発生し、1ステップあたりの移動量も小さくできるようになる。
さらに、従来のように、径方向に延びる磁極歯を有するステータを用いる場合、形状が複雑になり、コイルの巻回も不可能になるため、θを大きくするには限界があった。これに対し、本実施の形態のように多条ねじ形状のスライダヨーク5を用いると、磁極部51にコイルを巻く必要がなく、また、スライダヨーク1A,1Bも簡単な形状になるため、θを大きくすることができる。この結果、駆動装置の駆動力を大きくし、分解能を細かくすることが可能となる。
さらに、本実施の形態では、コイル2A,2Bとマグネット3A,3Bとを同軸上に軸方向に並べて配置している。このため、駆動装置の径方向の大きさを最低で(スライダヨーク5の磁極部51の厚さ)+(マグネット3A,3Bの厚さ)+(ステータヨーク1A,1Bの厚さ)とすることができ、きわめて径の小さい駆動装置とすることができる。
さらに、本実施の形態では、半円筒形状である第1のマグネット3Aと第2のマグネット3Bとを周方向に並べて配置しているため、円筒形状のマグネットを軸方向に並べる配置に比べ、マグネットの長さの分だけ短軸化することができる。
次に、図10〜図13を参照して、本発明の第2の実施の形態である駆動装置について説明する。
図10は、本発明の第2の実施の形態であるレンズ駆動装置を説明するための分解斜視図、図11は組立完成状態のレンズ駆動装置の軸方向に沿う断面図である。
図10および図11に示すように、このレンズ駆動装置は、第1のステータヨーク11A、第2のステータヨーク11B、第1のコイル12A、および第2のコイル12Bを備える。また、このレンズ駆動装置は、マグネット13、支持バー14A、回転止めバー14B、スライダヨーク15、支持バー嵌合部16、およびレンズ17を備える。
第1のステータヨーク11Aは、軟磁性材料から形成され、短円筒状の天板部11A3と、該天板部11A3の端部から軸方向に延びる一対の磁極部11A1,11A2とを有している。磁極部11A1,11A2は、中心角が90°以下の円弧板状に形成されて、天板部11A3の円周方向に互いに180°離間して配置されている。
第2のステータヨーク11Bも同様に軟磁性材料から形成され、短円筒状の天板部11B3と、該天板部11B3の端部から軸方向に延びる一対の磁極部11B1,11B2とを有している。磁極部11B1,11B2は、中心角が90°以下の円弧板状に形成されて、天板部11B3の円周方向に互いに180°離間して配置されている。
第1のコイル12Aは、銅線が環状に巻回されたものであり、スライダヨーク15の磁極部151を励磁する。第1のコイル12Aは、第1のステータヨーク11Aと同軸に配置され、その外径はステータヨーク11Aの内径と略同径とされている。
第2のコイル12Bも同様に、銅線が環状に巻回されたものであり、スライダヨーク15の磁極部151を励磁する。第2のコイル12Bは、第2のステータヨーク11Bと同軸に配置され、その外径はステータヨーク12Bの内径と略同径とされている。また、第2のコイル12Bおよび第1のコイル12Aは、共に形状、巻き数、抵抗が同一とされている。
マグネット13は、円筒状に形成され、その内外径は第1のコイル12Aと略同径とされている。また、マグネット13は、内周面に着磁部を有しており、外周面は全く着磁されていないか、内周面に比べ弱い着磁分布を有するか、あるいは内周面と逆の極性に着時されているかのいずれかである。なお、マグネット13の着磁部の着磁パターンについては後述する。
支持バー14Aおよび回転止めバー14Bは、いずれも非磁性材料から形成され、軸方向に延びる棒状の部材である。
ここで、第1のステータヨーク11Aの磁極部11A1,11A2の内側に第1のコイル12A、およびマグネット13を固定する。また、第2のステータヨーク11Bの磁極部11B1,11B2の内側に第2のコイル12B、およびマグネット13を固定する。このとき、第1のステータヨーク12Aの磁極部11A1,11A2と第2のステータヨーク12Bの磁極部11B1,11B2とは、円周方向に互いに90°位相をずらして配置する(図12参照)。そして、不図示の固定手段によって支持バー14Aと回転止めバー14Bをステータヨーク11A,11Bに固定することにより、駆動装置の固定子を構成する。
スライダヨーク15は、軟磁性材料から形成されており、略円筒形状をなして、外周部に多条ネジ形状の磁極部151が設けられている。スライダヨーク5の軸方向の長さは、少なくとも駆動装置に求められている移動量に固定子の長さを加えた長さとされている。磁極部151の多条ネジのネジ山部の外径は、マグネット13の内径よりもわずかに小径に設定され、磁極部151のリード角はマグネット13の着磁部のリード角と同じに設定されている。
また、スライダヨーク15には、回転止めバー14Bが嵌合する回転止め部152が設けられている。スライダヨーク15の内周部には、レンズ17などの光学部材が固定され、これにより、カメラなどのレンズ鏡筒として用いることができる。
支持バー嵌合部16は、支持バー14Aと嵌合する2つの穴を有しており、支持バー14Aに沿って軸方向に移動可能とされている。支持バー14Aの軸方向長さは、最低でも駆動装置に求められている移動量に固定子の軸方向長さを加えた長さとされている。
そして、スライダヨーク15の内周部にレンズ17を固定し、スライダヨーク15の外周部に支持バー嵌合部16を固定することで、駆動装置の移動子を構成する。
その際、スライダヨーク15の外周部に固定子を配置したのちに、支持バー嵌合部16が固定子を軸方向に挟むようにスライダヨーク15と支持バー嵌合部16を固定する。これにより、移動子を固定子に対して軸方向に移動可能に支持している。また、回転止め部152に回転止めバー14Bを嵌合することにより、移動子の固定子に対しての回転運動が規制される。
次に、図12および図13を参照して、マグネット13の着磁部の着磁パターンについて説明する。
図12および図13に示すように、マグネット13の内周部には4つの領域13A,13B,13C,13Dが配置され、各領域13A〜13Dは非着磁部13Eによって区画されている。図12に示すように、領域13Aは第1のステータヨーク11Aの磁極部11A1の内側に配置され、領域13Bは第2のステータヨーク11Bの磁極部11B1の内側に配置されている。また、領域13Cは第1のステータヨーク11Aの磁極部11A2の内側に配置され、領域13Dは第2のステータヨーク11Bの磁極部11B2の内側に配置されている。
図13に示すように、それぞれの領域13A〜13Dは螺旋状の着磁部を有しており、該着磁部にはS極とN極とが交互に着磁されている。このときの螺旋状の着磁部のピッチ(N極から次のN極までの距離)はスライダヨーク15の磁極部151のピッチと等しく設定されている。また、領域13A〜13Dの着磁部のリード角はスライダヨーク15の磁極部151のリード角と等しく設定されている。
図13に示すように、領域13Cは領域13Aと同じ位相差であり、領域13Bおよび領域13Dは領域13Aに対して所定の位相差をつけて配置される。所定の位相差とは、着磁ピッチの1/4(電気角で90°)を基本とし、磁気回路同士の干渉を避けるためにその値から数%ずらす場合もある。領域13Aおよび領域13Cは、第1の着磁パターンとされ、領域13Bおよび領域13Dは第2の着磁パターンとされる。
なお、第1の着磁パターン、および第2の着磁パターンはそれぞれ3箇所以上に分割可能であるが、その場合は力の発生に関与しない非着磁部13Eの個数が増えてしまう。したがって、第1の着磁パターン、第2の着磁パターンをそれぞれ2箇所に分割して配置するのが望ましい。
次に、第1のコイル12Aおよび第2のコイル12Bに通電することで励磁されたスライダヨーク15の動作例について説明する。
第1のコイル12Aに通電すると、スライダヨーク15の磁極部151の第1のステータヨーク11Aの磁極部11A1,11A2に対向する箇所(図12のB部)が励磁される。励磁する極は、第1のコイル12Aへの通電の方向を切り替えることにより選択することができる。
第2のコイル12Bに通電すると、スライダヨーク15の磁極部151の第2のステータヨーク11Bの磁極部11B1,11B2に対向する箇所(図12のA部)が励磁される。励磁する極は、第2のコイル12Bへの通電の方向を切り替えることにより選択することができる。
ステータヨーク11A,11Bの磁極部11A1,11A2,11B1,11B2を励磁すると、スライダヨーク15は対向するマグネット13の磁気的な安定位置まで移動する。上記第1の実施の形態と同様に、コイルへの通電方向を順次切り替えていくことにより、スライダヨーク15を固定子に対して軸方向に移動させることができる。
上記のように構成された本実施の形態のレンズ駆動装置は、以下に示す効果を奏する。
即ち、スライダヨーク15を円筒形状とすることができるので、スライダヨーク15の内周部にレンズ17等の光学部品を配置できるほか、センサや他の駆動装置などの部品を用途に応じて配置することができ、装置全体の小型化に役立つ。
また、スライダヨーク15の内周部にレンズ17を配置させた場合、同じ厚さのマグネットを利用するとマグネットや磁極部の径は上記第1の実施の形態よりも大きくなる。径が大きくなると、磁極部の螺旋形状のピッチが同じであればリード角を大きくすることができる。前述のように、リード角が大きいと駆動装置の出力を大きくすることができ、分解能を細かくすることができる。
さらに、1つのマグネット13の内周部に第1の着磁パターンと第2の着磁パターンとを形成しているので、上記第1の実施の形態のように、それぞれの着磁パターンを別のマグネットに形成する場合に比べて部品点数を減らすことができる。これにより、組み立て工数の削減や組み立て誤差による品質のばらつきを減少させることができる。
さらに、マグネット13の内周部に第1の着磁パターン、第2の着磁パターンをそれぞれ複数設け、回転軸を中心として均等に配置すると、第1のコイル12Aに通電したときに発生する力は、スライダヨーク15の軸線を中心として複数箇所で働く。このため、スライダヨーク15の傾きなどにつながらず、スムーズな移動を確保することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記第1、第2の実施の形態では、ステータヨーク11A,11Bの内周側に雄ねじ形状の磁極部を有するスライダヨーク15を内周側に配置したが、ステータヨークの外周側に雌ねじ形状の磁極部を有するスライダヨークを配置するようにしてもよい。このようにすると、外周着磁のマグネットを利用することができる。外周着磁は内周着磁よりも容易なため、マグネットの小型化、および駆動装置の高効率化に有利である。
また、上記第2の実施の形態では、レンズを駆動する駆動装置を例示したが、これに限定されず、例えば、工作機械の各種機構の位置決め、自動車のスライド式シートなどの駆動装置に本発明を適用することができる。