JP2005061241A - 内燃機関の動弁装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】大幅なフリクション低減効果を発揮し得る内燃機関の動弁装置を提供する。
【解決手段】カムシャフト1に吸気弁15毎に配置したカム3と、このカム3と吸気弁15との間に位置してカム3の外周面と摺接するリフタ5と、シリンダヘッド4に形成されてリフタ5が摺動するリフタボア4aを備え、リフタボア4aの内周壁にはリフタ5の摺動方向に沿うガイド溝4bを設けると共に、リフタ5にはこのリフタ5が摺動するのに伴ってリフタボア4aのガイド溝4b内を摺動する回転防止材12を設け、ガイド溝4b及び回転防止材12の双方をDLC薄膜で被覆した。
【選択図】 図1
【解決手段】カムシャフト1に吸気弁15毎に配置したカム3と、このカム3と吸気弁15との間に位置してカム3の外周面と摺接するリフタ5と、シリンダヘッド4に形成されてリフタ5が摺動するリフタボア4aを備え、リフタボア4aの内周壁にはリフタ5の摺動方向に沿うガイド溝4bを設けると共に、リフタ5にはこのリフタ5が摺動するのに伴ってリフタボア4aのガイド溝4b内を摺動する回転防止材12を設け、ガイド溝4b及び回転防止材12の双方をDLC薄膜で被覆した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の動弁装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地球全体の温暖化、オゾン層の破壊など地球規模での環境問題が大きくクローズアップされ、とりわけ地球全体の温暖化に大きな影響があるといわれているCO2の削減については各国でその規制値の決め方をめぐって大きな関心を呼んでおり、このCO2の削減については、自動車の燃費の削減を図ることが大きな課題の1つである。
【0003】
自動車のエンジンにおける内燃機関の動弁装置、例えば、内燃機関の可変動弁装置で生じる摩擦力は、エンジン全体の機械損失のかなりの量を占めており、ここでのフリクションの低減は、自動車の燃費削減に直結する重要事項である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記内燃機関の可変動弁装置の場合、リフタボア内におけるリフタの回転を阻止するべく設けられたリフタの回転防止機構で生じる摩擦が侮りがたく、すなわち、リフタボアの内周壁に設けられたリフタ摺動方向のガイド溝とリフタに設けられて上記ガイド溝内を摺動する突部との間の摩擦が侮りがたく、したがって、この可変動弁装置におけるフリクションを低減させるには、リフタボアのガイド溝とこのガイド溝を摺動するリフタの突部との間に焼付けが生じるのを防ぐこと、及び、摩耗を低減することが有効な手立てである。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−117721号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、突部を介して伝えられるリフタの回転力を受けるリフタボアのガイド溝の異常摩耗を防ぐために、突部を大きくして面圧を抑え、ガイド溝及び突部間の加工公差を厳しくすると、リフタボアのガイド溝の異常摩耗を回避することはできたとしても、大幅なコストの上昇を招いてしまうことがわかってきた。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、リフタボアのガイド溝及びこのガイド溝内を摺動するリフタの突部の耐摩耗性及び耐面圧性の向上させて長寿命化を実現すると共に、部品加工コストの低減を実現し、加えて、大幅なフリクションの低減を実現して燃費の向上に寄与することができる内燃機関の動弁装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく銑意検討を重ねた結果、内燃機関の動弁装置において、リフタの回転防止機構における摺動部分を硬質炭素薄膜で被覆することで、格段に優れたフリクション低減効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、カムシャフトに吸排気弁毎に配置したカムと、このカムと吸排気弁との間に位置してカムの外周面と摺接するリフタと、シリンダヘッドに形成されてリフタが摺動するリフタボアを備えた内燃機関の動弁装置において、リフタボアの内周壁にはリフタの摺動方向に沿うガイド溝を設けると共に、リフタにはこのリフタが摺動するのに伴ってリフタボアのガイド溝内を摺動する突部を設け、リフタボアのガイド溝及びリフタの突部の内の少なくとも一方を硬質炭素薄膜で被覆したことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示すものとする。
【0011】
リフタボアのガイド溝及びリフタの突部の内の少なくとも一方を被覆する硬質炭素薄膜は、各種PVD法、具体的には、アーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜(ダイヤモンド状炭素薄膜)であることが望ましい。このDLC薄膜は、炭素元素を主として構成された非晶質のものであり、具体的には、炭素元素だけから成るa−C(アモルファスカーボン)、水素を含有するa−C:H(水素アモルファスカーボン)、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含むMeC(メタルカーボン又は金属炭化物)が挙げられるが、大幅な摩擦低減効果を発揮させる観点から、水素含有量が少ないものほど好ましく、水素含有量が原子比で10%以下、好ましくは水素含有量が原子比で1.0%以下、さらには水素を含まないa−C系(アモルファスカーボン系)材料を好適に用いることができる。
【0012】
ここで、鉄鋼材又はアルミニウム材から成る基材の表面粗さ、すなわち、硬質炭素薄膜を被覆する前の基材表面粗さがRaで0.03μmを超えると、硬質炭素薄膜表面の粗さに起因する突起部が相手材との局所的な接触面積を増大させて皮膜の割れを誘発してしまうことから、硬質炭素薄膜を被覆する前の基材表面粗さをRaで0.03μm以下とすることが好ましい。
【0013】
次に、本発明に用いる潤滑油組成物について詳細に説明する。この潤滑油組成物は、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有させて成る。
【0014】
上記潤滑油基油としては特に限定されるものではなく、鉱油、合成油、油脂及びこれらの混合物など、潤滑油組成物の基油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。
【0015】
鉱油として、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系又はナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用でき、溶剤精製、水素化精製処理したものが一般的であるが、芳香族分をより低減することが可能な高度水素化分解プロセスやGTL Wax(ガス・トウー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造したものを用いることがより好ましい。
【0016】
合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)、ポリ−α−オレフィンの水素化物、イソブテンオリゴマー、イソブテンオリゴマーの水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンイソステアリネート等のトリメチロールプロパンエステル;ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のペンタエリスリトールエステル)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフイン又はその水素化物が好ましい例として挙げられる。
【0017】
本発明に用いる潤滑油組成物の基油は、鉱油系基油又は合成系基油を単独又は混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油又は2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
【0018】
潤滑油基油中の硫黄分について、特に制限はないが、基油全量基準で、0.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、さらには0.05%以下であることが好ましい。特に、水素化精製鉱油や合成系基油の硫黄分は、0.005%以下、あるいは実質的に硫黄分を含有していない(5ppm以下)ことから、これらを基油として用いることが好ましい。
【0019】
また、潤滑油基油中の芳香含有量についても、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として長期間低摩擦特性を維持するためには、全芳香族含有量が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。即ち、潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため好ましくない。
【0020】
なお、ここで言う全芳香族含有量とは、ASTM D2549に規定される方法に準拠して測定される芳香族留分(aromatics fraction)含有量を意味している。
【0021】
潤滑油基油の動粘度にも、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として使用する場合には、100℃における動粘度が2mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは3mm2/s以上である。一方、その動粘度は、20mm2/s以下であることが好ましく、10mm2/s以下、特に8mm2/s以下であることが好ましい。100℃における潤滑油基油の動粘度が2mm2/s未満である場合には、十分な耐摩耗性が得られないのに加えて、蒸発特性が劣る可能性があるため好ましくない。一方、100℃における潤滑油基油の動粘度が20mm2/sを超える場合には、低摩擦性能を発揮しにくく、低温性能が悪くなる可能性があるため好ましくない。本発明においては、上記基油の中から選ばれる2種以上の基油を任意に混合した混合物等が使用でき、100℃における動粘度が上記の好ましい範囲内に入る限りにおいては、基油単独の動粘度が上記以外のものであっても使用可能である。
【0022】
また、潤滑油基油の粘度指数にも、特別な制限はないが、80以上であることが好ましく、100以上であることがさらに好ましく、特に内燃機関用潤滑油組成物として使用する場合には、120以上であることが好ましい。潤滑油基油の粘度指数を高めることでよりオイル消費が少なく、低温粘度特性、省燃費性能に優れた内燃機関用潤滑油組成物を得ることができる。
【0023】
上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤としては、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、特に好ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミン化合物、及びこれらの任意混合物を挙げることができる。炭素数が6〜30の範囲外のときは、摩擦低減効果が十分に得られない可能性がある。
【0024】
炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状炭化水素基としては、具体的には、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基などを挙げることができる。なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
【0025】
また、上記脂肪酸エステルとしては、かかる炭素数6〜30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルなどを例示でき、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレートなどを特に好ましい例として挙げることができる。
【0026】
上記脂肪族アミン化合物としては、脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族ポリアミン、イミダゾリン化合物等、及びこれらの誘導体等を例示できる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の脂肪族アミン化合物や、これら脂肪族アミン化合物のN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル(又はアルケニル)(炭素数6〜28)等のアミンアルキレンオキシド付加物、これら脂肪族アミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したりアミド化した、いわゆる酸変性化合物等が挙げられる。好適な例としては、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン等が挙げられる。
【0027】
また、本発明に用いる潤滑油組成物に含まれる脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、0.05〜3.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.0%、特に好ましくは0.5〜1.4%であることがよい。上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり易く、3.0%を超えると潤滑油への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生し易いので、好ましくない。
【0028】
一方、本発明に用いる潤滑油組成物は、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有することが好適であり、上記ポリブテニルコハク酸イミドとしては、次の一般式(1)及び(2)で表される化合物が挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
これら一般式におけるPIBは、ポリブテニル基を示し、高純度イソブテン又は1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒又は塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られる数平均分子量が900〜3500、望ましくは1000〜2000のポリブテンから得られる。上記数平均分子量が900未満の場合は清浄性効果が劣り易く、3500を超える場合は低温流動性に劣り易いため、望ましくない。
【0032】
また、上記一般式におけるnは、清浄性に優れる点から1〜5の整数、より望ましくは2〜4の整数であることがよい。更に、上記ポリブテンは、製造過程の触媒に起因して残留する微量のフッ素分や塩素分を吸着法や十分な水洗等の適切な方法により、50ppm以下、より望ましくは10ppm以下、特に望ましくは1ppm以下まで除去してから用いることもよい。
【0033】
更に、上記ポリブテニルコハク酸イミドの製造方法としては、特に限定はないが、例えば、上記ポリブテンの塩素化物又は塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。
【0034】
一方、上記ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物に、ホウ素化合物や含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性又は酸変性化合物を例示できる。その中でもホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミド、特にホウ素含有ビスポリブテニルコハク酸イミドが最も好ましいものとして挙げられる。
【0035】
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。具体的には、上記ホウ酸として、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸などが挙げられる。また、上記ホウ酸塩としては、アンモニウム塩等、具体的には、例えばメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウムが好適例として挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル、より具体的には例えば、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリププロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、ホウ酸トリブチル等が好適例として挙げられる。なお、ホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドにおけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比「B/N」は、通常0.1〜3であり、好ましくは、0.2〜1である。
【0036】
また、上記含酸素有機化合物としては、具体的には、例えばぎ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルポン酸並びにこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる
【0037】
なお、本発明に用いる潤滑油組成物において、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量は特に制限されないが、0.1〜15%が望ましく、より望ましくは1.0〜12%であることが好ましい。0.1%未満では清浄性効果に乏しくなることがあり、15%を超えると含有量に見合う清浄性効果が得られにくく、抗乳化性が悪化し易い。
【0038】
更にまた、本発明に用いる潤滑油組成物は、次の一般式(3)で表されるジチオリン酸亜鉛を含有することが好適である。
【0039】
【化3】
【0040】
上記式(3)中のR4、R5、R6及びR7は、それぞれ別個に炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0041】
上記R4、R5、R6及びR7としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基等のオクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジ−プロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロへキシル基、ジメチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、プロピルシクロへキシル基、エチルメチルシクロへキシル基、トリメチルシクロへキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジ−プロピルシクロへキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジ−プロピルシクロヘプチル基、プロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基、等が例示できる。
【0042】
なお、R4、R5、R6及びR7がとり得る上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造をが含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、上記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分柱状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基、又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0043】
上記ジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。
【0044】
また、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量は、特に制限されないが、より高い摩擦低減効果を発揮させる観点から、組成物全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることが好ましく、また0.06%以下であることがより好ましく、更にはジチオリン酸亜鉛が含有されないことが特に好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン元素換算量で0.1%を超えると、DLC部材と鉄基部材との摺動面における上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤や上記脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の優れた摩擦低減効果が阻害されるおそれがある。
【0045】
上記ジチオリン酸亜鉛の製造方法としては、従来方法を任意に採用することができ、特に制限されないが、具体的には、例えば、上記R4、R5、R6及びR7に対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五二硫化りんと反応させてジチオリン酸とし、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。なお、上記ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なることは言うまでもない。
【0046】
本発明においては、上記一般式(3)に包含される2種以上のジチオリン酸亜鉛を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0047】
上述のように、本発明の潤滑油組成物は、硬質炭素薄膜で被覆したリフタボアのガイド溝及びこのガイド溝と摺動するリフタの突部に用いた場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関用潤滑油組成物として必要な性能を高める目的で、金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、他の無灰摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
【0048】
上記金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレートナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。ここで、上記アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、上記アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。
【0049】
なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常、全塩基価は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は組成物全量基準で、通常0.1〜10%である。
【0050】
また、上記酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、組成物全量基準で、通常0.01〜5%である。
【0051】
更に、上記粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、及び更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。
【0052】
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよく、ポリイソブチレン又はその水素化物では800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物では800〜300000、好ましくは10000〜200000がよい。また、かかる粘度指数向上剤は、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油組成物基準で0.1〜40.0%であることが望ましい。
【0053】
更にまた、他の無灰摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられ、他の無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0054】
更にまた、上記磨耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
【0055】
更にまた、上記防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられ、上記非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
更にまた、上記金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等が挙げられ、上記消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0057】
なお、これら添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は、組成物全量基準で、他の摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤又は極圧剤、防錆剤、及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.005〜1%、消泡剤については0.0005〜1%の範囲から適宜選択できる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
図1〜図3に示すように、シリンダヘッド4には、吸気側のカムシャフト1及び排気側のカムシャフト(図示せず)が気筒列方向に沿って配置してあり、これらのカムシャフト1は、カムブラケット21によってシリンダヘッド4に回転自在に支持されていて、ベルト又はチェーンを介して伝達されるクランクシャフトからの駆動力により回転する。
【0060】
この実施例の内燃機関の動弁装置は可変動弁装置であって、カムシャフト1に吸気弁15毎に配置した互いに外周面のカムプロフィールが異なる2種類のカム2,3(低速カム2,高速カム3)と、これらのカム2,3と吸気弁15との間に位置してカム2,3の外周面と摺接するリフタ5,6を備えており、この可変動弁装置は、2種類のカム2,3を切り換えて使用することで、吸気弁15のバルブリフト特性を多段階に切り換えるようになっている。
【0061】
低速カム2は、図11にも示すように、ベースサークル区間に対応するベース円2aと、このベース円2aよりも径方向に突出したリフト区間に対応するカムノーズ2bを有しており、一方、高速カム3は、ベースサークル区間に対応するベース円3aと、リフト区間に対応するカムノーズ3bを有している。
【0062】
各吸気弁15に適用するリフタとして、2つのアウタカムとしての高速カム3に摺接する1個のアウタリフタ5と、インナカムとしての低速カム2に摺接するインナリフタ6が設けてあり、アウタリフタ5は、シリンダヘッド4に設けたリフタボア4aに摺動可能に嵌合してある。このアウタリフタ5はその冠面5aの中央に空隙5bを有しており、この空隙5bにインナリフタ6が摺動可能に嵌合してある。
【0063】
アウタリフタ5とシリンダヘッド4との間には、アウタスプリング13が設けてあり、このアウタスプリング13により、アウタリフタ5を高速カム3側に付勢している。また、吸気弁15のバルブステムには、リテーナ16がバルブコッタ14によって固定してあって、このリテーナ16とシリンダヘッド4との間に設けたインナスプリング17により、吸気弁15のバルブステムを介してインナリフタ6を低速カム2側に付勢している。吸気弁15のバルブステムの上端とインナリフタ6の下面との間には、バルブクリアランス調整用のインナシム18が設けてある。
【0064】
上記アウタリフタ5及びインナリフタ6には、ロック状態及びロック解除状態を切り換えるピン7〜9を摺動可能に嵌合する3つのピン穴5c,5d,6aが設けてあり、所定のバルブタイミングでは上記3つのピン穴5c,5d,6aが同一直線上に配列されて一つの長孔として機能し、3つのピン7〜9が同一直線上に配列されて一つの長孔に嵌合するプランジャとして機能するようになっている。
【0065】
ピン7〜9の一端とストッパ11との間には、ばね10が設けてあり、ピン7〜9の他端側には、油圧室5e形成してあって、この油圧室5eには、シリンダヘッド4に形成した油圧経路4c及びアウタリフタ5の内部に形成した油圧経路5fを経由して作動油(エステル油)を供給するようになっている。
【0066】
この場合、アウタリフタ5の油圧経路5fとシリンダヘッド4の油圧経路4cとの周方向の位置ずれを防ぐために、図4にも示すように、シリンダヘッド4のリフタボア4aの内周壁にはアウタリフタ5の摺動方向に沿うガイド溝4bが設けてあると共に、アウタリフタ5にはこのアウタリフタ5が摺動するのに伴ってリフタボア4aのガイド溝4b内を摺動する回転防止材(突部)12が設けてあり、リフタボア4aのガイド溝4b及びアウタリフタ5の回転防止材12の双方をアーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜で被覆している。
【0067】
この可変動弁装置では、油圧制御弁によって油圧室5eへの油圧の供給・停止を切り換えることにより、低速カム2と高速カム3とを使い分けてバルブリフト特性を2段階に切り換えるようにしている。例えば、所定の低出力運転状態、すなわち、アイドリング状態を含む低回転・低負荷域では、油圧制御弁により油圧室5eへの油圧の供給を停止すると、ばね10の弾性力により3つのピン7〜9のうちのピン7がインナリフタ6のピン穴6a内のみに収容され、3つのピン7〜9のうちのピン8,9がアウタリフタ5のピン穴5c,5d内のみにそれぞれ収容された状態となる。これにより、アウタリフタ5とインナリフタ6とは、非連結・ロック解除状態となり、互いに独立して移動することができる。したがって、アウタリフタ5は高速カム3のカムノーズ3bによって上下にロストモーションを行い、これとは独立して低速カム2のカムノーズ2bによりインナリフタ6が昇降して、インナシム18を介して吸気弁15を駆動する。つまり、吸気弁15は、低速カム2の特性に従って、リフト量及び作動角の小さいバルブリフト特性で作動する。
【0068】
一方、所定の高出力運転状態では、油圧制御弁により油圧室5eへ油圧の供給を行うと、この油圧により3つのピン7〜9がばね10の弾性力に抗して、ピン8がアウタリフタ5のピン穴5cとインナリフタ6のピン穴6aとに跨って配置されると共に、ピン9がインナリフタ6のピン穴6aとアウタリフタ5のピン穴5dとに跨って配置され、これらのピン8,9によってアウタリフタ5とインナリフタ6とが連結・ロック状態となり、したがって、アウタリフタ5とインナリフタ6とは一体となって高速カム3のカムノーズ3bにより昇降して、吸気弁15を駆動する。つまり、吸気弁15は、高速カム3の特性に従って、リフト量及び作動角の大きいバルブリフト特性で作動する。なお、高速カム3は、高負荷に耐え得るように、言い換えれば、接触幅を稼ぐように、1つの吸気弁15に対して2つ設けてある。
【0069】
上記内燃機関の動弁装置では、図5に示すように、低速カム2及び高速カム3の全てのカムの外周面において、そのカムの幅方向(カムシャフト軸方向)の中央部が幅方向両側部よりもカムの径方向外側に向けて突出する凸面30として形成してあり、好ましくは、凸面30は、カムの幅方向中心線31が最も径方向外側に向けて突出するように、所定の曲率で断面円弧状に滑らかに湾曲するように形成する。すなわち、凸面30は、カム幅方向全体にわたって角のない湾曲面となっている。但し、図5の拡大図では、凸面30の曲率を誇張して大きく描いており、実際には、凸面30の突出量32が例えば2〜5μmとなるように曲率及び形状を設定している。
【0070】
凸面30は、例えばこの凸面30に対応する凹面を有する砥石を用いた旋削加工により形成することができ、この凸面30は、少なくとも荷重が作用するリフト区間相当するカムノーズの外周面の部分に形成されていればよい。
【0071】
この内燃機関の動弁装置では、全てのカムの外周面を凸面30としているので、低速カム2を使用する場合と、高速カム3を使用する場合との双方、すなわち、全運転領域にわたって、カムの幅方向両側部での片当たりを確実に防止し、この片当たりによるフリクションの過度な上昇を確実に抑制し、燃費及び出力の向上を図ると共に、カムの耐久性及び信頼性の向上を図ることができる。
【0072】
図6は内燃機関の動弁装置の他の構成例を示している。この動弁装置では、高速カム3のみの外周面を凸面30とすることで、すなわち、凸面30を形成するカムの個数を減らすことで、凸面形成のための成形加工費の低減及びカムシャフトの低コスト化を図っている。加えて、高速カム3のみの外周面を凸面30とすることで、高負荷域での使用に対する耐久性及び信頼性の向上を実現すると共に、出力を有効に上昇させることができる。
【0073】
図7は内燃機関の動弁装置のさらに他の構成例を示している。この内燃機関の動弁装置において、低速カム2のみの外周面を凸面30とすることで、すなわち、凸面30を形成するカムの個数を減らすことで、凸面形成のための成形加工費の低減及びカムシャフトの低コスト化を図っている。加えて、低速カム2のみの外周面を凸面30とすることで、低回転低負荷域での動弁系のフリクションを有効に軽減することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0074】
そこで、低速カム2のみの外周面を凸面30とする場合の利点について説明する。図8 に示すように、低速カム2が摺接するインナリフタ6の冠面は、アウタリフタ5の冠面5aの中央部に位置する略円形の部分であり、低速カム2の外周面を凸面30とした場合、その接触幅はD1からD2へ減少するものの、摺動方向長さはL1からL2へ増加し、全体として摺動面積が大きく減少することはなく、面圧が過度に上昇する恐れもないことに加えて、摺動方向長さが増加する分だけ、リフト量及び作動角を大きくすることができる。
【0075】
また、この動弁装置では、図1及び図4に示すように、アウタリフタ5の油圧経路5fとシリンダヘッド4の油圧経路4cとの周方向の位置ずれを防ぐために、シリンダヘッド4のリフタボア4aの内周壁に設けたガイド溝4bにアウタリフタ5に設けた回転防止材12を嵌め込んでアウタリフタ5の回転を確実に防止するようにしているが、カム側からリフタ側へ周方向の大きな回転力が作用すると、回転防止材12とガイド溝4bとが強く接触して摩耗し、信頼性及び耐久性を損ねる恐れがある。この動弁装置では、リフタボア4aのガイド溝4b及びアウタリフタ5の回転防止材12の双方をアーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜で被覆することで、フリクションの低減を図っているのに加えて、カム側からリフタ側へ作用する回転力自体を低減ないし解消するために、図5〜図7に示すように、凸面30の最突出位置(リフタとの接触幅の中央位置)33をカム幅方向中央線31上であって且つリフタ中心又はリフタ中心に対して均等目標位置に設定している。
【0076】
ここで、図9に示すように、高速カム3の外周面を凸面30としている場合で、且つ、その最突出位置33が目標位置31に対してずれた場合には、上記回転力が比較的大きくなってしまうのに対して、図10に示すように、低速カム2の外周面を凸面30としている場合で、且つ、その最突出位置33が目標位置31に対して同じ幅ΔDだけずれた場合には、最突出位置33自体がリフタの中心に近く、加えて、カムとリフタとの間の面圧も低いことから、低速カム2のみの外周面を凸面30とすれば、リフタへ作用する回転力を十分に小さく抑えることができる。
【0077】
上記した実施例では、リフタボア4aのガイド溝4b及びアウタリフタ5の回転防止材12の双方をアーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜で被覆するようにしているので、耐摩耗性及び耐面圧性が向上することとなって長寿命化が実現する。また、回転防止材12を小さくしたりガイド溝4b及び回転防止材12の加工公差を緩めたりすることができるので、コストの低減をも実現可能であり、さらに、アウタリフタ5が摺動する際のフリクションを大幅に低減することが可能である。
【0078】
上記した実施例では、リフタボア4aのガイド溝4b及びアウタリフタ5の回転防止材12の双方をアーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜で被覆する場合を示したが、ガイド溝4b及び回転防止材12の内の少なくとも一方をDLC薄膜で被覆すればよく、この場合も上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、上記実施例では、本発明を吸気弁側に適用した場合を示したが、本発明を排気弁側に適用してもよい。
【0080】
さらに、上記実施例では、リフタの冠面が平坦である場合を示したが、図12に示すように、リフタ25の冠面25aに曲率をつけて湾曲面としてもよく、この場合は、リフタの径を縮小することができ、材料費の削減及び重量の軽減を実現することができる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、上記した構成としたため、部品の長寿命化及び低コスト化を実現すると共に、フリクションの大幅な低減を実現した内燃機関の動弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の動弁装置の一実施例を示すカムシャフトに沿う方向からの断面説明図である。
【図2】図1における内燃機関の動弁装置のカムシャフトに直交する方向からの断面説明図である。
【図3】図1における内燃機関の動弁装置のシリンダヘッドの平面説明図である。
【図4】図1に示した内燃機関の動弁装置におけるガイド溝と回転防止材との嵌合状態説明図(a)及びG部の拡大説明図(b)である。
【図5】図1に示した内燃機関の動弁装置のカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図5(a)におけるB部の拡大説明図(b)である。
【図6】本発明の内燃機関の動弁装置の他の構成例を示すカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図6(a)におけるC部の拡大説明図(b)である。
【図7】本発明の内燃機関の動弁装置のさらに他の構成例を示すカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図7(a)におけるD部の拡大説明図(b)である。
【図8】図7における内燃機関の動弁装置の低速カムとインナリフタとの関係を示す説明図である。
【図9】図7における内燃機関の動弁装置の利点を示すカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図9(a)におけるE部の拡大説明図(b)である。
【図10】図9と同じく図7における内燃機関の動弁装置の利点を示すカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図10(a)におけるF部の拡大説明図(b)である。
【図11】内燃機関の可変動弁装置のカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図11(a)におけるA−A線位置での断面説明図(b)である。
【図12】本発明の内燃機関の動弁装置の他の実施例を示すリフタの断面説明図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト
2 低速カム
3 高速カム
4 シリンダヘッド
4a リフタボア
4b ガイド溝
5 アウタリフタ
12 回転防止材(突部)
15 吸気弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の動弁装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地球全体の温暖化、オゾン層の破壊など地球規模での環境問題が大きくクローズアップされ、とりわけ地球全体の温暖化に大きな影響があるといわれているCO2の削減については各国でその規制値の決め方をめぐって大きな関心を呼んでおり、このCO2の削減については、自動車の燃費の削減を図ることが大きな課題の1つである。
【0003】
自動車のエンジンにおける内燃機関の動弁装置、例えば、内燃機関の可変動弁装置で生じる摩擦力は、エンジン全体の機械損失のかなりの量を占めており、ここでのフリクションの低減は、自動車の燃費削減に直結する重要事項である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記内燃機関の可変動弁装置の場合、リフタボア内におけるリフタの回転を阻止するべく設けられたリフタの回転防止機構で生じる摩擦が侮りがたく、すなわち、リフタボアの内周壁に設けられたリフタ摺動方向のガイド溝とリフタに設けられて上記ガイド溝内を摺動する突部との間の摩擦が侮りがたく、したがって、この可変動弁装置におけるフリクションを低減させるには、リフタボアのガイド溝とこのガイド溝を摺動するリフタの突部との間に焼付けが生じるのを防ぐこと、及び、摩耗を低減することが有効な手立てである。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−117721号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、突部を介して伝えられるリフタの回転力を受けるリフタボアのガイド溝の異常摩耗を防ぐために、突部を大きくして面圧を抑え、ガイド溝及び突部間の加工公差を厳しくすると、リフタボアのガイド溝の異常摩耗を回避することはできたとしても、大幅なコストの上昇を招いてしまうことがわかってきた。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、リフタボアのガイド溝及びこのガイド溝内を摺動するリフタの突部の耐摩耗性及び耐面圧性の向上させて長寿命化を実現すると共に、部品加工コストの低減を実現し、加えて、大幅なフリクションの低減を実現して燃費の向上に寄与することができる内燃機関の動弁装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく銑意検討を重ねた結果、内燃機関の動弁装置において、リフタの回転防止機構における摺動部分を硬質炭素薄膜で被覆することで、格段に優れたフリクション低減効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、カムシャフトに吸排気弁毎に配置したカムと、このカムと吸排気弁との間に位置してカムの外周面と摺接するリフタと、シリンダヘッドに形成されてリフタが摺動するリフタボアを備えた内燃機関の動弁装置において、リフタボアの内周壁にはリフタの摺動方向に沿うガイド溝を設けると共に、リフタにはこのリフタが摺動するのに伴ってリフタボアのガイド溝内を摺動する突部を設け、リフタボアのガイド溝及びリフタの突部の内の少なくとも一方を硬質炭素薄膜で被覆したことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示すものとする。
【0011】
リフタボアのガイド溝及びリフタの突部の内の少なくとも一方を被覆する硬質炭素薄膜は、各種PVD法、具体的には、アーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜(ダイヤモンド状炭素薄膜)であることが望ましい。このDLC薄膜は、炭素元素を主として構成された非晶質のものであり、具体的には、炭素元素だけから成るa−C(アモルファスカーボン)、水素を含有するa−C:H(水素アモルファスカーボン)、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含むMeC(メタルカーボン又は金属炭化物)が挙げられるが、大幅な摩擦低減効果を発揮させる観点から、水素含有量が少ないものほど好ましく、水素含有量が原子比で10%以下、好ましくは水素含有量が原子比で1.0%以下、さらには水素を含まないa−C系(アモルファスカーボン系)材料を好適に用いることができる。
【0012】
ここで、鉄鋼材又はアルミニウム材から成る基材の表面粗さ、すなわち、硬質炭素薄膜を被覆する前の基材表面粗さがRaで0.03μmを超えると、硬質炭素薄膜表面の粗さに起因する突起部が相手材との局所的な接触面積を増大させて皮膜の割れを誘発してしまうことから、硬質炭素薄膜を被覆する前の基材表面粗さをRaで0.03μm以下とすることが好ましい。
【0013】
次に、本発明に用いる潤滑油組成物について詳細に説明する。この潤滑油組成物は、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有させて成る。
【0014】
上記潤滑油基油としては特に限定されるものではなく、鉱油、合成油、油脂及びこれらの混合物など、潤滑油組成物の基油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。
【0015】
鉱油として、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系又はナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用でき、溶剤精製、水素化精製処理したものが一般的であるが、芳香族分をより低減することが可能な高度水素化分解プロセスやGTL Wax(ガス・トウー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造したものを用いることがより好ましい。
【0016】
合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)、ポリ−α−オレフィンの水素化物、イソブテンオリゴマー、イソブテンオリゴマーの水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンイソステアリネート等のトリメチロールプロパンエステル;ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のペンタエリスリトールエステル)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフイン又はその水素化物が好ましい例として挙げられる。
【0017】
本発明に用いる潤滑油組成物の基油は、鉱油系基油又は合成系基油を単独又は混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油又は2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
【0018】
潤滑油基油中の硫黄分について、特に制限はないが、基油全量基準で、0.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、さらには0.05%以下であることが好ましい。特に、水素化精製鉱油や合成系基油の硫黄分は、0.005%以下、あるいは実質的に硫黄分を含有していない(5ppm以下)ことから、これらを基油として用いることが好ましい。
【0019】
また、潤滑油基油中の芳香含有量についても、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として長期間低摩擦特性を維持するためには、全芳香族含有量が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。即ち、潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため好ましくない。
【0020】
なお、ここで言う全芳香族含有量とは、ASTM D2549に規定される方法に準拠して測定される芳香族留分(aromatics fraction)含有量を意味している。
【0021】
潤滑油基油の動粘度にも、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として使用する場合には、100℃における動粘度が2mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは3mm2/s以上である。一方、その動粘度は、20mm2/s以下であることが好ましく、10mm2/s以下、特に8mm2/s以下であることが好ましい。100℃における潤滑油基油の動粘度が2mm2/s未満である場合には、十分な耐摩耗性が得られないのに加えて、蒸発特性が劣る可能性があるため好ましくない。一方、100℃における潤滑油基油の動粘度が20mm2/sを超える場合には、低摩擦性能を発揮しにくく、低温性能が悪くなる可能性があるため好ましくない。本発明においては、上記基油の中から選ばれる2種以上の基油を任意に混合した混合物等が使用でき、100℃における動粘度が上記の好ましい範囲内に入る限りにおいては、基油単独の動粘度が上記以外のものであっても使用可能である。
【0022】
また、潤滑油基油の粘度指数にも、特別な制限はないが、80以上であることが好ましく、100以上であることがさらに好ましく、特に内燃機関用潤滑油組成物として使用する場合には、120以上であることが好ましい。潤滑油基油の粘度指数を高めることでよりオイル消費が少なく、低温粘度特性、省燃費性能に優れた内燃機関用潤滑油組成物を得ることができる。
【0023】
上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤としては、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、特に好ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミン化合物、及びこれらの任意混合物を挙げることができる。炭素数が6〜30の範囲外のときは、摩擦低減効果が十分に得られない可能性がある。
【0024】
炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状炭化水素基としては、具体的には、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基などを挙げることができる。なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
【0025】
また、上記脂肪酸エステルとしては、かかる炭素数6〜30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルなどを例示でき、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレートなどを特に好ましい例として挙げることができる。
【0026】
上記脂肪族アミン化合物としては、脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族ポリアミン、イミダゾリン化合物等、及びこれらの誘導体等を例示できる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の脂肪族アミン化合物や、これら脂肪族アミン化合物のN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル(又はアルケニル)(炭素数6〜28)等のアミンアルキレンオキシド付加物、これら脂肪族アミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したりアミド化した、いわゆる酸変性化合物等が挙げられる。好適な例としては、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン等が挙げられる。
【0027】
また、本発明に用いる潤滑油組成物に含まれる脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、0.05〜3.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.0%、特に好ましくは0.5〜1.4%であることがよい。上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり易く、3.0%を超えると潤滑油への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生し易いので、好ましくない。
【0028】
一方、本発明に用いる潤滑油組成物は、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有することが好適であり、上記ポリブテニルコハク酸イミドとしては、次の一般式(1)及び(2)で表される化合物が挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
これら一般式におけるPIBは、ポリブテニル基を示し、高純度イソブテン又は1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒又は塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られる数平均分子量が900〜3500、望ましくは1000〜2000のポリブテンから得られる。上記数平均分子量が900未満の場合は清浄性効果が劣り易く、3500を超える場合は低温流動性に劣り易いため、望ましくない。
【0032】
また、上記一般式におけるnは、清浄性に優れる点から1〜5の整数、より望ましくは2〜4の整数であることがよい。更に、上記ポリブテンは、製造過程の触媒に起因して残留する微量のフッ素分や塩素分を吸着法や十分な水洗等の適切な方法により、50ppm以下、より望ましくは10ppm以下、特に望ましくは1ppm以下まで除去してから用いることもよい。
【0033】
更に、上記ポリブテニルコハク酸イミドの製造方法としては、特に限定はないが、例えば、上記ポリブテンの塩素化物又は塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。
【0034】
一方、上記ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物に、ホウ素化合物や含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性又は酸変性化合物を例示できる。その中でもホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミド、特にホウ素含有ビスポリブテニルコハク酸イミドが最も好ましいものとして挙げられる。
【0035】
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。具体的には、上記ホウ酸として、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸などが挙げられる。また、上記ホウ酸塩としては、アンモニウム塩等、具体的には、例えばメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウムが好適例として挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル、より具体的には例えば、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリププロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、ホウ酸トリブチル等が好適例として挙げられる。なお、ホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドにおけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比「B/N」は、通常0.1〜3であり、好ましくは、0.2〜1である。
【0036】
また、上記含酸素有機化合物としては、具体的には、例えばぎ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルポン酸並びにこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる
【0037】
なお、本発明に用いる潤滑油組成物において、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量は特に制限されないが、0.1〜15%が望ましく、より望ましくは1.0〜12%であることが好ましい。0.1%未満では清浄性効果に乏しくなることがあり、15%を超えると含有量に見合う清浄性効果が得られにくく、抗乳化性が悪化し易い。
【0038】
更にまた、本発明に用いる潤滑油組成物は、次の一般式(3)で表されるジチオリン酸亜鉛を含有することが好適である。
【0039】
【化3】
【0040】
上記式(3)中のR4、R5、R6及びR7は、それぞれ別個に炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0041】
上記R4、R5、R6及びR7としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基等のオクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジ−プロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロへキシル基、ジメチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、プロピルシクロへキシル基、エチルメチルシクロへキシル基、トリメチルシクロへキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジ−プロピルシクロへキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジ−プロピルシクロヘプチル基、プロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基、等が例示できる。
【0042】
なお、R4、R5、R6及びR7がとり得る上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造をが含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、上記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分柱状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基、又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0043】
上記ジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。
【0044】
また、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量は、特に制限されないが、より高い摩擦低減効果を発揮させる観点から、組成物全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることが好ましく、また0.06%以下であることがより好ましく、更にはジチオリン酸亜鉛が含有されないことが特に好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン元素換算量で0.1%を超えると、DLC部材と鉄基部材との摺動面における上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤や上記脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の優れた摩擦低減効果が阻害されるおそれがある。
【0045】
上記ジチオリン酸亜鉛の製造方法としては、従来方法を任意に採用することができ、特に制限されないが、具体的には、例えば、上記R4、R5、R6及びR7に対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五二硫化りんと反応させてジチオリン酸とし、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。なお、上記ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なることは言うまでもない。
【0046】
本発明においては、上記一般式(3)に包含される2種以上のジチオリン酸亜鉛を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0047】
上述のように、本発明の潤滑油組成物は、硬質炭素薄膜で被覆したリフタボアのガイド溝及びこのガイド溝と摺動するリフタの突部に用いた場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関用潤滑油組成物として必要な性能を高める目的で、金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、他の無灰摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
【0048】
上記金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレートナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。ここで、上記アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、上記アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。
【0049】
なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常、全塩基価は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は組成物全量基準で、通常0.1〜10%である。
【0050】
また、上記酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、組成物全量基準で、通常0.01〜5%である。
【0051】
更に、上記粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、及び更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。
【0052】
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよく、ポリイソブチレン又はその水素化物では800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物では800〜300000、好ましくは10000〜200000がよい。また、かかる粘度指数向上剤は、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油組成物基準で0.1〜40.0%であることが望ましい。
【0053】
更にまた、他の無灰摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられ、他の無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0054】
更にまた、上記磨耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
【0055】
更にまた、上記防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられ、上記非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
更にまた、上記金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等が挙げられ、上記消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0057】
なお、これら添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は、組成物全量基準で、他の摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤又は極圧剤、防錆剤、及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.005〜1%、消泡剤については0.0005〜1%の範囲から適宜選択できる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
図1〜図3に示すように、シリンダヘッド4には、吸気側のカムシャフト1及び排気側のカムシャフト(図示せず)が気筒列方向に沿って配置してあり、これらのカムシャフト1は、カムブラケット21によってシリンダヘッド4に回転自在に支持されていて、ベルト又はチェーンを介して伝達されるクランクシャフトからの駆動力により回転する。
【0060】
この実施例の内燃機関の動弁装置は可変動弁装置であって、カムシャフト1に吸気弁15毎に配置した互いに外周面のカムプロフィールが異なる2種類のカム2,3(低速カム2,高速カム3)と、これらのカム2,3と吸気弁15との間に位置してカム2,3の外周面と摺接するリフタ5,6を備えており、この可変動弁装置は、2種類のカム2,3を切り換えて使用することで、吸気弁15のバルブリフト特性を多段階に切り換えるようになっている。
【0061】
低速カム2は、図11にも示すように、ベースサークル区間に対応するベース円2aと、このベース円2aよりも径方向に突出したリフト区間に対応するカムノーズ2bを有しており、一方、高速カム3は、ベースサークル区間に対応するベース円3aと、リフト区間に対応するカムノーズ3bを有している。
【0062】
各吸気弁15に適用するリフタとして、2つのアウタカムとしての高速カム3に摺接する1個のアウタリフタ5と、インナカムとしての低速カム2に摺接するインナリフタ6が設けてあり、アウタリフタ5は、シリンダヘッド4に設けたリフタボア4aに摺動可能に嵌合してある。このアウタリフタ5はその冠面5aの中央に空隙5bを有しており、この空隙5bにインナリフタ6が摺動可能に嵌合してある。
【0063】
アウタリフタ5とシリンダヘッド4との間には、アウタスプリング13が設けてあり、このアウタスプリング13により、アウタリフタ5を高速カム3側に付勢している。また、吸気弁15のバルブステムには、リテーナ16がバルブコッタ14によって固定してあって、このリテーナ16とシリンダヘッド4との間に設けたインナスプリング17により、吸気弁15のバルブステムを介してインナリフタ6を低速カム2側に付勢している。吸気弁15のバルブステムの上端とインナリフタ6の下面との間には、バルブクリアランス調整用のインナシム18が設けてある。
【0064】
上記アウタリフタ5及びインナリフタ6には、ロック状態及びロック解除状態を切り換えるピン7〜9を摺動可能に嵌合する3つのピン穴5c,5d,6aが設けてあり、所定のバルブタイミングでは上記3つのピン穴5c,5d,6aが同一直線上に配列されて一つの長孔として機能し、3つのピン7〜9が同一直線上に配列されて一つの長孔に嵌合するプランジャとして機能するようになっている。
【0065】
ピン7〜9の一端とストッパ11との間には、ばね10が設けてあり、ピン7〜9の他端側には、油圧室5e形成してあって、この油圧室5eには、シリンダヘッド4に形成した油圧経路4c及びアウタリフタ5の内部に形成した油圧経路5fを経由して作動油(エステル油)を供給するようになっている。
【0066】
この場合、アウタリフタ5の油圧経路5fとシリンダヘッド4の油圧経路4cとの周方向の位置ずれを防ぐために、図4にも示すように、シリンダヘッド4のリフタボア4aの内周壁にはアウタリフタ5の摺動方向に沿うガイド溝4bが設けてあると共に、アウタリフタ5にはこのアウタリフタ5が摺動するのに伴ってリフタボア4aのガイド溝4b内を摺動する回転防止材(突部)12が設けてあり、リフタボア4aのガイド溝4b及びアウタリフタ5の回転防止材12の双方をアーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜で被覆している。
【0067】
この可変動弁装置では、油圧制御弁によって油圧室5eへの油圧の供給・停止を切り換えることにより、低速カム2と高速カム3とを使い分けてバルブリフト特性を2段階に切り換えるようにしている。例えば、所定の低出力運転状態、すなわち、アイドリング状態を含む低回転・低負荷域では、油圧制御弁により油圧室5eへの油圧の供給を停止すると、ばね10の弾性力により3つのピン7〜9のうちのピン7がインナリフタ6のピン穴6a内のみに収容され、3つのピン7〜9のうちのピン8,9がアウタリフタ5のピン穴5c,5d内のみにそれぞれ収容された状態となる。これにより、アウタリフタ5とインナリフタ6とは、非連結・ロック解除状態となり、互いに独立して移動することができる。したがって、アウタリフタ5は高速カム3のカムノーズ3bによって上下にロストモーションを行い、これとは独立して低速カム2のカムノーズ2bによりインナリフタ6が昇降して、インナシム18を介して吸気弁15を駆動する。つまり、吸気弁15は、低速カム2の特性に従って、リフト量及び作動角の小さいバルブリフト特性で作動する。
【0068】
一方、所定の高出力運転状態では、油圧制御弁により油圧室5eへ油圧の供給を行うと、この油圧により3つのピン7〜9がばね10の弾性力に抗して、ピン8がアウタリフタ5のピン穴5cとインナリフタ6のピン穴6aとに跨って配置されると共に、ピン9がインナリフタ6のピン穴6aとアウタリフタ5のピン穴5dとに跨って配置され、これらのピン8,9によってアウタリフタ5とインナリフタ6とが連結・ロック状態となり、したがって、アウタリフタ5とインナリフタ6とは一体となって高速カム3のカムノーズ3bにより昇降して、吸気弁15を駆動する。つまり、吸気弁15は、高速カム3の特性に従って、リフト量及び作動角の大きいバルブリフト特性で作動する。なお、高速カム3は、高負荷に耐え得るように、言い換えれば、接触幅を稼ぐように、1つの吸気弁15に対して2つ設けてある。
【0069】
上記内燃機関の動弁装置では、図5に示すように、低速カム2及び高速カム3の全てのカムの外周面において、そのカムの幅方向(カムシャフト軸方向)の中央部が幅方向両側部よりもカムの径方向外側に向けて突出する凸面30として形成してあり、好ましくは、凸面30は、カムの幅方向中心線31が最も径方向外側に向けて突出するように、所定の曲率で断面円弧状に滑らかに湾曲するように形成する。すなわち、凸面30は、カム幅方向全体にわたって角のない湾曲面となっている。但し、図5の拡大図では、凸面30の曲率を誇張して大きく描いており、実際には、凸面30の突出量32が例えば2〜5μmとなるように曲率及び形状を設定している。
【0070】
凸面30は、例えばこの凸面30に対応する凹面を有する砥石を用いた旋削加工により形成することができ、この凸面30は、少なくとも荷重が作用するリフト区間相当するカムノーズの外周面の部分に形成されていればよい。
【0071】
この内燃機関の動弁装置では、全てのカムの外周面を凸面30としているので、低速カム2を使用する場合と、高速カム3を使用する場合との双方、すなわち、全運転領域にわたって、カムの幅方向両側部での片当たりを確実に防止し、この片当たりによるフリクションの過度な上昇を確実に抑制し、燃費及び出力の向上を図ると共に、カムの耐久性及び信頼性の向上を図ることができる。
【0072】
図6は内燃機関の動弁装置の他の構成例を示している。この動弁装置では、高速カム3のみの外周面を凸面30とすることで、すなわち、凸面30を形成するカムの個数を減らすことで、凸面形成のための成形加工費の低減及びカムシャフトの低コスト化を図っている。加えて、高速カム3のみの外周面を凸面30とすることで、高負荷域での使用に対する耐久性及び信頼性の向上を実現すると共に、出力を有効に上昇させることができる。
【0073】
図7は内燃機関の動弁装置のさらに他の構成例を示している。この内燃機関の動弁装置において、低速カム2のみの外周面を凸面30とすることで、すなわち、凸面30を形成するカムの個数を減らすことで、凸面形成のための成形加工費の低減及びカムシャフトの低コスト化を図っている。加えて、低速カム2のみの外周面を凸面30とすることで、低回転低負荷域での動弁系のフリクションを有効に軽減することができ、燃費の向上を図ることができる。
【0074】
そこで、低速カム2のみの外周面を凸面30とする場合の利点について説明する。図8 に示すように、低速カム2が摺接するインナリフタ6の冠面は、アウタリフタ5の冠面5aの中央部に位置する略円形の部分であり、低速カム2の外周面を凸面30とした場合、その接触幅はD1からD2へ減少するものの、摺動方向長さはL1からL2へ増加し、全体として摺動面積が大きく減少することはなく、面圧が過度に上昇する恐れもないことに加えて、摺動方向長さが増加する分だけ、リフト量及び作動角を大きくすることができる。
【0075】
また、この動弁装置では、図1及び図4に示すように、アウタリフタ5の油圧経路5fとシリンダヘッド4の油圧経路4cとの周方向の位置ずれを防ぐために、シリンダヘッド4のリフタボア4aの内周壁に設けたガイド溝4bにアウタリフタ5に設けた回転防止材12を嵌め込んでアウタリフタ5の回転を確実に防止するようにしているが、カム側からリフタ側へ周方向の大きな回転力が作用すると、回転防止材12とガイド溝4bとが強く接触して摩耗し、信頼性及び耐久性を損ねる恐れがある。この動弁装置では、リフタボア4aのガイド溝4b及びアウタリフタ5の回転防止材12の双方をアーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜で被覆することで、フリクションの低減を図っているのに加えて、カム側からリフタ側へ作用する回転力自体を低減ないし解消するために、図5〜図7に示すように、凸面30の最突出位置(リフタとの接触幅の中央位置)33をカム幅方向中央線31上であって且つリフタ中心又はリフタ中心に対して均等目標位置に設定している。
【0076】
ここで、図9に示すように、高速カム3の外周面を凸面30としている場合で、且つ、その最突出位置33が目標位置31に対してずれた場合には、上記回転力が比較的大きくなってしまうのに対して、図10に示すように、低速カム2の外周面を凸面30としている場合で、且つ、その最突出位置33が目標位置31に対して同じ幅ΔDだけずれた場合には、最突出位置33自体がリフタの中心に近く、加えて、カムとリフタとの間の面圧も低いことから、低速カム2のみの外周面を凸面30とすれば、リフタへ作用する回転力を十分に小さく抑えることができる。
【0077】
上記した実施例では、リフタボア4aのガイド溝4b及びアウタリフタ5の回転防止材12の双方をアーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜で被覆するようにしているので、耐摩耗性及び耐面圧性が向上することとなって長寿命化が実現する。また、回転防止材12を小さくしたりガイド溝4b及び回転防止材12の加工公差を緩めたりすることができるので、コストの低減をも実現可能であり、さらに、アウタリフタ5が摺動する際のフリクションを大幅に低減することが可能である。
【0078】
上記した実施例では、リフタボア4aのガイド溝4b及びアウタリフタ5の回転防止材12の双方をアーク式イオンプレーティング法により形成したDLC薄膜で被覆する場合を示したが、ガイド溝4b及び回転防止材12の内の少なくとも一方をDLC薄膜で被覆すればよく、この場合も上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、上記実施例では、本発明を吸気弁側に適用した場合を示したが、本発明を排気弁側に適用してもよい。
【0080】
さらに、上記実施例では、リフタの冠面が平坦である場合を示したが、図12に示すように、リフタ25の冠面25aに曲率をつけて湾曲面としてもよく、この場合は、リフタの径を縮小することができ、材料費の削減及び重量の軽減を実現することができる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、上記した構成としたため、部品の長寿命化及び低コスト化を実現すると共に、フリクションの大幅な低減を実現した内燃機関の動弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の動弁装置の一実施例を示すカムシャフトに沿う方向からの断面説明図である。
【図2】図1における内燃機関の動弁装置のカムシャフトに直交する方向からの断面説明図である。
【図3】図1における内燃機関の動弁装置のシリンダヘッドの平面説明図である。
【図4】図1に示した内燃機関の動弁装置におけるガイド溝と回転防止材との嵌合状態説明図(a)及びG部の拡大説明図(b)である。
【図5】図1に示した内燃機関の動弁装置のカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図5(a)におけるB部の拡大説明図(b)である。
【図6】本発明の内燃機関の動弁装置の他の構成例を示すカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図6(a)におけるC部の拡大説明図(b)である。
【図7】本発明の内燃機関の動弁装置のさらに他の構成例を示すカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図7(a)におけるD部の拡大説明図(b)である。
【図8】図7における内燃機関の動弁装置の低速カムとインナリフタとの関係を示す説明図である。
【図9】図7における内燃機関の動弁装置の利点を示すカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図9(a)におけるE部の拡大説明図(b)である。
【図10】図9と同じく図7における内燃機関の動弁装置の利点を示すカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図10(a)におけるF部の拡大説明図(b)である。
【図11】内燃機関の可変動弁装置のカムシャフトの部分側面説明図(a)及び図11(a)におけるA−A線位置での断面説明図(b)である。
【図12】本発明の内燃機関の動弁装置の他の実施例を示すリフタの断面説明図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト
2 低速カム
3 高速カム
4 シリンダヘッド
4a リフタボア
4b ガイド溝
5 アウタリフタ
12 回転防止材(突部)
15 吸気弁
Claims (10)
- カムシャフトに吸排気弁毎に配置したカムと、このカムと吸排気弁との間に位置してカムの外周面と摺接するリフタと、シリンダヘッドに形成されてリフタが摺動するリフタボアを備えた内燃機関の動弁装置において、リフタボアの内周壁にはリフタの摺動方向に沿うガイド溝を設けると共に、リフタにはこのリフタが摺動するのに伴ってリフタボアのガイド溝内を摺動する突部を設け、リフタボアのガイド溝及びリフタの突部の内の少なくとも一方を硬質炭素薄膜で被覆したことを特徴とする内燃機関の動弁装置。
- リフタボアのガイド溝及びリフタの突部は潤滑油の存在下で摺動し、上記硬質炭素薄膜に含まれる水素原子の量が10原子%以下である請求項1に記載の内燃機関の動弁装置。
- 上記硬質炭素薄膜に含まれる水素原子の量が1.0原子%以下である請求項1又は2に記載の内燃機関の動弁装置。
- リフタボアのガイド溝及びリフタの突部は、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油の存在下で摺動する請求項1〜3のうちのいずれか1つの項に記載の内燃機関の動弁装置。
- 上記潤滑油の脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤は、炭素数6〜30の炭化水素基を有し、組成物全量基準で0.05〜3.0%含有されている請求項4に記載の内燃機関の動弁装置。
- 上記潤滑油は、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有している請求項2〜5のいずれか1つの項に記載の内燃機関の動弁装置。
- ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量を組成物全量基準で0.1〜15%としている請求項6に記載の内燃機関の動弁装置。
- 上記潤滑油は、組成物全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下のジチオリン酸亜鉛を含有している請求項2〜7のいずれか1つの項に記載の内燃機関の動弁装置。
- アーク式イオンプレーティング法により成膜したDLC薄膜を硬質炭素薄膜とした請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の内燃機関の動弁装置。
- 上記硬質炭素薄膜の被覆前における基材の表面粗さをRaで0.03μm以下とした請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の内燃機関の動弁装置。
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-
2003
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