JP2004358495A - 冷間引抜き加工用治具及びこれに用いる潤滑油組成物 - Google Patents

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貢士 小柳
Yutaka Mabuchi
豊 馬渕
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Abstract

【課題】接触部の摩擦係数が低く、加工用治具自体の耐久性、特に耐摩耗性に優れ、押出し成形加工時にアルミニウムやアルミニウム合金が加工治具に焼き付いたり、製品表面が荒れる等の問題が発生しない冷間引抜き加工用治具、冷間引抜き加工方法及びこれに用いる潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】アルミニウム合金の冷間引抜き加工に用い、DLC材料を膜厚0.2〜2μmで被覆し、仕上げ面粗度がRa0.2μm以下である冷間引抜き加工用治具である。
冷間引抜き加工するに当たり、潤滑油組成物を注油して成形加工する。
冷間引抜き加工用治具に注油され、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を組成物全量基準で0.05〜3.0%含有し、これらが炭素数6〜30の炭化水素基を含有している潤滑油組成物である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間引抜き加工用治具、冷間引抜き加工方法及びこれに用いる潤滑油組成物に係り、更に詳細には、特定の潤滑油存在下において極めて優れた低摩擦特性を示すダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」と称する)材料を被覆した冷間引抜き加工用治具、冷間引抜き加工方法及びこれに用いる潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルミニウム合金等の軟質金属の成型加工には、金属の塑性変形を利用した圧延加工、しごき加工、絞り加工及び曲げ加工等の加工方法が用いられている。これらの加工は、加工用治具を被加工金属表面と点接触、線接触又は面接触させて、被加工物である金属表面に応力を付与した状態で行われる。また、場合によっては、摺動しながら加工治具に当接して、被加工物を塑性変形させながら所定の成形加工が行われる。
このような加工には、例えば冷間加工用のマンドレル、ダイス及びポンチ等の加工用治具が利用されている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−218425号公報
【0004】
ここで、冷間加工に利用される治具は、被加工物である金属表面に応力を付与した状態又は摺動しながら被加工物を塑性変形させるため、接触部での摩擦係数が低いこと、及び加工用の治具自体の耐久性、特に耐摩耗性に優れることが要求される。
このため、従来から、摺動特性を向上させて塑性加工性を挙げる手段としては、鉄系の治具に焼き入れを行ったり、また窒化処理を行い治具の耐摩耗性を向上させることが一般的に行われている。
【0005】
しかし、このような鉄系の治具を用いた場合には、工具表面においてアルミニウム等の軟質金属が焼き付いたり、また被加工物の表面が荒れるなどの問題点があった。なお、この対応策として、固体潤滑剤又は液体潤滑剤を用いることが考えられるが、潤滑油そのものの耐久性に問題があり、十分ではなかった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接触部の摩擦係数が低く、加工用治具自体の耐久性、特に耐摩耗性に優れ、押出し成形加工時にアルミニウムやアルミニウム合金が加工治具に焼き付いたり、製品表面が荒れる等の問題が発生しない冷間引抜き加工用治具、冷間引抜き加工方法及びこれに用いる潤滑油組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、摺動部にダイヤモンドライクカーボン材料を所定の厚さで被覆すること、及び摺動部に所定の潤滑油組成物を注油することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の冷間引抜き加工用治具について、詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示すものとする。
【0009】
上述の如く、本発明の冷間引抜き加工用治具は、鉄基材料などにダイヤモンドライクカーボン(以下「DLC」という。)材料を被覆して成り、アルミニウム合金の冷間引抜き加工に用いられる。代表的には、マンドレル、ダイス及びポンチ等が例示できる。
また、上記DLC材料は、少なくとも当該治具の絞り部(入り口傾斜部)に被覆され、その膜厚を0.2〜2μm、仕上げ面粗度をRa0.2μm以下とする。これより、アルミニウム合金の摺動を安定させて成形できる。かかるDLC膜は、イオンプレーティング又はマグネトロンスパッタリングにより形成できる。一方、上記範囲を外れると、局部的にスカッフィングを形成したり、摩擦係数が向上する。
【0010】
ここで、上記DLC材料は、炭素元素を主として構成された非晶質のものであり、炭素同士の結合形態がダイヤモンド構造(SP結合)とグラファイト結合(SP結合)の両方から成る。具体的には、炭素元素だけから成るa−C(アモルファスカーボン)、水素を含有するa−C:H(水素アモルファスカーボン)、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含むMeCが挙げられるが、本発明においては、上記DLC材料として、大幅な摩擦低減効果を発揮させる観点から、水素含有量が少ないものほど好ましく、水素含有量が原子比で1%以下、更には水素を含まないa−C系(アモルファスカーボン系)材料を好適に用いることができる。
【0011】
また、被覆されたDLC材料は、表面硬さが、マイクロビッカース硬さ(10g荷重)でHv1000〜3500、厚さが0.3〜2.0μmであることが望ましく、鉄基部材の上記DLC材料との摺動面については、表面硬さが、ロックウェル硬さ(Cスケール)でHRC45〜60であることが望ましい。この場合は、700MPa程度の高面圧下の摺動条件においても、膜の耐久性を維持できるので有効である。DLC材料による被覆面の表面硬さ及び厚さが上記範囲から外れると、Hv1000未満、厚さ0.3μm未満では摩滅し、逆にHv3500、厚さ2.0μmを超えると剥離し易くなり、相手部材としての鉄基部材の表面硬さが上記から外れると、HRC45未満では高面圧下で座屈し易くなることがある一方、HRC60を超えても摩擦低減への更なる効果は認められない。
【0012】
次に、本発明の冷間引抜き加工方法について詳細に説明する。
かかる方法は、上述の冷間引抜き加工用治具を使用して冷間引抜き加工する際に、少なくとも当該治具の絞り部に潤滑油組成物を注油して成形加工するものである。即ち、アルミニウム合金を、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤などを含有する潤滑油組成物の存在下で摺動させることにより、極めて低摩擦で摺動させて加工成形できる。なお、潤滑油組成物は、絞り部のみならず摺動面へ常に注油されるのが望ましい。
【0013】
次に、本発明の潤滑油組成物について詳細に説明する。
かかる潤滑油組成物は、上述した冷間引抜き加工用治具の加工成形において被加工物との摺動面に注油して用いられるものであり、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤、脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤のいずれか一方又は双方を含有して成る。
また、これら脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤は、炭素数6〜30の炭化水素基を有し、組成物全量基準で0.05〜3.0%含有されており、この範囲内にあるものを使用することが有効である。上記添加剤は過剰に添加しても不溶成分となって摺動性向上には寄与しない。
【0014】
ここで、上記潤滑油基油としては特に限定されるものではなく、鉱油、合成油、油脂及びこれらの混合物など、潤滑油組成物の基油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系又はナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用でき、溶剤精製、水素化精製処理したものが一般的であるが、芳香族分をより低減することが可能な高度水素化分解プロセスやGTL Wax(ガス・トウー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造したものを用いることがより望ましい。
【0015】
合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)、ポリ−α−オレフィンの水素化物、イソブテンオリゴマー、イソブテンオリゴマーの水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンイソステアリネート等のトリメチロールプロパンエステル;ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のペンタエリスリトールエステル)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフイン又はその水素化物が望ましい例として挙げられる。
【0016】
本発明の潤滑油組成物における基油は、鉱油系基油又は合成系基油を単独あるいは混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油、あるいは2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
【0017】
潤滑油基油中の硫黄分について、特に制限はないが、基油全量基準で、0.2%以下であることが望ましい、より望ましくは0.1%以下、更には0.05%以下であることが望ましい。特に、水素化精製鉱油や合成系基油の硫黄分は、0.005%以下、あるいは実質的に硫黄分を含有していない(5ppm以下)ことから、これらを基油として用いることが望ましい。
【0018】
また、潤滑油基油中の芳香含有量についても、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として長期間低摩擦特性を維持するためには、全芳香族含有量が15%以下であることが望ましい、より望ましくは10%以下、更には5%以下であることが望ましい。即ち、潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため望ましくない。
なお、ここで言う全芳香族含有量とは、ASTM D2549に規定される方法に準拠して測定される芳香族留分(aromatics fraction)含有量を意味している。
【0019】
潤滑油基油の動粘度にも、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として使用する場合には、100℃における動粘度が2mm/s以上であることが望ましく、より望ましくは3mm/s以上である。一方、その動粘度は、20mm/s以下であることが望ましく、10mm/s以下、特に8mm/s以下であることが望ましい。潤滑油基油の100℃における動粘度が2mm/s未満である場合には、十分な耐摩耗性が得られない上に蒸発特性が劣る可能性があるため望ましくない。一方、動粘度が20mm/sを超える場合には低摩擦性能を発揮しにくく、低温性能が悪くなる可能性があるため望ましくない。本発明においては、上記基油の中から選ばれる2種以上の基油を任意に混合した混合物等が使用でき、100℃における動粘度が上記の好ましい範囲内に入る限りにおいては、基油単独の動粘度が上記以外のものであっても使用可能である。
【0020】
また、潤滑油基油の粘度指数にも、特別な制限はないが、80以上であることが望ましく、100以上であることが更に望ましく、特に内燃機関用潤滑油組成物として使用する場合には、120以上であることが望ましい。潤滑油基油の粘度指数を高めることでよりオイル消費が少なく、低温粘度特性、省燃費性能に優れた内燃機関用潤滑油組成物を得ることができる。
【0021】
上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤としては、炭素数6〜30、望ましくは炭素数8〜24、特に望ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミン化合物、及びこれらの任意混合物を挙げることができる。炭素数が6〜30の範囲外のときは、摩擦低減効果が十分に得られない可能性がある。
【0022】
炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状炭化水素基としては、具体的には、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基などを挙げることができる。
なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
【0023】
また、上記脂肪酸エステルとしては、かかる炭素数6〜30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルなどを例示でき、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレートなどを特に望ましい例として挙げることができる。
上記脂肪族アミン化合物としては、脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族ポリアミン、イミダゾリン化合物等、及びこれらの誘導体等を例示できる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の脂肪族アミン化合物や、これら脂肪族アミン化合物のN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル(又はアルケニル)(炭素数6〜28)等のアミンアルキレンオキシド付加物、これら脂肪族アミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したりアミド化した、いわゆる酸変性化合物等が挙げられる。好適な例としては、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン等が挙げられる。
【0024】
また、本発明に用いる潤滑油組成物に含まれる脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、0.05〜3.0%であることが望ましく、更に望ましくは0.1〜2.0%、特に望ましくは0.5〜1.4%であることがよい。上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり易く、3.0%を超えると潤滑油への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生し易いので、望ましくない。
【0025】
一方、本発明に用いる潤滑油組成物は、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有することが好適である。
上記ポリブテニルコハク酸イミドとしては、次の一般式(1)及び(2)
【0026】
【化1】
Figure 2004358495
【0027】
【化2】
Figure 2004358495
【0028】
で表される化合物が挙げられる。これら一般式におけるPIBは、ポリブテニル基を示し、高純度イソブテン又は1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒又は塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られる数平均分子量が900〜3500、望ましくは1000〜2000のポリブテンから得られる。上記数平均分子量が900未満の場合は清浄性効果が劣り易く、3500を超える場合は低温流動性に劣り易いため、望ましくない。
また、上記一般式におけるnは、清浄性に優れる点から1〜5の整数、より望ましくは2〜4の整数であることがよい。更に、上記ポリブテンは、製造過程の触媒に起因して残留する微量のフッ素分や塩素分を吸着法や十分な水洗等の適切な方法により、50ppm以下、より望ましくは10ppm以下、特に望ましくは1ppm以下まで除去してから用いることもよい。
【0029】
更に、上記ポリブテニルコハク酸イミドの製造方法としては、特に限定はないが、例えば、上記ポリブテンの塩素化物又は塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。
【0030】
一方、上記ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記般式(1)又は(2)で表される化合物に、ホウ素化合物や含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性又は酸変性化合物を例示できる。その中でもホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミド、特にホウ素含有ビスポリブテニルコハク酸イミドが最も好ましいものとして挙げられる。
【0031】
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。具体的には、上記ホウ酸として、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸などが挙げられる。また、上記ホウ酸塩としては、アンモニウム塩等、具体的には、例えばメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウムが好適例として挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル、より具体的には例えば、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリププロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、ホウ酸トリブチル等が好適例として挙げられる。なお、ホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドにおけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比「B/N」は、通常0.1〜3であり、好ましくは、0.2〜1である。
また、上記含酸素有機化合物としては、具体的には、例えばぎ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルポン酸並びにこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる
【0032】
なお、本発明に用いる潤滑油組成物において、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量は特に制限されないが、0.1〜15%が好ましく、より好ましくは1.0〜12%であることがよい。0.1%未満では清浄性効果に乏しくなることがあり、15%を超えると含有量に見合う清浄性効果が得られにくく、抗乳化性が悪化し易い。
【0033】
更にまた、本発明に用いる潤滑油組成物は、次の一般式(3)
【0034】
【化3】
Figure 2004358495
【0035】
で表されるジチオリン酸亜鉛を含有することが好適である。
上記式(3)中のR、R、R及びRは、それぞれ別個に炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0036】
上記R、R、R及びRとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基等のオクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジ−プロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロへキシル基、ジメチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、プロピルシクロへキシル基、エチルメチルシクロへキシル基、トリメチルシクロへキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジ−プロピルシクロへキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジ−プロピルシクロヘプチル基、プロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基、等が例示できる。
なお、R、R、R及びRがとり得る上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造をが含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、上記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分柱状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基、又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0037】
上記ジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。
【0038】
また、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量は、特に制限されないが、より高い摩擦低減効果を発揮させる観点から、組成物全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることが好ましく、また0.06%以下であることがより好ましく、更にはジチオリン酸亜鉛が含有されないことが特に好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン元素換算量で0.1%を超えると、DLC部材と鉄基部材との摺動面における上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤や上記脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の優れた摩擦低減効果が阻害されるおそれがある。
【0039】
上記ジチオリン酸亜鉛の製造方法としては、従来方法を任意に採用することができ、特に制限されないが、具体的には、例えば、上記R、R、R及びRに対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五二硫化りんと反応させてジチオリン酸とし、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。なお、上記ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なることは言うまでもない。
本発明においては、上記一般式(3)に包含される2種以上のジチオリン酸亜鉛を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0040】
上述のように、本発明の潤滑油組成物は、DLC部材と鉄基材料から成る部材との摺動面に用いた場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関用潤滑油組成物として必要な性能を高める目的で、金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、他の無灰摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
【0041】
上記金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレートナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。ここで、上記アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、上記アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。
なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常、全塩基価は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は組成物全量基準で、通常0.1〜10%である。
【0042】
また、上記酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、組成物全量基準で、通常0.01〜5%である。
【0043】
更に、上記粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、及び更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよく、ポリイソブチレン又はその水素化物では800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物では800〜300000、好ましくは10000〜200000がよい。また、かかる粘度指数向上剤は、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油組成物基準で0.1〜40.0%であることが望ましい。
【0044】
更にまた、他の無灰摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。
また、他の無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等及びそれらの誘導体等が挙げられる。
更に、上記磨耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
更にまた、上記防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
また、上記非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
更に、上記金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
更にまた、上記消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
なお、これら添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は、組成物全量基準で、他の摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤又は極圧剤、防錆剤、及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.005〜1%、消泡剤については0.0005〜1%の範囲から適宜選択できる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
<試験片の作製>
冷間引抜き加工用治具の絞り部の一例として、図1に示すようなピンオンディスク単体摩擦用の試験片を作製した。この単体試験片は、3つのピンと、円板からなり、以下の方法により作製したものである。
・ピン材料
以下のSUJ2材料から所定のピン形状に研磨加工後、ラッピングテープを用いた研磨によってピンを様々な表面粗さ(Ra0.2μm以下)に仕上げた。
・円板材料
種々のアルミニウム合金から成る円板形状素材に、所定の時効硬化処理後、ピンとの摺動表面を研磨によって、種々の表面粗さに仕上げた。
・表面処理
上記により仕上げられたピン材料の表面に、PVD処理又はCVD処理によって以下の材料を様々な膜厚となるようにコーティングした。コーティングされた表面は更にラッピングテープを用いた研磨によって様々な表面粗さ(Ra0.11μm以下)に仕上げた。
▲1▼a−C
▲2▼TiN
▲3▼CrN
▲4▼DLC(a−C:H)
これら試験片について表1に示す。
【0047】
【表1】
Figure 2004358495
【0048】
<潤滑油組成物の調製>
・オイル1
潤滑油基油として水素化分解鉱油(100℃動粘度:5.0mm2/s、粘度指数:120、全芳香族含有量:5.5%)を用い、それにエステル系摩擦調整剤(グリセリンモノオレート)を1%、無灰系分散剤(ポリブテニルコハク酸イミド(窒素含有量:1.2%))を5.0%、金属系清浄剤としてカルシウムスルホネート(全塩基価:300mgKOH/g、カルシウム含有量:12.0%)を0.5%及びカルシウムフェネート(全塩基価:255mgKOH/g、カルシウム含有量:9.2%)を0.9%、その他添加剤として粘度指数向上剤、酸化防止剤、防錆剤、抗乳化剤、非イオン系界面活性剤、金属不活性化剤、消泡剤等を合計量で7.0%配合し調製した。
・オイル2
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(亜鉛含有量:9.3%、リン含有量:8.5%、アルキル基:第2級ブチル基又は第2級へキシル基)をリン元素換算量で0.047%添加した以外は、オイル1と同様の操作を繰り返して調製した。
・オイル3
潤滑油基油として1−デセンオリゴマー水素化物(100℃動粘度:3.9mm2/s、粘度指数:124、全芳香族含有量:0.0%)を用いた以外は、オイル2と同様の操作を繰り返して調製した。
・オイル4
エステル系摩擦調整剤を添加せず、アミン系摩擦調整剤(N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン)を1.0%添加した以外は、オイル1と同様の操作を繰り返して調製した。
・オイル5
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(亜鉛含有量:9.3%、リン含有量:8.5%、アルキル基:第2級ブチル基又は第2へキシル基)をリン元素換算量で0.094%とした以外は、オイル2と同様の操作を繰り返して調製した。
・オイル6
アミン系摩擦調整剤(N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン)を0.5%添加した以外は、オイル5と同様の操作を繰り返して調製した。
・オイル7
エステル系摩擦調整剤(グリセリンモノオレート)を0.2%とした以外は、オイル2と同様の操作を繰り返して調製した。
・オイル8
エステル系摩擦調整剤を添加しない以外は、オイル5と同様の操作を繰り返して調製した。
・オイル9
エステル系摩擦調整剤を添加せず、モリブデンジチオカーバメイト(モリブデン含有率:4.1%)を1.1%添加した以外は、オイル5と同様の操作を繰り返して調製した。
これら潤滑油組成物の組成とそのオイル性状を表2に示す。
【0049】
【表2】
Figure 2004358495
【0050】
(実施例1〜9)
表1の実施例1〜9に示すピン及び円板を組合わせた単体試験片を作製し、表1の各実施例に併記した各潤滑油組成物(上記オイル1〜7)を用いて、以下の単体摩擦試験を実施した。この結果を合わせて表1に示す。
<単体摩擦試験条件>
最大ヘルツ圧力 :80MPa
円板回転速度 :30rpm
オイル供給方法 :油浴
供給オイル温度 :80℃
試験時間 :60min
【0051】
(比較例1〜5)
上記と同様に、表1の比較例1〜5に示すピン及び円板を組合わせた単体試験片を作製し、表1の各実施例に併記した各潤滑油組成物(上記オイル5、8又は9)を用いて、以下の単体摩擦試験を実施した。この結果を合わせて表1に示す。
表1より、実施例1〜9で得られた単体試験片は、いずれも優れた低摩擦係数を示すことがわかる。例えば、これらは、エンジンに使われている鉄系材料とアルミニウム合金材料の組合せを用いた比較例1の単体試験片に比べて、約40〜60%の摩擦低減効果が得られた。
更に、実施例1、2及び6の結果から、ジチオリン酸亜鉛の含有量が少ないほど摩擦低減効果に優れることがわかる。
尚、実施例1〜9で得られた単体試験片の材料組合せは、試験後の表面形状に何ら問題はなく、耐磨耗性にも非常に優れ、安定した低摩擦特性を示す。
【0052】
尚、本発明の好適範囲外である実施例5で得られた単体試験片は、表1から明らかなように摩擦低減効果認められるものの、水素を含まないa−C材を用いた他の実施例ほどの効果は見られない。
【0053】
一方、比較例1の単体試験片材料組合せは、SU2材のピンとAC2A材の円板をラッピングテープで研磨仕上げしたものの組合せであり、当該ピンに表面コーティングをしていない組合せである。また、この単体試験では、本発明で用いる摩擦調整剤を含まない潤滑油組成物(オイル8)を用いている。従って、摩擦係数が0.1を超えてしまい摩擦特性に劣る。これは、摺動面にZnDTPを主体とする反応皮膜が形成されたためと推定できる。
また、比較例2の単体試験片材料組合せは、比較例1と同様の構成である。この単体試験では、本発明で用いる摩擦調整剤を含む潤滑油組成物(オイル5)を用いており、多少の摩擦低減効果があるものの、摩擦係数が0.1程度と高く摩擦特性に劣る。これは、摺動面にZnDTPを主体とする反応皮膜が形成されたためと推定できる。
更に、比較例3の単体試験片材料組合せは、実施例4と同様の構成であるが、潤滑油組成物として従来の鋼材料間の摺動面に最も有効であった有機モリブデンを配合した省燃費エンジン油(オイル9)を用いても、摩擦係数が0.1に近い高い摩擦係数を示す。これは、摺動面に二硫化モリブデン被膜が形成されないためと推定できる。
更にまた、比較例4の単体試験片材料組合せでは、TiNコーティングしたピンと本発明で用いる摩擦調整剤を含む潤滑油組成物(オイル5)を用いており、摩擦係数は低減したものの、その絶対値は0.1に近いままであった。また、比較例5の単体試験片材料組合せでは、ピンをCrNコーティングにしてみたが、TiNピンと摩擦低減効果に大差は認められなかった。
【0054】
実施例1〜9より、本発明のようにDLC材、特に好適範囲で作製された水素を含まないa−C系DLC材を用いたピンを、好適なアルミニウム合金材料と特定の摩擦調整剤を所定量添加した潤滑油組成物潤滑下で摺動させるときは、世界トップレベルの低摩擦係数が得られ、且つ耐磨耗性に優れている。また、このような顕著な摩擦低減効果は、工業的に極めて有益であり、エンジン摺動部品等の摩擦損失の大幅な低減、即ちエンジンの燃費改善に有効である。
【0055】
(実施例10〜12、比較例6〜8)
アルミニウム合金の冷間引抜き加工形用ダイス鋼の入り口部表面にイオンプレーティングにより硬質炭素薄膜を施した後に、研磨を行い、所定の仕上げ粗さとした。
<ダイス寿命及び寸法安定性試験>
このダイスを用いてJIS1000系アルミニウム合金を断面減少率20%で冷間引き抜きした際の、ダイス寿命及び寸法安定性について解析した。なお、引抜き用潤滑油組成物には油脂をベース油とし、エステル系又はアミン系無灰摩擦調整剤を添加したものを用いた(一般に、引抜き潤滑油のベースは油脂、合成油、鉱物油及び高級脂肪酸から成る群より選ばれる少なくとも1種のものが用いられる。)。ダイスへ注油した潤滑油組成物の概略を図2に示す。また、この結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
Figure 2004358495
【0057】
表3より、実施例10〜12のダイス寿命は、比較例7、8に示すTiNや窒化被膜に対して大幅に向上することを確認した。また、硬質炭素皮膜の膜厚が2μmを超えると、引抜き時のアルミとの摺動により硬質炭素被膜が剥離することが認められた。
【0058】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、摺動部にダイヤモンドライクカーボン材料を所定の厚さで被覆すること、及び摺動部に所定の潤滑油組成物を注油することとしたため、接触部の摩擦係数が低く、加工用治具自体の耐久性、特に耐摩耗性に優れ、押出し成形加工時にアルミニウムやアルミニウム合金が加工治具に焼き付いたり、製品表面が荒れる等の問題が発生しない冷間引抜き加工用治具、冷間引抜き加工方法及びこれに用いる潤滑油組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピンオン摩擦試験機の概略を示す図である。
【図2】ダイス及び注油する潤滑油の概略を示す図である。

Claims (9)

  1. アルミニウム合金の冷間引抜き加工に用いる冷間引抜き加工用治具において、
    少なくとも当該治具の絞り部にダイヤモンドライクカーボン材料を膜厚0.2〜2μmとなるように被覆し、仕上げ面粗度がRa0.2μm以下であることを特徴とする冷間引抜き加工用治具。
  2. 上記ダイヤモンドライクカーボン膜がイオンプレーティング又はマグネトロンスパッタリングで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷間引抜き加工用治具。
  3. 上記ダイヤモンドライクカーボン材料の水素含有量が1.0at%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷間引抜き加工用治具。
  4. 上記ダイヤモンドライクカーボン材料が実質的に水素を含有しないアモルファスカーボン系材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の冷間引抜き加工用治具。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の冷間引抜き加工用治具を使用して冷間引抜き加工するに当たり、
    少なくとも当該治具の絞り部に潤滑油組成物を注油して成形加工することを特徴とする冷間引抜き加工方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の冷間引抜き加工用治具の少なくとも絞り部に注油される潤滑油組成物であって、
    上記潤滑油組成物が、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を組成物全量基準で0.05〜3.0%含有して成り、これらが炭素数6〜30の炭化水素基を有していることを特徴とする潤滑油組成物。
  7. ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有していることを特徴とする請求項6に記載の潤滑油組成物。
  8. 上記ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を、組成物全量基準で0.1〜15%含有していることを特徴とする請求項6又は7に記載の潤滑油組成物。
  9. 組成物全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下のジチオリン酸亜鉛を含有していることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つの項に記載の潤滑油組成物。
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