JP4006644B2 - 内燃機関用動弁機構 - Google Patents
内燃機関用動弁機構 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4006644B2 JP4006644B2 JP2003197732A JP2003197732A JP4006644B2 JP 4006644 B2 JP4006644 B2 JP 4006644B2 JP 2003197732 A JP2003197732 A JP 2003197732A JP 2003197732 A JP2003197732 A JP 2003197732A JP 4006644 B2 JP4006644 B2 JP 4006644B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- camshaft
- cam lobe
- lubricating oil
- acid
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Valve-Gear Or Valve Arrangements (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カムシャフトと該カムシャフトとバルブステムの間に介在するバルブリフターから成り、例えば自動車用のエンジンにおいて、カムシャフトの回転を吸排気バルブの開閉作動に変換する動弁機構に係わり、さらに詳しくはアルミニウム合金を用いた軽量カムシャフトと低摩擦バルブリフターを組合せることによって、摩擦特性及び耐摩耗性を向上させた内燃機関用動弁機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の内燃機関におけるカムシャフトの軽量化技術としては、カム(カムロブ)をアルミニウム合金のダイカストによって成形し、鋼管の側面にはんだ付けによって接合することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1記載の組立カムシャフトにおいては、カムの原料として、JIS H 5202に規定されるAC4C材(Al−9%Si−0.5%Mg)を使用し、これに強化材としてのアルミナあるいは炭化ケイ素を分散させることによって耐摩耗性を確保するようにしているが、相手攻撃性が強く、摺動相手材であるバルブリフターが摩耗する場合がある。
【0003】
また、アルミニウム合金中に16%以上のSiを含有させた軽量カムシャフトも知られており、この場合、Siの添加によって自身の耐摩耗性が向上する一方、分散されたSi相の硬度がさほど高くならないために相手攻撃性が低く、自身のカムロブの摩耗抑制と相手摺動部材の摩耗抑制とを両立させることができる(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−256819号公報
【特許文献1】
特開2001−214711号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献2に記載の軽量カムシャフトにおいては、16%以上のものSiを含有するため、原料費の上昇と被削性の悪化によるコストアップという問題点があり、Siなどの添加元素をできるだけ削減してコスト低減を図りながら、相手攻撃性を高めることなく自身の耐摩耗性を確保することが従来の軽量カムシャフトにおける課題となっていた。
【0006】
本発明は、従来の軽量カムシャフトにおける上記課題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、カムシャフトのカムロブとこれに摺接するバルブリフター間の摩擦抵抗を軽減して、これらの耐摩耗性を低コストで両立させることができ、内燃機関の性能及び信頼性を向上させると共に、その燃費を改善することができる内燃機関用動弁機構を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、カムロブと相手摺動部材であるバルブリフターとの間に生じる摩擦力を軽減するため、カムロブ材料や表面処理、さらにはこれら部材間の摺動面に介在する潤滑材成分について鋭意検討を重ねた結果、カムロブと摺接するバルブリフターの冠面に水素含有量の少ない炭素系硬質薄膜を成膜すると共に、特定の無灰摩擦調整剤を添加した潤滑油を用いることによって、Si含有量を増すことなくカムロブ部の耐摩耗性を向上させることができると共に、バルブリフターと間の摩擦特性を大幅に向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の内燃機関用動弁機構は、上記知見に基づくものであって、少なくともカムロブ部がアルミニウム合金から成るカムシャフトと、上記カムロブと潤滑油を介して摺動する直動バルブリフターを備え、上記潤滑油が脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有すると共に、上記アルミニウム合金が2%以上のSiを含有し、さらにカムロブとの摺動面であるバルブリフターの冠面に水素含有量が1at%以下である非晶質硬質炭素薄膜から成る被膜がPVD法によって施されていることを特徴としている。また、同様の潤滑油を介して摺動する同様のカムシャフトとバルブリフターを備えた内燃機関用動弁機構であって、上記アルミニウム合金が3〜4%のSiを含有し、さらにバルブリフターの冠面に水素含有量が1at%以下の非晶質硬質炭素薄膜から成る被膜が施され、上記カムシャフトのカムロブのノーズ部における表面粗さRaが0.03〜0.12μm、望ましくは0.03〜0.07μmであると共に、上記バルブリフターの冠面上に形成された非晶質炭素薄膜の表面粗さRaが0.01〜0.03μmであることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示すものとする。なお、非晶質硬質炭素薄膜中の水素含有量については、at(原子)%とする。
【0010】
図1は、本発明の内燃機関用動弁機構の構成を示す概略図であって、図に示す動弁機構は、カムロブ1aを備えたカムシャフト1と、バルブステム3の上端部に装着されたバルブリフター2から成り、バルブステム3は、バルブリフター2と共に、圧縮コイルスプリング4によって図中上方に付勢され、閉弁状態に保持されている。
カムシャフト1が回転すると、カムロブ1aがバルブリフター2と共にバルブステム3を押し下げることによって開弁するようになっており、カムシャフト1の回転速度に応じた周期でバルブの開閉が行われることになる。
【0011】
本発明の動弁機構においては、上記カムシャフト1のカムロブ1aがアルミニウム合金材料から成り、少なくとも2%のSiを含有していることから耐摩耗性が確保されると共に、カムロブ1aとの摺動面であるバルブリフター2の冠面に、10at%以下の水素を含有する非晶質硬質炭素薄膜2aによる被覆が施してあり、これらの摺動面が脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油によって潤滑されていることから、カムロブ−バルブリフター間の摩擦抵抗が大幅に低減し、カムロブ1aの摩耗量も大幅に減少することになる。
【0012】
上記カムシャフト1は、図2に示すような形状を有し、例えば、図2(a)に示すように、カムロブ部1aのみを上記したような少なくとも4%のSiを含有するアルミニウム合金から鋳造や粉末鍛造などによって成形したのち、金属管1bの外周部に接合することによって製造することができる(組み立てカムシャフト)。当然のことながら、図2(b)に示すような一体カムシャフトを採用することもでき、少なくともカムロブ1aの部分が上記のようなアルミニウム合金から成るものであれば、製造方法については特に限定されない。
また、上記組み立てカムシャフトにおける金属管1bの素材についても特に限定されないが、軽量化の観点からは、アルミニウムやマグネシウム合金などの軽量金属合金を用いることが好ましい。
【0013】
上記アルミニウム合金においては、Si含有量が増すほど、耐摩耗性が向上する傾向が認められる。但し、Si含有量が余りに多くなると、上記したように被削性が劣化し、原料費の上昇と相俟ってコスト的なデメリットが生じるようになるので注意を要する。
【0014】
上記カムシャフト1のカムロブ1aの表面粗さ、すなわちバルブリフター2の冠面に形成された硬質炭素薄膜2aに摺接するカムロブノーズ部の表面粗さについては、Raで0.08μm以下であることが摺動の安定性の面から望ましい。すなわち、カムロブ1aのノーズ部における表面粗さRaが0.08μmを超えると、表面粗さの突起による硬質炭素薄膜2aの割れを防止できなくなる可能性がある。
【0015】
一方、バルブリフター2は、図3に示すようなカップ状をなし、上記したように、例えばアルミニウム合金などから成る基材におけるカムロブ1aとの摺接面である冠面上に非晶質硬質炭素薄膜2aが成膜してある。
【0016】
上記非晶質硬質炭素薄膜2aとしては、例えば炭素原子を主として構成されるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)材料を用いることができる。
このDLC材料は、炭素同士の結合形態がダイヤモンド構造(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方から成る。具体的には、炭素元素だけから成るa−C(アモルファスカーボン)、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含むMeCなどを好適に用いることができる。
【0017】
硬質炭素薄膜2a中の水素含有量が増加すると摩擦係数が増すことから、潤滑油中での摺動時の摩擦係数を十分に低下させ、より安定した摺動特性を確保するためには、1at%以下とする必要がある。
【0018】
そして、このような水素含有量の低い硬質炭素薄膜は、例えばスパッタリング法やイオンプレーティング法など、水素や水素含有化合物を実質的に使用しないPVD法によって成膜することによって得られる。
この場合、成膜時に水素を含まないガスを用いるだけでなく、場合によっては反応容器や基材保持具のベーキングや、基材表面のクリーニングを十分に行ったうえで成膜することが被膜中の水素量を減らすために望ましい。
【0019】
また、上記硬質炭素薄膜2aの表面粗さについては、Ra(中心線平均粗さ)で0.04μm以下とすることが望ましく、これによって上記摩擦調整剤を含有する潤滑油のもとで、両部材の摺動状態が長期に亘って安定に維持されるようになる。このとき、平均粗さRaが0.04μmを超えると、局部的にメタルコンクトが生じ、摩擦係数が大幅に増加する傾向があり、また、相手カム材の摩耗を増加させる。
なお、硬質炭素薄膜の表面粗さについては、成膜前の素材表面粗さによってほぼ決定され、成膜面の表面粗さが実質的に硬質炭素薄膜の表面粗さとなることから、成膜前の素材表面粗さをRzで2μm以下とすれば、Rz=2μm以下の表面粗さを備えた硬質炭素薄膜を得ることができる。
【0020】
次に、本発明に用いる潤滑油の組成について詳細に説明する。
本発明に用いる潤滑油は、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有させたものであって、このような潤滑油をバルブリフター2の硬質炭素薄膜2aとカムロブ1aとの摺接面に介在させることによって両部材が極めて低摩擦で摺動し得るようになる。
【0021】
ここで、上記潤滑油基油としては特に限定されるものではなく、鉱油、合成油、油脂及びこれらの混合物など、潤滑油の基油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系又はナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用でき、溶剤精製、水素化精製処理したものが一般的であるが、芳香族分をより低減することが可能な高度水素化分解プロセスやGTL Wax(ガス・トウー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造したものを用いることがより好ましい。
【0022】
合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)、ポリ−α−オレフィンの水素化物、イソブテンオリゴマー、イソブテンオリゴマーの水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンイソステアリネート等のトリメチロールプロパンエステル;ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のペンタエリスリトールエステル)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフイン又はその水素化物が好ましい例として挙げられる。
【0023】
本発明に用いる潤滑油の基油は、鉱油系基油又は合成系基油を単独あるいは混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油、あるいは2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
【0024】
潤滑油基油中の硫黄分について、特に制限はないが、基油全量基準で、0.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、さらには0.05%以下であることが好ましい。特に、水素化精製鉱油や合成系基油の硫黄分は、0.005%以下、あるいは実質的に硫黄分を含有していない(5ppm以下)ことから、これらを基油として用いることが好ましい。
【0025】
また、潤滑油基油中の芳香族含有量についても、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として長期間低摩擦特性を維持するためには、全芳香族含有量が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。即ち、潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため好ましくない。
なお、ここで言う全芳香族含有量とは、ASTM D2549に規定される方法に準拠して測定される芳香族留分(aromatics fraction)含有量を意味している。
【0026】
潤滑油基油の動粘度にも、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油として使用する場合には、100℃における動粘度が2mm2/s以上であることが好ましく、より好ましくは3mm2/s以上である。一方、その動粘度は、20mm2/s以下であることが好ましく、10mm2/s以下、特に8mm2/s以下であることが好ましい。潤滑油基油の100℃における動粘度が2mm2/s未満である場合には、十分な耐摩耗性が得られない上に蒸発特性が劣る可能性があるため好ましくない。一方、動粘度が20mm2/sを超える場合には低摩擦性能を発揮しにくく、低温性能が悪くなる可能性があるため好ましくない。本発明においては、上記基油の中から選ばれる2種以上の基油を任意に混合した混合物等が使用でき、100℃における動粘度が上記の好ましい範囲内に入る限りにおいては、基油単独の動粘度が上記以外のものであっても使用可能である。
【0027】
また、潤滑油基油の粘度指数にも、特別な制限はないが、80以上であることが好ましく、100以上であることがさらに好ましく、特に内燃機関用潤滑油として使用する場合には、120以上であることが好ましい。潤滑油基油の粘度指数を高めることでよりオイル消費が少なく、低温粘度特性、省燃費性能に優れた内燃機関用潤滑油を得ることができる。
【0028】
上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤としては、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、特に好ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミン化合物、及びこれらの任意混合物を挙げることができる。炭素数が6〜30の範囲外のときは、摩擦低減効果が十分に得られない可能性がある。
【0029】
炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状炭化水素基としては、具体的には、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基などを挙げることができる。
なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
【0030】
また、上記脂肪酸エステルとしては、かかる炭素数6〜30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルなどを例示でき、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレートなどを特に好ましい例として挙げることができる。
上記脂肪族アミン化合物としては、脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族ポリアミン、イミダゾリン化合物等、及びこれらの誘導体等を例示できる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の脂肪族アミン化合物や、これら脂肪族アミン化合物のN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル(又はアルケニル)(炭素数6〜28)等のアミンアルキレンオキシド付加物、これら脂肪族アミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したりアミド化した、いわゆる酸変性化合物等が挙げられる。好適な例としては、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン等が挙げられる。
【0031】
また、本発明に用いる潤滑油に含まれる脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、0.05〜3.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.0%、特に好ましくは0.5〜1.4%であることがよい。上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり易く、3.0%を超えると潤滑油組成物への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生し易いので、好ましくない。
【0032】
一方、本発明に用いる潤滑油は、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有することが好適である。
上記ポリブテニルコハク酸イミドとしては、次の一般式(1)及び(2)
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
で表される化合物が挙げられる。これら一般式におけるPIBは、ポリブテニル基を示し、高純度イソブテン又は1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒又は塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られる数平均分子量が900〜3500、望ましくは1000〜2000のポリブテンから得られる。上記数平均分子量が900未満の場合は清浄性効果が劣り易く、3500を超える場合は低温流動性に劣り易いため、望ましくない。
また、上記一般式におけるnは、清浄性に優れる点から1〜5の整数、より望ましくは2〜4の整数であることがよい。更に、上記ポリブテンは、製造過程の触媒に起因して残留する微量のフッ素分や塩素分を吸着法や十分な水洗等の適切な方法により、50ppm以下、より望ましくは10ppm以下、特に望ましくは1ppm以下まで除去してから用いることもよい。
【0035】
さらに、上記ポリブテニルコハク酸イミドの製造方法としては、特に限定はないが、例えば、上記ポリブテンの塩素化物又は塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。
【0036】
一方、上記ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記般式(1)又は(2)で表される化合物に、ホウ素化合物や含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性又は酸変性化合物を例示できる。その中でもホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミド、特にホウ素含有ビスポリブテニルコハク酸イミドが最も好ましいものとして挙げられる。
【0037】
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。具体的には、上記ホウ酸として、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸などが挙げられる。また、上記ホウ酸塩としては、アンモニウム塩等、具体的には、例えばメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウムが好適例として挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル、より具体的には例えば、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリププロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、ホウ酸トリブチル等が好適例として挙げられる。なお、ホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドにおけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比「B/N」は、通常0.1〜3であり、好ましくは、0.2〜1である。
また、上記含酸素有機化合物としては、具体的には、例えばぎ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルポン酸並びにこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる
【0038】
なお、本発明に用いる潤滑油において、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量は特に制限されないが、0.1〜15%が望ましく、より望ましくは1.0〜12%であることが好ましい。0.1%未満では清浄性効果に乏しくなることがあり、15%を超えると含有量に見合う清浄性効果が得られにくく、抗乳化性が悪化し易い。
【0039】
更にまた、本発明に用いる潤滑油は、次の一般式(3)
【0040】
【化3】
で表されるジチオリン酸亜鉛を含有することが好適である。
上記式(3)中のR4、R5、R6及びR7は、それぞれ別個に炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0041】
上記R4、R5、R6及びR7としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基等のオクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジ−プロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロへキシル基、ジメチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、プロピルシクロへキシル基、エチルメチルシクロへキシル基、トリメチルシクロへキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジ−プロピルシクロへキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジ−プロピルシクロヘプチル基、プロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基、等が例示できる。
なお、R4、R5、R6及びR7がとり得る上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造をが含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、上記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分柱状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基、又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0042】
上記ジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。
【0043】
また、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量は、特に制限されないが、より高い摩擦低減効果を発揮させる観点から、潤滑油全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることが好ましく、また0.06%以下であることがより好ましく、更にはジチオリン酸亜鉛が含有されないことが特に好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン元素換算量で0.1%を超えると、DLC部材と鉄基部材との摺動面における上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤や上記脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の優れた摩擦低減効果が阻害されるおそれがある。
【0044】
上記ジチオリン酸亜鉛の製造方法としては、従来方法を任意に採用することができ、特に制限されないが、具体的には、例えば、上記R4、R5、R6及びR7に対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五二硫化りんと反応させてジチオリン酸とし、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。なお、上記ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なることは言うまでもない。
本発明においては、上記一般式(3)に包含される2種以上のジチオリン酸亜鉛を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0045】
上述のように、本発明に用いる潤滑油は、DLCなどの硬質炭素薄膜と金属材料との摺動面に用いた場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関用潤滑油として必要な性能を高める目的で、金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、他の無灰摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
【0046】
上記金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート、ナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。ここで、上記アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、上記アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。
なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常、全塩基価は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は潤滑油全量基準で、通常0.1〜10%である。
【0047】
また、上記酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、潤滑油全量基準で、通常0.01〜5%である。
【0048】
さらに、上記粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、及び更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよく、ポリイソブチレン又はその水素化物では800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物では800〜300000、好ましくは10000〜200000がよい。また、かかる粘度指数向上剤は、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油基準で0.1〜40.0%であることが望ましい。
【0049】
更にまた、他の無灰摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。
また、他の無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等及びそれらの誘導体等が挙げられる。
さらに、上記磨耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
更にまた、上記防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
また、上記非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
さらに、上記金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
更にまた、上記消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
なお、これら添加剤を本発明に用いる潤滑油に含有させる場合には、その含有量は、潤滑油量基準で、他の摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤又は極圧剤、防錆剤、及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.005〜1%、消泡剤については0.0005〜1%の範囲から適宜選択できる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例によって、更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
〔1〕カムシャフト
Si含有量の異なるアルミニウム合金を用い、ダイカストによって市販品と同じ形状のカムロブを形成してカムシャフトとした。なお、一部実施例については、Al−20Si−Cu−Mg系の急冷粉末合金から成る焼結材とした。
いずれのカムロブも粗材からダイヤモンド砥石を用いた研削加工によって、種々の表面粗さを備えた所定形状に成形した。なお、表面粗さがRa0.1μm以下のものについては、テープラッピングによって最終仕上を施した。
【0052】
〔2〕バルブリフター
SCM420材(浸炭焼入れ)から成る所定形状のリフター基材の冠面に超仕上げ砥石による研磨加工を施し、表面粗さをRa0.02μm以下(一部、Ra0.2μm以下)に仕上げたのち、当該冠面上にPVDアーク式イオンプレーティング法又はプラズマCVD法によって、水素含有量が異なる厚さ0.5μmのDLC薄膜を成膜して、非晶質硬質炭素薄膜とした。なお、水素含有量については、原料種や成膜条件を変更することによって調整した。また、一部比較例については、非晶質硬質炭素薄膜を成膜することなく、後述する摩耗試験を実施した。
【0053】
〔3〕潤滑油
ベースオイルとしてのポリアルファオレフィン(PAO)に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤としてグリセリンモノオレート、あるいは脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤としてオレイルアミン変性物を1%添加したものを潤滑油として使用した。なお、PAOの粘度については、100℃における粘度を5W30に合わせた。
また、一部比較例には、鉱物油に、無灰摩擦調整剤を含まない市販の添加剤パッケージを1%添加したものを用いた。
【0054】
〔4〕性能評価
本発明の摺動特性改善効果を確認するため、上記カムシャフトとバルブリフターと潤滑油とを組合わせ、下記の条件のもとに、直動式動弁機構を模擬した単体摩耗試験を実施し、摩擦係数とカムロブの摩耗量を測定した。この結果を表1に示す。
(評価条件)
カムシャフト回転数:300rpm
最大面圧:700MPa
油種:5W30相当の粘度グレードとなる潤滑油
油温:100℃
評価時間:100時間
摩耗量測定:最大長さ変化
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、2%以上のSi含有量のアルミニウム合金から成るカムロブを備えたカムシャフトと、冠面に水素含有量が10at%以下のDLC(非晶質硬質炭素薄膜)を成膜したバルブリフターと、ポリアルファオレフィン中に1%のグリセリンモノオレート又はオレイルアミン変性物を添加した潤滑油を組合わせた試験No.1〜6、とりわけ水素含有量が1at%以下の試験No.1,2,3(実施例)においては、このような摩擦調整剤が添加されていない潤滑油や、DLC被膜がなかったり、水素含有量の高いDLC被膜を形成したりしたバルブリフターを組合わせた試験No.7〜12(比較例)に較べて、摩擦係数が低く、カムロブの摩耗量も少なくなることが確認された。
なお、カムロブにSi含有量が18%の焼結Al材を用いた試験No.6(参考例)においては、摩擦係数もカムロブ摩耗量も少ないことが確認されたが、製造コストの点で難点がある。
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、カムシャフトの、Si含有量が2%以上のアルミニウム合金から成るカムロブと、バルブリフターの冠面に成膜された水素含有量1at%以下の非晶質硬質炭素薄膜とが脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油を介して摺接することとしたため、これら部材間の摩擦特性及び耐摩耗性を大幅に改善することができ、内燃機関の効率及び信頼性向上、燃費改善に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の内燃機関用動弁機構の構成を示す概略説明図である。
【図2】 (a) 図1に示したカムシャフトの一例として組み立てカムシャフトの構造を示す部分断面図である。
(b) 図1に示したカムシャフトの他の例として一体カムシャフトの構造を示す部分断面図である。
【図3】 図1に示したバルブリフターの拡大断面図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト
1a カムロブ
2 バルブリフター
2a 非晶質硬質炭素薄膜
Claims (4)
- アルミニウム合金から成るカムロブを有するカムシャフトと、上記カムシャフトのカムロブと潤滑油を介して摺動する直動バルブリフターを備えた動弁機構において、上記潤滑油が脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有すると共に、上記アルミニウム合金が2%以上のSiを含有し、さらに上記バルブリフターの冠面に、PVD法によって水素含有量が1at%以下の非晶質硬質炭素薄膜から成る被膜が施されていることを特徴とする内燃機関用動弁機構。
- 上記カムシャフトのカムロブのノーズ部における表面粗さRaが0.08μm以下であると共に、上記バルブリフターの冠面上に形成された非晶質炭素薄膜の表面粗さRaが0.04μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用動弁機構。
- アルミニウム合金から成るカムロブを有するカムシャフトと、上記カムシャフトのカムロブと潤滑油を介して摺動する直動バルブリフターを備えた動弁機構において、上記潤滑油が脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有すると共に、上記アルミニウム合金が3〜4%のSiを含有し、さらに上記バルブリフターの冠面に水素含有量が1at%以下の非晶質硬質炭素薄膜から成る被膜が施され、上記カムシャフトのカムロブのノーズ部における表面粗さRaが0.03〜0.12μmであると共に、上記バルブリフターの冠面上に形成された非晶質炭素薄膜の表面粗さRaが0.01〜0.03μmであることを特徴とする内燃機関用動弁機構。
- 上記カムシャフトのカムロブのノーズ部における表面粗さRaが0.03〜0.07μmであることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関用動弁機構。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003197732A JP4006644B2 (ja) | 2003-07-16 | 2003-07-16 | 内燃機関用動弁機構 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003197732A JP4006644B2 (ja) | 2003-07-16 | 2003-07-16 | 内燃機関用動弁機構 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005036666A JP2005036666A (ja) | 2005-02-10 |
JP4006644B2 true JP4006644B2 (ja) | 2007-11-14 |
Family
ID=34207776
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003197732A Expired - Fee Related JP4006644B2 (ja) | 2003-07-16 | 2003-07-16 | 内燃機関用動弁機構 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4006644B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1992645A4 (en) * | 2006-02-24 | 2011-03-09 | Q P Corp | NOVEL HYALURONIC ACID WITH LOW MOLECULAR WEIGHT AND / OR SALT THEREOF, AND COSMETIC PREPARATION, PHARMACEUTICAL COMPOSITION AND EACH FOOD COMPOSITION USING THE SAME |
JP2012072671A (ja) * | 2010-09-28 | 2012-04-12 | Hitachi Automotive Systems Ltd | 内燃機関のバルブリフタ |
JP6166087B2 (ja) * | 2013-03-29 | 2017-07-19 | 株式会社リケン | バルブリフタ及びその製造方法、並びに該バルブリフタと相手材との組合せ |
CN113804444A (zh) * | 2021-09-17 | 2021-12-17 | 中国北方发动机研究所(天津) | 一种发动机配气机构摩擦副考核试验台 |
-
2003
- 2003-07-16 JP JP2003197732A patent/JP4006644B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2005036666A (ja) | 2005-02-10 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3555891B2 (ja) | 低摩擦摺動材料及びこれに用いる潤滑油組成物 | |
JP4973971B2 (ja) | 摺動部材 | |
JP5058331B2 (ja) | 低摩擦摺動部材 | |
JP4117553B2 (ja) | チェーン駆動装置 | |
JP2005054617A (ja) | 動弁機構 | |
JP2004360649A (ja) | エンジン用ピストンピン | |
JP2005090489A (ja) | 内燃機関用バルブリフター | |
JP3594190B2 (ja) | 低摩擦摺動材料及びこれに用いる潤滑油組成物 | |
JP3965694B2 (ja) | 低摩擦摺動カム・フォロワの組合せ及びこれに用いる潤滑油組成物 | |
JP3594193B1 (ja) | 低摩擦摺動部材及びこれに用いる潤滑油組成物 | |
JP4212954B2 (ja) | 硬質炭素被膜摺動部材 | |
JP2006144100A (ja) | 自動車エンジン用摺動部材 | |
JP4915891B2 (ja) | 低摩擦摺動部材 | |
JP2004358495A (ja) | 冷間引抜き加工用治具及びこれに用いる潤滑油組成物 | |
JP4006644B2 (ja) | 内燃機関用動弁機構 | |
JP2005069249A (ja) | ピストンとクランクシャフトの連結構造 | |
JP2005002888A (ja) | 自動車エンジン用ピストンリング及びこれに用いる潤滑油組成物 | |
JP2005003094A (ja) | 自動車用エンジン | |
JP2005048801A (ja) | 密封装置 | |
JP4600719B2 (ja) | デファレンシャルユニット | |
JP2005069008A (ja) | 内燃機関のシリンダとピストンの組合せ | |
JP3912539B2 (ja) | セルフガイドリーマ | |
JP2005068171A (ja) | 低摩擦摺動機構及びこれに用いる潤滑油組成物 | |
JP3753324B2 (ja) | 冷間引抜き加工用治具及びこれに用いる潤滑油組成物 | |
JP4458228B2 (ja) | ベルト式無段変速機 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070302 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070402 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070501 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070627 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070802 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070815 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100907 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070627 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100907 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110907 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120907 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |