以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る駆動装置としてのステッピングモータの構成を示す断面図であり、図2は、ステッピングモータを側面から見た場合の構成を示す側面図である。
図1及び図2において、ステッピングモータは、マグネット101、出力軸102、第1のヨーク103、第2のヨーク104、第1のコイル105、第1のボビン106、第1のケース107、第1の軸受108を備えている。更に、ステッピングモータは、第3のヨーク109、第4のヨーク110、第2のコイル111、第2のボビン112、第2のケース113、第2の軸受114、スペーサ115、ガイド部116を備えている。
マグネット101は、円筒形状に形成されており、外周面が周方向に分割されると共に軸方向に沿ってN極とS極がスパイラル形状になるように着磁されている。
出力軸102は、マグネット1の内径部に圧入されマグネット101と一体に固定されることにより、ロータを形成している。また、出力軸102は、第1の軸受108と第2の軸受114によって回転可能に支持されている。
第1のヨーク103は、電磁軟鉄等の軟磁性材料から形成されており、マグネット101の着磁面に対向して軸方向に延出された複数の磁極歯を備えている。
第2のヨーク104は、電磁軟鉄等の軟磁性材料から形成されており、マグネット101の着磁面に対向して軸方向に延出された複数の磁極歯を備えている。
ここで、第1のヨーク103及び第2のヨーク104の各磁極歯は、マグネット101の着磁極の中心線に沿って延出されている。
第1のコイル105は、第1のボビン106に導線を巻回したものであり、マグネット101に対し略同心の位置で、マグネット101の外周面の外側に配置されている。第1のコイル105は、第1のヨーク103及び第2のヨーク104を励磁する。
第1のボビン106は、絶縁材料から形成されており、第1のコイル105の導線が巻回されると共に、マグネット101に対し略同心の位置で、第1のヨーク103と第2のヨーク104に固定されている。また、第1のボビン106は、第1のコイル105の導線を接続する(からげる)ための端子ピンを備えている。
第1のケース107は、電磁軟鉄等の軟磁性材料から形成されており、第1のヨーク103と第2のヨーク104が所定の位相となるように両ヨークを固定している。また、第1のケース107は、出力軸102に直交する外側方向に延出されたキー107aを備えている。キー107aは、後述するガイド部116のキー溝116aと嵌合することにより、回転止めとなる。
第1の軸受108は、第1のケース107に固定されると共に出力軸102の外周部に装着されており、出力軸102を滑らかに回転摺動させる。
上述した、第1のヨーク103、第2のヨーク104、第1のコイル105、第1のボビン106、第1のケース107、第1の軸受108により、第1のステータ部を構成している。
第3のヨーク109は、電磁軟鉄等の軟磁性材料から形成されており、マグネット101の着磁面に対向して軸方向に延出された複数の磁極歯を備えている。
第4のヨーク110は、電磁軟鉄等の軟磁性材料から形成されており、マグネット101の着磁面に対向して軸方向に延出された複数の磁極歯を備えている。
ここで、第3のヨーク109及び第4のヨーク110の各磁極歯は、マグネット101の着磁極の中心線に沿って延出されている。
第2のコイル111は、第2のボビン112に導線を巻回したものであり、マグネット101に対し略同心の位置で、マグネット101の外周面の外側に配置されている。第2のコイル111は、第3のヨーク109及び第4のヨーク110を励磁する。
第2のボビン112は、絶縁材料から形成されており、第2のコイル111の導線が巻回されると共に、マグネット101に対し略同心の位置で、第3のヨーク109と第4のヨーク110に固定されている。また、第2のボビン112は、第2のコイル111の導線を接続する(からげる)ための端子ピンを備えている。
第2のケース113は、電磁軟鉄等の軟磁性材料から形成されており、第3のヨーク109と第4のヨーク110が所定の位相となるように両ヨークを固定している。また、第2のケース113は、出力軸102に直交する外側方向に延出されたキー113aを備えている。キー113aは、後述するガイド部116のキー溝116aと嵌合することにより、回転止めとなる。
第2の軸受114は、第2のケース113に固定されると共に出力軸102の外周部に装着されており、出力軸102を滑らかに回転摺動させる。
上述した、第3のヨーク109、第4のヨーク110、第2のコイル111、第2のボビン112、第2のケース113により、第2のステータ部を構成している。
スペーサ115は、リング状に形成されており、第1のケース107と第2のケース113との間に配置され、第1のステータ部と第2のステータ部との間の軸方向の相対位置を決定している。第1のヨーク103及び第2のヨーク104と、第3のヨーク109及び第4のヨーク110とは、スペーサ115を境にして軸方向の両側にそれぞれ配置されている。
ガイド部116は、第1のケース107及び第2のケース113の外周部と嵌合して、第1のステータ部と第2のステータ部との同軸を維持している。また、ガイド部116は、外壁部の軸方向に延出されたキー溝116aを備えている。キー溝116aは、第1のケース107のキー107a及び第2のケース113のキー113aと嵌合することにより、第1のステータ部と第2のステータ部を軸方向にスライド可能としている。
第1のステータ部の第1のボビン106及び第2のステータ部の第2のボビン112に径方向へ延出する端子ピンを設けた構成において各ステータ部は回転を行わないので、各端子ピンの位相が変わることはなく、各端子ピンに導線を接続する際の簡易性を損なわない。また、後述する各ステータ部の位相調整においては、各ステータ部の軸方向のスライドのみで位相調整を行うことができるため、位相調整が容易である。
次に、上記構成を有する本実施の形態のステッピングモータの動作について図3乃至図6を参照しながら詳細に説明する。
先ず、マグネット101と、第1のヨーク103、第2のヨーク104、第3のヨーク109、第4のヨーク110の各磁極歯との位置関係について図3に基づき説明する。
図3は、ステッピングモータのマグネットとヨークの位置関係を示す展開図である。
図3において、C1は、第1のヨーク103と第2のヨーク104との中間線であり、C2は、第3のヨーク109と第4のヨーク110との中間線である。θは、軸方向に対するマグネット101の着磁極の傾きである。Dは、スペーサ115の厚さであり、上述したように第1のステータ部と第2のステータ部との間の軸方向の相対位置を決定している。尚、マグネット101のN極とS極の間に図示した斜めの実線は、着磁境界線である。
着磁境界線とC1との交点P1と、前記着磁境界線とC2との交点P2との間には、θから求められる周方向の位相差Aが存在する。従って、第1のステータ部と第2のステータ部の間には、2相ステッピングモータにおける所定の位相差(電気的に90度)に位相差Aを加えた位相差を設けることにより、マグネット101及び出力軸102からなるロータを円滑に回転させることが可能となる。上記所定の位相差に位相差Aを加えた位相差が、ステータ部位相差の設計値である。
次に、各ステータ部の位相調整を行う際の、マグネット101と、第1のヨーク103、第2のヨーク104、第3のヨーク109、第4のヨーク110の各磁極歯の位置関係について図4及び図5に基づき説明する。
図4は、ステッピングモータのステータ部位相差に設計値からズレが生じた場合のマグネットとヨークの位置関係を示す展開図であり、図5は、ステッピングモータの位相調整を行った後のマグネットとヨークの位置関係を示す展開図である。
図4において、aは、上述したステータ部位相差の設計値に対して、加工誤差や組立誤差などにより生じた位相ズレ量である。このような位相ズレが存在すると、コギングトルク(Cogging Torque)や通電トルクがステッピングモータの全周で一様にならず、ステッピングモータの回転精度や駆動効率が低下してしまう。そこで、検査工程においてコギングトルク波形や通電トルク波形を測定し、位相ズレが検知されたものに対して調整を行う。
図5において、位相調整前のヨークを点線で、位相調整後のヨークを実線で示す。調整工程において、厚さが違う複数のスペーサを用意しておき、トルク波形から求めた位相ズレ量に対応した厚さのスペーサに取り替えることで位相調整を行う。ここでは、厚さDのスペーサを厚さD’のスペーサと取り替えて、ステータ部の相対位置をdだけ変化させている。ここで、スペーサの厚さの変化量d[mm]とステータ部の位相ズレ量a[°]の関係は、a=((d×tanθ)/L)×360と表される。Lはヨークの内周長さである。
ステータ部の相対位置の変化に伴って、マグネット101の着磁極の傾きに相当するステータ部位相差がAからA’となり、その結果、ステータ部位相差が位相ズレ量aだけ調整され、適切な値となる。図5では、D’はDよりも大きく、dが正となる場合を示しているが、Dより薄いスペーサを用いればdは負となり、ステータ部の周方向逆向きに位相調整を行うことも可能である。
上記背景技術で説明したように、従来の位相調整方法は、各ステータ部を保持した後、トルク測定を行いながら、適切な位相差が得られるように互いのステータ部を回転させ、その状態を保持したままスポット溶接などで各ステータ部を固定する方法であった。この方法では、ステータ部の回転、トルク測定、ステータ部の溶接を同時に行う設備が必要となり、検査・調整工程に多大なコストが要求される。
これに対し、本実施の形態の位相調整方法では、第1のケース107及び第2のケース113間に配置するスペーサを取り替えるだけで各ステータ部の位相調整を行うことができる。これにより、調整工程に複雑な設備を導入する必要がなく、低コストで精度及び効率の良いステッピングモータを製作することが可能となる。
また、トルク測定とスペーサの交換をステッピングモータごとに行わず、ロットごとにトルク測定を行い、一定の厚さのスペーサを設定してもよいし、ステッピングモータごとのトルク測定とロット管理を併用してもよい。この方法では、ロット管理により工程を減らし、コスト削減を図ることが可能となる。
また、一方を切り欠いたC型のスペーサを用いて、ステッピングモータの径方向からスペーサの入れ替えを可能にしてもよいし、ステータ部の間に偏心カムを有する工具を挿し込み、回転させることでステータ部の軸方向の相対位置を変化させ、調整を行ってもよい。これらの方法では、ステッピングモータを分解せずに軸方向の相対位置を変えることができるので、組立コストの低減に貢献することが可能となる。
図6は、変形例に係る第1及び第2のマグネットの軸方向の相対位置が変更可能なステッピングモータの構成を示す断面図である。
図6において、ステッピングモータは、第1のマグネット101a、第2のマグネット101b、出力軸102、第1のヨーク103、第2のヨーク104、第1のコイル105、第1のボビン106、第1のケース107、第1の軸受108を備えている。更に、ステッピングモータは、第3のヨーク109、第4のヨーク110、第2のコイル111、第2のボビン112、第2のケース113、第2の軸受114、スペーサ115を備えている。
第1のヨーク103、第2のヨーク104、第1のコイル105、第1のボビン106、第1のケース107、第1の軸受108により、第1のステータ部を構成している。また、第3のヨーク109、第4のヨーク110、第2のコイル111、第2のボビン112、第2のケース113により、第2のステータ部を構成している。
本ステッピングモータは、第1のステータ部と第2のステータ部との間の軸方向の相対位置が固定されており、第1のマグネット101aと第2のマグネット101bとの間の軸方向の相対位置を変更可能に保持するスペーサ115を有する。
第1のマグネット101aは、円筒形状に形成されており、外周面が周方向に分割されると共に軸方向に沿ってN極とS極がスパイラル形状になるように着磁されている。
第1のマグネット101bは、円筒形状に形成されており、外周面が周方向に分割されると共に軸方向に沿ってN極とS極がスパイラル形状になるように着磁されている。
スペーサ115は、リング状に形成されており、第1のマグネット101aと第2のマグネット101bの間に配置され、第1のマグネット101aと第2のマグネット101bとの間の軸方向の相対位置を決定している。
変形例においても、上述した本実施の形態と同様に、マグネット101と、第1のヨーク103、第2のヨーク104、第3のヨーク109、第4のヨーク110の各磁極歯との相対的な位置関係は変わらない。よって、スペーサ115を取り替えることで、第1のマグネット101aと第2のマグネット101bの間の軸方向の相対位置を変化させることにより、位相調整を行うことが可能である。変形例では、位相調整時に、軸方向の相対位置が変更可能に保持される第1のマグネット101aと第2のマグネット101bが出力軸102に直接固定されるので、同軸がとりやすいという利点がある。
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1及び第2のステータ部を互いに回転させることなく、第1及び第2のステータ部の軸方向の相対位置或いはマグネットの軸方向の相対位置を変えることで、第1及び第2のステータ部の位相差を変化させることができる。これにより、調整工程に複雑な設備を導入する必要がなく、第1及び第2のステータ部の間の位相調整を容易に行うことができ、低コストで精度及び効率の良いステッピングモータを製作することが可能となる。
[第2の実施の形態]
図7は、本発明の第2の実施の形態に係るレンズ駆動装置の構成部品を示す分解斜視図であり、図8は、組み立て後のレンズ駆動装置の構成を示す断面図である。
図7及び図8において、レンズ駆動装置は、マグネット201、第1のヨーク202、第2のヨーク203、第1のボビン204、第1のコイル205、第1の外カバー206を備えている。更に、レンズ駆動装置は、第3のヨーク207、第4のヨーク208、第2のボビン209、第2のコイル210、第2の外カバー211を備えている。更に、レンズ駆動装置は、レンズホルダ212、スリーブ213、ガイドバー214、振れ止めガイドバー215、地板216、スペーサ217、ガイド部218を備えている。
マグネット201は、円筒形状に形成されており、外周面が周方向に分割されると共に軸方向に沿ってスパイラル形状になるように着磁されている。マグネット201は、スリーブ213に固定されると共にガイドバー214と平行な方向に直進可能に支持されている。
第1のヨーク202は、軟磁性材料から形成されており、マグネット201の外周面のスパイラル形状に着磁された着磁極の中心線に沿って対向するスパイラル形状の磁極歯を備えている。
第2のヨーク203は、軟磁性材料から形成されており、マグネット201の外周面のスパイラル形状に着磁された着磁極の中心線に沿って対向するスパイラル形状の磁極歯を備えている。
ここで、第1のヨーク202及び第2のヨーク203の各磁極歯は、マグネット201の着磁極の中心線に沿って延出されている。
第1のボビン204は、非導電性材料(例えばプラスチック)から形成されており、第1のコイル205の導線が巻回される。また、第1のボビン204は、第1のコイル205の導線を接続するための端子ピンを備えている。
第1のコイル205は、第1のボビン204に導線を巻回したものであり、電流が流されることにより第1のヨーク202の磁極歯と第2のヨーク203の磁極歯を所定の極性に励磁する。
第1の外カバー206は、軟磁性材料から形成されており、第1のヨーク202と第2のヨーク203とを連結し固定する。第1の外カバー206は、第1のボビン204及び第1のコイル205を覆うと共に、第1のヨーク202と第2のヨーク203とを磁気的に連結し、且つ両ヨークを相対的に所定の位置に固定する。また、第1の外カバー206は、軸方向に直交する外側方向に延出されたキー206aを備えている。キー206aは、後述するガイド部218のキー溝218aと嵌合することにより、回転止めとなる。
この場合、第1のヨーク202の磁極歯と第2のヨーク203の磁極歯とは、電気的な角度で180度位相をずらして配置されている。
上述した、第1のヨーク202、第2のヨーク203、第1のボビン204、第1のコイル205、第1の外カバー206により、第1のステータ部を構成している。
第3のヨーク207は、軟磁性材料から形成されており、マグネット201の外周面のスパイラル形状に着磁された着磁極の中心線に沿って対向するスパイラル形状の磁極歯を備えている。
第4のヨーク208は、軟磁性材料から形成されており、マグネット201の外周面のスパイラル形状に着磁された着磁極の中心線に沿って対向するスパイラル形状の磁極歯を備えている。
ここで、第3のヨーク207及び第4のヨーク208の各磁極歯は、マグネット201の着磁極の中心線に沿って延出されている。
第2のボビン209は、非導電性材料(例えばプラスチック)から形成されており、第2のコイル210の導線が巻回される。また、第2のボビン209は、第2のコイル210の導線を接続するための端子ピンを備えている。
第2のコイル210は、第2のボビン209に導線を巻回したものであり、電流が流されることにより第3のヨーク207の磁極歯と第4のヨーク208の磁極歯を所定の極性に励磁する。
第2の外カバー211は、軟磁性材料から形成されており、第3のヨーク207と第3のヨーク208とを連結し固定する。第2の外カバー211は、第2のボビン209及び第2のコイル210を覆うと共に、第3のヨーク207と第4のヨーク208とを磁気的に連結し、且つ両ヨークを相対的に所定の位置に固定する。また、第2の外カバー211は、軸方向に直交する外側方向に延出されたキー211aを備えている。キー211aは、後述するガイド部218のキー溝218aと嵌合することにより、回転止めとなる。
この場合、第3のヨーク207の磁極歯と第4のヨーク208の磁極歯とは、電気的な角度で180度位相をずらして配置されている。
上述した、第3のヨーク207、第4のヨーク208、第2のボビン209、第2のコイル210、第2の外カバー211により、第2のステータ部を構成している。
レンズホルダ212は、カメラに装着されるレンズを保持する部材であり、腕部212a、溝部212b、開口部212cを備えている。腕部212aは、スリーブ213が嵌合可能な内径部を備えており、スリーブ213の外周部に固着されている。溝部212bは、一対の突起と両突起間に形成された溝から構成されており、前記溝に振れ止めガイドバー215が摺動可能に嵌合される。開口部212cには、レンズ(不図示)が固定される。
スリーブ213は、摺動性のよい樹脂材料から形成されており、マグネット201の内周部に一体に固定されている。また、スリーブ213は、ガイドバー214が嵌合可能な内径部を備えており、ガイドバー214によって軸と平行な方向に直進可能に支持されている。
ガイドバー214は、スリーブ213が移動可能にスリーブ213の内径部に嵌合しており、スリーブ213を軸と平行な方向に直進可能に支持する。
振れ止めガイドバー215は、地板216の穴部216bに嵌合され固着されると共に、レンズホルダ212の溝部212bに摺動可能に嵌合される。
地板216は、中空の円盤形状に形成されており、開口部216a、穴部216b、穴部216c、腕部216d、穴部216eを備えている。地板216の盤面上には、ガイド部218が固定されている。腕部216dに設けられた穴部216eには、ガイドバー214が固着され、穴部216bには、振れ止めガイドバー215が固着されている。レンズホルダ212の開口部212cに固定されたレンズを通過した光は、地板216の開口部216aを通過し所定の位置に導かれる。
ガイドバー214は、地板216の腕部216dの穴部216eに固着されているので、マグネット201は、地板216の穴部216cを通って軸方向に直進可能に構成されている。振れ止めガイドバー215は、地板216の穴部216bに固着されており、またレンズホルダ212の溝部212bと摺動可能に嵌合しているので、レンズホルダ212は、ガイドバー214を中心に回転することなく光軸に沿ってのみ移動可能となる。
スペーサ217は、リング状に形成されており、上記の第1のステータ部と第2のステータ部の間に配置され、第1のステータ部と第2のステータ部の軸方向の相対位置を決定している。第1のヨーク202及び第2のヨーク203と、第3のヨーク207及び第4のヨーク208とは、スペーサ217を境にして軸方向の両側にそれぞれ配置されている。
ガイド部218は、地板216に固定されると共に、第1の外カバー206及び第2の外カバー211の外周部と嵌合して、第1のステータ部と第2のステータ部との同軸を維持している。また、ガイド部218は、軸方向に延出されたキー溝218aを備えている。キー溝218aは、第1の外カバー206のキー206a及び第2の外カバー211のキー211aと嵌合することにより、第1のステータ部と第2のステータ部を軸方向にスライド可能としている。
第1のステータ部の第1のボビン204及び第2のステータ部の第2のボビン209に径方向へ延出する端子ピンを設けた構成において各ステータ部は回転を行わないので、各端子ピンの位相が変わることはなく、各端子ピンに導線を接続する際の簡易性を損なわない。また、後述する各ステータ部の位相調整においては、各ステータ部の軸方向のスライドのみで位相調整を行うことができるため、位相調整が容易である。
図9は、レンズ駆動装置のマグネットとヨークの位置関係を示す展開図である。
図9において、C1は、第1のヨーク202と第2のヨーク203との中間線であり、C2は第3のヨーク207と第4のヨーク208との中間線である。θは、軸方向に対するマグネット201の着磁極の傾きである。Dは、スペーサ217の厚さであり、第1のステータ部と第2のステータ部との間の軸方向の相対位置を決定している。尚、マグネット201のN極とS極の間に図示した斜めの実線は、着磁境界線である。
着磁境界線とC1との交点P1と、同じ着磁境界線とC2との交点P2との間には、θから求められる周方向の位相差Aが存在する。従って、第1のステータ部と第2のステータ部との間には、2相ステッピングモータにおける所定の位相差(電気的に90度)に位相差Aを加えた位相差を設けることにより、マグネット201とスリーブ213が円滑に直進することが可能となる。上記所定の位相差に位相差Aを加えた位相差が、ステータ部位相差の設計値である。
次に、上記構成を有する本実施の形態のレンズ駆動装置の動作及びステータ部の位相調整の方法について図9乃至図11を参照しながら詳細に説明する。
先ず、レンズ駆動装置の動作について説明する。
図9に示す状態は、マグネット201が着磁されており、第1のヨーク202の磁極歯がS極に、第2のヨーク203の磁極歯がN極に各々励磁されるように第1のコイル205に通電している状態である。
この状態から、第1のコイル205の通電を遮断すると同時に、第3のヨーク207の磁極歯がN極に、第4のヨーク208の磁極歯がS極に各々励磁されるように第2のコイル210に通電する。これに伴い、マグネット201には矢印B方向の電磁力が発生する。矢印B方向の力は、マグネット201を回転する方向の力とマグネット201の軸に沿った力に分けて考えることができる。
上述したように、マグネット201に固着されているレンズホルダ212が、振れ止めガイドバー215によってガイドバー214を中心とした回転を防止されている状態にある。そのため、矢印B方向に発生する電磁力のうちのマグネット201を回転する方向の力によってもマグネット201は回転せず、矢印B’方向の力によってガイドバー214に沿ってマグネット201及びレンズホルダ212、スリーブ213は駆動する。その結果、マグネット201は、S極着磁部が第3のヨーク207の磁極歯に対向する位置となるように、図9における上方すなわち矢印B’方向に移動して停止する。
更にこの状態から、第2のコイル210の通電を遮断すると同時に、第1のヨーク202の磁極歯がN極に、第2のヨーク203の磁極歯がS極に各々励磁されるように第1のコイル205に通電する。これに伴い、再度、マグネット201には矢印B方向の電磁力が発生する。
上記同様に、矢印B方向に発生する電磁力のうちのマグネット201を回転する方向の力によってもマグネット201は回転せず、矢印B’方向の力によってガイドバー214に沿ってマグネット201及びレンズホルダ212、スリーブ213は駆動する。マグネット201は、S極着磁部が第1のヨーク202の磁極歯に対向する位置となるように、図9における上方すなわち矢印B’方向に移動して停止する。
更にこの状態から、第1のコイル205の通電を遮断すると同時に、第3のヨーク207の磁極歯がS極に、第4のヨーク208の磁極歯がN極に各々励磁されるように第2のコイル210に通電する。これに伴い、再度、マグネット201には矢印B方向の電磁力が発生する。
上記同様に、矢印B方向に発生する電磁力のうちのマグネット201を回転する方向の力によってもマグネット201は回転せず、矢印B’方向の力によってガイドバー214に沿ってマグネット201及びレンズホルダ212、スリーブ213は駆動する。マグネット201は、N極着磁部が第3のヨーク207の磁極歯に対向する位置となるように、図9における上方すなわち矢印B’方向に移動して停止する。
更にこの状態から、第2のコイル210の通電を遮断すると同時に、第1のヨーク202の磁極歯がS極に、第2のヨーク203の磁極歯がN極に各々励磁されるように第1のコイル205に通電する。これに伴い、再度、マグネット201には矢印B方向の電磁力が発生する。
上記同様に、矢印B方向に発生する電磁力のうちのマグネット201を回転する方向の力によってもマグネット201は回転せず、矢印B’方向の力によってガイドバー214に沿ってマグネット201及びレンズホルダ212、スリーブ213は駆動する。マグネット201は、N極着磁部が第1のヨーク202の磁極歯に対向する位置となるように、図9における上方すなわち矢印B’方向に移動して停止する。
マグネット201を矢印B’方向とは逆方向に駆動するときは、第1のコイル205及び第2のコイル210に対する上述した通電切り替えを順次元の状態に戻すように切り替えていけばよい。
このように、第1のコイル205と第2のコイル210の通電状態を順次切り替え、第1のヨーク202の磁極歯、第2のヨーク203の磁極歯、第3のヨーク207の磁極歯、第4のヨーク208の磁極歯の励磁状態を切り替えていく。これにより、マグネット201及びレンズホルダ212、スリーブ213を矢印B’方向或いはその逆方向のみに駆動することが可能である。
尚、本実施の形態は、上記制御に限定されず、第1のコイル205と第2のコイル210の通電電流を加減し、各コイルが発生する磁力の大きさに応じた位置にマグネット201を停止させるマイクロステップ制御を行うことも可能である。マイクロステップ制御によれば、2相のコイルで引き合う位置にマグネット201は安定的に位置するようになり、安定した位置出し及び精度の高い位置出しを実現することが可能となる。
次に、レンズ駆動装置のステータ部の位相調整の方法について説明する。
図10は、レンズ駆動装置のステータ部位相差に設計値からズレが生じた場合のマグネットとヨークの位置関係を示す展開図である。
図10において、aは、上述したステータ部位相差の設計値に対して、加工誤差や組立誤差などにより生じた位相ズレ量である。このような位相ズレが存在すると、アクチュエータ(レンズ駆動装置)で発生する力が一様にならず、アクチュエータの精度や効率が低下してしまう。そこで、検査工程において、マグネット201の支持方法を変えて、マグネット201の可動方向を軸方向から回転方向に変更する冶具を使用してコギングトルク波形や通電トルク波形を測定し、位相ズレが検知されたものに対して調整を行う。もちろん、軸方向の力を測定してもよいが、測定の難易度・精度の観点から、回転トルクを測定するのが望ましい。
図11は、レンズ駆動装置の位相調整を行った後のマグネットとヨークの位置関係を示す展開図である。
図11において、位相調整前のヨークを点線で、位相調整後のヨークを実線で示す。調整工程において、厚さが違う複数のスペーサを用意しておき、トルク波形から求めた位相ズレ量に対応した厚さのスペーサに取り替えることで位相調整を行う。図示の例では、厚さDのスペーサを厚さD’のスペーサと取り替えて、ステータ部の相対位置をdだけ変化させている。ここで、スペーサの厚さの変化量d[mm]とステータ部の位相ズレ量a[°]の関係は、a=((d×tanθ)/L)×360と表される。Lはヨークの内周長さである。
ステータ部の相対位置の変化に伴って、マグネット201の着磁極の傾きに対応するステータ部位相差がAからA’となり、その結果、ステータ部位相差が位相ズレ量aだけ調整され、適切な値となる。図11では、D’はDよりも大きく、dが正となる場合を示しているが、Dより薄いスペーサを用いればdは負となり、ステータ部の周方向逆向きに位相調整を行うことも可能である。
上記背景技術で説明したように、従来の位相調整方法は、各ステータ部を保持した後、トルク測定を行いながら、適切な位相差が得られるように互いのステータ部を回転させ、その状態を保持したままスポット溶接などで各ステータ部を固定する方法であった。この方法では、ステータ部の回転、トルク測定、ステータ部の溶接を同時に行う設備が必要となり、検査・調整工程に多大なコストが要求される。
これに対し、本実施の形態の位相調整方法では、第1のステータ部及び第2のステータ部間に配置するスペーサを取り替えるだけで位相調整を行うことができる。これにより、調整工程に複雑な設備を導入する必要がなく、低コストで精度及び効率の良いアクチュエータ(レンズ駆動装置)を製作することが可能となる。
また、トルク測定とスペーサの交換をアクチュエータごとに行わず、ロットごとにトルク測定を行い、一定の厚さのスペーサを設定してもよいし、アクチュエータごとのトルク測定とロット管理を併用してもよい。この方法では、ロット管理により工程を減らし、コスト削減を図ることが可能となる。
また、一方を切り欠いたC型のスペーサを用いて、アクチュエータ径方向からスペーサの入れ替えを可能にしてもよいし、ステータ部の間に偏心カムを有する工具を挿し込み、回転させることでステータ部の軸方向の相対位置を変化させ、調整を行ってもよい。これらの方法では、アクチュエータを分解せずに軸方向の相対位置を変えることができるので、組立コストの低減に貢献することが可能となる。
尚、本実施の形態では、第1及び第2のステータ部の軸方向の相対位置を変更可能とした構成を例に挙げたが、これに限定されるものではない。変形例として、第1及び第2のステータ部の軸方向の相対位置を固定とし、2つに分割した第1及び第2のマグネットの軸方向の相対位置を変更可能とする構成してもよい。
変形例の構成でも、上記第1の実施の形態で示したように、第1及び第2のマグネットとヨークの磁極歯の相対関係は変わらず、第1及び第2のマグネット間の軸方向の相対位置を変化させることで位相調整を行うことが可能である。変形例の構成では、位相調整時に、軸方向の相対位置が変更可能である第1及び第2のマグネットが出力軸に直接固定されているので、位相調整の際に同軸がとりやすいという利点がある。
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1及び第2のステータ部を互いに回転させることなく、第1及び第2のステータ部の軸方向の相対位置或いはマグネットの軸方向の相対位置を変えることで、第1及び第2のステータ部の位相差を変化させることができる。これにより、調整工程に複雑な設備を導入する必要がなく、第1及び第2のステータ部の間の位相調整を容易に行うことができ、低コストで精度及び効率の良いアクチュエータ(レンズ駆動装置)を製作することが可能となる。
[他の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、マグネットと出力軸を別々に構成(別体)した場合を例に挙げたが、本発明は、これに限定されるものではなく、マグネットと出力軸を一体に構成する場合にも適用可能である。
上記第2の実施の形態では、レンズホルダをスリーブに固着した場合を例に挙げたが、本発明は、これに限定されるものではなく、複数種類のレンズホルダをスリーブに交換可能に装着する場合にも適用可能である。