以下に、本開示の実施の形態にかかる界磁子および電動機を図面に基づいて詳細に説明する。本開示の実施の形態では、界磁子が回転子であり、電動機が回転電機である例で説明する。
実施の形態1.
まず、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の構成を説明する。図1は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の斜視図である。
図1において、界磁子1は回転子であり、磁石10と、磁石支持構造20と、磁性部材21とを備える。
磁石10は、中心軸AXを中心とする円筒形の円筒形磁石である。第一の方向は、図1において円筒形磁石の外周面上における中心軸AX周りの周方向であり、θ軸の矢印で示されている。磁石10は、第一の方向である周方向に沿って複数のN極と複数のS極とが交互に着磁された外周面を磁極面14として有する。磁石10の磁極面14である外周面上の、第一の方向である周方向と垂直な方向である磁石幅方向は、図1においてZ軸の矢印で示されている。磁石幅方向は、中心軸AXと平行である。円筒形磁石である磁石10の磁極面14である外周面上では、隣り合うN極とS極との境界である磁極境界線11が、磁石10の磁石幅方向の一端15側から他端16側へ伸びている。図1において、N極はN、S極はSと示している。
磁石支持構造20は、中心軸AXを中心とする円柱形のシャフトである。シャフトの外周面と円筒形磁石の内周面が嵌合し、シャフトと円筒形磁石とが接合している。すなわち、磁石支持構造20は、磁石10の磁極面14と垂直な方向である磁石厚さ方向において磁極面14と反対側の内周面である磁石固定部17に接合されて磁石10を支持している。図1において、磁石厚さ方向は中心軸AXと垂直な方向である径方向であり、R軸の矢印で示されている。
磁性部材21は、磁石10の磁石幅方向で他端16側の外側、かつ、磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石側であるシャフトの外周に配置されている。磁性部材21は磁性体により構成されている。本開示の実施の形態1では、界磁子1は回転子であり、磁性部材21は中心軸AXを中心としたリング形の形状をしている。
次に、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の磁極について説明する。図2は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の側面図である。図2において、界磁子1が備える磁石10は円筒形磁石であり、円筒形磁石の有する磁極面14である外周面上に周方向に沿って交互に着磁された複数のN極と複数のS極とを有する。磁極面14上の隣り合うN極とS極との境界である磁極境界線11が、磁石10の外周面上で磁石幅方向の一端15側から他端16側へ伸びている。
図2において、磁極境界線11は、磁石10の磁石幅方向の一端15から他端16の間で、区間D1、区間D2、区間D3の3つの区間に分けられる。磁極境界線11は、区間D1では、外周面を周方向が直線となるように展開した場合の平面において直線となる外周面上の直線111で構成される。同様に、磁極境界線11は、区間D2において外周面上の直線112で構成され、区間D3において外周面上の直線113で構成される。直線111と直線112とは、折れ点121で接続されている。直線112と直線113とは、折れ点122で接続されている。すなわち、隣り合う2つの区間の磁極境界線11は互いに接続されている。磁極境界線11は折れ点121および折れ点122において、磁石幅方向に対する外周面上での傾きが変化しており、区間D1、区間D2、区間D3における、直線111、直線112、直線113の各直線の磁石幅方向に対する磁極面14上の傾きは全て異なっている。すなわち、磁極境界線11は、磁石幅方向に対する磁極境界線11の傾きが異なる磁石幅方向の区間を、3つ有している。
図2において、磁極境界線11の区間D1、区間D2、区間D3の各区間における、直線111、直線112、直線113の磁石幅方向に対する傾きは、全て、第一の方向である周方向の、符号が正の向きに、傾きの大きさが0以上で傾いている。すなわち、全ての区間の磁極境界線11は、磁石幅方向に対して全て同じ方向に傾きの大きさが0以上で傾いている。
図2において、各区間の磁極境界線11の傾きは、磁石幅方向で一端15側の最も端の区間である区間D1の磁極境界線11である直線111の磁石幅方向に対する傾きよりも、区間D1の他端16側に隣接する区間D2の直線112の磁石幅方向に対する傾きの方が大きい。また、区間D2の直線112の磁石幅方向に対する傾きよりも、区間D2の他端16側に隣接して最も他端16側の区間である区間D3の直線113の磁石幅方向に対する傾きの方が大きい。このように、磁極境界線11の傾きの大きさは磁石10の磁石幅方向で一端15側の区間から他端16側の区間になるほど大きくなっている。すなわち、磁極境界線11は、磁極面14上の直線111、112、113が3つ接続されて構成され、直線111、112、113の磁石幅方向に対する磁極面14上での傾きの大きさは、磁石幅方向において一端15側の直線111から他端16側の直線113になるほど大きくなっている。換言すると、磁極境界線11の磁極面14上の形状は磁石幅方向で非対称となっている
図2において、磁性部材21は磁石10の磁石幅方向で他端16側の外側に配置されている。すなわち、磁石10において磁石幅方向で磁極境界線11の傾きが最も大きい端部である他端16側の外側に、磁性部材21が配置されている。磁性部材21の磁石10へ磁石幅方向で対向する面は、対向する磁石10の他端16の端面と平行になっている。
次に、本開示の実施の形態1にかかる電動機の構成を説明する。図3は、本開示の実施の形態1にかかる電動機の断面図である。図3に示す電動機100は、図1に示す界磁子1と、電機子2と電機子支持構造210とを備える。界磁子1は回転子であり、円筒形磁石である磁石10と、シャフトである磁石支持構造20とを備える。電機子2は固定子であり、電機子支持構造210に固定されて支持されている。界磁子1は電機子2の内側に配置され、界磁子1が中心軸AXを中心に電機子2に対して回転可能となるよう、界磁子1が電機子支持構造210との間で図示しないベアリングにより回転可能に支持されている。第一の方向は、中心軸AX周りの周方向であり、磁石10の磁極面14上において、界磁子1の磁石10が電機子2に対して相対的に動く駆動方向である。
図3において、界磁子1は、磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石側である外周に配置された磁性部材21を備えている。磁性部材21の磁石厚さ方向で磁石支持構造側と反対側の端部である外周端面22は、磁石厚さ方向において磁石固定部17と磁極面14との間に位置する。図3において、磁石厚さ方向は中心軸AXと垂直な方向である径方向であり、R軸の矢印で示されている。
図4は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の磁石の外周面を周方向が平面となるよう展開し、1つの磁極境界線に着目して示した部分展開図である。図4において、磁石10の磁極面14上の第一の方向である周方向は展開されて直線となっており、周方向はθ軸の矢印で示されている。磁石10の磁極面14上の第一の方向と垂直な方向である磁石幅方向はZ軸の矢印で示されている。図4において、磁石10の磁石幅方向の微小区間の長さdLにおける磁極境界線11の第一の方向の変位量をdθで示している。このときこの微小区間での磁極境界線11の傾きはdθ/dLとなる。
磁石10の磁石幅方向の長さを磁石幅Lとする。図示していないが、磁石10の第一の方向の大きさである第一の大きさをθM、磁石10のN極とS極とで構成される磁極の第一の方向での第一の大きさθMの間に含まれる数を極数P、界磁子1に対応する電機子2の第一の方向での第一の大きさθMの間に含まれるスロットの数をスロット数Sとする。磁石幅Lに対する磁極境界線11の第一の方向の変位量の基準を理論スキュー量θTとして、理論スキュー量はθT=θM/(PとSの最小公倍数)で表される。本開示の実施の形態1では、界磁子1が回転子であるので、磁石10の第一の方向である周方向の角度としての第一の大きさはθM=360°であり、理論スキュー量はθT=360°/(PとSの最小公倍数)で表される。
本開示の実施の形態1とは違って、磁石10の磁石幅Lの両端の間で磁極境界線を磁極面上の1本の直線である単直線とし、磁極境界線を磁石幅方向に対して傾けてスキューする場合に、磁石幅Lに対する磁極境界線の第一の方向の変位量は、理論スキュー量θT=θM/(PとSの最小公倍数)とすることでトルクリプルが低減されることが知られている。図4において、本開示の実施の形態1とは違って、磁極境界線を単直線19とし、磁石幅Lの間に第一の方向に理論スキュー量θT=θM/(PとSの最小公倍数)だけ変位させて傾きを設ける場合の例を、比較例として仮想的に二点鎖線の単直線19で示している。
本開示の実施の形態1において、磁石10の一端15側の端部での磁石幅方向の微小区間の長さdL1における磁極境界線11の第一の方向の変位量をdθ1とすると、磁石10の一端15側の端部での磁極境界線11の磁石幅方向に対する傾きはdθ1/dL1である。また、磁石10の他端16側の端部での磁石幅方向の微小区間の長さdL2における磁極境界線11の第一の方向の変位量をdθ2とすると、磁石10の他端16側の端部での磁極境界線11の傾きはdθ2/dL2である。このとき、本開示の実施の形態1に係る界磁子1は、0≦|dθ1/dL1|<|θT/L|<|dθ2/dL2|の関係を満たすように、磁極境界線11の傾きを設定している。
このことで、磁石10の磁石幅Lの両端の間で磁極境界線を磁極面上の1本の直線である単直線として磁極境界線の磁石幅Lに対する第一の方向の変位量を理論スキュー量とした時と同様に、トルクリプル低減の効果を得ることができる。
次に、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の着磁における複数の種類の磁石幅への対応について説明する。図5は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子において、複数の種類の磁石幅の界磁子に対して1種類の着磁ヨークを部分的に共用して着磁することを説明する模式図である。図5においては、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の磁石であり、磁石幅の違う3種類の磁石幅L、LA、LBの磁石10、10A、10Bに対して、1種類の着磁ヨークの中で、磁石幅に応じて界磁子の磁石を磁石幅方向に位置を変えて配置して着磁することを模式的に示している。
図5において、着磁ヨークで着磁対応可能な範囲を着磁ヨーク対応範囲820で示している。図5では、着磁ヨーク対応範囲820は、磁石幅方向であるZ軸方向の長さがL800となる実線の四角の領域で示されている。着磁ヨーク対応範囲820の中に、磁石幅LAの磁石10Aの1つの磁極境界線11Aと、磁石幅Lの磁石10の1つの磁極境界線11と、磁石幅LBの磁石10Bの1つの磁極境界線11Bとを部分的に重ねて並べて示している。磁石幅LA、L、LBの大きさは異なり、LA>L>LBである。それぞれの磁極境界線は、傾きの違う直線が折れ点121A、122A、121、122、121B、122Bで接続されて構成されている。図5において、磁石10はZ軸方向の磁石幅の長さがLとなる実線の四角で示されている。磁石10AはZ軸方向の磁石幅の長さがLAとなる破線の四角で示されている。磁石10BはZ軸方向の磁石幅の長さがLBとなる一点鎖線の四角で示されている。
磁石10の磁極境界線11は、3つの区間D1、D2、D3を有し、各区間において磁極面14上の直線111、112、113により構成されている。直線111、112、113のそれぞれの磁石幅方向に対する磁極面14上の傾きは、磁石幅方向に対して全てθ軸の正の方向である同じ方向に傾いている。また、各区間の直線111、112、113のそれぞれの傾きの大きさは、磁石幅方向で一端側の区間から他端側の区間になるほど大きくなっている。同様に、磁石10A、10Bにおいても、それぞれの磁石が有する各区間における磁極境界線の傾きは、磁石幅方向に対して全て同じ方向に傾いており、傾きの大きさは磁石の磁石幅方向で一端側の区間から他端側の区間になるほど大きくなっている。このことで、図5に示すように、複数の種類の磁石幅の磁石10A、10、10Bの磁極境界線11A、11、11Bを部分的に重ねて並べて結合した1つの結合線11Wの一部が、各々の磁石10A、10、10Bの磁極境界線11A、11、11Bと一致するように結合線11Wを構成することができる。
界磁子に備えられた磁石の着磁には、図5では図示していない着磁ヨーク800を用いる。着磁ヨーク800は、着磁ヨーク対応範囲820において、結合線11Wに沿った磁極境界線となるように磁石に対して着磁することができるよう、界磁子の磁石を着磁する設備として作製する。
図5において、着磁ヨーク800の磁石幅方向の位置の基準となる端面を基準端830で示している。図5において、基準端830は、着磁ヨーク対応範囲820の周囲を示す実線の四角を構成する一辺の直線で示されている。磁石幅Lの磁石10は、基準端830から磁石幅方向に基準距離Lm10だけ離れた位置に磁石10の一端15が一致するように磁石10を配置すると、磁石10に着磁して形成する磁極境界線11が結合線11Wの一部と一致する。すなわち、着磁ヨーク800において、基準端830から磁石幅方向に基準距離Lm10だけ離れた位置に磁石10の一端15が一致するように着磁前の磁石10を配置し、磁石10へ着磁することで、磁極境界線11を形成するように磁石10を着磁することができる。
磁石幅LBの磁石10Bにおいても、同様に、基準端830から磁石幅方向に基準距離Lm10Bだけ離れた位置に磁石10Bの一端15Bが一致するように磁石10Bを配置すると、磁石10Bに着磁して形成する磁極境界線11Bが結合線11Wの一部と一致する。すなわち、着磁ヨーク800において、基準端830から磁石幅方向に基準距離Lm10Bだけ離れた位置に磁石10Bの一端15Bが一致するように着磁前の磁石10Bを配置し、磁石10Bへ着磁することで、磁極境界線11Bを形成するように磁石10Bを着磁することができる。
磁石幅LAの磁石10Aにおいても、同様に、着磁ヨーク800において磁石幅方向で適切な位置に磁石10Aを配置することで、磁極境界線11Aを形成するように磁石10Aを着磁することができる。
このように、結合線11W全体に対応した1種類の着磁ヨーク800により、磁石幅の違う複数の種類の界磁子の磁石10A、10、10Bについて、着磁ヨーク800を用いて着磁を行うことが可能となる。
図5において、磁石幅Lの磁石10の磁極境界線11は、磁極境界線11の傾きが異なる区間として区間D1、D2、D3の3つの直線を有している。磁石幅LAの磁石10Aの磁極境界線11Aも同様に磁極境界線11Aの傾きが異なる区間を3つ有し、最も傾きの大きい区間はD3Aである。図5において、磁石10の区間D1の磁極境界線11を構成する直線111は、磁石10Aにおける区間D3Aの磁極境界線11Aを構成する直線113Aと、磁石幅方向に対する傾きを同じにしている。このことで、結合線11Wの中で、磁石10の磁極境界線11の一部である直線111と、磁石10Aの磁極境界線11Aの一部である直線113Aとを、部分的に重ねることができ、区域DWAで重ねている。同様に、結合線11Wの中で、磁石10の区間D3の磁極境界線11を構成する直線113と、磁石10Bの区間D1Bの磁極境界線11Bを構成する直線111Bとは、磁石幅方向に対する傾きを同じにしてあり、区域DWBで重ねている。その結果、着磁ヨーク800の全長L800は、磁石幅LA、L、LBの合計よりも短くなっており、着磁ヨーク800を小型化できる。このように磁石幅が違う複数の種類の界磁子について、着磁ヨークを部分的に共用できるようにすることで、着磁の設備を小さくすることができる。
また、磁石幅Lの磁石10の磁極境界線11は、区間D1、D3とは別に、磁極境界線の傾きと区間の長さを設定できる設計自由度として区間D2を有している。区間D2の磁石幅方向に対する傾きと長さを調整することにより、磁石10の磁極境界線11全体の傾き形状を設計的に調整することができる。磁極境界線11の形状の設計においては、区間D1、D3とともに区間D2の傾きと長さを調整して磁極境界線11全体の傾き形状を設計し、設計した磁極境界線の形状に基づいて電磁解析によりトルクリプルが低減できることを確認する。そのような磁極境界線11の設計において、磁極境界線11が傾きの異なる区間を3つ有していることで、磁石幅の違う磁石と磁極境界線を重ねて着磁のための着磁ヨーク800を小型化しながら、トルクリプルを低減する磁極境界線11の形状の設計を容易にすることができる。本開示の実施の形態1では、磁極境界線の傾きが異なる各区間となる磁極面14上の直線を3つ有して構成する例で説明したが、磁極境界線の傾きが異なる各区間となる磁極面14上の直線を4つ以上有して構成してもよく、その場合も同様に、磁石幅の違う磁石と磁極境界線を重ねて着磁ヨークを小型化しながら、トルクリプルを低減する磁極境界線の形状の設計を容易にすることができる。
図5において、磁石幅LAの磁石10Aおよび磁石幅LBの磁石10Bについては、片側に隣接する磁石幅の磁極境界線の配置は無いが、磁石幅Lの磁石10と特性を合わせるため、磁極境界線において傾きが異なる区間を3つ以上有するようにしている。
図6は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の着磁を説明する模式図である。界磁子1に備えられた磁石10の着磁には、着磁ヨーク800を用いる。図6において、着磁ヨーク800は模式的に断面を示し、界磁子1は側面を示している。着磁ヨーク800は、界磁子1に合わせた形状の空間を内部に持ち、その空間に界磁子1を格納して、界磁子の磁石10の周囲を囲う。着磁ヨーク800は、界磁子1の磁石10を格納する空間の周囲に、着磁のためのコイルである図示しない着磁コイルを備える。着磁コイルは、磁石に着磁させる磁極の磁極境界線に合わせた磁束が発生できる形状となっている。磁石10を備えた界磁子1を着磁ヨーク800に格納した後、着磁ヨーク800が備える着磁コイルに電流を流して、着磁コイルから着磁用の磁束を発生させ、磁石10に磁束を印加する。このことで、所望の形状の磁極境界線11となる磁極を磁石10の磁極面14に着磁して形成する。
複数の種類の磁石幅の磁石の着磁を、1種類の着磁ヨーク800により対応するため、着磁ヨーク800は、複数の種類の磁石幅の磁石の磁極境界線を並べて結合した結合線に沿って着磁のための磁束を発生できる着磁コイルを備える。図5の例の磁石に対する対応としては、着磁ヨーク800は、複数の種類の磁石幅の磁石10A、10、10Bの磁極境界線11A、11、11Bと部分的に一致する結合線11Wに沿って着磁のための磁束を発生できる着磁コイルを備える。このため、着磁ヨーク800の磁石幅方向の長さL800は、各々の1つの磁石の磁石幅LA、L、LBより長い。この着磁ヨーク800で磁石10を着磁する場合、磁石幅方向に長い着磁ヨーク800の中で、適切な磁石幅方向の位置に磁石10を配置して、着磁を実施する。適切な磁石幅方向の位置は、磁石10に形成しようとする磁極境界線11が、着磁ヨーク800が着磁させることのできる磁極境界線の結合線11Wの一部と一致する磁石幅方向の位置である。
図6(a)には、着磁ヨーク800において磁石10を着磁する例を示している。図6(a)において、着磁ヨーク800の基準端830から磁石幅方向に基準距離Lm10だけ離れた位置に磁石10の一端15が一致するように着磁前の磁石10を配置し、磁石10へ着磁することを示している。このことで、磁極境界線11を形成するように磁石10を着磁することができる。
図6(b)には、着磁ヨーク800において磁石10Bを着磁する例を示している。図6(b)において、着磁ヨーク800の基準端830から磁石幅方向に基準距離Lm10Bだけ離れた位置に磁石10Bの一端15Bが一致するように着磁前の磁石10Bを配置し、磁石10Bへ着磁することを示している。このことで、磁極境界線11Bを形成するように磁石10Bを着磁することができる。
次に、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の磁性部材21について説明する。図2に示されるように、界磁子1は、磁石10の磁石幅方向で他端16側の外側、かつ、磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石側である磁石支持構造20の外周に配置された、磁性体により構成される磁性部材21を備える。磁石10の他端16側の端部における磁極境界線11の磁石幅方向に対する傾きは、磁石10の一端15側の端部における磁極境界線11の傾きよりも、傾きが大きい。すなわち、界磁子1は、磁石10に対して、磁石10の磁石幅方向の端部のうち磁極境界線11の磁石幅方向に対する傾きが大きい方の端部である他端16の外側に、磁性部材21を備えている。また、図3の断面図で示されるように、磁性部材21の磁石厚さ方向で磁石支持構造側と反対側の端部である外周端面22は、磁石厚さ方向において磁石固定部17と磁極面14との間に位置する。
図7は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子の着磁の際の磁性部材による効果を説明する模式図である。図7(b)は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子1を、着磁ヨーク800の内部に配置して、着磁のための磁束を磁石10に印加した場合の、磁束の様子を模式的に示している。
図7(a)は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子1とは違い、磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石側に磁性部材21を有さない界磁子1Qを、着磁ヨーク800の内部に配置して、着磁のための磁束を磁石10に印加した場合の、磁束の様子を模式的に示した図である。界磁子1Qは、図1の界磁子1とは、磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石側に磁性部材21を備えないことが相違しており、その他の構成は同じである。着磁ヨーク800の内部において着磁コイルにより発生した磁束810Qのうち、磁石幅方向で磁石10の磁石幅の外側の、磁石10に対向していない着磁ヨーク800の内周面で発生した磁束が、磁石10の他端16の端部に漏れ磁束として流入している。
図7(b)は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子1を、着磁ヨーク800の内部に配置して、着磁のための磁束を磁石10に印加した場合の、磁束の様子を模式的に示した図である。界磁子1が磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石側に磁性部材21を備えることで、着磁ヨーク800の内部において着磁コイルにより発生した磁束810のうち、磁石10に対向していない着磁ヨーク800の内周面で発生した磁束が、磁性体で構成された磁性部材21に流れ、磁石10の他端16の端部への漏れ磁束の影響を低減することができる。
磁石10の端部で磁極境界線11の傾きが大きい場合に、漏れ磁束の影響が大きく出るため、本開示の実施の形態1にかかる界磁子1は磁性体で構成された磁性部材21を、磁石10の磁極境界線11の傾きが大きい他端16の外側に備える。このことで、漏れ磁束の影響が大きい端部である磁極境界線11の傾きが大きい他端16側の端部での、漏れ磁束の影響を低減し、着磁を精度良く行うことができ、着磁による磁極境界線11の形成を精度良く行うことができる。また、磁性部材21の磁石厚さ方向で磁石支持構造側と反対側の端部である外周端面22は、磁石厚さ方向で磁石固定部17と磁極面14との間に位置する。このことで、磁石10に対向していない着磁ヨーク800の内周面で発生した磁束が、磁性体で構成された磁性部材21に流れやすくし、磁石10の他端16の端部への漏れ磁束の影響を効果的に低減して、着磁の精度を良くすることができる。本開示の実施の形態1では、界磁子1は磁石支持構造20の外周の磁石10の一端15側の外側に磁性部材を備えない例で説明したが、界磁子1は磁石支持構造20の外周の磁石10の一端15側の外側にも磁性部材を備えてもよい。また、図2の例では、磁石10と磁性部材21とは磁石幅方向で離れている。この例では、磁石10と磁性部材21との間は空隙となっているが、磁石10と磁性部材21との間に非磁性体を備えていてもよい。
本開示の実施の形態1の界磁子1では、以上のように、第一の方向に沿って複数のN極と複数のS極とが交互に着磁された面である磁極面14を有し、磁極面14上の隣り合うN極とS極との境界である磁極境界線11は磁極面14上の第一の方向と垂直な方向である磁石幅方向に対して全て同じ方向に傾きの大きさが0以上で傾いており、磁極境界線11の傾きの大きさは磁石幅方向において一端15から他端16に向かうほど大きくなっている磁石10と、磁極面14と垂直な方向である磁石厚さ方向において磁石10の磁極面14と反対側の磁石固定部17に接合されて磁石10を支持する磁石支持構造20と、磁石10の磁石幅方向で他端16側の外側、かつ、磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石10側に配置され、磁性体により構成された磁性部材21とを備え、磁性部材21の磁石厚さ方向で磁石支持構造20側と反対側の端部である外周端面22は、磁石厚さ方向において磁石固定部17と磁極面14との間に位置するので、界磁子1の磁石10の一端15から他端16に向けて磁極境界線11の傾きが大きくなっていても、着磁の際に磁石10の磁極境界線11の傾きの大きい他端16側の端部で着磁ヨーク800の漏れ磁束の影響を受けにくく、界磁子1の磁石10を精度良く着磁することができる。
さらに、磁極境界線11は、直線111、112、113のように磁極面14上の直線が3つ以上接続されて構成され、直線111、112、113の磁石幅方向に対する傾きの大きさは、磁石幅方向において一端15側の直線111から他端16側の直線16になるほど大きくなっているので、磁極境界線11が直線で構成されていることにより、着磁ヨーク800の製作加工が容易となる。
さらに、磁石10の一端15側の端部での磁石幅方向の微小区間の長さdL1における磁極境界線11の第一の方向の変位量をdθ1、磁石10の他端16側の端部での磁石幅方向の微小区間の長さdL2における磁極境界線11の第一の方向の変位量をdθ2、磁石10の磁石幅方向の長さを磁石幅L、磁石幅Lに対する磁極境界線11の第一の方向の変位量の基準を理論スキュー量θTとしたとき、0≦|dθ1/dL1|<|θT/L|<|dθ2/dL2|の関係を満たすようにしたので、トルクリプル低減の効果を得ながら、磁石幅が違う複数の種類の界磁子について、着磁ヨークを共用して着磁を可能とすることができる。
さらに、磁石10は磁石幅方向と平行な中心軸を中心とする円筒形である円筒形磁石であり、磁極面14は円筒形磁石の外周面であり、第一の方向は円筒形磁石の外周面上における中心軸周りの周方向であり、界磁子1は回転子であるので、回転子である界磁子1において、磁極境界線11に磁石幅方向に対する傾きを設けても、磁石幅が違う複数の種類の界磁子について、着磁ヨーク800を共用して着磁を可能とすることができる。
さらに、本開示の実施の形態1の電動機100では、本開示の実施の形態1の界磁子1と、電機子2とを備えるので、電動機100の界磁子1の磁極境界線11に磁石幅方向に対する傾きを設けても、磁石幅が違う複数の種類の界磁子について、着磁ヨークを共用して着磁を可能とすることができる。磁石幅が違う複数の種類の界磁子について、着磁ヨークを共用して着磁を可能とすることで、着磁の設備を小型化しながら、出力の違う電動機の製造対応が容易になる。
なお、本開示の実施の形態1では、磁石10と磁性部材21とは磁石幅方向で離れている例で説明したが、磁石と磁性部材とが磁石幅方向で接していてもよい。図8は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子における磁石と磁性部材とが接する変形例の側面図である。図2とは、界磁子1Eに備えられた磁石10と、磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石10側に配置された磁性部材21Eとが、磁石幅方向で接している点が違う。磁石10と磁性部材21Eとが磁石幅方向で接している場合でも、界磁子1Eの磁石10の一端15から他端16に向けて磁極境界線11の傾きが大きくなっていても、着磁の際に磁石10の磁極境界線11の傾きの大きい端部16で着磁ヨーク800の漏れ磁束の影響を受けにくく、界磁子1Eの磁石10を精度良く着磁することができる。さらには、磁石10と磁石支持構造20の外周に配置された磁性部材21Eとが磁石幅方向で接していることから、界磁子1Eの製造時に磁石10の磁石支持構造20に対する磁石幅方向の位置を正確に位置決めすることができる。磁石10の磁石支持構造20に対する磁石幅方向の位置が正確になることで、着磁ヨーク800における磁石支持構造20に基づいた磁石10の位置が正確になって、磁石10への着磁を精度良く行うことができる。
また、本開示の実施の形態1では、磁極境界線11の傾きが周方向で正となる方向に傾いている例で説明したが、磁極境界線の傾きは周方向で負となる方向に傾いていてもよい。図9は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子における磁極境界線が図2とは反対方向に傾いている変形例の側面図である。図9における界磁子1Fでは、図2とは違い、磁極境界線11Fの傾きが周方向で負となる方向に傾いている。磁極境界線11Fの傾きが周方向で負となる方向に傾いている場合でも、磁性部材21は磁石10Fに対して磁石10の磁石幅方向の端部のうち磁極境界線の傾きが大きい方の端部である他端16の外側に配置している。また、磁極境界線11Fの全ての区間の直線111F、112F、113Fの傾きが磁石10Fの周方向で同じ負の方向に傾きの大きさが0以上となっており、各直線が折れ点121F、122Fで接続されている。このように、磁極境界線11Fの傾きが周方向で負となる方向に傾いている場合でも、磁極境界線の傾きが周方向で正となる方向に傾いている場合と同様に、界磁子1Fの磁石10Fの一端15から他端16に向けて磁極境界線11の傾きが大きくなっていても、着磁の際に磁石10Fの磁極境界線11Fの傾きの大きい他端16側の端部で着磁ヨークの漏れ磁束の影響を受けにくく、界磁子1Fの磁石10Fを精度良く着磁することができる。
また、本開示の実施の形態1では、磁極境界線11は磁石幅方向に対する磁極境界線11の傾きが異なる磁石幅方向の区間を3つ有する例で説明したが、磁極境界線は磁石幅方向に対する磁極境界線の傾きが異なる磁石幅方向の区間を4つ以上有してもよい。図10は、本開示の実施の形態1にかかる界磁子における磁極境界線の磁石幅方向に対する傾きが異なる区間が4つある変形例の側面図である。図10において、磁石10Gの磁極境界線11Gは磁石幅方向に対する磁極境界線の傾きが異なる磁石幅方向の区間を区間D1G、D2G、D3G、D4Gの4つ有している。磁極境界線11Gは、区間D1Gにおける直線111G、区間D2Gにおける直線112G、区間D3Gにおける直線113G、区間D4Gにおける直線114Gが、折れ点121G、122G、123Gで接続されて、構成されている。各区間における磁極境界線である直線111G、112G、113G、114Gの磁石幅方向に対する傾きは全て異なる。区間D1G、D2G、D3G、D4Gの全ての区間の磁極境界線の傾きは、第一の方向の同じ向きである正方向に傾きの大きさが0以上の傾きとなっている。区間D1G、D2G、D3G、D4Gの各区間の磁極境界線11Gの傾きの大きさは磁石10Gの磁石幅方向で一端15側の区間から他端16側の区間になるほど大きくなっている。このように、磁極境界線の磁石幅方向に対する傾きが異なる区間が4つある場合でも、界磁子1Gの磁石10Gの一端15から他端16に向けて磁極境界線11Gの傾きが大きくなっていても、着磁の際に磁石10Gの磁極境界線11Gの傾きの大きい端部16で着磁ヨークの漏れ磁束の影響を受けにくく、界磁子1Gの磁石10Gを精度良く着磁することができる。また、最も一端15側の区間D1Gの磁極境界線111Gを当該磁石幅より小さい磁石幅の磁極境界線と重ねる傾きとし、最も他端16側の区間D4Gの磁極境界線114Gを当該磁石幅より大きい磁石幅の磁極境界線と重ねる傾きとすることで、磁石幅の異なる磁石の磁極境界線を磁石幅の端部で部分的に重ねることができ、磁石幅が違う複数の種類の界磁子について、着磁ヨークを部分的に共用できるようにし、着磁の設備を小さくすることができる。
また、本開示の実施の形態1では、磁石支持構造20はシャフトでありシャフトの外周に磁性部材21を備える例で説明したが、磁石支持構造20は界磁子コアであり、磁石10の磁石幅方向で他端16側の外側において界磁子が界磁子コアの外周に配置され磁性体により構成される磁性部材を有してもよい。また、本開示の実施の形態1では磁性部材21は磁石支持構造20の外周に接合されて備える例で説明したが、磁性部材21は磁性体で構成される磁石支持構造20と一体であってもよい。
実施の形態2.
図11は、本開示の実施の形態2にかかる界磁子の側面図である。図11において、図2と同じ符号を付けたものは、同一または対応する構成を示しており、その説明を省略する。本開示の実施の形態1とは、界磁子1Hが備える磁石10Hの磁極境界線11Hの磁石幅方向に対する傾きの大きさが、磁石幅方向において磁石10Hの一端15から他端16に向かうほど、連続的に大きくなっていることが相違している。磁極境界線11Hは、磁極面14上の第一の方向と垂直な方向である磁石幅方向に対して、全て同じ方向に傾きの大きさが0以上で傾いている。本開示の実施の形態1では、磁極境界線11は磁石幅方向に対する磁極境界線11の傾きが異なる磁石幅方向の区間を3つ有したが、実施の形態2の磁極境界線11Hでは傾きが異なる区間が一端15と他端16との間に無限個あることに相当する。本開示の実施の形態1と同様に、界磁子1Hは回転子であり、磁石10Hは中心軸AXを中心とする円筒形の円筒形磁石である。
図11において、磁石10Hにおける磁極境界線11Hの傾きは、磁石11Hの磁石幅方向の一端15から他端16に向かうほど連続的に大きくなっている。このため、磁極境界線11Hを磁石幅方向で一端15から他端16に向けて任意の3つの区間D1H、D2H、D3Hに分けた場合に、磁極境界線11Hの区間D1H、D2H、D3Hの各区間での傾きは異なる。また、区間D1H、D2H、D3Hの隣り合う2つの区間の磁極境界線11Hは互いに接続されている。区間D1H、D2H、D3Hの各々の区間の磁極境界線11Hは、磁石幅方向に対して全て同じ方向に傾きの大きさが0以上で傾いている。磁極境界線11Hの傾きの大きさは、磁石幅方向において磁石の一端側の区間D1Hから他端側の区間D3Hになるほど大きくなっている。
このようなことから、実施の形態2の界磁子1Hでは、実施の形態1の界磁子1と同様に、磁石幅の異なる複数の種類の磁石の磁極境界線11Hを磁石幅の端部で部分的に重ねることがしやすく、界磁子1Hの磁極境界線11Hに磁石幅方向に対する傾きを設けても、磁石幅が違う複数の種類の界磁子について、着磁ヨークを部分的に共用でき、着磁の設備を小さくすることができる。
さらに、磁極境界線11Hの傾きは、磁石11Hの磁石幅方向の一端15から他端16に向かうほど連続的に大きくなっていることから、磁石幅が違う界磁子と任意の長さの区間で磁極境界線を重ねることができる。また、着磁ヨークにおいて磁石幅方向の一方向に向かうほど磁極境界線の傾きが連続的に大きくなる曲線となる結合線に沿って着磁できるようにし、その結合線から任意の磁石幅で切り取った曲線をその磁石の磁極境界線とすれば、任意の磁石幅の磁石を着磁することができる。
図12は、本開示の実施の形態2にかかる界磁子の磁石の外周面を周方向が平面となるよう展開し、1つの磁極境界線に着目して示した部分展開図である。図12において、磁石10Hの磁極面上の第一の方向である周方向は展開されて直線となっており、周方向はθ軸の矢印で示されている。磁石10Hの磁極面上の第一の方向と垂直な方向である磁石幅方向はZ軸の矢印で示されている。本開示の実施の形態2にかかる界磁子1Hが備える磁石10Hにおいて、磁極境界線11Hの磁極面上での形状は、磁極面である外周面を平面に展開した場合に、外周面を展開した平面に描かれる楕円181の一部となる曲線である。すなわち、磁石10Hの磁極面上における磁極境界線11H上の任意の点n(Zn,θn)が、点p(Zp,θp)を中心とした楕円141の軌跡上に存在する。
複数の種類の幅の磁石について、それぞれの磁極境界線を同じ楕円181の一部となる曲線とすることで、楕円181の曲線に対応した磁極境界線を着磁できる1種類の着磁ヨークにより、複数の種類の磁石幅の磁石の着磁を行うことが可能となる。また、任意の幅の磁石についても、磁極境界線を同じ楕円の一部となる曲線とすることで、任意の幅の磁石の磁極境界線を1つの楕円に重ねることができ、楕円の曲線に対応した磁極境界線を着磁できる1種類の着磁ヨークにより、任意の幅の磁石の着磁を行うことができる。
また、磁極境界線11Hの磁石10Hの磁極面上での形状を、楕円181の一部となる曲線とすることで、楕円181の短軸の長さaおよび長軸の長さbと、楕円の中心点p(Zp,θp)の磁石10Hとの相対位置で、磁極境界線11Hの傾き形状の調整ができ、磁極境界線11Hの形状の設計がしやすくなる。
また、磁極境界線11Hの磁石10Hの磁極面上での形状を、楕円181の一部となる曲線とすることで、磁極境界線11H全体で傾きが連続的に変化して滑らかとなり、磁石10Hにおいて一端15から他端16までの間で磁束の急激な変化が少ない滑らかな磁束分布特性とすることができる。
本開示の実施の形態2の界磁子1Hでは、以上のように、第一の方向に沿って複数のN極と複数のS極とが交互に着磁された面である磁極面14を有し、磁極面14上の隣り合うN極とS極との境界である磁極境界線11Hは磁極面14上の第一の方向と垂直な方向である磁石幅方向に対して全て同じ方向に傾きの大きさが0以上で傾いており、磁極境界線11Hの傾きの大きさは磁石幅方向において一端15から他端16に向かうほど大きくなっている磁石10Hと、磁極面14と垂直な方向である磁石厚さ方向において磁石10Hの磁極面14と反対側の磁石固定部17に接合されて磁石10Hを支持する磁石支持構造20と、磁石10Hの磁石幅方向で他端16側の外側、かつ、磁石支持構造20の磁石厚さ方向で磁石10H側に配置され、磁性体により構成された磁性部材21とを備え、磁性部材21の磁石厚さ方向で磁石支持構造20側と反対側の端部である外周端面22は、磁石厚さ方向において磁石固定部17と磁極面14との間に位置し、磁極境界線11Hの傾きの大きさは磁石幅方向において一端15から他端16に向かうほど連続的に大きくなっているので、界磁子1Hの磁石10Hの一端15から他端16に向けて磁極境界線11Hの傾きが大きくなっていても、着磁の際に磁石10Hの磁極境界線11Hの傾きの大きい他端16側の端部で着磁ヨークの漏れ磁束の影響を受けにくく、界磁子1Hの磁石10Hを精度良く着磁することができる。また、界磁子1Hの磁極境界線11Hに磁石幅方向に対する傾きを設けても、磁石幅が違う複数の種類の界磁子1Hについて、着磁ヨークを部分的に共用でき、着磁の設備を小さくすることができる。
さらには、着磁ヨークにおいて磁石幅方向の一方向に向かうほど傾きが連続的に大きくなる曲線となる結合線に沿って着磁できるようにし、その結合線から任意の磁石幅で切り取った曲線をその磁石幅の磁石の磁極境界線とすることで、任意の磁石幅の磁石を着磁することができる。
さらには、磁極境界線11H全体で傾きが連続的に変化して滑らかとなり、磁石10Hにおいて一端15から他端16までの間で磁束の急激な変化が少ない滑らかな磁束分布特性とすることができる。
さらに、磁極境界線11Hの磁石10Hの磁極面上での形状は、楕円181の一部となる曲線であるようにしたことで、楕円181の短軸の長さaおよび長軸の長さbと楕円の中心点p(Zp,θp)の磁石10Hとの相対位置で、磁極境界線11Hの傾き形状の調整ができ、磁極境界線11Hの形状の設計がしやすくなる。
なお、本開示の実施の形態では、界磁子が備える磁石である円筒形磁石の外周面が複数のN極と複数のS極とが着磁された磁極面である例で説明したが、円筒形磁石の内周面が磁極面であってもよい。本開示の実施の形態では、界磁子は電動機において電機子の内側に配置されるが、円筒形磁石の内周面が磁極面である場合は、界磁子は電動機において電機子の外側に配置される。
また、本開示の実施の形態では、界磁子が回転子であり電機子が固定子である例で説明したが、界磁子が固定子であり電機子が界磁子に対して動いてもよい。
また、本開示の実施の形態では、界磁子が回転子であり、界磁子が備える磁石である円筒形磁石の外周面が複数のN極と複数のS極とが着磁された磁極面である例で説明したが、界磁子がリニアモータの固定子であり、界磁子が備える磁石は直方体の磁石であり、直方体の磁石の表面の平面が磁極面であってもよい。その場合、第一の方向は、直線的な方向となる。電動機は回転電機である例で説明したが、電動機はリニアモータであってもよい。また、界磁子はリニアモータの固定子に対して直線的に移動する移動子であってもよく、その場合、電動機であるリニアモータの電機子が固定子となる。
なお、本開示は、開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせることや、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。