JP4918972B2 - 高速摺動部材 - Google Patents
高速摺動部材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4918972B2 JP4918972B2 JP2005216631A JP2005216631A JP4918972B2 JP 4918972 B2 JP4918972 B2 JP 4918972B2 JP 2005216631 A JP2005216631 A JP 2005216631A JP 2005216631 A JP2005216631 A JP 2005216631A JP 4918972 B2 JP4918972 B2 JP 4918972B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- film
- dlc
- sliding
- friction
- sliding member
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Gears, Cams (AREA)
- Carbon And Carbon Compounds (AREA)
- Physical Vapour Deposition (AREA)
Description
モーター駆動車に用いられる減速機用歯車は数万rpmに及ぶモーターの回転をコンパクトなサイズで減速する必要があるため、摺動面の温度上昇に伴なう焼きつきや摩耗などの表面損傷が懸念される。
DLCは、ダイヤモンドやグラファイトの結合が混在しており、巨視的には非晶質とみなされる構造を有している。
そのため、ダイヤモンドとグラファイトの中間的な性質を有し、硬度や固体潤滑性に優れていることから、歯車やベルト式CVTなどにおいてもフリクションロス低減や摺動発熱低減による焼きつきや摩耗防止に役立つと期待できる。
ドロップレットは多すぎたり大きすぎると相手部品の摺動面への攻撃性が高くなったり、DLC膜中に押し込まれてDLC膜の剥離原因となる恐れがあるが、高さや量を規定を適度に規定することで摺動相手表面の粗さが向上し、一層のフリクション低減が可能である。
そのため、摺動面の粗さに対して摺動速度が速くなるほど摺動表面の粗さによる突起の接触が生じにくくなり、接触が少なくなる混合潤滑、又は接触がほとんどない流体潤滑といわれる状態となる。
また、このDLC膜は、表面に粒状突起形状を有し、この粒状突起の高さが0.02〜0.05μmである。
スキューネスRskが0以上であれば、高さ方向の形状は摺動側に鋭い凸形状を有し、スティックスリップを生じにくくなる。あまり凸形状が鋭いと摺動相手面を荒らすことがあるのでRskは4以下がよい。
Rsk=(Rq3)・{1/Lr∫0 LrZ3(x)dx} …(1)
但し、式中のRqは、粗さ曲線の2乗平均平方根で、次式(2)
Rq=√{1/Lr∫0 LrZ2(x)dx} …(2)
で表され、式中のLrは測定基準長さ、Z(x)は粗さ曲線を示す。
これにより、フリクション性能に優れ、摺動発熱に対しても劣化しにくい膜が得られる。イオンプレーティング法で成膜するときは、剥離しにくい薄膜を形成できる。潤滑油中で摺動させるときは特に優れた低フリクションを発揮できる。万一剥離しても、ドロップレットによる研磨効果は発揮されるので、DLC膜単独の低フリクションに加えて研磨効果の分だけフリクションを低減できる。
本発明では上記DLC膜の硬度はナノインデンター硬度である。材料の硬度は材料表面に働く圧痕の押し込み深さで定義され、従来の硬度試験に於いては一定荷重を付加して圧子を材料に押し込み、除荷後の圧痕寸法を測定し、その測定値に基いて圧子の幾何学的因子を考慮して、その材料硬度を算出していた。しかしながら近年の電子デバイスの細小化により、微小材料に対する極微小荷重による強度評価では圧痕位置の同定、圧痕寸法の測定が不可能となっている。そのために負荷荷重(P)に対する圧子押し込み深さ(h)を動的に測定し、押し込み荷重−変位曲線から硬度評価を行なう手法が考案され、この方法により求めた硬度をナノインデター硬度という。
これにより、摺動によっても摩耗しにくい十分な硬さを有し、低フリクション且つスティックスリップを生じない性能を維持できる。なお、硬すぎるとDLC膜の靭性が損なわれることがあるので90GPa以下がよい。
製造方法は、上述の高速摺動部材を製造するに当たり、ダイヤモンドライクカーボンをイオンプレーティング法により被覆し、その後エアロラップ(登録商標)処理を行う。
これは、上述の高速摺動部材に特有のDLC膜の粒状突起は、スパッタリング法では得られにくく、CVD法又はイオンプレーティング法にて、金属部材に高い負のバイアスを与えることで得られる。また、特に潤滑油中で低フリクションを得るにはイオンプレーティング法が適しているからである。
なお、使用前に軽負荷で摺動させることで、ドロップレットを短期間で除去できるが、負荷をかけすぎるとドロップレットがDLC膜中に埋没して剥離の原因となることがある。
<製膜装置>
神戸製鋼所製のアークイオンプレーティング(以下「AIP」という)/アンバランスドマグネトロンスパッタリング(以下「UBMS」をいう)複合製膜装置を使用した。
真空チャンバー1は、ディフュージョンポンプによって真空とし、適宜アルゴンやメタンなどのガスを導入できる。
蒸発源2は、複数設けられ、製膜方式をAIP又はUBMSとしたり、ターゲット材料をグラファイトや金属に変更できる。蒸発源2は、電源7が接続されている。
被処理部品ホルダー5には被処理部品がセットされ、回転テーブル3,4の回転によって、それぞれのターゲット前にて製膜される。また、被処理部品ホルダー5には、バイアス電源6により被処理部品にバイアス電圧を与えられる。
DLC製膜部品は、SCM415製とし、φ30×2.5mmの円盤形状を切削加工後に浸炭焼入れ・焼戻し処理を行い、表面硬度をHv720とした。
その後、研削加工及び研磨により、所定の表面粗さを得た。
また、アルカリ洗浄の後、真空度10−4〜10−5Pa、雰囲気ガスAr0.6Paにてイオンクリーニングを行った後、AIP又はUBMSにて厚さ1μmのDLC膜を製膜した。
また、いずれの製膜品も製膜後にエアロラップを行うことで大きなドロップレットは全て除去した。
製膜後のDLC層の表面硬度は、Digital Instrument製の超軽荷重薄膜硬度テスタにて求めた。
図2に示すように、3ピンオンディスク式の摩擦試験にてフリクションを測定した。
具体的には、DLCを製膜したφ30×2.5mmのディスク8を回転方向10に回転させ、摺動相手のピン9を押し付けたときのフリクションを測定した。
ピン9は、SUJ製でφ5×5mm、表面粗さはRa0.2μmとした。
試験油は日産純正オートマチック油Matic−Dとし、供給油温80℃中に浸漬して試験を行った。荷重は490N一定とし、回転数は0.1m/sから増速し、1m/sでのフリクションを測定し、DLC膜なしに対する低下率で整理した。
比較例2,3では、基材の面粗度が粗すぎたために、スティックスリップは生じなかったが、あまりフリクションは低下しなかった。
比較例5,7では、UBMSで製膜したためにDLC表面の突起形状が形成させず、Rskが負となってスティックスリップによる剥離が生じ、フリクションも低下しなかった。
比較例4,6では、バイアスが低すぎてDLC表面の突起形状十分な大きさに形成されず、また硬度も十分でなかったために剥離した。
2 蒸発源
3 回転テーブル(主)
4 回転テーブル(副)
5 被処理部品ホルダー
6 バイアス電源
7 蒸発源電源
8 ディスク
9 ピン
10 ディスク回転方向
Claims (3)
- 表面粗さがRa0.005〜0.1μmである金属部材に、表面に粒状突起形状を有するダイヤモンドライクカーボン膜が被覆され、この粒状突起の高さが0.02〜0.05μmであり、且つ前記ダイヤモンドライクカーボン膜の表面粗さがRsk0〜4μmであることを特徴とする高速摺動部材。
- ダイヤモンドライクカーボン膜に、水素を10原子%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の高速摺動部材。
- ダイヤモンドライクカーボン膜のナノインデンター硬度が70〜90GPaであることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1つの項に記載の高速摺動部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005216631A JP4918972B2 (ja) | 2005-07-27 | 2005-07-27 | 高速摺動部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005216631A JP4918972B2 (ja) | 2005-07-27 | 2005-07-27 | 高速摺動部材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007031773A JP2007031773A (ja) | 2007-02-08 |
JP4918972B2 true JP4918972B2 (ja) | 2012-04-18 |
Family
ID=37791380
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005216631A Active JP4918972B2 (ja) | 2005-07-27 | 2005-07-27 | 高速摺動部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4918972B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5273337B2 (ja) * | 2007-06-01 | 2013-08-28 | 神奈川県 | 低摩擦摺動部材 |
JP5352877B2 (ja) * | 2008-11-28 | 2013-11-27 | 神奈川県 | Dlcコーティング部材及びその製造方法 |
KR101436108B1 (ko) * | 2010-07-09 | 2014-09-01 | 다이도 메탈 고교 가부시키가이샤 | 슬라이딩 부재 |
US9034466B2 (en) * | 2010-07-09 | 2015-05-19 | Daido Metal Company Ltd. | Sliding member |
JP2013087197A (ja) * | 2011-10-18 | 2013-05-13 | Idemitsu Kosan Co Ltd | 摺動機構 |
JP7422627B2 (ja) * | 2020-08-12 | 2024-01-26 | 住友重機械工業株式会社 | 遊星歯車装置 |
Family Cites Families (13)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0927121A (ja) * | 1995-07-06 | 1997-01-28 | Kao Corp | 磁気ディスクの製造方法及び装置 |
JP3587379B2 (ja) * | 2001-04-17 | 2004-11-10 | 日産自動車株式会社 | 自動車エンジン動弁系シム及びリフター、並びにこれらとカムシャフトとの組合せ |
JP2003013710A (ja) * | 2001-07-02 | 2003-01-15 | Nissan Motor Co Ltd | 摺動装置及び内燃機関の動弁機構 |
JP2003112229A (ja) * | 2001-10-02 | 2003-04-15 | Ykk Corp | ステンレス材用圧造工具 |
JP2004137535A (ja) * | 2002-10-16 | 2004-05-13 | Nissan Motor Co Ltd | 硬質炭素被膜摺動部材 |
JP4062236B2 (ja) * | 2002-10-31 | 2008-03-19 | 東ソー株式会社 | 島状突起修飾部品及びその製造方法並びにそれを用いた装置 |
JP2004232016A (ja) * | 2003-01-30 | 2004-08-19 | Toshiba Corp | 真空成膜装置用部品およびそれを用いた真空成膜装置 |
JP3891433B2 (ja) * | 2003-04-15 | 2007-03-14 | 日産自動車株式会社 | 燃料噴射弁 |
JP2005054609A (ja) * | 2003-08-07 | 2005-03-03 | Nissan Motor Co Ltd | 高圧燃料ポンプ |
JP2005061241A (ja) * | 2003-08-14 | 2005-03-10 | Nissan Motor Co Ltd | 内燃機関の動弁装置 |
JP3912539B2 (ja) * | 2003-08-22 | 2007-05-09 | 日産自動車株式会社 | セルフガイドリーマ |
JP4069839B2 (ja) * | 2003-09-11 | 2008-04-02 | 日立アプライアンス株式会社 | 摺動装置とその製造法及び冷媒圧縮機 |
JP2005153072A (ja) * | 2003-11-26 | 2005-06-16 | Nachi Fujikoshi Corp | ミスト加工に適したコーティング工具 |
-
2005
- 2005-07-27 JP JP2005216631A patent/JP4918972B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2007031773A (ja) | 2007-02-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US8202615B2 (en) | Nitrogen-containing amorphous carbon-type film, amorphous carbon-type lamination film, and sliding member | |
JP4918972B2 (ja) | 高速摺動部材 | |
JP5956104B2 (ja) | 潤滑媒体中で200MPaを超える接触圧力において動作する摩擦片 | |
CN105593503B (zh) | 活塞环 | |
JP6511126B1 (ja) | 摺動部材およびピストンリング | |
FR3022560A1 (fr) | Procede de revetement en carbone dlc du nez des cames d'un arbre a came, arbre a cames ainsi obtenu et installation pour la mise en oeuvre de ce procede | |
WO2009099226A1 (ja) | Dlc被覆摺動部材及びその製造方法 | |
Kao et al. | Effects of carbon doping on mechanical, tribological, structural, anti-corrosion and anti-glass-sticking properties of CrNbSiTaZr high entropy alloy coatings | |
JP6599251B2 (ja) | 摺動部材及びその製造方法 | |
JP5127674B2 (ja) | ロッカアームアッシー | |
Choudhury et al. | Polydopamine+ SiO2 nanoparticle underlayer for improving DLC coating adhesion and durability | |
JP2010111935A (ja) | ロッカアームアッシー | |
JP2006008853A (ja) | 硬質炭素皮膜摺動部材及びその製造方法 | |
JP2013087325A (ja) | 硬質炭素膜及びその形成方法 | |
JP2007010051A (ja) | 高速摺動機構及びその製造方法 | |
JP6181905B1 (ja) | 摺動部材及びピストンリング | |
JP2019116677A (ja) | 摺動部材 | |
JP2006257916A (ja) | 組合せ摺動部材 | |
JP4135087B2 (ja) | 摺動部材用硬質炭素膜及びその製造方法 | |
JP6413060B1 (ja) | 硬質炭素膜とその製造方法および摺動部材 | |
JP2015194259A (ja) | 転がり軸受 | |
JP2013057093A (ja) | 摺動部材、その製造方法、及び摺動構造 | |
JP6604557B2 (ja) | ピストンリングおよびエンジン | |
JP7085692B2 (ja) | ピストンリング及びその製造方法 | |
JP4968620B2 (ja) | 硬質炭素被膜 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080527 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20100604 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110526 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20110628 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110902 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20111027 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20120105 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20120118 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4918972 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150210 Year of fee payment: 3 |