JP4918751B2 - ガンマブチロラクトンの製造において副生する高沸点化合物の処理方法及びガンマブチロラクトンの製造方法 - Google Patents
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(2) ガンマブチロラクトンの製造が、無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応によるガンマブチロラクトンの製造であることを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(3) 無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応によるガンマブチロラクトンの製造において、無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応により得られる反応液からガンマブチロラクトン及び反応溶媒を除去して得た副生高沸点化合物を含有する触媒液に、水及び非極性溶媒を添加して抽出分離し、分離後の複数相の内、非極性有機溶媒相のみを分離除去し、残る相にアルカリ水溶液を添加し加熱攪拌を行った後、得られたアルカリ性液相に水溶性有機化合物を添加し、有機酸塩類を析出させる方法。
(4) ガンマブチロラクトンの製造がルテニウム錯体触媒を用いた無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応であり、非極性溶媒が炭素数5〜20の炭化水素であり、アルカリ水溶液が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液であり、有機酸塩類がコハク酸のナトリウム塩あるいはカリウム塩であることを特徴とする上記(3)に記載の方法。
(5) 析出した有機酸塩類を、ろ過により固液分離する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 析出した有機酸塩類を遠心分離により固液分離する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
なお、本発明は回分、半回分、連続方式のいずれの系式にも使用することができる。以下、その詳細について説明する。
(7) 無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応によりガンマブチロラクトンを製造する方法であって、水素化反応により得られる反応液からガンマブチロラクトン及び反応溶媒を除去し、得られた副生高沸点化合物を含有する触媒液に、水及び非極性溶媒を添加して抽出分離し、分離後の複数相の内、非極性有機溶媒相のみを分離除去し、残る相にアルカリ水溶液を添加し加熱攪拌を行った後、得られたアルカリ性液相に水溶性有機化合物を添加してコハク酸塩類を析出させ、該コハク酸塩類を固液分離した後該コハク酸塩類を酸類によりコハク酸へ変換し、該コハク酸を水素化反応の原料コハク酸として用いることを特徴とするガンマブチロラクトンの製造方法。
また該副生高沸点化合物以外の、その他の成分を含んでも本発明のアルカリ水溶液による加水分解は差し支えなく進行し、特にコハク酸、無水コハク酸、1,4−ブタンジオール、4−ヒドロキシ酪酸、ガンマブチロラクトンを含む該高沸点化合物の水溶液を使用することも可能である。該高沸点化合物のアルカリ水溶液処理後の液成分には、高沸点化合物の分解により生成するコハク酸ナトリウム、コハク酸カリウムなどの有機酸塩類、1,4−ブタンジオールなど上記有機酸塩類、アルコール類が含まれる。また、本発明では、ガンマブチロラクトン製造工程で少量副生するアルコール類や酸類を含むエステル類が混入している場合も差し支えない。例えば、ガンマブチロラクトン製造反応で少量副生するアルコール類及び酸類とは炭素数2〜10のアルコール類と酸類であり、好ましくは1−オクタノール、2−オクタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エタノール、メタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などである。また特に好ましくはジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルであり、これら副生アルコール類、酸類を10重量ppm〜5重量%含んでいても差し支えない。これらは反応溶媒、触媒成分などから少量副生するものである。これらの酸類、アルコール類はアルカリ水溶液で処理した高沸点化合物の水溶液中に存在しても差し支えない。
本発明においては、上述の副生する高沸点化合物とアルカリ水溶液との加熱攪拌工程により得られた有機酸塩類と1,4−ブタンジオールを含有するアルカリ水溶液に水溶性の有機化合物を添加することを必須としている。水溶性有機化合物の仕込み割合は、該アルカリ水溶液の総量(アルカリ水溶液に水溶性有機化合物を添加した後の溶液量)の50〜1000wt%が好ましく、より好ましくは80〜300wt%、更に好ましくは100〜200wt%である。水溶性の有機化合物の添加量が少なすぎると有機酸塩類の析出が不充分となり、多すぎるとその後の精製工程での水溶性の有機化合物の除去がコスト高となってしまう。 本発明で使用する水溶性有機化合物としては、ケトン類、エーテル類が好ましく、具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。使用する水溶性有機化合物自体のコストの観点から、特に好ましくはアセトンである。
pKaが2よりも小さい酸の共役塩基としては触媒調整中または反応系中においてかかる共役塩基を形成するものであれば良く、その供給形態としてはpKaが2より小さいブレンステッド酸あるいはその各種の塩などが用いられる。具体的には硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロスルホン酸等の無機酸類、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ドデシルスルホン酸、オクタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素酸、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機酸等のブレンステッド酸もしくはこれらの酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、銀塩等があげられる。
これら酸あるいはその塩の使用量は、ルテニウム金属に対して0〜1000モル、好ましくは0〜100モルの範囲である。特に好ましくは0〜10モルである。
また本発明においては、「ガンマブチロラクトンの製造において副生する高沸点化合物」として、「ガンマブチロラクトンと副生する高沸点化合物を含む反応液からガンマブチロラクトン及び反応溶媒を除去して得た触媒液を、ヘプタンなど非極性溶媒、及び水などの極性溶媒(好ましくは水)を用いて抽出処理し、ルテニウム触媒を多く含む非極性溶媒相と、副生エステル類を多く含む極性溶媒相に分離し、得られた該極性溶媒相」を使用することが可能である。また、「ガンマブチロラクトン及び反応溶媒を除去して得た触媒液を、ヘプタンなど非極性溶媒、及び水などの極性溶媒(好ましくは水)を用いて抽出処理し、非極性溶媒相、水相、及び有機溶媒、水に対して不溶なオイル相の3相に分離し、得られた水相を使用することも可能である。ここで用いられる非極性溶媒として、脂肪族炭化水素化合物、脂環式炭化水素化合物や芳香族炭化水素化合物などが挙げられる。また、これら非極性溶媒としては置換基を有していても構わない。具体的な例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどが挙げられるが、特にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭素数が5〜8の脂肪族炭化水素化合物が好ましい。また極性溶媒として、アルコール類、ケトン類、エステル類、水などが挙げられる。また、これら極性溶媒は置換基を有していても構わない。具体的な例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、4−ノナノール、5−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、5−デカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、1−フェネチルアルコール、2−フェネチルアルコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等が挙げられるが経済性、安全性からアルコール類が好ましく、より好ましくはジオール及び水、特に1,4−ブタンジオール、水が好ましい。
ルテニウムトリオクチルホスフィン−パラトルエンスルホン酸系触媒を用いた無水コハク酸の水素化反応を次の通り行った。反応は図1に示す気液分離器(1)、蒸留塔(2)付きの循環装置を使用して行った。触媒容器(3)に0.056重量%のトリス(アセチルアセトン)ルテニウム、0.51重量%のトリオクチルホスフィン、0.22重量%のパラトルエンスルホン酸をトリグライム(トリエチレングリコール ジメチルエーテル)に溶解し、窒素雰囲気下200℃で2時間加熱処理し、新触媒容器(5)に入れ心フィード触媒液とした。この触媒液を3500mL/hの流量でオートクレーブ(8)に供給し、気液分離後、蒸留塔の看守杖気として回収リサイクルした。
上記参考例1で得られた抜き出し触媒液の濃縮を以下のようにして行った。抜き出し触媒液878.1gを減圧蒸留装置付きのジャケット式反応器に入れ、減圧蒸留により溶媒であるトリグライムを留去した。この時、液温を160℃以下に保つように減圧度を70mmHg〜5mmHgの範囲でコントロールした。溶媒留去後、濃縮触媒液を295.75g得た。得られた濃縮触媒液の組成は以下のとおりであった。
参考例2で得られた濃縮触媒液39.8gに水90.3g、ヘプタン28.0gを添加し、80℃で1時間攪拌した。80℃で静置すると上から触媒を含有するヘプタン相、水相、ヘプタン相及び水相のいずれにも不溶で、廃ルテニウムを含有するオイル相の3相に分離した。この3相を分離し、水相110gを得た。この水相の組成は以下の通りであった。本水相を用いて実施例を行った。
参考例2で得られた濃縮触媒液50.0gに水60.6g、ヘプタン35.0gを添加し、80℃で1時間攪拌した。80℃で静置すると上からヘプタン相、及び廃ルテニウムを含有する水相の2相に分離した。この2相を分離し、水相106.7gを得た。この水相の組成は以下の通りであった。本水相を用いて実施例を行った。
参考例3で得られた水相を40g、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液20gを攪拌翼の付いたガラス製の内容量100mLのフラスコに充填し、90℃で30分間加熱攪拌を行った。本反応液の組成は以下のとおりであった。
ここで得られた反応液5.01gに、アセトンを10.05g添加し、室温にて1時間放置すると白色結晶が析出した。この固液混合液をろ過により分離し、白色固体1.51g、母液13.55gを得た。この得られた固体(白色結晶)を乾燥した後、液体クロマトグラフィーにより分析した結果、コハク酸ナトリウムであることが判明した。このコハク酸は参考例3で得られた水相中の高沸点化合物のコハク酸骨格のうち、98%がコハク酸ナトリウムとして回収できたことを示す。またこの白色固体を水に溶解した水溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,4−ブタンジオールは検出されなかった。母液を分析した結果、コハク酸ナトリウムは検出されず、1,4−ブタンジオールが1.8重量%含まれていることが明らかとなった。本実施例により、ガンマブチロラクトン製造で副生する高沸点化合物をアルカリにより分解できること、更に水溶性有機化合物をアルカリ性液成分に添加することで、有機酸塩類を効率よく析出できることが判明した。
参考例4で得られた水相を40g、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液20gを攪拌翼の付いたガラス製の内容量100mLのフラスコに充填し、90℃で30分間加熱攪拌を行った。本反応液の組成は以下のとおりであった。
コハク酸ナトリウム:34重量%、水分:44.5重量%、1,4−ブタンジオール:5.5重量%、高沸点化合物:6wt%
ここで得られた反応液50.1gに、アセトンを75.8g添加し、30℃にて30分攪拌、30分静置すると白色結晶が析出した。この固液混合液を遠心分離器により分離し、白色固体33.8g、液体86.9gを得た。この得られた固体(白色結晶)を液体クロマトグラフィーにより分析した結果、47.8重量%のコハク酸ナトリウムであることが判明した。このコハク酸は参考例3で得られた水相中の高沸点化合物のコハク酸骨格のうち、95%がコハク酸ナトリウムとして回収できたことを示す。またこの白色固体を水に溶解した水溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,4−ブタンジオールは検出されなかった。母液を分析した結果、コハク酸ナトリウムは検出されず、1,4−ブタンジオールが2.3重量%含まれていることが明らかとなった。本実施例により、固液分離によりコハク酸ナトリウム、1,4−ブタンジオールの分離が効率よく進行することが判明した。
参考例4で得られた水相を40g、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液20gを攪拌翼の付いたガラス製の内容量100mLのフラスコに充填し、90℃で30分間加熱攪拌を行った。本反応液の組成は以下のとおりであった。
コハク酸ナトリウム:34重量%、水分:44.5重量%、1,4−ブタンジオール:5.5重量%、高沸点化合物:6wt%
ここで得られた反応液50.0gに、アセトン75.1gを200mLガラス製攪拌翼付きのフラスコ内で添加し、30℃にて1時間攪拌、30分静置すると白色結晶が析出した。この固液混合液をろ過により分離し、ろ液を91.4g得た。またフラスコ内に残存する白色固体に水50.3g添加し、溶解後に抜き出した。白色固体水溶液79.0gを得た(白色固体28.6g)。この得られた白色固体の溶液を液体クロマトグラフィーにより分析した結果、白色固体は46.8重量%のコハク酸ナトリウムであることが判明した。このコハク酸は参考例3で得られた水相中の高沸点化合物のコハク酸骨格のうち、95%がコハク酸ナトリウムとして回収できたことを示す。またこの白色固体の水溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,4−ブタンジオールは検出されなかった。一方,ろ液を液体クロマトグラフィー、及びガスクロマトグラフィーにて分析した結果、コハク酸ナトリウムは検出されず、1,4−ブタンジオールが2.2重量%含まれていることが明らかとなった。本実施例により、固液分離によりコハク酸ナトリウム、1,4−ブタンジオールの分離が効率よく進行することが判明した。
参考例4で得られた水相50gにアルカリ水溶液を添加せずに、アセトンを75.8g添加し、30℃にて30分攪拌、30分静置したが、均一に溶解し、白色結晶は析出しなかった。
Claims (6)
- ガンマブチロラクトンの製造において副生する高沸点化合物の処理方法であって、該高沸点化合物が1,4−ブタンジオール、コハク酸、及び4−ヒドロキシ酪酸が脱水縮合して生成するエステルオリゴマーであって、該高沸点化合物の水溶液にアルカリ水溶液を添加して加熱攪拌することにより高沸点化合物をコハク酸ナトリウムと1,4−ブタンジオールに分解し、得られたコハク酸ナトリウムと1,4−ブタンジオールを含有するアルカリ水溶液にアセトン又はメチルエチルケトンを添加し、コハク酸ナトリウムを析出させる方法。
- ガンマブチロラクトンの製造が、無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応によるガンマブチロラクトンの製造であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応によるガンマブチロラクトンの製造において、無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応により得られる反応液からガンマブチロラクトン及び反応溶媒を除去して得た1,4−ブタンジオール、コハク酸、及び4−ヒドロキシ酪酸が脱水縮合して生成するエステルオリゴマーを含有する触媒液に、水及び非極性溶媒を添加して抽出分離し、分離後の複数相の内、非極性有機溶媒相のみを分離除去し、残る相にアルカリ水溶液を添加し加熱攪拌を行った後、得られたアルカリ性液相にアセトン又はメチルエチルケトンを添加し、コハク酸ナトリウムを析出させる方法。
- ガンマブチロラクトンの製造がルテニウム錯体触媒を用いた無水コハク酸あるいはコハク酸の水素化反応であり、非極性溶媒が炭素数5〜20の炭化水素であり、アルカリ水溶液が水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
- 析出したコハク酸ナトリウムを、ろ過により固液分離する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 析出したコハク酸ナトリウムを、遠心分離により固液分離する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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