JP2005048801A - 密封装置 - Google Patents

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Tomohito Ota
智仁 太田
Tomihito Hashimoto
富仁 橋本
Makoto Kano
眞 加納
Yutaka Mabuchi
豊 馬渕
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Abstract

【課題】耐摩耗性と低摩擦抵抗を低コストのもとで両立させることができ、例えば自動車用内燃機関に搭載することによって、その信頼性及び燃費改善に寄与する密封装置を提供する。
【解決手段】同軸上に相対移動自在に組み付けられた2部材の一方に取付けられたシール部材に特定の無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物を介して摺接する他方の部材における上記シール部材との摺接面に、あるいはさらにシール部材の摺接面に、例えばダイヤモンドライクカーボンのような硬質炭素薄膜の被覆を形成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性材料からなるシール部材によって、例えば自動車用内燃機関のクランク軸やカムシャフト、電動モーターの出力軸などの回転軸部分、あるいはバルブステムなどの往復作動軸部分における潤滑油の漏れや、外部からの異物侵入を防止する密封装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境の保護という観点から、自動車においては省燃費性能が強く要求されている。これに伴って自動車の内燃機関に使用される潤滑油については、せん断抵抗を低減させた低粘度グレードのものを採用するケースが増大している。
このような低粘度潤滑油は、従来の潤滑油に比較して低粘度であるが故に密封するのが困難となる傾向がある。
【0003】
したがって、ゴム状の弾性材料から成り、同心的かつ相対移動自在に組み付けられた2部材、例えば軸材とこれを回転自在に支持する軸受あるいはハウジングの間に形成される環状の隙間を密封するシール部材においては、十分なシール性を確保するためにシール部材の摺動部と相手軸材との接触面圧を増加させる必要がある。しかしながら、シール部材の摺動部と相手軸材との接触面圧を増加させると、シール部材摺動部の摩耗が促進され、結果として密封装置の耐久性が低下してしまう。
【0004】
上記シール部材の摩耗を抑制する一手法としては、摺動部に樹脂製の摺動部材を設置し、ゴム状弾性体製摺動部に作用する力を樹脂製の摺動部材へも分担させることで、ゴム状弾性体製摺動部と相手軸材間の接触面圧を低下させる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−159313号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、新たに樹脂製の摺動部材を設定する必要があり、部品点数が増えるため大幅なコストアップを伴うことになる。また、樹脂製摺動部材として、摩擦抵抗が低いフッ素樹脂を用いた場合には、フッ素樹脂製の摺動部材とゴム状弾性体製シール部材間に十分な密着性を確保するのが困難という問題点がある。
【0007】
本発明は、従来のシール部材における上記課題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、耐摩耗性と低摩擦抵抗を低コストのもとで両立させることができ、搭載機器、例えば自動車用内燃機関の性能及び信頼性を向上させると共に、燃費改善に寄与する密封装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、シール部材に好適な摺動材料について種々検討すると共に、これら摺動材料と相手部材との組合せ、さらには部材間の摺動面に介在することになる潤滑油組成物との組合わせについて銑意検討を重ねた結果、相対移動自在に組み付けられた2部材のうちのシール部材との摺接面に、あるいは当該摺接面とシール部材の相手摺動部材との摺接面の両方に硬質炭素薄膜から成る被覆を施すと共に、潤滑油に特定の無灰摩擦調整剤を添加することによって、耐摩耗性と低摩擦抵抗を両立させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の密封装置は、同心状かつ相対移動自在に組み付けられた2部材の一方に取付けられ、他方の部材に潤滑油組成物を介して摺接し、2部材間に形成される環状の隙間を密封するシール部材を備えたものであって、摺接面を潤滑する上記潤滑油組成物が脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有すると共に、2部材のうち他方の部材における上記シール部材との摺接面が、例えばダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」と称する)などの硬質炭素薄膜により被覆されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の密封装置においては、上記シール部材の他方の部材との摺接面の側にも硬質炭素薄膜を形成することができ、このようなシール部材の製造方法においては、少なくとも摺接部がニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム及び4フッ化エチレン樹脂から選ばれるいずれかの材料を主成分とするシール基材の摺接面に、プラズマCVD法によってDLCを成膜することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示すものとする。
【0012】
本発明の密封装置の一般的な形状例をその装着例と共に、図1(a)及び(b)に示す。
すなわち、図1(a)は、当該密封装置を自動車用エンジンや自動変速機など、回転軸部分における油のシールに用いた例を示すものであって、図に示す密封装置1のシール部材2は、合成ゴムなどの弾性材料から成る環状のものであって、図示しないハウジング(一方の部材)の内周部に取付けられると共に、シールリップ部2aにおいて、当該ハウジング内に同軸かつ回転自在に支持された回転軸3(他方の部材)の外周部に摺接して、内部の潤滑油が漏れないように密封する機能を備え、上記したシールリップ部2aが回転軸3の回転に伴う振動や密封流体(潤滑油)の圧力変動に対して安定した密封作用を保持するようになっている。
【0013】
本発明の密封装置1においては、上記回転軸3のシールリップ部2aとの摺接面に、例えばDLCなどの硬質炭素薄膜から成る被覆が施してあるので、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物のもとで、耐摩耗性及び低摩擦特性が発揮され、摩擦係数及び摩耗量が大幅に減少することになる。
【0014】
上記シール部材2における相手摺動部材(他方の部材、ここでは回転軸3)との摺接部であるシールリップ部2aを構成する材料としては、例えばニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム(FPM)、アクリルゴム(AR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム及び4フッ化エチレン樹脂(PTFE)のうちのいずれかの材料を主成分とする材料を用いることができる。ここで、「主成分とする」とは、これらの材料を80%以上含有することを意味する。
【0015】
ここで、シール部材2は、上記のような弾性材料から一体的に成形されたものを基本とするが、シールリップ部2aとこれ以外のベース部分とを異なる材料によって形成することもできる。
例えば、ベース部分をアクリルゴムやニトリルブタジエンゴムとし、シールリップ部2aのみに摩擦特性に優れたフッ素ゴムを使用することによって、高価なフッ素ゴムの使用量を減らして、性能とコストの両立を図ることができる。
【0016】
また、ベース部分を上記のような弾性材料から成るものとして相手摺動部材に対する追随性を確保する一方、シールリップ部2aのみを摩擦係数の低い4フッ化エチレン樹脂(PTFE)を主成分とする樹脂によって形成することも可能である。
すなわち、シール部材2は、少なくともシールリップ部2aが、上記のような材料から形成されてさえいればよく、他の部分については、上記以外の材料をも含む種々の材料を要求性能に応じて使用することができる。
【0017】
さらに、シール部材2においては、必要に応じて、芯金2bを設けて補強したり、シールリップ部2aの背面にガータスプリング2cを巻回して回転軸3に対する締め付け力を増すようにしたりすることも可能である。
さらにまた、シールリップ部2aの大気側に、ダストリップ(図示せず)を設けて、ごみや異物の侵入防止効果を向上させることもできる。
【0018】
本発明の密封装置1は、上記したような回転作動部分のみならず、図1(b)に示すように、往復作動する部材に対して取付けることも可能である。
すなわち、図1(b)は、当該密封装置1を自動車用エンジンにおける吸排気バルブのステムシールに用いた例を示すものであって、図に示す密封装置1において、シール部材2は、同様の構造を有し、バルブステム4を上下動自在に支持するバルブガイド5(一方の部材)に取付けられ、シールリップ部2aにおいて、往復作動するバルブステム4(他方の部材)の外周部に摺接し、バルブステム4とバルブガイド5との隙間への油の通過量を適度にコントロールすることができる。
【0019】
そして、上記バルブステム4のシールリップ部2aとの摺接面には、同様にDLCなどの硬質炭素薄膜から成る被覆が施してあることから、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物のもとで、上記した回転軸の場合と同様に、耐摩耗性及び低摩擦特性が発揮され、摩擦係数及び摩耗量が大幅に減少することになる。
【0020】
ここで、上記した硬質炭素薄膜としては、例えば炭素原子を主として構成されるDLC材料を用いることができ、例えばCVD法(化学気相蒸着法)やPVD法(物理気相蒸着法)により成膜することができる。
このDLC材料は、非晶質のものであって、炭素同士の結合形態がダイヤモンド構造(SP結合)とグラファイト結合(SP結合)の両方から成る。具体的には、炭素元素だけから成るa−C(アモルファスカーボン)、水素を含有するa−C:H(水素アモルファスカーボン)、及びチタン(Ti)やモリブデン(Mo)等の金属元素を一部に含むMeCなどを好適に用いることができる。
【0021】
一般に、硬質炭素薄膜に含まれる水素量は、成膜方法により左右されるが、本発明において他方の部材(図1においては、回転軸3、バルブステム4)におけるシール部材2との摺接面を被覆する硬質炭素薄膜については、水素原子の含有量を0.5原子%以下とすることが望ましい。
すなわち、被膜中の水素原子の含有量が増加すると摩擦係数が増加し、水素原子含有量が0.5原子%を超えると、潤滑油中での摺動時に摩擦係数を十分に低下させることが難しくなる傾向があることによる。
【0022】
このような水素原子含有量の低い硬質炭素薄膜は、例えばスパッタリング法やイオンプレーティング法など、水素や水素含有化合物を実質的に使用しないPVD法によって成膜することによって得られる。
この場合、成膜時に水素を含まないガスを用いるだけでなく、場合によっては反応容器や基材保持具のベーキングや、基材表面のクリーニングを十分に行ったうえで成膜することが被膜中の水素量を減らすために望ましい。
【0023】
また、上記硬質炭素薄膜の表面粗さについては、Rz(最大高さ粗さ)で2μm以下とすることが望ましく、これによって上記摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物のもとで、両部材の摺動状態が長期に亘って安定に維持されるようになる。このとき、最大高さ粗さRzが2μmを超えると、シール部材の摺接面への攻撃性が増すため、摩擦係数が増大しやすくなることによる。
なお、硬質炭素薄膜の表面粗さについては、成膜前の素材表面粗さによってほぼ決定され、成膜面の表面粗さが実質的に硬質炭素薄膜の表面粗さとなることから、成膜前の素材表面粗さをRzで2μm以下とすれば、Rz=2μm以下の表面粗さを備えた硬質炭素薄膜を得ることができる。
【0024】
本発明の密封装置1においては、上記のように他方の部材のシール部材2との摺接面を硬質炭素薄膜で被覆する一方、シール部材2の摺接面にも硬質炭素薄膜を被覆することができ、これによって、上記潤滑油組成物の存在下における耐摩耗性及び低摩擦特性がより一層向上し、摩擦係数及びシール部材の摩耗量がさらに減少することになる。
【0025】
シール部材2に硬質炭素薄膜を形成するに際しては、プラズマCVD法によって成膜することができる。すなわち、当該プラズマCVD法によれば、シール部材のような弾性材料にも硬質炭素薄膜としてのDLCを容易に成膜することができる。
すなわち、上記シール部材2は、少なくとも摺接部が上記したニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム及び4フッ化エチレン樹脂のうちのいずれかの材料を主成分とするシール基材における他方の部材との摺接面に、プラズマCVD法によってDLCを成膜することによって得られる。
【0026】
次に、本発明に用いる潤滑油の組成について詳細に説明する。
上記潤滑油組成物は、潤滑油基油に、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有させたものが用いられる。
【0027】
ここで、上記潤滑油基油としては特に限定されるものではなく、鉱油、合成油、油脂及びこれらの混合物など、潤滑油組成物の基油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。
鉱油としては、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系又はナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用でき、溶剤精製、水素化精製処理したものが一般的であるが、芳香族分をより低減することが可能な高度水素化分解プロセスやGTL Wax(ガス・トウー・リキッド・ワックス)を異性化した手法で製造したものを用いることがより好ましい。
【0028】
合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)、ポリ−α−オレフィンの水素化物、イソブテンオリゴマー、イソブテンオリゴマーの水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジオクチルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンイソステアリネート等のトリメチロールプロパンエステル;ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のペンタエリスリトールエステル)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフイン又はその水素化物が好ましい例として挙げられる。
【0029】
本発明に用いる潤滑油組成物における基油は、鉱油系基油又は合成系基油を単独あるいは混合して用いる以外に、2種類以上の鉱油系基油、あるいは2種類以上の合成系基油の混合物であっても差し支えない。また、上記混合物における2種類以上の基油の混合比も特に限定されず任意に選ぶことができる。
【0030】
潤滑油基油中の硫黄分について、特に制限はないが、基油全量基準で、0.2%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、さらには0.05%以下であることが好ましい。特に、水素化精製鉱油や合成系基油の硫黄分は、0.005%以下、あるいは実質的に硫黄分を含有していない(5ppm以下)ことから、これらを基油として用いることが好ましい。
【0031】
また、潤滑油基油中の芳香族含有量についても、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油組成物として長期間低摩擦特性を維持するためには、全芳香族含有量が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。即ち、潤滑油基油の全芳香族含有量が15%を超える場合には、酸化安定性が劣るため好ましくない。
なお、ここで言う全芳香族含有量とは、ASTM D2549に規定される方法に準拠して測定される芳香族留分(aromatics fraction)含有量を意味している。
【0032】
潤滑油基油の動粘度にも、特に制限はないが、内燃機関用潤滑油として使用する場合には、100℃における動粘度が2mm/s以上であることが好ましく、より好ましくは3mm/s以上である。一方、その動粘度は、20mm/s以下であることが好ましく、10mm/s以下、特に8mm/s以下であることが好ましい。潤滑油基油の100℃における動粘度が2mm/s未満である場合には、十分な耐摩耗性が得られない上に蒸発特性が劣る可能性があるため好ましくない。一方、動粘度が20mm/sを超える場合には低摩擦性能を発揮しにくく、低温性能が悪くなる可能性があるため好ましくない。本発明においては、上記基油の中から選ばれる2種以上の基油を任意に混合した混合物等が使用でき、100℃における動粘度が上記の好ましい範囲内に入る限りにおいては、基油単独の動粘度が上記以外のものであっても使用可能である。
【0033】
また、潤滑油基油の粘度指数にも、特別な制限はないが、80以上であることが好ましく、100以上であることがさらに好ましく、特に内燃機関用潤滑油として使用する場合には、120以上であることが好ましい。潤滑油基油の粘度指数を高めることでよりオイル消費が少なく、低温粘度特性、省燃費性能に優れた内燃機関用潤滑油を得ることができる。
【0034】
上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤としては、炭素数6〜30、好ましくは炭素数8〜24、特に好ましくは炭素数10〜20の直鎖状又は分枝状炭化水素基を有する脂肪酸エステル、脂肪酸アミン化合物、及びこれらの任意混合物を挙げることができる。炭素数が6〜30の範囲外のときは、摩擦低減効果が十分に得られない可能性がある。
【0035】
炭素数6〜30の直鎖状又は分枝状炭化水素基としては、具体的には、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基等のアルケニル基などを挙げることができる。
なお、上記アルキル基及びアルケニル基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造が含まれ、また、アルケニル基における二重結合の位置は任意である。
【0036】
また、上記脂肪酸エステルとしては、かかる炭素数6〜30の炭化水素基を有する脂肪酸と脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステルなどを例示でき、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレートなどを特に好ましい例として挙げることができる。
上記脂肪族アミン化合物としては、脂肪族モノアミン又はそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族ポリアミン、イミダゾリン化合物等、及びこれらの誘導体等を例示できる。具体的には、ラウリルアミン、ラウリルジエチルアミン、ラウリルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン、オレイルアミン、オレイルプロピレンジアミン、オレイルジエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の脂肪族アミン化合物や、これら脂肪族アミン化合物のN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキル(又はアルケニル)(炭素数6〜28)等のアミンアルキレンオキシド付加物、これら脂肪族アミン化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したりアミド化した、いわゆる酸変性化合物等が挙げられる。好適な例としては、N,N−ジポリオキシエチレン−N−オレイルアミン等が挙げられる。
【0037】
また、本発明に用いる潤滑油組成物に含まれる脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、0.05〜3.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.0%、特に好ましくは0.5〜1.4%であることがよい。上記含有量が0.05%未満であると摩擦低減効果が小さくなり易く、3.0%を超えると潤滑油組成物への溶解性や貯蔵安定性が著しく悪化し、沈殿物が発生し易いので、好ましくない。
【0038】
一方、本発明に用いる潤滑油組成物は、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有することが好適である。
上記ポリブテニルコハク酸イミドとしては、次の一般式(1)及び(2)
【0039】
【化1】
Figure 2005048801
【0040】
【化2】
Figure 2005048801
で表される化合物が挙げられる。これら一般式におけるPIBは、ポリブテニル基を示し、高純度イソブテン又は1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒又は塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られる数平均分子量が900〜3500、望ましくは1000〜2000のポリブテンから得られる。上記数平均分子量が900未満の場合は清浄性効果が劣り易く、3500を超える場合は低温流動性に劣り易いため、望ましくない。
また、上記一般式におけるnは、清浄性に優れる点から1〜5の整数、より望ましくは2〜4の整数であることがよい。更に、上記ポリブテンは、製造過程の触媒に起因して残留する微量のフッ素分や塩素分を吸着法や十分な水洗等の適切な方法により、50ppm以下、より望ましくは10ppm以下、特に望ましくは1ppm以下まで除去してから用いることもよい。
【0041】
さらに、上記ポリブテニルコハク酸イミドの製造方法としては、特に限定はないが、例えば、上記ポリブテンの塩素化物又は塩素やフッ素が充分除去されたポリブテンと無水マレイン酸とを100〜200℃で反応させて得られるポリブテニルコハク酸を、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンと反応させることにより得ることができる。
【0042】
一方、上記ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記般式(1)又は(2)で表される化合物に、ホウ素化合物や含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性又は酸変性化合物を例示できる。その中でもホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミド、特にホウ素含有ビスポリブテニルコハク酸イミドが最も好ましいものとして挙げられる。
【0043】
上記ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ酸エステル等が挙げられる。具体的には、上記ホウ酸として、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸などが挙げられる。また、上記ホウ酸塩としては、アンモニウム塩等、具体的には、例えばメタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウムが好適例として挙げられる。また、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸と好ましくは炭素数1〜6のアルキルアルコールとのエステル、より具体的には例えば、ホウ酸モノメチル、ホウ酸ジメチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸モノエチル、ホウ酸ジエチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸モノプロピル、ホウ酸ジプロピル、ホウ酸トリププロピル、ホウ酸モノブチル、ホウ酸ジブチル、ホウ酸トリブチル等が好適例として挙げられる。なお、ホウ素含有ポリブテニルコハク酸イミドにおけるホウ素含有量Bと窒素含有量Nとの質量比「B/N」は、通常0.1〜3であり、好ましくは、0.2〜1である。
また、上記含酸素有機化合物としては、具体的には、例えばぎ酸、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸や、シュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルポン酸並びにこれらの無水物、又はエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等が挙げられる
【0044】
なお、本発明に用いる潤滑油組成物において、ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量は特に制限されないが、0.1〜15%が望ましく、より望ましくは1.0〜12%であることが好ましい。0.1%未満では清浄性効果に乏しくなることがあり、15%を超えると含有量に見合う清浄性効果が得られにくく、抗乳化性が悪化し易い。
【0045】
更にまた、本発明に用いる潤滑油組成物は、次の一般式(3)
【0046】
【化3】
Figure 2005048801
で表されるジチオリン酸亜鉛を含有することが好適である。
上記式(3)中のR、R、R及びRは、それぞれ別個に炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが望ましい。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
【0047】
上記R、R、R及びRとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等のアルキル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基等のオクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、プロピルシクロペンチル基、エチルメチルシクロペンチル基、トリメチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、エチルジメチルシクロペンチル基、プロピルメチルシクロペンチル基、プロピルエチルシクロペンチル基、ジ−プロピルシクロペンチル基、プロピルエチルメチルシクロペンチル基、メチルシクロへキシル基、ジメチルシクロへキシル基、エチルシクロへキシル基、プロピルシクロへキシル基、エチルメチルシクロへキシル基、トリメチルシクロへキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、エチルジメチルシクロヘキシル基、プロピルメチルシクロヘキシル基、プロピルエチルシクロヘキシル基、ジ−プロピルシクロへキシル基、プロピルエチルメチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、エチルシクロヘプチル基、プロピルシクロヘプチル基、エチルメチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基、エチルジメチルシクロヘプチル基、プロピルメチルシクロヘプチル基、プロピルエチルシクロヘプチル基、ジ−プロピルシクロヘプチル基、プロピルエチルメチルシクロヘプチル基等のアルキルシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、エチルメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、プロピルメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルジメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基等のアリールアルキル基、等が例示できる。
なお、R、R、R及びRがとり得る上記炭化水素基には、考えられる全ての直鎖状構造及び分枝状構造をが含まれ、また、アルケニル基の二重結合の位置、アルキル基のシクロアルキル基への結合位置、アルキル基のアリール基への結合位置、及びアリール基のアルキル基への結合位置は任意である。また、上記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分柱状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基、又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
【0048】
上記ジチオリン酸亜鉛の好適な具体例としては、例えば、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ペンチルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−sec−ヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−オクチルジチオリン酸亜鉛、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−デシルジチオリン酸亜鉛、ジ−n−ドデシルジチオリン酸亜鉛、ジイソトリデシルジチオリン酸亜鉛、及びこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。
【0049】
また、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量は、特に制限されないが、より高い摩擦低減効果を発揮させる観点から、潤滑油組成物全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることが好ましく、また0.06%以下であることがより好ましく、更にはジチオリン酸亜鉛が含有されないことが特に好ましい。ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン元素換算量で0.1%を超えると、DLC部材と鉄基部材との摺動面における上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤や上記脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤の優れた摩擦低減効果が阻害されるおそれがある。
【0050】
上記ジチオリン酸亜鉛の製造方法としては、従来方法を任意に採用することができ、特に制限されないが、具体的には、例えば、上記R、R、R及びRに対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五二硫化りんと反応させてジチオリン酸とし、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。なお、上記ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なることは言うまでもない。
本発明においては、上記一般式(3)に包含される2種以上のジチオリン酸亜鉛を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0051】
上述のように、本発明に用いる潤滑油組成物は、DLCなどの硬質炭素薄膜と金属材料との摺動面に用いた場合に、極めて優れた低摩擦特性を示すものであるが、特に内燃機関用潤滑油として必要な性能を高める目的で、金属系清浄剤、酸化防止剤、粘度指数向上剤、他の無灰摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤若しくは極圧剤、防錆剤、非イオン系界面活性剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等を単独で又は複数種を組合せて配合し、必要な性能を高めることができる。
【0052】
上記金属系清浄剤としては、潤滑油用の金属系清浄剤として通常用いられる任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート、ナフテネート等を単独で又は複数種を組合せて使用できる。ここで、上記アルカリ金属としてはナトリウム(Na)やカリウム(K)等、上記アルカリ土類金属としてはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等が例示できる。また、具体的な好適例としては、Ca又はMgのスルフォネート、フェネート及びサリシレートが挙げられる。
なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択できる。通常、全塩基価は、過塩素酸法で0〜500mgKOH/g、望ましくは150〜400mgKOH/gであり、その添加量は潤滑油組成物全量基準で、通常0.1〜10%である。
【0053】
また、上記酸化防止剤としては、潤滑油用の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物を使用できる。例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤、並びにこれらの任意の組合せに係る混合物等が挙げられる。また、かかる酸化防止剤の添加量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜5%である。
【0054】
さらに、上記粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体やその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、及び更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。また、他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びにポリアルキルスチレン等も例示できる。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5000〜1000000、好ましくは100000〜800000がよく、ポリイソブチレン又はその水素化物では800〜5000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物では800〜300000、好ましくは10000〜200000がよい。また、かかる粘度指数向上剤は、単独で又は複数種を任意に組合せて含有させることができるが、通常その含有量は、潤滑油組成物基準で0.1〜40.0%であることが望ましい。
【0055】
更にまた、他の無灰摩擦調整剤としては、ホウ酸エステル、高級アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、二硫化モリブデン等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。
また、他の無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3500のポリブテニル基を有するポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、数平均分子量が900未満のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド等及びそれらの誘導体等が挙げられる。
さらに、上記磨耗防止剤又は極圧剤としては、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、炭素数2〜20の炭化水素基を1〜3個含有するリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオ亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等が挙げられる。
更にまた、上記防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
また、上記非イオン系界面活性剤及び抗乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
さらに、上記金属不活性化剤としては、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
更にまた、上記消泡剤としては、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
なお、これら添加剤を本発明に用いる潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、他の摩擦調整剤、他の無灰分散剤、磨耗防止剤又は極圧剤、防錆剤、及び抗乳化剤については0.01〜5%、金属不活性剤については0.005〜1%、消泡剤については0.0005〜1%の範囲から適宜選択できる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例によって、更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
(試験片の作製)
〔1〕円柱試験片A
高炭素クロム軸受鋼としてJIS G 4805に規定されるSUJ2材から成る円柱材(直径:18mm、長さ:22mm、表面粗さRz:2μm)の表面に、PVDアーク式イオンプレーティング法によって、水素原子の含有量が0.5原子%、ヌープ硬度Hk=2170kg/mm、厚さ:0.5μmのDLC薄膜を成膜して円柱試験片Aとした。
【0058】
〔2〕円柱試験片B
上記円柱材の表面に、DLC薄膜を成膜することなく、そのままでして円柱試験片Bとした。
【0059】
〔3〕円盤試験片A
フッ素ゴム(NOK社製 F585材)から成る厚さ2mmのゴムシートから24mm径の円盤を打ち抜き、次いでプラズマCVD装置に当該円盤を入れ、真空に引いたのち、Hプラズマによりその表面を洗浄した後、CHプラズマによってDLC薄膜を成膜した。なお炭素薄膜の膜厚は1.0μmとした。
【0060】
〔4〕円盤試験片B
上記円盤試験片Aと同じゴムシートから同様の円盤試験片を打ち抜き、DLC薄膜を成膜することなく円盤試験片Bとした。
【0061】
〔5〕円盤試験片C
アクリルゴム(NOK社製 T667材)から成る厚さ2mmのゴムシートから同様に24mm径の円盤を打ち抜き、DLC薄膜を成膜することなく円盤試験片Cとした。
【0062】
(潤滑油組成物の調整)
〔1〕潤滑油A
ベースオイルとしてのポリアルファオレフィン(1−オクテンオリゴマー)に、エステル系無灰摩擦調整剤としてグリセリンモノオレートを1.0%、無灰系分散剤としてポリブテニルコハク酸イミドを5.0%、その他添加剤として粘度指数向上剤、酸化防止剤、防錆剤、抗乳化剤、非イオン系界面活性剤、金属不活性化剤、消泡剤等を合計で7.0%それぞれ添加し、潤滑油Aとした。
【0063】
〔2〕潤滑油B
ベースオイルとしてのポリアルファオレフィン(1−オクテンオリゴマー)のみから成る潤滑油を調整し、これを潤滑油Bとした。
【0064】
(性能評価)
本発明の摺動特性改善効果を確認するため、上記円柱試験片A、B及び円盤試験片A〜Cを組合わせた摩耗試験を上記潤滑油A又はBを用いて実施した。
【0065】
図2は、この摩耗試験に使用したSRV試験機の概要を示すものであって、当該SRV試験機は、上面に円盤試験片Sd(円盤試験片A〜C)を固定する円盤試験片ホルダー11と、円柱状試験片Sc(円柱状試験片A、B)を固定する円柱試験片ホルダー12から主に構成され、円柱試験片ホルダー12は、円盤試験片ホルダー11に固定された円盤試験片Sdに対して、所定の荷重を負荷しながら、円柱状試験片Scを摺動させるようになっている。なお、両試験片Sd及びScの摺接面には、オイル滴下ノズル13を介して上記潤滑油A又はBが供給されるようになっている。
なお、図2において、符号14は、円柱状試験片Scをホルダー12に固定するためのねじである。
【0066】
上記SRV試験機を用いて、負荷荷重:5N、振幅:±1mm、周波数:50Hz、試験温度:80℃、試験時間:2時間の試験条件のもとに摩耗試験を実施し、2時間後の摩擦係数及び円盤試験片Sdの摩耗量を測定した。この結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
Figure 2005048801
【0068】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の密封装置においては、同軸かつ相対移動自在に組み付けられた一方の部材に取付けられたシール部材に摺接する他方の部材における上記シール部材との摺接面、あるいはさらにシール部材の摺接面がDLCなどの硬質炭素薄膜によって被覆されており、脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有する潤滑油組成物を介して両部材が摺接するようにしているので、耐摩耗性と低摩擦抵抗を低コストのもとで両立させることができ、例えば自動車用の内燃機関に搭載することによって、当該機関の信頼性向上及び燃費改善に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) 本発明の密封装置を回転軸部分に適用した例を示す断面説明図である。
(b) 本発明の密封装置を往復作動軸部分に適用した例を示す断面説明図である。
【図2】本発明の実施例において摩耗試験に用いたSRV試験機の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
1 密封装置
2 シール部材
2a シールリップ部(摺接部)
3 回転軸(他方の部材)
4 バルブステム(他方の部材)

Claims (12)

  1. 同心的に配置され相対移動自在に組み付けられた2部材の一方に取付けられて他方の部材に潤滑油組成物を介して摺接し、2部材間に形成される環状の隙間を密封するシール部材を備えた密封装置において、
    上記潤滑油組成物が脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤を含有すると共に、他方の部材におけるシール部材との摺接面が硬質炭素薄膜により被覆されていることを特徴とする密封装置。
  2. 他方の部材におけるシール部材との摺接面に被覆された硬質炭素薄膜の水素含有量が0.5原子%以下であることを特徴とする請求項2に記載の密封装置。
  3. 上記硬質炭素薄膜の表面粗さRzが2μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の密封装置。
  4. 上記硬質炭素薄膜がPVD法により成膜されたダイヤモンドライクカーボンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の密封装置。
  5. 上記脂肪酸エステル系無灰摩擦調整剤及び/又は脂肪族アミン系無灰摩擦調整剤が炭素数6〜30の炭化水素基を有し、潤滑油組成物中に潤滑油組成物全量基準で0.05〜3.0%含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の密封装置。
  6. 上記潤滑油組成物がポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体を含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の密封装置。
  7. 上記ポリブテニルコハク酸イミド及び/又はその誘導体の含有量が潤滑油組成物全量基準で0.1〜15%であることを特徴とする請求項6に記載の密封装置。
  8. 上記潤滑油組成物がジチオリン酸亜鉛を含有し、その含有量が潤滑油組成物全量基準且つリン元素換算量で、0.1%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の密封装置。
  9. 上記シール部材の少なくとも摺接部がニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、4フッ化エチレン樹脂の何れかの材料を主成分としていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の密封装置。
  10. 上記シール部材の他方の部材との摺接面が硬質炭素薄膜により被覆されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の密封装置。
  11. 上記シール部材に被覆された硬質炭素薄膜がプラズマCVD法により成膜されたダイヤモンドライクカーボンであることを特徴とする請求項10に記載の密封装置。
  12. 少なくとも摺接部がニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム及び4フッ化エチレン樹脂のうちのいずれかの材料を主成分とする基材の他方の部材との摺接面にプラズマCVD法によりダイヤモンドライクカーボンを成膜することを特徴とするシール部材の製造方法。
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