JP2010184877A - カルボニル化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 原料アルコールを脱水素反応してカルボニル化合物を製造するにあたり、より詳細には、1,4−ブタンジオールを脱水素反応させガンマブチロラクトンを製造するにあたり、高沸点化合物の生成を抑制し、高い収率で、効率よく、カルボニル化合物又は、ガンマブチロラクトンの製造を行う。
【解決手段】触媒の存在下、原料アルコールの脱水素反応によりカルボニル化合物を製造する方法において、反応開始時にオリゴマーが反応系内に存在することを特徴とするカルボニル化合物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アルコールを脱水素反応させてカルボニル化合物を製造する方法に関するものである。より詳細には、1,4−ブタンジオールを脱水素反応させてガンマブチロラクトンを製造する方法である。
有機リン化合物を有する遷移金属錯体を用いた液相均一系触媒の存在下、アルコールを脱水素してカルボニル化合物を製造する方法は、これまでに数多く報告されている。例えば、J.Orgmet.Chem.,429(1992)269−274には、イリジウム−イソプロピルホスフィン錯体、ルテニウム−トリフェニルホスフィン錯体を触媒としてジオールを脱水素してラクトン化合物を得る反応が記載されており、Bull.Chem.Soc.Jpn.,61、2291−2294(1988)には、ルテニウム−エチルジフェニルホスフィン錯体を触媒としてメタノールを脱水素して蟻酸メチルを得る反応が記載されている。またJ.Org.Chem.1987,52,4319−4327ではルテニウム−有機ホスフィン錯体触媒に加えて、アセトンなどの水素受容体を過剰量添加した反応が記載されている。
しかしながら、これらの反応では水素受容体無しでは触媒活性が著しく低下し、反応を完結させるためには長時間必要であるという問題があった。
そのため、既に様々な方法が開発されてきた。例えば特開2003−55365号公報ではホスフィン系リン化合物とカルボニル化合物との付加生成物とを反応系内に存在させることにより、水素受容体の存在しない系においても、効率的にアルコールからカルボニル化合物を製造することに成功している。
しかしながら、これら従来の方法では、反応系内における高沸点化合物の生成速度が速く、高沸点化合物が多く副生するため、目的とするカルボニル化合物の十分な収率を達成することが出来ないという問題があった。
特開2003−55365号公報
J.Orgmet.Chem., 429(1992)269-274 Bull. Chem. Soc. Jpn., 61、2291-2294(1988) J. Org. Chem. 1987,52,4319-4327
そこで、原料アルコールを脱水素反応してカルボニル化合物を製造するにあたり、高沸点化合物の生成を抑制し、高い収率で、効率よく、カルボニル化合物の製造を行う方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、原料アルコールを脱水素反応させてカルボニル化合物の製造するにあたり、反応開始時に反応液中にオリゴマーを存在させることにより、高沸点化合物の生成反応が抑制され、効率よくアルコールを脱水
素してカルボニル化合物を製造する方法として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[8]に存する。
[1]触媒の存在下、原料アルコールの脱水素反応によりカルボニル化合物を製造する方法において、反応開始時にオリゴマーが反応系内に存在することを特徴とするカルボニル化合物の製造方法。
[2]前記オリゴマーが前記アルコールと前記カルボニル化合物の合計量に対して0.01〜80.00wt%の範囲であることを特徴とする[1]に記載のカルボニル化合物の製造方法。
[3]前記オリゴマーがアルコールに由来する構成単位及び/又はカルボニル化合物に由来する構成単位を含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載のカルボニル化合物の製造方法。
[4]前記反応液が非プロトン性溶媒を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法。
[5]前記非プロトン性溶媒がポリエーテル類であることを特徴とする[4]に記載のカルボニル化合物の製造方法。
[6] 前記脱水素反応の反応形式が回分式であることを特徴とする[1]〜[5]のい
ずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法。
[7]前記触媒が、遷移金属錯体を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法。
[8]前記触媒が、リン化合物を含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法。
本発明により、副生物である高沸点化合物の生成を抑制し、高い収率で目的生成物であるカルボニル化合物を得ることができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されない。以下、その詳細について説明する。
本発明においては、反応開始時にオリゴマーを反応系内に存在させることで、副生物である高沸点化合物の生成を抑制し、目的生成物であるカルボニル化合物を高い収率でえることができる。この理由は、必ずしも明確ではないが、次のように推測される。高沸点化合物は原料アルコール由来のオリゴマーから生成する。一方でオリゴマーは解重合反応により、原料側へ戻ることも出来る。即ち、原料アルコールとオリゴマーの間には平衡が存在する。オリゴマーを反応系内に共存させる事で、主反応に対する原料からオリゴマーへの平衡反応の割合を低減化することが出来る。結果、高沸点化合物への選択率を低減化できると考えられる。
本発明において、反応開始時にオリゴマーを反応系内に存在させる態様としては、反応開始に際して、別途製造したオリゴマーを他の原料と共に系内に存在させる方法のほか、原料供給時にオリゴマーを反応系内に存在させる方法が挙げられる。
原料供給時とは、原料アルコールの脱水素反応を行う反応系に、原料アルコールを供給するときのことであるが、その際に反応系内に予め原料アルコール、カルボニル化合物、又は他の化合物などが存在しても良い。また、原料アルコールの供給は、反応系内で原料アルコールの脱水素反応が行われている最中であっても、脱水素反応をおこなう前や脱水素反応が終了した後などの反応が行われていないときに供給してもよい。
本発明において、オリゴマーとは、通常、その構成単位となる単量体が、有限個結合し
たものである。オリゴマーの構成単位としては、単一の種類の化合物に由来する構成単位であっても、複数の種類の化合物に由来する構成単位であってもよく、これらの構成単位がオリゴマー中に混在していてもよい。
オリゴマーを構成する構成単位の個数としては、特に限定されないが、上限として、100個以下であり、好ましくは、50個以下であり、より好ましくは、10個以下である。この個数が少なくなるほど、カルボニル化合物が高い収率で得られる傾向にある。
一方、下限としては、オリゴマーの定義上、2個以上であり、この個数が多くなるほど、カルボニル化合物の収率が低下する傾向にある。
また、オリゴマーの分子量は、特に限定されないが、通常、150〜10000であり、好ましくは、150〜5000であり、より好ましくは、170〜2000である。分子量が小さくなるほど、カルボニル化合物が高い収率で得られる傾向にあり、一方、分子量が大きくなるほど、カルボニル化合物の収率が低下する傾向にある。
本発明におけるオリゴマーの分子量は、公知の方法によって測定することができる。一般的には、ガスクロマトグラフィー(以下、GPCと記載することがある)で測定することができる。
本発明のオリゴマーに含まれる構成成分としては、特に限定されない。通常、アルコール、カルボニル化合物、アセタール、ヘミアセタール、又はエーテルなどの化合物に由来する構成単位が含まれる。
これらの中でも、アルコールに由来する構成単位、カルボニル化合物に由来する構成単位からなる群より一種類以上を含むことが好ましく、更には、アルコールに由来する構成単位及び/又はカルボニル化合物に由来する構成単位を含むことがより好ましい。好ましい理由としては、オリゴマーの解重合反応により原料アルコール誘導体へと戻るためである。
オリゴマーを反応系に存在させる方法としては、特に限定されない。例えば、予め調整したオリゴマーを原料供給前に、反応系に仕込んでおいてもよく、又、反応系内でオリゴマーを予め生成させ、そのまま反応系内に存在させておいてもよい。
このオリゴマー量としては、アルコールとカルボニル化合物の合計量に対して、下限値は通常は0.01wt%以上であり、好ましくは0.05wt%以上、より好ましくは0.10wt%以上、更に好ましくは1.00以上、最も好ましくは4.00wt%以上である。また、一方、この値の上限値としては通常は80.00wt%以下であり、好ましくは60.00wt%以下、より好ましくは50.00wt%以下、更に好ましくは50.00wt%以下、最も好ましくは45.00wt%以下である。
オリゴマーの割合が低すぎると高沸点化合物の生成収率が増加し、ガンマブチロラクトンの収率が低下する傾向にある。また、オリゴマーの割合が高すぎると原料アルコールの濃度が低下し、反応速度が低下する傾向にある。
本発明における高沸点化合物は、原料アルコール及びその誘導体の2量体以上の化合物のことであり、オリゴマーも含んでいてもよい。
本発明で原料とするアルコールとしては、脱水素反応によりカルボニル化合物となりうる1価又は多価アルコールであればよく、特に限定されない。このようなアルコールには、1級又は2級アルコール;鎖状(直鎖又は分岐)又は環状アルコール;飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコール又は芳香族アルコールなどがあり、いずれも使用することができる。このうち、炭素数が1〜50のものが好ましく、特に、炭素数1〜10のものが好ましい。又、これらのアルコールはアミノ基、スルフィド基、エーテル基、等のヘテロ元素を含む他の置換基を有していても良い。
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール等の1級の飽和アルコール;2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、2−ノナノール、3−ノナノール、4−ノナノール、5−ノナノール、2−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、5−デカノール等の2級の飽和アルコール;シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘプタノール等の環状アルコール;アリルアルコール、1−ブテノール、1−ペンテノール、1−ヘキセノール、1−ヘプテノール、1−オクテノール、1−ノネノール、1−デセノール等の1級の不飽和脂肪族アルコール;2−ブテノール、2−ペンテノール、2−ヘキセノール、3−ヘキセノール、2−ヘプテノール、3−ヘプテノール、2−オクテノール、3−オクテノール、4−オクテノール、2−ノネノール、3−ノネノール、4−ノネノール、2−デセノール、3−デセノール、4−デセノール、5−デセノール等の2級の不飽和脂肪族アルコール;フェネチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール等の芳香族アルコール;メタノールアミン、エタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられる。なお、不飽和脂肪族アルコールの場合、不飽和結合の位置は任意である。
多価アルコールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,4−ペンタンジオール等の鎖状脂肪族アルコール;1,2−シクロヘキシルジメチロール、1,3−シクロヘキシルジメチロール、1−ヒドロキシメチル−2−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1−ヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサン等の環状脂肪族アルコール;1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1−ヒドロキシメチル−2−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン等の芳香族アルコールなどが挙げられる。
上記アルコールのなかでも2価アルコールの使用が好ましく、2価の鎖状脂肪族アルコールがより好ましく、2価の鎖状飽和アルコールが更に好ましく、特に、1,4−ブタンジオールを原料アルコールとすることで用途が広く特に有用なγ−ブチロラクトンを得る事ができる。
本発明により製造されるカルボニル化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール等のアルデヒド類;2−プロパノン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、アダマンチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;アセチルアセトンなどのジケトン類;ガンマブチロラクトン、バレロラクトンなどのエステル類が挙げられ、特に好ましくはガンマブチロラクトンである。
本発明における触媒としては、特に限定されないが、通常は遷移金属を含む触媒が用いられる。遷移金属の原料としては、遷移金属そのもの、又は遷移金属化合物のどちらでも使用可能である。遷移金属としては、周期表の第8族〜第10族(IUPAC 無機化学命名
法改訂版(1998)による)の遷移金属が好ましい。具体的には、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、及び白金が挙げられ、反応活性が高いという理由から、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、及び白金などの白金族金属であり、更に好ましくはルテニウム、ロジウムであり、最も好ましくはルテニウムである。遷移金属は一種類で用いても、二種以上を併用してもよい。
これらの金属を本発明の脱水素反応の錯体として用いる際、通常、その金属を含む化合物を用いるが、具体的な金属化合物としては、鉄化合物、ルテニウム化合物、オスミウム化合物、コバルト化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物の群から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。その中でも反応活性が高いという理由から、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が好ましく、更に好ましくはルテニウム化合物、ロジウム化合物であり、最も好ましくはルテニウム化合物である。
また、遷移金属化合物の具体的な態様としては、酸化物、無機酸塩、有機酸塩あるいは錯化合物等が使用される。
遷移金属化合物としてルテニウム化合物の場合について、具体的に例示すると、二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、二水酸化ルテニウムなどのルテニウム酸化物;塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、沃化ルテニウム、硝酸ルテニムなどのルテニウム無機酸塩;酢酸ルテニウムなどのルテニウム有機酸塩;ルテニウムトリス(アセチルアセトナト)、ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウム、テトラカルボニルルテニウム酸ジカリウム、ペンタカルボニルルテニウム、シクロペンタジエニルジカルボニルルテニウム、ジブロモトリカルボニルルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ヒドリドルテニウム、テトラ(トリフェニルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、テトラ(トリメチルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)トリカルボニルルテニウム、テトラヒドリドデカルボニルテトラルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム、オクタデカカルボニルヘキサルテニウム酸ジセシウム、ウンデカカルボニルヒドリドトリルテニウム酸テトラフェニルホスフォニウム等のルテニウム錯化合物が挙げられ、好ましくは塩化ルテニウム、ルテニウムトリス(アセチルアセトナト)、酢酸ルテニウムである。
本発明においては、上述した遷移金属化合物の形態には特に制限されず、活性な金属錯体種は単量体、二量体及び/又は多量体であっても構わない。また、これらの遷移金属化合物の使用に際しては、ある一種類の特定の遷移金属化合物を用いても、同一金属種の遷移金属であって複数の化合物を併用しても、また、異なる二種以上の遷移金属種の化合物を共存させて用いても構わない。
また、これらの遷移金属化合物の使用量については、特に制限はないが、触媒活性と経済性の観点から、通常、反応液に対し遷移金属として0.0001〜100モル/L、好ましくは0.001〜10モル/Lとなるように反応系に存在させればよい。この使用量が多すぎると触媒コスト増大により工業的に使用不可能となる。また、少なすぎると反応時間が長時間必要となることから著しく巨大な反応器が必要となり、工業的に使用不可能となる。
また本発明の触媒として、リン化合物を含むものを使用することができる。例えば、ホスフィン化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、ホスフィナイト化合物、ホスフォラアミダイト化合物などが使用可能なものとして挙げられる。
これらのリン化合物の中でも活性と熱安定性という観点から、ホスフィン化合物が好ましく用いられる。ホスフィン化合物としては、トリアルキルホスフィン、ジアルキルモノアリールホスフィン、モノアルキルジアリールホスフィン、トリアリールホスフィンが挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。また、単座であっても、多座(二座以上のものを表す。以下同様)であっても良い。
ここで、ホスフィン化合物中のリン原子に結合するアルキル基、又はアリール基に関して補足しておくと、それぞれの基は、置換基を有していてもよく、2つ以上の基が互いに結合を結んで環構造を形成していてもよい。置換基を有する場合には、置換基の例として
、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アミノ基、シアノ基、エステル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子等を挙げることができる。また、アルキル基には分岐したアルキル基やシクロアルキル基も包含され、アリール基には炭素の他に窒素、酸素、硫黄等の他の元素を含んで環を形成した複素環式のアリール基も包含される。ここで、置換基は通常、分子量が200程度以下のものを用いる。
有機リン化合物として、ホスフィン化合物の中でも、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどのモノアルキルジアリールホスフィン、ジメチルフェニルホスフィンなどのジアルキルモノアリールホスフィンのような少なくとも1つのアリール基を含有するものも使用することもできるが、好ましくはトリアルキルホスフィン、更に好ましくは1級アルキル基により構成されるトリアルキルホスフィンである。例えば、トリデカニルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン、1、2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、1、4−ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、1、2−ビス(ジオクチルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジオクチルホスフィノ)プロパン、1、4−ビス(ジオクチルホスフィノ)ブタン、1、2−ビス(ジヘキシルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジヘキシルホスフィノ)プロパン、1、4−ビス(ジヘキシルホスフィノ)ブタン、1、2−ビス(ジブチルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジブチルホスフィノ)プロパン、1、4−ビス(ジブチルホスフィノ)ブタン等が挙げられ、また光学活性なトリアルキルリンを使用することで光学活性なラクトン類の合成も期待できる。本反応に使用するトリアルキルリンのアルキル基は、ノルマル体、イソ体、及びその混合物でも差し支えない。
これらリン化合物の使用量は、遷移金属1モルに対して、0.1〜1000モル、好ましくは1〜100モルの範囲である。リン化合物の使用量が多すぎると触媒コストの向上につながり工業的に使用不可能となり、少なすぎると触媒劣化により遷移金属が析出し、反応の活性が著しく低下する。
本発明の触媒の合成法として、代表的なものとして、ルテニウム錯体触媒の合成例を用いて説明する。例えば遷移金属化合物として、ルテニウムトリス(アセチルアセトナト)錯体を用いて、それを水素圧雰囲気下、溶媒中あるいは溶媒非存在下で、リン化合物として過剰量のトリアルキルホスフィン、好ましくは5〜20等量のトリアルキルホスフィンと水素雰囲気下で100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃にて攪拌することにより合成することができる。また反応成分となるアルコールと過剰量(好ましくは5〜20等量)のトリアルキルホスフィン存在下、100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃で攪拌を行うことでも合成することが可能である。ルテニウム錯体触媒がルテニウムカチオン性錯体触媒である場合の合成は、例えば、上記の方法で触媒を調整した後、pKaが2以下の酸の共役塩基を添加することで行うことができる。またルテニウムトリス(アセチルアセトナト)錯体を溶媒中、あるいは非溶媒存在下、過剰量(好ましくは5〜20等量)のトリアルキルホスフィン、0.1〜20等量の、好ましくは1〜10等量のpKaが2以下の酸の共役塩基存在下、100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃で攪拌を行うことでも合成できる。
本発明によるアルコールの脱水素反応は、通常、液相中で反応をおこなう。液相状態としては均一系であっても、多相分離していても、スラリー状であっても構わない。
本発明においては、溶媒の存在下或いは非存在下のどちらでも反応させることができるが、反応系内のオリゴマーの量の調整が容易になるという観点から溶媒の存在下で脱水素反応を行うことが好ましい。
溶媒としては、反応安定性と熱安定性という観点から非プロトン性溶媒が好ましく用いられ、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンのエーテル類;酢酸メチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のカルボン酸アミド;ヘキサメチルリン酸トリアミド、その他のアミド類;N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジメチルスルホン等のスルホン類;ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類;カプロラクトン等のラクトン類;テトラグライム、トリグライム等のポリエーテル類;ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類等が挙げられ、これらの中で好ましくは、安定且つ溶解度が高いという点でエーテル類、又はポリエーテル類が好ましい。
また、溶媒の使用量としては、特に限定されないが、溶液全体量の1〜90wt%、好ましくは5〜80wt%、更に好ましくは、20wt%〜50wt%である。また、溶媒の量を変化させることにより、反応液中のオリゴマー濃度を調整してもよい。
本発明の脱水素反応の反応温度は、通常20〜350℃、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは150〜250℃の範囲である。
反応圧力は、反応系が液相に保たれる圧力であれば任意であるが、本発明のアルコール類の脱水素反応は、水素を生成する反応であるため、その水素を系外に抜き出しながら行うのが好ましく、大気圧下、開放系で行うことが好ましい。閉鎖系で行う場合には、雰囲気は窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などの不活性ガスが好ましい。
反応は回分方式、半回分方式および連続方式のいずれでも行うことができる。これらの中でも、回分方式、半回分方式で使用する場合に本発明の効果がより発揮される。
回分式で反応を行う態様としては、例えば、反応容器の中で一定時間反応させた後、反応を止めて、反応容器中のものを全て抜き出し、触媒を分離して、その触媒を再度反応容器の中に入れた後に、反応容器に原料や溶媒等を供給して、反応を再び開始することが挙げられる。
本発明を実施する際の混合方式として、円筒型又は角型の攪拌槽を用いることが好ましいが、触媒の構成要素を混合できれば特に限定されない。
また、本発明の脱水素反応により得られた生成物と触媒やオリゴマーや高沸点化合物などの他の化合物との分離は、慣用の液体触媒再循環プロセスで用いられるあらゆる分離操作を採用することができ、具体的には、単蒸留、減圧蒸留、薄膜蒸留、水蒸気蒸留等の蒸留操作のほか、気液分離、蒸発(エバポレーション)、ガスストリッピング、ガス吸収及び抽出等の分離操作が挙げられる。各分離操作は、各々独立の工程で行ってもよく、2つ以上の成分の分離を同時に行ってもよい。反応系中の原料アルコールやオリゴマーは、同様の分離方法で回収し、再び反応系内に循環して使用することも可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下
の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、1,4−ブタンジオール、ガンマブチロラクトン、オリゴマーの分析は内部標準法によるガスクロマトグラフィーにより行った。その際、内部標準としてナフタレンを使用した。
<実施例1>
攪拌器、リービッヒ冷却管、温度測定装置及びサンプリング口を備えた300mlの4口フラスコにルテニウムトリス(アセチルアセトナト)0.511g、トリ−n−オクチルホスフィン3.60gを入れ、1,4−ブタンジオール140g、テトラグライム58.9gを加えて180℃で2時間加熱攪拌し、触媒含有の反応液を調整した。その後、温度を200℃に昇温し、オリゴマー濃度を13.0wt%となるまで加熱攪拌して調整した。反応は、5wt%のテトラグライムを含む1,4−ブタンジオールを反応液面一定となるように20〜30cc/hrで、トリ−n−オクチルホスフィンを0.1g/hrで連続導入して実施した。反応開始時のトリ−n−オクチルホスフィンは、ルテニウム金属1モルに対して、14.2モルで、反応液の一部はリービッヒ冷却管で凝縮し、ガンマブチロラクトンを主成分とする溶液として系外へ15〜25cc/hrで抜き出した。反応を実施した結果、高沸点化合物の生成収率2.1%、ガンマブチロラクトン収率は91.1%であった。
<実施例2>
実施例1において、1,4−ブタンジオール100g、テトラグライム99.3gを4口フラスコに入れ、オリゴマー濃度を4.3wt%とした以外は、全て同様に実施した。その結果、高沸点化合物の生成収率1.3%、ガンマブチロラクトン収率は91.5%であった。
<実施例3>
実施例1において、1,4−ブタンジオール100g、テトラグライム99.3gを入れ、オリゴマー濃度を9.1wt%とした以外は、全て同様に実施した。その結果、高沸点化合物の生成収率0.87%、ガンマブチロラクトン収率は92.4%であった。
<比較例1>
実施例1において、オリゴマーを予め生成させないこと以外は、全て同様に実施した。その結果、高沸点化合物の生成収率3.0%、ガンマブチロラクトン収率は89.5%であった。

Claims (8)

  1. 触媒の存在下、原料アルコールの脱水素反応によりカルボニル化合物を製造する方法において、反応開始時にオリゴマーが反応系内に存在することを特徴とするカルボニル化合物の製造方法。
  2. 前記オリゴマーが前記アルコールと前記カルボニル化合物の合計量に対して0.01wt%以上80.00wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のカルボニル化合物の製造方法。
  3. 前記オリゴマーがアルコールに由来する構成単位及び/又はカルボニル化合物に由来する構成単位を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカルボニル化合物の製造方法。
  4. 前記反応液が非プロトン性溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法。
  5. 前記非プロトン性溶媒がポリエーテル類であることを特徴とする請求項4に記載のカルボニル化合物の製造方法。
  6. 前記脱水素反応の反応形式が回分式であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法。
  7. 前記触媒が、遷移金属錯体を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法。
  8. 前記触媒が、リン化合物を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカルボニル化合物の製造方法。
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