JP7162801B2 - 流体のシール構造、シール部品、シール部品を備えた装置 - Google Patents
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Description
硬質部材のシール面と弾性部材のシール面とを接触させて流体をシールする流体のシール構造であって、
前記硬質炭素膜が、表面が粒状の突起で覆われ、前記粒状の突起の粒径が、400~800nmであり、
前記硬質部材のシール面が、二乗平均平方根粗さが15~35nmの面粗度を有する硬質炭素膜で被覆されていることを特徴とする流体のシール構造である。
前記硬質部材における基材の面粗度Rzが、3.2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の流体のシール構造である。
前記硬質炭素膜の下に下地中間層を有し、前記下地中間層の面粗度Sqが、4~30nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体のシール構造である。
前記下地中間層が、Ti、Cr、W、Si、Geから選択された金属の金属層、金属窒化物層または金属炭化物層で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の流体のシール構造である。
前記流体が、ガスであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の流体のシール構造である。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の流体のシール構造が設けられていることを特徴とするシール部品である。
請求項6に記載のシール部品を備えていることを特徴とするシール部品を備えた装置である。
1.シール構造の概略構成
はじめにシール構造の概略構成について説明する。図1Aおよび図1Bは本実施の形態のシール構造を説明する模式図であり、図1Aは硬質部材と弾性部材とが離反している状態、即ちシール部が開状態となっている場合を示しており、図1Bは硬質部材と弾性部材とが圧接されて接触している状態、即ちシール部が閉状態となっている場合を示している。
次に、シール構造の具体的な構成について、個々に説明する。
(a)硬質部材の概要
図1Aおよび図1Bに示すように、硬質部材11は、基材11Aのシール面が硬質炭素膜11Bで被覆されることにより形成されている。硬質部材11は、弾性部材12と圧接されても変形しないため、硬質炭素膜11Bにクラックが発生することがない。また、硬質炭素膜は硬度が高く耐摩耗性に優れるため、弾性部材12との接触、離反が繰り返し行われる条件下においても長期間の使用に耐えて、長期間に亘ってシール機能を維持することができる。
本実施の形態の硬質炭素膜11Bは表面が平滑ではなく微小な凹凸が形成されて、二乗平均平方根粗さ(Sq)が11~35nmというミクロな面粗度を有している。硬質炭素膜11Bをこのようにミクロな面粗度を有する構造とすることにより、貼り付き抑制機能と気体に対するシール機能とを両立させることができる。
また、前記したように、硬質炭素膜11Bは、その成長に際して基材11Aの表面粗さを引き継いで(トレースして)成長する性質を有しているため、基材の表面粗さを適切に制御することにより、硬質炭素膜11Bの表面粗さを制御することができる。
本実施の形態のシール構造においては、基材層と硬質炭素層の間に下地中間層を設けることが好ましい。図3は本実施の形態のシール構造の硬質部材の構成を示す模式図である。図3において11Cは下地中間層である。下地中間層11CはTi、Cr、W、Si、Geから選択された金属の金属層、金属窒化物層または金属炭化物層で形成され、これらの層を2層以上積層してもよい。下地中間層の形成にこれらの材料を使用した場合、硬質炭素膜11Bと下地中間層11Cの界面、および下地中間層11Cと基材11Aの界面において十分な密着力を発揮するため好ましい。下地中間層11Cは基材11Aの表面にスパッタリングまたはアーク蒸着法により形成される。
弾性部材12には、従来のシール構造に使用される各種ゴム材料、各種エラストマーなどが使用できる。このような弾性体としては、例えば、ゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、NBRゴム、ウレタンゴム、EPTゴム、CRゴムなどが挙げられる。これらの中でも、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)などのフッ素ゴムが、耐食性・耐久性が高いため好ましい。
本実施の形態の硬質炭素膜11Bは、CVDなどの気相成長法を用いて成膜されるが、硬質炭素膜はその成長に際して基材や下地中間層の表面粗さを引き継いで(トレースして)成長する性質を有しているため、基材や下地中間層の表面粗さを適切に制御することにより、硬質炭素膜11Bの表面粗さも制御することができる。また、硬質炭素膜の成長に伴って表面粗さが大きくなる性質を有しているため、硬質炭素膜の膜厚を制御することによっても表面粗さが制御された硬質炭素膜11Bを得ることができる。
本実施の形態のシール部品は、上記した気体に対しても優れたシール機能を有するシール構造を用いた部品である。そして本実施の形態の装置は、本実施の形態のシール部品が備えられた装置である。従来のシール構造の場合、硬質部材11と弾性部材12とが例えば1時間程度圧接されると貼り付いてしまい引き剥がし時に弾性部材が破損することがあったが、本実施の形態のシール構造は、貼り付きが抑制されているため、長時間圧接されても貼り付くことがない。また、気体に対しても十分なシール機能を確保することができる。
1.硬質部材の製造
硬質部材の下地中間層及び硬質炭素膜の成膜には図7に示す陰極PIG型プラズマCVD装置を成膜装置として用いて、表1に示すNo.2~11、およびNo.13~16、計14種類の硬質炭素膜の成膜を行った。なお、本実験においては、スパッタによりTi膜を下地中間層として設けると共に、その上にSi含有硬質炭素膜を第2下地中間層として設けた。なお、基材としては、面粗度Rzが異なる3種類のSCM415製の金属ディスク、具体的には、面粗度Rzが、0.4μm、3.2μm、6.3μmの金属ディスクを用いた。
Arガス:流量50ccm、圧力0.1Pa
放電電流:20A
電磁コイル通電電流:5A
基板バイアス電圧:500V
時間:20分
Arガス:流量:50ccm、圧力0.3Pa
放電電流:20A
電磁コイル通電電流:0A
基板バイアス電圧:0V
時間:20分(Ti膜厚0.25μm)、40分(Ti膜厚0.5μm)、
80分(Ti膜厚1.0μm)
Arガス流量:50ccm
TMS流量:100ccm
C2H2流量:100ccm
圧力:0.1Pa
放電電流:20A
電磁コイル通電電流:5A
基板バイアス電圧:500V
時間:20分
Arガス流量:50ccm
C2H2流量:100ccm
圧力:0.1Pa
放電電流:20A
電磁コイル通電電流:5A
基板バイアス電圧:500V
時間:20分(膜厚1μm)、60分(膜厚3μm)、100分(膜厚5μm)
上記の製造方法で硬質部材上に成膜されたそれぞれの膜厚のTi膜と硬質炭素膜の面粗度と粒状の突起の粒径を以下のように評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1においては、硬質炭素膜が形成されていないが下記のシール機能の計測に使用されている硬質部材を、No.1、12、17~19として併せて記載している。
基材の面粗度Rzは、触針式表面粗さ計を用いて計測した。
Ti層および硬質炭素膜の面粗度Sqと硬質炭素膜の粒状の突起の粒径(粒径)は、硬質炭素膜の表面の1辺が5μmの正方形(5×5μm)の領域を対象としてSPMを用いて計測した。
各硬質部材を用いて、以下に示す方法でシール機能(引き離し荷重、リークの有無)を試験した。なお、No.17~19では、従来技術における評価として、弾性部材側に1μmの硬質炭素膜を被覆して、試験を行った。
図8は、シール機能試験装置を説明する模式図である。図8において、31はニードルであり、32はノズル穴である。試験装置3は、開閉弁であって、弁の内側は外部と区画されており、下面には硬質部材11が用いられている。上面にはN2ガスの流入口が設けられており、弁内にN2ガスが供給される(圧力:250kPa)。硬質部材11の中央には外部に通じるノズル穴32が設けられており、内側の面がシール面を形成している。ニードル31は、上下方向に移動可能であって、下端には板状の弾性部材12が取り付けられており弁体を形成している。ニードル31が下降することによって、弾性部材12が硬質部材11のシール面に圧接され、弁が閉じられる。ノズル穴の外側にはN2のリークをチェックするリークディテクターを備えている。硬質部材としは、製造した表1の硬質部材11を使用した。なお、弾性部材12にはFKM80(フッ化ビニリデン系ゴム)製のゴム材を用いた。
弁を閉じた後、常温で5時間放置した。この間リークチェックを行い、シール機能を評価した。具体的にはリーク量が0.2ml/min未満の場合を可、0.2ml/min以上の場合を不可とした。
2 成膜装置
3 試験装置
4 電磁式開閉弁
11 硬質部材
11A 基材
11B 硬質炭素膜
11C 下地中間層
12 弾性部材
21 真空チャンバ
22 PIGガン
23 スパッタガン
31 ニードル
32 ノズル穴
41 電磁コイル
M モータ
P Arプラズマ
Claims (7)
- 硬質部材のシール面と弾性部材のシール面とを接触させて流体をシールする流体のシール構造であって、
前記硬質炭素膜が、表面が粒状の突起で覆われ、前記粒状の突起の粒径が、400~800nmであり、
前記硬質部材のシール面が、二乗平均平方根粗さが15~35nmの面粗度を有する硬質炭素膜で被覆されていることを特徴とする流体のシール構造。 - 前記硬質部材における基材の面粗度Rzが、3.2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の流体のシール構造。
- 前記硬質炭素膜の下に下地中間層を有し、前記下地中間層の面粗度Sqが、4~30nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体のシール構造。
- 前記下地中間層が、Ti、Cr、W、Si、Geから選択された金属の金属層、金属窒化物層または金属炭化物層で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の流体のシール構造。
- 前記流体が、ガスであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の流体のシール構造。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の流体のシール構造が設けられていることを特徴とするシール部品。
- 請求項6に記載のシール部品を備えていることを特徴とするシール部品を備えた装置。
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