JP4919427B2 - 溶融めっき鋼板の温間加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐食性,耐熱性に優れた溶融めっき鋼板又は塗装溶融めっき鋼板を素材とし、建材,熱器具等に使用される温間加工方法に関する。
屋根,壁,柱,梁等の建材には、耐食性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板や溶融アルミニウムめっき鋼板、さらにこれらを塗装原板とする塗装溶融めっき鋼板が使用されている。近年では、溶融亜鉛めっき鋼板の耐食性をさらに向上させるため、Alを添加した溶融Zn‐Alめっき層やAl,Mgを複合添加した溶融Zn‐Al‐Mg合金めっき層を設けた溶融めっき鋼板も使用されている。塗装溶融めっき鋼板は、建材用途に限らず、屋外に設置される家電製品の筐体,収納庫等の素材として、耐熱性に優れた塗装溶融めっき鋼板ではレンジ,オーブン,トースター等の熱器具用素材としても使用されている。
溶融めっき鋼板や塗装溶融めっき鋼板を各種用途に使用する場合、プレスやロール成形で所定形状に加工されるが、溶融めっき鋼板や塗装溶融めっき鋼板を曲げ加工すると下地鋼板よりも延性に劣るめっき層にクラックが発生しやすい。クラックを介して下地鋼が露出すると腐食の起点となり、加工部の耐食性が低下する。このため、溶融めっき鋼板や塗装溶融めっき鋼板を屋根や外壁に用いる場合、クラックを介した下地鋼の露出部に白錆や赤錆が早期に発生し、屋根,外壁等の見栄えが著しく劣化する。
特に塗装溶融めっき鋼板では、塗膜にクラックがなくても、めっき層にクラックがあると、塗膜を透過した腐食性イオンにより腐食が促進され塗膜フクレの原因となり、外観を低下させている。
オーブントースター,ガスレンジのグリル,ストーブの熱反射板等の熱器具用部材に溶融めっき鋼板や塗装溶融めっき鋼板を使用する場合でも同様な問題がある。熱器具用途では耐食性に加えて耐熱性も要求されるので、溶融Zn-Al系めっき鋼板,溶融アルミニウムめっき鋼板が素材として使用されるが、加工時にクラックがめっき層に発生することは同様である。クラックを介して露出した下地鋼が高温雰囲気に曝されると、めっき層/下地鋼の界面で酸化が進行し、耐熱性が低下することは勿論、酸化物生成時の体積膨張による界面剥離も懸念される。
延性に優れた表面処理鋼板の製造方法として、Zn-Al系超塑性合金板を鋼板に圧接し、或いは超塑性合金粉末を200〜300℃に加熱しながら噴射して鋼板を被覆する方法が知られている(特許文献1)。しかし、Zn-Al系超塑性合金は300〜400℃の溶体化後に急冷し、圧延,鍛造等で金属組織を微細化する必要がある。また、超塑性合金板を鋼板に圧接し、或いは超塑性合金粉末を噴射して鋼板を被覆することは、製造コストを上げる要因である。しかも、Zn-Al系では、200〜300℃の温間で非常に小さな歪み速度(10-2/秒程度)で加工した場合に超塑性現象が現れるに過ぎず、室温でのプレスやロールフォーミングのような条件下の加工温度,加工速度では超塑性が発現せず却って低い延性の影響が強く現れる。
また、溶融めっき鋼板の加工性を改善するため、従来から種々の方法が提案されている。例えば、特許文献2では、固溶Nを適正管理した組成にTi,Bを複合添加してフェライト粒を微細化した高張力熱延鋼板を150〜300℃で温間加工することを紹介しており、亜鉛めっき層,合金化亜鉛めっき層等を設けためっき鋼板も対象としている。しかし、鋼板表面に形成されるめっき層に関し溶融亜鉛めっき層,合金化溶融亜鉛めっき層が実施例に掲げられているに留まり、めっき層の物性,加工温度,曲げ加工性改善効果等は不明である。ましてや、溶融めっき鋼板を塗装原板とする塗装鋼板の加工性を窺い知ることはできない。
特開昭64‐31945号公報 特開2001‐234282号公報
溶融めっき鋼板の加工性に関し、熱間成形,ポスト焼鈍等で加工性を改善する方法も一部で採用されているが、温間ロール成形時の加工性を問題にした研究報告は僅かである。また、溶融めっき鋼板の加工性改善には有効な方法であっても、塗膜が熱的ダメージを受けやすい塗装溶融めっき鋼板には適用できない場合がある。
そこで、本発明者等は、溶融めっき鋼板を加工する際に板温を種々変更し、板温が溶融めっき層の加工性に及ぼす影響を調査した。その結果、意外にも50℃以上の温度域に板温を管理すると、下地鋼とめっき層との延性差が小さくなり、溶融めっき層に発生しがちなクラックが大幅に減少することを見出した。
さらに、本発明者等は、加工性に及ぼす加工温度の知見をさらに発展させ、加工温度の適正管理が塗装溶融めっき鋼板にも有効であり、化成皮膜を介して高延性塗膜を設けた塗装溶融めっき鋼板では溶融めっき層,塗膜共に加工性が改善されることを見出した。
本発明は、かかる知見をベースとし、溶融めっき鋼板又は塗装溶融めっき鋼板を加工する際に溶融めっき層,さらには塗膜の物性を考慮した温度域に板温を管理することにより、溶融めっき層,塗膜に導入される加工欠陥が少なく、溶融めっき層,塗膜本来の耐食性、耐熱性を発揮できる温間加工方法を提供することを目的とする。
本発明の温間加工方法では、溶融めっき層がZn‐Alめっき層,Zn‐Al‐Mgめっき層,Zn‐Al‐Mg‐Siめっき層,Alめっき層又はAl‐Siめっき層である溶融亜鉛系又は溶融アルミニウム系のめっき鋼板の溶融めっき層の上に化成皮膜を形成しためっき鋼板を50℃以上で150℃未満の温度域に加熱保持し、溶融めっき層の延性が増加した加熱保持状態のめっき鋼板を、当該溶融めっき層が20%以下の伸び率で変形されるように目標形状に加工することを特徴とする。
めっき鋼板の温度を50℃以上に管理する理由は前述のとおりであるが、鋼板の温度を過度に高くすることによりめっき層の加工性は改善されるが、めっき鋼板の原板の機械的性質が劣化することがある。これは、めっき原板が青熱脆性を起こし、延性が低下することによると考えられる(非特許文献1)。そのため、青熱脆性の防止のため、温間加工温度は加工温度を150℃未満に設定する。
門間改三著「実教理工学全書鉄鋼材料学」117ページ、実教出版株式会社(1972年)
温間加工に先立って溶融めっき層を化成皮膜で被覆してもよい。化成皮膜としては、リン酸亜鉛皮膜,クロメート皮膜,クロムフリー皮膜が挙げられる。
溶融めっき層には、Al:0.1〜0.3質量%を含むZnめっき層,Al:25〜75質量%を含むZn‐Alめっき層,Zn‐Al-Mg合金めっき層,Zn‐Al‐Mg‐Siめっき層,純Alめっき層,Si:5〜15質量%のAl‐Siめっき層等がある。Zn‐Al‐Mg又はZn‐Al‐Mg‐Siめっき層は、Al:4〜22質量%,Mg:1〜4質量%,必要に応じSi:0.005〜2.0質量%を含むZnベースの組成をもち、さらにTi:0.002〜0.1質量%,B:0.001〜0.045質量%の一種又は二種を含むことができる。
また、Zn‐Al‐Mg又はZn‐Al‐Mg‐Si合金めっき鋼板は、加工性にとって不利な金属間化合物を含む溶融めっき層が形成されているので、溶融めっき層のMg濃度CMg(質量%)を基準とし、33+17CMg≦T<150を満足する加工温度T(℃)に板温を保持して加工することが好ましい。
本発明の温間加工方法は、溶融めっき鋼板に化成皮膜を施し、さらに高延性塗膜が形成された塗装溶融めっき鋼板にも適用することができる。
化成皮膜の上に高延性塗膜を形成する際には、化成処理に先立ってNi置換処理を施すことが好ましい。
高延性塗膜としてはポリエステル樹脂系塗膜,高分子ポリエステル樹脂系塗膜,ウレタン樹脂系塗膜,アクリル樹脂系塗膜、フッ素樹脂系塗膜、又は塩化ビニル樹脂系塗膜のものが挙げられる。
本発明では、溶融亜鉛系又は溶融アルミニウム系のめっき鋼板を加工する際、被加工めっき鋼板を50℃以上で150℃未満の温度域に管理している。このために、下地鋼とめっき層との延性差が小さくなり、溶融めっき層に発生しがちなクラックを大幅に低減することができている。樹脂塗装を施しためっき鋼板でも同様に、加工温度を50℃以上で150℃未満の温度域に保つと、塗膜の下の溶融めっき層に発生しがちなクラックを大幅に低減することができる。
したがって、本発明により、溶融めっき層,塗膜本来の耐食性、耐熱性を発揮できる温間加工成形品を提供することができる。
本発明者等は、種々の溶融めっき鋼板について溶融めっき層の加工性と加工温度との関係について調査した。その結果、溶融亜鉛めっき鋼板,Alを含む溶融亜鉛めっき鋼板,溶融Zn-Alめっき鋼板,溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板、溶融Zn−Mg−Al系めっき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板,溶融Al-Si系めっき鋼板等の溶融めっき鋼板は何れも、溶融めっき層の延性が室温では下地鋼より小さいためクラックが入りやすい傾向にある。しかし、50℃以上に加熱すると溶融めっき層の延性が大きくなり、溶融めっき層の組成,加工温度によっては下地鋼と同じレベルまで延性が向上することがわかった。
延性の向上は、加工された溶融めっき層のメタルフローが下地鋼のメタルフローに近づき、溶融めっき層に導入される歪みが減少し、結果としてクラック発生が抑えられることを意味する。この現象は、塗装溶融めっき鋼板を加工したときも全く同様である。かかる観点から、加工温度が加工性に及ぼす影響を調査・検討した結果、加工温度:50℃以上(好ましくは、60℃以上)で加工性改善効果がみられた。しかし、過度に加工温度を高くするとめっき原板が青熱脆性を起こし、却って延性が低下することにもなりかねない。そのため、加工温度を150℃未満に設定して青熱脆化による延性の低下を防止する。過度に高い加工温度は、加工による溶融めっき層のカジリ,加工油や化成皮膜の変質,熱消費量の増大等の原因にもなる。
加工温度は、溶融めっき層,塗膜の種類,加工度に応じ50℃以上で150℃未満の温度域で適宜調整されるが、溶融めっき層に金属間化合物が生成しない溶融亜鉛めっき鋼板や溶融Zn‐Al系めっき鋼板では、50℃以上150℃未満の範囲内で比較的低い値に加工温度を設定しても大きな加工性改善効果が得られる。めっき層に金属間化合物Zn2Mgが含まれる溶融Zn‐Al‐Mg系めっき鋼板では、当該温度域のうちで高い加工温度に設定して加工性改善効果を大きくする。また、加工度が小さな加工では十分な加工性が得られる程度の温度まで加熱すればよく、製造コストの低減にもつながる。
塗装溶融めっき鋼板の場合の原板には、溶融亜鉛めっき鋼板,溶融アルミニウムめっき鋼板,溶融Zn‐Al系めっき鋼板,溶融Zn‐Al‐Mg系めっき鋼板等があるが、50℃以上で150℃未満の温度域に加工温度を管理する限り、何れのめっき鋼板或いは塗装原板でも加工性改善効果が得られる。50℃以上に板温を保持すると、溶融めっき層の延性が増加して下地鋼に近づき、加工中の溶融めっき層が下地鋼に類似する伸び(メタルフロー)を示し加工歪みが緩和される。また、塗膜の延性が高いことと相俟って溶融めっき層,塗膜に導入されるクラック,剥離等の加工欠陥が大幅に減少する。
本発明の塗装溶融めっき鋼板に用いられる高延性塗膜としては、ポリエステル樹脂系塗膜,高分子ポリエステル樹脂系塗膜,ウレタン樹脂系塗膜,アクリル樹脂系塗膜、フッ素樹脂系塗膜、又は塩化ビニル樹脂系塗膜が挙げられる。これらの樹脂系塗膜は、いずれも塗膜熱分解温度又は塗膜溶融温度が170〜200℃前後であるので、温間加工温度を50℃以上で150℃未満とすれば、加工温度による塗膜が特性劣化を起こさず、高延性塗膜本来の特性が発揮される状態で加工を行うことができる。
温度管理には、溶融めっき鋼板或いは塗装溶融めっき鋼板を直接又は間接に加熱する方法,加熱保持された加工治具からの熱伝達で溶融めっき鋼板或いは塗装溶融めっき鋼板を加熱する方法,溶融めっき鋼板或いは塗装溶融めっき鋼板及び加工治具の双方を加熱する方法等が採用される。大きな加工発熱が予想される溶融めっき鋼板或いは塗装溶融めっき鋼板の温間加工では、加工発熱による昇温を取り込んで最適加工温度が得られるように加工温度を目標値より若干低く設定する。或いは、加工中の溶融めっき鋼板或いは塗装溶融めっき鋼板又は加工治具を冷却し、150℃を超える昇温を回避する場合もある。
所定の加工温度に保持された溶融めっき鋼板或いは塗装溶融めっき鋼板を加工して所定形状に成形する。
加工方法は主にロール成形による曲げ加工やプレスによる曲げ加工、絞り加工、張り出し加工が用いられているが、本発明では特に加工方法は限定されない。
以下、温間加工が適用される溶融めっき鋼板をめっき種ごとに説明する。
溶融亜鉛めっき鋼板
建築用部材として多用されているめっき鋼板であり、めっき層/下地鋼の界面に脆弱なFe-Zn合金層が生成しやすい。Fe‐Zn合金層の悪影響を抑えるため、加工温度を50℃以上に設定することが必要であるが、溶融めっき層の延性が加工温度の上昇に伴って急激に改善されるので、60℃前後の加工温度で良好な加工性が確保される。Fe‐Zn合金層の生成は、0.1〜0.3質量%のAlを含ませることによっても抑制できる。
溶融Zn-Al系めっき鋼板
25〜75質量%と比較的多量のAlを溶融めっき層に含ませた溶融Zn‐Al系めっき鋼板は優れた耐食性を呈するが、溶融めっき層/下地鋼の界面にFe‐Al合金層が生成しやすい。Fe‐Al合金層が成長するとめっき密着性が低下し、溶融めっき鋼板の加工時に溶融めっき層に亀裂や剥離が発生しやすくなる。
Fe-Al合金層の成長に起因するめっき密着性低下を防止するため、50℃以上で150℃未満の温度域で溶融めっき鋼板を加工する。この加工温度では、Fe-Al合金層が成長せず、加工時の良好なめっき密着性が維持される。めっき密着性に及ぼすFe-Al合金層の悪影響は、0.1質量%以上のSiを溶融めっき層に含ませることでも抑制できる。Siの増量に伴いFe‐Al合金層の成長が抑制されるが、Si添加の効果は5質量%で飽和する。
溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板
Al,Mgを複合添加した溶融めっき層であり、通常の溶融亜鉛めっき層に比較して格段に優れた耐食性を呈する。溶融Zn‐Al‐Mg系めっき鋼板では、Zn11Mg2相が生成すると表面肌が悪化するが、Zn11Mg2相の生成はTi,Bの添加で抑制できる。また、比較的多量(10質量%以上)のAlを含む系では加工性に有害なFe‐Al相が溶融めっき層/下地鋼の界面に生成しやすいが、Si:0.005〜2.0質量%の添加によりFe-Al相の生成を抑制できる。
Zn‐Al‐Mg系又はZn‐Al‐Mg‐Siの何れにおいてもZn相,Al相,Zn2Mg相が微細分散したZn/Al/Zn2Mg三元共晶組織を基本とし、金属間化合物のない溶融亜鉛めっき鋼板,溶融Zn−Al系めっき鋼板,溶融アルミニウムめっき鋼板に比較すると加工性に劣ることが否めない。
例えば、Al:6質量%,Mg:1〜4質量%の溶融Zn‐Al‐Mgめっき鋼板を曲げ半径:1.0mm,曲げ角度:90度,曲げ加工温度:20〜150℃で曲げ加工したときに発生したクラックの面積率を測定し、加工温度,溶融めっき層のMg濃度と加工性との関係を調べると、図1に示す通りになる。溶融めっき層のMg濃度CMg(質量%)及び加工温度T(℃)が加工性に影響を及ぼしていることがわかる。なお、クラック面積率は、曲げ加工部を200倍でSEM観察し、0.4mm×0.5mmの視野にみられるクラック面積を測定し、クラック面積を観察視野(0.2mm2)で除して100倍することにより求めた。
そして、加工性は、クラック面積率が2%以下で平坦部とほぼ同等な耐食性が得られる加工温度域を○、また、クラック面積率が2%超〜5%以下であったものを□、5%超〜10%以下であったものを△、10%超であったものを×で評価した。
溶融めっき層のMg濃度CMgが高くなると金属間化合物Zn2Mgの生成量が増加するので、T=A+17CMgの直線で示す温度以上に加工温度を設定する必要がある。しかし、150℃以上の加工温度では、めっき原板に青熱脆性が発生しやすい。そのため、溶融Zn‐Al‐Mg合金めっき鋼板の適正な加工温度T(℃)は、溶融めっき層のMg濃度CMg(質量%)との関連で次式の範囲に定められる。
A+17CMg≦T<150
ただし、Aは目標とするクラック面積率によって異なる定数であり、5%以下ならA=33であり、2%以下ならA=43である。
溶融アルミニウム系めっき鋼板
アルミニウムめっき層は、亜鉛系のめっき層に比較して耐食性,耐熱性に優れている。そこで、過酷な腐食環境,高熱雰囲気に曝されるオーブント−スタ,ガスレンジのグリル,ストーブの熱反射板等、熱器具用部材として好適な材料である。純Alめっき層を設けた溶融アルミニウムめっき鋼板も実用化されているが、溶融めっき層/下地鋼の界面にFe-Al合金層が生成し加工性が低下することが避けられない。Fe-Al合金層の生成は5質量%以上のSi添加で抑制できるが、過剰添加は硬質な初晶シリコンの晶出を招き却って加工性低下をもたらすのでSi添加量の上限を15質量%とする。
Al系の溶融めっき鋼板にあっても、50℃以上で150℃未満の温度域で温間加工することにより加工欠陥なく溶融めっき鋼板を所定形状に成形できる。溶融めっき層の延性向上効果は、Zn系ほどではないが加工温度が高くなるに従って延性が増加し、70℃以上で溶融めっき層に導入される加工欠陥が大幅に減少する。
各溶融めっき鋼板に及ぼす加工温度の影響は前述の通りであるが、溶融めっき層の延性と下地鋼の延性との差を加工性の指標とすることも可能である。
溶融めっき鋼板を引張り試験すると、室温では溶融めっき層と下地鋼との延性差が大きく、伸び率が5%を超えると溶融めっき層表面のクラック面積率が5%を超える。他方、50℃以上で150℃未満の温度域で引張り試験すると、伸び率:20%までは溶融めっき層が下地鋼とほぼ同等の延性を示し、クラック面積率が5%以下に規制される。しかし、20%を超える伸び率では、溶融めっき層が下地鋼の塑性変形に追従できなくなり、クラック面積率が5%を超える。
本発明の溶融めっき鋼板は、さらに化成皮膜を形成しても良いし、さらにその上に高延性塗膜を形成したものでも良い。
化成皮膜
化成皮膜は、クロメート処理,リン酸亜鉛処理,クロムフリー処理等の化成処理で形成され、一層優れた耐食性を溶融めっき鋼板に付与する。溶融めっき層のクラック発生が温間加工で抑えられても、加工部では溶融めっき層が伸ばされて薄くなり、未加工部との比較で耐食性の低下が懸念される。この点、溶融めっき層に化成皮膜を設けておくと、溶融めっき層が薄くなった加工部でも化成皮膜の防食効果が発現する。
自己修復作用のある化成皮膜を設けると、加工欠陥が導入された部分でも溶融めっき層が化成皮膜で覆われ、或いは化成皮膜から溶出・再析出した腐食抑制剤で加工欠陥が補修されるので、加工後の耐食性も向上する。
自己修復作用のある化成皮膜としては、六価Cr含有クロメート皮膜やフッ化物、Mn,バルブメタル(Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W)酸素酸塩等を含むCrフリー皮膜がある。また、リン酸塩類はpH緩衝作用による耐食性改善効果を呈し、加工後耐食性の向上にも有効な皮膜成分である。
クロメート皮膜の場合、耐食性,或いはその後の塗膜密着性を確保するためCr換算付着量を5〜100mg/m2の範囲に調整することが好ましい。5mg/m2未満では耐食性,塗膜密着性の改善効果が小さく、100mg/m2を超える付着量では改善効果が飽和する。
クロムフリー皮膜としては、チタン化合物,フッ化物,ジルコニウム化合物,有機樹脂を含む有機-無機複合皮膜を効果的に使用できる。チタン系クロムフリー皮膜では、Ti換算付着量を10〜80mg/m2の範囲に調整することが好ましい。10mg/m2未満では耐食性,塗膜密着性の改善効果が小さく、80mg/m2を超えると効果が飽和する。リン酸亜鉛皮膜では、耐食性,塗膜耐水二次密着性を向上させるためNi,Mn,Mg等を添加しても良い。リン酸塩付着量は、十分な耐食性,塗膜密着性の改善効果を得るため0.5mg/m2以上が好ましいが、5g/m2を超える付着量では効果が飽和する。なお、塗膜密着性向上のため、化成処理に先立ってNi付着量:3〜30mg/m2のNi置換処理を施しても良い。
高延性塗膜
塗装溶融めっき鋼板を目標形状に加工してもクラック,剥離等の加工欠陥が塗膜に導入されないように、塗装原板の塑性変形に追従する高延性の塗膜が使用される。塗膜は、塗膜厚み:20μmのとき、50℃で塗膜伸び率:50%以上の延性を呈するものが好ましく、ポリエステル樹脂系塗膜,高分子ポリエステル樹脂系塗膜,ウレタン樹脂系塗膜,アクリル樹脂系塗膜、フッ素樹脂系塗膜、又は塩化ビニル樹脂系塗膜が挙げられる。
ポリエステル樹脂系塗膜は、メラミン硬化型ポリエステル樹脂を主成分とし、ガラス転移温度:約35℃である。ガラス転移温度以下の室温では、塗膜伸び率が約30%(塗膜厚み:20μm)であるが、50℃以上に加熱すると高延性を示す。
高分子ポリエステル樹脂系塗膜は、平均分子数が1000〜20000のメラミン硬化型ポリエステル樹脂を主成分とし、ガラス転移温度:約26℃であり、室温でも塗膜伸び率:100%以上(塗膜厚み:20μm)の高延性を示す。
ウレタン樹脂系塗膜は、イソシアネート硬化型ポリエステル樹脂を主成分とし、ガラス転移温度:約20℃であり、室温でも塗膜伸び率が200%以上(塗膜厚み:20μm)の高延性を示す。
アクリル樹脂系塗膜は、ポリアクリル酸メチル樹脂およびポリメタクリル酸メチル樹脂を主成分とし、ガラス転移温度:約50℃であり、ガラス転移温度以下の室温では塗膜伸び率は数%(塗膜厚み:20μm)であるが、50℃以上に加熱すると塗膜伸び率は50%以上(塗膜厚み:20μm)の高延性を示す。
フッ素樹脂系塗膜は、ポリフッ化ビニル樹脂を主成分とし、ガラス転移温度:約45℃,塗膜溶融温度:約170℃で耐食性,塗膜密着性共に優れている。
塩化ビニル樹脂系塗膜は、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とし、ガラス転移温度:約50℃であり、50℃以上に加熱すると伸び率100%(塗膜厚み:20μm)の高延性を示す。
何れも、ガラス転移温度が50℃以下の樹脂系塗膜であるので、50℃以上の加熱でゴム化することにより高延性を塗膜に付与できる。また、これらの樹脂系塗膜を施した塗装溶融めっき鋼板を製造する際の焼付け温度は、210〜240℃の範囲にあり、塗膜厚みを5〜40μmの範囲に調整することが好ましい。5μmに満たない塗膜厚みでは延性,耐食性に劣り、40μmを超える厚膜では耐食性改善効果が飽和して製造コストが高くなる。
下地鋼板に対する高延性塗膜の密着性は、エポキシ樹脂系塗膜,ポリエステル樹脂系塗膜等をプライマ(下塗り)として介在させることにより向上する。しかも、ガラス転移温度:50℃以下,50℃における塗膜伸び率:50%以上(塗膜厚み:20μm)の高延性塗膜を設けると、プライマのクラックも好適に抑制される。
実施例1;
板厚:1.0mm,板幅:1000mmの低炭素Alキルド鋼をめっき原板とし、連続溶融めっきラインで片面当りめっき付着量:90g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板,溶融Zn‐Al系めっき鋼板,溶融Zn‐Al‐Mg系めっき鋼板,溶融アルミニウムめっき鋼板を製造した。各溶融めっき鋼板をロール成形により曲げ加工を含む温間加工試験に供し,曲げ加工部を腐食試験に供した。また、曲げ加工部の耐食性に及ぼすクロメート皮膜の影響を調査するため、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融Zn‐Al系めっき鋼板、溶融Zn‐Al‐Mg系めっき鋼板ではCr換算付着量:30mg/m2,溶融アルミニウムめっき鋼板ではCr換算付着量:15mg/m2のクロメート処理を施した。
温間加工試験では、溶融めっき鋼板,成形ロール共に加工温度:50〜250℃に加熱保持し、曲げ半径:1.0mm,曲げ角度:90度で温間曲げ加工した。比較のため、板温:20℃でも同じ溶融めっき鋼板を曲げ加工した。
曲げ加工した溶融めっき鋼板の曲げ加工部を走査型電子顕微鏡で観察し、めっき層表面を200倍の倍率で撮影した画像から0.4mm×0.5mmの視野を特定し、当該視野で検出されるクラックの面積率を測定した。
さらに、社団法人日本自動車工業会規格M609−91に準拠した塩水(35℃,5%NaCl水溶液)噴霧2時間→乾燥(60℃,30%RH)4時間→湿潤(50℃,95%RH)2時間を1サイクルとする複合サイクル腐食試験を繰り返し、曲げ加工部,平坦部に発生した赤錆の面積占有率が5%になるまでのサイクル数で耐食性を調査した。
表1〜4に試験結果を示す。表1は溶融亜鉛めっき鋼板、表2は溶融Zn−Al系めっき鋼板、表3は溶融Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板、表4は溶融Al系めっき鋼板を用いて温間加工試験を行い、加工温度、曲げ加工部のクラック面積率、および耐食性を評価したものである。
表1〜4の試験結果にみられるように、50℃以上で150℃未満の温度域で加工した本発明例では、曲げ加工部のクラック面積率が小さく、5%赤錆発生までのサイクル数が長くなって平坦部とほぼ同じレベルまで耐食性が改善された。クロメート皮膜を設けた本発明例(試験No.7〜9,22〜24,39〜42,61〜63)の曲げ加工部は、無処理材の平坦部より優れた耐食性を示しており、クロメート皮膜による効果が窺われる。
他方、20℃で曲げ加工した比較例では、クラック面積率が大きく、平坦部に比べて曲げ加工部の5%赤錆発生までのサイクル数が短くなり、耐食性が低下していた。溶融めっき鋼板を250℃で曲げ加工した比較例No.15では、成形ロールによる溶融めっき層のカジリが発生したため、複合サイクル腐食試験に供し得なかった。
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実施例2;
曲げ加工では、曲げ半径を変えることにより伸び率を種々変更した加工を行い、加工性、すなわち伸び率とクラック発生状況を調べた。供試材としては、実施例1で用いた、Al濃度54.7%の溶融Zn−Alめっき鋼板を使用した。
なお、伸び率は、図2に示すとおり、板厚tの板を曲げ半径rで曲げ加工したとき、曲げ加工部の中立面長さl0と曲げ加工部の外周長さl1の関係において、((l1−l0)/l0)×100(%)で表す。
そして、加工性は、クラック面積率が2%以下であったものを○、2%超〜5%以下であったものを□、5%超〜10%以下であったものを△、10%超であったものを×で評価した。
その結果を図3に示す。
図3に示す結果から、加工度が大きくても加工温度を高めればクラック発生なしに加工できることがわかる。具体的には、伸び率が15%の加工を行おうとするとき、加工温度が50℃であればクラック面積率が2%以下の加工ができることがわかる。また、伸び率が20%であるときは、加工温度が50℃ではクラック面積率は5%以下程度となり、2%以下のクラック面積率で加工するには加工温度を150℃とする必要があることがわかる。
また、溶融アルミニウム系めっき鋼板は、めっき層の加工性の点で溶融Zn−Al系めっき鋼板とほぼ同等であるので、加工温度と加工性の関係は、ほぼ図3と同様な整理ができると思われる。
溶融亜鉛めっき鋼板については図示しないが、めっき層の加工性が良好であるので、本発明の温間加工により伸び率40%以上の加工が可能である。
実施例3;
実施例1と同じ条件で製造された溶融Zn‐Al系めっき鋼板,溶融Al系めっき鋼板から幅:50mm,長さ:50mmの試験片を切り出し、試験片,金型共に加工温度:50〜140℃に加熱保持し、曲げ半径:1.0mm,曲げ角度:90度,150度で温間曲げ加工した。比較のため、板温:20℃でも同じ溶融めっき鋼板を曲げ加工した。
曲げ加工した試験片を大気中で1000時間加熱した後で酸化増量を測定し、測定結果から曲げ加工部の耐熱性を評価した。加熱温度は、溶融Zn‐Al系めっき鋼板では500℃,溶融Al系めっき鋼板では600℃とした。なお、曲げ加工試験片と同じサイズの平板状試験片を同じ条件で加熱した後で測定された酸化増量を曲げ加工試験片の酸化増量から差し引くことにより、エッジ部,曲げ加工部以外の平坦部の酸化の影響を排除した。
溶融Zn‐Al系めっき鋼板の曲げ加工試験では、表5にみられるように加工温度:50℃で僅かなクラックの発生が検出されたが、加工温度:100℃以上ではクラックの発生がなく酸化増量は平坦部と同レベルであり、加工性,耐熱性共に優れていることが判る。他方、加工温度:20℃で曲げ加工すると、同じ溶融めっき鋼板であってもクラック面積率,酸化増量共に増加していた。
溶融Al系めっき鋼板の曲げ加工試験でも、表6にみられるように50℃以上で150℃未満の温度域に加工温度を保持することにより、優れた加工性,耐熱性が得られた。表6から、加工温度:50℃では僅かなクラックの発生が検出されたが、加工温度:100℃以上ではクラックの発生がなく酸化増量は平坦部と同程度であり、加工性,耐熱性共に優れていることが判る。しかし、加工温度:20℃で曲げ加工すると、同じ溶融めっき鋼板であってもクラック面積率,酸化増量共に増加していた。
Figure 0004919427
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実施例4;
板厚:1.0mm,板幅:1000mmの低炭素Alキルド鋼をめっき原板とし、連続溶融めっきラインで片面当りめっき付着量:70g/m2の溶融Zn‐Al‐Mgめっき鋼板を製造した。溶融めっき層の組成はAl:6質量%,Mg:3質量%,Ti:0.02質量%,B:0.01質量%,Zn:残部に調整されており、該化学組成が溶融めっき層に反映された。
溶融Zn‐Al‐Mg合金めっき鋼板にCr換算付着量:30mg/m2のクロメート処理を施し、表7の条件でポリエステル樹脂系塗膜,高分子ポリエステル樹脂系塗膜,フッ素樹脂系塗膜,ウレタン樹脂系塗膜、アクリル樹脂系塗膜、塩化ビニル樹脂系塗膜を設けた。
Figure 0004919427
塗膜伸び率は、次の手順で測定した。
溶融Zn‐Al‐Mg合金めっき鋼板の塗装と同じ条件下で各塗料をフッ素フィルムラミネート板に塗布し焼き付けて塗膜を形成した後、ラミネート板から塗膜を剥離することにより自由塗膜を用意した。自由塗膜から幅:5mm,長さ:50mmの短冊状サンプルを採取し、50℃に保持してサンプルが破断するまで引張り試験した。破断時の塗膜長さを測定し、((破断長さ−初期長さ)/(初期長さ))×100として塗膜伸び率(%)を算出した。その結果、何れの塗膜も塗膜伸び率:50%以上の高延性塗膜であった。
次いで、塗装溶融めっき鋼板に、次の曲げ加工試験,曲げ部腐食試験を行った。
〔曲げ加工試験〕
塗装溶融めっき鋼板,成形ロール共に加工温度:50〜140℃に加熱保持し、曲げ半径:1.0mm,曲げ角度:90度で温間曲げ加工した。比較のため、加工温度:20℃,250℃でも同じ塗装溶融めっき鋼板から切り出された試験片を曲げ加工した。
曲げ加工した塗装溶融めっき鋼板の曲げ加工部をSEM観察し、塗膜表面を200倍の倍率で撮影した画像から0.4mm×0.5mmの視野を特定し、当該視野に検出されるクラックの面積を測定し、クラック面積を観察視野面積(0.2mm2)で除した値を100倍することによりクラック面積率(%)を算出した。
また、塗膜のクラック面積率を測定した後、塗膜を溶解除去し、同じ方法で溶融めっき層のクラック面積率を求めた。
〔曲げ部腐食試験〕
曲げ加工試験と同じ条件で温間曲げ加工した試験片の切断端面,裏面を塗料で補修し、1000時間の塩水噴霧試験(JIS K‐5600‐7‐1)で白錆、塗膜フクレの発生状況を調査した。そして、白錆の発生がない試験片を◎、加工部長さに対する白錆の発生長さが5%以下を○,5%を超える長さの白錆が発生した試験片を×として、曲げ部の耐白錆性を評価した。また、塗膜フクレのない加工部を○,塗膜フクレが検出された加工部を×として、耐塗膜フクレ性を評価した。
表8の試験結果にみられるように、50℃以上150℃未満の温度域で加工した本発明例では、曲げ加工部の溶融Zn−Al−Mg系合金めっき層,塗膜共にクラックが少ない健全な状態を維持していており、平坦部と同じレベルまで耐白錆性,耐塗膜フクレ性が改善された。また、膜厚:20μmの高分子ポリエステル塗膜を設けた塗装溶融めっき鋼板を曲げ半径:1.0mmで90度曲げした例では、加工温度が50℃以上になるとクラックが減少する傾向が示され、100℃を超える加工温度では溶融めっき層に極僅かのクラックが検出されるだけであった。
他方、表9の試験結果にみられるように、加工温度:20℃で曲げ加工した比較例(No.19,21,23,25,2729)では、溶融めっき層,塗膜共にクラックの発生が著しく、耐白錆性,耐塗膜フクレ性に劣っていた。逆に塗膜溶融温度又は塗膜熱分解温度以上250℃で曲げ加工した比較例(No.20,22,24,26,28,30)では、溶融した塗膜が成形ロールに付着したためロール成形ができなかった。
Figure 0004919427
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実施例5;
実施例4と同じめっき原板を用い、片面当りめっき付着量:90g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、めっき浴にはFe‐Zn合金層の生成を抑制するため、Al:0.2質量%を添加した。得られた溶融亜鉛めっき鋼板にNi付着量:2mg/m2のNi置換処理,リン酸亜鉛付着量:3g/m2のリン酸亜鉛処理を施し、実施例1と同じ条件でポリエステル樹脂系塗膜,高分子ポリエステル樹脂系塗膜,フッ素樹脂系塗膜,ウレタン樹脂系塗膜、アクリル樹脂系塗膜、塩化ビニル樹脂系塗膜を設け、曲げ加工性,耐白錆性,耐塗膜フクレ性を調査した。
表10の調査結果にみられるように、50℃以上150℃未満の温度域で加工した本発明例では、曲げ加工部の溶融めっき層,塗膜共にクラックが少ない健全な状態を維持していており、平坦部と同じレベルまで耐白錆性,耐塗膜フクレ性が改善された。
他方、表11の調査結果にみられるように、加工温度:20℃で曲げ加工した比較例(No.49,51,53,55,57,59)では、溶融めっき層,塗膜共にクラックの発生が著しく、耐白錆性,耐塗膜フクレ性に劣っていた。逆に塗膜溶融温度又は塗膜熱分解温度以上の250℃で曲げ加工した比較例(No.50,52,54,56,58,60)では、溶融又は熱分解した塗膜が成形ロールに付着したためロール成形できなかった。
Figure 0004919427
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実施例6;
実施例4と同じめっき原板を用い、片面当りめっき付着量:90g/m2の溶融Zn‐Alめっき鋼板を製造した。めっき層の組成はAl:54.7質量%,Si:2.3質量%,残部Znに調整し、形成された溶融Zn‐Alめっき層は該化学組成を反映した。
次いで、溶融Zn‐Alめっき鋼板にTi換算付着量:40mg/m2のクロムフリー処理を施し、実施例1と同じ条件でポリエステル樹脂系塗膜,高分子ポリエステル樹脂系塗膜,フッ素樹脂系塗膜,ウレタン樹脂系塗膜、アクリル樹脂系塗膜、塩化ビニル樹脂系塗膜を設け、曲げ加工性,耐白錆性,耐塗膜フクレ性を調査した。
表12の調査結果にみられるように、50℃以上150℃未満の温度域で加工した本発明例では、曲げ加工部の溶融めっき層,塗膜共にクラックが少ない健全な状態を維持していており、平坦部と同じレベルまで耐白錆性,耐塗膜フクレ性が改善された。
他方、表13の調査結果にみられるように、加工温度:20℃で曲げ加工した比較例(No.79,81,83,85,87,89)では、溶融めっき層,塗膜共にクラックの発生が著しく、耐白錆性,耐塗膜フクレ性に劣っていた。逆に塗膜溶融温度又は塗膜熱分解温度以上の250℃で曲げ加工した比較例(No.80,82,84,86,88,90)では、溶融又は熱分解した塗膜が成形ロールに付着したためロール成形できなかった。
Figure 0004919427
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実施例7;
実施例4と同じめっき原板を用い、片面当りめっき付着量:90g/m2の溶融Alめっき鋼板を製造した。めっき浴には、Fe-Al合金層の成長を抑制するためにSi:9.1質量%を添加した。得られた溶融Alめっき鋼板にCr換算付着量:15mg/m2のクロメート処理を施し、実施例1と同じ条件でポリエステル樹脂系塗膜,高分子ポリエステル樹脂系塗膜,フッ素樹脂系塗膜,ウレタン樹脂系塗膜、アクリル樹脂系塗膜、塩化ビニル樹脂系塗膜を設け、曲げ加工性,耐白錆性,耐塗膜フクレ性を調査した。なお、フッ素塗装溶融Alめっき鋼板については、曲げ加工後、150℃×100時間の加熱処理を施し、塩水噴霧試験した。
表14の調査結果にみられるように、50℃以上150℃未満の温度域で加工した本発明例では、曲げ加工部の溶融めっき層,塗膜共にクラックが少ない健全な状態を維持していており、平坦部と同じレベルまで耐白錆性,耐塗膜フクレ性が改善された。なかでも、フッ素塗装溶融Alめっき鋼板(No.67〜69)では、加熱処理しても他の塗膜と同レベルの耐白錆性,耐塗膜フクレ性を示しており、耐熱性,耐食性共に優れていることが確認された。
他方、表15の調査結果にみられるように、加工温度:20℃で曲げ加工した比較例(No.109,111,113,115,117,119)では、溶融めっき層,塗膜共にクラックの発生が著しく、耐白錆性,耐塗膜フクレ性に劣っていた。逆に塗膜溶融温度以上又は塗膜熱分解温度以上の250℃で曲げ加工した比較例(No.110,112,114,116,118,120)では、溶融又は熱分解した塗膜が成形ロールに付着したためロール成形できなかった。
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溶融Zn-Al-Mg合金めっき鋼板の加工性に及ぼす加工温度,溶融めっき層のMg濃度の影響を示したグラフ 曲げ加工時の伸び率を説明する図 溶融Zn−Alめっき鋼板の加工性に及ぼす加工温度,伸び率の影響を示したグラフ

Claims (7)

  1. 溶融めっき層がZn‐Alめっき層,Zn‐Al‐Mgめっき層,Zn‐Al‐Mg‐Siめっき層,Alめっき層又はAl‐Siめっき層である溶融亜鉛系又は溶融アルミニウム系のめっき鋼板を50℃以上で150℃未満の温度域に加熱保持し、溶融めっき層の延性が増加した加熱保持状態のめっき鋼板を、当該溶融めっき層が20%以下の伸び率で変形されるように目標形状に加工することを特徴とする溶融めっき鋼板の温間加工方法。
  2. 溶融めっき層の上に化成皮膜を形成した後で加工する請求項1に記載の溶融めっき鋼板の温間加工方法。
  3. 金属間化合物が析出している溶融Zn‐Al‐Mg系めっき鋼板を加工する際、加工温度T(℃)と溶融めっき層のMg濃度C Mg (質量%)との間に33+17C Mg ≦T<150の関係を成立させる請求項1又は2に記載の溶融めっき鋼板の温間加工方法。
  4. 化成皮膜の上にさらに高延性塗膜が形成された塗装溶融めっき鋼板を加工する請求項2又は3に記載の溶融めっき鋼板の温間加工方法。
  5. 化成皮膜がリン酸亜鉛皮膜,クロメート皮膜,クロムフリー皮膜である請求項2〜4のいずれかに記載の溶融めっき鋼板の温間加工方法。
  6. Ni置換処理後の化成処理で化成皮膜が形成された溶融めっき鋼板を原板とする請求項2〜5のいずれかに記載の溶融めっき鋼板の温間加工方法。
  7. 高延性塗膜がポリエステル樹脂系,高分子ポリエステル樹脂系,ウレタン樹脂系,アクリル樹脂系、フッ素樹脂系、又は塩化ビニル樹脂系のものである請求項2〜6のいずれかに記載の溶融めっき鋼板の温間加工方法。
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